温泉宿の陰謀
「おぉ〜、いい感じの宿だなぁ...」
俺、紀伊ヨシヒトは敷居のたかそうな温泉宿の前に立っている。
俺の趣味は、ネットで口コミを調べて、日本各地の温泉を巡ることだ。
おい、ジジくさいって言った奴、怒らないから出てこい。
ていうか、ネットを使う時点でジジ臭くないだろ。
まぁ、それはともかくだ。
今、東北の温泉街にある、『幻蕩温泉』という温泉宿にいる。
クチコミサイトで、
ここは、温泉街の中でも、知る人ぞ知る、天にも登る気持ちよさの宿なんです!
ですが、『知る人ぞ知る』というせいか、あんまりお客さんいないんですよね...。
残念です...。
と書かれていた。
『知る人ぞ知る』というフレーズに弱い俺は、すぐさま荷物を纏めて直行。
そして、今に至る。
玄関を写真に収めていると、
「ようこそいらっしゃいましたぁ」
稲荷の女将が出迎えた。
「へぇ〜、魔物娘の経営する宿なんですか」
「そうですよぉ。 珍しいですかぁ?」
「ですねぇ、客として来ている方は見たことありますけど、自分で経営しているパターンは見たことないっす」
「ふふっ♪ そうですか。 まぁ、立ち話もなんですから、ささっ、中へ中へ」
「はーい」
俺は、女将に連れられるまま、宿の中へと入っていった。
「不躾な話になるんですが、お客さん来てます?」
中に入るや否や、この質問をぶつけてしまった。
「...まぁ...確かにあんまり有名どころじゃないですけど、そこそこ来てますよ?」
「へぇ」
「ただ、今日はお兄さんの他に、3人しかいませんねぇ」
「...それって人間ですか?」
「全員、魔物娘ですねぇ」
「.............やっぱり」
ちょっと、地雷を踏みかけてるかも。
まだ、人生の墓場行きにはなりたくない。
そうこうしているうちに、
「ここがお客様のお部屋、『月地の間(げっち)』になりますぅ」
自分の部屋へ着いた。
「げっち...ですか...」
ゲッツでも、ガッツでもない、『げっち』である。
なぜか、「下衆なエッチ」というイメージが湧いたのは俺だけだろうか。
「なんかぁ、変なこと考えてません?」
「......いいえ、特には」
女将さんの鋭い問いに、即答ですっとぼける。
訝しんでいる様子の女将さんだったが、
「......まぁ、いいですわぁ」
そして、
「お客さんにご注意をしておきます。 よぉく聞いてくださいね?」
妙に意地の悪そうな笑みを浮かべて注意事項を切り出した。
「はい、なんでしょう?」
ちょっとビビリながら聞く。
「ここはお風呂は共同浴場しかありません。 そんで、『男湯』と『女湯』は絶対に間違えないでくださいねぇ? もし、間違えても、うちらは一切、一切責任を負いませんので、悪しからず」
「わかりました」
男湯と女湯間違えるな...ねぇ。
間違えんだろ。
間違えるとしたら、よほどのアホだ。
もしくは、確信犯の変態だな。
「本当に分かりました?」
「本当に分かりました」
「本当に本当ですね?」
「本当に本当です」
「日本刀?」
「......」
何を言ってるんですか、あなたは。
「ホントのホントに分かりました! はい!」
パチン。
手を叩き、「この話は終わり」の旨を伝える。
「...分かりました、ではごゆるりと...」
女将さんは、部屋を出てった。
だが、俺は気付かなかった。
女将さんの口が、ニタリと歪んでいたことに。
さっそく荷物を置き、宿のロゴの入った浴衣を着て、風呂へ行くことに。
風呂と思われる場所の前には、
青い暖簾で『男湯』、
赤い暖簾で『女湯』と書いていた。
これで間違えるならアホだわ。
アホ以外の何物でもないわ。
そう考えながら、俺は青い暖簾の『男湯』と書かれて方へ入った。
浴衣を脱ぎ、腰にタオルと巻き、いざ出陣。
まず、掛け湯。
内湯を素通りし、露天風呂へ。
「ほぉ、雪見露天ですか」
露天風呂の周囲が見事な雪景色だった。
いいねぇいいねぇ、風流だねぇ。
さっそく、お湯に浸かる。
「フィ〜〜〜〜......来たかいがあったねぇ...」
お湯に浸かりながら、雪景色を堪能していると、内風呂の方から、複数人の女性の声が聞こえてくる。
「まさか......まさか!!」
気づいた時には、もう遅かった。
「おー、イイ感じじゃん」
「んー? 男の人がいるー」
「もしかして、俗に言うヘンタイさん?」
タオルも巻かず、サキュバス、エルフ、ダンピールが入ってきた。
「ちっ、違います! 俺は変態じゃないです!! つーか、ここ男湯でしょ!!」
「えー? 違いますよ?」
「嘘でしょっ!?」
「だったら、見てくればいいじゃないですか」
「はっ? 上等だよ...ッ!!」
勢いよく湯船から立ち上がると、男のシンボルが彼女たちの目の前に晒される。
「「「ゴクッ」」」
生唾を飲む三人を見て我に返り、
「きっ...きっ...キャァァァァァ!!!」
激しい水しぶきを上げ、湯船の中へ戻ってしまった。
「いや、逆でしょ」
エルフがツッこむ。
分かっとるわ。
水面ギリギリでタオルを腰に巻き、暖簾を見に行く。
そこには、赤い暖簾で、『女湯』と書いてあった。
全身から、血の気が引いていく。
ここで、女将さんの言葉と様子を思い出す。
『男湯』と『女湯』は絶対に間違えないでくださいねぇ?
もし、間違えても、うちらは一切、一切責任を負いませんので、悪しからず
そして、口がニタリと歪んでいた。
こういうことかァァァァァァッ!!!
つーかけしかけたろ!!!
「やっぱり、女湯でしたね」
ニヤニヤしながら、ダンピールが言った。
「.........さっ、さっきまでは『男湯』って書いてたんです!! でも、それがいつのまにか変わってて......言い訳してる訳じゃないんです!! このことはできれば警察に言わないでください...」
必死でこれまでの経緯を語り、なりふり構わず「泣き落とし」にかかる俺。
瞳はウルウル...とまではいかないが、内心泣きたいくらいだ。
「いいですけど、条件があります」
サキュバスは言った。
「なんでしょうか!?」
こうなったら、なんでも飲んでやる。
「それは...」
そして、サキュバスの口から放たれた言葉に、耳を疑った。
数分後...。
露天風呂で、混浴中。
Feat、質問攻め。
しかも、背部に左右密着された上で。
既にシンボルはギンギンで、いつ気づかれてもおかしくない。
「お兄さんはどこから来たの?」
「...俺はX県に住んでてね...」
「わぁ、一緒だぁ♥」
ムニッ。
サキュバスの胸の谷間に右腕が埋まる。
「職業は?」
「...結構有名なホテルの厨房でシェフをやってるよ」
「すごーい♥」
ポヨン。
左腕がエルフの胸の谷間に埋まった。
「どれくらいここにいるの?」
「...一週間」
「おんなじだね♥」
モチッ。
首にダンピールのバストが当たる。
いろいろ茹で上がりそうになっていると、サキュバスが聞いてきた。
「おにーさん、独り身?」
「.........うん」
悔しいが、素直も答えるしかない。
「だよねー。 でなきゃ、一人で温泉宿に来ないよねぇ」
うっさいわ。
自覚しとるわ、そんなの。
「じゃあ、私たちがなってもいいですか?」
エルフが言った。
「.........何に?」
「言わなくても分かるでしょ? 鈍いなぁ...」
ダンピールがいった。
「...俺、バカだからわかんない」
「お兄さんの彼女だよ。 絶対わかってるでしょ」
サキュバスが言った。
はい、わかってます。
「私『たち』っての意味は?」
「それはもう...3人纏めて貰って♥ってこと♥」
エルフが言った。
多いっす。
本当に勘弁してください。
一日も立たず干物になるから。
どう説得するか、言葉を選んでいると、サキュバスが言った。
「...お兄さんさぁ、立場、分かってる?」
温かい湯に浸かっているはずが、悪寒に襲われた。
「立場ですか?」
「だって、ここは女湯だよ? 本来ならお兄さん、逮捕されてもおかしくないんだよ?」
「.........でも......三股はイカンダメでしょ」
「いいのよ、公認なら♥」
そう言って、ダンピールは俺の右耳をしゃぶってくる。
「ひあっ!」
「堕ちちゃえ堕ちちゃえ♥」
エルフも、左耳を咥えてきた。
アカンアカン!!!
死ぬ! 死んでしまう!!
「む〜...」
取り残されたサキュバスは不満顔だ。
だが、
「それなら...♥」
何を思ったのか、ギンギンになっている股間に手を伸ばしてきた。
「!!!!!!!」
やっぱり気づかれてた!
湯の中で、サキュバスはシンボルをしごいてきた。
両耳と両腕、首、シンボルからの刺激に耐えられない。
そして俺は、鼻から赤い情熱を吹き出し、同時に湯面に突っ伏した。
「キャァァァ!! 大丈夫!?」
「死なないで!!」
「意識をしっかり持って!!」
彼女たちが、そう叫ぶ中、俺は本格的に意識を失った。
どれくらい時間が経っただろう。
俺は不思議な感覚の中、目を覚ました。
「大丈夫?」
エルフが団扇でパタパタ仰ぎながら、聞いてきた。
サキュバスとダンピールも心配そうだ。
「大丈夫...だと思う。 ...で、ここは?」
「私たちの部屋」
「君たちの...ん?」
気づけば、俺は脱衣所で脱いだ浴衣を着ていた。
おそらく、彼女たちが着せてくれたのだろう。
だが、俺の下着類が、部屋の隅に放置されているので、ノーパン確定だ。
そして、問題は...
「なんで、腕縛ってるんですか?」
俺の頭の上の位置で、腕が浴衣の帯で拘束されていた。
「えっちなことする準備♥」
ダンピールが言いながら、自分の浴衣を脱いでいく。
サキュバスとエルフもそれに続き、あっという間に三人の美女が全裸になった。
「ばっ、馬鹿言うな! さっさと服着ろ!!」
思わず、素の口調が出る。
「えー、ヤろうよ?」
「ヤらせろ」
「ヤるぞ。 けってーい!!」
やだ、この子達えらく強引......!
「さーて、まずは帯を...」
エルフは帯に手を掛けて、剥ぎ取った。
そして、サキュバスが、浴衣をバッと左右に開く。
「キャァァァァァ!!!」
思わず、生娘みたいなリアクションが飛び出る。
「そんな処女みたいなリアクションしなくても...」
「処女はこっちだよ...」
「三人分の処女もらえるんだから幸せなのにねぇ...」
ツッコミと同時に、さらりと重要なセリフを吐く三人。
「まだ間にあう!! 考え直せ!!」
早まらないよう、説得しようとするも、
「嫌よ。 じゃあ、いただきまーす...」
「いただきまーす」
完全に無駄だったようで、エルフとダンピールが、天井に向かってそそり立つシンボルを舐め始めた。
「フォォッ!?」
そして、あぶれたと思われたサキュバスは、俺の頭を持ち上げると、
「はーい、チュウチュウしましょうね♥」
「んっーーーー!!」
その桜色の固くなった乳首を、口にねじ込んできた。
そして、サキュバスが魔法を使った。
「『ミルク』、ナーウ」
詠唱を終えるや否や、サキュバスの乳首から母乳が出てきた。
「!!!」
思わず吸ってしまうと、頭がぼーっとしてくる。
おまけに、体が熱くなってきた。
シンボルの硬度も、増したように思える。
母乳を啜っていると、サキュバスは言った。
「サキュバスの体液は、人間が飲むと、ちょっとした媚薬と強壮剤の効果を発揮するんですよ...♥」
飽和した思考回路に、もう言葉は届かず、サキュバスの母乳を吸うことしかできなかった。
「れろっ、ちゅぱ......赤ちゃんみたいにチュパチュパして...♥」
シンボルから口を離し、ダンピールが苦笑した。
「ちゅぽっ...ねぇ、そろそろ入れたいんだけど」
エルフも口を離して言った。
サキュバスは母乳を飲ませながら言った。
「そうね、誰からにする? 私はおっぱい飲ませてるから最後でいいよ」
エルフは言った。
「私からでいい?」
「「どーぞどーぞ」」
「じゃあ、チンポ...いただきまーす♥」
エルフは興奮した様子で、腰を浮かせて俺の陰茎がずれずに挿入するように狙いを定め、腰を下ろした。
プツリと何かを貫いた感覚と共に一筋の血が流れるも、彼女はむしろ蕩けた顔を浮かべ、更にシンボルを飲み込んでいく。
彼女の膣内はじゅるじゅると俺のモノを搾り取るように蠢きつつも奥へ奥へと導いてくる。
俺は性に特化した魔物娘の性器から浴びせられる刺激に圧倒され、乳首を離し、声にならない声を上げた。
子宮口は、精液の出口である尿道口を捕らえて離そうとせず、シンボルの脈動に合わせ、絡みつくような動きで、肉棒を溶かすように包み、射精を促す。
俺は快楽に翻弄され、頭が真っ白になりそうなほどに高まった絶頂を迎えた。
ただひたすらに、エルフの胎内に、どくどくと精液を吐き出した。
精を放つたびに、肉棒を責め立てる膣の蠢きは激しく、無数の肉襞が隙間無く絡みついてくき、射精の勢いは弱まっていくどころかさらに強まって、終わる様子を見せない。
本当に終わるのかと思われた絶頂も、普段の何倍もの時間を経て終わりを迎える。
射精の脈動はだんだんと弱まって、快楽の波がゆっくりと引いていった。
「はぁ...はぁ...気持ち...よかったぁ♥」
そう言ってエルフは、俺の顔をサキュバスから借りると、唇を奪った。
数十秒キスを続けると、満足したのか、腰を上げてシンボルを引き抜いた。
「......」
その様子から、彼女は大分余裕があるらしい。
だが、こっちはやや干物に近い。
おそらく、俺の目からハイライトは消えている。
「はぁい、もう一回チュパチュパしましょうね♥」
サキュバスが乳首を差し出してくる。
何かを考える余裕もなく、出された乳首に吸い付いた。
「コクッ...コクッ...」
母乳を啜っていると、半分萎えていた肉棒が蘇る。
それを見て、
「さぁて、次はボクだよぉ...」
妖艶な笑みを浮かべ、ダンピールがシンボルの上に陣取った。
そして、
「さぁ、いくよ……ん……!」
ゆっくりと腰を下ろし、俺の肉棒を膣内へと侵入させた。
そして、にちゃりと粘液がこすれる音をたてながら、一気に腰を下ろした。
「う......あっ! あぁぁぁぁぁぁ......ッ♥」
彼女のナカも、肉棒が溶けてしまいそうな程に熱く、膣口から子宮口までの全てが一体となって蠢き、肉棒にたまらない刺激を与えてくる。
さらに、奥へ奥へと、肉棒が引きずりこまれるような気さえしてしまう。
「はっ、アァッ...動かなきゃ...!!」
そして、更なる快楽を求め、ダンピールは腰を振り、肉棒を嬲り始める。
ダンピールはガンガン膣で肉棒を擦りたて、一往復するごとに、股から鮮血を流しながら、騎乗位で俺の体を貪る。
乳首を吸う余裕も無く、歯を食いしばって、腰の上で荒れ狂う暴虐に耐える。
が、それも長くは続かず、絶頂を迎えた。
ダンピールは、最後の一滴まで子宮の奥へと注ぎ込もうと、腰を押し付ける。
快楽に溜まりかねているのか脇腹と腹筋が僅かに波打つ。
最後に、夢見心地でダンピールは深い息をついた。
「あふっ...気持ちよかったぁ...最ッ..高ッ...」
そして射精を終えた俺に、エルフと同じようにキスをした。
「さぁーて、最後は私の番ねぇ...♥」
俺の肉棒を、サキュバスは自分の秘所にあてがうと、一気に腰を落とす。
処女膜を突き破り子宮口に先端が当たった。
サキュバスは跳ねるように腰を上下に動かし、俺の愚息を膣肉で搾るように擦っていく。
腰を打ちつけるたびに結合部からはにちゃにちゃとイヤラシイ音が響き渡る。
思考が快楽で朦朧とする中、
「私たちにも構ってよぉ...」
「完全に忘れてたでしょ」
エルフとダンピールが、俺の口元に乳房を寄せてきた。
この時、俺は何を思ったか、同時に二人の乳首を加えた。
「あふっ!! 一度に二人分...ッ♥」
「もうっ...欲張りなんだから...ッ♥」
サキュバスと違い、母乳を出す魔法は使わなかったため、出るものは出なかった。
だが俺は、夢中で二人の乳首を吸っていた。
「む〜...」
一方のサキュバスは不満そうだ。
そりゃそうだ。
自分の番だというのに、俺の意識を二人に持って行かれたのだから。
「しょうがないっ...わねっ...! なら...!」
サキュバスは、腰の振りをさらに強めた。
容赦ない行動と、二人に勝るとも劣らない膣内の感触に我慢が効かず、俺は精液を迸らせた。
「あぁっ...遺伝子...出てるぅ...」
ドクドクと子宮に流れ込む快楽で、サキュバスの顔は完全にだらけきっていた。
吸われてる...。
そう思っていると、
「ねぇ〜、早く交代してよぉ」
「本格的に出なくなるまでヤるんだからね」
「......はぁ〜い」
2週目に突入するらしい。
三度の射精を経て、全身に力が入りにくくなっていた。
これを聞いて、本格的に力が入らなくなった。
精の放出が終わると同時に、俺の意識は現実世界から遠のいていった。
3ヶ月後。
「オーダー、ローストビーフのベジタブル添え三つ、ポークの串焼き一つ、チキンサンドイッチ一つ、ストロベリーパイ一つ。 頼んだわよ、あなた」
「牛と草三つ、串に刺した豚に、パンに挟んだ鶏と、十個でもイチゴのパイね。 オーケー」
俺はまず、あの日出会った三人と籍を入れた。
そして、仕事と家庭を両立するために、勤めていたホテルの厨房を辞め、独立。
自分の地元に、小さなレストランを開いた。
従業員は俺、サキュバス、エルフ、ダンピールの計4人。
式を挙げるための軍資金を貯金している。
スタッフに加え、料理は俺、サキュバスが買い出し、エルフがバイトなどの人事系、ダンピールが経理を兼任している。
今では人魔問わず、いろいろな客がやって来る。
来た客の大半が良縁に恵まれることから、妙なパワースポット扱いされているが。
そして、料理ができたことを、ベルを鳴らして知らせる。
「あがったよ」
「はーい、今行くわ」
エルフがお客に運ぶために来た。
「...幸せそうね」
「いろいろ充実してるからね。 作った料理を『おいしい』って言ってもらえるし、こんなにお客は来るし。 ......なにより、こんなに可愛い奥さんが三人もいるしね」
「まぁ♥」
エルフはうふふと笑う。
「ちょっとー、二人だけなんて許さないわよー」
「だーりん、今晩、十回多くシテくれなかったら、怒るわよ?」
「待て待て! 死ぬ! 死んじゃう! 干からびる!!」
そんなやりとりをしていると、
「あーあ、またやってるよ」
「こんなんだから、パワースポットになってるかもね」
「コーヒー、ブラックで一つくれ」
「こっちもー」
客が騒ぎ出した。
「「「「はーい、ただいま」」」」
またブラックコーヒーか。
コーヒーだけ、やけに売れるんだよな...。
げっ、もう残り少ないや。
また買ってきてもらわないと...。
そう思って俺は、サキュバスに急いでコーヒー豆を買ってくるよう頼むのだった。
俺、紀伊ヨシヒトは敷居のたかそうな温泉宿の前に立っている。
俺の趣味は、ネットで口コミを調べて、日本各地の温泉を巡ることだ。
おい、ジジくさいって言った奴、怒らないから出てこい。
ていうか、ネットを使う時点でジジ臭くないだろ。
まぁ、それはともかくだ。
今、東北の温泉街にある、『幻蕩温泉』という温泉宿にいる。
クチコミサイトで、
ここは、温泉街の中でも、知る人ぞ知る、天にも登る気持ちよさの宿なんです!
ですが、『知る人ぞ知る』というせいか、あんまりお客さんいないんですよね...。
残念です...。
と書かれていた。
『知る人ぞ知る』というフレーズに弱い俺は、すぐさま荷物を纏めて直行。
そして、今に至る。
玄関を写真に収めていると、
「ようこそいらっしゃいましたぁ」
稲荷の女将が出迎えた。
「へぇ〜、魔物娘の経営する宿なんですか」
「そうですよぉ。 珍しいですかぁ?」
「ですねぇ、客として来ている方は見たことありますけど、自分で経営しているパターンは見たことないっす」
「ふふっ♪ そうですか。 まぁ、立ち話もなんですから、ささっ、中へ中へ」
「はーい」
俺は、女将に連れられるまま、宿の中へと入っていった。
「不躾な話になるんですが、お客さん来てます?」
中に入るや否や、この質問をぶつけてしまった。
「...まぁ...確かにあんまり有名どころじゃないですけど、そこそこ来てますよ?」
「へぇ」
「ただ、今日はお兄さんの他に、3人しかいませんねぇ」
「...それって人間ですか?」
「全員、魔物娘ですねぇ」
「.............やっぱり」
ちょっと、地雷を踏みかけてるかも。
まだ、人生の墓場行きにはなりたくない。
そうこうしているうちに、
「ここがお客様のお部屋、『月地の間(げっち)』になりますぅ」
自分の部屋へ着いた。
「げっち...ですか...」
ゲッツでも、ガッツでもない、『げっち』である。
なぜか、「下衆なエッチ」というイメージが湧いたのは俺だけだろうか。
「なんかぁ、変なこと考えてません?」
「......いいえ、特には」
女将さんの鋭い問いに、即答ですっとぼける。
訝しんでいる様子の女将さんだったが、
「......まぁ、いいですわぁ」
そして、
「お客さんにご注意をしておきます。 よぉく聞いてくださいね?」
妙に意地の悪そうな笑みを浮かべて注意事項を切り出した。
「はい、なんでしょう?」
ちょっとビビリながら聞く。
「ここはお風呂は共同浴場しかありません。 そんで、『男湯』と『女湯』は絶対に間違えないでくださいねぇ? もし、間違えても、うちらは一切、一切責任を負いませんので、悪しからず」
「わかりました」
男湯と女湯間違えるな...ねぇ。
間違えんだろ。
間違えるとしたら、よほどのアホだ。
もしくは、確信犯の変態だな。
「本当に分かりました?」
「本当に分かりました」
「本当に本当ですね?」
「本当に本当です」
「日本刀?」
「......」
何を言ってるんですか、あなたは。
「ホントのホントに分かりました! はい!」
パチン。
手を叩き、「この話は終わり」の旨を伝える。
「...分かりました、ではごゆるりと...」
女将さんは、部屋を出てった。
だが、俺は気付かなかった。
女将さんの口が、ニタリと歪んでいたことに。
さっそく荷物を置き、宿のロゴの入った浴衣を着て、風呂へ行くことに。
風呂と思われる場所の前には、
青い暖簾で『男湯』、
赤い暖簾で『女湯』と書いていた。
これで間違えるならアホだわ。
アホ以外の何物でもないわ。
そう考えながら、俺は青い暖簾の『男湯』と書かれて方へ入った。
浴衣を脱ぎ、腰にタオルと巻き、いざ出陣。
まず、掛け湯。
内湯を素通りし、露天風呂へ。
「ほぉ、雪見露天ですか」
露天風呂の周囲が見事な雪景色だった。
いいねぇいいねぇ、風流だねぇ。
さっそく、お湯に浸かる。
「フィ〜〜〜〜......来たかいがあったねぇ...」
お湯に浸かりながら、雪景色を堪能していると、内風呂の方から、複数人の女性の声が聞こえてくる。
「まさか......まさか!!」
気づいた時には、もう遅かった。
「おー、イイ感じじゃん」
「んー? 男の人がいるー」
「もしかして、俗に言うヘンタイさん?」
タオルも巻かず、サキュバス、エルフ、ダンピールが入ってきた。
「ちっ、違います! 俺は変態じゃないです!! つーか、ここ男湯でしょ!!」
「えー? 違いますよ?」
「嘘でしょっ!?」
「だったら、見てくればいいじゃないですか」
「はっ? 上等だよ...ッ!!」
勢いよく湯船から立ち上がると、男のシンボルが彼女たちの目の前に晒される。
「「「ゴクッ」」」
生唾を飲む三人を見て我に返り、
「きっ...きっ...キャァァァァァ!!!」
激しい水しぶきを上げ、湯船の中へ戻ってしまった。
「いや、逆でしょ」
エルフがツッこむ。
分かっとるわ。
水面ギリギリでタオルを腰に巻き、暖簾を見に行く。
そこには、赤い暖簾で、『女湯』と書いてあった。
全身から、血の気が引いていく。
ここで、女将さんの言葉と様子を思い出す。
『男湯』と『女湯』は絶対に間違えないでくださいねぇ?
もし、間違えても、うちらは一切、一切責任を負いませんので、悪しからず
そして、口がニタリと歪んでいた。
こういうことかァァァァァァッ!!!
つーかけしかけたろ!!!
「やっぱり、女湯でしたね」
ニヤニヤしながら、ダンピールが言った。
「.........さっ、さっきまでは『男湯』って書いてたんです!! でも、それがいつのまにか変わってて......言い訳してる訳じゃないんです!! このことはできれば警察に言わないでください...」
必死でこれまでの経緯を語り、なりふり構わず「泣き落とし」にかかる俺。
瞳はウルウル...とまではいかないが、内心泣きたいくらいだ。
「いいですけど、条件があります」
サキュバスは言った。
「なんでしょうか!?」
こうなったら、なんでも飲んでやる。
「それは...」
そして、サキュバスの口から放たれた言葉に、耳を疑った。
数分後...。
露天風呂で、混浴中。
Feat、質問攻め。
しかも、背部に左右密着された上で。
既にシンボルはギンギンで、いつ気づかれてもおかしくない。
「お兄さんはどこから来たの?」
「...俺はX県に住んでてね...」
「わぁ、一緒だぁ♥」
ムニッ。
サキュバスの胸の谷間に右腕が埋まる。
「職業は?」
「...結構有名なホテルの厨房でシェフをやってるよ」
「すごーい♥」
ポヨン。
左腕がエルフの胸の谷間に埋まった。
「どれくらいここにいるの?」
「...一週間」
「おんなじだね♥」
モチッ。
首にダンピールのバストが当たる。
いろいろ茹で上がりそうになっていると、サキュバスが聞いてきた。
「おにーさん、独り身?」
「.........うん」
悔しいが、素直も答えるしかない。
「だよねー。 でなきゃ、一人で温泉宿に来ないよねぇ」
うっさいわ。
自覚しとるわ、そんなの。
「じゃあ、私たちがなってもいいですか?」
エルフが言った。
「.........何に?」
「言わなくても分かるでしょ? 鈍いなぁ...」
ダンピールがいった。
「...俺、バカだからわかんない」
「お兄さんの彼女だよ。 絶対わかってるでしょ」
サキュバスが言った。
はい、わかってます。
「私『たち』っての意味は?」
「それはもう...3人纏めて貰って♥ってこと♥」
エルフが言った。
多いっす。
本当に勘弁してください。
一日も立たず干物になるから。
どう説得するか、言葉を選んでいると、サキュバスが言った。
「...お兄さんさぁ、立場、分かってる?」
温かい湯に浸かっているはずが、悪寒に襲われた。
「立場ですか?」
「だって、ここは女湯だよ? 本来ならお兄さん、逮捕されてもおかしくないんだよ?」
「.........でも......三股はイカンダメでしょ」
「いいのよ、公認なら♥」
そう言って、ダンピールは俺の右耳をしゃぶってくる。
「ひあっ!」
「堕ちちゃえ堕ちちゃえ♥」
エルフも、左耳を咥えてきた。
アカンアカン!!!
死ぬ! 死んでしまう!!
「む〜...」
取り残されたサキュバスは不満顔だ。
だが、
「それなら...♥」
何を思ったのか、ギンギンになっている股間に手を伸ばしてきた。
「!!!!!!!」
やっぱり気づかれてた!
湯の中で、サキュバスはシンボルをしごいてきた。
両耳と両腕、首、シンボルからの刺激に耐えられない。
そして俺は、鼻から赤い情熱を吹き出し、同時に湯面に突っ伏した。
「キャァァァ!! 大丈夫!?」
「死なないで!!」
「意識をしっかり持って!!」
彼女たちが、そう叫ぶ中、俺は本格的に意識を失った。
どれくらい時間が経っただろう。
俺は不思議な感覚の中、目を覚ました。
「大丈夫?」
エルフが団扇でパタパタ仰ぎながら、聞いてきた。
サキュバスとダンピールも心配そうだ。
「大丈夫...だと思う。 ...で、ここは?」
「私たちの部屋」
「君たちの...ん?」
気づけば、俺は脱衣所で脱いだ浴衣を着ていた。
おそらく、彼女たちが着せてくれたのだろう。
だが、俺の下着類が、部屋の隅に放置されているので、ノーパン確定だ。
そして、問題は...
「なんで、腕縛ってるんですか?」
俺の頭の上の位置で、腕が浴衣の帯で拘束されていた。
「えっちなことする準備♥」
ダンピールが言いながら、自分の浴衣を脱いでいく。
サキュバスとエルフもそれに続き、あっという間に三人の美女が全裸になった。
「ばっ、馬鹿言うな! さっさと服着ろ!!」
思わず、素の口調が出る。
「えー、ヤろうよ?」
「ヤらせろ」
「ヤるぞ。 けってーい!!」
やだ、この子達えらく強引......!
「さーて、まずは帯を...」
エルフは帯に手を掛けて、剥ぎ取った。
そして、サキュバスが、浴衣をバッと左右に開く。
「キャァァァァァ!!!」
思わず、生娘みたいなリアクションが飛び出る。
「そんな処女みたいなリアクションしなくても...」
「処女はこっちだよ...」
「三人分の処女もらえるんだから幸せなのにねぇ...」
ツッコミと同時に、さらりと重要なセリフを吐く三人。
「まだ間にあう!! 考え直せ!!」
早まらないよう、説得しようとするも、
「嫌よ。 じゃあ、いただきまーす...」
「いただきまーす」
完全に無駄だったようで、エルフとダンピールが、天井に向かってそそり立つシンボルを舐め始めた。
「フォォッ!?」
そして、あぶれたと思われたサキュバスは、俺の頭を持ち上げると、
「はーい、チュウチュウしましょうね♥」
「んっーーーー!!」
その桜色の固くなった乳首を、口にねじ込んできた。
そして、サキュバスが魔法を使った。
「『ミルク』、ナーウ」
詠唱を終えるや否や、サキュバスの乳首から母乳が出てきた。
「!!!」
思わず吸ってしまうと、頭がぼーっとしてくる。
おまけに、体が熱くなってきた。
シンボルの硬度も、増したように思える。
母乳を啜っていると、サキュバスは言った。
「サキュバスの体液は、人間が飲むと、ちょっとした媚薬と強壮剤の効果を発揮するんですよ...♥」
飽和した思考回路に、もう言葉は届かず、サキュバスの母乳を吸うことしかできなかった。
「れろっ、ちゅぱ......赤ちゃんみたいにチュパチュパして...♥」
シンボルから口を離し、ダンピールが苦笑した。
「ちゅぽっ...ねぇ、そろそろ入れたいんだけど」
エルフも口を離して言った。
サキュバスは母乳を飲ませながら言った。
「そうね、誰からにする? 私はおっぱい飲ませてるから最後でいいよ」
エルフは言った。
「私からでいい?」
「「どーぞどーぞ」」
「じゃあ、チンポ...いただきまーす♥」
エルフは興奮した様子で、腰を浮かせて俺の陰茎がずれずに挿入するように狙いを定め、腰を下ろした。
プツリと何かを貫いた感覚と共に一筋の血が流れるも、彼女はむしろ蕩けた顔を浮かべ、更にシンボルを飲み込んでいく。
彼女の膣内はじゅるじゅると俺のモノを搾り取るように蠢きつつも奥へ奥へと導いてくる。
俺は性に特化した魔物娘の性器から浴びせられる刺激に圧倒され、乳首を離し、声にならない声を上げた。
子宮口は、精液の出口である尿道口を捕らえて離そうとせず、シンボルの脈動に合わせ、絡みつくような動きで、肉棒を溶かすように包み、射精を促す。
俺は快楽に翻弄され、頭が真っ白になりそうなほどに高まった絶頂を迎えた。
ただひたすらに、エルフの胎内に、どくどくと精液を吐き出した。
精を放つたびに、肉棒を責め立てる膣の蠢きは激しく、無数の肉襞が隙間無く絡みついてくき、射精の勢いは弱まっていくどころかさらに強まって、終わる様子を見せない。
本当に終わるのかと思われた絶頂も、普段の何倍もの時間を経て終わりを迎える。
射精の脈動はだんだんと弱まって、快楽の波がゆっくりと引いていった。
「はぁ...はぁ...気持ち...よかったぁ♥」
そう言ってエルフは、俺の顔をサキュバスから借りると、唇を奪った。
数十秒キスを続けると、満足したのか、腰を上げてシンボルを引き抜いた。
「......」
その様子から、彼女は大分余裕があるらしい。
だが、こっちはやや干物に近い。
おそらく、俺の目からハイライトは消えている。
「はぁい、もう一回チュパチュパしましょうね♥」
サキュバスが乳首を差し出してくる。
何かを考える余裕もなく、出された乳首に吸い付いた。
「コクッ...コクッ...」
母乳を啜っていると、半分萎えていた肉棒が蘇る。
それを見て、
「さぁて、次はボクだよぉ...」
妖艶な笑みを浮かべ、ダンピールがシンボルの上に陣取った。
そして、
「さぁ、いくよ……ん……!」
ゆっくりと腰を下ろし、俺の肉棒を膣内へと侵入させた。
そして、にちゃりと粘液がこすれる音をたてながら、一気に腰を下ろした。
「う......あっ! あぁぁぁぁぁぁ......ッ♥」
彼女のナカも、肉棒が溶けてしまいそうな程に熱く、膣口から子宮口までの全てが一体となって蠢き、肉棒にたまらない刺激を与えてくる。
さらに、奥へ奥へと、肉棒が引きずりこまれるような気さえしてしまう。
「はっ、アァッ...動かなきゃ...!!」
そして、更なる快楽を求め、ダンピールは腰を振り、肉棒を嬲り始める。
ダンピールはガンガン膣で肉棒を擦りたて、一往復するごとに、股から鮮血を流しながら、騎乗位で俺の体を貪る。
乳首を吸う余裕も無く、歯を食いしばって、腰の上で荒れ狂う暴虐に耐える。
が、それも長くは続かず、絶頂を迎えた。
ダンピールは、最後の一滴まで子宮の奥へと注ぎ込もうと、腰を押し付ける。
快楽に溜まりかねているのか脇腹と腹筋が僅かに波打つ。
最後に、夢見心地でダンピールは深い息をついた。
「あふっ...気持ちよかったぁ...最ッ..高ッ...」
そして射精を終えた俺に、エルフと同じようにキスをした。
「さぁーて、最後は私の番ねぇ...♥」
俺の肉棒を、サキュバスは自分の秘所にあてがうと、一気に腰を落とす。
処女膜を突き破り子宮口に先端が当たった。
サキュバスは跳ねるように腰を上下に動かし、俺の愚息を膣肉で搾るように擦っていく。
腰を打ちつけるたびに結合部からはにちゃにちゃとイヤラシイ音が響き渡る。
思考が快楽で朦朧とする中、
「私たちにも構ってよぉ...」
「完全に忘れてたでしょ」
エルフとダンピールが、俺の口元に乳房を寄せてきた。
この時、俺は何を思ったか、同時に二人の乳首を加えた。
「あふっ!! 一度に二人分...ッ♥」
「もうっ...欲張りなんだから...ッ♥」
サキュバスと違い、母乳を出す魔法は使わなかったため、出るものは出なかった。
だが俺は、夢中で二人の乳首を吸っていた。
「む〜...」
一方のサキュバスは不満そうだ。
そりゃそうだ。
自分の番だというのに、俺の意識を二人に持って行かれたのだから。
「しょうがないっ...わねっ...! なら...!」
サキュバスは、腰の振りをさらに強めた。
容赦ない行動と、二人に勝るとも劣らない膣内の感触に我慢が効かず、俺は精液を迸らせた。
「あぁっ...遺伝子...出てるぅ...」
ドクドクと子宮に流れ込む快楽で、サキュバスの顔は完全にだらけきっていた。
吸われてる...。
そう思っていると、
「ねぇ〜、早く交代してよぉ」
「本格的に出なくなるまでヤるんだからね」
「......はぁ〜い」
2週目に突入するらしい。
三度の射精を経て、全身に力が入りにくくなっていた。
これを聞いて、本格的に力が入らなくなった。
精の放出が終わると同時に、俺の意識は現実世界から遠のいていった。
3ヶ月後。
「オーダー、ローストビーフのベジタブル添え三つ、ポークの串焼き一つ、チキンサンドイッチ一つ、ストロベリーパイ一つ。 頼んだわよ、あなた」
「牛と草三つ、串に刺した豚に、パンに挟んだ鶏と、十個でもイチゴのパイね。 オーケー」
俺はまず、あの日出会った三人と籍を入れた。
そして、仕事と家庭を両立するために、勤めていたホテルの厨房を辞め、独立。
自分の地元に、小さなレストランを開いた。
従業員は俺、サキュバス、エルフ、ダンピールの計4人。
式を挙げるための軍資金を貯金している。
スタッフに加え、料理は俺、サキュバスが買い出し、エルフがバイトなどの人事系、ダンピールが経理を兼任している。
今では人魔問わず、いろいろな客がやって来る。
来た客の大半が良縁に恵まれることから、妙なパワースポット扱いされているが。
そして、料理ができたことを、ベルを鳴らして知らせる。
「あがったよ」
「はーい、今行くわ」
エルフがお客に運ぶために来た。
「...幸せそうね」
「いろいろ充実してるからね。 作った料理を『おいしい』って言ってもらえるし、こんなにお客は来るし。 ......なにより、こんなに可愛い奥さんが三人もいるしね」
「まぁ♥」
エルフはうふふと笑う。
「ちょっとー、二人だけなんて許さないわよー」
「だーりん、今晩、十回多くシテくれなかったら、怒るわよ?」
「待て待て! 死ぬ! 死んじゃう! 干からびる!!」
そんなやりとりをしていると、
「あーあ、またやってるよ」
「こんなんだから、パワースポットになってるかもね」
「コーヒー、ブラックで一つくれ」
「こっちもー」
客が騒ぎ出した。
「「「「はーい、ただいま」」」」
またブラックコーヒーか。
コーヒーだけ、やけに売れるんだよな...。
げっ、もう残り少ないや。
また買ってきてもらわないと...。
そう思って俺は、サキュバスに急いでコーヒー豆を買ってくるよう頼むのだった。
15/07/03 07:18更新 / 妖怪人間ボム