魔物娘流・自殺者リサイクル法
(もうダメだ...首を吊るしか...道はない...)
今際の際のセリフが五七五調というのも締まらないが、そんな贅沢は言えない。
俺は、もう死ぬしかないのだ。
専門学校から新卒採用で就職したものの、そこはブラック企業だった。
退職届を出そうにも、握りつぶされて受理してくれず、それからも酷使され続けた。
結果、もう何もかも嫌になり、首を吊ろうとしているのだ。
「お父さん、お母さん、弟たちよ......本当にゴメンよ...」
そう言って、台に上り、輪に首を掛けようとし......た途端、背後で巨大なファスナーのようなものが開いた音がした。
慌てて背後を見ると、数人の黒装束の異形の女たちがワラワラと飛び出してきた。
直感で「こいつらは自殺を止めに来た」ことを悟った俺は、急いで首を吊ろうとした。
だが、トカゲのような特徴を持った女が振るった剣で、縄は切られてしまい、俺もバランスを崩し、床へ転落した。
次に万が一にとポケットに入れていたカッターナイフで首を掻き切ろうとするも、赤肌の鬼のような女があっという間にカッターを取り上げてしまった。
だが、最後の悪あがきで舌を噛み切って死のうとするも、瞬間、猿轡をはめられて防がれてしまった。
あとはもうされるがまま、全身をロープでぐるぐる巻きにされてしまった。
そして、緑色の鬼女に担がれるがまま、俺は時空のファスナーの向こう側へと拉致されていった。
俺は、考えるのをやめ、意識を放り出したのだった......。
どれだけ時間が経っただろうか。
目を覚ますと、上半身裸にされ、牢屋に放り込まれていた。
牢屋は個室製で、鉄格子の向こう側には、何十人もの男たちが囚われていた。
「出せーっ!! 死なせてくれーっ!!」
「なぜだーっ!! 舌が噛み切れねぇーっ!!」
そして、大半が大騒ぎしている。
そこに、数人の異形の女たちがやってきた。
その中の一人......白髪赤目の悪魔のような女が口を開いた。
「ゴホン、私たちは『魔王軍設立自殺者リサイクル機構』という組織の者です。あなたたちは今後、自殺者リサイクル法に基づき、魔物娘の夫になっていただきます」
群衆からは
「どういうことだ!」
「死なせろ!」
などと、次々と野次が飛ぶ。
「お気持ちはわかりますが、聞けませんね。なにせ、あなたたちは、『ひとつしかない命を粗末にした』ので」
その一言に、シーンと静まり返る牢屋。
女は続けた。
「さて、次に魔物娘がどういう存在かをご説明しておきましょう。魔物娘とは...」
男たちは、その説明に耳を疑った。
それが本当だとすれば、男にとって、とても都合がいい存在だからだ。
「それと最後に二つ、説明をしておきます。一つは、みなさんの背中に魔法を刻み、二度と自殺できないようにしてあります。よって、自殺しようとすれば、妨害魔法が働きますし、未来のお嫁さんたちにも連絡が行きます」
「なんだってーっ!?」
「マジかよーっ!!」
「そして、もう一つ。皆さんは競売......オークション形式で、妻候補へと競り落とされることになります。基本、みなさんの意思は尊重されないと思ってくださーい」
「マジかよーっ!!」
一人が悲鳴を上げたその時、ジリリリリリリリンッ!!! とベルが鳴り響く。
「おや......オークションの時間が始まったようですね......では、後は任せたわ〜」
そう言って、白髪悪魔は去ってしまった。
白髪悪魔が去ると同時に、数人の魔物娘で一人の牢屋を開けて、男を牢獄の外へ引っ張り出しにかかった。
「俺はッ!! 死にたいんだーッ!! それをッ、無理やり結婚だなんてーッ!!」
叫びながら暴れるも、人外の腕力には勝てず、ズルズルと連行されていった。
明日は我が身......笑える状況ではなかった。
「おい、出ろ」
「.........はーい」
とうとう俺の番がやってきた。
緑肌・蜘蛛下半身の鬼みたいな魔物娘に引っ張られて、牢屋を出る。
そして、後ろ手に縛られて、連れて行かれた先は......。
「はーい、次はぁ、22歳の童貞!! いいですかー? 童貞ですよー? 何色にも染まっていない童貞ですよー?」
ステージ上で、青い鳥の翼の魔物娘が叫んでいる。
頼むから童貞童貞連呼するな...。
つーか、どこ情報だそれ。
「では、金貨50枚から開始だぁ!!」
そう言って、司会は木槌とそれで叩く朱肉みたいなやつをガンガン叩く。
そして、さっそく値段が釣り上がった。
「金貨100枚!!」
「130枚!!」
おぉ......なんかとんでもない値段になっとる......。
「180枚!!」
「185!!」
......なんか、金髪の女子中○生みたいのと、下半身白馬で一本角の美人さんが粘っとるな...。
「210!!」
「!!!!!.........」
女子○学生の一声に、一本角が黙る。
「210!? はーい、落札!!」
司会は木槌と叩く奴をガンガン叩いた。
「おい、来い!!」
続いて、俺はスタッフに引っ張られて、舞台裏へ消えた...。
「で、この方がお前を落札した、お前の未来の妻だ。いいな?」
「よろしくな!! アタシは キャロル・フォン・アルベルティーナだ!! 種族はヴァンパイアだ!!」
「ちょっと落ち着け、わが娘よ......」
母親と父親、姉?になだめられながら、俺の手を握ってブンブン振っているのは、俺を落札したヴァンパイア女子中学生...キャロルだった。
キラキラ輝いている真紅の瞳と、短めのポニーテールが特徴的な、活発そうな少女だ。
「いいかー、脱走しようなんて考えるなよ? お前の位置は、この人にはリアルタイムで把握できるよう、魔法が組まれているんだからなー?」
最後の念押しをしてくるスタッフ。
わかってるよ、ここまでくれば観念する他ないわ。
一通りの説明を終わると、キャロルは俺を引きずる勢いで帰ろうとしだした。
「さぁ帰ろう!! すぐ帰ろう!! お父様お母様お姉さま早く早く!!」
「わかったわかった...」
そう言って、俺は金貨210枚で売られて、この中学生みたいなヴァンパイアの夫となってしまったのだった...。
数ヵ月後......。
「おはよー♥」
「......おはよう」
俺は、朝方にヴァンパイアの少女の抱き枕となっていた。全裸で。
俺の二の腕を枕にし、キャロルがにっこり笑っている。
彼女たちの自宅(豪邸)に連れて帰らえると、さっそくキャロルの部屋に引きずり込まれ、物凄い勢いで犯されてしまった。
そのピロートークで、
・今の魔物娘の生きる世界は、深刻な男不足であること
・なので、異世界で自殺しようとした人間=いてもいなくても変わらない人間を拉致って夫にしていること
・本来、ヴァンパイアは意地っ張りな種族なのだが、そんな悠長なことを言ってられる状況じゃないこと
・キャロルは、俺たちの世界でいう高校3年生だったこと
(童顔なので、よく中学生扱いされるらしい)
などを教えられた。
納得できるようなできないような感覚だが、まぁなんとかやっている。
職業は、完全にプータローだが。
それはさておき、あの日、たしかに俺は死のうとした。
で、失敗して、嫁ができた。
不謹慎な話だが、あの日バカをやったのが正解だったのかもしれない。
俺は全裸でしがみついてくるキャロルを抱きしめ、
今ある『命』を、一度しかない『生』を噛み締めた。
魔法で縛られていようがいなかろうが、二度と命は放り出すものか。
この子の笑顔を、曇らせぬために。
今際の際のセリフが五七五調というのも締まらないが、そんな贅沢は言えない。
俺は、もう死ぬしかないのだ。
専門学校から新卒採用で就職したものの、そこはブラック企業だった。
退職届を出そうにも、握りつぶされて受理してくれず、それからも酷使され続けた。
結果、もう何もかも嫌になり、首を吊ろうとしているのだ。
「お父さん、お母さん、弟たちよ......本当にゴメンよ...」
そう言って、台に上り、輪に首を掛けようとし......た途端、背後で巨大なファスナーのようなものが開いた音がした。
慌てて背後を見ると、数人の黒装束の異形の女たちがワラワラと飛び出してきた。
直感で「こいつらは自殺を止めに来た」ことを悟った俺は、急いで首を吊ろうとした。
だが、トカゲのような特徴を持った女が振るった剣で、縄は切られてしまい、俺もバランスを崩し、床へ転落した。
次に万が一にとポケットに入れていたカッターナイフで首を掻き切ろうとするも、赤肌の鬼のような女があっという間にカッターを取り上げてしまった。
だが、最後の悪あがきで舌を噛み切って死のうとするも、瞬間、猿轡をはめられて防がれてしまった。
あとはもうされるがまま、全身をロープでぐるぐる巻きにされてしまった。
そして、緑色の鬼女に担がれるがまま、俺は時空のファスナーの向こう側へと拉致されていった。
俺は、考えるのをやめ、意識を放り出したのだった......。
どれだけ時間が経っただろうか。
目を覚ますと、上半身裸にされ、牢屋に放り込まれていた。
牢屋は個室製で、鉄格子の向こう側には、何十人もの男たちが囚われていた。
「出せーっ!! 死なせてくれーっ!!」
「なぜだーっ!! 舌が噛み切れねぇーっ!!」
そして、大半が大騒ぎしている。
そこに、数人の異形の女たちがやってきた。
その中の一人......白髪赤目の悪魔のような女が口を開いた。
「ゴホン、私たちは『魔王軍設立自殺者リサイクル機構』という組織の者です。あなたたちは今後、自殺者リサイクル法に基づき、魔物娘の夫になっていただきます」
群衆からは
「どういうことだ!」
「死なせろ!」
などと、次々と野次が飛ぶ。
「お気持ちはわかりますが、聞けませんね。なにせ、あなたたちは、『ひとつしかない命を粗末にした』ので」
その一言に、シーンと静まり返る牢屋。
女は続けた。
「さて、次に魔物娘がどういう存在かをご説明しておきましょう。魔物娘とは...」
男たちは、その説明に耳を疑った。
それが本当だとすれば、男にとって、とても都合がいい存在だからだ。
「それと最後に二つ、説明をしておきます。一つは、みなさんの背中に魔法を刻み、二度と自殺できないようにしてあります。よって、自殺しようとすれば、妨害魔法が働きますし、未来のお嫁さんたちにも連絡が行きます」
「なんだってーっ!?」
「マジかよーっ!!」
「そして、もう一つ。皆さんは競売......オークション形式で、妻候補へと競り落とされることになります。基本、みなさんの意思は尊重されないと思ってくださーい」
「マジかよーっ!!」
一人が悲鳴を上げたその時、ジリリリリリリリンッ!!! とベルが鳴り響く。
「おや......オークションの時間が始まったようですね......では、後は任せたわ〜」
そう言って、白髪悪魔は去ってしまった。
白髪悪魔が去ると同時に、数人の魔物娘で一人の牢屋を開けて、男を牢獄の外へ引っ張り出しにかかった。
「俺はッ!! 死にたいんだーッ!! それをッ、無理やり結婚だなんてーッ!!」
叫びながら暴れるも、人外の腕力には勝てず、ズルズルと連行されていった。
明日は我が身......笑える状況ではなかった。
「おい、出ろ」
「.........はーい」
とうとう俺の番がやってきた。
緑肌・蜘蛛下半身の鬼みたいな魔物娘に引っ張られて、牢屋を出る。
そして、後ろ手に縛られて、連れて行かれた先は......。
「はーい、次はぁ、22歳の童貞!! いいですかー? 童貞ですよー? 何色にも染まっていない童貞ですよー?」
ステージ上で、青い鳥の翼の魔物娘が叫んでいる。
頼むから童貞童貞連呼するな...。
つーか、どこ情報だそれ。
「では、金貨50枚から開始だぁ!!」
そう言って、司会は木槌とそれで叩く朱肉みたいなやつをガンガン叩く。
そして、さっそく値段が釣り上がった。
「金貨100枚!!」
「130枚!!」
おぉ......なんかとんでもない値段になっとる......。
「180枚!!」
「185!!」
......なんか、金髪の女子中○生みたいのと、下半身白馬で一本角の美人さんが粘っとるな...。
「210!!」
「!!!!!.........」
女子○学生の一声に、一本角が黙る。
「210!? はーい、落札!!」
司会は木槌と叩く奴をガンガン叩いた。
「おい、来い!!」
続いて、俺はスタッフに引っ張られて、舞台裏へ消えた...。
「で、この方がお前を落札した、お前の未来の妻だ。いいな?」
「よろしくな!! アタシは キャロル・フォン・アルベルティーナだ!! 種族はヴァンパイアだ!!」
「ちょっと落ち着け、わが娘よ......」
母親と父親、姉?になだめられながら、俺の手を握ってブンブン振っているのは、俺を落札したヴァンパイア女子中学生...キャロルだった。
キラキラ輝いている真紅の瞳と、短めのポニーテールが特徴的な、活発そうな少女だ。
「いいかー、脱走しようなんて考えるなよ? お前の位置は、この人にはリアルタイムで把握できるよう、魔法が組まれているんだからなー?」
最後の念押しをしてくるスタッフ。
わかってるよ、ここまでくれば観念する他ないわ。
一通りの説明を終わると、キャロルは俺を引きずる勢いで帰ろうとしだした。
「さぁ帰ろう!! すぐ帰ろう!! お父様お母様お姉さま早く早く!!」
「わかったわかった...」
そう言って、俺は金貨210枚で売られて、この中学生みたいなヴァンパイアの夫となってしまったのだった...。
数ヵ月後......。
「おはよー♥」
「......おはよう」
俺は、朝方にヴァンパイアの少女の抱き枕となっていた。全裸で。
俺の二の腕を枕にし、キャロルがにっこり笑っている。
彼女たちの自宅(豪邸)に連れて帰らえると、さっそくキャロルの部屋に引きずり込まれ、物凄い勢いで犯されてしまった。
そのピロートークで、
・今の魔物娘の生きる世界は、深刻な男不足であること
・なので、異世界で自殺しようとした人間=いてもいなくても変わらない人間を拉致って夫にしていること
・本来、ヴァンパイアは意地っ張りな種族なのだが、そんな悠長なことを言ってられる状況じゃないこと
・キャロルは、俺たちの世界でいう高校3年生だったこと
(童顔なので、よく中学生扱いされるらしい)
などを教えられた。
納得できるようなできないような感覚だが、まぁなんとかやっている。
職業は、完全にプータローだが。
それはさておき、あの日、たしかに俺は死のうとした。
で、失敗して、嫁ができた。
不謹慎な話だが、あの日バカをやったのが正解だったのかもしれない。
俺は全裸でしがみついてくるキャロルを抱きしめ、
今ある『命』を、一度しかない『生』を噛み締めた。
魔法で縛られていようがいなかろうが、二度と命は放り出すものか。
この子の笑顔を、曇らせぬために。
15/11/18 21:12更新 / 妖怪人間ボム