こわがりな彼女と、おくびょうな僕
草木も眠る丑三つ時。夜行型の人間でないならば睡眠に就いている時間。
今夜も"彼女"は獲物を求め街を歩く。
目深な黒いフードを被り、羽織っているローブも闇に溶け込むような深い黒。
これだけでもかなり怪しい上に、彼女の手には鈍く光る鎌。
また、人間の上半身のに、馬のような四足の下半身。
彼女は『ナイトメア』。若い男性の夢の中に入り込み、精を奪うのだ。
「今日は、この人にしましょう…」
目の前には穏やかな寝息を立てている青年が一人。
彼の部屋はシンプルながら常に整頓されており、とても几帳面な印象を受ける。
ゆっくり近づいて深い眠りについているか確認する。
どうやら問題ないみたいだ。
「それじゃぁ… イタダキマス…」
---
--
-
不思議な夢を見たような気がした。
まぁ、夢ってモンは不思議ではあるんだけどさ、なんというか、こう… "リアル"だった。
思い出すだけでも夢なのか現実だったのか分からなくなるくらいに。
「うふふ♪ 初めまして、ね。かわいいボク」
そう言って目の前に立っているのは、凄く綺麗な女の人だった。
美人が夢に出てくるのは何度もあるけど、向こうがこっちを知覚して話しかけてくるなんてことは1度もなかった。
「ボクのせーえき… 私にちょうだぁい♪」
そう言って僕を押し倒し馬乗りの形になる…
その後は犯され、嫐られ、夢の中とは言え意識が無くなるくらいまでの責苦を受け続けた。
「ごちそうさま。なかなか美味しかったわよボク。また来るわね…」
彼女は闇に溶けるかのように消えていった。
-
--
---
「って言うことがあったんだ。もうかれこれ1週間は続いているかな…?」
どうにも顔色が優れず、友達に心配されて自分が見た夢のことを説明してみた。
「もげrゲフン あー… 多分『ナイトメア』にでも気に入られでもしたか?」
「ナイトメア?」
「そうだ、えーっと… たしか…」
こうして、毎晩毎晩僕を犯しているモノの手掛かりを掴んだ。
だが、聞けば聞くほど眉唾物の話だった。
夢の中に入って精を奪うって事はあったが、実は弱気な事だとか、大きな鎌を持っているだとか、まるでゲームの世界のような話を延々と聞かされた。
どれも自分が見ていた夢の出来事とは一致しない。
「あー、確かボンヤリだが「また来る」ってさ」
「そうか…」
「って、なんでそんなに詳しいのさ!」
「予習って大事だろ?」
「???」
「ハハ、まぁ気にすんな。で、実は彼女を現実世界で捕まえる方法もあるんだ」
「ははは… まっさかぁ…」
「騙されたと思って試してみろって。臆病なお前でも案外仲良くなれたりしてな!」
「臆病言うな!!」
とまぁ、僕はかなりの臆病で毎日人の顔色を窺って過ごしていたり、小さな物音にも過剰に反応してしまう気があるんだ。
さっき話していた友達も、友達と呼べるようになるまでかなり時間がかかったんだ。
そんな僕が魔物娘を捕まえる? 正直言って不安しかないが、このまま放置しているとマジで吸い殺されかねない。
覚悟を決めて言われた手順を思い出し、実行する。
手順はいたって簡単で、ナイトメアは眠っている相手に近づき、夢に入り、犯す。
つまりタヌキ寝入りをして、近づいたところで驚かせてやればいい訳だ。
今日は半日授業だったこともあり、昼寝と称して扉に背を向け丸まって眠る。
本当にこれで騙せるのだろうか。
-カチャ、パタン-
扉が開いて閉まる音。両親は仕事で不在だし、今家にいるのは自分しかいない。
-コツ… コツ…-
ゆっくりと近づいてくる足音。まさか、本当に来るとは…。
-ゴトッ-
何か重いものが床に置かれた音。 え?鎌?マジなの?
覚悟を決めて布団を跳ね上げ、近づきつつある「何か」に大喝一声。
「そこまで「はっきゃぁぁぁぁ!?」…だ?」
金縛りにあったかのように動けず、口をパクパクしている少女が目の前に。
メガネをかけ直し、現状を確認。
話に聞いていたとおり、人間の上半身に馬のような下半身。
服も闇のような黒で、彼女の足元にはまごうことなき鎌。大鎌。めっちゃ光ってる。
「うわあぁぁぁぁ!?」
こっちも驚いたさ。つーか誰だって驚くと思う。
あぁもう、今の悲鳴で彼女は完全にパニック状態に陥ってるし…
そういえば、肝試しとかでも相方がパニックになると自分は冷静でいられるとか聞いたな。
とりあえず彼女を落ち着かさなくては。
「あー… その、大声出してすまなかった。落ち着いたら言ってくれ。な?」
「は… はい。あの、もう… 大丈夫です」
「あ、ココアでもどう?寒いし暖まると思うよ?」
ナイトメアにココアを勧める僕。未だにテンパってます。
「えーっと、どうして、こんな事をし続けたか聞いてもいいかな?」
とりあえず彼女を驚かせないように優しく声をかけてみる。
「あの、その、実はですね…」
彼女はナイトメアの中でもかなりの臆病で、日々の精の摂取もままならない日もあった。
で、たまたま見つけた僕に通じるものを感じたみたいで、勇気を出して夢に侵入。
それで、上質な精の持ち主だったみたいで、殺さない程度に毎日吸い続けた。
今日の昼間に来た理由は、まさか昼寝をするとは思わなく補給のチャンスだと思った。
「…という訳なんです。ごめんなさい」
(そうだったのか… それじゃあ悪いことをしちゃったな…)
ってか、目が潤んでる。なんだか罪悪感MAX。
「わ、わ、謝らなくていいですってば」
「え、で、でも…」
「実を言うと僕も臆病でね。友達に言われなきゃ多分ずっとこのままでした」
「そうですね。ふふっ 本当に美味しかったですから」
「うわぁ、シャレにならないですって、それ」
そんなとりとめのない話を続けているとやっぱり類は友を呼ぶというか。自然と落ち着いてきた。
彼女もそう思っているような雰囲気も感じ取れた。
「「あのっ」」
見事にハモる。
「そちらからどうぞ」
「あ、あの… 実は…」
言い淀む。もしかしたら自分の予想が当たっているかも知れない。
「私、あなたの事が好きです」
「うん」
「もし、ご迷惑でなければ、一緒に居たい… です…」
「ありがとう、実は僕も同じことを言おうと思っていたんだ」
「それって…」
「うん、えっと、これからもよろしくね」
「…ありがとう、ありがとう」
言うが早いかこちらに近寄ってきて優しく抱きしめてくる。
こちらも優しく受け止め頭を撫でてみる。
(こうしてみるとあまり臆病じゃなさそうだしすぐに打ち解けそうだな)
(って、髪が… 鼻に…)
「っくしょーい!」
「わひゃぁ!?」
(訂正 もうちょっと時間がかかるね)
そんな昼下がりの1ページ。
今夜も"彼女"は獲物を求め街を歩く。
目深な黒いフードを被り、羽織っているローブも闇に溶け込むような深い黒。
これだけでもかなり怪しい上に、彼女の手には鈍く光る鎌。
また、人間の上半身のに、馬のような四足の下半身。
彼女は『ナイトメア』。若い男性の夢の中に入り込み、精を奪うのだ。
「今日は、この人にしましょう…」
目の前には穏やかな寝息を立てている青年が一人。
彼の部屋はシンプルながら常に整頓されており、とても几帳面な印象を受ける。
ゆっくり近づいて深い眠りについているか確認する。
どうやら問題ないみたいだ。
「それじゃぁ… イタダキマス…」
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不思議な夢を見たような気がした。
まぁ、夢ってモンは不思議ではあるんだけどさ、なんというか、こう… "リアル"だった。
思い出すだけでも夢なのか現実だったのか分からなくなるくらいに。
「うふふ♪ 初めまして、ね。かわいいボク」
そう言って目の前に立っているのは、凄く綺麗な女の人だった。
美人が夢に出てくるのは何度もあるけど、向こうがこっちを知覚して話しかけてくるなんてことは1度もなかった。
「ボクのせーえき… 私にちょうだぁい♪」
そう言って僕を押し倒し馬乗りの形になる…
その後は犯され、嫐られ、夢の中とは言え意識が無くなるくらいまでの責苦を受け続けた。
「ごちそうさま。なかなか美味しかったわよボク。また来るわね…」
彼女は闇に溶けるかのように消えていった。
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「って言うことがあったんだ。もうかれこれ1週間は続いているかな…?」
どうにも顔色が優れず、友達に心配されて自分が見た夢のことを説明してみた。
「もげrゲフン あー… 多分『ナイトメア』にでも気に入られでもしたか?」
「ナイトメア?」
「そうだ、えーっと… たしか…」
こうして、毎晩毎晩僕を犯しているモノの手掛かりを掴んだ。
だが、聞けば聞くほど眉唾物の話だった。
夢の中に入って精を奪うって事はあったが、実は弱気な事だとか、大きな鎌を持っているだとか、まるでゲームの世界のような話を延々と聞かされた。
どれも自分が見ていた夢の出来事とは一致しない。
「あー、確かボンヤリだが「また来る」ってさ」
「そうか…」
「って、なんでそんなに詳しいのさ!」
「予習って大事だろ?」
「???」
「ハハ、まぁ気にすんな。で、実は彼女を現実世界で捕まえる方法もあるんだ」
「ははは… まっさかぁ…」
「騙されたと思って試してみろって。臆病なお前でも案外仲良くなれたりしてな!」
「臆病言うな!!」
とまぁ、僕はかなりの臆病で毎日人の顔色を窺って過ごしていたり、小さな物音にも過剰に反応してしまう気があるんだ。
さっき話していた友達も、友達と呼べるようになるまでかなり時間がかかったんだ。
そんな僕が魔物娘を捕まえる? 正直言って不安しかないが、このまま放置しているとマジで吸い殺されかねない。
覚悟を決めて言われた手順を思い出し、実行する。
手順はいたって簡単で、ナイトメアは眠っている相手に近づき、夢に入り、犯す。
つまりタヌキ寝入りをして、近づいたところで驚かせてやればいい訳だ。
今日は半日授業だったこともあり、昼寝と称して扉に背を向け丸まって眠る。
本当にこれで騙せるのだろうか。
-カチャ、パタン-
扉が開いて閉まる音。両親は仕事で不在だし、今家にいるのは自分しかいない。
-コツ… コツ…-
ゆっくりと近づいてくる足音。まさか、本当に来るとは…。
-ゴトッ-
何か重いものが床に置かれた音。 え?鎌?マジなの?
覚悟を決めて布団を跳ね上げ、近づきつつある「何か」に大喝一声。
「そこまで「はっきゃぁぁぁぁ!?」…だ?」
金縛りにあったかのように動けず、口をパクパクしている少女が目の前に。
メガネをかけ直し、現状を確認。
話に聞いていたとおり、人間の上半身に馬のような下半身。
服も闇のような黒で、彼女の足元にはまごうことなき鎌。大鎌。めっちゃ光ってる。
「うわあぁぁぁぁ!?」
こっちも驚いたさ。つーか誰だって驚くと思う。
あぁもう、今の悲鳴で彼女は完全にパニック状態に陥ってるし…
そういえば、肝試しとかでも相方がパニックになると自分は冷静でいられるとか聞いたな。
とりあえず彼女を落ち着かさなくては。
「あー… その、大声出してすまなかった。落ち着いたら言ってくれ。な?」
「は… はい。あの、もう… 大丈夫です」
「あ、ココアでもどう?寒いし暖まると思うよ?」
ナイトメアにココアを勧める僕。未だにテンパってます。
「えーっと、どうして、こんな事をし続けたか聞いてもいいかな?」
とりあえず彼女を驚かせないように優しく声をかけてみる。
「あの、その、実はですね…」
彼女はナイトメアの中でもかなりの臆病で、日々の精の摂取もままならない日もあった。
で、たまたま見つけた僕に通じるものを感じたみたいで、勇気を出して夢に侵入。
それで、上質な精の持ち主だったみたいで、殺さない程度に毎日吸い続けた。
今日の昼間に来た理由は、まさか昼寝をするとは思わなく補給のチャンスだと思った。
「…という訳なんです。ごめんなさい」
(そうだったのか… それじゃあ悪いことをしちゃったな…)
ってか、目が潤んでる。なんだか罪悪感MAX。
「わ、わ、謝らなくていいですってば」
「え、で、でも…」
「実を言うと僕も臆病でね。友達に言われなきゃ多分ずっとこのままでした」
「そうですね。ふふっ 本当に美味しかったですから」
「うわぁ、シャレにならないですって、それ」
そんなとりとめのない話を続けているとやっぱり類は友を呼ぶというか。自然と落ち着いてきた。
彼女もそう思っているような雰囲気も感じ取れた。
「「あのっ」」
見事にハモる。
「そちらからどうぞ」
「あ、あの… 実は…」
言い淀む。もしかしたら自分の予想が当たっているかも知れない。
「私、あなたの事が好きです」
「うん」
「もし、ご迷惑でなければ、一緒に居たい… です…」
「ありがとう、実は僕も同じことを言おうと思っていたんだ」
「それって…」
「うん、えっと、これからもよろしくね」
「…ありがとう、ありがとう」
言うが早いかこちらに近寄ってきて優しく抱きしめてくる。
こちらも優しく受け止め頭を撫でてみる。
(こうしてみるとあまり臆病じゃなさそうだしすぐに打ち解けそうだな)
(って、髪が… 鼻に…)
「っくしょーい!」
「わひゃぁ!?」
(訂正 もうちょっと時間がかかるね)
そんな昼下がりの1ページ。
10/12/18 10:57更新 / コティ