弟は姉に逆らえない
お姉ちゃんと俺の仲は、悪くない方だと思う。
八歳も歳が離れてるけど、俺が今年で中学一年生になったことを自分のことみたいに喜んでくれたし、いつも誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントをくれる。お姉ちゃんが暇なときは遊んでくれるし、漫画の貸し借りだったりアニメを一緒に見てくれたりもする。
日常的にスキンシップをしたりもして、はたから見たら悪くないどころかすごく仲の良い姉弟なのかもしれない。ただ、一緒に出かけたりすると親子に見られることばっかりだ。俺の顔は父親似でお姉ちゃんの顔は母親似だから、歳の差もあって姉弟に見えないのは当然なんだけど。
そう、歳が離れているから親子に見られることも、ある。そうじゃないときだってある。
一緒にご飯を食べに行けば「カップル様用の割り引きが」とか「カップルでご来店されたお客様にはこちらのメニューも」とか言われ、手を繋いで一緒に外を歩いてるだけで知らないウィル・オ・ウィスプさんに嫉妬されたりユニコーンさんにすごい形相で舌打ちされたり、なにかと誤解されてしまう。
そうしてその度に、お姉ちゃんは少しだけ頬を赤らめて、困惑しつつも満更でもなさそうに微笑みながらこっちを見下ろしてくる。
こんなの、意識しないわけない。
うちの家族は白澤という種族で、牛角と尻尾と、太腿から下に獣毛が生えてて蹄があるのがお母さんとお姉ちゃんの特徴だ。お父さんは普通の人間種族だし、俺もちょっと両耳の上にでっぱりがあるだけの人間らしい。
白澤は記憶力がとても良くて、なんでも知ってるなんて言われてる。頭の回転も良いから、お姉ちゃんはあらゆることをテキパキとこなしていく。俺は残念ながら人間だから、なんでも知ってるわけじゃないのがちょっと悲しい。
でも、別に、そういうのは大したことじゃない。問題なのは、お姉ちゃんのスタイルがすごいこと。
大きな胸とやわらかそうなお腹、普段は尻尾に隠れて見えないけどお尻もむちむちしてる。歩く度に胸がゆさゆさって重そうに揺れてたり、尻尾や太腿の毛やスカートで守られてるお尻が油断してるときにちらって見えたり、とにかくすごい。これらも白澤って種族の特徴の一つだとか。
それにお姉ちゃんは暑がりだから、お風呂あがりや夏のときはすっごく目に悪い格好をしてる。バスタオル一枚で家の中をうろついたり、ぴちぴちしたインナーだけで家の中でくつろいでたり。それでもお姉ちゃんは平気そうな顔でいるし、お父さんお母さんも気にしてない。だからきっと、俺だけがお姉ちゃんを意識しすぎてるだけなんだと思う。
でも、そう思っても気になってしまう。お姉ちゃんはすごく優しいし頼りになるし、勉強でわからないところがあってもお姉ちゃんに聞けばわかりやすく教えてくれる。辛いことがあったら慰めてくれるし、喧嘩してもすぐに仲直りできる。仲の良い姉弟関係だから、接する距離も近い。間違ってるのに、お姉ちゃんのことが気になってしまう。
そうやってお姉ちゃんのことが気になるたびに、ちんこが大きくなってうずうずする。これの意味は知ってるし、どうすればいいかも知ってる。
初めてするまでは、そういうことは彼女ができて彼女からされるんだって友達から聞いてたし、実際に彼女できた奴がクラスですごく自慢してた。俺は別に、同じ年の女なんかガキっぽくて興味ないから、心底どうでもよかった。まあいつかはそういうこともあるんだろうなって、ぼんやり考えながら冷やかしてた。
でも、今は違う。これはダメなことだって、いけないことだってわかってはいても、どうしてもお姉ちゃんのことが気になってしまう。だって、お姉ちゃんのことが好きだから。
「……はぁ」
また増えたゴミ箱の中のティッシュに向けて部屋用消臭スプレーを吹き付けながら、ぐるぐると同じことばっかり考える。
お姉ちゃんのことが好きで、えっちなこともしてみたい。でも家族だから、それはいけないことだ。そんなことをしたらお姉ちゃんの迷惑になっちゃうし、仲が悪くなるかもしれない。お父さんお母さんに怒られるかもしれない。だからオナニーで済ませて、お姉ちゃんにバレないようにするしかない。
いつかきっと、お姉ちゃん以上に好きな人が出てくる。その人と仲良くなって付き合って、結婚するんだろうな。お姉ちゃんにだって、好きな人がいるかもしれない。お姉ちゃんは誰にでも優しくて物知りだから、俺と同じようにお姉ちゃんのことが好きな人も多いはずだ。
お姉ちゃんはもう二十歳で、そろそろ誰かと付き合ってスピード結婚してもおかしくない。その未来の旦那さんにも迷惑になる。
「やだなぁ……どこにも行ってほしくない……」
俺以外誰もいない部屋で、ベッドの上に寝転びながら呟く。こんなことを言っても、なにも変わらない。でもいつかはと思うと、寂しい気持ちが強くなっていく。
こういうときはさっさと寝よう。明日も学校あるんだし、学校に行けば友達と遊んで嫌なことを忘れられる。そういえば宿題やってないな……まあ、いっか。ベッドから起きて電気を消そうとして、
「弟くーん、起きてる?」
こんこん、とタイミングよくノックの音。声でわかる、お姉ちゃんだ。心臓がドキッと跳ねて、素早く部屋を見渡す。別に汚くないよな、よし。
「起きてるよ、どうしたの?」
「ごめんね、もう夜中なのに。明日ゴミ出しだよー。お姉ちゃん忘れてた、本当にごめんねー」
ドアを開け、スーパーのビニール袋を片手に部屋に入ってくるお姉ちゃん。白くて清潔感のあるパジャマに身を包んで、お風呂あがりの髪を簡単に纏めてる、いつもの寝る前のお姉ちゃんだ。申し訳無さそうな顔でゴミ箱に近づいていく。
やばい。まずい。さっきしたばっかりのやつがあるのに。
「え、えっと、なんで今?明日の朝に持っていくんじゃないの?」
「あれ、弟くんは知らないかな。いつもはゴミの日までに家のゴミをまとめて持っていってるんだけど、お姉ちゃん、ちょっと今日忙しくてすっぽかしてたんだよー」
「いや、だからえっと、明日でいいんじゃ」
「明日もし寝坊したらゴミ出せないでしょ?ゴミを纏めるだけなら今やれることなんだから、今のうちにやっておくの。それにお姉ちゃんはこういうことすごく気になっちゃうって、弟くんなら知ってるよね?」
「う、たしかに……」
「でしょー」
どうしよう、どうしよう、どうすればいい。今まではバレないようにゴミの中に隠してた使用済みティッシュが、今は隠せてない。引き止められない。お姉ちゃんが気づかないことを祈るしかない。
いや、待てよ。それなら。
「じゃ、じゃあさ、姉ちゃん。たまには俺がゴミ出すよ」
「えー?でも弟くん、お姉ちゃんが起こしてあげないと起きないじゃない」
「最近はちゃんと起きてるから、大丈夫だよ!ほら、もう夜も遅いし。お姉ちゃん疲れてない?俺が代わりにゴミを纏めておくから」
「んー……なーんか怪しいなー」
「えぁっ、怪しくないよ!?」
びく、と身体を強張らせてしまう。ばか、こんな反応したらいかにも隠し事がありますって感じじゃんか。お姉ちゃんがじーっとこっちを見つめてくる。この目、強すぎる。お姉ちゃんはすごく頭がいいから、そもそも勝てる相手じゃないんじゃ……。
お姉ちゃんはゴミ箱に近づく足を止め、こっちの方に歩いてくる。やばい。ついお姉ちゃんから目を逸らして、だけど動けない。
「弟くん。お姉ちゃんになにを隠してるのかな」
「べ、別になにも隠してないよ」
「それなら目を見て言えるんじゃない?なんでそっぽ向いちゃってるのかなー」
「……」
これは、終わったかもしれない。最悪のパターンだ。なにも言い返せなくて、お姉ちゃんを見れない。
「黙っちゃったらなんにもわからないよ?お姉ちゃんはゴミ袋もらっていくからね」
「そ、それは……」
「ダメなの?なんでダメなのかな。それはお姉ちゃんに言えないこと?」
「ぅ……」
もう覚悟を決めるしかないかもしれない。言葉を返せない俺を見て、お姉ちゃんは踵を返してゴミ袋をゴミ箱から取り出す。気づかないで、と心のなかで祈るけど、それは叶わなかった。
がさがさっと音を立てながらゴミ袋の中をじっくり眺めたお姉ちゃんは、
「……ふぅーん?」
なにもかもお見通しだって雰囲気の声で、目だけをこっちに向けてきた。
「ティッシュだけいっぱいあるねー……かぴかぴだったりごわごわだったり、鼻水拭いたにしては変だよねー?それに……」
ゆっくりとこっちに近づきながら、ゴミ袋からティッシュを拾い上げてじっくり眺め回すお姉ちゃん。その手にあるものは、
「これだけほかほかしてて暖かくて、鼻水っぽくないにおいがするよねー?」
「うぅ……」
さっきのティッシュだ。目の前に立つお姉ちゃんの顔を見れない。恥ずかしさと罪悪感の両方がすごく強くて、俯くことしかできない。
こんなときでも、間近のお姉ちゃんからお風呂あがりのあとのとってもいい匂いがしてくる。お姉ちゃんだけが使ってる、ボディソープとかシャンプーとかトリートメントとかの匂い。だけど今は、このいい匂いは罪悪感を増してくるだけだ。胃がぎゅうって鷲掴みにされる感覚。
もうダメだ。正直に話すしかない。嫌われた、幻滅された、怒られる。
「……ひとりえっち、してたんだよねー?」
「……ごめんなさい……」
お姉ちゃんは良くも悪くもなんでも知ってる。今回は俺にとって悪い方にそれが働いた。お姉ちゃんにかかれば、こうなってしまうのは当然だった。もっと頭が良ければそんなことはすぐに気がつくことだったはず。それを、下手な嘘を吐いて誤魔化そうとしたせいでお姉ちゃんに嫌われて……バカだ、俺は……。
と、後悔しながら目を潤ませていたのに。
「……男の子だもんねー……♥」
聞いたことない雰囲気のお姉ちゃんの声が、囁きかけるように耳の中に入ってきた。
「……ぇ」
「弟くんも男の子だから、ひとりえっちしちゃうよねー……♥」
慌てて顔を上げたその視線の先には、見たこともないお姉ちゃんの表情。頬をだらしなく緩めて愉しそうに笑いながら、目の前に掲げた使用済みのティッシュを愛おしそうに見つめるお姉ちゃん。顔が赤く、鼻息もいつもより荒い。今までずっと一緒に生きてきて初めて見る、想像したこともないお姉ちゃんの姿。
同時に、背筋に氷が伝うような戦慄が走る。雰囲気って曖昧なものではなく明らかに感じられる、お姉ちゃんから放たれてるよくわからないなにか。こっちに向かってくる、目に見えない空気のようなもの。
瞬間的に理解した言葉。それは、
「お姉ちゃんもねー……興奮してきちゃったなぁー♥」
――欲情。
「弟くんさぁー……誰とえっちする妄想で、ひとりえっちしてたのかなぁ?ただの処理おなにーでこんなにティッシュ使わないよねぇー……♥」
「ぇ……う、あ、いや……」
「ほらぁー、言いなよぉー♥ お姉ちゃんに隠し事ないって言いながらおなにー黙ってたくせにさぁー……♥」
違う。いつものお姉ちゃんはこんな風に相手の弱みにつけこんだり高圧的に要求してこない。これは、珍しく怒ったり泣いたりするときにやる、感情が昂ぶってるときのお姉ちゃん。
だけど今は、怒ってるわけでも泣いてるわけでもない。
少しだけ前かがみになり、目線を合わせてくるお姉ちゃん。視線を逸らすことを許さない。答えないことも許さない。私の望み通りにしなきゃ絶対に許さない。そう、目が告げてくる。
「ねぇ、誰かなー?お姉ちゃんの知らない人?クラスメイト?弟くんと仲のいい女の子なんていなかったよねぇー……♥」
「そんなこと、……」
「いないでしょー♥ お姉ちゃんは弟くんのことなんでも知ってるんだよねぇー……♥ いっつもお姉ちゃんのおっぱい見てることとかさぁー♥」
「っ!」
全身がぼかんと弾かれたみたいな衝撃。お姉ちゃんにはバレてないと思ってたことだ。そうだ、ありえない。なんでバレてるんだ。頭のなかが混乱して、何も言えない。
「お姉ちゃんのお尻もちらちら見てるしさぁー……♥ 勉強教えてあげてるときだってお姉ちゃんのことえっちな目でじーっと見てきて、バレてもいいと思ってるのかなぁーってくらいだったよ♥」
「ちが、」
「なにも違わないよねぇ♥ ね、お姉ちゃんとえっちしちゃう妄想してたんだよねー?お姉ちゃんにバレないようにしこしこおなにーしてさぁー……♥」
がさ、とお姉ちゃんは袋を振って音が出る。隠しても無駄だったかもしれない。
「……ごめんなさい」
「そうじゃなくてぇー……ごめんなさいはどうでもいいんだって♥ お姉ちゃんをネタにしておなにーしてたんだよね?お姉ちゃんとえっちしたくてひとりえっちしてたんだよねぇ?ほらほらぁー♥」
「ごめんなさいぃ……」
「悪かったと思うなら言ってみなよぉ、お姉ちゃんとじゅぽじゅぽえっちしちゃう妄想をしながらお部屋でしこしこ♥ ってして、かぴかぴティッシュを毎日量産してましたってさぁ♥ お姉ちゃん大好きだからお姉ちゃんとえっちしたいですぅーって、お姉ちゃんとえっちしたくてしこしこおなにーしてましたって♥ 言えよぉー♥」
肩をがっしりと掴まれ、無理やり目を合わさせられながら詰め寄られる。もしかしたら、初めてオナニーをしたときから知られていたのかもしれない。ゴミ出しはずっとお姉ちゃんがやってることだ。初めてしたその日から知られていても、何もおかしくない。
恥ずかしさで涙を少し零しながら、お姉ちゃんに懺悔する。
「っお、俺は……姉ちゃんで、オナニーしてました……」
「うんうん♥ ちゃーんと言えたねぇー♥ えらいなぁー♥」
お姉ちゃんは笑みを更に深めさせて、サドっ気を露わにしながら言葉を続ける。
「でもさぁー?お姉ちゃんは家族だよねぇー……♥ 家族とえっちしちゃう妄想ってさぁー……♥ それって、いいことだと思うのかなー♥」
「……」
「わかってるよねぇー♥ よくないことだって♥ お姉ちゃんでしこしこするのはダメなことだーって、弟くんはよぉーくわかってるよねぇー……♥」
「ごめんなさい……」
「うん♥ ちゃんとごめんなさいできて弟くんはえらいなー♥ まあ、お姉ちゃんもひどい人じゃないから許してあげるけどさぁー……♥」
ゴミ袋をその場に起き、しゃんと立って見下ろしてくるお姉ちゃん。いつものお姉ちゃんなら、お願いって言いながらお使いだったり郵便受取だったりを頼んでくる。
今のお姉ちゃんはそんな優しいお姉ちゃんじゃない。
「悪かったって思うならー……お姉ちゃんにいつも通りのおなにーするところ、見せてよ♥」
「ぇ、は……や、そ、そんなのできない……」
「へぇー、お姉ちゃんに逆らうのかぁー♥ 悪い子だなぁー、お母さんに言ってきつく叱ってもらわないとダメかなぁー♥」
「そ、そんな……」
「イヤなら見せろよぉー♥ 大好きなお姉ちゃんの目の前で、お姉ちゃんお姉ちゃん♥ って言いながらおなにー見せて、情けなくティッシュにぴゅっぴゅって精液無駄撃ちするところをさぁー♥」
「うぅ……」
八方塞がりだ。この場を切り抜ける方法も思いつかない。お母さんに知られるのも嫌だ。お姉ちゃんだけが知るならまだしも、家族全体に知れ渡ったらどうなるかわからない。
ガンガン頭の中が熱くなって、冷静でいられなくなっていく。お姉ちゃんの言いなりになるしかないんじゃないか。お姉ちゃんに従わないほうが悪い結果に転がっていく。
「それに、ほら……ナマのお姉ちゃんでしこしこできるんだぞぉー♥ 妄想えっちじゃなくて、目の前のお姉ちゃんでおなにーできるんだからさぁ……♥ こんな機会逃したら、もう二度とないかもよー?」
「あ……」
「どうすんの♥ お姉ちゃんの前でおなにーするか、お母さんから叱られるかだよー♥ どっちがいいかなんて、もうわかりきってるよねぇー?」
二つの選択で良いほうなんて、もちろん前者に決まってる。お姉ちゃんには絶対に勝てない。これから先、きっとお姉ちゃんにどんどん無茶ぶりされるだろうけど、でも今をやり過ごすにはお姉ちゃんに従うしかない。
折れた。恥ずかしい思いをするだけでお母さんから叱られるのを回避できるなら、そうした方がいい。回らない頭で下した結論は、正解なのか知る由もない。
「……わ、わかった……」
「おー♥ 嬉しいぞー♥ お姉ちゃんに見せてくれるんだー……♥ 弟くんのお姉ちゃんおなにーかぁー……♥」
強く期待してる目をきらきら光らせながら、お姉ちゃんは背中を押してくる。促されるままにベッドまで歩き、シーツの上に腰掛ける。そうしてお姉ちゃんの方を向くと、ベッドの前でしゃがみ込んでこっちの股間に顔を近づけてる最中だった。
「ちょ、姉ちゃ……」
「なんだよぉー♥ はやくはやく♥ そういえば弟くんのおちんちん見るの久々だなぁ、皮剥けたかなぁ♥」
「う……」
お姉ちゃんの異常なテンションに困惑しながら、恐る恐るズボンをずり下ろす。その下にはパンツがまだある。一気に脱ぐのが恥ずかしくてとりあえず、とズボンだけ脱いだけど、それがお姉ちゃんは気に入らなかったみたいで、
「なにズボンだけ下ろしてんのさー♥ 男らしくがばぁって全部脱げばいいのにー♥ 恥ずかしがっててももう遅いって♥ お姉ちゃんにおなにーバレてんのに今更恥ずかしがるなよー♥」
「ね、姉ちゃんっ!」
そう言って、お姉ちゃんはパンツの裾をグイグイ引っ張ってくる。慌てて止めようとしても勝てるはずもなく、パンツがずり下ろされて半勃ちの状態でお姉ちゃんの目の前にさらけ出される。
それを見たお姉ちゃんは嬉しそうな悲鳴を小さく上げ、ニヤニヤ笑いで凝視してくる。顔面がかぁっと熱くなって、慌ててパンツを上げようとすると、
「ちょっと、なんで隠そうとするの♥ お姉ちゃんにおなにーを見せるんでしょー♥ ほら、ちゃんとパンツ脱いでおなにーしてよ♥ わかったって言ったじゃんー♥」
腕をがっちり掴まれて、隠すこともできない。ひどい恥ずかしさで泣きそうになりながら、大人しくパンツを脱ぐ。まじまじと至近距離でお姉ちゃんに恥ずかしいところを見つめられて、これ以上ないってくらいの地獄を感じる。
だけどそれは同時に、興奮材料にもなっていく。
「あれぇー♥ ちょっとぉ、弟くん♥ お姉ちゃんに見られてるだけなのに大きくなってないかなぁー……♥ これって弟くんを反省させるためにやってるのにさぁー……いじめられておちんちん大きくしちゃうって、弟くんは変態なのかなぁー……♥」
「……ごめん、なさいぃ……」
「んーん♥ いいんだよぉー♥ 弟くんはお姉ちゃんでしこしこしちゃう変態さんって、もうわかってるからねー♥」
くすくすって上機嫌に笑うお姉ちゃんの表情に、嗜虐的な面が色濃く見える。お姉ちゃんは俺をいじめて楽しんでる。尻尾がふりふりと揺れて、俺のことをバカにしてるような雰囲気。それを隠そうともしない。
だから、なのかは確信を持てない。でも、どんどん興奮が煽られるのがわかる。
「おーおー……♥ 大きくなったねー♥ でもまだ皮かむりの可愛いおちんちんなんだー……♥ ぴくぴくちっちゃいおちんちんかわいーねー♥ こんな可愛いのに精液ぴゅーってしちゃうんだねー……♥」
触れない程度に、でも離れないような、そんな近い距離でちんこの感想を言ってくるお姉ちゃんに対してどうすることもできない。ただ恥ずかしくて、身を縮こまらせる。
だけど当然、お姉ちゃんは見せるだけで許してくれるはずがない。
「じゃあ、ほら、おなにーしていいよー♥ 目の前の大好きなお姉ちゃんでちゅこちゅこっ♥ って、おなにーしなよー♥ 射精しないと絶対許さないからねぇー……♥」
ちんこのすぐ傍からこっちを見上げる視線に、言い様のないなにかがあった。いつもは優しくて綺麗で物知りで頼れるお姉ちゃんが、今はこうしてワガママで傍若無人で偉そうに命令してきて、しかもオナニーを見せろというありえない命令。
おずおずとぎこちなくちんこに手をやり、僅かに手を上下させる。
「……ん〜〜♥ 恥ずかしがらないでよー♥ 普段はもっとしゅっしゅってしっかりやってるんでしょ♥ これじゃお姉ちゃんつまんないなぁー……♥」
「で、でも……」
「でもじゃないでしょー♥ あー、そっかぁー♥ お姉ちゃんをおかずにしたいのに、お姉ちゃんのえっちなところが見えないからしこしこできないのかなー?」
「っ」
そう言いながら、お姉ちゃんは上体を反らして自分の胸を片手で持ち上げる。パジャマを着ててもわかる、その大きさ。形。ごくっと喉が鳴る。
「そうだよねー♥ 弟くんはお姉ちゃんのおっぱい大好きだもんねー?いっつもじぃーって見て、お姉ちゃんのおっぱいでドキドキしてるんだもんね♥ 見たいよねぇー♥」
「……み、たい」
「おー♥ ちゃんとお願いできるんだー♥ 弟くんはえらい子だねー♥ じゃあ見るだけだよ♥ 触っちゃダメだからねー♥」
震えた声でお願いしたことが功を奏したのか、お姉ちゃんは満面の笑みで首を縦に振ってくれた。
ぷちぷちとパジャマのボタンを外し、惜しみなく前を開いて大きな胸を露出させるお姉ちゃん。こんなに大きくて形のいいおっぱいなのに、お姉ちゃんはブラジャーをつけてなかった。
手に持っても余るくらいの大きさだけど、決して重力に負けずにつんと上向く綺麗な造形。先端はエロいピンク色で、乳首だってぷっくり膨らんで思わずつまみたくなるくらい。
「わー♥ 弟くんがっつり見ちゃってるねー……♥ お姉ちゃんのおっぱいそんなに気に入ったかなー♥ ほらぁ、今のうちにいっぱいおなにーしてお姉ちゃんのおっぱいを忘れないようにしなきゃ♥ 今日は特別サービスなんだぞー♥」
「ぅぐ……!」
「わ……わぁー♥ すごいすごい♥ かわいいおちんちんいっぱいごしごししちゃってる♥ 本気おなにーしちゃってる……♥ お姉ちゃんの前なのに全力のおなにーだ……♥ 男の子だぁー……♥」
こんなの、興奮しないわけがない。いっつもお姉ちゃんのえっちな姿を目に焼き付けては思い出して妄想しながらオナニーしていたのに、今は目の前にそれがある。しかも、普段よりも過激に。
お姉ちゃんも食い入るようにちんこを見つめ、感心と興奮を混ぜあわせたエロい表情。こんな光景、想像もできなかった。
「わわ♥ おちんちんの先っぽからおつゆ出てる……♥ わぁー……♥ 先走りだぁ♥ すごぉい……♥ お姉ちゃんのおっぱい見ながらおちんちんおなにーきもちいーよぉ♥ って興奮してるんだよねー♥ えっちだねー……♥ おなにーすごいねー♥」
実際、もう限界が近い。こうして言葉や表情や身体で興奮を煽り立ててきて、まだまだ快感に弱いちんこが耐え切れるわけがない。お姉ちゃんは俺の好きなことを全部わかってて、それをなぞるように、かつ一切触らずに責め立ててくる。
オナニーなのに声も出ないくらいに気持ち良すぎて、全身にぼんやりとした痺れが出てくる。味わったことのない興奮、感じたことのない快楽、そういうのが全部合わさって脳が処理できなくなってきてるのかもしれない。
だけど、それだけじゃ終わらなかった。
「そぉーだ♥ ちゃーんとおなにーを見せてくれた弟くんに、お姉ちゃんからきもちいーご褒美あげちゃおー♥♥ えへ、あむぅ♥」
「ぅえっ、ちょ――」
お姉ちゃんを制止する暇もなく、限界に近づきつつあるちんこに顔を近づけ、ねっとりした唾液を含ませた口で一気にちんこを咥えてくるお姉ちゃん。初めて味わう新たな感覚にびしびしと快楽が走り、下半身から全身へと気持ちよさが流れ込んでくる。暖かくてとろとろで気持ちいい、お姉ちゃんの口の中の感触。
更にもう一撃、トドメが押し寄せてくる。お姉ちゃんの口内の淫熱と同時に脳にどんどんと流し込まれていくもの。情報。ただの気持ちいい感覚だけじゃない。白澤の持つ特性。情報共有能力だ。ぱしっと脳内にパルスが溢れ、一瞬で浸透する。
俺がお姉ちゃんでオナニーしてるのを最初から知ってたこと。俺がお姉ちゃんのことをえっちな目で見つめてるのを最初から知ってたこと。そして、お姉ちゃんも俺でオナニーしていること。使用済みティッシュをネタにして、お姉ちゃんもたくさんオナニーしていたこと。洗濯する前の俺のパンツの匂いを嗅ぎながらオナニーしまくっていたこと。使用済みティッシュからどういう妄想でオナニーしていたのかって情報を読み取って、それもまた別にオカズにしてオナニーしていること。お姉ちゃんも俺のことが大好きなこと。今まで言い出せなくて、伝えられなくてごめんねってこと。俺のことが恋愛感情で大好きで、今までのスキンシップやプレゼントも全部家族愛っぽく隠した恋愛表現なこと。だけどきっかけが掴めなくて、たびたび俺の部屋の前でもやもやと立ち尽くしてたこと。今日、俺がオナニーした後にお姉ちゃんから離れたくないって呟いてるのが聞こえて、居ても立ってもいられなくなって一歩を踏み出したこと。本当に、俺が大好きなこと。お姉ちゃんとしても好きで、一人の女としても好きだっていうこと。十三年間黙っててごめんね、大好き愛してる。
「――――っ!」
「んぢゅ、ぢゅぷっ、んむぅっ♥♥」
脳が与えられた情報を認識し終えた瞬間に、奔流が噴き上がってびくびくと痙攣しながら射精を開始していた。どうしようもなく溢れだした感情が精液として放たれ、ずっぽりちんこを根本まで咥え込んでるお姉ちゃんの口の中に止め処なく流し込まれていく。
声も出せないくらいの強烈な絶頂。お姉ちゃんも苦しいはずなのに、そんな様子は微塵も見せずに喉を鳴らしながら飲み込んでいく。それどころか、舌で丹念にちんこを舐めとかそうとまでして、射精を限界まで促してくる。
絶頂快楽。抗えない、逆らえない、気持ちいい。流し込まれた情報を噛み砕く猶予すら与えられず、射精は止まらない。
「うぁぁっ、すきっ、おねえちゃ、すきぃっ」
「んぐっ、ちゅ、んぐ、んぐ、じゅるっ♥♥」
それでもさすがに、今日二回目の射精だ。いつまでもは続かない。波が引いていくように、射精の脈動が弱まっていく。最後に一回強く身体がぶるっと震えて、射精が終わる。
お姉ちゃんは口から零れて落ちた精液を手で受けながら、尿道に残ったものをちゅるっと吸ってちんこから顔を離した。
全身から力が抜けて、ベッドに横たわる。本当に動けない。お姉ちゃんに吸い尽くされたからだ。比喩じゃないのが笑えない。
「ちゅ、んく……んふぅー♥ すごいねー♥ 精液ってこんなに美味しいんだねぇー♥ えへへ……弟くんも気持ち良かったでしょー♥」
「……ぅ、ん」
「だよねー♥ すごいねー、すごいよー♥」
シーツを汚さないように手で抑えた精液も舐めとって、お姉ちゃんはご満悦そうに尻尾を振る。
「……それでさぁー♥ 弟くん、お姉ちゃんのこと……よくわかったよねー?ねー♥」
「うん……」
「照れないでよー♥ お姉ちゃんも弟くんのこと大好きなんだよー♥ じゃなきゃ、こんなことしないもんねぇー♥」
お姉ちゃんもベッドに腰掛け、ぎしりと軋む。いつの間にかパジャマも直していて、普段通りの優しいお姉ちゃんのような雰囲気にも戻っていた。だけど、その声はやっぱりいつもと違う。
愛情、恋慕、親愛。ただの姉弟関係じゃ説明できない、強い感情が込められた声色。
「ね♥ 今日から、お姉ちゃんと一緒に寝よーよ♥ お姉ちゃんと添い寝って、幼稚園くらいのときまでしてたよねー♥」
「そういえば、してたような……」
「してたよー♥ 弟くん疲れちゃってるもんねー、眠いよねー♥ このまま一緒におやすみなさいしちゃおっかー♥」
瞼が重い。ベッドの沈む感触から身体を動かせないから、お姉ちゃんの添い寝に抵抗できない。もちろん、抵抗するつもりもない。
「それじゃ、電気消しちゃうねー♥ 弟くん、お疲れ様♥ ちゃんとおなにーできた弟くん、かっこよかったよー♥ また明日もしようね♥ おやすみなさい♥」
かちりとお姉ちゃんが電気を消し、隣に潜り込んできたところで、すとんと落ちていくように急速に意識が沈んでいく。
身体に満ちた疲労感は、心の中で暖かく変化したお姉ちゃんへの思いをより確かに実感させてくれた。
お姉ちゃんと俺の仲は、もう正真正銘のカップルだった。
八歳も歳が離れてるけど、俺が今年で中学一年生になったことを自分のことみたいに喜んでくれたし、いつも誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントをくれる。お姉ちゃんが暇なときは遊んでくれるし、漫画の貸し借りだったりアニメを一緒に見てくれたりもする。
日常的にスキンシップをしたりもして、はたから見たら悪くないどころかすごく仲の良い姉弟なのかもしれない。ただ、一緒に出かけたりすると親子に見られることばっかりだ。俺の顔は父親似でお姉ちゃんの顔は母親似だから、歳の差もあって姉弟に見えないのは当然なんだけど。
そう、歳が離れているから親子に見られることも、ある。そうじゃないときだってある。
一緒にご飯を食べに行けば「カップル様用の割り引きが」とか「カップルでご来店されたお客様にはこちらのメニューも」とか言われ、手を繋いで一緒に外を歩いてるだけで知らないウィル・オ・ウィスプさんに嫉妬されたりユニコーンさんにすごい形相で舌打ちされたり、なにかと誤解されてしまう。
そうしてその度に、お姉ちゃんは少しだけ頬を赤らめて、困惑しつつも満更でもなさそうに微笑みながらこっちを見下ろしてくる。
こんなの、意識しないわけない。
うちの家族は白澤という種族で、牛角と尻尾と、太腿から下に獣毛が生えてて蹄があるのがお母さんとお姉ちゃんの特徴だ。お父さんは普通の人間種族だし、俺もちょっと両耳の上にでっぱりがあるだけの人間らしい。
白澤は記憶力がとても良くて、なんでも知ってるなんて言われてる。頭の回転も良いから、お姉ちゃんはあらゆることをテキパキとこなしていく。俺は残念ながら人間だから、なんでも知ってるわけじゃないのがちょっと悲しい。
でも、別に、そういうのは大したことじゃない。問題なのは、お姉ちゃんのスタイルがすごいこと。
大きな胸とやわらかそうなお腹、普段は尻尾に隠れて見えないけどお尻もむちむちしてる。歩く度に胸がゆさゆさって重そうに揺れてたり、尻尾や太腿の毛やスカートで守られてるお尻が油断してるときにちらって見えたり、とにかくすごい。これらも白澤って種族の特徴の一つだとか。
それにお姉ちゃんは暑がりだから、お風呂あがりや夏のときはすっごく目に悪い格好をしてる。バスタオル一枚で家の中をうろついたり、ぴちぴちしたインナーだけで家の中でくつろいでたり。それでもお姉ちゃんは平気そうな顔でいるし、お父さんお母さんも気にしてない。だからきっと、俺だけがお姉ちゃんを意識しすぎてるだけなんだと思う。
でも、そう思っても気になってしまう。お姉ちゃんはすごく優しいし頼りになるし、勉強でわからないところがあってもお姉ちゃんに聞けばわかりやすく教えてくれる。辛いことがあったら慰めてくれるし、喧嘩してもすぐに仲直りできる。仲の良い姉弟関係だから、接する距離も近い。間違ってるのに、お姉ちゃんのことが気になってしまう。
そうやってお姉ちゃんのことが気になるたびに、ちんこが大きくなってうずうずする。これの意味は知ってるし、どうすればいいかも知ってる。
初めてするまでは、そういうことは彼女ができて彼女からされるんだって友達から聞いてたし、実際に彼女できた奴がクラスですごく自慢してた。俺は別に、同じ年の女なんかガキっぽくて興味ないから、心底どうでもよかった。まあいつかはそういうこともあるんだろうなって、ぼんやり考えながら冷やかしてた。
でも、今は違う。これはダメなことだって、いけないことだってわかってはいても、どうしてもお姉ちゃんのことが気になってしまう。だって、お姉ちゃんのことが好きだから。
「……はぁ」
また増えたゴミ箱の中のティッシュに向けて部屋用消臭スプレーを吹き付けながら、ぐるぐると同じことばっかり考える。
お姉ちゃんのことが好きで、えっちなこともしてみたい。でも家族だから、それはいけないことだ。そんなことをしたらお姉ちゃんの迷惑になっちゃうし、仲が悪くなるかもしれない。お父さんお母さんに怒られるかもしれない。だからオナニーで済ませて、お姉ちゃんにバレないようにするしかない。
いつかきっと、お姉ちゃん以上に好きな人が出てくる。その人と仲良くなって付き合って、結婚するんだろうな。お姉ちゃんにだって、好きな人がいるかもしれない。お姉ちゃんは誰にでも優しくて物知りだから、俺と同じようにお姉ちゃんのことが好きな人も多いはずだ。
お姉ちゃんはもう二十歳で、そろそろ誰かと付き合ってスピード結婚してもおかしくない。その未来の旦那さんにも迷惑になる。
「やだなぁ……どこにも行ってほしくない……」
俺以外誰もいない部屋で、ベッドの上に寝転びながら呟く。こんなことを言っても、なにも変わらない。でもいつかはと思うと、寂しい気持ちが強くなっていく。
こういうときはさっさと寝よう。明日も学校あるんだし、学校に行けば友達と遊んで嫌なことを忘れられる。そういえば宿題やってないな……まあ、いっか。ベッドから起きて電気を消そうとして、
「弟くーん、起きてる?」
こんこん、とタイミングよくノックの音。声でわかる、お姉ちゃんだ。心臓がドキッと跳ねて、素早く部屋を見渡す。別に汚くないよな、よし。
「起きてるよ、どうしたの?」
「ごめんね、もう夜中なのに。明日ゴミ出しだよー。お姉ちゃん忘れてた、本当にごめんねー」
ドアを開け、スーパーのビニール袋を片手に部屋に入ってくるお姉ちゃん。白くて清潔感のあるパジャマに身を包んで、お風呂あがりの髪を簡単に纏めてる、いつもの寝る前のお姉ちゃんだ。申し訳無さそうな顔でゴミ箱に近づいていく。
やばい。まずい。さっきしたばっかりのやつがあるのに。
「え、えっと、なんで今?明日の朝に持っていくんじゃないの?」
「あれ、弟くんは知らないかな。いつもはゴミの日までに家のゴミをまとめて持っていってるんだけど、お姉ちゃん、ちょっと今日忙しくてすっぽかしてたんだよー」
「いや、だからえっと、明日でいいんじゃ」
「明日もし寝坊したらゴミ出せないでしょ?ゴミを纏めるだけなら今やれることなんだから、今のうちにやっておくの。それにお姉ちゃんはこういうことすごく気になっちゃうって、弟くんなら知ってるよね?」
「う、たしかに……」
「でしょー」
どうしよう、どうしよう、どうすればいい。今まではバレないようにゴミの中に隠してた使用済みティッシュが、今は隠せてない。引き止められない。お姉ちゃんが気づかないことを祈るしかない。
いや、待てよ。それなら。
「じゃ、じゃあさ、姉ちゃん。たまには俺がゴミ出すよ」
「えー?でも弟くん、お姉ちゃんが起こしてあげないと起きないじゃない」
「最近はちゃんと起きてるから、大丈夫だよ!ほら、もう夜も遅いし。お姉ちゃん疲れてない?俺が代わりにゴミを纏めておくから」
「んー……なーんか怪しいなー」
「えぁっ、怪しくないよ!?」
びく、と身体を強張らせてしまう。ばか、こんな反応したらいかにも隠し事がありますって感じじゃんか。お姉ちゃんがじーっとこっちを見つめてくる。この目、強すぎる。お姉ちゃんはすごく頭がいいから、そもそも勝てる相手じゃないんじゃ……。
お姉ちゃんはゴミ箱に近づく足を止め、こっちの方に歩いてくる。やばい。ついお姉ちゃんから目を逸らして、だけど動けない。
「弟くん。お姉ちゃんになにを隠してるのかな」
「べ、別になにも隠してないよ」
「それなら目を見て言えるんじゃない?なんでそっぽ向いちゃってるのかなー」
「……」
これは、終わったかもしれない。最悪のパターンだ。なにも言い返せなくて、お姉ちゃんを見れない。
「黙っちゃったらなんにもわからないよ?お姉ちゃんはゴミ袋もらっていくからね」
「そ、それは……」
「ダメなの?なんでダメなのかな。それはお姉ちゃんに言えないこと?」
「ぅ……」
もう覚悟を決めるしかないかもしれない。言葉を返せない俺を見て、お姉ちゃんは踵を返してゴミ袋をゴミ箱から取り出す。気づかないで、と心のなかで祈るけど、それは叶わなかった。
がさがさっと音を立てながらゴミ袋の中をじっくり眺めたお姉ちゃんは、
「……ふぅーん?」
なにもかもお見通しだって雰囲気の声で、目だけをこっちに向けてきた。
「ティッシュだけいっぱいあるねー……かぴかぴだったりごわごわだったり、鼻水拭いたにしては変だよねー?それに……」
ゆっくりとこっちに近づきながら、ゴミ袋からティッシュを拾い上げてじっくり眺め回すお姉ちゃん。その手にあるものは、
「これだけほかほかしてて暖かくて、鼻水っぽくないにおいがするよねー?」
「うぅ……」
さっきのティッシュだ。目の前に立つお姉ちゃんの顔を見れない。恥ずかしさと罪悪感の両方がすごく強くて、俯くことしかできない。
こんなときでも、間近のお姉ちゃんからお風呂あがりのあとのとってもいい匂いがしてくる。お姉ちゃんだけが使ってる、ボディソープとかシャンプーとかトリートメントとかの匂い。だけど今は、このいい匂いは罪悪感を増してくるだけだ。胃がぎゅうって鷲掴みにされる感覚。
もうダメだ。正直に話すしかない。嫌われた、幻滅された、怒られる。
「……ひとりえっち、してたんだよねー?」
「……ごめんなさい……」
お姉ちゃんは良くも悪くもなんでも知ってる。今回は俺にとって悪い方にそれが働いた。お姉ちゃんにかかれば、こうなってしまうのは当然だった。もっと頭が良ければそんなことはすぐに気がつくことだったはず。それを、下手な嘘を吐いて誤魔化そうとしたせいでお姉ちゃんに嫌われて……バカだ、俺は……。
と、後悔しながら目を潤ませていたのに。
「……男の子だもんねー……♥」
聞いたことない雰囲気のお姉ちゃんの声が、囁きかけるように耳の中に入ってきた。
「……ぇ」
「弟くんも男の子だから、ひとりえっちしちゃうよねー……♥」
慌てて顔を上げたその視線の先には、見たこともないお姉ちゃんの表情。頬をだらしなく緩めて愉しそうに笑いながら、目の前に掲げた使用済みのティッシュを愛おしそうに見つめるお姉ちゃん。顔が赤く、鼻息もいつもより荒い。今までずっと一緒に生きてきて初めて見る、想像したこともないお姉ちゃんの姿。
同時に、背筋に氷が伝うような戦慄が走る。雰囲気って曖昧なものではなく明らかに感じられる、お姉ちゃんから放たれてるよくわからないなにか。こっちに向かってくる、目に見えない空気のようなもの。
瞬間的に理解した言葉。それは、
「お姉ちゃんもねー……興奮してきちゃったなぁー♥」
――欲情。
「弟くんさぁー……誰とえっちする妄想で、ひとりえっちしてたのかなぁ?ただの処理おなにーでこんなにティッシュ使わないよねぇー……♥」
「ぇ……う、あ、いや……」
「ほらぁー、言いなよぉー♥ お姉ちゃんに隠し事ないって言いながらおなにー黙ってたくせにさぁー……♥」
違う。いつものお姉ちゃんはこんな風に相手の弱みにつけこんだり高圧的に要求してこない。これは、珍しく怒ったり泣いたりするときにやる、感情が昂ぶってるときのお姉ちゃん。
だけど今は、怒ってるわけでも泣いてるわけでもない。
少しだけ前かがみになり、目線を合わせてくるお姉ちゃん。視線を逸らすことを許さない。答えないことも許さない。私の望み通りにしなきゃ絶対に許さない。そう、目が告げてくる。
「ねぇ、誰かなー?お姉ちゃんの知らない人?クラスメイト?弟くんと仲のいい女の子なんていなかったよねぇー……♥」
「そんなこと、……」
「いないでしょー♥ お姉ちゃんは弟くんのことなんでも知ってるんだよねぇー……♥ いっつもお姉ちゃんのおっぱい見てることとかさぁー♥」
「っ!」
全身がぼかんと弾かれたみたいな衝撃。お姉ちゃんにはバレてないと思ってたことだ。そうだ、ありえない。なんでバレてるんだ。頭のなかが混乱して、何も言えない。
「お姉ちゃんのお尻もちらちら見てるしさぁー……♥ 勉強教えてあげてるときだってお姉ちゃんのことえっちな目でじーっと見てきて、バレてもいいと思ってるのかなぁーってくらいだったよ♥」
「ちが、」
「なにも違わないよねぇ♥ ね、お姉ちゃんとえっちしちゃう妄想してたんだよねー?お姉ちゃんにバレないようにしこしこおなにーしてさぁー……♥」
がさ、とお姉ちゃんは袋を振って音が出る。隠しても無駄だったかもしれない。
「……ごめんなさい」
「そうじゃなくてぇー……ごめんなさいはどうでもいいんだって♥ お姉ちゃんをネタにしておなにーしてたんだよね?お姉ちゃんとえっちしたくてひとりえっちしてたんだよねぇ?ほらほらぁー♥」
「ごめんなさいぃ……」
「悪かったと思うなら言ってみなよぉ、お姉ちゃんとじゅぽじゅぽえっちしちゃう妄想をしながらお部屋でしこしこ♥ ってして、かぴかぴティッシュを毎日量産してましたってさぁ♥ お姉ちゃん大好きだからお姉ちゃんとえっちしたいですぅーって、お姉ちゃんとえっちしたくてしこしこおなにーしてましたって♥ 言えよぉー♥」
肩をがっしりと掴まれ、無理やり目を合わさせられながら詰め寄られる。もしかしたら、初めてオナニーをしたときから知られていたのかもしれない。ゴミ出しはずっとお姉ちゃんがやってることだ。初めてしたその日から知られていても、何もおかしくない。
恥ずかしさで涙を少し零しながら、お姉ちゃんに懺悔する。
「っお、俺は……姉ちゃんで、オナニーしてました……」
「うんうん♥ ちゃーんと言えたねぇー♥ えらいなぁー♥」
お姉ちゃんは笑みを更に深めさせて、サドっ気を露わにしながら言葉を続ける。
「でもさぁー?お姉ちゃんは家族だよねぇー……♥ 家族とえっちしちゃう妄想ってさぁー……♥ それって、いいことだと思うのかなー♥」
「……」
「わかってるよねぇー♥ よくないことだって♥ お姉ちゃんでしこしこするのはダメなことだーって、弟くんはよぉーくわかってるよねぇー……♥」
「ごめんなさい……」
「うん♥ ちゃんとごめんなさいできて弟くんはえらいなー♥ まあ、お姉ちゃんもひどい人じゃないから許してあげるけどさぁー……♥」
ゴミ袋をその場に起き、しゃんと立って見下ろしてくるお姉ちゃん。いつものお姉ちゃんなら、お願いって言いながらお使いだったり郵便受取だったりを頼んでくる。
今のお姉ちゃんはそんな優しいお姉ちゃんじゃない。
「悪かったって思うならー……お姉ちゃんにいつも通りのおなにーするところ、見せてよ♥」
「ぇ、は……や、そ、そんなのできない……」
「へぇー、お姉ちゃんに逆らうのかぁー♥ 悪い子だなぁー、お母さんに言ってきつく叱ってもらわないとダメかなぁー♥」
「そ、そんな……」
「イヤなら見せろよぉー♥ 大好きなお姉ちゃんの目の前で、お姉ちゃんお姉ちゃん♥ って言いながらおなにー見せて、情けなくティッシュにぴゅっぴゅって精液無駄撃ちするところをさぁー♥」
「うぅ……」
八方塞がりだ。この場を切り抜ける方法も思いつかない。お母さんに知られるのも嫌だ。お姉ちゃんだけが知るならまだしも、家族全体に知れ渡ったらどうなるかわからない。
ガンガン頭の中が熱くなって、冷静でいられなくなっていく。お姉ちゃんの言いなりになるしかないんじゃないか。お姉ちゃんに従わないほうが悪い結果に転がっていく。
「それに、ほら……ナマのお姉ちゃんでしこしこできるんだぞぉー♥ 妄想えっちじゃなくて、目の前のお姉ちゃんでおなにーできるんだからさぁ……♥ こんな機会逃したら、もう二度とないかもよー?」
「あ……」
「どうすんの♥ お姉ちゃんの前でおなにーするか、お母さんから叱られるかだよー♥ どっちがいいかなんて、もうわかりきってるよねぇー?」
二つの選択で良いほうなんて、もちろん前者に決まってる。お姉ちゃんには絶対に勝てない。これから先、きっとお姉ちゃんにどんどん無茶ぶりされるだろうけど、でも今をやり過ごすにはお姉ちゃんに従うしかない。
折れた。恥ずかしい思いをするだけでお母さんから叱られるのを回避できるなら、そうした方がいい。回らない頭で下した結論は、正解なのか知る由もない。
「……わ、わかった……」
「おー♥ 嬉しいぞー♥ お姉ちゃんに見せてくれるんだー……♥ 弟くんのお姉ちゃんおなにーかぁー……♥」
強く期待してる目をきらきら光らせながら、お姉ちゃんは背中を押してくる。促されるままにベッドまで歩き、シーツの上に腰掛ける。そうしてお姉ちゃんの方を向くと、ベッドの前でしゃがみ込んでこっちの股間に顔を近づけてる最中だった。
「ちょ、姉ちゃ……」
「なんだよぉー♥ はやくはやく♥ そういえば弟くんのおちんちん見るの久々だなぁ、皮剥けたかなぁ♥」
「う……」
お姉ちゃんの異常なテンションに困惑しながら、恐る恐るズボンをずり下ろす。その下にはパンツがまだある。一気に脱ぐのが恥ずかしくてとりあえず、とズボンだけ脱いだけど、それがお姉ちゃんは気に入らなかったみたいで、
「なにズボンだけ下ろしてんのさー♥ 男らしくがばぁって全部脱げばいいのにー♥ 恥ずかしがっててももう遅いって♥ お姉ちゃんにおなにーバレてんのに今更恥ずかしがるなよー♥」
「ね、姉ちゃんっ!」
そう言って、お姉ちゃんはパンツの裾をグイグイ引っ張ってくる。慌てて止めようとしても勝てるはずもなく、パンツがずり下ろされて半勃ちの状態でお姉ちゃんの目の前にさらけ出される。
それを見たお姉ちゃんは嬉しそうな悲鳴を小さく上げ、ニヤニヤ笑いで凝視してくる。顔面がかぁっと熱くなって、慌ててパンツを上げようとすると、
「ちょっと、なんで隠そうとするの♥ お姉ちゃんにおなにーを見せるんでしょー♥ ほら、ちゃんとパンツ脱いでおなにーしてよ♥ わかったって言ったじゃんー♥」
腕をがっちり掴まれて、隠すこともできない。ひどい恥ずかしさで泣きそうになりながら、大人しくパンツを脱ぐ。まじまじと至近距離でお姉ちゃんに恥ずかしいところを見つめられて、これ以上ないってくらいの地獄を感じる。
だけどそれは同時に、興奮材料にもなっていく。
「あれぇー♥ ちょっとぉ、弟くん♥ お姉ちゃんに見られてるだけなのに大きくなってないかなぁー……♥ これって弟くんを反省させるためにやってるのにさぁー……いじめられておちんちん大きくしちゃうって、弟くんは変態なのかなぁー……♥」
「……ごめん、なさいぃ……」
「んーん♥ いいんだよぉー♥ 弟くんはお姉ちゃんでしこしこしちゃう変態さんって、もうわかってるからねー♥」
くすくすって上機嫌に笑うお姉ちゃんの表情に、嗜虐的な面が色濃く見える。お姉ちゃんは俺をいじめて楽しんでる。尻尾がふりふりと揺れて、俺のことをバカにしてるような雰囲気。それを隠そうともしない。
だから、なのかは確信を持てない。でも、どんどん興奮が煽られるのがわかる。
「おーおー……♥ 大きくなったねー♥ でもまだ皮かむりの可愛いおちんちんなんだー……♥ ぴくぴくちっちゃいおちんちんかわいーねー♥ こんな可愛いのに精液ぴゅーってしちゃうんだねー……♥」
触れない程度に、でも離れないような、そんな近い距離でちんこの感想を言ってくるお姉ちゃんに対してどうすることもできない。ただ恥ずかしくて、身を縮こまらせる。
だけど当然、お姉ちゃんは見せるだけで許してくれるはずがない。
「じゃあ、ほら、おなにーしていいよー♥ 目の前の大好きなお姉ちゃんでちゅこちゅこっ♥ って、おなにーしなよー♥ 射精しないと絶対許さないからねぇー……♥」
ちんこのすぐ傍からこっちを見上げる視線に、言い様のないなにかがあった。いつもは優しくて綺麗で物知りで頼れるお姉ちゃんが、今はこうしてワガママで傍若無人で偉そうに命令してきて、しかもオナニーを見せろというありえない命令。
おずおずとぎこちなくちんこに手をやり、僅かに手を上下させる。
「……ん〜〜♥ 恥ずかしがらないでよー♥ 普段はもっとしゅっしゅってしっかりやってるんでしょ♥ これじゃお姉ちゃんつまんないなぁー……♥」
「で、でも……」
「でもじゃないでしょー♥ あー、そっかぁー♥ お姉ちゃんをおかずにしたいのに、お姉ちゃんのえっちなところが見えないからしこしこできないのかなー?」
「っ」
そう言いながら、お姉ちゃんは上体を反らして自分の胸を片手で持ち上げる。パジャマを着ててもわかる、その大きさ。形。ごくっと喉が鳴る。
「そうだよねー♥ 弟くんはお姉ちゃんのおっぱい大好きだもんねー?いっつもじぃーって見て、お姉ちゃんのおっぱいでドキドキしてるんだもんね♥ 見たいよねぇー♥」
「……み、たい」
「おー♥ ちゃんとお願いできるんだー♥ 弟くんはえらい子だねー♥ じゃあ見るだけだよ♥ 触っちゃダメだからねー♥」
震えた声でお願いしたことが功を奏したのか、お姉ちゃんは満面の笑みで首を縦に振ってくれた。
ぷちぷちとパジャマのボタンを外し、惜しみなく前を開いて大きな胸を露出させるお姉ちゃん。こんなに大きくて形のいいおっぱいなのに、お姉ちゃんはブラジャーをつけてなかった。
手に持っても余るくらいの大きさだけど、決して重力に負けずにつんと上向く綺麗な造形。先端はエロいピンク色で、乳首だってぷっくり膨らんで思わずつまみたくなるくらい。
「わー♥ 弟くんがっつり見ちゃってるねー……♥ お姉ちゃんのおっぱいそんなに気に入ったかなー♥ ほらぁ、今のうちにいっぱいおなにーしてお姉ちゃんのおっぱいを忘れないようにしなきゃ♥ 今日は特別サービスなんだぞー♥」
「ぅぐ……!」
「わ……わぁー♥ すごいすごい♥ かわいいおちんちんいっぱいごしごししちゃってる♥ 本気おなにーしちゃってる……♥ お姉ちゃんの前なのに全力のおなにーだ……♥ 男の子だぁー……♥」
こんなの、興奮しないわけがない。いっつもお姉ちゃんのえっちな姿を目に焼き付けては思い出して妄想しながらオナニーしていたのに、今は目の前にそれがある。しかも、普段よりも過激に。
お姉ちゃんも食い入るようにちんこを見つめ、感心と興奮を混ぜあわせたエロい表情。こんな光景、想像もできなかった。
「わわ♥ おちんちんの先っぽからおつゆ出てる……♥ わぁー……♥ 先走りだぁ♥ すごぉい……♥ お姉ちゃんのおっぱい見ながらおちんちんおなにーきもちいーよぉ♥ って興奮してるんだよねー♥ えっちだねー……♥ おなにーすごいねー♥」
実際、もう限界が近い。こうして言葉や表情や身体で興奮を煽り立ててきて、まだまだ快感に弱いちんこが耐え切れるわけがない。お姉ちゃんは俺の好きなことを全部わかってて、それをなぞるように、かつ一切触らずに責め立ててくる。
オナニーなのに声も出ないくらいに気持ち良すぎて、全身にぼんやりとした痺れが出てくる。味わったことのない興奮、感じたことのない快楽、そういうのが全部合わさって脳が処理できなくなってきてるのかもしれない。
だけど、それだけじゃ終わらなかった。
「そぉーだ♥ ちゃーんとおなにーを見せてくれた弟くんに、お姉ちゃんからきもちいーご褒美あげちゃおー♥♥ えへ、あむぅ♥」
「ぅえっ、ちょ――」
お姉ちゃんを制止する暇もなく、限界に近づきつつあるちんこに顔を近づけ、ねっとりした唾液を含ませた口で一気にちんこを咥えてくるお姉ちゃん。初めて味わう新たな感覚にびしびしと快楽が走り、下半身から全身へと気持ちよさが流れ込んでくる。暖かくてとろとろで気持ちいい、お姉ちゃんの口の中の感触。
更にもう一撃、トドメが押し寄せてくる。お姉ちゃんの口内の淫熱と同時に脳にどんどんと流し込まれていくもの。情報。ただの気持ちいい感覚だけじゃない。白澤の持つ特性。情報共有能力だ。ぱしっと脳内にパルスが溢れ、一瞬で浸透する。
俺がお姉ちゃんでオナニーしてるのを最初から知ってたこと。俺がお姉ちゃんのことをえっちな目で見つめてるのを最初から知ってたこと。そして、お姉ちゃんも俺でオナニーしていること。使用済みティッシュをネタにして、お姉ちゃんもたくさんオナニーしていたこと。洗濯する前の俺のパンツの匂いを嗅ぎながらオナニーしまくっていたこと。使用済みティッシュからどういう妄想でオナニーしていたのかって情報を読み取って、それもまた別にオカズにしてオナニーしていること。お姉ちゃんも俺のことが大好きなこと。今まで言い出せなくて、伝えられなくてごめんねってこと。俺のことが恋愛感情で大好きで、今までのスキンシップやプレゼントも全部家族愛っぽく隠した恋愛表現なこと。だけどきっかけが掴めなくて、たびたび俺の部屋の前でもやもやと立ち尽くしてたこと。今日、俺がオナニーした後にお姉ちゃんから離れたくないって呟いてるのが聞こえて、居ても立ってもいられなくなって一歩を踏み出したこと。本当に、俺が大好きなこと。お姉ちゃんとしても好きで、一人の女としても好きだっていうこと。十三年間黙っててごめんね、大好き愛してる。
「――――っ!」
「んぢゅ、ぢゅぷっ、んむぅっ♥♥」
脳が与えられた情報を認識し終えた瞬間に、奔流が噴き上がってびくびくと痙攣しながら射精を開始していた。どうしようもなく溢れだした感情が精液として放たれ、ずっぽりちんこを根本まで咥え込んでるお姉ちゃんの口の中に止め処なく流し込まれていく。
声も出せないくらいの強烈な絶頂。お姉ちゃんも苦しいはずなのに、そんな様子は微塵も見せずに喉を鳴らしながら飲み込んでいく。それどころか、舌で丹念にちんこを舐めとかそうとまでして、射精を限界まで促してくる。
絶頂快楽。抗えない、逆らえない、気持ちいい。流し込まれた情報を噛み砕く猶予すら与えられず、射精は止まらない。
「うぁぁっ、すきっ、おねえちゃ、すきぃっ」
「んぐっ、ちゅ、んぐ、んぐ、じゅるっ♥♥」
それでもさすがに、今日二回目の射精だ。いつまでもは続かない。波が引いていくように、射精の脈動が弱まっていく。最後に一回強く身体がぶるっと震えて、射精が終わる。
お姉ちゃんは口から零れて落ちた精液を手で受けながら、尿道に残ったものをちゅるっと吸ってちんこから顔を離した。
全身から力が抜けて、ベッドに横たわる。本当に動けない。お姉ちゃんに吸い尽くされたからだ。比喩じゃないのが笑えない。
「ちゅ、んく……んふぅー♥ すごいねー♥ 精液ってこんなに美味しいんだねぇー♥ えへへ……弟くんも気持ち良かったでしょー♥」
「……ぅ、ん」
「だよねー♥ すごいねー、すごいよー♥」
シーツを汚さないように手で抑えた精液も舐めとって、お姉ちゃんはご満悦そうに尻尾を振る。
「……それでさぁー♥ 弟くん、お姉ちゃんのこと……よくわかったよねー?ねー♥」
「うん……」
「照れないでよー♥ お姉ちゃんも弟くんのこと大好きなんだよー♥ じゃなきゃ、こんなことしないもんねぇー♥」
お姉ちゃんもベッドに腰掛け、ぎしりと軋む。いつの間にかパジャマも直していて、普段通りの優しいお姉ちゃんのような雰囲気にも戻っていた。だけど、その声はやっぱりいつもと違う。
愛情、恋慕、親愛。ただの姉弟関係じゃ説明できない、強い感情が込められた声色。
「ね♥ 今日から、お姉ちゃんと一緒に寝よーよ♥ お姉ちゃんと添い寝って、幼稚園くらいのときまでしてたよねー♥」
「そういえば、してたような……」
「してたよー♥ 弟くん疲れちゃってるもんねー、眠いよねー♥ このまま一緒におやすみなさいしちゃおっかー♥」
瞼が重い。ベッドの沈む感触から身体を動かせないから、お姉ちゃんの添い寝に抵抗できない。もちろん、抵抗するつもりもない。
「それじゃ、電気消しちゃうねー♥ 弟くん、お疲れ様♥ ちゃんとおなにーできた弟くん、かっこよかったよー♥ また明日もしようね♥ おやすみなさい♥」
かちりとお姉ちゃんが電気を消し、隣に潜り込んできたところで、すとんと落ちていくように急速に意識が沈んでいく。
身体に満ちた疲労感は、心の中で暖かく変化したお姉ちゃんへの思いをより確かに実感させてくれた。
お姉ちゃんと俺の仲は、もう正真正銘のカップルだった。
16/02/14 08:46更新 / 鍵山白煙