イグニスの火刑 (ダークプリースト
黒衣の聖者 外伝 くべられた聖女
イグニスの火刑
聖女が見つかった。先日尋問した名も無き教団兵士から聞き出した場所に、聖女と彼女を守護する民衆が魔王軍により捕らえられた。
聖者や聖女はある意味で勇者より厄介だ。勇者は剣を取り主神教の信者や主神教団を守る。武力であるが故に武力で制する事が出来るが、聖者や聖女はそうはいかない。
存在そのものが信仰による奇跡そのものだからだ。
主神教の教えや聖典それそのものは正しく理解をし正しく導けば万人を救う素晴らしいものだ。かつての私もそれに縋った。
しかし信仰はたやすく、意図も簡単に狂信者を作り出す。そしてその狂信が何百の勇者を作り、何千の愚かな民衆に武器を取らせる。気付いた時には幾つもの国の何万の憐れな兵士が血で血を洗う。
『……世が乱れ、異言が廃れ逝くも、世の黄昏れまで残りしもの、すなわち、信仰、希望、愛なり……ハッ!よく言ったものだ。』
それが全ての苦しみや悲しみ、憎悪の原因とも知らずに。
『新約聖典コリテア人への手紙……第1でございますね?旦那様、如何されました?』
『……なんでもない。ただ、アレを見ているとそれを思い出す。聖女とは憐れだな。』
『左様で……しかし、壮観でございますね。』
『いや全く。だがこれで……ククク、死者の国への"借り"は返した……』
ノーマンズランド国立闘技場はさながら地獄の様な光景が広がっている。
『堕ちろ。』
ドガッ!
『うわぁぁぁああ!!!』
ドサっ
『わーい……だんなさままささまぁー♪』
ぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞる
『ひぃ!!……よ、寄るな!!寄るなー!!うわぁぁぁぁあああああああああ……………………』
ズリズリズリズリズリ…………
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
拷問ショーを見物している愚かな民衆……もとい、暇人供はまるで三文芝居を見る様なはしゃぎっぷりだ。
魔王軍の兵士達に命じ、闘技場に大きな穴を掘らせ、ゾンビ共をイワシの瓶詰めの様にひしめかせた。そこに聖女と一緒に捕らえられた愚かな西方主神教信者の内、憐れな未婚の男をおよそ300人ほど選び、一人づつ"釜"の中に蹴落としていく。
ご丁寧に"釜"の前には粗末な木の柱が2つ立っていて、その間に吊るされた木の板には文字が書かれている。
"この門をくぐる者は全ての希望を捨てよ"
ククク……ハハッ!アレは彼らにとっては地獄の門も同じだ。叫び声は静かに消えるように死者の群れに飲み込まれていく。さぞかしあの中は楽しい事になっている事だろう。
聖女は祭壇の上にて両手、両足を縛られ、木の柱に縛られてそれを泣きながら見ている。足元には堕落の木と触手大樹の枯れ薪が。
頭には魔界銀製の頭蓋骨粉砕機が取り付けてある。神に祈るたびに魔界銀製の万力が頭蓋骨と脳みそを直接締め上げる。絶頂スレスレの苦痛に似た快楽で死ぬほど苦しいが……死ねないんだなぁこれが。
頭蓋骨粉砕機は手を拡げた修道女の型をしている。聖女の頭を締め上げている万力の先は修道女の手になっている。目を瞑り、穏やかな表情を浮かべた修道女の両手の平には魔法陣が半分ずつ彫られていて万力が全て巻かれた時、修道女の手が合わさり、聖女の頭の中で術式が完成する。
しかし、頭蓋骨粉砕機だが魔界銀製ゆえに頭蓋骨を突き破るが粉砕しない。……信仰粉砕機とでも名付けよう。それがいい。
キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル
『あ"あ"ぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
錆びついた蝶番が軋む様な嫌な音と共に聖女が汚い声で絶叫する。祈ったな?
嬉しい事があっても主神。
悲しい事があっても主神。
辛い事があっても主神。
主神、主神、主神、主神!!
条件反射の様に祈る、マゾ信者ばかりだ。おかげで仕事がはかどってしょうがない。
『……ぐっ……な、なぜこんな残酷な事を!?私を!私一人を焼けば良いでしょう!?』
『聖女よ……それじゃあ意味が無いんだよ。それに、お前の様な者を鞭で嬲っても面白く無い。』
『どうして!!』
『どうしてだと?……では聞くが、西方主神教の為に何人死んだ?西の国に戦火はもとより、中つ国アシュマール諸国への侵攻、ユタ人の弾圧、南の大陸や新大陸での奴隷狩り、原住民の駆逐、異教徒弾圧で何人死んだ?免罪符交付による経済混乱で首を括った農奴が何人いた?先のオランジュ独立戦争では魔王軍介入までの間に主神教福音主義派を何人殺した?』
『なっ!!』
『ではもっと端的かつ具体的に聞こうか。お前は憐れな主神教信者何人に武器を取らせ、何人を戦わせ、何人を殺し合わせ、何人を死に向かわせたんだ?』
『…………。』
『祈りの場では人の子の女は口を閉ざすべし……沈黙は良い答えだ。……こんな残酷な事を?お前たちには言われたくは無い。』
『あなたも同じでしょう。何人手に掛けましたの?ベルモンテ王国の高等審問官"黒衣の聖者"殿ぎゃぁぁあああああああああ!!!』
キュルキュルキュルキュルキュルキュル
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
『口の利き方に気をつけて貰おう。』
『ぐっ……はぁ……く、悔い改めればあなたの罪も……主神様はきっと……赦してくださる……!今なら……今なら……まだ、間に合うのです!』
『……なるほど、聖者らしい立派な言葉だ。これだから……人間は滅びた方が良いのだ。話し戻そう……死者の国には少々借りがある。お前を探し出すのに力を借りたんだ。あの憐れな主神教信者共その礼だ。人が戦乱を起こす度に死者の国は広がっていく。それで死者の国の人口は爆発的に増えるが、増えた魔物娘に対して肝心の男が足りないのだ。見ろ……』
見ると年端もいかない少年1人に10名のゾンビが群がって裸に剥いている最中だった。
『ひぃ!!』
『なかなかに激しいなぁ。けっこう。実にけっこう!……あの少年に群がってるのは力尽きた教団兵か教団兵が殺した人間の兵士の成れの果てだ。聖女よ、お前に寄り頼み、縋った憐れな連中は死者の国の者に与える。お前の相手はその後だ。』
『主神よ……あ"あ"ぎがぐ!!!』
ミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジ……
また祈ったか。学習しない。
主神の加護を受けた聖女の祈りの力は強大だ。祈りと加護がある限り聖女に手出しが出来ない。カタリナ殿下直々に加護の証しである聖女の聖痕に封印を施して下さった。
それでやっと拷問らしい事が出来る様になった。
それから、信仰粉砕機で祈りを封印だ。
それでも主神の力は凄まじい。加護と祈りを封印してもその残り香が聖女を護ろうとする。
そ こ で 、このショーだ。主神は聖女を護るがあの憐れな連中は守らない。
信仰粉砕機のせいもあるが、祈れば祈るだけ苦しいぞ?
折れろ、折れろ、折れろ……
さあ、たっぷり無力感を味わってくれ。
。
。
。
。
……299
ズリズリ……
『ひぃ!!嫌だ!や、やめろ!!』
ズリズリ……
『聖女様ぁ!聖女様ぁ!!助けて!助けてください……』
『ほら、助けを求めているぞ?助けなくて良いのか?』
『あ……あ……』
良い顔になったな……
『全知全能者たる主神だ。信徒を見捨てる筈は無いのだろ?』
『主……神……様……彼らをヲ"お"ぁ''あ"ぁぁあああああああああ』
キュルキュルキュルキュルキュルキュル
ミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジ
ズブリ…………
『ひゃは!!?』
トプン…………
遂に信仰粉砕機が頭蓋骨を貫いた。もう少しだ。
『ハハハハハハハハハハハハハハ!!…………墜とせ。』
ドガッ!
『嫌だ、嫌だぁぁあああああ…………』
ドサッ……
『だんなさまーー♪あひゃ』
ぞるぞる
『おいで〜♪ひひひひひひ』
ぞるぞるぞるぞる
『くるな!くるなぁ!聖女様!聖女サマ!!お助けください!!お助け………………』
ぞるぞるぞるぞる
『私を……焼いてください……私を……焼いて……』
ガッ
『つれないなぁ……もう少し付き合え。』
合図を送るとダフネは聖女が縛られている祭壇の前に、手枷と足枷がついた拷問椅子を用意した。
300人目はここに座る。
『……我、"黒衣の聖者" は国家拷問官、堕落神教会司教の権限の下に禁魔魔法魔術、禁道具仕様権並びに異端審問権を発動する!』
『……発動を承認。"黒衣の聖者"よ……主神の手先に慈悲はいらないわ。』
幕屋から見ているカタリナ殿下が怒りと憎しみを聖女に向けた。
闘技場にいる者全てが肝を冷やした事だろう。ダフネは怯え切ってしまっている。
私は仰々しく礼をし、兵士に命じ、最後の1人を連れてくる。
引き摺られてやって来たのは年老いた神父だ。
『……聖女様……マリヤ様……』
聖女の目が見開かれ、懐かしさと驚嘆の色を写した。
『ヨセフ……な……ぜ……?』
『感動の再会のところ悪いが、お前の頭の中を見させてもらう。リブラーリ・メモリア(汝の記憶を!』
リブラーリ・メモリア……この呪文は術者が対象の心の中に入り、記憶や感情などの情報を直接見る禁術だ。もちろん、相応のリスクがある。場合によっては術者に精神汚染の危険がある事や、反対術式に弱く術者自身の心や記憶を相手に見られる危険もある。
しかし発動環境を整えさえすれば、あるいは自身の精神や魔力が強力な場合には相手の情報を過去から現在に至るまで自由に見る事が出来、大切な記憶を消したり、操作したり、書き換えたり、忘れたい記憶を蘇らせたり、精神を汚染し、心を操ることさえ可能だ。
精神拷問には打って付け……悪用しようと思えば幾らでも悪用できる!!
今の聖女はカタリナ殿下の封印術式で加護を封じられ、信仰粉砕機で祈りを封じられ、もはや苦痛とも言える快楽に苦しみ、ただただ見ている事しか出来ない自身の無力さに打ちひしがれ、頼みの主神に見放された絶望感に包まれ、心が折れている。
ククク……
さぁ、見せてみろ……
お前の心を……
私は聖女の心の中を無理やり術式でこじ開け、中に入っていった。深く、深く……
貧しい農家が見える……
戦乱の影……
緑の野原の上……
手を引かれた……兄の姿……
名前はヨセフ…………両親は幼い頃に死に……
彼はたった1人の家族……
身を粉にして働く姿……
『いや!!いや!!!覗かないで!!!』
暖かい背中…………
ゴツゴツした働き者の手……
ほう……?
なるほど、なるほど♪
『いや!!いや!!やめて!!!』
禁じられた想い……
儚く淡い愛情……
『いや!!入ってこないで!!!主神様!!!ぎゃぁぁぁあああああああああ!!!!』
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
祈ったな……映像が乱れたじゃあないか。聖女ともあろうお方が、"いけない絵画"の活版印刷を母親に見つけられた年頃の男の子のように取り乱すんじゃあないよまったく。
さて……
兄ではなく、異性へ向ける歪んだ想い
幼い身ながら自分を慰めた夜……
湿った想い……濡れた右手……
熱を帯びた吐息
しかし、その翌日には納屋で自身に鞭を打った
それすらも快楽を感じていた……
ははっ!ここはリピート再生しよう♪♪
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪
『お願い!見せないで!』
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪♪
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪♪♪
『いやいやいやいやいやいやいやいやいや……』
まぁいい。つぎつぎ♪
貧しくも平凡な人生を歩む筈だった……
ある日、主神の声……
胸に刻まれた聖痕……
金色に変わった自身の瞳……
聖痕の痛み……
兄と引き離される悲しみ……
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』
ここもリピート再生。
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』
クハハハハハハハハハ!!!
楽しいなぁコレ♪♪
どれどれ?もっと覗こう。
光輝く大聖堂……
ロマーナ法皇から下される主神の神託……
自身に縋り付く人々の手……手……手……
中つ国地方、砂漠の国での戦……
布教と救命に赴いた聖地サレムの街……
祈れば兵士の傷は癒え、戦さ場の矢や銃弾は避けて通った……
ある日見かけた光景……
『やめて……!!これ以上入って来ないで!思い出させないで!!!』
ギャーギャーうるさくてかなわない。
ゴリゴリギリギリゴリゴリギリギリゴリギリギリゴリ
『ーーーーー!!!!!!!………………』
よし、静かになった。
命を救った兵士達が……
村々を焼き、殺し、村娘を犯し、主神の旗を立て、略奪する姿……
"殺せ!殺せ!異教徒など滅びてしまえ!"
"主神のご加護だ!聖女様万歳!"
火と鉄と血の匂いの中で口々に叫ぶ兵士達……
鎖に繋がれ連れて行かれる女子供が私を見た……
その目が頭から離れない……
ん〜これは、これは♪深い悲しみの匂いがしますねぇ〜♪
リピート再生☆
『あ……いゃ……見ないで……わたしを……見ないで……』
リピート再生☆
『あ……あ……ごめん……なさい……』
リピート再生☆
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ……』
リピート再生☆
『ゆるして……私をゆるして……ゆるして……』
ゆ・る・さ・な・い❤
さてさて、続き続き。
奇跡の力……もたらされる信仰……
しかし、片時も忘れていない
恋い焦がれる兄ヨセフ……
自身を支える為に神父になったヨセフ……
『やめて!!それ以上はやめて!!』
7年ぶりにイスパール王国での再会……
"マリヤ……なぜ年をとっていないのだ!!"
兄の恐れを写した目……
まるで異形の者を見る目……
向けられる兄からの畏怖……
見れば少し老けた兄の顔……
主神の加護により年を取らない自身の身体……
ずっと17歳のまま……
聖痕……
祈りの力……
呪いとなんら変わりはしない……
恋い焦がれる兄に会うのが恐怖に変わった……
兄の拒絶が怖い……
あの眼差しが怖い……
聖女の力が怖い……
でも好きで好きでたまらない……
『いや!!思い出させないで!!!せっかく忘れてたのに!!!思い出させないで!!!思い出したくない!!思い出したくない!!!』
リピート再生開始♪♪♪
『いゃぁぁぁあああああああああ!!!!』
まぁ、コレで十分だろう。
術式を解くとスウッ……と水の中から浮かび上がるように意識が自分の身体に戻ってくる。
クククク……
主神への信仰も……
兄への想いも……
恐怖も……
主神の呪いも……
聖女としての義務も……
自身の歪んだ被虐的な性癖を満たす為に存在する。どんなに綺麗事を取り繕ったとしても本質はソレだ。
聖女としてふさわしい振る舞いや敬虔なる西方主神教信者としての禁欲と自制の裏にはどうしようもない欲望と劣情とが蠢めいている。
なんて事はない、こいつは淫乱な処女だ。
『汚れちゃった……私……ケガレちゃった……』
『いや?お前は元々汚れている。それを知らなかっただけだ……主神もさぞ面白がっていた事だろうさ。とんだ道化だ。』
『主神……様……あ"あ"ぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』
ぬちゃぬちゃぬちゃ……
信仰粉砕機が脳みそを直に締め上げる湿った音が聞こえる。
無様だなぁ……
私は拷問椅子に縛られているヨセフ神父の方へ向く。
『……私はあなたを赦します。しかし、ほんの少しでもあなたに良心が残っているのであれば、おやめなさい。』
『なぜそう言う?』
『恐らくあなたは鞭を振るう度に心を痛めている……そうではありませんか?』
『不思議な方だ。あなた自身の身より、あなたをこれから痛めつける私の事を心配するのか。しかし……そうだとして、やめられると思うか?』
『……無理でしょうな。私たちに降りかかるこのような仕打ちはすべからく私たち人の子が蒔いた種……。主神教を利用し、聖女を傀儡にした結果です。あの亡者達も我々人間が憎み憎まれ、殺し殺され、亡者に成り果てた。同じ人の子なのに……同じ主神を信じる者なのに。ですから憎むべき魔物と言えど、あなたとこの国の方々を恨む権利は私たちには無いのです。遠の昔に私たちは神を失っていたのかも知れません。』
老神父は全てを悟った目をして言った。
この手の拷問対象は厄介だ。覚悟とは少し違う。冷静に、達観した感情で自らの運命を受け入れている。こういう奴に精神的な揺さぶりや責め苦は通用しない。
『ヨセフ神父……残念です。あなたとはもっと早くお会いしたかった。』
こういう奴は思い切り痛めつけるしか無いのだ。
『これも人の子の罪なのですね。ベンジャミン殿……私と聖女様……いや……妹マリヤで憎しみの連鎖は終わるのでしょうか?』
『いや……人間が人間である限り終わりはしない。』
私は空中に魔法陣を書く。
『……そうでしょうな。人間とはいかに罪深く、悲しい生き物ですから。』
もっと早くこの老神父と会っていたら、私は歪まなかったかも知れない。もっと早く会っていたら拷問官にはならなずに済んだかも知れない。主神教を信仰する者共が皆彼のようだったら……いや、よそう。
目の前の老神父はあそこで縛られている聖女なんかよりも余程気高くみえる。
彼こそ真の聖者なのかも知れない。
聖女の事を諜報機関で調べたら、唯一の肉親として彼が浮上した。その後の調べで聖女との関係や現在に至るまでが出て来たのだ。
ヨセフ神父は聖女が唯一愛した個人とも……
私は妻であり従僕であるダフネに命じ、この老神父を秘密裏に連れてきた。……彼は貧しい辺境地で教会孤児院を開いていた。
孤児院は酷い有様で、碌な支援を受けず、それどころか戦争の為に食料やなけなしの資金や教会の鐘まで王侯貴族に収奪されていた。
それでもヨセフ神父は孤児院に40年に渡りへばり付き、孤軍奮闘していた。
この老神父はダフネに攫われる直前まで照りつける太陽の下で額に汗をし、手に鍬を取り、痩せこけた土地を子供たちの為に必死に耕していたらしい。
『神父様が天使様に連れてかれた……』
攫われる時に、子供らの1人がそう言ったそうだ。
その後、私はカタリナ殿下に取り次ぎ未婚のベルゼブブを1人送り込んだ。蝿の女王たるベルゼブブは豊穣と富を司る悪魔の末裔だ。上手くやるだろう。少なくとも飢えて死ぬ事は無い。上手くやらなくとも、どの道カタリナ殿下の手が下る。
そんな事を考えながら魔法陣を書き終え、ヨセフ神父の胸に烙印を刻む。
『あ"があ"っ!!!』
施した術式は対象を傷付けずに全身の神経という神経系統に純粋な痛みのみを与える術式だ。最も素晴らしいのは五感や内臓やはたまた血液の循環でさえも……生きている事そのものに苦痛を伴う責め苦を与えるその無駄の無さだ。ベルモンテ王国高等審問官時代に何度か使った事のある魔法だ。私は鞭の腕とこの術で高等審問官となり"黒衣の聖者"と呼ばれた。
『む"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"……』
私は呻き声をあげるヨセフを尻目に聖女の前に立つ。
『最終審判を!!!』
私はこの国の国主、リリムであらせられるカタリナ殿下へ手を向け少々大袈裟に跪くと、しどけなく横たわっていた殿下はゆっくりと立つと、幕屋から出てと優雅に両腕を広げた。
ザザッ!!!
その場に居る全ての者がカタリナ殿下に頭を垂れ、また彼女を見る。
カタリナ殿下は怖気を振るうような残虐は微笑みと共に親指を立て、迷う事無く首の前を掻き切る様に動かし、その指を地面に向けた。
ザザーーーーーーーーーーーーーーーッ
魔王軍の兵士達がドラムを鳴らした。オーベルシュタインの時も、ヒルダの時も、よくもまぁ毎回毎回ご苦労な事だ。
ん?知らないだと?では前作を読むと良い。
『被告人マリヤ・アンジェロは聖女である罪!聖痕を所持している罪!主神からの加護を受けた罪!奇跡を行使した罪!西方主神教を西の大陸に布教した罪!信仰を集めた罪!主神に祈った罪!禁欲主義の罪!敬虔なる主神教信者である罪!その結果として西の大陸の戦乱を長引かせた罪!内乱の原因たりえた罪!親魔物国及び魔界国家の正義の侵略を阻んだ罪!国主であるカタリナ殿下に不敬を働いた罪!人間である罪!人間の雌である罪!自身の欲望に目を背けた罪!そして……兄ヨセフを愛さなかった罪により、"イグニスの火刑"に処す。……いと慈しみ深い堕落の神よ、この罪深き魂を救いたまえ。そうあれかし。』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
愚かな民衆はまるで見世物小屋の猿のようにはしゃいでいる。此奴らが忌み嫌う主神教が異教徒狩りや魔女狩りでやっていた火刑の真似事をすれば、嫌悪感から少しは静かになると思ったのだが、喜ばすだけだった。
『……さぁ、聖女よ。最も愛する者を救えない無力を呪いながら火にくべられるがいい。』
取り出したのはランタンだ。中にはイグニスの火が煌々と燃え盛っている。
ガシャン……
ボゥ……パチパチ……コォォオオオ
ランタンを割るとイグニスの火は瞬く間に聖女の足元に組まれた堕落の木と触手大樹の枯れ薪に回る。さぁ、望み通り火にくべてやったぞ?その火は高魔力の塊だ。
祈れ祈れ。お前に出来る事はもう祈る事しか無い。
祈りと祈りと祈りの果てに、神は降りて来られるのだから……
ゴォォオオオオオオオオオ…………
『……なぜですか?』
ゴォォオオオオオオオオオ…………
目の前でヨセフが苦しんでいる。
涙が止まらない……
私には見ている事しか出来ない……
『なぜこのような……仕打ちを……』
助けたい……助けたい……
目の前にいるのに……
煙と陽炎の先は余りにも遠く……
『神様ぁ"ぁああ』
ヨセフ……ヨセフ……に……い……さ……ま!!
キュルキュルキュルキュル……
『どうか……ヨセフを……兄さまを……あぎっ……助けて……私は……ぐっぁっ……焼けて……落ちても……あぎっ……構いません……どうか……!!!』
キュルキュルキュルキュル……ガキン!!
その時、私の中で何かが解き放たれるような……
声が聞こえる……
あぁ……神様……神様……!!!
コ"ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ…………
炎の中で輝く星を見た。……ククク、目論見通りだ。
彼女は祈った。
信仰粉砕機のネジが全て巻かれ"修道女"の祈りが完成した。
"修道女"の手に仕掛けたのは叛逆の魔法陣だ。ありとあらゆる魔法を逆に作用させる。
カタリナ殿下が施した聖女用の弱体化の封印術は魔力を放出し続ける強化術式に。
マリヤが触れるありとあらゆる魔法や術式を逆に作用させる。
この術式を使おうと思った時に、私はある仮説を立てた。主神が施した聖痕も理論的には可能じゃないのかと。
結果はご覧の通りだ。聖痕は穢れ、聖女から聖なる力を奪い、魔を取り込んでいる。
主神よ、見ているなら見るが良い……お前が施した聖痕の" せい "で聖女が魔に堕ちるぞ?
暁の金星は地に墜ち闇に染まる。主神よ、お前は信じる者を救いはしない。旧約聖典アイザックの書に記したように、お前は堕ちる者を止めやしない。
ただ見ているだけだ。であるのであれば……
今度も見ていて貰おう。
やがて紫色の光と共に炎が消え失せ、中から裸の女の影が出てきた。
頭には目を見開いた修道女の拷問機を取り囲むように角が生えている。
闇色の長い髪は解かれ、影のようにうねっている。
背中には黒く染まった天使の羽が。
尾骶骨から生えている尾はいやらしくくねくねと動いている。
素晴らしい……
完全なダークプリーストだ。
『ククク……アハハハハハハ!!!期待していた以上だ。実に素晴らしい!!……生まれ変わったお前に我ら堕落神教会は贈り物をしよう!』
堕落神へ祈りを捧げると、鐘の音と共に陰惨な笑みを浮かべる3人のダークエンジェルが現れ、マリヤを祝福した。
リン♪ゴーン♪♪
リン♪ゴーン♪♪
"おめでとうマリヤ……あなたは堕落神さまと共におられます。これはあなたへの祝福です。"
魔界銀が鎖となってマリヤの尻尾に巻きついた。
"おめでとうマリヤ……この良き日に祝福を。"
聖者をも堕落させる乳香の香りがマリヤを満たした。
"おめでとうマリヤ……あなたに不滅の快楽があらんことを。"
永遠の快楽を約束する没薬がマリヤにもたらされた。
"""おめでとう、おめでとう、マリヤ……"""
ゴーン♪♪ゴーン♪ゴーン……ン……
そうすると3人のダークエンジェルはマリヤに黒い修道服を着せ、鐘の音と共に消えた。
『私"黒衣の聖者"は堕落神教会司教の権限と名の下に、マリヤを堕落神の加護を受けたる堕落の聖女と認定する!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……
愚かな民衆は喜びの声あげ、跪いて祈る者までいる。
祝福の中でマリヤはひたひたと歩き、拷問椅子に縛られているヨセフの拘束を解いた。
『にいさま……にいさま……』
拷問術式によりヨセフの老体は生命の危機を感じたのか年甲斐もなくビンビンになっている。その痛みは幻も同然であるのに律儀なものだ。
マリヤはそっとヨセフを抱き寄せた。すると、ヨセフの顔から苦しみが消えた。
『にいさま……』
『聖女様……聖女様、何を!?……いけません!』
マリヤがヨセフの唇を奪おうとしたので、一瞬正気に戻ったヨセフはマリヤを突き放した。途端、ヨセフはまた苦しみ出した。
『がぁあ……ぁが……!!』
『にいさま……』
のたうち、地面を芋虫のように這いずり回るヨセフにマリヤはそっと触れた。
『がっ……!?痛みが、消え……?』
『……神は私に言ったのです。"行ってお前の成すべきを成せ"と……にいさまが苦痛から救われるには私が触れ続けるしか無いのです。だからこれは……しょうがない。仕方がないの……しょうがない事なのです。』
マリヤはそう言うとヨセフを押し倒した。聖女らしからない獲物を狩るケダモノのような目をしている。
ヨセフの頬に左手をそっと当てて、右手は修道服の中で自らの秘所をくちゅくちゅと音を立てて弄っていた。
『にいさま……あなたを苦痛から救うにはこうするしか……』
『聖女様!いけません!!……マリヤ!はなれなさい!』
そんな世迷言に耳を傾ける筈もなく、マリヤは自らの秘所にヨセフを導いた。
ずっ……ブチッ…………
『ひうっ!!!はぁ……❤❤❤❤』
『は……ぐ…………!!!!』
ビクン!ビクン!ビクン!ビクン!
2人共に声も出せずに悶えている。処女と童貞の交換おめでとう。
ところで諸君は知っているか?苦痛と快楽は隣り合わせで、人間も魔物娘も痛みや苦しみを与えられた時、脳みそが感じ取り認識するのは快楽と同じ……
至上の幸福らしい
叛逆の術式によりヨセフに苦痛を与えた拷問術式は快楽の呪印よりもタチの悪い効果を発揮している。反転した術式は、五感や内臓やはたまた血液の循環でさえも……生きている事そのものに純粋な快楽を与える。
加えてイグニスの火刑で与えた魔力はダークプリーストへの魔物化で使い切っており、カタリナ殿下が施した弱体化封印術式は強化された魔力を無制限に垂れ流す。
いくら精を食べても満たされない正に暴食の聖女だ。
『おなかのなかがぁ❤あったかぁ〜〜い❤❤もっと❤……もっともっともっともっともっともっともっともっともっと❤❤❤❤』
たんたんたんたんたん❤
『あがっ……ひ……!!!』
ドクドクドクドクドクドク……
『にいさま❤にいさま❤あったかい❤にいさまにいさまにいさまにいさまにいさま!!!気持ちいい❤あっ❤あっ❤気持ちいい気持ちいい気持ちいいキモチイイ❤❤❤』
たんたんたんたんたん❤
ドクドクドクドクドクドク……
大食らいの万年腹ペコ魔物娘相手にご老体の身体では心許ない。
では、どうなる?
ヨセフの老体はマリヤに精を与え続ける為に垂れ流しの魔力を取り込んで急速にインキュバス化を進めている。
『ぐっ……っ……あぐ……い"……い"……』
反転した拷問魔法の快楽も合い間ってか、もはや壊れた蛇口のようだ。吐き出した精は垂れ流しの魔力から強制的に補充される。
2人は与えながら奪い合う。美しいではないか!
さぁて、どうなった?
精を吐き魔力を取り込む度にヨセフの肌はかつての艶を取り戻し、白髪は色を取り戻す。やがて……マリヤに股の下には少年が1人。
ククク……
17〜18歳の少年か。なるほど1番"お盛んな"年頃だ。
これならこの大食らいを満足させられるかもしれない。
たんたんたん❤たんたん❤たんたん❤
『あのっ❤ころの……あっ❤にいさまだ❤❤にいさま❤あっ❤まりや……しあわせ❤にいさま❤んんんんん❤❤❤おいししししいいいいいいい〜〜〜❤❤❤』
その味を覚えておけ……
私は交わる2人に歩みより、魔法銀のペンで術式を空中に描く。強制絶頂術式を2人に施す。
たんたんたん❤❤……
『きもちいい❤きもちいい❤きもちいいよぉ……』
『まりや!!まりや!ぁあ!!』
たんたんたんたんたんたんたんたん❤……
『あれ?……』
たんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたん
『いけない!!きもちいいのにいけない!いけないよぉ!!!』
そうだろうなぁ……ククク……
強制絶頂術式は叛逆の術式で効果が反転されているんだ。イケる訳はない。魔物娘相手にこれほど効く拷問はないんだよ。
かわいそうにかわいそうに。どんなに気持ち良くてもそれは叶わない。イキたくてもイけず、精を胎に受ける事も出来ない。胎に精を吐き出す事も出来ない。快楽を感じるも、それは幻と同じだ。
堕落神教の真理を理解するまで、遠く東の国の仙人のようにたっぷりと霧霞を食べて貰おう。
『"黒衣の聖者"の名において、汝マリヤとヨセフに試練を与える。ヴェニ・イジュトゥール・サクロパグム(来たれ、棺よ』
巨大な棺桶が2人を呑みこむように現れた。
『これからお前たちにはパンデモニウムに行ってもらう。1年も経つ頃には堕落の真理を理解出来るだろう。そうそう、その術式は"私以外の誰にでも解ける"ようにしておいた。堕落神の無限の愛と加護があらんことを……』
たんたんたんたんたんたん……
『いや!といて!!のろいといて!!いきたいいきたい!!いかせて!!いかせてー!!!』
『そうあれかし♪』
ギィ……バタン………バシューー…………
封印完了♪
……それでは、早速呼び出してみよう。
パンデモニウムは時の流れが止まった無限に広がる空間だ。したがって正しく条件を組み込み、術式を発動させれば1年後のマリヤとヨセフを召喚することが出来る。なんなら10年後のやつらを呼ぶか?
召喚術式を書き終え、私は民衆に向かい聖職者然と両手を広げた。
『諸君!!堕落神がおわすパンデモニウムは知っての通り時間の概念が無い世界だ。……これより、堕落の試練を乗り越えた2人を召喚する!!』
ワァァアアアアアアア!!!!!
次のショーではこの狂った民衆に生贄を放り込んでみようか?……それも面白そうだ。
『出でよ、暴食の聖女よ!!』
棺桶の蓋が開き、中から紫色の煙と淫水が吹き出してきた。
煙の奥に人影が2人……
『べんじゃみんさまだ!!といて!のろいといて!!いちねんだった!たったよ〜!?いかせて!!いきたい!!いきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたい!!!!!!』
『マリヤ……マリヤ!!わたしのマリヤ!!』
ザブンザブン……
溢れた愛液のプールに浸かっている。2人の肌は禍々しい褐色に染まり、髪は真っ白になっていた。
マリヤの下のお口に咥え込まれているヨセフの逸物は快楽と絶頂禁止の効果でドス黒くグロテスクに肥大化している。主神に使えるシスターですら見ただけで絶頂するだろう。
それにしても、凄まじい淫気と魔力だ。やり過ぎたか?まぁいい。
『お前は主神教の聖女のはずだ。主神への信仰はどうした?』
『しゅしん!?どうでもいい!もうあんなのどうでもいい!!にいさまがいればいい!!』
完全に堕ちたな。ヨセフとの睦合いの方が主神より大切らしい。
たんたん❤ぱちゅん、ぱちゃぱちゃ❤
『にいさま!!にいさまにいさまにいさま!!』
『禁じられた愛だ。許されることではない。それでも愛すのか?』
『それでもいい!!にいさまがいればいいの!!しゅしんがじゃまするなら!!』
『邪魔するなら?』
『しゅしんなんていらない!!いらない!!』
『ククク……ハハハハハ……アハハハハハ!!良く言った!!』
私は右手を掲げる
『祈るがいい。真の愛を貫く堕落の聖女よ、堕落神の加護があらんことを!!』
私は彼らにかけられた強制絶頂術式を解いた。
その瞬間
『『お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』
ゴパァ!!ゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプ!!!!!!
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク
濁流が流れるような音と共に精が吐き出される。
究極のスローセックスだ。意識が月まで吹っ飛んでもおかしくはない。
全く、汚いアヘ顔だ。前衛絵画よりも酷い有り様だ。
私は次に魔法のペンで模様を描いていく。チャームだ。例えば、鷹や鷲の紋様は戦での武勲をもたらすと言われ、薔薇や百合は主神を讃え純潔を守るとされている。
描いたのは主神教の聖鳥ある鳩の紋様と、主神を讃える太陽の模様だ。
描き終わり、その出来に我ながら惚れ惚れする。カタリナ殿下の冷ややかな視線は気になったが……まぁ良いだろう。どうなるか幕屋からご覧あれ。
彼らに転写すると叛逆の術式が発動した。太陽のシンボルはその証である光の模様が溶け出し、集まって別の球体を作り太陽を飲み込んだ。
鳩の模様は翼が散り、蠢き、蝶の模様となった。
主神の力と権威の象徴である太陽を魔の象徴である月が穢しその力を呑む日食の模様へと変わり、信仰の象徴である鳩の模様は美と性の象徴である蝶へと変わった。
これを見たカタリナ殿下はご満悦なご様子だ。現金なものだ。
さぁ続きをしよう。
『ククク……喜べ、お前達は永遠に1つになれるぞ。』
月まで行ったまま戻って来ない2人にプレゼントだ。魔法で2つ首輪が付いた鎖を用意した。この首輪はサイクロプスの熟練の職人が鍛えた物だ。着けたら最後、外れる事はない。
魔界銀は魔力を媒体し伝導する性質を持つ。術式も例外ではない。
ガチン!ガチン!
『『!!!!????あべべべべべべべべベベベベベベべべべべべべべべベベベベベ!!!!!』』
2人を繋いだ瞬間、2人は飛び起きて汚い再び叫び声を上げた。
ヨセフにはカタリナ殿下が施した弱体化封印術式が反転、強化された魔力を放出し続ける術式が施された。……男性がどこから魔力を放出し続けるかだって?……お察しの通りだ。
マリヤには反転した拷問術式が容赦なくキャパオーバーの快楽を与えている。
『ぎゃぁぁあああああああああ!!!!ぃぐ!!いぐ!!!いぐの"どまん"な"ぃ"い" !!!!!よ"ぜふぅ"!!!よ"ぜふぅ"!!!ぎ も" ち" ぃ" い"!!!!ぁぁあああああああああ!!!!!』
『ーーーーーカハッ!…………ヒュー……ヒュー……お''ぎがぐっ……ぎはぎにがぐぎがぐぎが!!!!!!』
ゴパァ!!ゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプ!!!!!!
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク
…………以下略。
反転、強化された術式により、快楽が快楽を呼ぶ終わりの無い絶頂だ。このまま何方が何方か分からなくなるまでこうしていて貰おう。
しばらくしたら、辺境にでもやって堕落神教を布教させよう。
民衆から金貨と花が投げられ、色とりどりの雨が降る。
『お疲れ様でした。』
そうするとダフネが近寄ってきた。
『旦那様はやはり、お優しいお方でございます。』
『なんの事だ?』
『旦那様が仰っていた新訳聖典コリアテ人への手紙第1……世が乱れ、異言が廃れ逝くも、世の黄昏れまで残りしもの、すなわち、信仰、希望、愛なり……』
『何が言いたい?』
『旦那様はあの方々が二度と引き裂かれ無いように、ヨセフ様には苦痛の術式を。マリヤ様には叛逆の術式をお使いになられたのでは?堕落神様の加護を施し、お互いを縛り合う魔界銀の首輪まで……念の入った事でございますね。……そうそう、聖典の続きはたしか……その中でも最も偉大なものは愛なり……ふふふ……そう言う事でございましょう?』
『……国家拷問官の義務を果たしただけに過ぎない。余計なことを言うな。』
『かしこまりました。……それで旦那様……?』
ダフネが私の肩に手を触れた。
『どうした?』
ん?……目が座って?
『私……もう……がまんが……』
まずい!
『プロフィヴェーレ!(動くな!』
私は咄嗟に拘束魔法を放つとダフネは石像のように動かなくなった。
『どうしたと言うのだ!……ハッ!』
目をやるとあちら此方で組んず解れつの乱痴気騒ぎが始まっていた。
まさか!
たんたんたん❤❤……
『きもちいい❤きもちいい❤きもちいいよぉ……』
『まりや!!まりや!ぁあ!!』
たんたんたんたんたんたんたんたん❤……
シューーーーーーーーーーーーーー
マリヤとヨセフの体から無制限に魔力が垂れ流しになっていた。最早瘴気と言うレベルだ。当てられた魔物娘が発情して周りにお構いなく伴侶と致している。いない者はレズプレイの真っ最中で中にはナメクジみたいにぐちゃぐちゃになってるのもいる。
完全にやりすぎた…………
カタリナ殿下は笑いながら手を叩き、ご満悦のご様子で部下にご自信の秘所を舐めさせていらっしゃる……。全く酷い絵だ。
仕方がないので落ち着くまでダフネは放置して帰ろう。私は金貨と花と淫液を踏みつけながら1人闘技場を後にした。
くべられた聖女編end.
イグニスの火刑
聖女が見つかった。先日尋問した名も無き教団兵士から聞き出した場所に、聖女と彼女を守護する民衆が魔王軍により捕らえられた。
聖者や聖女はある意味で勇者より厄介だ。勇者は剣を取り主神教の信者や主神教団を守る。武力であるが故に武力で制する事が出来るが、聖者や聖女はそうはいかない。
存在そのものが信仰による奇跡そのものだからだ。
主神教の教えや聖典それそのものは正しく理解をし正しく導けば万人を救う素晴らしいものだ。かつての私もそれに縋った。
しかし信仰はたやすく、意図も簡単に狂信者を作り出す。そしてその狂信が何百の勇者を作り、何千の愚かな民衆に武器を取らせる。気付いた時には幾つもの国の何万の憐れな兵士が血で血を洗う。
『……世が乱れ、異言が廃れ逝くも、世の黄昏れまで残りしもの、すなわち、信仰、希望、愛なり……ハッ!よく言ったものだ。』
それが全ての苦しみや悲しみ、憎悪の原因とも知らずに。
『新約聖典コリテア人への手紙……第1でございますね?旦那様、如何されました?』
『……なんでもない。ただ、アレを見ているとそれを思い出す。聖女とは憐れだな。』
『左様で……しかし、壮観でございますね。』
『いや全く。だがこれで……ククク、死者の国への"借り"は返した……』
ノーマンズランド国立闘技場はさながら地獄の様な光景が広がっている。
『堕ちろ。』
ドガッ!
『うわぁぁぁああ!!!』
ドサっ
『わーい……だんなさままささまぁー♪』
ぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞるぞる
『ひぃ!!……よ、寄るな!!寄るなー!!うわぁぁぁぁあああああああああ……………………』
ズリズリズリズリズリ…………
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
拷問ショーを見物している愚かな民衆……もとい、暇人供はまるで三文芝居を見る様なはしゃぎっぷりだ。
魔王軍の兵士達に命じ、闘技場に大きな穴を掘らせ、ゾンビ共をイワシの瓶詰めの様にひしめかせた。そこに聖女と一緒に捕らえられた愚かな西方主神教信者の内、憐れな未婚の男をおよそ300人ほど選び、一人づつ"釜"の中に蹴落としていく。
ご丁寧に"釜"の前には粗末な木の柱が2つ立っていて、その間に吊るされた木の板には文字が書かれている。
"この門をくぐる者は全ての希望を捨てよ"
ククク……ハハッ!アレは彼らにとっては地獄の門も同じだ。叫び声は静かに消えるように死者の群れに飲み込まれていく。さぞかしあの中は楽しい事になっている事だろう。
聖女は祭壇の上にて両手、両足を縛られ、木の柱に縛られてそれを泣きながら見ている。足元には堕落の木と触手大樹の枯れ薪が。
頭には魔界銀製の頭蓋骨粉砕機が取り付けてある。神に祈るたびに魔界銀製の万力が頭蓋骨と脳みそを直接締め上げる。絶頂スレスレの苦痛に似た快楽で死ぬほど苦しいが……死ねないんだなぁこれが。
頭蓋骨粉砕機は手を拡げた修道女の型をしている。聖女の頭を締め上げている万力の先は修道女の手になっている。目を瞑り、穏やかな表情を浮かべた修道女の両手の平には魔法陣が半分ずつ彫られていて万力が全て巻かれた時、修道女の手が合わさり、聖女の頭の中で術式が完成する。
しかし、頭蓋骨粉砕機だが魔界銀製ゆえに頭蓋骨を突き破るが粉砕しない。……信仰粉砕機とでも名付けよう。それがいい。
キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル
『あ"あ"ぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
錆びついた蝶番が軋む様な嫌な音と共に聖女が汚い声で絶叫する。祈ったな?
嬉しい事があっても主神。
悲しい事があっても主神。
辛い事があっても主神。
主神、主神、主神、主神!!
条件反射の様に祈る、マゾ信者ばかりだ。おかげで仕事がはかどってしょうがない。
『……ぐっ……な、なぜこんな残酷な事を!?私を!私一人を焼けば良いでしょう!?』
『聖女よ……それじゃあ意味が無いんだよ。それに、お前の様な者を鞭で嬲っても面白く無い。』
『どうして!!』
『どうしてだと?……では聞くが、西方主神教の為に何人死んだ?西の国に戦火はもとより、中つ国アシュマール諸国への侵攻、ユタ人の弾圧、南の大陸や新大陸での奴隷狩り、原住民の駆逐、異教徒弾圧で何人死んだ?免罪符交付による経済混乱で首を括った農奴が何人いた?先のオランジュ独立戦争では魔王軍介入までの間に主神教福音主義派を何人殺した?』
『なっ!!』
『ではもっと端的かつ具体的に聞こうか。お前は憐れな主神教信者何人に武器を取らせ、何人を戦わせ、何人を殺し合わせ、何人を死に向かわせたんだ?』
『…………。』
『祈りの場では人の子の女は口を閉ざすべし……沈黙は良い答えだ。……こんな残酷な事を?お前たちには言われたくは無い。』
『あなたも同じでしょう。何人手に掛けましたの?ベルモンテ王国の高等審問官"黒衣の聖者"殿ぎゃぁぁあああああああああ!!!』
キュルキュルキュルキュルキュルキュル
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
『口の利き方に気をつけて貰おう。』
『ぐっ……はぁ……く、悔い改めればあなたの罪も……主神様はきっと……赦してくださる……!今なら……今なら……まだ、間に合うのです!』
『……なるほど、聖者らしい立派な言葉だ。これだから……人間は滅びた方が良いのだ。話し戻そう……死者の国には少々借りがある。お前を探し出すのに力を借りたんだ。あの憐れな主神教信者共その礼だ。人が戦乱を起こす度に死者の国は広がっていく。それで死者の国の人口は爆発的に増えるが、増えた魔物娘に対して肝心の男が足りないのだ。見ろ……』
見ると年端もいかない少年1人に10名のゾンビが群がって裸に剥いている最中だった。
『ひぃ!!』
『なかなかに激しいなぁ。けっこう。実にけっこう!……あの少年に群がってるのは力尽きた教団兵か教団兵が殺した人間の兵士の成れの果てだ。聖女よ、お前に寄り頼み、縋った憐れな連中は死者の国の者に与える。お前の相手はその後だ。』
『主神よ……あ"あ"ぎがぐ!!!』
ミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジ……
また祈ったか。学習しない。
主神の加護を受けた聖女の祈りの力は強大だ。祈りと加護がある限り聖女に手出しが出来ない。カタリナ殿下直々に加護の証しである聖女の聖痕に封印を施して下さった。
それでやっと拷問らしい事が出来る様になった。
それから、信仰粉砕機で祈りを封印だ。
それでも主神の力は凄まじい。加護と祈りを封印してもその残り香が聖女を護ろうとする。
そ こ で 、このショーだ。主神は聖女を護るがあの憐れな連中は守らない。
信仰粉砕機のせいもあるが、祈れば祈るだけ苦しいぞ?
折れろ、折れろ、折れろ……
さあ、たっぷり無力感を味わってくれ。
。
。
。
。
……299
ズリズリ……
『ひぃ!!嫌だ!や、やめろ!!』
ズリズリ……
『聖女様ぁ!聖女様ぁ!!助けて!助けてください……』
『ほら、助けを求めているぞ?助けなくて良いのか?』
『あ……あ……』
良い顔になったな……
『全知全能者たる主神だ。信徒を見捨てる筈は無いのだろ?』
『主……神……様……彼らをヲ"お"ぁ''あ"ぁぁあああああああああ』
キュルキュルキュルキュルキュルキュル
ミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジミ"ジ
ズブリ…………
『ひゃは!!?』
トプン…………
遂に信仰粉砕機が頭蓋骨を貫いた。もう少しだ。
『ハハハハハハハハハハハハハハ!!…………墜とせ。』
ドガッ!
『嫌だ、嫌だぁぁあああああ…………』
ドサッ……
『だんなさまーー♪あひゃ』
ぞるぞる
『おいで〜♪ひひひひひひ』
ぞるぞるぞるぞる
『くるな!くるなぁ!聖女様!聖女サマ!!お助けください!!お助け………………』
ぞるぞるぞるぞる
『私を……焼いてください……私を……焼いて……』
ガッ
『つれないなぁ……もう少し付き合え。』
合図を送るとダフネは聖女が縛られている祭壇の前に、手枷と足枷がついた拷問椅子を用意した。
300人目はここに座る。
『……我、"黒衣の聖者" は国家拷問官、堕落神教会司教の権限の下に禁魔魔法魔術、禁道具仕様権並びに異端審問権を発動する!』
『……発動を承認。"黒衣の聖者"よ……主神の手先に慈悲はいらないわ。』
幕屋から見ているカタリナ殿下が怒りと憎しみを聖女に向けた。
闘技場にいる者全てが肝を冷やした事だろう。ダフネは怯え切ってしまっている。
私は仰々しく礼をし、兵士に命じ、最後の1人を連れてくる。
引き摺られてやって来たのは年老いた神父だ。
『……聖女様……マリヤ様……』
聖女の目が見開かれ、懐かしさと驚嘆の色を写した。
『ヨセフ……な……ぜ……?』
『感動の再会のところ悪いが、お前の頭の中を見させてもらう。リブラーリ・メモリア(汝の記憶を!』
リブラーリ・メモリア……この呪文は術者が対象の心の中に入り、記憶や感情などの情報を直接見る禁術だ。もちろん、相応のリスクがある。場合によっては術者に精神汚染の危険がある事や、反対術式に弱く術者自身の心や記憶を相手に見られる危険もある。
しかし発動環境を整えさえすれば、あるいは自身の精神や魔力が強力な場合には相手の情報を過去から現在に至るまで自由に見る事が出来、大切な記憶を消したり、操作したり、書き換えたり、忘れたい記憶を蘇らせたり、精神を汚染し、心を操ることさえ可能だ。
精神拷問には打って付け……悪用しようと思えば幾らでも悪用できる!!
今の聖女はカタリナ殿下の封印術式で加護を封じられ、信仰粉砕機で祈りを封じられ、もはや苦痛とも言える快楽に苦しみ、ただただ見ている事しか出来ない自身の無力さに打ちひしがれ、頼みの主神に見放された絶望感に包まれ、心が折れている。
ククク……
さぁ、見せてみろ……
お前の心を……
私は聖女の心の中を無理やり術式でこじ開け、中に入っていった。深く、深く……
貧しい農家が見える……
戦乱の影……
緑の野原の上……
手を引かれた……兄の姿……
名前はヨセフ…………両親は幼い頃に死に……
彼はたった1人の家族……
身を粉にして働く姿……
『いや!!いや!!!覗かないで!!!』
暖かい背中…………
ゴツゴツした働き者の手……
ほう……?
なるほど、なるほど♪
『いや!!いや!!やめて!!!』
禁じられた想い……
儚く淡い愛情……
『いや!!入ってこないで!!!主神様!!!ぎゃぁぁぁあああああああああ!!!!』
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ
祈ったな……映像が乱れたじゃあないか。聖女ともあろうお方が、"いけない絵画"の活版印刷を母親に見つけられた年頃の男の子のように取り乱すんじゃあないよまったく。
さて……
兄ではなく、異性へ向ける歪んだ想い
幼い身ながら自分を慰めた夜……
湿った想い……濡れた右手……
熱を帯びた吐息
しかし、その翌日には納屋で自身に鞭を打った
それすらも快楽を感じていた……
ははっ!ここはリピート再生しよう♪♪
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪
『お願い!見せないで!』
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪♪
キュルキュル……キュリ…………ピッ!
リピート再生開始♪♪♪
『いやいやいやいやいやいやいやいやいや……』
まぁいい。つぎつぎ♪
貧しくも平凡な人生を歩む筈だった……
ある日、主神の声……
胸に刻まれた聖痕……
金色に変わった自身の瞳……
聖痕の痛み……
兄と引き離される悲しみ……
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』
ここもリピート再生。
『痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い』
クハハハハハハハハハ!!!
楽しいなぁコレ♪♪
どれどれ?もっと覗こう。
光輝く大聖堂……
ロマーナ法皇から下される主神の神託……
自身に縋り付く人々の手……手……手……
中つ国地方、砂漠の国での戦……
布教と救命に赴いた聖地サレムの街……
祈れば兵士の傷は癒え、戦さ場の矢や銃弾は避けて通った……
ある日見かけた光景……
『やめて……!!これ以上入って来ないで!思い出させないで!!!』
ギャーギャーうるさくてかなわない。
ゴリゴリギリギリゴリゴリギリギリゴリギリギリゴリ
『ーーーーー!!!!!!!………………』
よし、静かになった。
命を救った兵士達が……
村々を焼き、殺し、村娘を犯し、主神の旗を立て、略奪する姿……
"殺せ!殺せ!異教徒など滅びてしまえ!"
"主神のご加護だ!聖女様万歳!"
火と鉄と血の匂いの中で口々に叫ぶ兵士達……
鎖に繋がれ連れて行かれる女子供が私を見た……
その目が頭から離れない……
ん〜これは、これは♪深い悲しみの匂いがしますねぇ〜♪
リピート再生☆
『あ……いゃ……見ないで……わたしを……見ないで……』
リピート再生☆
『あ……あ……ごめん……なさい……』
リピート再生☆
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ……』
リピート再生☆
『ゆるして……私をゆるして……ゆるして……』
ゆ・る・さ・な・い❤
さてさて、続き続き。
奇跡の力……もたらされる信仰……
しかし、片時も忘れていない
恋い焦がれる兄ヨセフ……
自身を支える為に神父になったヨセフ……
『やめて!!それ以上はやめて!!』
7年ぶりにイスパール王国での再会……
"マリヤ……なぜ年をとっていないのだ!!"
兄の恐れを写した目……
まるで異形の者を見る目……
向けられる兄からの畏怖……
見れば少し老けた兄の顔……
主神の加護により年を取らない自身の身体……
ずっと17歳のまま……
聖痕……
祈りの力……
呪いとなんら変わりはしない……
恋い焦がれる兄に会うのが恐怖に変わった……
兄の拒絶が怖い……
あの眼差しが怖い……
聖女の力が怖い……
でも好きで好きでたまらない……
『いや!!思い出させないで!!!せっかく忘れてたのに!!!思い出させないで!!!思い出したくない!!思い出したくない!!!』
リピート再生開始♪♪♪
『いゃぁぁぁあああああああああ!!!!』
まぁ、コレで十分だろう。
術式を解くとスウッ……と水の中から浮かび上がるように意識が自分の身体に戻ってくる。
クククク……
主神への信仰も……
兄への想いも……
恐怖も……
主神の呪いも……
聖女としての義務も……
自身の歪んだ被虐的な性癖を満たす為に存在する。どんなに綺麗事を取り繕ったとしても本質はソレだ。
聖女としてふさわしい振る舞いや敬虔なる西方主神教信者としての禁欲と自制の裏にはどうしようもない欲望と劣情とが蠢めいている。
なんて事はない、こいつは淫乱な処女だ。
『汚れちゃった……私……ケガレちゃった……』
『いや?お前は元々汚れている。それを知らなかっただけだ……主神もさぞ面白がっていた事だろうさ。とんだ道化だ。』
『主神……様……あ"あ"ぁあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』
ぬちゃぬちゃぬちゃ……
信仰粉砕機が脳みそを直に締め上げる湿った音が聞こえる。
無様だなぁ……
私は拷問椅子に縛られているヨセフ神父の方へ向く。
『……私はあなたを赦します。しかし、ほんの少しでもあなたに良心が残っているのであれば、おやめなさい。』
『なぜそう言う?』
『恐らくあなたは鞭を振るう度に心を痛めている……そうではありませんか?』
『不思議な方だ。あなた自身の身より、あなたをこれから痛めつける私の事を心配するのか。しかし……そうだとして、やめられると思うか?』
『……無理でしょうな。私たちに降りかかるこのような仕打ちはすべからく私たち人の子が蒔いた種……。主神教を利用し、聖女を傀儡にした結果です。あの亡者達も我々人間が憎み憎まれ、殺し殺され、亡者に成り果てた。同じ人の子なのに……同じ主神を信じる者なのに。ですから憎むべき魔物と言えど、あなたとこの国の方々を恨む権利は私たちには無いのです。遠の昔に私たちは神を失っていたのかも知れません。』
老神父は全てを悟った目をして言った。
この手の拷問対象は厄介だ。覚悟とは少し違う。冷静に、達観した感情で自らの運命を受け入れている。こういう奴に精神的な揺さぶりや責め苦は通用しない。
『ヨセフ神父……残念です。あなたとはもっと早くお会いしたかった。』
こういう奴は思い切り痛めつけるしか無いのだ。
『これも人の子の罪なのですね。ベンジャミン殿……私と聖女様……いや……妹マリヤで憎しみの連鎖は終わるのでしょうか?』
『いや……人間が人間である限り終わりはしない。』
私は空中に魔法陣を書く。
『……そうでしょうな。人間とはいかに罪深く、悲しい生き物ですから。』
もっと早くこの老神父と会っていたら、私は歪まなかったかも知れない。もっと早く会っていたら拷問官にはならなずに済んだかも知れない。主神教を信仰する者共が皆彼のようだったら……いや、よそう。
目の前の老神父はあそこで縛られている聖女なんかよりも余程気高くみえる。
彼こそ真の聖者なのかも知れない。
聖女の事を諜報機関で調べたら、唯一の肉親として彼が浮上した。その後の調べで聖女との関係や現在に至るまでが出て来たのだ。
ヨセフ神父は聖女が唯一愛した個人とも……
私は妻であり従僕であるダフネに命じ、この老神父を秘密裏に連れてきた。……彼は貧しい辺境地で教会孤児院を開いていた。
孤児院は酷い有様で、碌な支援を受けず、それどころか戦争の為に食料やなけなしの資金や教会の鐘まで王侯貴族に収奪されていた。
それでもヨセフ神父は孤児院に40年に渡りへばり付き、孤軍奮闘していた。
この老神父はダフネに攫われる直前まで照りつける太陽の下で額に汗をし、手に鍬を取り、痩せこけた土地を子供たちの為に必死に耕していたらしい。
『神父様が天使様に連れてかれた……』
攫われる時に、子供らの1人がそう言ったそうだ。
その後、私はカタリナ殿下に取り次ぎ未婚のベルゼブブを1人送り込んだ。蝿の女王たるベルゼブブは豊穣と富を司る悪魔の末裔だ。上手くやるだろう。少なくとも飢えて死ぬ事は無い。上手くやらなくとも、どの道カタリナ殿下の手が下る。
そんな事を考えながら魔法陣を書き終え、ヨセフ神父の胸に烙印を刻む。
『あ"があ"っ!!!』
施した術式は対象を傷付けずに全身の神経という神経系統に純粋な痛みのみを与える術式だ。最も素晴らしいのは五感や内臓やはたまた血液の循環でさえも……生きている事そのものに苦痛を伴う責め苦を与えるその無駄の無さだ。ベルモンテ王国高等審問官時代に何度か使った事のある魔法だ。私は鞭の腕とこの術で高等審問官となり"黒衣の聖者"と呼ばれた。
『む"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"……』
私は呻き声をあげるヨセフを尻目に聖女の前に立つ。
『最終審判を!!!』
私はこの国の国主、リリムであらせられるカタリナ殿下へ手を向け少々大袈裟に跪くと、しどけなく横たわっていた殿下はゆっくりと立つと、幕屋から出てと優雅に両腕を広げた。
ザザッ!!!
その場に居る全ての者がカタリナ殿下に頭を垂れ、また彼女を見る。
カタリナ殿下は怖気を振るうような残虐は微笑みと共に親指を立て、迷う事無く首の前を掻き切る様に動かし、その指を地面に向けた。
ザザーーーーーーーーーーーーーーーッ
魔王軍の兵士達がドラムを鳴らした。オーベルシュタインの時も、ヒルダの時も、よくもまぁ毎回毎回ご苦労な事だ。
ん?知らないだと?では前作を読むと良い。
『被告人マリヤ・アンジェロは聖女である罪!聖痕を所持している罪!主神からの加護を受けた罪!奇跡を行使した罪!西方主神教を西の大陸に布教した罪!信仰を集めた罪!主神に祈った罪!禁欲主義の罪!敬虔なる主神教信者である罪!その結果として西の大陸の戦乱を長引かせた罪!内乱の原因たりえた罪!親魔物国及び魔界国家の正義の侵略を阻んだ罪!国主であるカタリナ殿下に不敬を働いた罪!人間である罪!人間の雌である罪!自身の欲望に目を背けた罪!そして……兄ヨセフを愛さなかった罪により、"イグニスの火刑"に処す。……いと慈しみ深い堕落の神よ、この罪深き魂を救いたまえ。そうあれかし。』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
愚かな民衆はまるで見世物小屋の猿のようにはしゃいでいる。此奴らが忌み嫌う主神教が異教徒狩りや魔女狩りでやっていた火刑の真似事をすれば、嫌悪感から少しは静かになると思ったのだが、喜ばすだけだった。
『……さぁ、聖女よ。最も愛する者を救えない無力を呪いながら火にくべられるがいい。』
取り出したのはランタンだ。中にはイグニスの火が煌々と燃え盛っている。
ガシャン……
ボゥ……パチパチ……コォォオオオ
ランタンを割るとイグニスの火は瞬く間に聖女の足元に組まれた堕落の木と触手大樹の枯れ薪に回る。さぁ、望み通り火にくべてやったぞ?その火は高魔力の塊だ。
祈れ祈れ。お前に出来る事はもう祈る事しか無い。
祈りと祈りと祈りの果てに、神は降りて来られるのだから……
ゴォォオオオオオオオオオ…………
『……なぜですか?』
ゴォォオオオオオオオオオ…………
目の前でヨセフが苦しんでいる。
涙が止まらない……
私には見ている事しか出来ない……
『なぜこのような……仕打ちを……』
助けたい……助けたい……
目の前にいるのに……
煙と陽炎の先は余りにも遠く……
『神様ぁ"ぁああ』
ヨセフ……ヨセフ……に……い……さ……ま!!
キュルキュルキュルキュル……
『どうか……ヨセフを……兄さまを……あぎっ……助けて……私は……ぐっぁっ……焼けて……落ちても……あぎっ……構いません……どうか……!!!』
キュルキュルキュルキュル……ガキン!!
その時、私の中で何かが解き放たれるような……
声が聞こえる……
あぁ……神様……神様……!!!
コ"ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ…………
炎の中で輝く星を見た。……ククク、目論見通りだ。
彼女は祈った。
信仰粉砕機のネジが全て巻かれ"修道女"の祈りが完成した。
"修道女"の手に仕掛けたのは叛逆の魔法陣だ。ありとあらゆる魔法を逆に作用させる。
カタリナ殿下が施した聖女用の弱体化の封印術は魔力を放出し続ける強化術式に。
マリヤが触れるありとあらゆる魔法や術式を逆に作用させる。
この術式を使おうと思った時に、私はある仮説を立てた。主神が施した聖痕も理論的には可能じゃないのかと。
結果はご覧の通りだ。聖痕は穢れ、聖女から聖なる力を奪い、魔を取り込んでいる。
主神よ、見ているなら見るが良い……お前が施した聖痕の" せい "で聖女が魔に堕ちるぞ?
暁の金星は地に墜ち闇に染まる。主神よ、お前は信じる者を救いはしない。旧約聖典アイザックの書に記したように、お前は堕ちる者を止めやしない。
ただ見ているだけだ。であるのであれば……
今度も見ていて貰おう。
やがて紫色の光と共に炎が消え失せ、中から裸の女の影が出てきた。
頭には目を見開いた修道女の拷問機を取り囲むように角が生えている。
闇色の長い髪は解かれ、影のようにうねっている。
背中には黒く染まった天使の羽が。
尾骶骨から生えている尾はいやらしくくねくねと動いている。
素晴らしい……
完全なダークプリーストだ。
『ククク……アハハハハハハ!!!期待していた以上だ。実に素晴らしい!!……生まれ変わったお前に我ら堕落神教会は贈り物をしよう!』
堕落神へ祈りを捧げると、鐘の音と共に陰惨な笑みを浮かべる3人のダークエンジェルが現れ、マリヤを祝福した。
リン♪ゴーン♪♪
リン♪ゴーン♪♪
"おめでとうマリヤ……あなたは堕落神さまと共におられます。これはあなたへの祝福です。"
魔界銀が鎖となってマリヤの尻尾に巻きついた。
"おめでとうマリヤ……この良き日に祝福を。"
聖者をも堕落させる乳香の香りがマリヤを満たした。
"おめでとうマリヤ……あなたに不滅の快楽があらんことを。"
永遠の快楽を約束する没薬がマリヤにもたらされた。
"""おめでとう、おめでとう、マリヤ……"""
ゴーン♪♪ゴーン♪ゴーン……ン……
そうすると3人のダークエンジェルはマリヤに黒い修道服を着せ、鐘の音と共に消えた。
『私"黒衣の聖者"は堕落神教会司教の権限と名の下に、マリヤを堕落神の加護を受けたる堕落の聖女と認定する!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……
愚かな民衆は喜びの声あげ、跪いて祈る者までいる。
祝福の中でマリヤはひたひたと歩き、拷問椅子に縛られているヨセフの拘束を解いた。
『にいさま……にいさま……』
拷問術式によりヨセフの老体は生命の危機を感じたのか年甲斐もなくビンビンになっている。その痛みは幻も同然であるのに律儀なものだ。
マリヤはそっとヨセフを抱き寄せた。すると、ヨセフの顔から苦しみが消えた。
『にいさま……』
『聖女様……聖女様、何を!?……いけません!』
マリヤがヨセフの唇を奪おうとしたので、一瞬正気に戻ったヨセフはマリヤを突き放した。途端、ヨセフはまた苦しみ出した。
『がぁあ……ぁが……!!』
『にいさま……』
のたうち、地面を芋虫のように這いずり回るヨセフにマリヤはそっと触れた。
『がっ……!?痛みが、消え……?』
『……神は私に言ったのです。"行ってお前の成すべきを成せ"と……にいさまが苦痛から救われるには私が触れ続けるしか無いのです。だからこれは……しょうがない。仕方がないの……しょうがない事なのです。』
マリヤはそう言うとヨセフを押し倒した。聖女らしからない獲物を狩るケダモノのような目をしている。
ヨセフの頬に左手をそっと当てて、右手は修道服の中で自らの秘所をくちゅくちゅと音を立てて弄っていた。
『にいさま……あなたを苦痛から救うにはこうするしか……』
『聖女様!いけません!!……マリヤ!はなれなさい!』
そんな世迷言に耳を傾ける筈もなく、マリヤは自らの秘所にヨセフを導いた。
ずっ……ブチッ…………
『ひうっ!!!はぁ……❤❤❤❤』
『は……ぐ…………!!!!』
ビクン!ビクン!ビクン!ビクン!
2人共に声も出せずに悶えている。処女と童貞の交換おめでとう。
ところで諸君は知っているか?苦痛と快楽は隣り合わせで、人間も魔物娘も痛みや苦しみを与えられた時、脳みそが感じ取り認識するのは快楽と同じ……
至上の幸福らしい
叛逆の術式によりヨセフに苦痛を与えた拷問術式は快楽の呪印よりもタチの悪い効果を発揮している。反転した術式は、五感や内臓やはたまた血液の循環でさえも……生きている事そのものに純粋な快楽を与える。
加えてイグニスの火刑で与えた魔力はダークプリーストへの魔物化で使い切っており、カタリナ殿下が施した弱体化封印術式は強化された魔力を無制限に垂れ流す。
いくら精を食べても満たされない正に暴食の聖女だ。
『おなかのなかがぁ❤あったかぁ〜〜い❤❤もっと❤……もっともっともっともっともっともっともっともっともっと❤❤❤❤』
たんたんたんたんたん❤
『あがっ……ひ……!!!』
ドクドクドクドクドクドク……
『にいさま❤にいさま❤あったかい❤にいさまにいさまにいさまにいさまにいさま!!!気持ちいい❤あっ❤あっ❤気持ちいい気持ちいい気持ちいいキモチイイ❤❤❤』
たんたんたんたんたん❤
ドクドクドクドクドクドク……
大食らいの万年腹ペコ魔物娘相手にご老体の身体では心許ない。
では、どうなる?
ヨセフの老体はマリヤに精を与え続ける為に垂れ流しの魔力を取り込んで急速にインキュバス化を進めている。
『ぐっ……っ……あぐ……い"……い"……』
反転した拷問魔法の快楽も合い間ってか、もはや壊れた蛇口のようだ。吐き出した精は垂れ流しの魔力から強制的に補充される。
2人は与えながら奪い合う。美しいではないか!
さぁて、どうなった?
精を吐き魔力を取り込む度にヨセフの肌はかつての艶を取り戻し、白髪は色を取り戻す。やがて……マリヤに股の下には少年が1人。
ククク……
17〜18歳の少年か。なるほど1番"お盛んな"年頃だ。
これならこの大食らいを満足させられるかもしれない。
たんたんたん❤たんたん❤たんたん❤
『あのっ❤ころの……あっ❤にいさまだ❤❤にいさま❤あっ❤まりや……しあわせ❤にいさま❤んんんんん❤❤❤おいししししいいいいいいい〜〜〜❤❤❤』
その味を覚えておけ……
私は交わる2人に歩みより、魔法銀のペンで術式を空中に描く。強制絶頂術式を2人に施す。
たんたんたん❤❤……
『きもちいい❤きもちいい❤きもちいいよぉ……』
『まりや!!まりや!ぁあ!!』
たんたんたんたんたんたんたんたん❤……
『あれ?……』
たんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたんたん
『いけない!!きもちいいのにいけない!いけないよぉ!!!』
そうだろうなぁ……ククク……
強制絶頂術式は叛逆の術式で効果が反転されているんだ。イケる訳はない。魔物娘相手にこれほど効く拷問はないんだよ。
かわいそうにかわいそうに。どんなに気持ち良くてもそれは叶わない。イキたくてもイけず、精を胎に受ける事も出来ない。胎に精を吐き出す事も出来ない。快楽を感じるも、それは幻と同じだ。
堕落神教の真理を理解するまで、遠く東の国の仙人のようにたっぷりと霧霞を食べて貰おう。
『"黒衣の聖者"の名において、汝マリヤとヨセフに試練を与える。ヴェニ・イジュトゥール・サクロパグム(来たれ、棺よ』
巨大な棺桶が2人を呑みこむように現れた。
『これからお前たちにはパンデモニウムに行ってもらう。1年も経つ頃には堕落の真理を理解出来るだろう。そうそう、その術式は"私以外の誰にでも解ける"ようにしておいた。堕落神の無限の愛と加護があらんことを……』
たんたんたんたんたんたん……
『いや!といて!!のろいといて!!いきたいいきたい!!いかせて!!いかせてー!!!』
『そうあれかし♪』
ギィ……バタン………バシューー…………
封印完了♪
……それでは、早速呼び出してみよう。
パンデモニウムは時の流れが止まった無限に広がる空間だ。したがって正しく条件を組み込み、術式を発動させれば1年後のマリヤとヨセフを召喚することが出来る。なんなら10年後のやつらを呼ぶか?
召喚術式を書き終え、私は民衆に向かい聖職者然と両手を広げた。
『諸君!!堕落神がおわすパンデモニウムは知っての通り時間の概念が無い世界だ。……これより、堕落の試練を乗り越えた2人を召喚する!!』
ワァァアアアアアアア!!!!!
次のショーではこの狂った民衆に生贄を放り込んでみようか?……それも面白そうだ。
『出でよ、暴食の聖女よ!!』
棺桶の蓋が開き、中から紫色の煙と淫水が吹き出してきた。
煙の奥に人影が2人……
『べんじゃみんさまだ!!といて!のろいといて!!いちねんだった!たったよ〜!?いかせて!!いきたい!!いきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたいいきたい!!!!!!』
『マリヤ……マリヤ!!わたしのマリヤ!!』
ザブンザブン……
溢れた愛液のプールに浸かっている。2人の肌は禍々しい褐色に染まり、髪は真っ白になっていた。
マリヤの下のお口に咥え込まれているヨセフの逸物は快楽と絶頂禁止の効果でドス黒くグロテスクに肥大化している。主神に使えるシスターですら見ただけで絶頂するだろう。
それにしても、凄まじい淫気と魔力だ。やり過ぎたか?まぁいい。
『お前は主神教の聖女のはずだ。主神への信仰はどうした?』
『しゅしん!?どうでもいい!もうあんなのどうでもいい!!にいさまがいればいい!!』
完全に堕ちたな。ヨセフとの睦合いの方が主神より大切らしい。
たんたん❤ぱちゅん、ぱちゃぱちゃ❤
『にいさま!!にいさまにいさまにいさま!!』
『禁じられた愛だ。許されることではない。それでも愛すのか?』
『それでもいい!!にいさまがいればいいの!!しゅしんがじゃまするなら!!』
『邪魔するなら?』
『しゅしんなんていらない!!いらない!!』
『ククク……ハハハハハ……アハハハハハ!!良く言った!!』
私は右手を掲げる
『祈るがいい。真の愛を貫く堕落の聖女よ、堕落神の加護があらんことを!!』
私は彼らにかけられた強制絶頂術式を解いた。
その瞬間
『『お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』
ゴパァ!!ゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプ!!!!!!
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク
濁流が流れるような音と共に精が吐き出される。
究極のスローセックスだ。意識が月まで吹っ飛んでもおかしくはない。
全く、汚いアヘ顔だ。前衛絵画よりも酷い有り様だ。
私は次に魔法のペンで模様を描いていく。チャームだ。例えば、鷹や鷲の紋様は戦での武勲をもたらすと言われ、薔薇や百合は主神を讃え純潔を守るとされている。
描いたのは主神教の聖鳥ある鳩の紋様と、主神を讃える太陽の模様だ。
描き終わり、その出来に我ながら惚れ惚れする。カタリナ殿下の冷ややかな視線は気になったが……まぁ良いだろう。どうなるか幕屋からご覧あれ。
彼らに転写すると叛逆の術式が発動した。太陽のシンボルはその証である光の模様が溶け出し、集まって別の球体を作り太陽を飲み込んだ。
鳩の模様は翼が散り、蠢き、蝶の模様となった。
主神の力と権威の象徴である太陽を魔の象徴である月が穢しその力を呑む日食の模様へと変わり、信仰の象徴である鳩の模様は美と性の象徴である蝶へと変わった。
これを見たカタリナ殿下はご満悦なご様子だ。現金なものだ。
さぁ続きをしよう。
『ククク……喜べ、お前達は永遠に1つになれるぞ。』
月まで行ったまま戻って来ない2人にプレゼントだ。魔法で2つ首輪が付いた鎖を用意した。この首輪はサイクロプスの熟練の職人が鍛えた物だ。着けたら最後、外れる事はない。
魔界銀は魔力を媒体し伝導する性質を持つ。術式も例外ではない。
ガチン!ガチン!
『『!!!!????あべべべべべべべべベベベベベベべべべべべべべべベベベベベ!!!!!』』
2人を繋いだ瞬間、2人は飛び起きて汚い再び叫び声を上げた。
ヨセフにはカタリナ殿下が施した弱体化封印術式が反転、強化された魔力を放出し続ける術式が施された。……男性がどこから魔力を放出し続けるかだって?……お察しの通りだ。
マリヤには反転した拷問術式が容赦なくキャパオーバーの快楽を与えている。
『ぎゃぁぁあああああああああ!!!!ぃぐ!!いぐ!!!いぐの"どまん"な"ぃ"い" !!!!!よ"ぜふぅ"!!!よ"ぜふぅ"!!!ぎ も" ち" ぃ" い"!!!!ぁぁあああああああああ!!!!!』
『ーーーーーカハッ!…………ヒュー……ヒュー……お''ぎがぐっ……ぎはぎにがぐぎがぐぎが!!!!!!』
ゴパァ!!ゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプゴプ!!!!!!
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク
…………以下略。
反転、強化された術式により、快楽が快楽を呼ぶ終わりの無い絶頂だ。このまま何方が何方か分からなくなるまでこうしていて貰おう。
しばらくしたら、辺境にでもやって堕落神教を布教させよう。
民衆から金貨と花が投げられ、色とりどりの雨が降る。
『お疲れ様でした。』
そうするとダフネが近寄ってきた。
『旦那様はやはり、お優しいお方でございます。』
『なんの事だ?』
『旦那様が仰っていた新訳聖典コリアテ人への手紙第1……世が乱れ、異言が廃れ逝くも、世の黄昏れまで残りしもの、すなわち、信仰、希望、愛なり……』
『何が言いたい?』
『旦那様はあの方々が二度と引き裂かれ無いように、ヨセフ様には苦痛の術式を。マリヤ様には叛逆の術式をお使いになられたのでは?堕落神様の加護を施し、お互いを縛り合う魔界銀の首輪まで……念の入った事でございますね。……そうそう、聖典の続きはたしか……その中でも最も偉大なものは愛なり……ふふふ……そう言う事でございましょう?』
『……国家拷問官の義務を果たしただけに過ぎない。余計なことを言うな。』
『かしこまりました。……それで旦那様……?』
ダフネが私の肩に手を触れた。
『どうした?』
ん?……目が座って?
『私……もう……がまんが……』
まずい!
『プロフィヴェーレ!(動くな!』
私は咄嗟に拘束魔法を放つとダフネは石像のように動かなくなった。
『どうしたと言うのだ!……ハッ!』
目をやるとあちら此方で組んず解れつの乱痴気騒ぎが始まっていた。
まさか!
たんたんたん❤❤……
『きもちいい❤きもちいい❤きもちいいよぉ……』
『まりや!!まりや!ぁあ!!』
たんたんたんたんたんたんたんたん❤……
シューーーーーーーーーーーーーー
マリヤとヨセフの体から無制限に魔力が垂れ流しになっていた。最早瘴気と言うレベルだ。当てられた魔物娘が発情して周りにお構いなく伴侶と致している。いない者はレズプレイの真っ最中で中にはナメクジみたいにぐちゃぐちゃになってるのもいる。
完全にやりすぎた…………
カタリナ殿下は笑いながら手を叩き、ご満悦のご様子で部下にご自信の秘所を舐めさせていらっしゃる……。全く酷い絵だ。
仕方がないので落ち着くまでダフネは放置して帰ろう。私は金貨と花と淫液を踏みつけながら1人闘技場を後にした。
くべられた聖女編end.
18/07/28 20:18更新 / francois
戻る
次へ