愛しのソフィー
愛しのソフィー
穏やかな春の昼さがりに悲鳴が響く。
『きゃぁぁぁああああ!!!』
バターン!!
と、窓を突き破るような勢いで飛び出して来たのはエクレアさんだ。ハルミトン家で婆やをやっている。
仕事を早く終えて午後3時きっかり、帰宅直後にこの悲鳴を聞いた屋敷の家主、ハルミトン男爵はまたか!と頭を抱えた。これでまた雇った婆やが辞めて行くのが目に見える。予感が的中するのならば今回で7回連続…。加えて最短記録なのだ…
胃もキリキリいってきた…
1人目の婆やはドブ川に落とされて
2人目は落とし穴…救出に半日くらい掛かった
3人目は何処で集めてきたのか30匹の猫をけしかけられて…この婆やは大の猫嫌いで猫アレルギーだ
4人目の婆やは閉所恐怖症で、使用人用トイレに8時間も閉じ込められて
5人目は何だか良く解らない…謎のうめき声を上げて去って行った
6人目の婆やは掃除中に使用人服のドレープにマッチで火を点けられて…幸いに庭の池に飛び混んだので軽い火傷で済んだ
さて、今回は何をやらかしたのやら…と男爵は気が気ではなかった。
『エクレアさん。どうしたんですか!?』
ハルミトン男爵が尋ねるとエクレア婆やは息を荒げて
『どうしたも、こうしたもありません!!』
と金切声を上げた。
『あー…息子がなにか…その…悪い事でも?』
『カエルが…ヘビが…カサカサが……!!!…オッホン!…ともかく!御宅の坊ちゃんのお相手はもうこりごりです!!ええ!こりごりです!!わたくし、辞めさせて頂きます!』
バタン!
と、エクレアさんは荷物をまとめて逃げるように去って行った。
見事に予感的中。1週間…ハルミトン家のメイドが7回連続で辞め、且つ今までの最短記録を樹立した。
この事で、男爵は自分の書斎に1人息子のアランを呼び出した。
『…はぁ。アランよ、何ぜ呼び出されたかわかっているな?』
『はい、お父様。』
『まったく、お前というヤツは…。今度は何をやらかした?』
『…………』
『はぁ…怒らないから、正直に言いなさい。』
『…エクレア婆やがきらいな、ヘビとカエルとゴキブリを婆やがお昼寝している時に背中に入れたんだ。』
『何てことをしてくれたんだ!!!!』
ドンッ!!…とハルミトン男爵は机を叩いた。ビクッ!とアランの背中が小さく飛び上がる。
『ハルミトン家の男子としてなんと、情けない!先日会ったジェンキンス男爵の息子さんはお前と同い年の10歳だが、もっとしっかりしていたぞ!!』
『はい、お父様。』
『はいはい言っていれば良いというものでは無い!はぁ…!将来は男爵家とハルミトン・スチーム・カンパニーを継ぐのだ。まったく、お前はもっと自覚を…』
ジリリリリリリリリン…ジリリリリリリリリリン…
お説教の途中で書斎の電話が鳴り出した。
『…もう良い。電話に出なければ。お前は部屋に入って反省しなさい。今日は夕食抜きだ。』
『はい。失礼します。』
『…ガチャ…もしもしホーカン・ハルミトン男爵だが…おお!これは、これは、グレンさん!最新式の蒸気機関を送風システムに使用したオルガンは…ええ…ええ…それはそれは!…』
バタン…
ハルミトン男爵は電話で会話をしながら、アランを横目で見送った。
一方のアランは部屋に閉じこもって、明かりもつけずにベッドの片隅で涙をこらえながら小さくなっていた。
『そういうことじゃないんだよ、お父さん…』
ガチャ…チン!
『ふぅ…やれやれ。また新しい婆やを探さないと…。アレンよ…お前は、まだ母親のことを…』
男爵はポルト酒を飾りグラスに注ぎ、パイプタバコに火を入れながら、机の上の写真に目を向けた。彼は3年前に病気で亡くした伴侶、アランの母親スーザンの事を思い出していた。
スーザンは病弱ではあったが穏やかで優しい人で、とびきりの美人だった。今でも男爵は愛しのスーザンを夢に見る。
結婚してアランが産まれてからはハルミトン男爵は仕事一辺倒の仕事人間に拍車がかかり、育児だのなんだのは殆どスーザンとメイドに任せきりにしていた。
そんな時に彼女は流行り病に掛かってしまい、スーザンはあっけなく逝ってしまった。
その時、当時7歳のアランは3日3晩スーザンの側を離れないで泣きはらしていた。
ハルミトン男爵はその時に初めて自分のして来た事を後悔した。もっと、スーザンとアランの側にいてやれればと…
それから、ゴミゴミとした都会の屋敷を引き払い、湖のある片田舎の小さな屋敷にやってきたのだ。
『スーザン…君だったら何と言うかな…。もっと君やアランと向き合っていれば…。』
ハルミトン男爵はもっと息子のアランと家族の時間を作りたいのだが今、男爵の会社はとても繁盛していて忙しいく、また1人息子アランとの向き合い方がわからない…そういう訳で、どうしても女手が必要なのだが…
ピポパポ…
『お電話ありがとうございます。乳母紹介所のマダム・ジェシカのオフィスです。』
『もしもし、ホーカン・ハルミトン男爵だが…』
『!?…すみません!本日は臨時休業になります!!』
ガチャ…ツー…ツー…
オホン!気をとりなおして
ピポパポ…
『お電話ありがとうございます。メイド紹介事務所のムッター・アンです。』
『もしもし、ホーカン・ハルミトン男爵…』
ガチャ…ツー…ツー…ツー…
『まったく、失礼な。…うーむ…困った。これは本格的に困ったぞ』
どうやら、アランの素行の悪さが噂になっているようだ。このままではアランを全寮制の私立神学校に預けるか、金持ちのフランシス叔母様に預けるくらいしか手立てが無くなる…
そこでハルミトン男爵は新聞社の友人にハルミトン・スチーム・カンパニーの宣伝広告の見出しの隅にメイド募集のお知らせを乗せる様に頼んだ。
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サー・ハルミトン男爵宅でハウスメイドを募集中!
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と、翌日の新聞に載せてもらった。男爵は伴侶のスーザンの事もあり、アランを手放したくない。だから、藁にもすがる思いだった。
まぁ、焦らず待とう…と男爵がモーニングコーヒーに口をつけようとすると
ジリリリリン…ジリリリリリリリン
電話が鳴り出した。
『はは…まさかなぁ…』
ガチャ
『はい、私はホーカン・ハルミトン男爵だが…』
『おはようございます。わたくしはソフィーと申します。メイド募集中と今朝の新聞で拝見致しました。つきましては………』
男爵は思わずボーぜんとしてしまった。
『…あの?』
『あぁ…いや、失礼。オホン!では面接をしたいので、今日の午後にでも来れるのかね?』
『はい。畏まりました。今日の午後にそちらに伺います。失礼します…』
『うむ。』
ガチャ…
『やっはは〜〜!!!…あっちち!』
男爵は思わずガッツポーズを取り、その拍子にコーヒーをガウンにこぼしてしまった。
その日の午後1時…
コンコン、コンコン!
規則正しいノックが響いた。
『ご機嫌よう。メイドのソフィーと申します。』
男爵の目の前のメイドは優雅な物腰と完璧な作法で頭を下げた。亜麻色の髪、丸い眼鏡をかけた少しタレ目の栗色の瞳、首には聖女のメダイを付けていた。とても美しく若い女性だ。
しかし、目を引くのは頭の二ニョンからでる垂れた犬の様な耳、手首は羽に覆われて、腰からは羽根に包まれた尻尾、そして一見ブーツの様に見える足は鳥の足の様だ。
『良く来てくれた。さあ、頭を上げて。しかし、ソフィーさんは魔物…?』
『はい。キキーモラという魔物にございます。わたくしたちは人様に使える為に生まれた種族と、わたくしのお師匠様より伺っております。恐れながら魔物では男爵家に相応しくありませんでしょうか……?』
ランドル領とツェーリ領の間、レーマ湖畔地帯は名目上は中立だが、主神教の影響が強い。魔物は魔法で皆人に変装している。
『いえいえ、かまいません。今時は珍しくもない。しかし、ここは中立とはいえ主神教の強い地域で、何故ソフィーさんはいきなり正体を?』
『不快に思われたのでしたら、未熟者故、ご無礼をお赦しください。ですが…誰とも解らない者を男爵様はお抱えになりますでしょうか?』
『君の誠意という訳か…』
『そう捉えて頂ければ幸いでございます。』
と、ソフィーは優雅にドレープの裾を持ち上げ膝を少し曲げた。
『さあ、立ち話はなんです。こちらに。』
と、男爵はソフィーを書斎に案内して仕事の説明をした。
1人息子のアランの世話。住み込みで働いてほしい旨、屋敷の掃除や洗濯や料理の事。それから…
『では、仕事は本日これからで、一週間は採用期間と言うことでよろしいでしょうか?』
『うむ…。いろいろとあったのでな。アランの世話を頼む。』
『畏まりました。…差しでがましいとは思いますが、そのアラン坊っちゃまに何か問題でも?』
『……少しばかり、反抗期と言うヤツかもしれん。私もどうしたら良いか…任せても大丈夫か?』
『では坊っちゃまのしつけもでございますね?畏まりました。』
『よろしく頼む』
『お任せください。』
『そうか!やってくれるか!おい!!アラン…アラン!!出て来なさい。』
すると、ドアからアランが出てきた。少し目つきが悪いブラウンの瞳、父親譲りの赤毛をクリクリさせた可愛らしい男の子だ。着ているベストにポケットに手を突っ込んだままだ。
『おお、来たか。アランよ。こちらは新しい婆やのソフィーさんだ。ご挨拶なさい。』
『はい。お父様。はじめまして、ソフィーさん。僕はアラン・ハルミトンです。』
『ご機嫌よう。今日からこのお屋敷のメイドを勤めさせていただく、ソフィーと申します。坊っちゃま、これからよろしくお願いします。』
ソフィーは、アランを見て
(坊っちゃまは少し可哀想な目をしていらっしゃる)
と思った。
『アランお前は勉強に戻りなさい。では、ソフィーさん。後は任せました。3時頃に歴史の家庭教師が来るので出迎えてくれ。私は仕事に行かなくては。』
『畏まりました。では男爵様、お支度を…』
そうするとソフィーはテキパキと手際よく支度を始めた。いつもは10分かかる支度がものの3分程で終わってしまい男爵は目を丸くした。
『男爵様、おかえりは何時頃になりましょう?』
『え…はっ!オホン!本日は4時からの経営会議だけだから…午後6時くらいだ。』
『では、晩餐は6時半頃に…』
『うむ。そうだな。行って来る。』
『いってらっしゃいませ…』
ハルミトン男爵は蒸気自動車に乗り出掛けていった。内心このメイドも、ものの数日で出て行ってしまうだろう…とあまり期待して思っていなかった。
その日の夕刻。男爵が予定通りに6時きっかりに帰って来た頃には屋敷はまるで別世界だった。
見事に磨かれた床、壁、ガラス窓に至っては鏡のようでチリ1つ落ちてはいなかった。インテリアも綺麗に磨かれ、美しく見えるよう洗練され、もはや何処ぞの王族のマナーハウスのようであった。
『おかえりなさいませ。男爵様。』
『た…ただいま…』
『コートをお脱ぎくださいませ…お荷物を…。書斎でよろしいでしょうか?』
『う…うむ』
『畏まりました。』
男爵はロビー、書斎、寝室と見て回ったが、見事としか言えない程に完璧だった。彼の机の上には馴染みのポルト酒とパイプタバコがすでに置いてある。
そして、晩餐も少々素朴ながらも王宮料理人が作る料理に引けの取らない味の料理がならんだ。
『風呂の使い方は今度教えよう。ここのボイラーは私の会社の古い製品であり癖がある。扱いが難しくて素人では…』
『恐れながら、使用人室にボイラーの使い方に関する覚え書きを見つけました。お湯浴みの準備は整っています。』
『なに!?本当か!?』
『左様でございます。では、こちらに…』
風呂場に行って驚いた。本当に湯が沸いているのだ。
その後、湯浴みを終えた男爵はガウンが無いことに気がついた。今朝方コーヒーをこぼしたのだ。
『男爵様、此方にお召し物はそちらにご用意しています…』
脱衣室のドアの外からソフィーが話しかけてきた。小さいカゴには、あの何時も使っている愛用のガウンが出てきた。そのガウンにはシミは1つも見当たらず、むしろ今までより綺麗であった。
『これは…今朝私がコーヒーを…』
『少々汚れていましたので、シミ抜きとほつれ直しと洗濯を。』
『洗濯だって?…一体、君はどうやってこんな短い間にガウンを乾かした?』
『はい。ボイラー室の熱を利用しました。あとはリネンの上からアイロンを。』
『…君は、今まで屋敷に来た使用人の中で一番優秀な使用人だ。』
『お褒めの言葉、ありがとうございます。では、わたくしは坊っちゃまをお湯浴みに呼んできます。』
こうして、ソフィーが来た初日が何事も無く終わった。
翌朝
ソフィーの1日がはじまる。
日の出の頃に起きて、朝の市場に出掛け朝食の支度。朝のお掃除。軽めの自分の朝食を取る。
男爵とアランを起こし、朝の支度のお手伝いと朝食。
ハルミトン男爵は仕事に出掛ける。
勉強部屋の準備。家庭教師の先生の出迎え。
アランが家庭教師の先生と勉強をしている間にお掃除と洗濯、昼食の準備。合い間に休憩と自分の昼食。
アランの昼食後、午後のお勉強の準備。家庭教師の出迎え。午後のティータイムの準備。
ティータイム後、自由時間。お庭のお手入れ。洗濯物の取り込みとアイロン掛け。晩餐の準備。ベッドメイク。
ハルミトン男爵のお出迎え。晩餐。男爵とアランが食べている間に、湯浴みの準備、終わったら自分の夕飯。
明日の予定の確認。
『では、明日の予定はそのように。』
『うむ。下がってよいぞ。』
『失礼致します…おやすみなさいませ。』
ソフィーが仕事を終えたその夜。アランがソフィーのいる使用人室にやってきた。
『ソフィー婆や…』
『アラン坊っちゃま、何かご用でございましょうか?』
アランはソフィーを睨みつけると
『お父様はお前を気に入っているけど、僕は違うからな。お前を必ず追い出してやる!』
そうするとアランは走って行ってしまった。
『坊っちやま、おやすみなさいませ。』
その翌日から、アランの悪戯(襲撃)が始まった。
コンコン、コンコン!
『坊っちゃま、おはようございます。』
『ん…入っていーよ…。』
『失礼します。』
ガチャ…バン!!
と扉を開けると洗濯用の金だらいが落ちて来た。ソフィーの頭がグワングワンと揺れ、星が見えるようだ。
『やーい!引っかかった!』
と嬉しそうな表情のアランがいる。ソフィーは気を取直して
『アラン坊っちゃま、おはようございます。お召し変えを。あと、朝食の準備が出来ています。』
スルー…
『え、あー…うん。』
『では、ソフィーめがお召し変えのお手伝いを…』
『ひ、1人でできるよ!!』
『左様でございますか?では、リビングでお待ちしております。』
ガチャ…とソフィーは何事もなかったように金だらいを持って部屋を後にした。
『なんだよ、あいつ…』
眉ひとつ動かさないソフィーを見てアランは面白くなかった。今までの婆やなら顔を真っ赤にして金切声を上げて怒ったのに。
それから
次の日は落とし穴に落とされたり、
その次の日はお掃除中に転ばされたり、
また次の日は池に落ちたりした。
しかし、ソフィーは何をされるも動じずに、何事もなかったように振舞った。それどころか、1週間経つ頃には殆んどの悪戯は通用しなくなっていた。
落とし穴を掘っても高確率で察知され、もしかかりかけても、物凄い反射神経で回避される。
廊下に張ったピアノ線や紐などのブービートラップは役目を果たす事がない。
アランの意地悪で、買い物カゴのお買い物リストをすり替えても何故だか間違えない。本人曰く、『メイドのカン…でございます。』だそうだ。
悪戯で絵の具をソフィーの服に着けても5分後には何事もなかったように綺麗な服を着ている。
池に落とそうとした時は…
『よし、今だ!!』
池の側で洗濯物を干しているソフィーを突き飛ばそうとしたその瞬間
『おやおや、靴下がもう1つ…』
(坊っちゃま…同じ手が二度通用するほど、このソフィーは甘くありませんよ…)
とソフィーがいきなり動いた。
バッシャーン!!!
アランは池に盛大に突っ込んでしまった。腰ぐらいの深さなので溺れる心配はない。
『あらあら、アラン坊っちゃま。元気がよろしいことは大変良い事でございますが、そんなことをしてはお風邪を召してしまいますよ?』
ソフィーはまったく動じていない。
『いい!ほっといてくれ!!』
とアランはバツの悪そうに目をそらせた。
『いけません!お風邪を召してしまいます!さあ、こちらへ!』
(ふふ…アラン坊っちゃま可愛いなぁ…)
『ちょっと、ソフィー婆や!まっ…』
とアランはソフィーに耳を引っ張られながらズリズリと連れて行かれ、裸にむかれ、タオルで拭かれ季節外れの暖炉でココアを飲みながら暖まる羽目になった。
そのお陰かアランが風邪を引くことはなかった。
そんなこんなで、ソフィーがハルミトン男爵邸に来てから早3カ月が過ぎた。春は過ぎ、雨季が終わり、夏になった頃のある日の夕刻、男爵は書斎にて書類の整理をしながらソフィーと話していた。
『男爵様、お手紙が届いております。サー・ジェンキンス様、ダニエル・グレイ様、それからローゼンベルク様からです。』
『ありがとう。ソフィーさんが来て3カ月が過ぎた。アランとはどうだ?この屋敷の生活には慣れたか?』
シュッ…っとパイプタバコにマッチの火を入れながらソフィーに話しかけた。
『はい男爵様。おかげさまで何不自由なくお仕えさせて頂いてます。アラン坊っちゃまも大変良い子で…』
ソフィーはポルト酒をグラスに入れ男爵に差し出す。
『ん、ありがとう。ほう、あのアランがな…。そろそろ、休暇を取ってはどうだ?毎日働き詰めではないか。』
『ご心配痛み入ります。ですが、私はこのお屋敷のメイドにございます。このソフィーにとって男爵様とアラン坊っちゃまにお仕えすることが何よりの喜びにございます。』
『そうか…では、何か願いはあるか?』
願い…そう聞いてソフィーは少し戸惑った
『男爵様。2つほどお願いがございます。』
『言ってみなさい。』
『アラン坊っちゃまは時々、とても悲しい目をするのです。もし、差し支えなければ坊っちゃまの事を教えて頂けないでしょうか?』
ハルミトン男爵は少し考え…ソフィーならばと言うことでアランの母親が病気で亡くなった事と男爵自身が家庭を顧みなかったことでアランを傷つけてしまった事を伝えた。
『…左様でございますか…。そのような事が…アラン坊っちゃま…』
男爵はパイプタバコの煙の中に自身の感情を曇らせるように息をついた。悲しそうなソフィーを見て話した事を少し後悔した。
『男爵様!わたくしが考えるにアラン坊っちゃまは寂しいのです。坊っちゃまの日頃の悪戯もその反動かと…。男爵様!アラン坊っちゃまとの親子水入らずのお時間をお取り下さいませ。それがもう1つのわたくしのお願いでございます。』
『いや、しかし…私には仕事もあり…それに今更アランとどう向き合っていいか……』
『男爵様。わたくしも出来る限りの事をさせていただきます!なんなりとお申し付けくださいませ!』
時々、ソフィーは有無を言わせない所がある。それが、ハルミトン男爵が彼女を信用する最大の理由でもある。
『うむ…ソフィーさんがそう言うのであれば…よし!わかった。』
男爵はソフィーに書類の整理の指示を与えて、アランの部屋に行った。
コンコンコン…ギィ…
『アラン、入るぞ。』
『何ですか?お父様。』
『少し、話しでもと…』
『何の話ですか?……』
男爵は少し考えて、それから
『この頃の事とか、勉強の事とか、色々あるだろう?』
『僕は何もないよ。何時もとおんなじです。お父様…いきなりどうしたんですか?』
『………。』
『…そっか、ソフィーさんだね。』
『違う…』
『違わない!ソフィー婆やの差し金だ!お父様は嘘が下手だ!!…おかしいと思った!ここ何年もまともな会話をしてないのに、いきなり寝る前に現れて!…たまに顔を突き合わせれば、ハルミトン家としての自覚を持て!とか、お前は私の会社を継ぐのだ!とか、そんなことばかり!』
『おい、アランやめないか。』
『いーや、やめない!ずーと思ってた!お父様は昔からそうだ!仕事、仕事、仕事!!そりゃ家の事や僕の事はお母様やメイドや家庭教師に任せれば楽だよ!でも、僕とお母様の事はお父様の中にあったの?』
『それは……』
『やっぱりね!ずーと僕をほっといたくせに!!お母様がどれほど悲しんだかも知らないくせに!!だからお母様も死んだんだ!!!』
バチン…
ハルミトン男爵がアランの頬を張った。
男爵は背後を向き一言『すまなかった…』と言って書斎に戻った。アランは押し黙ったままだ。
書斎に入ると、ソフィーの姿は無かった。仕事を終えたのか、整理した書類の横にいつものように机の上にポルト酒とパイプタバコが用意してあった。仕事はいつもの事ながら、見事なものだと男爵は感心した。
机の上の写真を見て
『父親というのは難しいな…』
とつぶやいた。
翌朝、
アランは部屋から出てこなかった。朝食にも顔を出さず、返事もしない。
男爵は親子関係について自分もアランも時間が必要である…とソフィーに告げ、ソフィーもそうですか…と答えるとそれ以上は聞かなかった。
『行ってらっしゃいませ。男爵様。』
と、ソフィーはいつものようにハルミトン男爵を送り出した。その後、家庭教師達に電話で授業を休みたい旨を伝え、アランの部屋に行った。
コンコン、コンコン!
『アラン坊っちゃま。ソフィーでございます。入りますよ?』
コンコン、コンコン!
ガチャ…
入ると、ベッドの上でリネンにくるまってぶすくれているアランがいた。
『ソフィー婆や…僕のことは、ほっといてよ。』
『なりません!アラン坊っちゃま。直ぐにお起きになって、朝食を召し上がって下さいませ!』
『嫌だ…』
『男爵様は先程お仕事にお出掛けになりました。お顔を合わせるご心配はありませんよ?』
『嫌だ…なんだか熱があるみたい。身体が怠いんだ。だからほっといてよ!』
わかりやすい仮病だ。
『なりませんものはなりません。さあ、早くお目覚め下さいませ。』
『嫌だったら嫌だったら嫌だ!!』
『……では、坊っちゃま。このソフィーが看病して差し上げます。』
ガチャリ…
と、音が冷たく響く。ソフィーは後ろ手でそっとアランの寝室の鍵を閉めた。アランは毛布の隙間からそれを見ていたが、ソフィーは何時ものソフィーとは違う異質の空気を纏っている。メガネのおかげで表情ははっきりとはわからないが、例えるなら、空腹の時に大好物が目の前にあるような、そんな雰囲気を感じた。
『アラン坊っちゃま…頭をお貸しくださいませ。』
するりと毛布を剥がされ、アランの首にソフィーの手が絡みつくようにまとわりつき、おでことおでこをくっつける。
ソフィーの仕草と行動から、アランが考え違いと安心した瞬間。
んちゅ❤
『むぐっ!!?』
いきなり唇をソフィーに奪われた。 ぬらりとした、舌がアランの口内に滑り込んでくる。一瞬メガネ越しに見えるソフィーの瞳は絡みつくような色欲を映していた。
もがいても、頭と身体を押さえられている。口を閉じて快楽から逃れようとしても、ソフィーの舌はアランの舌をからみ取り逃げることを許さない。全身から力が抜け、口を塞がれ声も出せず、呼吸もままならない。
くちゃ❤ん…ぁ…ちゅ❤くちゅ…れろ…ん❤
上唇、下唇
くちゅ、くちゅ❤…れろれろ❤
前歯、奥歯
くちゃ❤くちゅ❤…ん…ん❤ん❤
歯の裏、口の天井
口内のありとあらゆる場所を犯されていく。頭の中にイヤラシイ音が直に入り込んでいく。生まれて初めて与えられる快楽がアランを侵し、" 性 ''を脳に叩き込まれる。
逃げられず、逆らえず、拒むことも許されず、ソフィーからの"しつけ"を受ける。
『んは❤…アラン坊っちゃま、熱がかなりあるようですございますね…❤』
口での交わりが終るも、口の端から名残惜しむように糸の橋が架かっている。アランは身体をだらんと弛緩させされるがままになっていた。
『はーっ…はー…ん、ぁあ…』
『息もこんなに乱れて…ソフィーにお任せくださいませ❤』
くちゃくちゃ…と口で耳を弄ばれ、アランは丁寧に寝間着を脱がされていく。さわさわと、身体を這い回る手に反応して変声期前の男の子の弱々しい声が漏れる。
『ひ…っ…あぁ…ぁ…』
『女の子みたいでございますね…アラン坊っちゃま❤とっても、可愛らしいですわ❤…ここもこんなに硬くなっていらっしゃいます❤坊っちゃまは自分でなされたことはお有りでございますか?』
『こん…な…の…ぁ…し…らな…ぁい…』
ソフィーの手は徐々に下腹部に移動し、アランの分身を下着越しに触る。
『ひっ…かかな…ぅ…ぁ…いでぇ。』
ソフィーの滑らかな手が亀頭の先をカリカリと引っ掻くようにいじらしく責め立てる。いつの間にか、アランの下着が取り払われている。
ソフィーは片手でアランを弄びながら、ネックレスをしまい、エプロンを脱ぎ捨て、黒いドレスのボタンをプチプチと取りその豊満な胸を晒す。
『ふふふ…』
たゆんと柔らかくも張りのある果実がアランの分身を包む。ソフィーの胸の中から見えたり隠れたりする度にぬるま湯に浸かり蕩けてしまうような、やわやわとした快楽が広がっていく。
『いかがでございましょうか、アラン坊っちゃま。女性の身体は❤』
『ん、んぁ…ん…』
『ふふふ…まだ、皮が張っておりますが、ソフィーにお任せくださいませ❤』
んあ❤
『ひう!?』
するとソフィーはアランの分身を口に入れて飴玉を転がすように舐めはじめた。皮と本体の間に舌を潜り込ませゆっくりと剥いていく。アランは蕩けるような快楽とピリピリとした緩い傷みのなかで悶えていた。
んちゅ…ちゃぷ❤ずるずる…ちゃぷ❤
数分にかけて傷みと快楽との間で本来の男性的なフォルムになったアランの分身は、ちゃぷり…とおとを立てて口外に放たれた。
『ご立派でございます…坊っちゃま。ソフィーは嬉しく思います❤』
そう言うと再びアランの分身を口の中に咥えこんだ。
『んん…いぁ…ああ!』
アランは快楽と涙で顔をくしゃくしゃにして手で目を覆いかくしている。アランのウブな反応はソフィーを喜ばせるのに十分であった。
ずるずる❤
ちゃぷ❤
れろ…んちゅ…
アランの未熟な身体に嫌が応でも性感を覚えさせていく。
『ソフィー!ソフィー!出ちゃう…何か出ちゃう!…い…いゃ…いや!!……』
ちゅ…
すると、ソフィーが行為をやめた。
『ソフィー…?』
『坊っちゃまのお気持ちも考えずにこのような事をしてしまい、真に申し訳ありません。』
アランは涙で滲んだ自身の目でもどかしさと、切なさを目の前の女に訴えていた。怪しく蕩けた瞳で繕うように微笑むソフィーにそんな事は百も承知の所である。
『ソフィー…』
『坊っちゃま、差しでがましいようではございますが、時として素直にはっきりと、ご自身のお気持ちを伝える事も紳士には必要なことでございますよ?』
『ソフィー…もっと…し…て…』
『畏まりました❤』
ソフィーはアランの分身を再び、今度は一気に喉奥まで咥えこんだ。
ずちゅ❤
ぶちゅ…
れろれろ❤
『ソフィー!ソフィー!あぁ!』
『ほっはは、ほのはまほほへひらはいはへ。(坊っちゃま、そのまま出してくださいませ。)』
当のソフィーも喉のおくで幼いながらもたくましいアランに感じていた。
『んんーーーーーーーーーーーー!!!!』
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク
弾けるように出る生まれて初めての射精の感覚。アランは快楽に身を委ねて、身体を弛緩させている。
ソフィーは放たれる精に目をパチパチさせながら、絶頂を迎えた。グチュリと疼く下腹部の欲望を感じながら。無意識に喉の奥をポンプのように動かして浅ましく、一雫も逃さぬと言わんばかりに精をむさぼる。
射精後の宙を浮くような、脱力感と心地よい気だるさのなかで、睡魔がアランを襲う頃、ようやくソフィーの口から解放された。
ソフィーは魔物の欲望を抑え、愛しい坊っちゃまが風邪を引かないように毛布をかけて、優しく身体を抱き寄せ囁くように語りかける。
『アラン坊っちゃま、紳士にお成りなさい。坊っちゃまの為ならソフィーはこの身も心も惜しみません。一生お仕え致します…』
『うん……ソフィー…お父様と…お話し…できて…本当は、嬉しかったんだ……でも…僕…解らなくて…どう…向き合って良いのか…だからね…』
『坊っちゃまは人の傷みや悲しみを人一倍身をもって知っている方でございます。きっと、男爵様とも上手くいきます。きっといつか坊っちゃまは、お優しい一流の紳士になります。ソフィーが保証します』
『…すぅー…すぅー…』
『おやすみなさいませ…』
事後、アランが起きて服を着た時、午後の紅茶の時刻を過ぎていた。ソフィーはそれまでずっとアランに寄り添っていた。
起きた後、アランは今までにない真剣な表情で
『ソフィー…僕、紳士になる。だからもし僕が一流の紳士になったら…結婚してほしい。』
『アラン坊っちゃま……なりません。坊っちゃまには、わたくしよりも、もっと相応しい素敵なレディーがいらっしゃいます。』
すると、アランはソフィーの手を取って
『僕は本気だから…!』
『ーーーーー///////////』
ソフィーは顔を赤く染め、恥ずかしそうに目を背けた。
『ご冗談を…わ、わたくしはお仕事に戻ります。失礼致します……』
振り返ってドアから出る時に動揺していたのか、頭をぶつけてしまった。アランは普段見る事のないソフィーの可愛い一面を見る事ができて嬉しく思った。
それから、アランは変わった。年齢は10歳で子供であったが、悪戯や癇癪も鳴りを潜め、周りの目にも明らかに精神的に大人になった。
勉学に励み、マナーを身に付けた。父親のハルミトン男爵ともゆっくりではあるが徐々に関係を回復させていった。
ソフィーがこの小さな屋敷に来てから2年が過ぎアランが12歳になったある日のこと
『お父様。僕は、全寮制の学校に通いたいです。どうしても勉強したい事があるんだ。』
と、言うとアランはハルミトン男爵に頭を下げて頼み、難色を示す男爵にソフィーと一緒にお願いして、男爵の許可を得た。
『坊っちゃま、行ってらっしゃいませ…』
『ソフィー…そんな悲しそうな顔をしないで。この家とお父様を頼んだよ?』
『はい……畏まりました。』
こうして、次の年の秋に家を出たアランは全寮制の学校に入った。ハルミトン邸には学校の休暇と、主神教の祭日にかならず帰ってきた。ソフィーは相変わらずだが、父親の男爵は少し太り、頭があやしくなってきた。
ソフィーとはあの日以来、"そういうこと"は無い。次に唇を重ねる時は結婚を誓う時にとアランは心に誓っていた。
そのアランが15歳になった2回生の後期の時、成績優秀者として飛び級の権利を与えられてた。男爵は『お前の好きにしなさい』とアランが国立大学に進学し、勉強する事を許した。
男爵は屋敷の建て替えや内装の整理など何1つ変えなかった。息子との思い出を1つ1つ大切にしていた。
それから4年が過ぎアランが大学を卒業して戻ってきた。彼は大学で父親のハルミトン男爵の会社を支えるために経済学と外国語を学び卒業後はすぐに父親のハルミトン・スチーム・カンパニーに入った。アランが19歳の時だった。
それから、アランは社交界デビューを飾り名実共に紳士の仲間入りを果たした。男爵はハルミトン邸で小さなダンスパーティを開き、アランを祝った。若い娘の誰もが彼と踊りたがったが、アランは誰とも踊らなかった。夜会を終え、アランは誰もいないロビーに1人立っていた。
『ソフィー来てくれるか?』
月明かりが窓から射し込むハルミトン邸のロビーで夜会服を着たアランがソフィーを呼ぶ。
『はい…』
暗がりからソフィーが薄っすらと明るいロビーへと出てきた。いつもの使用人服ではない、彼女の髪や肌の色に良く似合うグリーンのドレスを着て頬を赤く染めていた。
『ソフィー、とても綺麗だよ…。僕と一緒に踊ってくれませんか?』
『はい...』
音楽も何もない2人だけのワルツが始まった。ゆっくりと時間が流れていく。目を開ければ愛しい人が。見守るのは青いお月様だけだ。
『ソフィー…約束を覚えているかい?』
『はい…忘れもしません……』
『僕は紳士になれたかな?』
『アラン坊っちゃま…立派になられました。背もいつの間にかわたくしよりも大きく…』
ちゅ…
『坊っちゃま…』
アランはソフィーの手を握りキスをした。
『これが僕の気持ちです。ソフィー…僕にあなたの美しさを永遠に独り占めする権利と栄光をください。…どうか僕と結婚して。』
『はい…喜んで…!もう、アラン坊っちゃまとは呼べませんね…』
『じゃあ、なんて呼んでくれるんだい?』
『これからは、旦那様とお呼びします…』
2人は静かに目を閉じて口付けをかわす。
こうして、アランとソフィーは結婚した。ハルミトン男爵は『お前はソフィーさんと結婚すると思った』とさして驚かれなかった。
結婚式は華やかに行われ、各企業の要人や各国の外交官も参列した。
燕尾服に身を包んだアランと純白の花嫁衣装に身を包んだソフィーは非常に絵になった。多くの人が羨むカップルだ。
アランは父親に『こんな時にもハルミトン・スチーム・カンパニーを売り出したいの?』とソフィーと2人で苦笑いした。教会式では、オルガニストが奏でる蒸気機関送風機を搭載したオルガンの見事な演奏。婚礼馬車では無くハルミトン社の最新の蒸気自動車が。空調機やはたまた式場の昇降機までハルミトン社製だ。
賑やかな式が終わり、関係者や参列者を見送り、アランとソフィーは2人で手を繋いで寝室に入った。
身体を寄せ、抱き合い、見つめ合い、口付けを交わす。
ちゅ、ちゅ、ちゅ❤くちゃ、んちゅ❤
啄むように、次第にお互いを確かめ合う情熱的なものに…
キスをしながら服を脱がし合い、ベッドへとアランがソフィーを押し倒すように倒れこむ。
最後にメガネとネックレスを外し、もう一度キスをする。
ソフィーの身体はまるで絵画に描かれた女神のよう。キキーモラの犬耳や羽毛に覆われた手首や尻尾、膝から下の鳥足と人間の部分が…美しい顔立ち、大きく形の良い胸、くびれた腰、まろい尻、魅惑的なふともも。その全てが調和している。
9年前のあの時とは逆の形で向かい合う。
『昔とは逆だね…』
『はい…さぁ、旦那様。お好きになさってください。』
大きな胸にやさしく触れる。しっとりと、吸い付くような感触で絹のように滑らかな触り心地だ。
必死に声を押し込めるソフィーの息づかいがアランの興奮を煽る。果実に舌を這わせるとソフィーの艶やかなアルトの声が漏れる。
『ん…はぁ❤ん…』
アランは手をゆっくりと滑らせながら下腹部を撫で回す。ソフィーは愛する人に身体を預ける安心感とこれから起こるであろう事に期待していた。
くちゅり❤
『ひぅ❤』
と、アランがソフィーの秘所に触れた。既に濡れていてお漏らしのようになっている。指を這わせ、ソフィーの反応を見ながらやさしく解していくように愛撫をする。指の腹で撫でたり、なぞったり、小さく可愛い蕾を弾くように愛したり、花の中に浅く指を入れ吸い付くような感触を楽しむ。
『ん…ぁぁ❤ぃ…い…あぁ❤ぁ❤ぁ❤旦那様❤旦那様ぁ❤アラン坊っちゃまぁぁああ❤』
ソフィーがアランの腕を掴んだ
『ごめん…ソフィー。痛かった?』
『も、もう果てそうです…だから…あの時の続きを…わたくしの初めてを…坊っちゃまので…旦那様ので果てさせてくださいませ❤』
ソフィーのその一言は男性の理性を塔の様に崩し、獣にさせるのに十分な破壊力があった。
アランは唇をうばい今までにない力をもつ自身の分身をソフィーの花弁にあてがうと一気に突き入れた。
『『ーーーーーーーーーーーーー!❤!❤!❤!❤!❤』』
処女膜を突き破り、最奥地に到達した瞬間、2人は全く同時に絶頂を迎えた。処女と童貞の交換。アランはソフィーを両手で抱きしめ、ソフィーはアランを両手で抱きしめて足を絡ませ引き寄せていた。雄は雌を孕まし、雌は雄の精で孕む事しか考えていない様な長い長い絶頂。2人を包む圧倒的な多幸感。トクトクと出続ける精液をポンプの様に膣を蠢かせその全てを受け入れた。
絶頂感が少しばかり収まり、アランが顔を離す。息を荒げ、目が蕩けきり、瞳をハートを映し、口を緩ませだらし無く絶頂するソフィーの顔があった。少しばかり冷静さを取り戻したアランはソフィーの様子を見て彼女が痛みを感じていない事を確認するとほっと胸を撫で下ろした。
すると、ソフィーの膣が蠢き始め、アランの分身に力が戻っていく。
『らんなしゃまぁ❤らんなしゃまぁ❤❤』
ソフィーは求める様な眼差しを向け、まだ、もっと、足りないと、蕩けきった剥き出しの欲望を晒していた。アランは再び動き出した。
ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤
『あ❤あ❤あ❤あ❤あ❤あ❤あ』
ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤
肉と肉がぶつかる音が淫らに奏でられていく。シーツは2人の汗と愛液とでぐちゃぐちゃになっている。
『ソフィー!ソフィー!』
『あらん❤あっ❤あらん❤ずっと…ずっと、まって…あっ❤…まし…たぁ❤』
『僕もだっ!ソフィー!』
ソフィーは細かく絶頂しっぱなしになっていて、アランは早くも限界に達しそうになっている。先程一度出していなければとうに果てていただろう。相性が良過ぎている。
それに加えて、ソフィーは9年前のあの日からずっとアランを待ち続けていたのだ。
『ソフィー!もう…出そうだ!』
『れんぶ❤くらはい❤❤あらん❤ぼっちゃまぁ❤❤』
アランとソフィーは手のひらと手のひらを重ねて指を絡ませ合い、口をつけお互いを貪り合う。子宮の口は開ききっていてアランの鈴口にしゃぶりついている。
『で…る…!!!!』
『きて❤きて❤きて❤❤らんなしゃまぁ❤❤❤』
びゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
『『ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤』』
最大の絶頂と快楽。その後の静寂。2人が1つになった限りない幸福。
アランとソフィーはお互いにしがみつく様に抱き合っている。知らないところに2人で出かけて迷子になった。お互いがけして離れないように、逸れないように。
心臓の音を子守歌に、最後にキスをして2人は意識を手放した。
1年後の夏…
ハルミトン男爵は会社と爵位を息子のアランに譲り60歳を前に引退した。時々、まだ会社の計画に慣れないアランの手助けをするものの、息子なら心配は要らないと思っていた。
あのどうしようもない悪戯っ子が、立派な紳士になり、しっかりとした伴侶を得て家督と会社を継いだのだ。
それに…
『ソフィー、君は動かないで。僕がやるよ。』
『旦那様、これくらい大丈夫でございますよ?』
『いいから、君はお腹の子を大事にして。』
『はい…では、よろしくお願い致します❤』
アランが微笑む先には、お腹を大きくしたソフィーがいる。
『あっ…動いた。』
『本当!?』
アランは安楽椅子に腰掛けるソフィーに駆け寄り、お腹に耳を当てた。
『旦那様に似れば、元気の良い子に…』
『ソフィーに似れば、気立ての良く優しい子に…』
『どちらに似るでしょうか?』
『きっと、両方だよ。』
『まぁ!欲張りなこと!…うふふふふ...』
『ははははは...』
幸せそうなアランとソフィーを見てハルミトンは目を細める。これから、孫が生まれて来る。ハルミトンは人生の幸福を噛み締めていた。
書斎で馴染みのポルト酒を飾りグラスに注ぎ、パイプタバコに火を入れる。机の上の写真を見ながら、懐かしむように語りかける。
『スーザン…アランは立派に家督を継いで、素敵な伴侶を見つけたよ。もう直ぐ孫も産まれてくるんだ…そうそう最近…』
(ふふふ…)
『ん?…』
写真の中のスーザンが語りかけるハルミトン氏に微笑んだ様な気がした。
その後、度々美しい女性の幽霊がハルミトン邸に現れる様になったのはまた別のお話。
木漏れ日の庭でアランとソフィーは肩を寄せ合っている。
『ソフィー…』
『旦那様…』
2人は見つめ合い唇を重ね、幸せを分け合った。もう1つの命を感じて…
おわり…
穏やかな春の昼さがりに悲鳴が響く。
『きゃぁぁぁああああ!!!』
バターン!!
と、窓を突き破るような勢いで飛び出して来たのはエクレアさんだ。ハルミトン家で婆やをやっている。
仕事を早く終えて午後3時きっかり、帰宅直後にこの悲鳴を聞いた屋敷の家主、ハルミトン男爵はまたか!と頭を抱えた。これでまた雇った婆やが辞めて行くのが目に見える。予感が的中するのならば今回で7回連続…。加えて最短記録なのだ…
胃もキリキリいってきた…
1人目の婆やはドブ川に落とされて
2人目は落とし穴…救出に半日くらい掛かった
3人目は何処で集めてきたのか30匹の猫をけしかけられて…この婆やは大の猫嫌いで猫アレルギーだ
4人目の婆やは閉所恐怖症で、使用人用トイレに8時間も閉じ込められて
5人目は何だか良く解らない…謎のうめき声を上げて去って行った
6人目の婆やは掃除中に使用人服のドレープにマッチで火を点けられて…幸いに庭の池に飛び混んだので軽い火傷で済んだ
さて、今回は何をやらかしたのやら…と男爵は気が気ではなかった。
『エクレアさん。どうしたんですか!?』
ハルミトン男爵が尋ねるとエクレア婆やは息を荒げて
『どうしたも、こうしたもありません!!』
と金切声を上げた。
『あー…息子がなにか…その…悪い事でも?』
『カエルが…ヘビが…カサカサが……!!!…オッホン!…ともかく!御宅の坊ちゃんのお相手はもうこりごりです!!ええ!こりごりです!!わたくし、辞めさせて頂きます!』
バタン!
と、エクレアさんは荷物をまとめて逃げるように去って行った。
見事に予感的中。1週間…ハルミトン家のメイドが7回連続で辞め、且つ今までの最短記録を樹立した。
この事で、男爵は自分の書斎に1人息子のアランを呼び出した。
『…はぁ。アランよ、何ぜ呼び出されたかわかっているな?』
『はい、お父様。』
『まったく、お前というヤツは…。今度は何をやらかした?』
『…………』
『はぁ…怒らないから、正直に言いなさい。』
『…エクレア婆やがきらいな、ヘビとカエルとゴキブリを婆やがお昼寝している時に背中に入れたんだ。』
『何てことをしてくれたんだ!!!!』
ドンッ!!…とハルミトン男爵は机を叩いた。ビクッ!とアランの背中が小さく飛び上がる。
『ハルミトン家の男子としてなんと、情けない!先日会ったジェンキンス男爵の息子さんはお前と同い年の10歳だが、もっとしっかりしていたぞ!!』
『はい、お父様。』
『はいはい言っていれば良いというものでは無い!はぁ…!将来は男爵家とハルミトン・スチーム・カンパニーを継ぐのだ。まったく、お前はもっと自覚を…』
ジリリリリリリリリン…ジリリリリリリリリリン…
お説教の途中で書斎の電話が鳴り出した。
『…もう良い。電話に出なければ。お前は部屋に入って反省しなさい。今日は夕食抜きだ。』
『はい。失礼します。』
『…ガチャ…もしもしホーカン・ハルミトン男爵だが…おお!これは、これは、グレンさん!最新式の蒸気機関を送風システムに使用したオルガンは…ええ…ええ…それはそれは!…』
バタン…
ハルミトン男爵は電話で会話をしながら、アランを横目で見送った。
一方のアランは部屋に閉じこもって、明かりもつけずにベッドの片隅で涙をこらえながら小さくなっていた。
『そういうことじゃないんだよ、お父さん…』
ガチャ…チン!
『ふぅ…やれやれ。また新しい婆やを探さないと…。アレンよ…お前は、まだ母親のことを…』
男爵はポルト酒を飾りグラスに注ぎ、パイプタバコに火を入れながら、机の上の写真に目を向けた。彼は3年前に病気で亡くした伴侶、アランの母親スーザンの事を思い出していた。
スーザンは病弱ではあったが穏やかで優しい人で、とびきりの美人だった。今でも男爵は愛しのスーザンを夢に見る。
結婚してアランが産まれてからはハルミトン男爵は仕事一辺倒の仕事人間に拍車がかかり、育児だのなんだのは殆どスーザンとメイドに任せきりにしていた。
そんな時に彼女は流行り病に掛かってしまい、スーザンはあっけなく逝ってしまった。
その時、当時7歳のアランは3日3晩スーザンの側を離れないで泣きはらしていた。
ハルミトン男爵はその時に初めて自分のして来た事を後悔した。もっと、スーザンとアランの側にいてやれればと…
それから、ゴミゴミとした都会の屋敷を引き払い、湖のある片田舎の小さな屋敷にやってきたのだ。
『スーザン…君だったら何と言うかな…。もっと君やアランと向き合っていれば…。』
ハルミトン男爵はもっと息子のアランと家族の時間を作りたいのだが今、男爵の会社はとても繁盛していて忙しいく、また1人息子アランとの向き合い方がわからない…そういう訳で、どうしても女手が必要なのだが…
ピポパポ…
『お電話ありがとうございます。乳母紹介所のマダム・ジェシカのオフィスです。』
『もしもし、ホーカン・ハルミトン男爵だが…』
『!?…すみません!本日は臨時休業になります!!』
ガチャ…ツー…ツー…
オホン!気をとりなおして
ピポパポ…
『お電話ありがとうございます。メイド紹介事務所のムッター・アンです。』
『もしもし、ホーカン・ハルミトン男爵…』
ガチャ…ツー…ツー…ツー…
『まったく、失礼な。…うーむ…困った。これは本格的に困ったぞ』
どうやら、アランの素行の悪さが噂になっているようだ。このままではアランを全寮制の私立神学校に預けるか、金持ちのフランシス叔母様に預けるくらいしか手立てが無くなる…
そこでハルミトン男爵は新聞社の友人にハルミトン・スチーム・カンパニーの宣伝広告の見出しの隅にメイド募集のお知らせを乗せる様に頼んだ。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
あなたの生活を豊かに
ハルミトン・スチーム・カンパニー!
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急募。
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。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
と、翌日の新聞に載せてもらった。男爵は伴侶のスーザンの事もあり、アランを手放したくない。だから、藁にもすがる思いだった。
まぁ、焦らず待とう…と男爵がモーニングコーヒーに口をつけようとすると
ジリリリリン…ジリリリリリリリン
電話が鳴り出した。
『はは…まさかなぁ…』
ガチャ
『はい、私はホーカン・ハルミトン男爵だが…』
『おはようございます。わたくしはソフィーと申します。メイド募集中と今朝の新聞で拝見致しました。つきましては………』
男爵は思わずボーぜんとしてしまった。
『…あの?』
『あぁ…いや、失礼。オホン!では面接をしたいので、今日の午後にでも来れるのかね?』
『はい。畏まりました。今日の午後にそちらに伺います。失礼します…』
『うむ。』
ガチャ…
『やっはは〜〜!!!…あっちち!』
男爵は思わずガッツポーズを取り、その拍子にコーヒーをガウンにこぼしてしまった。
その日の午後1時…
コンコン、コンコン!
規則正しいノックが響いた。
『ご機嫌よう。メイドのソフィーと申します。』
男爵の目の前のメイドは優雅な物腰と完璧な作法で頭を下げた。亜麻色の髪、丸い眼鏡をかけた少しタレ目の栗色の瞳、首には聖女のメダイを付けていた。とても美しく若い女性だ。
しかし、目を引くのは頭の二ニョンからでる垂れた犬の様な耳、手首は羽に覆われて、腰からは羽根に包まれた尻尾、そして一見ブーツの様に見える足は鳥の足の様だ。
『良く来てくれた。さあ、頭を上げて。しかし、ソフィーさんは魔物…?』
『はい。キキーモラという魔物にございます。わたくしたちは人様に使える為に生まれた種族と、わたくしのお師匠様より伺っております。恐れながら魔物では男爵家に相応しくありませんでしょうか……?』
ランドル領とツェーリ領の間、レーマ湖畔地帯は名目上は中立だが、主神教の影響が強い。魔物は魔法で皆人に変装している。
『いえいえ、かまいません。今時は珍しくもない。しかし、ここは中立とはいえ主神教の強い地域で、何故ソフィーさんはいきなり正体を?』
『不快に思われたのでしたら、未熟者故、ご無礼をお赦しください。ですが…誰とも解らない者を男爵様はお抱えになりますでしょうか?』
『君の誠意という訳か…』
『そう捉えて頂ければ幸いでございます。』
と、ソフィーは優雅にドレープの裾を持ち上げ膝を少し曲げた。
『さあ、立ち話はなんです。こちらに。』
と、男爵はソフィーを書斎に案内して仕事の説明をした。
1人息子のアランの世話。住み込みで働いてほしい旨、屋敷の掃除や洗濯や料理の事。それから…
『では、仕事は本日これからで、一週間は採用期間と言うことでよろしいでしょうか?』
『うむ…。いろいろとあったのでな。アランの世話を頼む。』
『畏まりました。…差しでがましいとは思いますが、そのアラン坊っちゃまに何か問題でも?』
『……少しばかり、反抗期と言うヤツかもしれん。私もどうしたら良いか…任せても大丈夫か?』
『では坊っちゃまのしつけもでございますね?畏まりました。』
『よろしく頼む』
『お任せください。』
『そうか!やってくれるか!おい!!アラン…アラン!!出て来なさい。』
すると、ドアからアランが出てきた。少し目つきが悪いブラウンの瞳、父親譲りの赤毛をクリクリさせた可愛らしい男の子だ。着ているベストにポケットに手を突っ込んだままだ。
『おお、来たか。アランよ。こちらは新しい婆やのソフィーさんだ。ご挨拶なさい。』
『はい。お父様。はじめまして、ソフィーさん。僕はアラン・ハルミトンです。』
『ご機嫌よう。今日からこのお屋敷のメイドを勤めさせていただく、ソフィーと申します。坊っちゃま、これからよろしくお願いします。』
ソフィーは、アランを見て
(坊っちゃまは少し可哀想な目をしていらっしゃる)
と思った。
『アランお前は勉強に戻りなさい。では、ソフィーさん。後は任せました。3時頃に歴史の家庭教師が来るので出迎えてくれ。私は仕事に行かなくては。』
『畏まりました。では男爵様、お支度を…』
そうするとソフィーはテキパキと手際よく支度を始めた。いつもは10分かかる支度がものの3分程で終わってしまい男爵は目を丸くした。
『男爵様、おかえりは何時頃になりましょう?』
『え…はっ!オホン!本日は4時からの経営会議だけだから…午後6時くらいだ。』
『では、晩餐は6時半頃に…』
『うむ。そうだな。行って来る。』
『いってらっしゃいませ…』
ハルミトン男爵は蒸気自動車に乗り出掛けていった。内心このメイドも、ものの数日で出て行ってしまうだろう…とあまり期待して思っていなかった。
その日の夕刻。男爵が予定通りに6時きっかりに帰って来た頃には屋敷はまるで別世界だった。
見事に磨かれた床、壁、ガラス窓に至っては鏡のようでチリ1つ落ちてはいなかった。インテリアも綺麗に磨かれ、美しく見えるよう洗練され、もはや何処ぞの王族のマナーハウスのようであった。
『おかえりなさいませ。男爵様。』
『た…ただいま…』
『コートをお脱ぎくださいませ…お荷物を…。書斎でよろしいでしょうか?』
『う…うむ』
『畏まりました。』
男爵はロビー、書斎、寝室と見て回ったが、見事としか言えない程に完璧だった。彼の机の上には馴染みのポルト酒とパイプタバコがすでに置いてある。
そして、晩餐も少々素朴ながらも王宮料理人が作る料理に引けの取らない味の料理がならんだ。
『風呂の使い方は今度教えよう。ここのボイラーは私の会社の古い製品であり癖がある。扱いが難しくて素人では…』
『恐れながら、使用人室にボイラーの使い方に関する覚え書きを見つけました。お湯浴みの準備は整っています。』
『なに!?本当か!?』
『左様でございます。では、こちらに…』
風呂場に行って驚いた。本当に湯が沸いているのだ。
その後、湯浴みを終えた男爵はガウンが無いことに気がついた。今朝方コーヒーをこぼしたのだ。
『男爵様、此方にお召し物はそちらにご用意しています…』
脱衣室のドアの外からソフィーが話しかけてきた。小さいカゴには、あの何時も使っている愛用のガウンが出てきた。そのガウンにはシミは1つも見当たらず、むしろ今までより綺麗であった。
『これは…今朝私がコーヒーを…』
『少々汚れていましたので、シミ抜きとほつれ直しと洗濯を。』
『洗濯だって?…一体、君はどうやってこんな短い間にガウンを乾かした?』
『はい。ボイラー室の熱を利用しました。あとはリネンの上からアイロンを。』
『…君は、今まで屋敷に来た使用人の中で一番優秀な使用人だ。』
『お褒めの言葉、ありがとうございます。では、わたくしは坊っちゃまをお湯浴みに呼んできます。』
こうして、ソフィーが来た初日が何事も無く終わった。
翌朝
ソフィーの1日がはじまる。
日の出の頃に起きて、朝の市場に出掛け朝食の支度。朝のお掃除。軽めの自分の朝食を取る。
男爵とアランを起こし、朝の支度のお手伝いと朝食。
ハルミトン男爵は仕事に出掛ける。
勉強部屋の準備。家庭教師の先生の出迎え。
アランが家庭教師の先生と勉強をしている間にお掃除と洗濯、昼食の準備。合い間に休憩と自分の昼食。
アランの昼食後、午後のお勉強の準備。家庭教師の出迎え。午後のティータイムの準備。
ティータイム後、自由時間。お庭のお手入れ。洗濯物の取り込みとアイロン掛け。晩餐の準備。ベッドメイク。
ハルミトン男爵のお出迎え。晩餐。男爵とアランが食べている間に、湯浴みの準備、終わったら自分の夕飯。
明日の予定の確認。
『では、明日の予定はそのように。』
『うむ。下がってよいぞ。』
『失礼致します…おやすみなさいませ。』
ソフィーが仕事を終えたその夜。アランがソフィーのいる使用人室にやってきた。
『ソフィー婆や…』
『アラン坊っちゃま、何かご用でございましょうか?』
アランはソフィーを睨みつけると
『お父様はお前を気に入っているけど、僕は違うからな。お前を必ず追い出してやる!』
そうするとアランは走って行ってしまった。
『坊っちやま、おやすみなさいませ。』
その翌日から、アランの悪戯(襲撃)が始まった。
コンコン、コンコン!
『坊っちゃま、おはようございます。』
『ん…入っていーよ…。』
『失礼します。』
ガチャ…バン!!
と扉を開けると洗濯用の金だらいが落ちて来た。ソフィーの頭がグワングワンと揺れ、星が見えるようだ。
『やーい!引っかかった!』
と嬉しそうな表情のアランがいる。ソフィーは気を取直して
『アラン坊っちゃま、おはようございます。お召し変えを。あと、朝食の準備が出来ています。』
スルー…
『え、あー…うん。』
『では、ソフィーめがお召し変えのお手伝いを…』
『ひ、1人でできるよ!!』
『左様でございますか?では、リビングでお待ちしております。』
ガチャ…とソフィーは何事もなかったように金だらいを持って部屋を後にした。
『なんだよ、あいつ…』
眉ひとつ動かさないソフィーを見てアランは面白くなかった。今までの婆やなら顔を真っ赤にして金切声を上げて怒ったのに。
それから
次の日は落とし穴に落とされたり、
その次の日はお掃除中に転ばされたり、
また次の日は池に落ちたりした。
しかし、ソフィーは何をされるも動じずに、何事もなかったように振舞った。それどころか、1週間経つ頃には殆んどの悪戯は通用しなくなっていた。
落とし穴を掘っても高確率で察知され、もしかかりかけても、物凄い反射神経で回避される。
廊下に張ったピアノ線や紐などのブービートラップは役目を果たす事がない。
アランの意地悪で、買い物カゴのお買い物リストをすり替えても何故だか間違えない。本人曰く、『メイドのカン…でございます。』だそうだ。
悪戯で絵の具をソフィーの服に着けても5分後には何事もなかったように綺麗な服を着ている。
池に落とそうとした時は…
『よし、今だ!!』
池の側で洗濯物を干しているソフィーを突き飛ばそうとしたその瞬間
『おやおや、靴下がもう1つ…』
(坊っちゃま…同じ手が二度通用するほど、このソフィーは甘くありませんよ…)
とソフィーがいきなり動いた。
バッシャーン!!!
アランは池に盛大に突っ込んでしまった。腰ぐらいの深さなので溺れる心配はない。
『あらあら、アラン坊っちゃま。元気がよろしいことは大変良い事でございますが、そんなことをしてはお風邪を召してしまいますよ?』
ソフィーはまったく動じていない。
『いい!ほっといてくれ!!』
とアランはバツの悪そうに目をそらせた。
『いけません!お風邪を召してしまいます!さあ、こちらへ!』
(ふふ…アラン坊っちゃま可愛いなぁ…)
『ちょっと、ソフィー婆や!まっ…』
とアランはソフィーに耳を引っ張られながらズリズリと連れて行かれ、裸にむかれ、タオルで拭かれ季節外れの暖炉でココアを飲みながら暖まる羽目になった。
そのお陰かアランが風邪を引くことはなかった。
そんなこんなで、ソフィーがハルミトン男爵邸に来てから早3カ月が過ぎた。春は過ぎ、雨季が終わり、夏になった頃のある日の夕刻、男爵は書斎にて書類の整理をしながらソフィーと話していた。
『男爵様、お手紙が届いております。サー・ジェンキンス様、ダニエル・グレイ様、それからローゼンベルク様からです。』
『ありがとう。ソフィーさんが来て3カ月が過ぎた。アランとはどうだ?この屋敷の生活には慣れたか?』
シュッ…っとパイプタバコにマッチの火を入れながらソフィーに話しかけた。
『はい男爵様。おかげさまで何不自由なくお仕えさせて頂いてます。アラン坊っちゃまも大変良い子で…』
ソフィーはポルト酒をグラスに入れ男爵に差し出す。
『ん、ありがとう。ほう、あのアランがな…。そろそろ、休暇を取ってはどうだ?毎日働き詰めではないか。』
『ご心配痛み入ります。ですが、私はこのお屋敷のメイドにございます。このソフィーにとって男爵様とアラン坊っちゃまにお仕えすることが何よりの喜びにございます。』
『そうか…では、何か願いはあるか?』
願い…そう聞いてソフィーは少し戸惑った
『男爵様。2つほどお願いがございます。』
『言ってみなさい。』
『アラン坊っちゃまは時々、とても悲しい目をするのです。もし、差し支えなければ坊っちゃまの事を教えて頂けないでしょうか?』
ハルミトン男爵は少し考え…ソフィーならばと言うことでアランの母親が病気で亡くなった事と男爵自身が家庭を顧みなかったことでアランを傷つけてしまった事を伝えた。
『…左様でございますか…。そのような事が…アラン坊っちゃま…』
男爵はパイプタバコの煙の中に自身の感情を曇らせるように息をついた。悲しそうなソフィーを見て話した事を少し後悔した。
『男爵様!わたくしが考えるにアラン坊っちゃまは寂しいのです。坊っちゃまの日頃の悪戯もその反動かと…。男爵様!アラン坊っちゃまとの親子水入らずのお時間をお取り下さいませ。それがもう1つのわたくしのお願いでございます。』
『いや、しかし…私には仕事もあり…それに今更アランとどう向き合っていいか……』
『男爵様。わたくしも出来る限りの事をさせていただきます!なんなりとお申し付けくださいませ!』
時々、ソフィーは有無を言わせない所がある。それが、ハルミトン男爵が彼女を信用する最大の理由でもある。
『うむ…ソフィーさんがそう言うのであれば…よし!わかった。』
男爵はソフィーに書類の整理の指示を与えて、アランの部屋に行った。
コンコンコン…ギィ…
『アラン、入るぞ。』
『何ですか?お父様。』
『少し、話しでもと…』
『何の話ですか?……』
男爵は少し考えて、それから
『この頃の事とか、勉強の事とか、色々あるだろう?』
『僕は何もないよ。何時もとおんなじです。お父様…いきなりどうしたんですか?』
『………。』
『…そっか、ソフィーさんだね。』
『違う…』
『違わない!ソフィー婆やの差し金だ!お父様は嘘が下手だ!!…おかしいと思った!ここ何年もまともな会話をしてないのに、いきなり寝る前に現れて!…たまに顔を突き合わせれば、ハルミトン家としての自覚を持て!とか、お前は私の会社を継ぐのだ!とか、そんなことばかり!』
『おい、アランやめないか。』
『いーや、やめない!ずーと思ってた!お父様は昔からそうだ!仕事、仕事、仕事!!そりゃ家の事や僕の事はお母様やメイドや家庭教師に任せれば楽だよ!でも、僕とお母様の事はお父様の中にあったの?』
『それは……』
『やっぱりね!ずーと僕をほっといたくせに!!お母様がどれほど悲しんだかも知らないくせに!!だからお母様も死んだんだ!!!』
バチン…
ハルミトン男爵がアランの頬を張った。
男爵は背後を向き一言『すまなかった…』と言って書斎に戻った。アランは押し黙ったままだ。
書斎に入ると、ソフィーの姿は無かった。仕事を終えたのか、整理した書類の横にいつものように机の上にポルト酒とパイプタバコが用意してあった。仕事はいつもの事ながら、見事なものだと男爵は感心した。
机の上の写真を見て
『父親というのは難しいな…』
とつぶやいた。
翌朝、
アランは部屋から出てこなかった。朝食にも顔を出さず、返事もしない。
男爵は親子関係について自分もアランも時間が必要である…とソフィーに告げ、ソフィーもそうですか…と答えるとそれ以上は聞かなかった。
『行ってらっしゃいませ。男爵様。』
と、ソフィーはいつものようにハルミトン男爵を送り出した。その後、家庭教師達に電話で授業を休みたい旨を伝え、アランの部屋に行った。
コンコン、コンコン!
『アラン坊っちゃま。ソフィーでございます。入りますよ?』
コンコン、コンコン!
ガチャ…
入ると、ベッドの上でリネンにくるまってぶすくれているアランがいた。
『ソフィー婆や…僕のことは、ほっといてよ。』
『なりません!アラン坊っちゃま。直ぐにお起きになって、朝食を召し上がって下さいませ!』
『嫌だ…』
『男爵様は先程お仕事にお出掛けになりました。お顔を合わせるご心配はありませんよ?』
『嫌だ…なんだか熱があるみたい。身体が怠いんだ。だからほっといてよ!』
わかりやすい仮病だ。
『なりませんものはなりません。さあ、早くお目覚め下さいませ。』
『嫌だったら嫌だったら嫌だ!!』
『……では、坊っちゃま。このソフィーが看病して差し上げます。』
ガチャリ…
と、音が冷たく響く。ソフィーは後ろ手でそっとアランの寝室の鍵を閉めた。アランは毛布の隙間からそれを見ていたが、ソフィーは何時ものソフィーとは違う異質の空気を纏っている。メガネのおかげで表情ははっきりとはわからないが、例えるなら、空腹の時に大好物が目の前にあるような、そんな雰囲気を感じた。
『アラン坊っちゃま…頭をお貸しくださいませ。』
するりと毛布を剥がされ、アランの首にソフィーの手が絡みつくようにまとわりつき、おでことおでこをくっつける。
ソフィーの仕草と行動から、アランが考え違いと安心した瞬間。
んちゅ❤
『むぐっ!!?』
いきなり唇をソフィーに奪われた。 ぬらりとした、舌がアランの口内に滑り込んでくる。一瞬メガネ越しに見えるソフィーの瞳は絡みつくような色欲を映していた。
もがいても、頭と身体を押さえられている。口を閉じて快楽から逃れようとしても、ソフィーの舌はアランの舌をからみ取り逃げることを許さない。全身から力が抜け、口を塞がれ声も出せず、呼吸もままならない。
くちゃ❤ん…ぁ…ちゅ❤くちゅ…れろ…ん❤
上唇、下唇
くちゅ、くちゅ❤…れろれろ❤
前歯、奥歯
くちゃ❤くちゅ❤…ん…ん❤ん❤
歯の裏、口の天井
口内のありとあらゆる場所を犯されていく。頭の中にイヤラシイ音が直に入り込んでいく。生まれて初めて与えられる快楽がアランを侵し、" 性 ''を脳に叩き込まれる。
逃げられず、逆らえず、拒むことも許されず、ソフィーからの"しつけ"を受ける。
『んは❤…アラン坊っちゃま、熱がかなりあるようですございますね…❤』
口での交わりが終るも、口の端から名残惜しむように糸の橋が架かっている。アランは身体をだらんと弛緩させされるがままになっていた。
『はーっ…はー…ん、ぁあ…』
『息もこんなに乱れて…ソフィーにお任せくださいませ❤』
くちゃくちゃ…と口で耳を弄ばれ、アランは丁寧に寝間着を脱がされていく。さわさわと、身体を這い回る手に反応して変声期前の男の子の弱々しい声が漏れる。
『ひ…っ…あぁ…ぁ…』
『女の子みたいでございますね…アラン坊っちゃま❤とっても、可愛らしいですわ❤…ここもこんなに硬くなっていらっしゃいます❤坊っちゃまは自分でなされたことはお有りでございますか?』
『こん…な…の…ぁ…し…らな…ぁい…』
ソフィーの手は徐々に下腹部に移動し、アランの分身を下着越しに触る。
『ひっ…かかな…ぅ…ぁ…いでぇ。』
ソフィーの滑らかな手が亀頭の先をカリカリと引っ掻くようにいじらしく責め立てる。いつの間にか、アランの下着が取り払われている。
ソフィーは片手でアランを弄びながら、ネックレスをしまい、エプロンを脱ぎ捨て、黒いドレスのボタンをプチプチと取りその豊満な胸を晒す。
『ふふふ…』
たゆんと柔らかくも張りのある果実がアランの分身を包む。ソフィーの胸の中から見えたり隠れたりする度にぬるま湯に浸かり蕩けてしまうような、やわやわとした快楽が広がっていく。
『いかがでございましょうか、アラン坊っちゃま。女性の身体は❤』
『ん、んぁ…ん…』
『ふふふ…まだ、皮が張っておりますが、ソフィーにお任せくださいませ❤』
んあ❤
『ひう!?』
するとソフィーはアランの分身を口に入れて飴玉を転がすように舐めはじめた。皮と本体の間に舌を潜り込ませゆっくりと剥いていく。アランは蕩けるような快楽とピリピリとした緩い傷みのなかで悶えていた。
んちゅ…ちゃぷ❤ずるずる…ちゃぷ❤
数分にかけて傷みと快楽との間で本来の男性的なフォルムになったアランの分身は、ちゃぷり…とおとを立てて口外に放たれた。
『ご立派でございます…坊っちゃま。ソフィーは嬉しく思います❤』
そう言うと再びアランの分身を口の中に咥えこんだ。
『んん…いぁ…ああ!』
アランは快楽と涙で顔をくしゃくしゃにして手で目を覆いかくしている。アランのウブな反応はソフィーを喜ばせるのに十分であった。
ずるずる❤
ちゃぷ❤
れろ…んちゅ…
アランの未熟な身体に嫌が応でも性感を覚えさせていく。
『ソフィー!ソフィー!出ちゃう…何か出ちゃう!…い…いゃ…いや!!……』
ちゅ…
すると、ソフィーが行為をやめた。
『ソフィー…?』
『坊っちゃまのお気持ちも考えずにこのような事をしてしまい、真に申し訳ありません。』
アランは涙で滲んだ自身の目でもどかしさと、切なさを目の前の女に訴えていた。怪しく蕩けた瞳で繕うように微笑むソフィーにそんな事は百も承知の所である。
『ソフィー…』
『坊っちゃま、差しでがましいようではございますが、時として素直にはっきりと、ご自身のお気持ちを伝える事も紳士には必要なことでございますよ?』
『ソフィー…もっと…し…て…』
『畏まりました❤』
ソフィーはアランの分身を再び、今度は一気に喉奥まで咥えこんだ。
ずちゅ❤
ぶちゅ…
れろれろ❤
『ソフィー!ソフィー!あぁ!』
『ほっはは、ほのはまほほへひらはいはへ。(坊っちゃま、そのまま出してくださいませ。)』
当のソフィーも喉のおくで幼いながらもたくましいアランに感じていた。
『んんーーーーーーーーーーーー!!!!』
ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク
弾けるように出る生まれて初めての射精の感覚。アランは快楽に身を委ねて、身体を弛緩させている。
ソフィーは放たれる精に目をパチパチさせながら、絶頂を迎えた。グチュリと疼く下腹部の欲望を感じながら。無意識に喉の奥をポンプのように動かして浅ましく、一雫も逃さぬと言わんばかりに精をむさぼる。
射精後の宙を浮くような、脱力感と心地よい気だるさのなかで、睡魔がアランを襲う頃、ようやくソフィーの口から解放された。
ソフィーは魔物の欲望を抑え、愛しい坊っちゃまが風邪を引かないように毛布をかけて、優しく身体を抱き寄せ囁くように語りかける。
『アラン坊っちゃま、紳士にお成りなさい。坊っちゃまの為ならソフィーはこの身も心も惜しみません。一生お仕え致します…』
『うん……ソフィー…お父様と…お話し…できて…本当は、嬉しかったんだ……でも…僕…解らなくて…どう…向き合って良いのか…だからね…』
『坊っちゃまは人の傷みや悲しみを人一倍身をもって知っている方でございます。きっと、男爵様とも上手くいきます。きっといつか坊っちゃまは、お優しい一流の紳士になります。ソフィーが保証します』
『…すぅー…すぅー…』
『おやすみなさいませ…』
事後、アランが起きて服を着た時、午後の紅茶の時刻を過ぎていた。ソフィーはそれまでずっとアランに寄り添っていた。
起きた後、アランは今までにない真剣な表情で
『ソフィー…僕、紳士になる。だからもし僕が一流の紳士になったら…結婚してほしい。』
『アラン坊っちゃま……なりません。坊っちゃまには、わたくしよりも、もっと相応しい素敵なレディーがいらっしゃいます。』
すると、アランはソフィーの手を取って
『僕は本気だから…!』
『ーーーーー///////////』
ソフィーは顔を赤く染め、恥ずかしそうに目を背けた。
『ご冗談を…わ、わたくしはお仕事に戻ります。失礼致します……』
振り返ってドアから出る時に動揺していたのか、頭をぶつけてしまった。アランは普段見る事のないソフィーの可愛い一面を見る事ができて嬉しく思った。
それから、アランは変わった。年齢は10歳で子供であったが、悪戯や癇癪も鳴りを潜め、周りの目にも明らかに精神的に大人になった。
勉学に励み、マナーを身に付けた。父親のハルミトン男爵ともゆっくりではあるが徐々に関係を回復させていった。
ソフィーがこの小さな屋敷に来てから2年が過ぎアランが12歳になったある日のこと
『お父様。僕は、全寮制の学校に通いたいです。どうしても勉強したい事があるんだ。』
と、言うとアランはハルミトン男爵に頭を下げて頼み、難色を示す男爵にソフィーと一緒にお願いして、男爵の許可を得た。
『坊っちゃま、行ってらっしゃいませ…』
『ソフィー…そんな悲しそうな顔をしないで。この家とお父様を頼んだよ?』
『はい……畏まりました。』
こうして、次の年の秋に家を出たアランは全寮制の学校に入った。ハルミトン邸には学校の休暇と、主神教の祭日にかならず帰ってきた。ソフィーは相変わらずだが、父親の男爵は少し太り、頭があやしくなってきた。
ソフィーとはあの日以来、"そういうこと"は無い。次に唇を重ねる時は結婚を誓う時にとアランは心に誓っていた。
そのアランが15歳になった2回生の後期の時、成績優秀者として飛び級の権利を与えられてた。男爵は『お前の好きにしなさい』とアランが国立大学に進学し、勉強する事を許した。
男爵は屋敷の建て替えや内装の整理など何1つ変えなかった。息子との思い出を1つ1つ大切にしていた。
それから4年が過ぎアランが大学を卒業して戻ってきた。彼は大学で父親のハルミトン男爵の会社を支えるために経済学と外国語を学び卒業後はすぐに父親のハルミトン・スチーム・カンパニーに入った。アランが19歳の時だった。
それから、アランは社交界デビューを飾り名実共に紳士の仲間入りを果たした。男爵はハルミトン邸で小さなダンスパーティを開き、アランを祝った。若い娘の誰もが彼と踊りたがったが、アランは誰とも踊らなかった。夜会を終え、アランは誰もいないロビーに1人立っていた。
『ソフィー来てくれるか?』
月明かりが窓から射し込むハルミトン邸のロビーで夜会服を着たアランがソフィーを呼ぶ。
『はい…』
暗がりからソフィーが薄っすらと明るいロビーへと出てきた。いつもの使用人服ではない、彼女の髪や肌の色に良く似合うグリーンのドレスを着て頬を赤く染めていた。
『ソフィー、とても綺麗だよ…。僕と一緒に踊ってくれませんか?』
『はい...』
音楽も何もない2人だけのワルツが始まった。ゆっくりと時間が流れていく。目を開ければ愛しい人が。見守るのは青いお月様だけだ。
『ソフィー…約束を覚えているかい?』
『はい…忘れもしません……』
『僕は紳士になれたかな?』
『アラン坊っちゃま…立派になられました。背もいつの間にかわたくしよりも大きく…』
ちゅ…
『坊っちゃま…』
アランはソフィーの手を握りキスをした。
『これが僕の気持ちです。ソフィー…僕にあなたの美しさを永遠に独り占めする権利と栄光をください。…どうか僕と結婚して。』
『はい…喜んで…!もう、アラン坊っちゃまとは呼べませんね…』
『じゃあ、なんて呼んでくれるんだい?』
『これからは、旦那様とお呼びします…』
2人は静かに目を閉じて口付けをかわす。
こうして、アランとソフィーは結婚した。ハルミトン男爵は『お前はソフィーさんと結婚すると思った』とさして驚かれなかった。
結婚式は華やかに行われ、各企業の要人や各国の外交官も参列した。
燕尾服に身を包んだアランと純白の花嫁衣装に身を包んだソフィーは非常に絵になった。多くの人が羨むカップルだ。
アランは父親に『こんな時にもハルミトン・スチーム・カンパニーを売り出したいの?』とソフィーと2人で苦笑いした。教会式では、オルガニストが奏でる蒸気機関送風機を搭載したオルガンの見事な演奏。婚礼馬車では無くハルミトン社の最新の蒸気自動車が。空調機やはたまた式場の昇降機までハルミトン社製だ。
賑やかな式が終わり、関係者や参列者を見送り、アランとソフィーは2人で手を繋いで寝室に入った。
身体を寄せ、抱き合い、見つめ合い、口付けを交わす。
ちゅ、ちゅ、ちゅ❤くちゃ、んちゅ❤
啄むように、次第にお互いを確かめ合う情熱的なものに…
キスをしながら服を脱がし合い、ベッドへとアランがソフィーを押し倒すように倒れこむ。
最後にメガネとネックレスを外し、もう一度キスをする。
ソフィーの身体はまるで絵画に描かれた女神のよう。キキーモラの犬耳や羽毛に覆われた手首や尻尾、膝から下の鳥足と人間の部分が…美しい顔立ち、大きく形の良い胸、くびれた腰、まろい尻、魅惑的なふともも。その全てが調和している。
9年前のあの時とは逆の形で向かい合う。
『昔とは逆だね…』
『はい…さぁ、旦那様。お好きになさってください。』
大きな胸にやさしく触れる。しっとりと、吸い付くような感触で絹のように滑らかな触り心地だ。
必死に声を押し込めるソフィーの息づかいがアランの興奮を煽る。果実に舌を這わせるとソフィーの艶やかなアルトの声が漏れる。
『ん…はぁ❤ん…』
アランは手をゆっくりと滑らせながら下腹部を撫で回す。ソフィーは愛する人に身体を預ける安心感とこれから起こるであろう事に期待していた。
くちゅり❤
『ひぅ❤』
と、アランがソフィーの秘所に触れた。既に濡れていてお漏らしのようになっている。指を這わせ、ソフィーの反応を見ながらやさしく解していくように愛撫をする。指の腹で撫でたり、なぞったり、小さく可愛い蕾を弾くように愛したり、花の中に浅く指を入れ吸い付くような感触を楽しむ。
『ん…ぁぁ❤ぃ…い…あぁ❤ぁ❤ぁ❤旦那様❤旦那様ぁ❤アラン坊っちゃまぁぁああ❤』
ソフィーがアランの腕を掴んだ
『ごめん…ソフィー。痛かった?』
『も、もう果てそうです…だから…あの時の続きを…わたくしの初めてを…坊っちゃまので…旦那様ので果てさせてくださいませ❤』
ソフィーのその一言は男性の理性を塔の様に崩し、獣にさせるのに十分な破壊力があった。
アランは唇をうばい今までにない力をもつ自身の分身をソフィーの花弁にあてがうと一気に突き入れた。
『『ーーーーーーーーーーーーー!❤!❤!❤!❤!❤』』
処女膜を突き破り、最奥地に到達した瞬間、2人は全く同時に絶頂を迎えた。処女と童貞の交換。アランはソフィーを両手で抱きしめ、ソフィーはアランを両手で抱きしめて足を絡ませ引き寄せていた。雄は雌を孕まし、雌は雄の精で孕む事しか考えていない様な長い長い絶頂。2人を包む圧倒的な多幸感。トクトクと出続ける精液をポンプの様に膣を蠢かせその全てを受け入れた。
絶頂感が少しばかり収まり、アランが顔を離す。息を荒げ、目が蕩けきり、瞳をハートを映し、口を緩ませだらし無く絶頂するソフィーの顔があった。少しばかり冷静さを取り戻したアランはソフィーの様子を見て彼女が痛みを感じていない事を確認するとほっと胸を撫で下ろした。
すると、ソフィーの膣が蠢き始め、アランの分身に力が戻っていく。
『らんなしゃまぁ❤らんなしゃまぁ❤❤』
ソフィーは求める様な眼差しを向け、まだ、もっと、足りないと、蕩けきった剥き出しの欲望を晒していた。アランは再び動き出した。
ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤
『あ❤あ❤あ❤あ❤あ❤あ❤あ』
ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤ぱちゅん❤
肉と肉がぶつかる音が淫らに奏でられていく。シーツは2人の汗と愛液とでぐちゃぐちゃになっている。
『ソフィー!ソフィー!』
『あらん❤あっ❤あらん❤ずっと…ずっと、まって…あっ❤…まし…たぁ❤』
『僕もだっ!ソフィー!』
ソフィーは細かく絶頂しっぱなしになっていて、アランは早くも限界に達しそうになっている。先程一度出していなければとうに果てていただろう。相性が良過ぎている。
それに加えて、ソフィーは9年前のあの日からずっとアランを待ち続けていたのだ。
『ソフィー!もう…出そうだ!』
『れんぶ❤くらはい❤❤あらん❤ぼっちゃまぁ❤❤』
アランとソフィーは手のひらと手のひらを重ねて指を絡ませ合い、口をつけお互いを貪り合う。子宮の口は開ききっていてアランの鈴口にしゃぶりついている。
『で…る…!!!!』
『きて❤きて❤きて❤❤らんなしゃまぁ❤❤❤』
びゅるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼
『『ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤』』
最大の絶頂と快楽。その後の静寂。2人が1つになった限りない幸福。
アランとソフィーはお互いにしがみつく様に抱き合っている。知らないところに2人で出かけて迷子になった。お互いがけして離れないように、逸れないように。
心臓の音を子守歌に、最後にキスをして2人は意識を手放した。
1年後の夏…
ハルミトン男爵は会社と爵位を息子のアランに譲り60歳を前に引退した。時々、まだ会社の計画に慣れないアランの手助けをするものの、息子なら心配は要らないと思っていた。
あのどうしようもない悪戯っ子が、立派な紳士になり、しっかりとした伴侶を得て家督と会社を継いだのだ。
それに…
『ソフィー、君は動かないで。僕がやるよ。』
『旦那様、これくらい大丈夫でございますよ?』
『いいから、君はお腹の子を大事にして。』
『はい…では、よろしくお願い致します❤』
アランが微笑む先には、お腹を大きくしたソフィーがいる。
『あっ…動いた。』
『本当!?』
アランは安楽椅子に腰掛けるソフィーに駆け寄り、お腹に耳を当てた。
『旦那様に似れば、元気の良い子に…』
『ソフィーに似れば、気立ての良く優しい子に…』
『どちらに似るでしょうか?』
『きっと、両方だよ。』
『まぁ!欲張りなこと!…うふふふふ...』
『ははははは...』
幸せそうなアランとソフィーを見てハルミトンは目を細める。これから、孫が生まれて来る。ハルミトンは人生の幸福を噛み締めていた。
書斎で馴染みのポルト酒を飾りグラスに注ぎ、パイプタバコに火を入れる。机の上の写真を見ながら、懐かしむように語りかける。
『スーザン…アランは立派に家督を継いで、素敵な伴侶を見つけたよ。もう直ぐ孫も産まれてくるんだ…そうそう最近…』
(ふふふ…)
『ん?…』
写真の中のスーザンが語りかけるハルミトン氏に微笑んだ様な気がした。
その後、度々美しい女性の幽霊がハルミトン邸に現れる様になったのはまた別のお話。
木漏れ日の庭でアランとソフィーは肩を寄せ合っている。
『ソフィー…』
『旦那様…』
2人は見つめ合い唇を重ね、幸せを分け合った。もう1つの命を感じて…
おわり…
19/05/04 01:46更新 / francois