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第二章 「Before the woken up……」
目を覚ますとそこは知らない場所だった。
そこは宿屋のような部屋で、俺は壁際のベッドに寝ていたようだ。
ベッドから体を起こすと、俺の体には包帯が巻かれている。
「ふむ?ここは?」
「ん〜。」  (。-ω-)zzz
身体の動きを確認していると、ベッドに倒れこむようにいた物に気が付いた。
それはときおりもぞもぞと動いていた。どうやら魔物のようだ。
長い黒髪からは犬のような耳が生え、時折ピクピクしている。
褐色の肌を露出の多い服で隠し、犬の尻尾を下に垂らして揺らしている。
おそらくアヌビスという魔物だろう。彼女は俺の腿を枕にして睡眠中だった。
「とりあえず、外に出るか…。」
俺は自分の腿の代わりに枕を挟んで彼女を起こさないようにベッドを出た。
そばにあったクローゼットを開けるとあの時着ていた自分の服が掛けてある。
あのとき相当いたんでいたはずだが、誰かが綺麗に修繕してくれたのだろう。
後でお礼を言わなければならないな…。
起こさないように足音を立てずに部屋を出て、周りを確認する。
そこはどこかの城の様で、通路を挟んで、同じような扉が続いていた。
「ここがどこか調べるのが先決だな。」
そう言って、誰もいない通路を歩き、情報が聞ける場所を探し始めた。
「い、いなぁぁぁぁい!!」
1時間後、彼がいなくなったことに気付いたアヌビスの悲鳴が響き渡った。


酒場や商店でいろいろな情報が聞けたな。
だがサキュバスやリザードマンに追っかけられるのはもう勘弁願いたい。
「ようやく、見つけたぞ!」
彼女たちの速さは尋常ではなかった。あんな速度は反則だろう。
「さぁ、いさぎよくお縄につけ!」
路地を駆け抜け、人ごみに紛れてなんとかやり過ごしたが、そのうち見つかるだろう。
「おい、聞いているのか?」
彼女らはしつこく俺を追ってくる可能性が高い。さて、どうすればよいか?
「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇ!」
「なんだ!?」
考え事をしていると後ろから錫杖が振り下ろされていた。
おい、地面を割ってるぞ! …あと少し回避が遅れていたら死んでたな。
「ん?お前は?」
攻撃してきた魔物はさらりとした黒髪を持ち、その中から同色の犬のような耳が生えていた。
また手足の同じ色の毛で覆われ、犬の尻尾が生えていた。なんか見覚えが…?
「どこかで会ったことあるだろうか?」
「しらばっくれるな!部屋から逃げ出したろう!」
それを聞いて思い出した。
「……あの居眠りしていt「居眠りではない!!」」
俺が言うと慌てたように彼女は否定した。
「あ、あれはそ、そう!仮眠していたのだ!」
「そんなに変わらないぞ?」
「も、もとはといえばお前のせいだろう!」
「俺のせい?」
「な、なんでもない!(お前を看病してたからなんて言える訳ないではないか…。)」
「?」
「と、とにかく、一緒にきてもらうぞ!」
ごまかすように彼女は言うと俺の腕を掴み、歩き始める。


「で?どこに行く?」
「つべこべ言わずついて来い。」
あの後、中央にある城に入ると、彼女はどこかに向かう。
しかし、周りの魔物の視線がおかしい。
なんか熱い視線で見られているようなのだが…?
「団長。彼を連れてきました。」
そうこうしているうちに、目的の部屋についたようだ。
「入れ。」
すぐに返事が返ってきた。その声はつい聞き覚えのある声だった。
俺が中に入ると予想通りの魔物がいた。あの時戦ったレミリアだ。
「久しぶりだな。体はどうだ?」
「…。特に問題ないな。」

「とりあえず、いろいろ質問していいか?」
「ふむ…。いいだろう。何を聞きたい?」
アヌビスは部屋を出ていき、俺は椅子に座って聞いた。レミリアは首をかしげた。
「ああ、俺が意識を失った後のことだ。あれからどうなった?」
「ああ、そのことか。その話なら少し待ってくれないか。
その話をするならば彼女もいた方がいいだろう。」
「彼女?」
「ああ。連絡したからそろそろここに帰ってくるはずだ。」
「レミリアさん!隊長が起きたって本当ですか!?」
レミリアが言い終える直前、扉が勢いよく開かれた。
そこにいたのは俺がよく知っている人物が立っていた。
「隊長!目を覚ましたんですね!」
「む、リリィか……。」
そこにいたのは部下のリリィだった。こちらに駆け寄りながら話しかけてくる。
「心配したんですよ!3日も目を覚まさなかったんですから。」
「そうか、心配かけたな。」
「では人もそろったことだし、話を始めようか。」
リリィが椅子に座るのを見て、レミリアが告げた。

「さて、アキラはどこまで覚えている?」
「覚えているのは教団の奴らを戦った後、自分の刀が折れたところだ。」
「そうか…。結論を言うと一騎打ちの決着はつかなかった。」
「どういうことだ?」
俺が聞き返すと彼女も不服そうな顔をしていた。
「あの時、確かにお前の刀は折ることができた。しかし私の剣もお前に折られた……。」
「つまり、引き分けたと?」
「……そういうことだ。」
いまだ、不服そうなレミリアは俺の言葉に頷いた。
「私としてはお前の戦い方に興味があるが、それは後にしよう。」
そう続けて彼女は語りだした。

「あの時お前が受けた矢には即効性の毒が塗られていた。それも最初に体の自由を奪い、最終的には死に至るような毒だった。その毒と矢傷からの出血でお前は死にかけていたんだ。挙句、速度を優先した追撃部隊には解毒できる奴はいなかった。だから私たちは急いでこの都市まで運んで、お前を治療することにしたんだ。」
レミリアがそこまで一息で言うと、リリィが後を継ぐように続けた。
「そしてこの城に運んで解毒を専門としている人に治療していただいたんです。解毒と止血などはすぐ終わったんですが、隊長はその治療を受けても3日間、意識が戻らなかったんですよ。」
「ふむ。そうだったのか…。」
そして俺はふと疑問に思ったことを口に出した。
「そういえば、リリィは何であそこにいたんだ?俺は場所まで言ってなかったはずだが…。」
「ええ、実は撤退する直前に団長から聞きました。」
「じいさんが?」
俺が言うとリリィは頷いた。……じいさんはいったい何を考えて知らせたのだろうか?
「ええ。団長に呼ばれて行くと隊長が受けた任務について話してくれまして…。
それを聞いたらいてもたってもいられず兵士を団長に預け、あの場所に行きました。
そこに着くと隊長が襲われていたのが見えたので、奴らを背後から奇襲したんです。」
「そうか…。おかげで助かった。」
「…ふみゅう…」
俺はそう言ってリリィの頭に手を置き、撫でた。彼女はこうされるのが好きらしい。
それをリリィは顔を赤らめながらも止めようとはしなかった。
「目を覚まさないお前を3日間ライラと私たちが交代で看病していたんだ。
さっきは驚いたぞ。ライラがいきなり入ってきてお前がいなくなったというのだからな。」
「ライラ?初めて聞く名前だが?」
「なんだ名乗ってないのか?お前を案内してきたアヌビスのことだ。何かと忙しい私たちに代わってお前を看てくれていたんだ。その服を直したのも彼女だ。後でお礼でも言っとくといい。」

「お前が意識をなくしてからの出来事はこんなものだ。それで二人はこれからどうする?」
「これから?」
俺が聞き直す。横を見るとリリィも首をかしげていた。
「ああ。あの様子だと教団には戻れまい。リリィにはできれば今の仕事をしてもらってほしいが、他にしたいことがあるなら言ってくれ。」
「…私は今の仕事を続けます。皆さんのことをよく知るチャンスですし…。」
リリィは少し考え、言った。それを聞いたレミリア頷くと今度は俺に顔を向けてきた。
「残念だがお前は話し合いの結果、私が面倒を見ることになった。」
「むしろ、それが当然だろう。」
もとより敵だった俺を野放しにするのはあり得ない。監視をつけるのが当り前だ。
「当面は私の騎士団に入ってもらうことになるがかまわないな。」
「わかった。」
「それと、お前の住居についてだが。ひとまず、リリィが住んでいる家を使ってくれ。」
そう言われてリリィを見ると彼女は赤くなった頬に両手を当てて、「隊長と二人っきり♪」
と言いながら自分の世界に入っていた。何を考えているのやら……。
「しばらくは我慢してくれ。そのうちに用意しよう。」
レミリアは真面目な顔(目は笑っていたが…)をして言った。絶対、楽しんでるな…。

すでに時刻は夕方を過ぎていた。俺たちは城を出て、大通りを歩いている。
レミリアがよく利用しているらしいお勧めの場所で食事するためだ。
「なぁ。」
「なんだ。」
レミリアに話しかけると、歩きながら返事してきた。
「…なぜ俺はこんなに見られてる?」
「当然だろう。」
そう言ってレミリアは続けた。
「これでも私はここでは有名人でな。私と引き分けた人間なんて今までいなかったんだ。
 そして魔物の中には強い男に惹かれる者も多くいる。」
「つまりどういうことだ?」
「ようするに私と同じくらい強いお前を夫にしようと狙っている奴が多いということだ。」
「…前途多難だな。」
「まぁ、そう言うな。…着いたぞ、ここだ。」
そこには2階建ての大きめの家があり、入り口に置いてある看板には「狐のお宿」と書かれている。看板から察すると宿屋のようだが?

「いらっしゃい。…、あらレミリアじゃない。」
店に入るとカウンターの奥で女性が食器を洗っていた。
金髪からピンと出た耳と後ろから生えている3本の尻尾からすると妖狐だろうか?
「ああ、久しぶりだな。席は空いているか?」
「ええ、空いているわ。そちらの方は?」
彼女はこちらに気づき、聞いてきた。
「ああ、彼はアキラ・ハヤカワ、彼女はリリィ・ロゼンタールだ。
 二人とは3日前の戦いで知り合った仲だ。」
「そうですか。私は稲荷のシイナです。ここで宿屋を経営してます。
 夕方からは一階で食堂しているのでよかったら来てください。」
彼女は笑顔で手を差し出してきたので、こちらも笑顔で握手して聞いた。
「稲荷?妖狐とは違うのか?」
言った瞬間、空気が凍りついた。そして握手していた手がものすごく握りしめられる。
「いっ…!?何d「い、い、で、す、か!!」」
シイナは痛がる俺を無視して言う。笑顔だが間違いなく怒っている。
「あんな誰にでも股を開く万年発情狐と一緒にしないでくださる?」
「わ、わかったから!手!手!」
そう告げると手を緩めてくれた。
「わかってくれたなら、いいです。」
…口は災いの元という言葉を思い出した俺は二度と言うまいと決意した。

「さて、少し聞きたいことがあるのだが、構わないか?」
「その内容によるな…。答えたくないものもある。」
シイナに連れられ、個室に案内された。そこで待っていると今日のお勧めの料理を運んで
きた。なんでもジパングにある”テンプラ”という野菜などを油で揚げたものを横に添えてあ
るたれに浸けて食べる料理だそうだ。それはお勧めというだけあっておいしく、すぐに食べ終わってしまった。俺が食べ終わって人心地ついていると、レミリアが聞いてきた。
「お前は一騎打ちのとき、武器を出したり、消したりしてだろう?あれはなんなんだ?」
「あ。わたしも聞きたいです。以前、何度聞いても教えてくれませんでしたし。」
レミリアが言うと賛成するように右手を挙げたリリィが言った。
「教えなかったのは、人に知られると面倒だからだったんだが……まぁ、いいだろう…。
さて…、俺は魔力が無いから、簡単な魔術さえも使えない。
だがある能力を俺は持っている。」
「それが関係しているのか?」
「ああ。それは“一度手にした武器・防具を貯蔵し、任意で召喚する”というものだ。」
「そんなもの聞いたことないぞ。」
「そうだろうな。以前、調べた奴も魔術ではないと言っていたからな。
とは言っても召喚した武器は本物に比べると劣化品だし、それに欠点もある。」
「「欠点?」」
レミリアとリリィは首をかしげる。
「召喚した武器を使い終えて少し経つと意識がなくなるんだ。そしてその時間は召喚した武器の種類や数によって決まる。俺が3日も意識をなくしていたのはこれが原因だろう。」
「便利なのか、そうでないのか、わからんな。しかしそれを使っていたのか…。」
レミリアは納得したのか頷いていたが、俺の使う能力は正確に言えば、
説明したことと違う。まぁすべて言う必要もないだろう。

「では明日あの部屋にいけばいいのか?」
「そうだな。私も休む予定だから、朝からこの街を案内しよう。」
店から出て、明日街を案内すると提案したレミリアに確認する。
「悪いな。そんなことをさせてしまって。」
「かまわないさ。紹介したい人もいるからな。」
申し訳なさそうに言うとレミリアは笑って言った。
「では、また明日会おう。」
そう言ってレミリアは大通りの雑踏に消えていった。
「隊長。私たちも。」
「ああ、帰るか。」
魔界の空は暗いままなので分かりにくいが、もう夜もだいぶ更けているだろう。
リリィが歩くのに合わせて、並ぶように俺は歩いた。


レミリアと別れた私は隊長と一緒に家に向かっていた。
とはいっても私は心ここに非ずといった状態でしたが。だって、隊長と二人っきりですよ!
今だって顔をにやけてしまうのを抑えるのに必死なんですから!
「リリィ?」
「はい!!」
急に声をかけられて、声が上ずってしまった。
「声をかけても返事がなかったからどうしたのかと思ってな。」
「す、すみません。少し考え事をしてまして。」
どうやら集中しすぎて話しかけられたことに気付かなかったらしい。
「それでどうしたんですか?」
平静を装って私が聞き返した。
「いや、結構歩いているが家はそんなに遠いのか?」
そう聞かれ、私は周りを見渡した。家はとうに過ぎていた…。


家を通り過ぎたことに気が付いた俺たちは道を引き返した。
引き返すとほどなく家に着いた。その家は2階建てで1階には大きなリビングと風呂場と
トイレ、キッチンがあり、2階には通路を挟んで両側に個室が計4部屋備えられていた。
俺はその中の一部屋に案内され、備え付けられたベッドに寝ている。
リリィは先に風呂に入っている間、俺は考えていた。これからのことを……。
そう、今まで住んでいた人だけの世界とは違うのだ。俺は魔物については教団で学んだ最
低限のことしか知らない。全てが以前と違う世界で俺が漠然とした不安を感じていないと
いえば嘘になる。それでも…。
「どこへ行ったって俺のやることは変わらない。」
そう自身を納得させると、俺は襲い来る睡魔に身を任せた…。


「隊長?」
風呂から出た私が声をかけるが、返事がない。部屋をのぞくと隊長はベッドで寝ていた。
近づいてみても、起きない。私はベッドの横に椅子を持ってきて座った。
何のためって?それはもちろん隊長の寝顔を見るためですよ!
こんなチャンスめったにないんですから。今のうちに堪能しとかないと…。
こう見ているとであった頃と隊長は変わりませんね…。

あれは今から3年前、私が教団の学校にいたころでした。騎士を志していた私が学校に通
っていたとき1対1の模擬試合が行われました。もちろん当時同学年で敵のいなかった私
は勝ちました。ですがそれがよくなかった。その負かした相手はとある貴族の息子でした。
その男は逆恨みで、休日に外出していた私を帰り際襲ってきたのです。
一対一ならまだしも不意打ちで何より武器も無く、挙句4人に囲まれては勝ち目はありま
せんでした。拘束され、性的暴行を加えられそうになったところに当時二つ上の生徒だっ
た隊長が通りかかったのです。
彼はその状況を理解すると素手で彼らを気絶させて見ず知らずの私を助けてくれたのです。
隊長は少し怪我をしていた私を背負って、近くの病院に連れて行ってくれました。
その後も隊長が学校に通っている間、学校にいる私の様子を見に来ていました。
隊長が卒業して、教団の騎士団に入ったと聞いた私は同じ部隊に入ることを夢見て、自分を鍛えました。2年後、学校を首席で卒業した私は隊長と同じ部隊に入隊できました。
(ちなみにその貴族の息子は憲兵隊に引き渡され、退学になりました。)

今思えば一目ぼれだったんでしょうね。当時はわかってませんでしたが…。
最初は憧れだと思った。自分を救ってくれた彼のようになりたかった。
そう思っていましたが、それが間違いということを入隊してすぐ気付きました。
私が抱いていたのは“憧れ”ではなく、“彼が好き”という恋心でした。
まぁ、隊長は鈍感なので気づいてくれませんが ε-(‐ω‐;)。
あと気になるのは隊長の過去のことです。彼が5年前に団長に救われたことは教えてくれたのですが、そこから以前のことを聞こうとすると苦笑しながら話そうとしてくれません。
隊長の出身がどこかも教えてくれません。いずれ知りたいと思ってますが……。

ゴロン
「Σ(*゚д゚*)ハッ!!」
彼が寝返りを打つ音に私は驚きました。どうも少しの間寝てたらしいですね。
私も隊長と一緒にこの街を案内してもらうので、早く寝ましょう。
「おやすみなさい。」
寝ている隊長に声をかけ、私は寝るために自室に帰ることにしました。
11/09/28 09:50更新 / まるぼろ
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■作者メッセージ
はい、どうも!まるぼろです!
第二章いかがだったでしょうか?
またもや、駄文ですいません。 (*・ω・)*_ _))ペコリン

さて、それではここでいただいた感想に返信したいと思います!

<<<TATさんへの返信
アドバイスありがとうございます!そういう描写っていいですねww。
何かしらそのような表現も今後入れられたらいいと思っています。
あと本編は第九章ぐらいで終える予定です。
本編完結後、番外編、もしくは第二部という形で彼らのその後の物語を書きたいなぁ…。
とりあえずまず本編完結に向けて頑張ります!

<<<宵闇の道化師さんへの返信
感想ありがとうございます!実はエロシーンに挑戦はしたんですよ。
書いたのはいいですが納得いくものができなかったのと
中途半端なものを書くよりは本編を増やしたほうがいいと考え、断念しました。
納得のいくものが書ければ今後本編に挟もうと思っています。
とりあえずお互い頑張りましょう!ガンバァ━━(`・д・´)ノ━━!!



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