Act.5<Desire>
クロアが小屋に戻ると、サラは就寝した後だった。彼女は寝付くのが異常に早いのだ。
コートをハンガーにかけ外で軽く水浴びをした後に彼もベッドへと入った。
「(……寝たか。)」
クロアが寝息を立て始めた事でサラが床に敷いてあった毛布から身を起こす。
そして僅かな月明かりを頼りにクロアの顔を覗き込む。そして……
「……っ……」
自らの秘所に指を伸ばしてこすり始めた。
その顔は紅潮し、行きが荒くなっている。
「ぁ……は……(私は……私は……!)」
彼女が早めに寝付くのには理由がある。
サラが早めに寝付くとクロアがやることは自己鍛錬か寝るかしかなくなる。
そして寝入ったクロアを見ながら自慰にふけるというのがサラの習慣になっていた。
無論この事をクロアは知らない。
「っ……んっ……!(クロアの……指……もっと触って欲しい……)」
可能な限り水音が立たないように指を往復させ、胸に手を這わせる。
指が敏感な所に触れる度、素肌を撫で上げる度に気分が昂っていく。
「ぅく……クロア……(完膚なきまでに打ちのめして欲しい……彼のモノで突き上げられたい……犯されたい……!)」
ベッドの裏側、目立たない所に手を伸ばしてお目当てのものを掴みとる。張り型だ。
以前ベッドの裏の板をくり抜いて隠し収納スペースを作り、以来そこへ隠し持っているのだ。
それを膣口へあてがい、奥へと押し込んでいく。張り型は苦もなく中へと沈んでいった。
シャツの裾を口に加えて胸を露出させ、直に手で揉みながら貼り型を動かして快感を貪っていく。
「っ……!ぅ……ぁ……!(もっと欲しい……!精を中に出されたい……!クロアの子が欲しい……!)」
最初にクロアに出会った時、彼は想い人の死神であった。
次は、あがきながらも強くなろうとする弟子。この頃からであろうか、彼女がクロアに惹かれていったのは。
次はライバル。大剣を振るい、二丁の魔導拳銃を使って敗北寸前まで追い込む彼には戦慄を覚えると共に強い情念を感じるようになった。
しかし、彼とは結ばれる事は叶わない。
サラは一度、彼を押し倒したことがある。しかし、彼の反応は拒絶だった。
彼が魔物との行為に強い抵抗を持っている。それを知っているにも関わらず押し倒してしまった事に彼女は自分が許せなくなった。
それ以来彼女はクロアに対する感情を押し殺し、本能を理性で無理矢理抑えつけ、昂る精神を自ら慰める事でごまかしていた。
「……ぃく……っ(クロア、クロア、くろあぁ……!)」
そして彼女は静かに絶頂を迎える。全身がビクビクと跳ね、ポタポタと秘裂から愛液を零し、彼の顔を見つめながら多幸感に包まれていく。
彼女は使い終わった張り型を手ぬぐいで拭いて隠しスペースへ仕舞うと、ふらつく足で戸棚の中にある精気補給用の錠剤を取り出して飲み込んだ。
これで暫くは本能に支配されずに済む。このような生活を彼女は5年近くも続けていた。
「(いつまで……持つか……?)」
しかし、その周期もここの所かなりの頻度で訪れるようになっていた。恐らく、限界は近い。
「(何か考えておかねば……)」
外の井戸で軽く汚れを落とし、部屋の中へと戻って彼女は眠りについた。
翌日。
情報が入るのを待つ為に冒険者ギルドへと行こうとして、クロアがその歩みを止めた。
いや、止められたと言ったほうがよいだろうか。
殆ど突っ込んでくるようなスピードでミリアが彼の前へと降り立ったのだ。
後ろのサラも目を白黒させている。
「どうしたよ、朝のジョギングって訳でもないだろうに。」
「余裕があるのは……はぁ……はぁ……今のうちだけよ。」
彼女はそう言うと、羊皮紙の巻紙を突き出してきた。
それを受け取って中身を見るうちにクロアの表情がみるみるうちに凶暴な笑みへと変化していく。
「……ようやく……ようやくかよぉ……。全く、随分と待たせやがって……待っていやがれ……皆殺しにしてやるからよぉ……はははは……」
「……クロア?」
サラが不審そうに彼の肩越しに羊皮紙の内容を見て、息を飲んだ。
『Killing Child計画』
『精液に魔物の魔力を燃やし尽くす効果を持たせた特殊生物兵器
数種類の呪縛で体型および気性を低年齢に固定
量産化計画
グランバルト地方ガルムト教会』
それは、紛れも無くアレクの筆跡だった。
所々に赤黒い染みがあるのは彼の血液だろう。長い年月を経て羊皮紙自体もかなり劣化しているが、判読するのには十分だった。
「そうか……アレクの奴は任務を果たしていたのだな。」
クロアは街へ向かって駆け出そうとしたが、ミリアが彼の肩を掴んで制止した。
「待ちなさい。いきなり乗り込むのは自殺行為よ。シーフギルドに偵察に行かせて帰ってくるまではおとなしくしていなさい。」
「……っけ」
クロアが彼女の手を振りきって街へと歩き出す。
「クロア!」
「別に殴りこみを掛けに行く訳じゃねぇよ。いつもの情報収集だ。」
彼はただ冒険者ギルドへ向かっていつもの情報屋からチャイルド関連の情報が入るのを待つだけらしい。
ミリアは飛翔してシーフギルドへ情報収集の依頼へ、サラはクロアと共に冒険者ギルドへと向かうことになった。
〜冒険者ギルド ロビー〜
ギルドには着いたものの、情報はまるで無し。
情報が入るまではギルドの中で待機という事になった。
指定席でコーヒーを啜っているクロアとサラ。そんな時である。
「見つかったのか!?」
アルテアの声だろうか。何か酷く慌てた様子で情報屋へ突っかかっているようだ。
「うん、握り拳ぐらいの大きな宝石でしょ?教会の宝物庫に保管されていたって。」
「誰も触れていないよな?」
「それは言われた通り。誰も触れないようにって言い聞かせてあったから。一部の子達は持って帰りたがったみたいだけどね……」
それだけ聞くとアルテアはギルドの外へと飛び出していった。
しかし外で何かあったらしく、憮然とした態度でまたギルドの中へと戻ってきた。
「よう、何かあったか?」
「あぁ……クロアか。いや、捜し物が見つかったんだがお預けを食らった。ミリアさんが3日待てってさ。」
恐らく彼もクロアとほぼ同じ状況なのだろう。
軽く苛立っているようで、その行動も常よりはどこか荒っぽい。
「ま、こっちも似たようなもんだ。だったら待ちぼうけ食らっている同士でどこかへ行くか?」
「そう……だな。突入準備の事もあるし色々と買い足しておくか。」
そんな話をしているとアルテアのジーンズの裾を誰かが引っ張っていた。
ギルドマスターの娘、アニス嬢だ。
「おにいちゃん、どこかおでかけ?」
どうやら特にクエストに行く予定がなく、出かける予定が立ったのを耳ざとく聞きつけたらしい。この辺の地獄耳は母親譲りのようだ。
「ん、道具が傷んでいたら買い足しにでも行こうと思ったんだが……。」
「わたしもいく!」
若干困ったような顔をしたアルテア。それを見てクロアが軽く溜め息をつく。
「行かせてやれ。野郎二人で連れ立って行くよりは生産的だろう。」
「済まない。それじゃあ行くか、アニー。」
「うん!」
喜色満面のアニス嬢を連れてアルテアがギルドを後にする。
クロアも道具の調達に行こうとした所でサラも同時に席を立った。
「道具の調達だろう?私も行こう。少し探したいものがある。」
「ご自由に。」
そうして二人がギルドを出ていく。
二人を見送るギルドメンバー全員の目が生温かかったとかどうとか。
〜道具屋 『Dirty tools』〜
商業区の裏路地にある一軒の道具屋。
名前もほぼ知られておらず、足を踏み入れる客もほぼいないが品揃えは充実しているという隠れた名店だ。
なぜこの店が潰れないのかはモイライの7不思議に数えられている。
そもそも知られていない名前が何故7不思議に数えられるか自体が謎ではあるが。
「(メンテナンス用のグリース……と、あとは留め具のスペアか。)」
クロアは基本的に遺跡探索用の道具は持たない。
最近はガーディアンやチャイルドの討伐程度しかしていないので、普通の冒険者として活動しないからだ。故に遺跡の探索もしない。
尤も、彼は正式な冒険者という訳でもないので通常の依頼も受けられないのだが。
「(……あいつ、何をしているんだ?)」
見るとサラはあちこちに目線を走らせて何かを探しているようだ。
そして探し回っているうちに棚の向こう側へ行って姿が見えなくなってしまった。
「(これは……)」
そして、サラはお目当ての物を見付け出した。
魔物はまず使うことがなく、それどころか近年では人間すらもほぼ使わなくなった物。
故に生産数も非常に少なく、市場にはまず出回らない日用品だ。
「(これなら……あるいは。いけるはずだ。)」
サラは迷わずそれを掴みとると、クロアが会計を済ませたのを見計らって自分も会計を済ませた。
店員が怪訝そうな顔をしていたのは言うまでもない。
「何を探していた?」
店を出て第一声はクロアの訝しげな声だった。
唐突な一言にサラの心臓が激しく跳ねる。
「あ、あぁ……欲しかった日用品があってな。無事見つけられた。」
「……そうかい。」
何かを探るような目付きの後、興味を失ったかのように目線を前方へ戻した。
彼の後ろでほっと胸を撫で下ろすサラ。
コレばかりは、バレるわけにはいかなかったからだ。
ガルムト教会へ出発する日の前日。
「クロア、表へ出ろ。」
夕飯が終わり、後は身を清めて寝るだけという時に唐突にサラが切り出した。
「……何だ?」
「いいから、ヴァーダントとミタク・ナハトを持って出ろ。」
彼女は背後に赤と青の双剣を背負っている。
普段にはない物々しい装いにクロアの気が引き締まっていく。
「(何だ……?敵襲という訳でもないだろうに……。)」
ホルダーにヴァーダントを固定し、ホルスターを腰に着けて彼女の後を追う。
辺りは夕焼けが赤く染め上げていた。
「で、一体どうしたって?試合でもするのか?」
「……試合ではない。」
そう言ってサラは背中の双剣を引きぬく。
アグニとルドラ。炎の魔力と風の魔力を込めた二刀一対の双剣だ。そして、彼女がそれを抜くという事は……。
「これは、決闘だ。本気で、殺す気でかかってこい。手加減は無用だ。」
「……はん。漸くお師匠さんを本気にさせたって訳か。こりゃ光栄の極みだな。」
クロアも背後からヴァーダントを抜き放つ。
夕日がヴァーダントに反射し、まるで血に染まったかのように赤く色づく。
「行くぞ……お前の全てを見せてみろ!」
「ッハッハァ!いいぜ、やってやるよ!」
双方が地を蹴り一瞬で肉薄する。
渾身の力を込めて振り下ろされたヴァーダントがサラに受け流され、脇腹へと回し蹴りが飛んできた。
「You're going down!(くたばれ!)」
その回し蹴りを片手で掴みとり、力任せにサラ自体を振り回して近くの樹木へと投げつけた。
しかし彼女は宙返りをうち、足から樹木へ着地すると三角跳びの要領で高くへと飛び上がり、大上段からクロアへと双剣を振り下ろしてくる。
「でぇぇぇぇえええい!」
「Not so bad…but(いいね、でもよ)」
すくい上げるようにヴァーダントを回転させながらサラへと投げつける。
そしてホルスターからミタクとナハトを引きぬいてサラへと照準を合わせた。
彼女はと言うと向かってきたヴァーダントをなんとかいなして体勢を整えている所だ。
「Too late !(おせぇよ!)」
魔力弾を連射し、バランスを崩したサラへと浴びせかける。
しかし、サラの周辺の景色が歪んで魔力弾の軌道が逸れていく。
「っはぁ!」
「っ!」
振り下ろされた双剣を拳銃でかろうじて受け流す。
熱と風により辺りの景色が歪む。先程の魔力弾を逸らしたのはこれだろう。
「ぁぁぁぁぁぁああああああ!」
「Shit!」
サラが追い打ちに無数の斬撃を浴びせかけてくる。
袈裟斬りに、唐竹割りに、十字に、逆袈裟に。それは乱舞といっても過言ではない。
彼女が舞う度に周囲の景色が歪み、捻じれ、惑わされていく。
その斬撃一つ一つを凌ぐクロアにもだんだんと限界が近づく。
「とどめぇ!」
大きく振りかぶったサラに対してクロアが浮かべた表情は焦りでもなく、諦めでもなく、
いたずら小僧が浮かべるような笑いだった。
直後、上空から何かが飛来し、クロアとサラの間に突き刺さる。
クロアはそれを引き抜いてサラへと向けて振り抜いた。
かろうじて双剣でガードするが、大きく吹き飛ばされて膝をつく。
「Is that all you've got?(それで本気か?)」
肩をすくめ、片手で振り回しているそれは紛れも無くヴァーダントだ。
恐らく先程投げ上げた物が地面へと降ってきたのだろう。
「ふん……その程度でいい気になるな。本番は……」
彼女が双剣を合わせ、こすり合わせるように振りぬく。
するとアグニに炎が、ルドラに目に見える程の密度の風がまとわりついた。
周囲の気温の差により光が乱反射し、サラの周囲が極彩色に彩られていく。
「これからだ!」
燃え滾る闘志を眼に宿すサラを見てクロアの闘志もさらに燃え上がっていく。
「That’s sweet…Things're really beginning to heat up!(いいね……燃えてきたぜ!)」
再びヴァーダントを構え直すクロア。
激突する赤と極彩。剣と剣が交差する度に火花が飛び散り、二人を彩っていく。
それはまるで東方の花火のようで、もし誰かが二人の戦いを見ていたとすればこう漏らすだろう。
美しい、と。
戦いである以上、終幕は来る。
そして先に体力が尽きたのはサラの方であった。
双剣を弾き飛ばされ、無防備になった所へボディーブローを叩きこまれて逆の手で頭を掴み取られる。
「しまっ……!」
「Break up!(砕け散れ!)」
足を払われ、サラの頭が地面へと叩きつけられる。
胸が詰まり、目の前に星が飛んで正常な判断が不可能になる。
なんとか落ち着いた時には既に目の前へとヴァーダントが突きつけられていた。
「チェックメイトだ。負けは数えきれない程だったが……漸く一勝って所か?」
「………………」
呆然と剣の先を見つめ続けるサラ。
まだ自分の身に何が起こったのかが理解できていないようだ。
「……師匠?頭打ってバカになっちまったか?」
「……ぁ……あぁ……そうか……」
そうして、彼女は漸く自分の負けを自覚する。
表情を緩めるサラと対照的にクロアの顔がみるみるうちに真っ青になっていく。
「ってやべぇ!出血出血!」
「……?何を言って……」
そして彼女は後頭部に違和感を覚えた。なぜかムズムズとする。
手を当てて目の前に持ってくると、その手はべっとりと赤い血で覆われていた。
〜キサラギ医院〜
「全く……何て無茶してるのよ。死合とか後で治療する身にもなってみたらどうなの?」
「面目ない。」
すぐさまモイライの診療所へ駆け込み、頭の治療を行った。
幸い診療所には回復系の術者もいたようであっという間に傷はふさがった。
脳の方にも損傷が無かったのも幸運だった。
「まぁまぁ、こういうのは彼女達の性分だから仕方が無いじゃないか。」
「ヒロトはいいわよね。患者が増えればその分儲けが出るし。」
いつまでたっても医者と術師が言い合いをしていて気づかないため、クロアは治療費だけ置いてその場を後にした。
「……世話を掛けた。」
「全くだ。何故あの唐突なタイミングで決闘なんて言い出したんだ?」
彼女に肩を貸しながら家路へと着く。
彼女はクロアの疑問に対して何も言わない。結局クロアの方がため息を付いて折れ、何も聞かないことになった。
帰りついた頃には辺りは既に日が暮れており、月明かりのみが道を照らすだけとなっていた。
サラをベッドへ横たえ、ランプをつけようとテーブルへ手を伸ばした途端腕を引かれてベッドへ押し倒された。
「……サラ。」
「お前は……リザードマンの習性を知っているな?」
そう、彼女達の習性といえば、決闘などで負けた相手の伴侶となるという物だ。
しかし、それが叶わぬ願いというのは彼女もよく知っている筈。
「やめてくれ。これ以上誰かを失いたくない。」
「もう……我慢できないんだ。お前は、私が出会った時よりも遥かに強くなった。」
サラがズボンのベルトを外し、トランクスごとずり下げる。
態度では拒絶するクロアに反して、彼のそこは痛々しい程に反り返っていた。
「そして今日、お前は私を打ち倒した。本気で戦って……負けたんだ。悔しいという気持ちの前に清々しい気分だ。これで自分自身を抑えずに済む。」
「サラ……!頼むから……頼むからやめてくれ!嫌なんだ!もう……俺のせいで大切な人を失いたくない!」
半泣きで抗議するクロアに彼女は優しい笑顔を向ける。
今まで彼には向けたことがない、それは聖母のような微笑だった。
「心配するな。私だって何も考えずにこうしている訳じゃない。」
そう言うと彼女は自分の荷物の中から小さめの瓶を取り出した。
中身には輪っかのように丸められた薄い何かが大量に入っている。
「それは……?」
「南国のゴムの木と呼ばれる樹木の樹液で作られた避妊具だそうだ。これをつければ周囲に精子が飛び散らない。つまり……」
瓶を開けてその中の一つを取り出し、クロアのペニスへとかぶせていく。
装着し終わると、ペニスの周囲に薄皮一枚が張り付いたような状態になった。
「この状態であればお前の体質を気にすることは無くなる。流石に外す時はお前自身にやってもらわなければならないが……それでも害が無くなるのであれば必要な手間だろう。」
言い終わると彼女はクロアの上に覆いかぶさり、先端を彼女自身にあてがい始めた。
薄皮越しに彼女の体温が先端に伝わってくる。
「サ、サラ……まっ……!」
「待つ……ものか!」
ずにゅりという音と共に彼女の中へペニスが収まる。
蕩けるように熱く、優しく絡み付いてくる襞に抵抗しようもなく高まっていくクロア。
「ずっと……ずっと待っていた……っ!お前が、私の事を超えてくれるのを!嬉しい……!好きだ、クロア!大好きだ!」
「まて……よ……!アレクさんは……アレクさんはどうなるんだよ……!」
苦し紛れにアレクの名前を出すが、それでも彼女は動きを止めない。
「アレクは、もういない……死んでしまったんだ。あいつだって自分に縛られて歩み出せなかったら悲しむだろう……。だから……っ!」
一際深く腰を沈めてくるサラ。最奥部の子宮口に亀頭が衝突し、甘く痺れる快感がサラの全身を駆け巡る。
「私は……過去を振り返らない……!縛られるものか!今の私には、お前だけしかいない!絶対に、絶対に離さないぞ!二度と手放してなるものか!」
彼の上に倒れ込み、しがみつきながらも腰をふりたくる。
今の彼女には、漸く手に入った自分の想い人に対する慕情しか無かった。
「ぁ……ぐ……さら……離れろ……!出る……っ!」
「だいじょうぶ……っ!私を……私を信じろ……!」
限界が迫るクロアに追い打ちを掛けるかのように動きが激しくなっていく。
長い間張型で馴らされた柔らかい膣内に女日照りのクロアが我慢など出来るわけもなく、殆ど暴発に近い状態で白濁が撃ち出された。
「サ、サラ……サラ!」
「大丈夫だ……。」
クロアの上に突っ伏した彼女が起き上がり、彼の唇へ口付けを落とす。
「私は、ここにいる。消えたりなんてするものか。」
彼女は、無事だった。
腰を上げてペニスを引き抜くと、薄皮を隔てて彼の精子が中で泳いでいた。
「信じられないな。見た目ではさほど害がある物とは思えない。」
「……」
彼は無言で避妊具を外し、外へ漏れ出ないように口を縛った。
まだ暖かく、白く濁ったそれは破れそうなほど薄い膜の中へ留まっている。
「よかった……よかった……っ!」
そして、彼女が生きている事に安堵してクロアは涙を流す。
そんな彼を彼女は背後から抱きしめて宥めていた。
「落ち着いたか?」
「……あぁ、済まない。もう大丈夫だ。」
しばらくするとクロアも大分落ち着き、サラに身を預けるようになっていた。
安心した事により、眠気も襲ってくる。
「クロア、何を寝ようとしているのだ?」
頬を抓られて無理矢理に意識を覚醒させられる。
背後を振り返ると、彼女がまだ中身がたっぷりと残っている避妊具の瓶を振っていた。
「残りはまだまだある。今まで欲求不満だった分……満たさせてもらおうか?」
「じょ、冗談……だよな?いくら何でもそれを全部使い切るのは無理があるというか枯れるというか……」
「遠慮はするな。今まで満足に女性と交わったことが無いのだろう?なら私がたっぷりと女を教えてやろう♪」
結局、クロアはこの夜に何も出なくなるぐらいまで絞られる事となった。
「そう、一日は動かすことができないと。」
「あぁ、久々に堪能させてもらった。」
妙に肌がつやつやしたサラがミリアに夜の出来事を話すと、流石の彼女もクロアに同情していた。
「出発は一日遅れで?」
「あぁ、クロアが回復次第出発する予定だ。ようやくだ……ようやくアレクの弔い合戦ができる……!」
「気持ちはわからなくもないけど……先走っちゃだめよ?絶対に死なないで。それだけは約束して。」
「あぁ……わかっているさ。」
ガルムト教会への道中。
クロアは切り出しにくそうに口を開いた。
「サラ……」
「ん、何だクロア。」
同じ馬に跨り、クロアの腰に手を回して彼に寄りかかるサラ。
彼は懐のポケットから一冊の本を取り出し、サラへと突きつけた。
そして彼の口が開かれる。
───一緒に死んでくれないか?───
コートをハンガーにかけ外で軽く水浴びをした後に彼もベッドへと入った。
「(……寝たか。)」
クロアが寝息を立て始めた事でサラが床に敷いてあった毛布から身を起こす。
そして僅かな月明かりを頼りにクロアの顔を覗き込む。そして……
「……っ……」
自らの秘所に指を伸ばしてこすり始めた。
その顔は紅潮し、行きが荒くなっている。
「ぁ……は……(私は……私は……!)」
彼女が早めに寝付くのには理由がある。
サラが早めに寝付くとクロアがやることは自己鍛錬か寝るかしかなくなる。
そして寝入ったクロアを見ながら自慰にふけるというのがサラの習慣になっていた。
無論この事をクロアは知らない。
「っ……んっ……!(クロアの……指……もっと触って欲しい……)」
可能な限り水音が立たないように指を往復させ、胸に手を這わせる。
指が敏感な所に触れる度、素肌を撫で上げる度に気分が昂っていく。
「ぅく……クロア……(完膚なきまでに打ちのめして欲しい……彼のモノで突き上げられたい……犯されたい……!)」
ベッドの裏側、目立たない所に手を伸ばしてお目当てのものを掴みとる。張り型だ。
以前ベッドの裏の板をくり抜いて隠し収納スペースを作り、以来そこへ隠し持っているのだ。
それを膣口へあてがい、奥へと押し込んでいく。張り型は苦もなく中へと沈んでいった。
シャツの裾を口に加えて胸を露出させ、直に手で揉みながら貼り型を動かして快感を貪っていく。
「っ……!ぅ……ぁ……!(もっと欲しい……!精を中に出されたい……!クロアの子が欲しい……!)」
最初にクロアに出会った時、彼は想い人の死神であった。
次は、あがきながらも強くなろうとする弟子。この頃からであろうか、彼女がクロアに惹かれていったのは。
次はライバル。大剣を振るい、二丁の魔導拳銃を使って敗北寸前まで追い込む彼には戦慄を覚えると共に強い情念を感じるようになった。
しかし、彼とは結ばれる事は叶わない。
サラは一度、彼を押し倒したことがある。しかし、彼の反応は拒絶だった。
彼が魔物との行為に強い抵抗を持っている。それを知っているにも関わらず押し倒してしまった事に彼女は自分が許せなくなった。
それ以来彼女はクロアに対する感情を押し殺し、本能を理性で無理矢理抑えつけ、昂る精神を自ら慰める事でごまかしていた。
「……ぃく……っ(クロア、クロア、くろあぁ……!)」
そして彼女は静かに絶頂を迎える。全身がビクビクと跳ね、ポタポタと秘裂から愛液を零し、彼の顔を見つめながら多幸感に包まれていく。
彼女は使い終わった張り型を手ぬぐいで拭いて隠しスペースへ仕舞うと、ふらつく足で戸棚の中にある精気補給用の錠剤を取り出して飲み込んだ。
これで暫くは本能に支配されずに済む。このような生活を彼女は5年近くも続けていた。
「(いつまで……持つか……?)」
しかし、その周期もここの所かなりの頻度で訪れるようになっていた。恐らく、限界は近い。
「(何か考えておかねば……)」
外の井戸で軽く汚れを落とし、部屋の中へと戻って彼女は眠りについた。
翌日。
情報が入るのを待つ為に冒険者ギルドへと行こうとして、クロアがその歩みを止めた。
いや、止められたと言ったほうがよいだろうか。
殆ど突っ込んでくるようなスピードでミリアが彼の前へと降り立ったのだ。
後ろのサラも目を白黒させている。
「どうしたよ、朝のジョギングって訳でもないだろうに。」
「余裕があるのは……はぁ……はぁ……今のうちだけよ。」
彼女はそう言うと、羊皮紙の巻紙を突き出してきた。
それを受け取って中身を見るうちにクロアの表情がみるみるうちに凶暴な笑みへと変化していく。
「……ようやく……ようやくかよぉ……。全く、随分と待たせやがって……待っていやがれ……皆殺しにしてやるからよぉ……はははは……」
「……クロア?」
サラが不審そうに彼の肩越しに羊皮紙の内容を見て、息を飲んだ。
『Killing Child計画』
『精液に魔物の魔力を燃やし尽くす効果を持たせた特殊生物兵器
数種類の呪縛で体型および気性を低年齢に固定
量産化計画
グランバルト地方ガルムト教会』
それは、紛れも無くアレクの筆跡だった。
所々に赤黒い染みがあるのは彼の血液だろう。長い年月を経て羊皮紙自体もかなり劣化しているが、判読するのには十分だった。
「そうか……アレクの奴は任務を果たしていたのだな。」
クロアは街へ向かって駆け出そうとしたが、ミリアが彼の肩を掴んで制止した。
「待ちなさい。いきなり乗り込むのは自殺行為よ。シーフギルドに偵察に行かせて帰ってくるまではおとなしくしていなさい。」
「……っけ」
クロアが彼女の手を振りきって街へと歩き出す。
「クロア!」
「別に殴りこみを掛けに行く訳じゃねぇよ。いつもの情報収集だ。」
彼はただ冒険者ギルドへ向かっていつもの情報屋からチャイルド関連の情報が入るのを待つだけらしい。
ミリアは飛翔してシーフギルドへ情報収集の依頼へ、サラはクロアと共に冒険者ギルドへと向かうことになった。
〜冒険者ギルド ロビー〜
ギルドには着いたものの、情報はまるで無し。
情報が入るまではギルドの中で待機という事になった。
指定席でコーヒーを啜っているクロアとサラ。そんな時である。
「見つかったのか!?」
アルテアの声だろうか。何か酷く慌てた様子で情報屋へ突っかかっているようだ。
「うん、握り拳ぐらいの大きな宝石でしょ?教会の宝物庫に保管されていたって。」
「誰も触れていないよな?」
「それは言われた通り。誰も触れないようにって言い聞かせてあったから。一部の子達は持って帰りたがったみたいだけどね……」
それだけ聞くとアルテアはギルドの外へと飛び出していった。
しかし外で何かあったらしく、憮然とした態度でまたギルドの中へと戻ってきた。
「よう、何かあったか?」
「あぁ……クロアか。いや、捜し物が見つかったんだがお預けを食らった。ミリアさんが3日待てってさ。」
恐らく彼もクロアとほぼ同じ状況なのだろう。
軽く苛立っているようで、その行動も常よりはどこか荒っぽい。
「ま、こっちも似たようなもんだ。だったら待ちぼうけ食らっている同士でどこかへ行くか?」
「そう……だな。突入準備の事もあるし色々と買い足しておくか。」
そんな話をしているとアルテアのジーンズの裾を誰かが引っ張っていた。
ギルドマスターの娘、アニス嬢だ。
「おにいちゃん、どこかおでかけ?」
どうやら特にクエストに行く予定がなく、出かける予定が立ったのを耳ざとく聞きつけたらしい。この辺の地獄耳は母親譲りのようだ。
「ん、道具が傷んでいたら買い足しにでも行こうと思ったんだが……。」
「わたしもいく!」
若干困ったような顔をしたアルテア。それを見てクロアが軽く溜め息をつく。
「行かせてやれ。野郎二人で連れ立って行くよりは生産的だろう。」
「済まない。それじゃあ行くか、アニー。」
「うん!」
喜色満面のアニス嬢を連れてアルテアがギルドを後にする。
クロアも道具の調達に行こうとした所でサラも同時に席を立った。
「道具の調達だろう?私も行こう。少し探したいものがある。」
「ご自由に。」
そうして二人がギルドを出ていく。
二人を見送るギルドメンバー全員の目が生温かかったとかどうとか。
〜道具屋 『Dirty tools』〜
商業区の裏路地にある一軒の道具屋。
名前もほぼ知られておらず、足を踏み入れる客もほぼいないが品揃えは充実しているという隠れた名店だ。
なぜこの店が潰れないのかはモイライの7不思議に数えられている。
そもそも知られていない名前が何故7不思議に数えられるか自体が謎ではあるが。
「(メンテナンス用のグリース……と、あとは留め具のスペアか。)」
クロアは基本的に遺跡探索用の道具は持たない。
最近はガーディアンやチャイルドの討伐程度しかしていないので、普通の冒険者として活動しないからだ。故に遺跡の探索もしない。
尤も、彼は正式な冒険者という訳でもないので通常の依頼も受けられないのだが。
「(……あいつ、何をしているんだ?)」
見るとサラはあちこちに目線を走らせて何かを探しているようだ。
そして探し回っているうちに棚の向こう側へ行って姿が見えなくなってしまった。
「(これは……)」
そして、サラはお目当ての物を見付け出した。
魔物はまず使うことがなく、それどころか近年では人間すらもほぼ使わなくなった物。
故に生産数も非常に少なく、市場にはまず出回らない日用品だ。
「(これなら……あるいは。いけるはずだ。)」
サラは迷わずそれを掴みとると、クロアが会計を済ませたのを見計らって自分も会計を済ませた。
店員が怪訝そうな顔をしていたのは言うまでもない。
「何を探していた?」
店を出て第一声はクロアの訝しげな声だった。
唐突な一言にサラの心臓が激しく跳ねる。
「あ、あぁ……欲しかった日用品があってな。無事見つけられた。」
「……そうかい。」
何かを探るような目付きの後、興味を失ったかのように目線を前方へ戻した。
彼の後ろでほっと胸を撫で下ろすサラ。
コレばかりは、バレるわけにはいかなかったからだ。
ガルムト教会へ出発する日の前日。
「クロア、表へ出ろ。」
夕飯が終わり、後は身を清めて寝るだけという時に唐突にサラが切り出した。
「……何だ?」
「いいから、ヴァーダントとミタク・ナハトを持って出ろ。」
彼女は背後に赤と青の双剣を背負っている。
普段にはない物々しい装いにクロアの気が引き締まっていく。
「(何だ……?敵襲という訳でもないだろうに……。)」
ホルダーにヴァーダントを固定し、ホルスターを腰に着けて彼女の後を追う。
辺りは夕焼けが赤く染め上げていた。
「で、一体どうしたって?試合でもするのか?」
「……試合ではない。」
そう言ってサラは背中の双剣を引きぬく。
アグニとルドラ。炎の魔力と風の魔力を込めた二刀一対の双剣だ。そして、彼女がそれを抜くという事は……。
「これは、決闘だ。本気で、殺す気でかかってこい。手加減は無用だ。」
「……はん。漸くお師匠さんを本気にさせたって訳か。こりゃ光栄の極みだな。」
クロアも背後からヴァーダントを抜き放つ。
夕日がヴァーダントに反射し、まるで血に染まったかのように赤く色づく。
「行くぞ……お前の全てを見せてみろ!」
「ッハッハァ!いいぜ、やってやるよ!」
双方が地を蹴り一瞬で肉薄する。
渾身の力を込めて振り下ろされたヴァーダントがサラに受け流され、脇腹へと回し蹴りが飛んできた。
「You're going down!(くたばれ!)」
その回し蹴りを片手で掴みとり、力任せにサラ自体を振り回して近くの樹木へと投げつけた。
しかし彼女は宙返りをうち、足から樹木へ着地すると三角跳びの要領で高くへと飛び上がり、大上段からクロアへと双剣を振り下ろしてくる。
「でぇぇぇぇえええい!」
「Not so bad…but(いいね、でもよ)」
すくい上げるようにヴァーダントを回転させながらサラへと投げつける。
そしてホルスターからミタクとナハトを引きぬいてサラへと照準を合わせた。
彼女はと言うと向かってきたヴァーダントをなんとかいなして体勢を整えている所だ。
「Too late !(おせぇよ!)」
魔力弾を連射し、バランスを崩したサラへと浴びせかける。
しかし、サラの周辺の景色が歪んで魔力弾の軌道が逸れていく。
「っはぁ!」
「っ!」
振り下ろされた双剣を拳銃でかろうじて受け流す。
熱と風により辺りの景色が歪む。先程の魔力弾を逸らしたのはこれだろう。
「ぁぁぁぁぁぁああああああ!」
「Shit!」
サラが追い打ちに無数の斬撃を浴びせかけてくる。
袈裟斬りに、唐竹割りに、十字に、逆袈裟に。それは乱舞といっても過言ではない。
彼女が舞う度に周囲の景色が歪み、捻じれ、惑わされていく。
その斬撃一つ一つを凌ぐクロアにもだんだんと限界が近づく。
「とどめぇ!」
大きく振りかぶったサラに対してクロアが浮かべた表情は焦りでもなく、諦めでもなく、
いたずら小僧が浮かべるような笑いだった。
直後、上空から何かが飛来し、クロアとサラの間に突き刺さる。
クロアはそれを引き抜いてサラへと向けて振り抜いた。
かろうじて双剣でガードするが、大きく吹き飛ばされて膝をつく。
「Is that all you've got?(それで本気か?)」
肩をすくめ、片手で振り回しているそれは紛れも無くヴァーダントだ。
恐らく先程投げ上げた物が地面へと降ってきたのだろう。
「ふん……その程度でいい気になるな。本番は……」
彼女が双剣を合わせ、こすり合わせるように振りぬく。
するとアグニに炎が、ルドラに目に見える程の密度の風がまとわりついた。
周囲の気温の差により光が乱反射し、サラの周囲が極彩色に彩られていく。
「これからだ!」
燃え滾る闘志を眼に宿すサラを見てクロアの闘志もさらに燃え上がっていく。
「That’s sweet…Things're really beginning to heat up!(いいね……燃えてきたぜ!)」
再びヴァーダントを構え直すクロア。
激突する赤と極彩。剣と剣が交差する度に火花が飛び散り、二人を彩っていく。
それはまるで東方の花火のようで、もし誰かが二人の戦いを見ていたとすればこう漏らすだろう。
美しい、と。
戦いである以上、終幕は来る。
そして先に体力が尽きたのはサラの方であった。
双剣を弾き飛ばされ、無防備になった所へボディーブローを叩きこまれて逆の手で頭を掴み取られる。
「しまっ……!」
「Break up!(砕け散れ!)」
足を払われ、サラの頭が地面へと叩きつけられる。
胸が詰まり、目の前に星が飛んで正常な判断が不可能になる。
なんとか落ち着いた時には既に目の前へとヴァーダントが突きつけられていた。
「チェックメイトだ。負けは数えきれない程だったが……漸く一勝って所か?」
「………………」
呆然と剣の先を見つめ続けるサラ。
まだ自分の身に何が起こったのかが理解できていないようだ。
「……師匠?頭打ってバカになっちまったか?」
「……ぁ……あぁ……そうか……」
そうして、彼女は漸く自分の負けを自覚する。
表情を緩めるサラと対照的にクロアの顔がみるみるうちに真っ青になっていく。
「ってやべぇ!出血出血!」
「……?何を言って……」
そして彼女は後頭部に違和感を覚えた。なぜかムズムズとする。
手を当てて目の前に持ってくると、その手はべっとりと赤い血で覆われていた。
〜キサラギ医院〜
「全く……何て無茶してるのよ。死合とか後で治療する身にもなってみたらどうなの?」
「面目ない。」
すぐさまモイライの診療所へ駆け込み、頭の治療を行った。
幸い診療所には回復系の術者もいたようであっという間に傷はふさがった。
脳の方にも損傷が無かったのも幸運だった。
「まぁまぁ、こういうのは彼女達の性分だから仕方が無いじゃないか。」
「ヒロトはいいわよね。患者が増えればその分儲けが出るし。」
いつまでたっても医者と術師が言い合いをしていて気づかないため、クロアは治療費だけ置いてその場を後にした。
「……世話を掛けた。」
「全くだ。何故あの唐突なタイミングで決闘なんて言い出したんだ?」
彼女に肩を貸しながら家路へと着く。
彼女はクロアの疑問に対して何も言わない。結局クロアの方がため息を付いて折れ、何も聞かないことになった。
帰りついた頃には辺りは既に日が暮れており、月明かりのみが道を照らすだけとなっていた。
サラをベッドへ横たえ、ランプをつけようとテーブルへ手を伸ばした途端腕を引かれてベッドへ押し倒された。
「……サラ。」
「お前は……リザードマンの習性を知っているな?」
そう、彼女達の習性といえば、決闘などで負けた相手の伴侶となるという物だ。
しかし、それが叶わぬ願いというのは彼女もよく知っている筈。
「やめてくれ。これ以上誰かを失いたくない。」
「もう……我慢できないんだ。お前は、私が出会った時よりも遥かに強くなった。」
サラがズボンのベルトを外し、トランクスごとずり下げる。
態度では拒絶するクロアに反して、彼のそこは痛々しい程に反り返っていた。
「そして今日、お前は私を打ち倒した。本気で戦って……負けたんだ。悔しいという気持ちの前に清々しい気分だ。これで自分自身を抑えずに済む。」
「サラ……!頼むから……頼むからやめてくれ!嫌なんだ!もう……俺のせいで大切な人を失いたくない!」
半泣きで抗議するクロアに彼女は優しい笑顔を向ける。
今まで彼には向けたことがない、それは聖母のような微笑だった。
「心配するな。私だって何も考えずにこうしている訳じゃない。」
そう言うと彼女は自分の荷物の中から小さめの瓶を取り出した。
中身には輪っかのように丸められた薄い何かが大量に入っている。
「それは……?」
「南国のゴムの木と呼ばれる樹木の樹液で作られた避妊具だそうだ。これをつければ周囲に精子が飛び散らない。つまり……」
瓶を開けてその中の一つを取り出し、クロアのペニスへとかぶせていく。
装着し終わると、ペニスの周囲に薄皮一枚が張り付いたような状態になった。
「この状態であればお前の体質を気にすることは無くなる。流石に外す時はお前自身にやってもらわなければならないが……それでも害が無くなるのであれば必要な手間だろう。」
言い終わると彼女はクロアの上に覆いかぶさり、先端を彼女自身にあてがい始めた。
薄皮越しに彼女の体温が先端に伝わってくる。
「サ、サラ……まっ……!」
「待つ……ものか!」
ずにゅりという音と共に彼女の中へペニスが収まる。
蕩けるように熱く、優しく絡み付いてくる襞に抵抗しようもなく高まっていくクロア。
「ずっと……ずっと待っていた……っ!お前が、私の事を超えてくれるのを!嬉しい……!好きだ、クロア!大好きだ!」
「まて……よ……!アレクさんは……アレクさんはどうなるんだよ……!」
苦し紛れにアレクの名前を出すが、それでも彼女は動きを止めない。
「アレクは、もういない……死んでしまったんだ。あいつだって自分に縛られて歩み出せなかったら悲しむだろう……。だから……っ!」
一際深く腰を沈めてくるサラ。最奥部の子宮口に亀頭が衝突し、甘く痺れる快感がサラの全身を駆け巡る。
「私は……過去を振り返らない……!縛られるものか!今の私には、お前だけしかいない!絶対に、絶対に離さないぞ!二度と手放してなるものか!」
彼の上に倒れ込み、しがみつきながらも腰をふりたくる。
今の彼女には、漸く手に入った自分の想い人に対する慕情しか無かった。
「ぁ……ぐ……さら……離れろ……!出る……っ!」
「だいじょうぶ……っ!私を……私を信じろ……!」
限界が迫るクロアに追い打ちを掛けるかのように動きが激しくなっていく。
長い間張型で馴らされた柔らかい膣内に女日照りのクロアが我慢など出来るわけもなく、殆ど暴発に近い状態で白濁が撃ち出された。
「サ、サラ……サラ!」
「大丈夫だ……。」
クロアの上に突っ伏した彼女が起き上がり、彼の唇へ口付けを落とす。
「私は、ここにいる。消えたりなんてするものか。」
彼女は、無事だった。
腰を上げてペニスを引き抜くと、薄皮を隔てて彼の精子が中で泳いでいた。
「信じられないな。見た目ではさほど害がある物とは思えない。」
「……」
彼は無言で避妊具を外し、外へ漏れ出ないように口を縛った。
まだ暖かく、白く濁ったそれは破れそうなほど薄い膜の中へ留まっている。
「よかった……よかった……っ!」
そして、彼女が生きている事に安堵してクロアは涙を流す。
そんな彼を彼女は背後から抱きしめて宥めていた。
「落ち着いたか?」
「……あぁ、済まない。もう大丈夫だ。」
しばらくするとクロアも大分落ち着き、サラに身を預けるようになっていた。
安心した事により、眠気も襲ってくる。
「クロア、何を寝ようとしているのだ?」
頬を抓られて無理矢理に意識を覚醒させられる。
背後を振り返ると、彼女がまだ中身がたっぷりと残っている避妊具の瓶を振っていた。
「残りはまだまだある。今まで欲求不満だった分……満たさせてもらおうか?」
「じょ、冗談……だよな?いくら何でもそれを全部使い切るのは無理があるというか枯れるというか……」
「遠慮はするな。今まで満足に女性と交わったことが無いのだろう?なら私がたっぷりと女を教えてやろう♪」
結局、クロアはこの夜に何も出なくなるぐらいまで絞られる事となった。
「そう、一日は動かすことができないと。」
「あぁ、久々に堪能させてもらった。」
妙に肌がつやつやしたサラがミリアに夜の出来事を話すと、流石の彼女もクロアに同情していた。
「出発は一日遅れで?」
「あぁ、クロアが回復次第出発する予定だ。ようやくだ……ようやくアレクの弔い合戦ができる……!」
「気持ちはわからなくもないけど……先走っちゃだめよ?絶対に死なないで。それだけは約束して。」
「あぁ……わかっているさ。」
ガルムト教会への道中。
クロアは切り出しにくそうに口を開いた。
「サラ……」
「ん、何だクロア。」
同じ馬に跨り、クロアの腰に手を回して彼に寄りかかるサラ。
彼は懐のポケットから一冊の本を取り出し、サラへと突きつけた。
そして彼の口が開かれる。
───一緒に死んでくれないか?───
11/12/04 16:51更新 / テラー
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