幕間〜夏だ！狩りだ！お祭りだ！〜
古今東西、人という生き物は何かにつけて祭りが好きな傾向がある。
元々の意味は神を祀るための行事だった筈が、人が集まる事に目をつけて屋台を出したり、その非日常空間を満喫するために恋人同士がそれを見て回ったりと本来の目的からは外れ始めているが、神様とやらも賑やかな事は嫌いではないだろう。
そういう意味で言えばあながち祭りのどんちゃん騒ぎというものも理にかなっているのかもしれない。
〜冒険者ギルド ロビー〜
「夏祭り？」
「そ、毎年の恒例行事なんだって。」
妙に俺にひっつきながらチラシを俺に見せてくるアイシャ。
この間の洞窟の一件から何かとちょっかいをかけてくるようになった。
嬉しくない訳ではないのだが、こいつと一緒にいるとサフィアが妙に寂しそうにこちらを見てくるので非常に居心地が悪い。
「確かに今朝から太鼓やら笛やらの音が聞こえてくるな。それでか。」
「そそ。でさ、もし良かったらでいいんだけど一緒にまわってみない？」
もしかしなくてもデートのお誘いなんだろうなぁ。
和風の、しかも古き良き時代の祭りには興味があるので見てみたいという気持ちもあるのだが……
「（あぁ……そんな目で見るな……先を越されたとかいう目で見るな……！）」
半泣きになって俺とアイシャを遠巻きに眺めるサフィア。
なんだかこういうのに弱いよな、俺。
「暇だよね暇でしょ暇だって言えはい暇だねレッツゴー！」
「ちょ、待て！俺はまだ行くとは一言も……！」
そんなサフィアを見てか強引に俺を引っ張ってギルドから連れ出すアイシャ。
こいつこんなに力あったっけな……。
〜江戸崎城下町 大通り〜
大通りにはいつもの倍近くの人が行き交っていた。
遠くからは祭囃しが聞こえて来て、皆一様に神社の方へと足を運んでいる。
「江戸崎の近くの神社って結構大きいらしいね。石段が200段くらいあるってさ。」
「バリアフリーなんぞどこ吹く風だな。お年寄りに優しくありませんよっと……。」
道行く人に紛れて魔物達が男を見つけるべく目をギラギラと光らせている。
それを見てアイシャが俺の腕を抱え込んできた。
「気をつけてよ？油断すると連れて行かれるんだから。」
「もう既に捕まっている気がしなくもないがな……」
気がかりなのは置いて来てしまったサフィアの事だ。
あいつ酷く寂しそうだったな……
「……ていっ」
「あたっ！」
振り向いてぼーっとしているとアイシャにデコピンを食らわされた。
心なしか頬が膨れている。
「女の子と歩いている時に別の人の事を考えているのは感心しないわね？」
「あぁ……まぁ……少し引け目に感じてな。」
自分を慕っている女性を放って別の女性と出かけるというのは後味の良いものではない。
良心の呵責に耐え、連れ添っている女性の気分を害さないように気を配り、尚且つ帰ってからもギクシャクしないようにおいて行った側へのケアもしなければならない。
それでいて得られる物は一時的な充足感といつ爆発するかもわからない嫉妬の爆弾である。
割に合わないことこの上ない。
「八方美人……」
「う”……」
アイシャに考えていたことをズバリ言い当てられ、言葉に詰まる。
そんな俺を見て彼女は深くため息を吐いた。
「全部にいい顔をしようとするのはいいけどね。あなたそのうち潰れるわよ？あなたの腕は二本しか無いし、持てる量も限られているんだからさ。」
「わかっちゃいるんだけどなぁ……」
どうにも俺は女性が悲しんでいる姿を見るのが苦手だ。
困っているのなら助けてあげたいと思うし、落ち込んでいるのであれば慰めてあげたいとも思う。
それ故に今も女性関係のトラブルが絶えないのだろうけれど。
「ほらほら、辛気臭い顔しないの！今はお祭りを楽しまなきゃ！」
「ん……そうだな。」
サフィアには何かお土産でも買っていって許してもらおう。
それに彼女にかまけてばかりでアイシャまで不機嫌にさせたら本末転倒だ。
何を買って帰ろうかと考えていたら、いつの間にか石段を上がりきっていた。
目の前には、広大な境内とそこかしこに立ち並ぶ出店が広がっていた。
〜弓番神社〜
ここに祀られている神は狩猟の神だそうだ。
猟犬と共に巨大な猪ですら倒したという逸話がある。
で、夏のこの時期に婚姻を上げた（相手は台所の神とも家庭の神とも言われている）らしく、この祭りはそれの宴会のような物なのだそうだ。
「……こいつは……」
立ち並ぶ屋台の内の一つに俺は目を奪われた。
鉄の筒に木製のストックが付けられ、コッキング用のレバーが付いている。
出店の看板にはこう書いてあった。
『射的』と。
「これはどう見てもこの世界の物じゃないよな……フリントロックすら発明されていないのに。」
「つまり……何なの？これ。」
俺は店主に銀貨を3枚渡すと銃を取り、レバーを引いて先端にコルクを詰めた。
「別の世界から伝わったんだろうな。おもちゃの銃を使って景品を落とす遊びだ。丁度いい、土産もここで手に入れていくか。」
弾数制限は５発。
１発は調整用として、残り４発で土産になりそうなものを落とせばよいだろう。
照準を正面のこけしの頭に定めて発砲。やや下あたり、首のあたりに着弾する。
重心が合わなかったのか、落ちることは無かった。
「下の方へ１クリックって所か……ボルトで調整できるわけでもなし、このまま狙うしか無いか。」
サフィアは基本的に海を移動する種族だ。
となるとぬいぐるみなどを渡しても海水ですぐダメにしてしまうだろう。
ならば、髪飾りあたりが無難か。
「…………」
右上端、額に入れて飾られている髪飾りへと狙いを定める。
呼吸を整え、額の一番上辺りを正確に狙う。発砲。
後ろのつっかえ棒を持ち上げる形で後ろの方へ倒れる。店主が口を開けたまま驚愕していた。
「ワンダウン。次だな。」
「あんた何か別人になってない？」
次はおもちゃのコイン。
別に欲しいというわけでなく、ただのパフォーマンスだ。なにせ旧時代の５００円硬貨程度の大きさしかない。
少し上を狙って発砲。甲高い音を立てながらコインが弾かれて下の方へと落ちて行く。
「ビンゴ。楽勝だな。」
「少しは手加減してあげたらどう？お店の人半べそになっているわ。」
少し左に視線をずらすと、櫛が置いてあった。そういえばプリシラがブラシを失くしたとか言っていたか。せっかくだから落としておこう。
こちらと水平に置いてある、どう考えても落とさせる気のない櫛を真正面から当てて後ろの方へはじき飛ばす。店主が『べっ甲製の高級品がー！』とか叫んでいたが気にしない。
「ブラボー。我ながらいい腕だ。」
「なんというか……ごめんなさいね……」
隣でアイシャが店主に謝っていた。どれもこれも落とさせる気のない置き方をしている店主が悪いと思うのだが。
まぁここでアイシャに何も取ってやらなかったら機嫌が悪くなるわな。
適当におもちゃの指輪でも……
「っと、ごめんよ！」
後ろからケツにぶつかられて大きく照準が狂う。
思わずトリガーを引いて落としてしまったのは……
「純白金のネックレスがー！」
お高そうなビロードの額縁に飾られていたチェーンネックレス。
というかこの店主、そんな高額なもんをホイホイ景品として置くなよ……。
「あ〜……一応景品を貰えるか？」
「チキショウ！もってけドロボー！」
俺の腕に景品を押し付けると早々に店仕舞いを始める店主。
どうやら赤字が決定したらしい。
「なんだか……悪いことしたかな。」
「そう思うんならわざと外してあげても良かったんじゃない？」
ごもっとも。
「で、それって誰に渡す物？」
「ん、そうだな……」
前述した通り、髪飾りはサフィアに、櫛はプリシラに渡すつもりだ。
コインは……記念に取っておくか。となると……。
「ほれ。」
「え……」
俺はチェーンネックレスをアイシャに押し付ける。
まぁ元々はこいつの物を取ろうとして偶然落としたものだ。
だったらこれを渡してしまってもなんら問題はあるまい。
「やる。それとも金属アレルギーでもあったか？」
「う、ううん！あ、ありがとぅ……」
俯いて真っ赤になってしまった。どことなく気恥ずかしい。
何かこの状況を打破する事は……
不意に、近くの茂みから声が聞こえてくる
＜あぁん♪もっと、もっとついてぇ♪
＜っ……出すぞ、全部！
「………………」
「………………」
余計気まずくなってしまった。
えぇい！これだから盛りのついたカップルというのは！
「と、とりあえず何か食うか！」
「そ、そうね、せっかくのお祭りだもん。何かそれらしいものを食べなきゃ！」
そう言いながらなぜ彼女は俺の股間をじっと見つめているのだろうか。
いや、理由を聞きたい訳じゃないけどさ。
俺がたこ焼き、アイシャがリンゴ飴を手に持ち、境内を奥へと歩いて行く。
彼女は早速もらったネックレスを首に掛けている。
こうしてみると嬉しさ半分恥ずかしさ半分でなんとも言えない気持ちがこみ上げてくる。
こいつ、思った以上に男心をくすぐってきやがる……！
「ん、何あれ？」
「結構な人だかりだな。」
拾い境内を円形に囲むように人垣ができている。
どこかから実況のような声が張り上げてられていた。
《さぁ今年も始まりました！猟神祭名物『亥狩の儀』！今年この暴れ猪を御するのは果たして誰か！飛び入り参加自由！得物自由！持ち込み自由のなんでもアリのハンティングバトルロイヤルだぁ！腕に自身のある猛者は結界の中へ飛び込め！》
どうやら中で猪狩り（？）を見世物にしたイベントが行われているらしい。
「野蛮ね……命のやり取りを見世物にするなんて。」
「そう言いながらお前、わりとうずうずしていないか？」
彼女の手や目の端がピクピクと動いている。そういやエルフって基本狩猟生活なんだっけ。
「見ていこうぜ。どうやら結界の外は安全らしいし。」
「あ、あんたがどうしてもって言うなら一緒に見てあげなくもないけど……」
決まりだ、と言って彼女の手を引いて人垣の中へ分け入っていく。
結界の手前には柵が設けられており、誤って中へ入るという事故を防止していた。
「って……でか！」
「これは凄いわね……。森の主クラスじゃないの？」
昔のゲームソフトでモンスターを狩猟するというゲームがあったのだが、それに出てくる大猪にそっくりだった。
そいつは鼻息荒く、たまに結界に突進しては鼻面をぶつけている。
「あ、これ式神なんだって。注意書きに書いてある。」
「よく読めるな……。」
遠く離れた実況席の隣には確かに立て札が立ててあった。
尤も、俺の視力では読むことは出来なかったが。
その後も、その式神の大猪相手に何人か挑んでいたが、ことごとく敗退。
血まみれになっているあたりあの猪、かなり本気だ。
「死人が出なきゃいいがな……。」
「なんでも大怪我をするまえに操って動きを止めるんだって。そこのところは考えているみたい。」
まぁ激しい祭りだと死人も出るらしいし、死人が出ないように考慮されているあたりは祭りが中止されないように頑張っているのだろう。
「ん……なんか首筋がむずむずする……」
「蚊でも止まったか？あまり掻くなよ？」
どうも首筋に違和感を覚えるのか、首の後ろ辺りをまさぐるアイシャ。
一応虫刺されの薬でも準備しておこうか……
そう思っていると、不意にアイシャの体が前に傾く。
「っと、ごめんよ！」
どうやら後ろの奴に軽く押されたらしい。
その瞬間、例の大猪がこちらへ突進し、結界に激突する。
前のめりになっていた彼女がそれにビックリしない筈もなく、全身を竦ませる。
＜パチッ＞
「あん？」
何か小さい音が聞こえたと同時に、彼女の胸元からキラキラしたものが結界の中へ向けて飛んでいった。
あれは……
「あ……あーーーーーーーーーー！」
そのキラキラしたものが猪の牙にひっかかった。あれは……
「あちゃ〜……えらいことになったな。」
「そんな……ネックレスが……」
俺がアイシャにプレゼントしたネックレスだった。
どうやら先程の音はネックレスの留め具が外れた音らしい。
牙に引っかかっているネックレスに構わず、猪はあちこちに突進し続けている。
「だめ！あんなに暴れたら壊れちゃう！」
「また買い……」
そう言おうとして言葉に詰まった。
彼女が泣きかけている。その視線は牙に引っかかったネックレスを追いかけていた。
「……ったく！しゃあねぇな！」
俺は柵を飛び越えて仔鵺と虎牙鎚を引き抜き、結界の中へと飛び込む。
周りからワっと歓声が上がった。
《おーっと！またしても挑戦者だぁ！今度は異国風の青年だ！果たして彼はいかなる戦い様を魅せるのか！》
「好き勝手言ってくれやがって……！」
こちらとしてはあのネックレスさえ取り返せれば引っ込んでいいのだ。
無駄に戦う必要は……
＜バクッ！ゴクリ＞
戦う必要は……
＜ブフー！＞
「だー！こいつネックレス飲み込みやがった！」
なんと牙に引っかかっていたネックレスを猪が飲み込んでしまった。
これでは倒して腹を掻っ捌くしか……
「……あ、こいつ式神だっけか。」
ということは倒せば一応取り出すことは出来るということか。
ならば話は早い。さっさとこいつを倒してネックレスを取り戻そう。
「仕方ねぇな。少し遊んでやるから有り難く思えよ？ブタモドキ。」
奇声を上げて俺の方へ突っ込んでくる猪をサイドステップで躱す。
どうやら本物の猪と違い、単純な突進行動しか取れないようだ。
「おらぁっ！」
仔鵺からナイフを展開し、足を斬りつける。
機動力を潰せば少しは御し易く……
「………………」
なんと、切れたのは数本の体毛だけであった。どんだけ剛毛だ。
「アル！避けて！」
「っ！」
とっさにバックステップをすると、猪が後ろ足を蹴り上げてきた。
あのままつったっていたら間違いなく頭をかち割られていただろう。
再び猪と距離を取る。
「っと……どうすっかな……。まともに刃物は効きそうもないな。」
奴は振り向いて鼻息荒く前足で地面を掻いている。
このまま避けて斬ってをしていてもジリ貧になるだけだろう。
出来ることならば体毛の薄い腹側を狙いたいものだが……
「何もしないよりは……マシだな。」
一旦虎牙鎚をホルスターに戻し、仔鵺から火燐を引きぬく。
そして、突進してくる奴の額に、すれ違いざまに投げつけて刺してやる。
顔面が爆発し、もんどり打って倒れこむ猪。
「チャンス到来！」
急いで腹側へ回りこみ、ナイフを展開。
舞を舞うようにメッタ切りにし、ある程度傷をつけた所で距離を取る。
腕を伸ばして虎牙鎚・仔鵺両方を前に構える。
虎牙鎚のトリガーを引き、仔鵺のゲンブジャケットを両腕の間に生成。
魔力を練りこんでいく。
「ブチ抜けぇ！」
タイグレスハウル。
一撃必殺の白虎の咆哮。
その暴力の塊が大猪の腹を食い破り、背中を貫通して結界へと当たって弾ける。
猪の腹にはものの見事に風穴が開いていた。
「ってやべ！ネックレス！」
絶命した猪が紙屑へと戻っていく。
後にはボロボロになった紙切れと……
「……あった！よかったぁ……」
先ほどの状態となんら変わらないプラチナのネックレスがあった。
安堵した途端、聴覚が戻ってくる。
周りは爆発するような歓声に包まれていた。
《なんとぉ！今年の亥狩の儀の制覇者は飛び入り参加の異邦人だぁ！華麗に攻撃を避け、舞うように斬り、止めを刺す！まるで猟神の再来だぁ！》
そういえばこの催し物の最終目的はこの猪の討伐だったか。
夢中になっていて気づかなかったが、知らず知らずのうちに祭りの主役になってしまったようだ。
それからはもう流れに任せるがままだった。
消えた結界から引っ張り出され、櫓に押し上げられて自己紹介させられ、賞品であるペアリング（猟神が倒した猪の骨を削って結婚指輪を作った事からにちなむらしい）を押し付けられた。
俺が独身だと知るやいなや群がってくる魔物、妖怪をなんとかかいくぐってアイシャと合流できたのは祭りも終わろうかという時間だった。
「あぁ……疲れた。」
「良かったわねぇ、モテモテのアルテアさん。」
なんだか言葉にもの凄くトゲがある。
そりゃ確かにいろんな奴に追いかけられたけどさ。
「ったく、当初の目的忘れやがって……ほれ。」
「ぁ……」
ポケットの中に突っ込んであったネックレスを彼女の首に掛けてやる。
ようやく元ある場所に戻った言ったところか。
「もう失くすんじゃねぇぞ？次も取り戻せるとは限らん。それと……」
例のペアリングが入った小箱も彼女に押し付ける。
自分が何を渡されたのかわからず、彼女は目を白黒させているみたいだ。
「これはおまけだ。どうせ俺が持っていても宝の持ち腐れだからな。将来の旦那さんにでも渡してやれ。」
箱を開けて呆然としているアイシャ。中身と俺を見比べると、急に顔が真っ赤になった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」
「おぉ、ジタバタするぐらい嬉しいか。そいつはよかった。」
身振り手振りで何かを伝えようとしているが、全部のしぐさがバラバラで何を言いたいのかさっぱりわからない。
俺に関係することなのかもしれないが、ここは気づかないでおくほうがいいのだろう。
「さ、帰るぞ。結構遅くなっちまった。」
彼女の手を取って帰路に着く。
手を握った瞬間、彼女が何か小さく言った気がするが、祭りの残った喧騒にかき消されてよく聞こえなかった。
〜翌日〜
アイシャはある一つの工房の扉を潜っていた。
無論、タマの工房である。
「おや、あんたか。一体どうしたんだい？」
「え〜と……実は少しアクセサリに刻んで欲しい文字があって……」
本来エルフとドワーフというのは仲が悪いものだが……
ジパングで暮らしているタマとエルフらしからぬ考えを持つアイシャ、二人の変わり者が出会えば自然と意気投合するものだ。二人ともそれなりに仲が良くなっていた。
「ふぅん……どんなの？」
「えぇと……これ。」
彼女は前日にアルテアからプレゼントされたペアリングと一枚の紙切れをタマへと渡す。
その紙切れを見て、タマの顔が意地悪そうに歪んでいく。
「へ〜……ふ〜ん……」
「な、何よ。別にあたしが身につけるものに何をしようと勝手でしょ？」
「はいはい、そういう事にしとくよ。せいぜい頑張んな。」
そう言うとタマは指輪を持って工房の奥へ引っ込んでしまった。
それを見て苦々しげに顔を顰めるアイシャなのであった。
その日からアイシャは、肌身離さず首から二つの指輪を通したネックレスを身につけるようになった。
その指輪にはこう彫られていたという。
『A.B To A.Y I vow eternal love to you.』
『A.Y To A.B I am always with you.』
11/09/04 10:13更新 / テラー
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