連載小説
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Act.1<Crazy Murder>
〜???〜

燃えている。
村が燃えている。


Respected by KUROBINEGA


しかし、燃えていると言っても建物が燃えている訳ではない。
そこかしこで少年と交わっている魔物達が燃えている。


Story “TELLER” Presents


村に響き渡る断末魔の声。
すすり泣く少年達。
村の外では機械のようなゴーレムがキャスター付きの檻の前で待機している。

「やだ……もうやだよ……」

次々と襲い掛かられる少年。魔物に犯され続け、その魔物が炎に包まれて消えていく。
その光景が村中の至る所で繰り広げられている。
魔物達の瞳には理性の色はなく、目の前のごちそうを貪り食らうだけの獣と化している。

そのごちそうに毒が仕込んであるとも知らずに。

周りで誰かが死のうと目に入らない。彼女達の目に入るのは少年だけ。

「やめて……やめてぇ……」



そして、辺りは静寂に包まれた。


Starting new legend


少年達が村の広場へと集まっていく。

「ねぇ……こんな事をいつまで続けるの……?」

少年の一人がつぶやく。彼らに名前はない。

「わからない……自分で死のうとしても死ねないし……誰も殺してくれない。」

彼らに随伴しているゴーレムは彼らが脱走した所で殺しはしない。
追いついて捕まえるだけだ。
第一体力も殆ど無いので逃げるにしても続かない。
それに何かの暗示が掛けられているのか、互いに何らかの方法で殺そうとしても殺せない。
自殺もできない。

「もう嫌だよ……殺して……誰か殺してよぉ……」

少年の一人がすすり泣き始めると、連鎖するように少年達が泣きはじめた。





―そうか、ならさっさと死ぬ事だな。―




少年の一人の頭が宙を舞う。
それが何者かの手によって首を撥ねられたのだと言う事に気づいたのは少年の残された体が地に倒れ伏してからだった。
あたりに夥しい量の血が広がっていく。

「んで、次はどいつだ?一列に並んで一人ずつ死んでくか?それとも纏めて薙ぎ払われたいか?」


Reincarnation


片手で大剣を振り回す男がそこにいた。
半指の革製グローブを付け、赤いコートを着て、黒いジーンズを履いている。
上半身はコート以外何も着ておらず、ドクロに十字架が刺さったデザインの銀のネックレスをぶら下げていた。
腰には革製のベルトを付けており、それに黒と銀の見慣れない何かを下げている。

「お兄さんが……殺してくれるの?」
「あぁ、ガラクタならあそこでスクラップに……ってどっちも意味は同じだな。潰してあるから邪魔は入らない。ほれ、さっさと並んだ並んだ。」

横柄な態度で後ろに親指を突きつける。
村の出入口付近に黒煙を上げて機械のようなゴーレムが倒れていた。



「お前で最後だな。何か言い残すことはあるか?」

辺りには少年達の遺骸が転がっている。
全てが首を撥ねられたり、心臓を貫かれて即死状態になったりしていた。

「お兄さんは……一体何者ですか?」
「俺か?俺はな……」

大剣を少年の首筋へとピタリと押し当てる。
男の手は震えること無く正確に大剣を止める。
しかし、少年の方も身じろぎすらしなかった。すでに心が壊れているのかも知れない。

「お前らの同類だよ。先にあの世でも行ってな。」

体を逆に一回転。光る刃が少年の首を撥ねた。



「あ〜あ、胸糞悪いったらねぇな。依頼と称してやったことはポンコツ一体ぶっ壊したのとガキのなます斬りかよ。」

ヴァーダントに付いた血糊を振り払い、背中のホルダーへと留める。
ついでに『ミタク』と『ナハト』(二丁一対の魔道拳銃)の調子を確かめ、再度ホルスターへと戻す。

時刻はそろそろ夕方へと差し掛かった頃だ。
辺りには血の饐えたような匂いが漂い、焼失しかけている魔物達の燐光が漂っている。
その亡骸を踏み越えて誰かがやってきた。

「ヨォ、お師匠様。仕事は全部片付いたぜ。もっとも、来るのが遅すぎて村人も全部お釈迦になっちまったみてぇだがな。」
「全く……お前という奴は……」

ため息を吐いて目の前の女性……リザードマンはあたりを見渡す。
彼女もこの惨状に辟易しているようだ。

「もっと早ければこうなる前に片が付いたんだがな……」
「しかたねぇだろ。相手はダース単位の量産型チャイルドを一刻も使わずにあちこちに送りつけられるんだぜ?目撃情報が来てから動いてたんじゃ旅の館使っても間に合わねぇよ。」

男は手を上げてお手上げの姿勢を取る。彼女はイライラと頭を掻くだけだ。

「おまけにどこから来るのかもわからねぇと来てやがる。元を叩こうにも検討がつかねぇ。今はただイタチごっこするしかねぇよ。」
「……お前はそれでいいのか?」

咎めるように男に鋭い目線を送る女性。男は肩をすくめる。

「いい悪いの前に手の打ちようがねぇよ。いくら俺でも知らないものは叩けねぇ。なんなら教会の拠点を片っぱしから叩き潰していくか?俺はそれでも一向に構わねぇぜ?」

男の目に危険な光が宿る。血に飢えた猛獣というか、誰かを殺したくてたまらないというか、そんな目だ。

「お前は……随分と変わってしまったな。クロア。」
「多分何も変わっちゃいねぇよ。きっとこれが俺の本性だったんだろ。斬って、殺して、叩き潰して、それが俺だ。」

彼、クロアは8年ほど前には純朴な少年だった。
平和を望み、それが叶えられなかった少年でもある。

「全く……こうなると分かっているなら冒険者になれなど言わなければ良かった。これでは可愛げが全く無いではないか。」
「生憎と可愛い可愛いクロア君はもうどこにもいねぇよ。そのままだったら今頃魔物の骸が山積みだ。」

彼はまず、軟弱な体を捨てた。
自身に掛けられた呪いを解き、抑えられていた体の成長を元あるべき姿へと戻したのだ。

「だからと言って口調まで変えることはなかっただろう?これではまるで不良だ。」
「あんな喋り方じゃ泊がつかねぇだろうが。誰も寄り付かなくなるぐらいが丁度いいんだよ。」

そして、元あった気性を捨てた。
気の荒い冒険者と行動し、それを真似た。

「その剣を手に取るだけで震えていたと言うのに……今では片手剣扱いか。化け物か己は。」
「化け物結構だ。女が寄り付かなくなるなら何だってするぜ?俺は。」

そして、自らを『化け物』と称するまでに力を求めた。
サラを師として仰いで技を磨いた。
怪力を振るうための手袋『グレイプル』を手にし、己の魔力を弾として撃ち出す武器、『ミタク』と『ナハト』をドワーフと共に創り上げた。
この八年間、彼はただひたすらに強くなる事と、無慈悲になることを念頭に置いて鍛錬してきた。
その結果、彼の性根はねじれにねじれて元の形状が分からなくなってしまったのだが。

「それは私を女として見てないと言う事か?」
「あんたは俺の師匠だろうが。それ以上でもそれ以下でもねぇ。第一初めて会った時から眼中にすら無かっただろうが。」

彼女はその言葉にギクりとすると、気を取り直すように咳払いを一つ。

「とにかく、だ。今日のクエストはこれで終いだ。ギルドに帰って報告するぞ。」
「面倒くせぇ……師匠、代わりにやっておいてくれないか?」
「何を言う。こういう雑用は弟子の仕事だろうが。」

「まぁまぁ、今回は俺が片付けたんですから事務の方は師匠がやっておいて下さいよ。」

ヴァーダントに手を掛けるクロア。

「こういうこともしないとお前が成長しない。やれ。」

腰の双剣に手を伸ばすサラ。
双方の間に剣呑な空気が流れる。

「久しぶりに……殺るか?」
「そうだな。偶にはお前の成長を見てみたいからな。」

そして、双方が動き、激突した。



クロアが掬い上げるようにヴァーダントを振るう。
それをサラがサイドステップを踏んで躱すと、脇腹に突き刺すように双剣の一本を突き出した。
無論大人しく当たるわけもなく、ナハトを引きぬいて受け止めてそのまま引き金を引いて魔力弾を胴に撃ち込む。
無論これだけで倒れるほどサラもやわではない。
数メートル弾かれただけで全くの無傷だ。

「相変わらず素早いな、師匠は。まともに当てられる気がしねぇや。」
「と言いながらしっかり一発叩き込んでくるお前に言われたくはないがな。」

無傷の一発だろうに、と内心舌打ちしながらヴァーダントをホルダーへと戻し、ミタクも引き抜く。
二つをサラへ向けて構えると再び膠着状態に。

「お先にどうぞ?」
「いいや、お前が動け。ハンデだ。」

クロアが片眉を上げ、ため息を付くとナハトとミタクを取り落とした。
それを見たサラが突っ込んでくる。

「大当たりだ!」

足でミタクとナハトを蹴り上げて再び手に取るとサラへ向けて乱射。
弾かれ、躱されるが何発か掠った。
双剣を銃で受け止め、受け流し、さらに隙を見て撃ち返す。
その度に躱し、躱され、掠り、掠られと応酬が続く。

「ッハァ!」
「ッ!」

魔力を凝縮。二丁に一気に流しこんで腕を交差させ、一気に解放する。
モロに食らってサラが10メートルほどノーバウンドで吹っ飛び、家屋の壁へ激突した。

「フルバーストの味はどうだい?お師匠さんよ。」

この銃を作ったドワーフはこういう方面は異常に器用だ。
故にこんな芸当も可能ということだ。

「いささか……効いたな。だが……」

めり込んだ壁から自身を引きぬいて首を鳴らす。

「行動不能になる程ではない。まだまだだな。」
「そりゃ残念。うまくいきゃトカゲクッキーでも出来るかと思ったんだけどな。」

再度双剣を構え直すサラ。今度は、本気の目だ。
クロアも銃をホルスターへ戻し、ヴァーダントを引き抜く。

「来いよ、メストカゲ。尻尾切りしても泣くんじゃねぇぞ!」
「吠え面を掻くなよ?小童。失禁しても始末はしてやらんぞ!」

再び激突。戦いは陽が沈むまでに及んだ。



結局、引き分けに終わって報告書は半分ずつ書くことになったのだが。
11/09/01 20:47更新 / テラー
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■作者メッセージ
〜あとがき〜
というわけで新章『Reincarnation』の幕開けです。
のっけからグロ、猟奇、中二病バトルと飛ばしています。
そしてクロア君が不良になっています。可愛さのかけらも残っていません。誰テメェ。

この作品は不定期……というより極限世界との連動で投稿していきます。
なので更新間隔がまちまちになる可能性がありますが、ご了承下さい。

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