IFストーリー〜巣立ちと孤独〜
〜冒険者ギルド ロビー〜
「今までお世話になりました!」
朝のロビーにとあるラージマウスの声が響き渡る。声の主はニータの部下だ。
「うん、今まで有難うね。お幸せに……」
ウキウキとギルドから出ていくラージマウス。それを見送る俺とニータ。
ここのところ彼女の下から巣立っていくラージマウスをよく見る。
「そうだよね……みんないつかは気に入った人を見つけて巣立っていくんだよね。」
「お前らの場合って大抵同じ奴を好きになるんじゃないのか?」
言ってから少し戦慄する。同じ奴を好きになる=俺にニータが大量に群がってくるようなもの。
「そうなんだけどねぇ〜……アルがいつまでもフラフラしているから皆いい人を見つけて行っちゃうんだ。」
「あはは……そりゃよか……残念だったな。」
おっと危ない……つい本音が出そうになった。流石に十人二十人もニータと同じような奴に弄くり回されたら身がもたないからな。
「……ねぇ、本当に身を固める気は無いの?」
「少なくとも今の所は、な。こっちとしてもやるべき事を終わらせない内に人生設計立てろと言われても困ると言うか。」
「……甲斐性無し。」
ボソリと言われて言葉に詰まるが、結局俺達は戦場を渡り歩く根無し草だ。甲斐性なんてある方が珍しいだろう。だからと言って全てを投げ出す気は毛頭ないが。
「ま、俺がこっちに来た目的を全部終わらせたら考えておくさ。」
「……それじゃ遅いんだけどな。」
本当に俺に聞こえない程度の声でニータが何かをつぶやいた。
さて……今日も元気にお仕事でもしますか。
〜ギルド宿舎 アルテア自室〜
時刻は夕暮れ時。依頼を消化して帰ってきて自室の扉を開けようとした時、違和感に気づく。
「(鍵が……開いている?)」
デザートイーグルを展開し、静かに扉を押し開く。部屋の中は明かり一つついておらず、ほぼ真っ暗の状態だ。
警戒しながら隙間から部屋の中を覗き込むと、ベッドに誰かが座っている。
身長から言って子供程度……アニスちゃんとメイはロビーで会ったし、エルファはサバトの黒ミサが近いとかで魔術師ギルドに篭りきりだ。となると……
「ニータか?」
「あ……アル、おかえり……」
その小さな人影は確かにニータの声で返してきた。今までも彼女が俺の部屋に忍び込んできた事は多々あったが、今回はどうも様子が違う。
「どうした、明かりも点けないで。」
「ん……少し、寂しくてアルの事を待ってたんだ。」
いつもと様子が違う彼女に訝しみながらも彼女の隣に腰掛ける。すると、彼女は頭をこちらへもたせかけて寄りかかってきた。今日の彼女は、やけにしおらしい。
「今朝の子の事……覚えてる?」
「ん、あぁ……群れを離れるとか言ってた奴か。それがどうした?」
彼女がぎゅっと俺の袖を掴んできた。ラプラスは……空気を読んでいるのか何も喋らない。
「あの子……私達の群れの最後の子だったんだ。」
「それって……」
俺を見上げてくる瞳が漏れ差してくる夕日に反射してキラリと光る。
「あたし……一人になっちゃった……」
「…………」
それは、信じられない事だった。普通は群れで暮らすラージマウスが孤立するなどありえない事だからだ。もしかしたらその状況を……俺が作ってしまったのではないか?
「はは……これじゃ情報屋も続けられないや。ただのコソドロが一匹出来上がっただけ……笑っちゃうよね、ほんと。」
「ニータ……」
益々強くしがみついてくる彼女に、俺はただ腕を回して抱きしめてやるぐらいしかできなかった。
「寂しいよ……ねぇ、あたし寂しいの。」
ここで「俺がいる」と言ってしまうのは簡単だ。
しかし、彼女にとっては群れでいることがアイデンティティの一つなのだ。軽々しく言えるはずがない……。
「アル……アルゥ……」
その小柄な体躯からは想像もつかないほどの力で押し倒される。彼女は凄まじい手際で俺の服を全て剥ぎとってしまった。
「おい、ニータ……何を……」
「一人はやだよぉ……寂しいよぉ……」
そして自らの服も剥ぎとり、秘所を俺のモノに擦りつけてくる。何かに取り憑かれたのように一心不乱にこすり続けるニータに若干の恐怖を覚えたが、この状態のニータを拒絶したくない。
「ね、あたし……欲しいものがあるんだ……」
「……」
「赤ちゃん、欲しい……寂しくなくなるぐらいいっぱい欲しいよ……」
子供。彼女の望み。
そして、彼女が欲しがるものを作るための方法は既に俺が持っている。あとは、俺が頷くだけでいい。しかし……本当にいいのか?俺はいつか元の世界へ帰る。その時に大勢の子供を残して、しかも俺の精に依存することになるニータを置いて帰るのか?
「……ごめんね、やっぱり……迷惑だよね。いきなり子供を作れなんて簡単に頷いてくれる訳ないもん。」
痛々しげに微笑んで俺から離れようとするニータ。
こんなに辛そうなのに……放って置ける訳が無いだろうが……!
「いいよ。」
「ぇ……」
そっと離れようとする彼女に手を伸ばして抱きしめた。
少なくとも、俺はこいつを拒絶するべきではない。
「……同情?」
「それも、ある。けどな……」
「俺、元々親がいなくてさ。今の親代わりの人に拾われたんだ。もし……俺があの時誰にも拾われなかったら一人でどうしようも無くなっていたと思う。」
自分の過去を、封じ込めた感情を吐き出すように告白する。
「お前はもう一人で生きていけると思うけど……やっぱり一人は不安だよな。だから、俺みたいな『もしも』を無くしたい。お前を一人には……したくない。」
「……ほんとに?」
「あぁ、俺は一生お前の側にいる。子供だって欲しいだけ作ろう。」
もはや決意は固まった。引き返すつもりも毛頭無い。俺はこの寂しがり屋な子鼠と一生連れ添う事にしよう。
「なんでだろ……妙に緊張するよ。」
「今までとは理由が違うからじゃないか?」
ニータをベッドの上に寝かせ、股を開かせる。
日は既に沈んでいたので、室内の明かりは蝋燭のみだ。……点ける時にニータがその蝋燭を物欲しそうな目で見ていたが、無視した。
「どういうこと?」
「今からするのが気持ちを味わうためじゃなくて完全に子供をつくるためだから、じゃないか?」
言った途端に彼女の顔から湯気が立ち上るほどに真っ赤になった。今更過ぎて少し笑えてきたのは内緒だ。
「うわ……アルに孕まされちゃうんだ……なんだかゾクゾクしてきた。」
「その言い方は卑猥すぎだ……。」
そっと彼女の秘部へ顔を寄せ、割れ目を手で割り開く。綺麗なサーモンピンクのクレバスの上にちょこんと小さい突起が顔を覗かせていた。
それを優しく舌でいじくり回す。
「んく……なんだか、変な感じ。優しくされるのって調子狂うよ……」
「そんじゃもう少し強めに……」
舌でクリトリスを押しつぶすように愛撫し、時たま前歯を引っ掛ける。
歯が触れる度にビクビクと下半身が痙攣していた。……普通は痛いからやっちゃだめだぜ?
「ひくっ……!それ、いた……けど……きもちいいよぉ……」
「お前ホントマゾな。」
敏感な突起を嬲る度に膣口から愛液が溢れ出し、シーツにシミを作っていく。
ほのかに酸っぱく、ミルクのように甘い香りが立ち上ってくる。あぁ、なんというか……凄く興奮するよな、この匂いは。変態?男は皆変態だ。もう開き直った。
「ある、あるぅ……もういいからぁ……」
「ん〜……もうちょっとな。」
確かに準備は整いすぎているほどだ。
ニータの秘所は完全に濡れそぼり、ピンク色の穴は物欲しそうにピクピクと痙攣している。
指を差し込むとそれがモノでは無いにも関わらず精液を搾り出そうと積極的に絡み付いてくる程だ。
しかし、この時の俺は完全に彼女の痴態に酔っていたのだろう。無性に一度イかせてみたくなっていたのだ。
「んむ……ちゅぅ……」
「ッヒ……!だめ、それだめ、や、やらぁ……!」
クリトリスに吸い付いて舌で弾くように弄り回す。彼女は俺の頭に手を置いて逃がし切れない快感に頭をイヤイヤするように振っていた。
彼女から立ち上る雌の匂いも一気に強くなり、部屋の中に充満した……ような気がした。
「こわれひゃう、こわれひゃうから、しょれやめ……」
言葉を遮るように突起を強く吸うと、彼女から声が消え失せる。
恐らくは強すぎる快感に言葉を発することができなくなっているのだろう。というか、間違いない。
何故かって?さっきからひっきりなしに彼女が吹いた潮が首辺りに掛かっているからだよ。
「っは……っは……すご、かったぁ……」
「ホントにな……見ろよ、シャツまでびしょびしょだ。」
彼女自身のものでぐっしょりと濡れたシャツを見せてやると、ろうそくの灯りという分を差し引いても真っ赤になった。眼福だね。
「アルってさぁ……本当に意地悪だよね。」
「好きな奴ほど意地悪したくなるってもんだろ?」
本当に自然にその言葉が出てきて、自分でも軽く驚く。なんだ……俺も何だかんだ理由を付けなくても素直に誰かを好きといえるじゃないか。
「やだ……見ないで。多分今物凄くだらし無い顔してる。」
「それを許すと思うてか」
いくら魔物が人間より体力的に勝っているとはいえ、ろくに抵抗する気もなければねじ伏せるのは簡単だ。
顔を隠す両手をどけてベッドへ押し付けると、そこには真っ赤になって盛大ににやけるニータ(最愛の人)の顔があった。
無性に可愛く、愛しくなって貪るように彼女の唇を奪う。
舌が絡みあい、歯茎をなぞる度にお互いが高まっていく。
息が苦しくなって口を離すと舌と舌の間に銀色に光る唾液の橋が掛かった。
お互いに息を切らせて情欲に潤んだ互いの目を見つめ合っていた。
「ニータ、お前が……欲しい。」
「今更、だよ。元からあたしは全部アルの物だもん。」
ズボンのベルトを外す手間がやたらもどかしい。
早く彼女と繋がりたい。愛し合いたい。気持ちを分かち合いたい。
これじゃまるで童貞の思考だな……。
「きて……」
「あぁ、行くぞ……!」
ようやくズボンを脱ぎ終わり、早々に彼女の秘部へ当てがって一気に突き込む。
狭い膣内はきゅうきゅうとモノを締め付けながら待ち侘びた快感に打ち震えるように痙攣している。
また、彼女の尻尾は俺の太ももに巻き付いて一時も離れたくないという意思表示か何かのようでもあった。
「きゅ……」
「……?どうした、ニータ」
しかし、彼女の様子がいつもと違う。
いつもであれば快楽で蕩けきったような表情をするのに、今回はどこか切なそうな……それでいて酷く嬉しそうな顔をしているのだ。
「嬉しいの……気持ちが一方通行じゃなくなったから……そう思ったら……嬉しいのが止まらなくて……」
「……馬鹿だな、お前は。」
彼女の柔らかい前髪をかき上げて彼女の瞳を覗き込む。
彼女の目は不安とか、期待とか、そんな物がごちゃまぜになった凄まじい目をしていたな。
「少なくとも……嫌いな奴を抱くことなんてありえないだろ?ずっと前から、お前のことは好きだったさ。ただ、他の誰かと遜色なかっただけでな。」
「……今は?」
そう聞かれて言葉に詰まった。
別に誰かに気が移ったとかそういうのではない。只単に……気恥ずかしかったからだ。
「言わせんな……」
「やだ、言って。」
自然に出てくる分にはまだいいのだが、要求されて言うのはまた別の感慨があるものだ。
どのぐらい違うかというと、誰にも聞かれていない鼻歌を歌うのとコンサートホールの大勢の観客の前で歌うのぐらいは違う。
「今は……お前が一番好きだ。」
言った途端に彼女の締め付けが一段と強くなる。
ゾクゾクと体全体が震え上がり、眼がより一層潤んでいく。
なんつーかまぁ……罪作りだよな、俺も。
「あたしも大好きだよ……世界で一番、誰よりも。」
お互いに恥ずかしくて仕方ない筈なのに、お互いの顔から視線を外すことができない。
自然と顔の距離が近づき、どちらともなく唇が重なる。
そしてそれだけじゃ足りないとばかりに二人共が腰をゆっくりと動かし始める。
薄暗く静かな部屋の中、2つの粘ついた水音がやけに大きく聞こえてきた。
「ニータ、そろそろ……出そうだ……!」
「ん、来て……!一滴残らず、あたしの中に……!」
抽送の速度が絶頂へ向けて加速度的に高まり、部屋の中に二人の荒い息の音と断続的に聞こえる水音が反響する。
もう既にお互いの眼にはお互いの顔しか映っておらず、今この瞬間だけは完全に二人だけの世界になっていた。
そして絶頂の瞬間に彼女の最奥へとモノを押し付け、子宮口へと密着させる。
次の瞬間には普段からは考えつかない程の量の精液が彼女の中へと注ぎ込まれていた。
「ふくっ……ぁ……!」
「はぁぁぁぁぁあ……♪」
俺からは精液を根こそぎ吸い取られて魂が吸われていくかのようなうめき声が、ニータからは中に大量の欲望が注ぎ込まれた事による恍惚と喜悦のため息が漏れ出す。
漏れ出す音は違えど、二人が感じるものはこの時全く同じだったのは間違いない。
「ある……いつまでも……一緒だよ……」
「ん……大丈夫だ。絶対に手を離したりするものか。」
体の下で快感の余韻に震える小さな体をそっと抱きしめる。
たとえどんな事があろうとも、離さないように……。
それからも俺達は暇を見ては何度も体を重ねた。
いくら繁殖力の高いラージマウスといえど、やはりそこは魔物だ。人間との子供というのはできにくい。
それでも諦めずに何度も体を重ねていたのだが……無情にもエクセルシアは全て集まり、向こうに帰る時が来てしまった。
……ま、こんな時に俺が取る行動なんてわかりきっているだろう?
向こうへ帰るためのゲートが開いた時にニータを呼び寄せて小脇に抱え、その中に飛び込んだんだ。周りの連中の唖然とした様子と言ったらなかったね。
で、向こうについてわかったんだが、ようやく彼女が懐妊している事が判明した。
ニータの奴、飛び上がらんばかりに喜んでいたな。(この時姉さんに殺されかけたのは言うまでもない)
……で、生まれてきた子供達に俺とニータはある事を施すことにした。無論、ニータも含めてだが。
脳チップの埋め込み処理だ。
有機AIを介さずにお互いと情報をリンクして通信が可能となるもので、世界のどこに居ようとも通話、情報のやり取りができる優れものだ。
さらにこの脳チップ、特殊な動作もする。
この脳チップを所持するラージマウスが妊娠すると、ナノマシンを作成して胎児の脳内に潜り込み、脳チップを形成し始める。
この行動は親から子、子から孫へと受け継がれる物で、そのチップのネットワークは子供が増えれば増えるほど拡大していく事になる。
この技術を開発してくれた先輩の従姉妹には感謝してもしきれないぐらいだ。
なにしろこの脳チップがある限りニータは孤独になりえない。常に家族と繋がっている事になるからだ。
そして俺とニータは生まれた子供を引き連れて再び元の世界へと戻っていった。
今は冒険者から足を洗い、モイライで広域ネットワークを駆使した情報屋で生計を立てている。
子供の数は既に3桁を超えようとしている。もうすぐ『ワイヤレスマウス』なんて新しい種族を名乗れそうな気がしなくもない。
いくら何でも作りすぎだとは思うが……妊娠する度に愛しそうに大きくなったお腹を撫でる彼女を見ていると別にいいか、とも思えてしまうんだよな。
……余談だが、何故か5分の一ぐらいの娘から言い寄られていたりする。
さらにその半分ぐらいは既に肉体関係が……。
親子間の近親相姦をそこまでタブー視しないのは知っていたが……なんだか複雑だ。
ニータもさほど気にしていない辺り俺の中の常識が近い内に粉微塵に破壊されそうで怖い。
……もしかしたらもう既に破壊されているのかもしれないが。
「アル、リサからテルモの街の物品取引相場の情報が来てるよ。回す所はいつもの商人ギルドでいいかな?」
「あぁ、それでいい。っと……トウモロコシの値段が結構下がってるな。結構いい値で買い取ってもらえそうだな。」
情報の集積所である俺達の家兼事務所には世界中に散らばった子供達からひっきりなしに些細なうわさ話から市場の取引相場、果ては戦争の前兆までありとあらゆる情報が舞い込んでくる。
それをしかる所に適正な値段で売りつけるのが今の家業となっている。
「ね、アル。」
「ん、なんだ?」
忙しく受け取った情報を整理し、取引先にいる娘へ送信しているとニータが抱きついてきた。
その表情は幸せそうに緩みきっている。
「忙しいけど……幸せだね。」
「あぁ、全くだ。」
彼女の肩を抱き寄せ、柔らかな髪を撫でてやるとうっとりと目を閉じる。
「あー!パパとママがイチャイチャしてるー!」
「ずるい!あたしも混ぜてー!」
……俺は今、最高に幸せだ。
俺が知っている一般的な家族とは違うが……賑やかな家族に囲まれて生きることができるのだから。
願わくば、この忙しくも幸せな日々が永く続きますように……
「今までお世話になりました!」
朝のロビーにとあるラージマウスの声が響き渡る。声の主はニータの部下だ。
「うん、今まで有難うね。お幸せに……」
ウキウキとギルドから出ていくラージマウス。それを見送る俺とニータ。
ここのところ彼女の下から巣立っていくラージマウスをよく見る。
「そうだよね……みんないつかは気に入った人を見つけて巣立っていくんだよね。」
「お前らの場合って大抵同じ奴を好きになるんじゃないのか?」
言ってから少し戦慄する。同じ奴を好きになる=俺にニータが大量に群がってくるようなもの。
「そうなんだけどねぇ〜……アルがいつまでもフラフラしているから皆いい人を見つけて行っちゃうんだ。」
「あはは……そりゃよか……残念だったな。」
おっと危ない……つい本音が出そうになった。流石に十人二十人もニータと同じような奴に弄くり回されたら身がもたないからな。
「……ねぇ、本当に身を固める気は無いの?」
「少なくとも今の所は、な。こっちとしてもやるべき事を終わらせない内に人生設計立てろと言われても困ると言うか。」
「……甲斐性無し。」
ボソリと言われて言葉に詰まるが、結局俺達は戦場を渡り歩く根無し草だ。甲斐性なんてある方が珍しいだろう。だからと言って全てを投げ出す気は毛頭ないが。
「ま、俺がこっちに来た目的を全部終わらせたら考えておくさ。」
「……それじゃ遅いんだけどな。」
本当に俺に聞こえない程度の声でニータが何かをつぶやいた。
さて……今日も元気にお仕事でもしますか。
〜ギルド宿舎 アルテア自室〜
時刻は夕暮れ時。依頼を消化して帰ってきて自室の扉を開けようとした時、違和感に気づく。
「(鍵が……開いている?)」
デザートイーグルを展開し、静かに扉を押し開く。部屋の中は明かり一つついておらず、ほぼ真っ暗の状態だ。
警戒しながら隙間から部屋の中を覗き込むと、ベッドに誰かが座っている。
身長から言って子供程度……アニスちゃんとメイはロビーで会ったし、エルファはサバトの黒ミサが近いとかで魔術師ギルドに篭りきりだ。となると……
「ニータか?」
「あ……アル、おかえり……」
その小さな人影は確かにニータの声で返してきた。今までも彼女が俺の部屋に忍び込んできた事は多々あったが、今回はどうも様子が違う。
「どうした、明かりも点けないで。」
「ん……少し、寂しくてアルの事を待ってたんだ。」
いつもと様子が違う彼女に訝しみながらも彼女の隣に腰掛ける。すると、彼女は頭をこちらへもたせかけて寄りかかってきた。今日の彼女は、やけにしおらしい。
「今朝の子の事……覚えてる?」
「ん、あぁ……群れを離れるとか言ってた奴か。それがどうした?」
彼女がぎゅっと俺の袖を掴んできた。ラプラスは……空気を読んでいるのか何も喋らない。
「あの子……私達の群れの最後の子だったんだ。」
「それって……」
俺を見上げてくる瞳が漏れ差してくる夕日に反射してキラリと光る。
「あたし……一人になっちゃった……」
「…………」
それは、信じられない事だった。普通は群れで暮らすラージマウスが孤立するなどありえない事だからだ。もしかしたらその状況を……俺が作ってしまったのではないか?
「はは……これじゃ情報屋も続けられないや。ただのコソドロが一匹出来上がっただけ……笑っちゃうよね、ほんと。」
「ニータ……」
益々強くしがみついてくる彼女に、俺はただ腕を回して抱きしめてやるぐらいしかできなかった。
「寂しいよ……ねぇ、あたし寂しいの。」
ここで「俺がいる」と言ってしまうのは簡単だ。
しかし、彼女にとっては群れでいることがアイデンティティの一つなのだ。軽々しく言えるはずがない……。
「アル……アルゥ……」
その小柄な体躯からは想像もつかないほどの力で押し倒される。彼女は凄まじい手際で俺の服を全て剥ぎとってしまった。
「おい、ニータ……何を……」
「一人はやだよぉ……寂しいよぉ……」
そして自らの服も剥ぎとり、秘所を俺のモノに擦りつけてくる。何かに取り憑かれたのように一心不乱にこすり続けるニータに若干の恐怖を覚えたが、この状態のニータを拒絶したくない。
「ね、あたし……欲しいものがあるんだ……」
「……」
「赤ちゃん、欲しい……寂しくなくなるぐらいいっぱい欲しいよ……」
子供。彼女の望み。
そして、彼女が欲しがるものを作るための方法は既に俺が持っている。あとは、俺が頷くだけでいい。しかし……本当にいいのか?俺はいつか元の世界へ帰る。その時に大勢の子供を残して、しかも俺の精に依存することになるニータを置いて帰るのか?
「……ごめんね、やっぱり……迷惑だよね。いきなり子供を作れなんて簡単に頷いてくれる訳ないもん。」
痛々しげに微笑んで俺から離れようとするニータ。
こんなに辛そうなのに……放って置ける訳が無いだろうが……!
「いいよ。」
「ぇ……」
そっと離れようとする彼女に手を伸ばして抱きしめた。
少なくとも、俺はこいつを拒絶するべきではない。
「……同情?」
「それも、ある。けどな……」
「俺、元々親がいなくてさ。今の親代わりの人に拾われたんだ。もし……俺があの時誰にも拾われなかったら一人でどうしようも無くなっていたと思う。」
自分の過去を、封じ込めた感情を吐き出すように告白する。
「お前はもう一人で生きていけると思うけど……やっぱり一人は不安だよな。だから、俺みたいな『もしも』を無くしたい。お前を一人には……したくない。」
「……ほんとに?」
「あぁ、俺は一生お前の側にいる。子供だって欲しいだけ作ろう。」
もはや決意は固まった。引き返すつもりも毛頭無い。俺はこの寂しがり屋な子鼠と一生連れ添う事にしよう。
「なんでだろ……妙に緊張するよ。」
「今までとは理由が違うからじゃないか?」
ニータをベッドの上に寝かせ、股を開かせる。
日は既に沈んでいたので、室内の明かりは蝋燭のみだ。……点ける時にニータがその蝋燭を物欲しそうな目で見ていたが、無視した。
「どういうこと?」
「今からするのが気持ちを味わうためじゃなくて完全に子供をつくるためだから、じゃないか?」
言った途端に彼女の顔から湯気が立ち上るほどに真っ赤になった。今更過ぎて少し笑えてきたのは内緒だ。
「うわ……アルに孕まされちゃうんだ……なんだかゾクゾクしてきた。」
「その言い方は卑猥すぎだ……。」
そっと彼女の秘部へ顔を寄せ、割れ目を手で割り開く。綺麗なサーモンピンクのクレバスの上にちょこんと小さい突起が顔を覗かせていた。
それを優しく舌でいじくり回す。
「んく……なんだか、変な感じ。優しくされるのって調子狂うよ……」
「そんじゃもう少し強めに……」
舌でクリトリスを押しつぶすように愛撫し、時たま前歯を引っ掛ける。
歯が触れる度にビクビクと下半身が痙攣していた。……普通は痛いからやっちゃだめだぜ?
「ひくっ……!それ、いた……けど……きもちいいよぉ……」
「お前ホントマゾな。」
敏感な突起を嬲る度に膣口から愛液が溢れ出し、シーツにシミを作っていく。
ほのかに酸っぱく、ミルクのように甘い香りが立ち上ってくる。あぁ、なんというか……凄く興奮するよな、この匂いは。変態?男は皆変態だ。もう開き直った。
「ある、あるぅ……もういいからぁ……」
「ん〜……もうちょっとな。」
確かに準備は整いすぎているほどだ。
ニータの秘所は完全に濡れそぼり、ピンク色の穴は物欲しそうにピクピクと痙攣している。
指を差し込むとそれがモノでは無いにも関わらず精液を搾り出そうと積極的に絡み付いてくる程だ。
しかし、この時の俺は完全に彼女の痴態に酔っていたのだろう。無性に一度イかせてみたくなっていたのだ。
「んむ……ちゅぅ……」
「ッヒ……!だめ、それだめ、や、やらぁ……!」
クリトリスに吸い付いて舌で弾くように弄り回す。彼女は俺の頭に手を置いて逃がし切れない快感に頭をイヤイヤするように振っていた。
彼女から立ち上る雌の匂いも一気に強くなり、部屋の中に充満した……ような気がした。
「こわれひゃう、こわれひゃうから、しょれやめ……」
言葉を遮るように突起を強く吸うと、彼女から声が消え失せる。
恐らくは強すぎる快感に言葉を発することができなくなっているのだろう。というか、間違いない。
何故かって?さっきからひっきりなしに彼女が吹いた潮が首辺りに掛かっているからだよ。
「っは……っは……すご、かったぁ……」
「ホントにな……見ろよ、シャツまでびしょびしょだ。」
彼女自身のものでぐっしょりと濡れたシャツを見せてやると、ろうそくの灯りという分を差し引いても真っ赤になった。眼福だね。
「アルってさぁ……本当に意地悪だよね。」
「好きな奴ほど意地悪したくなるってもんだろ?」
本当に自然にその言葉が出てきて、自分でも軽く驚く。なんだ……俺も何だかんだ理由を付けなくても素直に誰かを好きといえるじゃないか。
「やだ……見ないで。多分今物凄くだらし無い顔してる。」
「それを許すと思うてか」
いくら魔物が人間より体力的に勝っているとはいえ、ろくに抵抗する気もなければねじ伏せるのは簡単だ。
顔を隠す両手をどけてベッドへ押し付けると、そこには真っ赤になって盛大ににやけるニータ(最愛の人)の顔があった。
無性に可愛く、愛しくなって貪るように彼女の唇を奪う。
舌が絡みあい、歯茎をなぞる度にお互いが高まっていく。
息が苦しくなって口を離すと舌と舌の間に銀色に光る唾液の橋が掛かった。
お互いに息を切らせて情欲に潤んだ互いの目を見つめ合っていた。
「ニータ、お前が……欲しい。」
「今更、だよ。元からあたしは全部アルの物だもん。」
ズボンのベルトを外す手間がやたらもどかしい。
早く彼女と繋がりたい。愛し合いたい。気持ちを分かち合いたい。
これじゃまるで童貞の思考だな……。
「きて……」
「あぁ、行くぞ……!」
ようやくズボンを脱ぎ終わり、早々に彼女の秘部へ当てがって一気に突き込む。
狭い膣内はきゅうきゅうとモノを締め付けながら待ち侘びた快感に打ち震えるように痙攣している。
また、彼女の尻尾は俺の太ももに巻き付いて一時も離れたくないという意思表示か何かのようでもあった。
「きゅ……」
「……?どうした、ニータ」
しかし、彼女の様子がいつもと違う。
いつもであれば快楽で蕩けきったような表情をするのに、今回はどこか切なそうな……それでいて酷く嬉しそうな顔をしているのだ。
「嬉しいの……気持ちが一方通行じゃなくなったから……そう思ったら……嬉しいのが止まらなくて……」
「……馬鹿だな、お前は。」
彼女の柔らかい前髪をかき上げて彼女の瞳を覗き込む。
彼女の目は不安とか、期待とか、そんな物がごちゃまぜになった凄まじい目をしていたな。
「少なくとも……嫌いな奴を抱くことなんてありえないだろ?ずっと前から、お前のことは好きだったさ。ただ、他の誰かと遜色なかっただけでな。」
「……今は?」
そう聞かれて言葉に詰まった。
別に誰かに気が移ったとかそういうのではない。只単に……気恥ずかしかったからだ。
「言わせんな……」
「やだ、言って。」
自然に出てくる分にはまだいいのだが、要求されて言うのはまた別の感慨があるものだ。
どのぐらい違うかというと、誰にも聞かれていない鼻歌を歌うのとコンサートホールの大勢の観客の前で歌うのぐらいは違う。
「今は……お前が一番好きだ。」
言った途端に彼女の締め付けが一段と強くなる。
ゾクゾクと体全体が震え上がり、眼がより一層潤んでいく。
なんつーかまぁ……罪作りだよな、俺も。
「あたしも大好きだよ……世界で一番、誰よりも。」
お互いに恥ずかしくて仕方ない筈なのに、お互いの顔から視線を外すことができない。
自然と顔の距離が近づき、どちらともなく唇が重なる。
そしてそれだけじゃ足りないとばかりに二人共が腰をゆっくりと動かし始める。
薄暗く静かな部屋の中、2つの粘ついた水音がやけに大きく聞こえてきた。
「ニータ、そろそろ……出そうだ……!」
「ん、来て……!一滴残らず、あたしの中に……!」
抽送の速度が絶頂へ向けて加速度的に高まり、部屋の中に二人の荒い息の音と断続的に聞こえる水音が反響する。
もう既にお互いの眼にはお互いの顔しか映っておらず、今この瞬間だけは完全に二人だけの世界になっていた。
そして絶頂の瞬間に彼女の最奥へとモノを押し付け、子宮口へと密着させる。
次の瞬間には普段からは考えつかない程の量の精液が彼女の中へと注ぎ込まれていた。
「ふくっ……ぁ……!」
「はぁぁぁぁぁあ……♪」
俺からは精液を根こそぎ吸い取られて魂が吸われていくかのようなうめき声が、ニータからは中に大量の欲望が注ぎ込まれた事による恍惚と喜悦のため息が漏れ出す。
漏れ出す音は違えど、二人が感じるものはこの時全く同じだったのは間違いない。
「ある……いつまでも……一緒だよ……」
「ん……大丈夫だ。絶対に手を離したりするものか。」
体の下で快感の余韻に震える小さな体をそっと抱きしめる。
たとえどんな事があろうとも、離さないように……。
それからも俺達は暇を見ては何度も体を重ねた。
いくら繁殖力の高いラージマウスといえど、やはりそこは魔物だ。人間との子供というのはできにくい。
それでも諦めずに何度も体を重ねていたのだが……無情にもエクセルシアは全て集まり、向こうに帰る時が来てしまった。
……ま、こんな時に俺が取る行動なんてわかりきっているだろう?
向こうへ帰るためのゲートが開いた時にニータを呼び寄せて小脇に抱え、その中に飛び込んだんだ。周りの連中の唖然とした様子と言ったらなかったね。
で、向こうについてわかったんだが、ようやく彼女が懐妊している事が判明した。
ニータの奴、飛び上がらんばかりに喜んでいたな。(この時姉さんに殺されかけたのは言うまでもない)
……で、生まれてきた子供達に俺とニータはある事を施すことにした。無論、ニータも含めてだが。
脳チップの埋め込み処理だ。
有機AIを介さずにお互いと情報をリンクして通信が可能となるもので、世界のどこに居ようとも通話、情報のやり取りができる優れものだ。
さらにこの脳チップ、特殊な動作もする。
この脳チップを所持するラージマウスが妊娠すると、ナノマシンを作成して胎児の脳内に潜り込み、脳チップを形成し始める。
この行動は親から子、子から孫へと受け継がれる物で、そのチップのネットワークは子供が増えれば増えるほど拡大していく事になる。
この技術を開発してくれた先輩の従姉妹には感謝してもしきれないぐらいだ。
なにしろこの脳チップがある限りニータは孤独になりえない。常に家族と繋がっている事になるからだ。
そして俺とニータは生まれた子供を引き連れて再び元の世界へと戻っていった。
今は冒険者から足を洗い、モイライで広域ネットワークを駆使した情報屋で生計を立てている。
子供の数は既に3桁を超えようとしている。もうすぐ『ワイヤレスマウス』なんて新しい種族を名乗れそうな気がしなくもない。
いくら何でも作りすぎだとは思うが……妊娠する度に愛しそうに大きくなったお腹を撫でる彼女を見ていると別にいいか、とも思えてしまうんだよな。
……余談だが、何故か5分の一ぐらいの娘から言い寄られていたりする。
さらにその半分ぐらいは既に肉体関係が……。
親子間の近親相姦をそこまでタブー視しないのは知っていたが……なんだか複雑だ。
ニータもさほど気にしていない辺り俺の中の常識が近い内に粉微塵に破壊されそうで怖い。
……もしかしたらもう既に破壊されているのかもしれないが。
「アル、リサからテルモの街の物品取引相場の情報が来てるよ。回す所はいつもの商人ギルドでいいかな?」
「あぁ、それでいい。っと……トウモロコシの値段が結構下がってるな。結構いい値で買い取ってもらえそうだな。」
情報の集積所である俺達の家兼事務所には世界中に散らばった子供達からひっきりなしに些細なうわさ話から市場の取引相場、果ては戦争の前兆までありとあらゆる情報が舞い込んでくる。
それをしかる所に適正な値段で売りつけるのが今の家業となっている。
「ね、アル。」
「ん、なんだ?」
忙しく受け取った情報を整理し、取引先にいる娘へ送信しているとニータが抱きついてきた。
その表情は幸せそうに緩みきっている。
「忙しいけど……幸せだね。」
「あぁ、全くだ。」
彼女の肩を抱き寄せ、柔らかな髪を撫でてやるとうっとりと目を閉じる。
「あー!パパとママがイチャイチャしてるー!」
「ずるい!あたしも混ぜてー!」
……俺は今、最高に幸せだ。
俺が知っている一般的な家族とは違うが……賑やかな家族に囲まれて生きることができるのだから。
願わくば、この忙しくも幸せな日々が永く続きますように……
12/01/16 22:14更新 / テラー
戻る
次へ