一目惚れで忘れていたもの
何だこの人???
これが今の私の夫の第一印象。
合コンの席で出会った一人の男性に、私は一目惚れ?してしまった笑い話のことを話そう。
うんたぶん一目惚れ。いやー。でもなんだろうなーあれ。直感ではあるんだけど。
なぜ笑い話なのかは最後まで聞いてほしい。君たちと私との間の秘密だ!
隠れサキュバスである私は自分が魔物であることを隠しながら理想の人を探していた。
物語みたいに運命の人に出会えたらな、と思いながら大学生をエンジョイしている途中なのだ。
だけどそう簡単に運命の人になんか会えるわけはなくて。でもその思いを捨てきれない。
なので中途半端にいいところのお嬢様風のネコを被って生きている。
中身は結構引きこもりでずぼらで若干オタクよりなんだけど、それはモテませんし。
は?サキュバスだから美人でモテるだろって?自慢じゃないですけど美人ですよ?ええ。
はっ。外見なんぞで女を選ぶ男に興味は無い!
という捻くれたプライドを持ってしまった奴が男と付き合えると思ってるんですか!
まだ男の人と付き合ったことない行き遅れですよ!処女こじらせてますよ!
外見印象が残りづらい魔法を常時オンしてますよ!気が付いたらこれだけマスタークラス!
サキュバスらしい魅了とか誘惑とか、ヘッタクソなのにねぇ……
泥棒とかやったら監視カメラとかから絶対に身元がばれない自信がある。
結構どんくさいから途中で捕まるし、チキンだからそもそもできないんですけどね。
だから"美人のハズだけどモテないので数合わせにぴったり"というポジに収まりました。
合コンの追加メンバー枠。オマケみたいな役ですよ。話を適当に合わせて男狩りの補佐役。
そう、合コンという狩猟場に解き放たれた野獣はこの場においては間違いなく女側でしょうよ。
顔、将来性、金、と良い条件を嗅ぎ宛てて哀れな子羊ともいえる男子たちを蹂躙する肉食獣。
この辺りは男と女のパワーバランスによって決まるけど、女側から決めた場合はそんな感じ。
まぁ女の子側も必死なんだよねー。頑張ってねー。
私は自分の王子様を待ち続けているお姫様(笑)ですから。
いやー。自分で笑いをつけちゃうレベルですよ。ないわー。
周りは彼氏がどうのこうのって話をするんだけどなー。泣けてくるー。
私の魅力に気づいて!とは言えない。ガツガツする趣味は無いし主義に反する。
主義とかスタンスとかに拘るから相手が見つけられないんですよ……知ってるさ…
ワタクシ怯える子羊すら食べれない負け犬でございます……いやサキュバスだけどさ……
というわけで、やる気0の状態で皆の援護役として合コンに参加したんですよ。
男の子たちが後から入場して、ぞろぞろと集まってくるわけです。
その時に出会った、なんかぼやっとした人。背はそこそこ高いけど全然イケメンではない。
表現するなら二足歩行のアライグマ。メガネがその印象を加速させるんだろうなぁ。
ちょっとおひげの手入れとか適当だし、この人も連れてこられた印象。
やる気ないし、どうしたらいいのかわからない感じが小動物臭を醸し出してる。好みじゃないなぁ。
でも私この人と結婚するんだなぁー。
?
はぁ?
へえ???
何思った私。
え?何だこの人???
おかしいな、全然タイプじゃない。
すらっとしてない!王子様ではない!でもいい感じ!
でもなにこの歯車が噛み合った感じ!壊れたオルゴールが直った感じ!
無くしたジグソーパズルのピースが見つかったすっきりぴったり感!
ずぼらな私をそのまま嵌め込んでくれる感じ!ネコ被る必要ない!
うわぁ。マジかー。この人かぁー。
マジですか、一目惚れってやつですか。私がやるとは思わなかったよ……
気が付いたら私はその仮称巨大二足歩行メガネアライグマさんを超観察していた。
彼も私をひたすら観察している。うわぁ、めちゃめちゃ困っているような顔。
謎の硬直、というか睨み合い。
合コンで出会ったばかりで自己紹介する前の顔合わせだけの瞬間の異様な緊迫感。
凄い怪訝な顔で私は彼を見つめてたと思うし、彼も私を見つめていた。
時が止まっている感じがして、合コン会場の騒がしさが一切耳に入らない。
感性全て、集中力の全部を使って彼の情報を集めようとしてるし、集めた。
あー。いい匂い。良い香りかと言われるとそうではないんだけど、好きな匂い。
んーこう憧れの先輩の衣服を嗅ぐと感じるであろう幸せを覚えるね。
いやそんな体験は無いけど。イメージイメージ。
その間私の瞳は彼の瞳を見つめて、彼の表情を見て、固まっている彼の内面を見通す。
あれ?彼の思考がなんとなく読めるぞ?
あれれぇ?この人も同じこと考えてるな?
あららららぁ?この人もなんか噛み合っちゃた系なんだな?
あるぇー?どうやら私達、相思相愛だぞ?
メガネアライグマさんは私と相性がたぶん最高。たぶんもうこの人と結婚すれば一生幸せ。
相手も同じ気持ち。彼女いない歴=年齢の彼も童貞こじらせちゃってる人。
容姿とか気にしない、気楽な相手が居ればいい。でもそんな相手も居ないし諦めてる。
ここまで直感。凄いな直感……!
基本的に直感というものを全然信用しない私なんだけど今日ばっかりは全面的に信用しよう。
彼の手を取った私は混乱したまま取り合えず彼に声を掛けた。
手を取った瞬間、私の手のひらから伝わった彼の体温。そこからは謎の納得感を得られた。
これから先の会話はお互い頭に?マークが飛んだまま会話したので疑問形である。
「あの、会ったばっかりでなんですけど、お付き合いしませんか?」と私。
「ええと、結婚を前提に、という認識であってますよね?」と彼。
「たぶんそのはずなので、そのつもりですが?」と私。
「じゃあすぐにでも結婚します?」と彼。
「いいですよ?」と私。
周囲が硬直し制止しながら私と彼は混沌とした会話を繰り広げている。わけがわからない。
もう合コンの雰囲気ではないので私達はその場からさっさと逃走。狼と羊を置いてけぼりにする。
彼の手を取って私はそのまま歩き出して。
気が付いたらホテルで部屋を取って一緒に入っていた。
あれ?どんな流れだ?普通カフェとかデートとかしてお互いのことを話す流れだよね?
私混乱しすぎじゃない?いや、サキュバスの本能が逃すなって言ってるのかなこれ???
もうまともに考えて動いてないよね私???流石にヤバくねこれ????
でも彼の混乱っぷりは私を更に上回っていて完全に流されているな???
ん?んんん???これ?
チャンスでね?
じゅるり。
ひゃあ!食べごろの羊だ!
うあああああ!超幸せぇぇぇぇ!この人しかいないぃぃぃ!
マジ気持ちよかった。超気持よかった。きっちりぴったりきっかり合体出来た。
居るもんだねぇ運命の人って。びっくりだよー。ちゃんと初めてを残しておいてよかった−。
はぅぁーおなかン中幸せー。サキュバスやっててよかったぁぁぁー!
もうあれだね。出会うのが遅かっただけだね。神様の意地悪で出会いが遅れただけだね。
最初は相思相愛の幼馴染の予定だったんだけど、少し出会うのがズレちゃっただけなんだよ。
まぁ堕落神様に感謝しよう。ちょっと遅かったけど出会えたので万事オッケーです。
「ええと。サキュバスだったって知ったときはびっくりしたけど、大丈夫なの?」
なんのことだろう。私の稚拙な魅了と誘惑をフル活用して超ハッスルしちゃったんだけど。
「誘惑されたまま襲っちゃったんだけどさ、ほら。さすがに……」
「ああ。そーね。だいじょーぶ。だいじょーぶ。魔物娘は妊娠しづらい……ん……で。
す、んんー。
んんんー??」
超気持よくて超幸せ。
でもなんだ、この圧倒的幸福感は。
最大の幸福が訪れましたというか、世界は貴女の味方なのよ、感はなんだろう。
あれかな。これはあれか。マジかー。
「あ、サキュバスが子供出来にくいっていうのは事実なんだけどさ」
ごめんねー。
「 直 撃 ですわぁ。
凄いねー。直感でわかったぁー。おなか幸せー。
貫通弾の着弾を確認しましたぁー。轟沈すよ。
あ、まって土下座とかしなくていいから。
責任取ってくれるって?やめてよまた襲いたくなるでしょ」
まだインキュバスじゃないから倒れちゃうよ。
愛し合う二人は幸せなキスをして終了でいいのよ?
あれですわ。とりあえず。
結婚しよ。
というわけでお役所なう!
ちょっと厄介な書類とかそんなのはおかーさんに都合よくそろえて貰って即届け出ですわ!
転移魔法覚えようかな……あるとこんなに早く済んでいいのね。
彼はこの辺りの出身で、ご両親はそのへん超ドライらしいので挨拶とか後回しでいいって。
出会って次の日に届け出とかどれだけスピード婚なんでしょ。世界でも最短クラスじゃないかしら。
じゃあ、幸せラブラブ届にかりかりかりっとして、ぽんぽん印を押して。
悪い汗がだらだら出た。
うわぁ、まじかー。忘れてたぁー。忘れちゃいけないもの忘れてたー。
大丈夫です。提出は出来ました。これで私達夫婦です。私の苗字が変わりました。
提出した今現在から夫も同じような表情をしていた。やばい、めっちゃ動揺している。
凄い苦笑いでお互いの顔を向けて瞳を合わせて「やっちまった」感のある空気の表情で居る。
いや、婚姻届けを出した直後の夫婦の表情じゃないよね!私もそう思う!
「……忘れてたね」と夫。
「……これ、一生もののネタになるから人に話にしていい?」と私。
「いやぁ、絶対引き攣るような恥の話だから一緒に墓まで持っていこう」と夫。
「……入るお墓、同じになりましたしねー。うん、一生ものの秘密にしよう」と私。
入る墓が同じになった、というのにはちょっとキュンとなった。照れるぜ。
でもまぁ、照れる前にぜったいやんなきゃいけないことがあるよね!
「……まさか婚姻届け出してやっと気が付くってのは、すごいことしたね私達」
「え、えと、役所前に、確か喫茶店があるから、そ、そこで、ゆっくりと話そうか」
「うん……」
「 ……まずは自己紹介から…… 」
デキ婚しちゃった相手と自己紹介しあうというのは、たぶん一生忘れない出来事だろうと思う。
こんな夫婦はさすがに居ないと思いますが、どうだろう……
これが今の私の夫の第一印象。
合コンの席で出会った一人の男性に、私は一目惚れ?してしまった笑い話のことを話そう。
うんたぶん一目惚れ。いやー。でもなんだろうなーあれ。直感ではあるんだけど。
なぜ笑い話なのかは最後まで聞いてほしい。君たちと私との間の秘密だ!
隠れサキュバスである私は自分が魔物であることを隠しながら理想の人を探していた。
物語みたいに運命の人に出会えたらな、と思いながら大学生をエンジョイしている途中なのだ。
だけどそう簡単に運命の人になんか会えるわけはなくて。でもその思いを捨てきれない。
なので中途半端にいいところのお嬢様風のネコを被って生きている。
中身は結構引きこもりでずぼらで若干オタクよりなんだけど、それはモテませんし。
は?サキュバスだから美人でモテるだろって?自慢じゃないですけど美人ですよ?ええ。
はっ。外見なんぞで女を選ぶ男に興味は無い!
という捻くれたプライドを持ってしまった奴が男と付き合えると思ってるんですか!
まだ男の人と付き合ったことない行き遅れですよ!処女こじらせてますよ!
外見印象が残りづらい魔法を常時オンしてますよ!気が付いたらこれだけマスタークラス!
サキュバスらしい魅了とか誘惑とか、ヘッタクソなのにねぇ……
泥棒とかやったら監視カメラとかから絶対に身元がばれない自信がある。
結構どんくさいから途中で捕まるし、チキンだからそもそもできないんですけどね。
だから"美人のハズだけどモテないので数合わせにぴったり"というポジに収まりました。
合コンの追加メンバー枠。オマケみたいな役ですよ。話を適当に合わせて男狩りの補佐役。
そう、合コンという狩猟場に解き放たれた野獣はこの場においては間違いなく女側でしょうよ。
顔、将来性、金、と良い条件を嗅ぎ宛てて哀れな子羊ともいえる男子たちを蹂躙する肉食獣。
この辺りは男と女のパワーバランスによって決まるけど、女側から決めた場合はそんな感じ。
まぁ女の子側も必死なんだよねー。頑張ってねー。
私は自分の王子様を待ち続けているお姫様(笑)ですから。
いやー。自分で笑いをつけちゃうレベルですよ。ないわー。
周りは彼氏がどうのこうのって話をするんだけどなー。泣けてくるー。
私の魅力に気づいて!とは言えない。ガツガツする趣味は無いし主義に反する。
主義とかスタンスとかに拘るから相手が見つけられないんですよ……知ってるさ…
ワタクシ怯える子羊すら食べれない負け犬でございます……いやサキュバスだけどさ……
というわけで、やる気0の状態で皆の援護役として合コンに参加したんですよ。
男の子たちが後から入場して、ぞろぞろと集まってくるわけです。
その時に出会った、なんかぼやっとした人。背はそこそこ高いけど全然イケメンではない。
表現するなら二足歩行のアライグマ。メガネがその印象を加速させるんだろうなぁ。
ちょっとおひげの手入れとか適当だし、この人も連れてこられた印象。
やる気ないし、どうしたらいいのかわからない感じが小動物臭を醸し出してる。好みじゃないなぁ。
でも私この人と結婚するんだなぁー。
?
はぁ?
へえ???
何思った私。
え?何だこの人???
おかしいな、全然タイプじゃない。
すらっとしてない!王子様ではない!でもいい感じ!
でもなにこの歯車が噛み合った感じ!壊れたオルゴールが直った感じ!
無くしたジグソーパズルのピースが見つかったすっきりぴったり感!
ずぼらな私をそのまま嵌め込んでくれる感じ!ネコ被る必要ない!
うわぁ。マジかー。この人かぁー。
マジですか、一目惚れってやつですか。私がやるとは思わなかったよ……
気が付いたら私はその仮称巨大二足歩行メガネアライグマさんを超観察していた。
彼も私をひたすら観察している。うわぁ、めちゃめちゃ困っているような顔。
謎の硬直、というか睨み合い。
合コンで出会ったばかりで自己紹介する前の顔合わせだけの瞬間の異様な緊迫感。
凄い怪訝な顔で私は彼を見つめてたと思うし、彼も私を見つめていた。
時が止まっている感じがして、合コン会場の騒がしさが一切耳に入らない。
感性全て、集中力の全部を使って彼の情報を集めようとしてるし、集めた。
あー。いい匂い。良い香りかと言われるとそうではないんだけど、好きな匂い。
んーこう憧れの先輩の衣服を嗅ぐと感じるであろう幸せを覚えるね。
いやそんな体験は無いけど。イメージイメージ。
その間私の瞳は彼の瞳を見つめて、彼の表情を見て、固まっている彼の内面を見通す。
あれ?彼の思考がなんとなく読めるぞ?
あれれぇ?この人も同じこと考えてるな?
あららららぁ?この人もなんか噛み合っちゃた系なんだな?
あるぇー?どうやら私達、相思相愛だぞ?
メガネアライグマさんは私と相性がたぶん最高。たぶんもうこの人と結婚すれば一生幸せ。
相手も同じ気持ち。彼女いない歴=年齢の彼も童貞こじらせちゃってる人。
容姿とか気にしない、気楽な相手が居ればいい。でもそんな相手も居ないし諦めてる。
ここまで直感。凄いな直感……!
基本的に直感というものを全然信用しない私なんだけど今日ばっかりは全面的に信用しよう。
彼の手を取った私は混乱したまま取り合えず彼に声を掛けた。
手を取った瞬間、私の手のひらから伝わった彼の体温。そこからは謎の納得感を得られた。
これから先の会話はお互い頭に?マークが飛んだまま会話したので疑問形である。
「あの、会ったばっかりでなんですけど、お付き合いしませんか?」と私。
「ええと、結婚を前提に、という認識であってますよね?」と彼。
「たぶんそのはずなので、そのつもりですが?」と私。
「じゃあすぐにでも結婚します?」と彼。
「いいですよ?」と私。
周囲が硬直し制止しながら私と彼は混沌とした会話を繰り広げている。わけがわからない。
もう合コンの雰囲気ではないので私達はその場からさっさと逃走。狼と羊を置いてけぼりにする。
彼の手を取って私はそのまま歩き出して。
気が付いたらホテルで部屋を取って一緒に入っていた。
あれ?どんな流れだ?普通カフェとかデートとかしてお互いのことを話す流れだよね?
私混乱しすぎじゃない?いや、サキュバスの本能が逃すなって言ってるのかなこれ???
もうまともに考えて動いてないよね私???流石にヤバくねこれ????
でも彼の混乱っぷりは私を更に上回っていて完全に流されているな???
ん?んんん???これ?
チャンスでね?
じゅるり。
ひゃあ!食べごろの羊だ!
うあああああ!超幸せぇぇぇぇ!この人しかいないぃぃぃ!
マジ気持ちよかった。超気持よかった。きっちりぴったりきっかり合体出来た。
居るもんだねぇ運命の人って。びっくりだよー。ちゃんと初めてを残しておいてよかった−。
はぅぁーおなかン中幸せー。サキュバスやっててよかったぁぁぁー!
もうあれだね。出会うのが遅かっただけだね。神様の意地悪で出会いが遅れただけだね。
最初は相思相愛の幼馴染の予定だったんだけど、少し出会うのがズレちゃっただけなんだよ。
まぁ堕落神様に感謝しよう。ちょっと遅かったけど出会えたので万事オッケーです。
「ええと。サキュバスだったって知ったときはびっくりしたけど、大丈夫なの?」
なんのことだろう。私の稚拙な魅了と誘惑をフル活用して超ハッスルしちゃったんだけど。
「誘惑されたまま襲っちゃったんだけどさ、ほら。さすがに……」
「ああ。そーね。だいじょーぶ。だいじょーぶ。魔物娘は妊娠しづらい……ん……で。
す、んんー。
んんんー??」
超気持よくて超幸せ。
でもなんだ、この圧倒的幸福感は。
最大の幸福が訪れましたというか、世界は貴女の味方なのよ、感はなんだろう。
あれかな。これはあれか。マジかー。
「あ、サキュバスが子供出来にくいっていうのは事実なんだけどさ」
ごめんねー。
「 直 撃 ですわぁ。
凄いねー。直感でわかったぁー。おなか幸せー。
貫通弾の着弾を確認しましたぁー。轟沈すよ。
あ、まって土下座とかしなくていいから。
責任取ってくれるって?やめてよまた襲いたくなるでしょ」
まだインキュバスじゃないから倒れちゃうよ。
愛し合う二人は幸せなキスをして終了でいいのよ?
あれですわ。とりあえず。
結婚しよ。
というわけでお役所なう!
ちょっと厄介な書類とかそんなのはおかーさんに都合よくそろえて貰って即届け出ですわ!
転移魔法覚えようかな……あるとこんなに早く済んでいいのね。
彼はこの辺りの出身で、ご両親はそのへん超ドライらしいので挨拶とか後回しでいいって。
出会って次の日に届け出とかどれだけスピード婚なんでしょ。世界でも最短クラスじゃないかしら。
じゃあ、幸せラブラブ届にかりかりかりっとして、ぽんぽん印を押して。
悪い汗がだらだら出た。
うわぁ、まじかー。忘れてたぁー。忘れちゃいけないもの忘れてたー。
大丈夫です。提出は出来ました。これで私達夫婦です。私の苗字が変わりました。
提出した今現在から夫も同じような表情をしていた。やばい、めっちゃ動揺している。
凄い苦笑いでお互いの顔を向けて瞳を合わせて「やっちまった」感のある空気の表情で居る。
いや、婚姻届けを出した直後の夫婦の表情じゃないよね!私もそう思う!
「……忘れてたね」と夫。
「……これ、一生もののネタになるから人に話にしていい?」と私。
「いやぁ、絶対引き攣るような恥の話だから一緒に墓まで持っていこう」と夫。
「……入るお墓、同じになりましたしねー。うん、一生ものの秘密にしよう」と私。
入る墓が同じになった、というのにはちょっとキュンとなった。照れるぜ。
でもまぁ、照れる前にぜったいやんなきゃいけないことがあるよね!
「……まさか婚姻届け出してやっと気が付くってのは、すごいことしたね私達」
「え、えと、役所前に、確か喫茶店があるから、そ、そこで、ゆっくりと話そうか」
「うん……」
「 ……まずは自己紹介から…… 」
デキ婚しちゃった相手と自己紹介しあうというのは、たぶん一生忘れない出来事だろうと思う。
こんな夫婦はさすがに居ないと思いますが、どうだろう……
16/07/07 20:09更新 / うぃすきー