ワンコノサトラレ?
暑い休みの昼間にスマホでネットサーフィン、隣に真っ白チワワのナキ(♀)を置いて部屋でゴロゴロゴロゴロ、お母さま昼間もエアコンつけたいです。
よろよろと側にある扇風機を中から強へ、流れる風を薄いTシャツとパンツ一枚
の構えで受け止める、ちなみにパンツは新品、最近古いパンツがよく無くなるんだ、変わりに新しいパンツがタンスの中に突っ込まれてある、母さんの仕業だろーか。
扇風機の風にあたってぼぅとしながらあっちのサイトからこっちのサイトへゆーらゆら、自分は今電子上のソンビになってるねぇ、と。
面白そうなモノ発見。
『ペットの言いたい事がわかっちゃう? 気になる人はお試しあれ!』
サバトストアなるサイトで見つけたアプリ、アニリンガル、暇潰しにダウンロードして起動、我が家の番犬ナキに使ってみる。
「ナキーうぇーいうぇーい、今日も可愛いですなぁー」
転がるナキのちっこい腹をわしゃわしゃすると、ナキはこっちを見てワンと一鳴き、あとは目を閉じてじっとしていた。
片手で腹を撫でながら、起動したアニリンガルを見てみる、さてさてナキさんは何を思ってるのですかーっと。
『ああ、いよいよ奪われるのですね…………』
「何を奪うんだ……」
思わず呟いた、いや、あのナキさん? 何も奪いませんよ?
ちらりとナキに目をやると、ナキはこっちを見つめていた、クリクリした目が、いつもよりちょっと潤んでるような気がした。
「ワゥーン」
そして甘えるような声で鳴いた、またアニリンガルを見てみる。
『どうかな、可愛くらしくできたかなぁ……ふふっ、ご主人様…………私の口から言わせるなんて、意地悪ですよ♪』
「意地悪て」
なんだこれ、メイドに手を出す悪徳領主みたいだなってか会話できてないか?ログを見てそう思っているとナキは近寄ってきてスマホを持っている手の手首を甘噛みしてきた。
「いたいよーナキーはなしてー」
「ウゥ……」
『そんな物見てないで私を見て下さい!』
「そんな物て、いいじゃんよーたまの休みだしー」
手首を甘噛みするナキとスマホを同時に見てヘラヘラ笑ってそう言うと、ナキは歯を剥き出しにして低く唸った、あ、怒った? まずい?
「ヴゥ……!」
『言葉さえ、言葉さえ話せればご主人様に私の気持ちを伝える事が出来るのに悔しくてたまらないこの体になんで生まれてしまったのかあれでもちょっとお話しできてたようなああご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジ』
「ナキちゃーん!?」
「ワゥ、ワゥゥン!」
「んんっーナキちゃん! ナキちゃん! よーしよしよし! よーしよしよしよし! 良い毛並みだねぇ可愛いよぉ!」
突然ホラーじみたログに背筋が冷たくなってスマホを置いてナキを全力でわしゃわしゃする、そりゃもう全力で、ナキが本格的にヤンデレる前に。
しっかし、ナキの様子といいログの内容といい、本当に言いたい事を当てているっぽい? いやでもなぁ。
「あんた、何してんの?」
わしゃわしゃしながら考えていると、勝手に部屋に入ってきた幼馴染みのワーウルフ、リコに声をかけられた。
「見ての通り、愛犬とたわむれている!」
「ワウ!」
「うるさい、もっと他にすることあるでしょ」
アホみたい、とリコは頭の黒色の耳をピクピクさせて自分をジト目で見てくる。
「他にすることと言ってもねぇ……」
ナキを抱いてあぐらをかく、そして充電するためにスマホを手に取りながら、アニリンガルのログをちらりと見る。
『まーたあの腹黒といちゃついてる、はぁ』
『ちっ、こんな時になんで来るの』
『とりあえず引き離すか、このメス犬の匂いが付く前に、あーあ、今日は暑いから良い感じに汗が染みてるのになぁ、昨日のパンツは使い終わっちゃったし、しょうがない、ちょっとパンツに匂いが付いてても我慢するか』
「んんんっ!?」
え、おい、なんだこれ。
「なに見てんの?」
「クゥン」
「い、いいや、何も見ていないぞーうん、私は、何も、見ていない」
スマホを二人の目から隠しつつ混乱した、パンツを使い終わった? パンツって使い捨てなの? これ誰? いや分かってるけどさ、え? 確かに犬だけどさ、半分。
アニリンガルを見ながら白に近い灰色を真っ白にするために一つ質問をぶん投げる。
「リコさんや」
「なによ?」
「あなたが一番好きなものは!」
「パンッ…………パンよ! 食パン!」
『あっぶない、ってか卑怯よそんなパンツ丸見えの状態で好きなものは? 何て聞かれたら誰だってパンツっていっちゃうでしょ、もうこれは罰としてシャツも取っていかないとね!』
「ワウウ」
『パンツって聞こえたような……気のせいかしら?』
驚きの白さでした。
「あんたさっきから何を見てんの?」
気を抜いたその一瞬、自分の手の内からスマホが引き抜かれた。
リコのなぁにこれぇ、と言った表情が少しずつ、凍り付いていき、すっと正座をする、そしておもむろにナキを呼んだ。
「……ナキーおいでー」
「ヴゥゥゥ…………」
「大丈夫、あんたにも良い話だから」
「ワゥ……」
そっとナキはリコに近づいていき、リコの膝の上に乗る。
「ねぇ、駄犬のあんたでも文字は読めるでしょ」
「ワッ! ワウウゥゥゥ!」
「よかったねーあんたの気持ち伝わってたよー、ついでに私の秘密もー」
「ワンっ! ワンっ!」
「うるさいなー、いいじゃん別にパンツぐらい、本当だったら監禁して一日中嗅ぎ回したいぐらいなんだから、あんたもあたしの事言えないじゃん」
リコの周囲にどす黒いオーラが渦巻いているように感じる。
「ヴァン!」
「そうだね、お腹割って話そうか」
「ワン」
一人と一匹は一つのスマホを見ながら話し始めた。
「……それは、あいつ次第だよ」
「ワゥン」
「引く気はないよ」
「ワウ」
「ふん、分かってるじゃん、じゃあどうする?」
「ワン」
「へぇ以外、なんで?」
「ワン」
「まぁ、そうだね」
「ワゥゥ……」
「…………なに考えてるの?」
「ゥゥウ、ワン、ワンワン」
「……あたしはそれで良いけどさ、一応言っとくよ……あいつがあんたになびく事なんて無いと思うよ、それでも?」
「ワン!」
「……ふん、よろしく……」
「ワウ」
手と前足で握手して、取引っぽいものを終えたようだ、リコが少し苦い顔をしてナキの顔が少しキリッとしている。
「さて、と」
リコは立ち上がると、スマホを自分のあぐらの中にポンと放って何事も無かったように部屋を出ていこうとして足を止めた、そして軽く振り返り。
「わん」
と言って出ていった。
あのやり取りはいったい何だったのでしょうか、置いていきぼり感がものすごい。
「ワン」
いつの間にか戻ってきたナキは、スマホを前足でポンポンと踏んでこっちを見る、ここ掘れワンワンならぬこれ見てワンワン状態だ。
さて見つかるのは鬼か蛇か、一息入れて自分はアニリンガルの過去ログを見た。
数ヶ月後、とある家にて。
「ちょっとリコさん!? 勝手にパンツ持っていかないで下さい! 私の分が無いじゃないですか!」
「うるさいわねー、ほら返すわよ、ほら」
「あなたの使用済みなんていりません!」
「ああ、良い匂い……」
「ああっ! いつの間に!? とりあえずそれも返して下さい!」
「ちっ、あんただって昨日あいつとしっぽりヤってたじゃん! あたし抜きで! あたし抜きで!!!」
「それとこれとは話が別……って! ガァァ! 逃げんなゴラァ! メス犬ガァァァァ!!!」
「また一枚、俺のパンツが星になった…………」
ワーウルフとクー・シーの二人が、一人の恋人兼主人とパンツを争いつつも分け合う光景がそこにはあった。
よろよろと側にある扇風機を中から強へ、流れる風を薄いTシャツとパンツ一枚
の構えで受け止める、ちなみにパンツは新品、最近古いパンツがよく無くなるんだ、変わりに新しいパンツがタンスの中に突っ込まれてある、母さんの仕業だろーか。
扇風機の風にあたってぼぅとしながらあっちのサイトからこっちのサイトへゆーらゆら、自分は今電子上のソンビになってるねぇ、と。
面白そうなモノ発見。
『ペットの言いたい事がわかっちゃう? 気になる人はお試しあれ!』
サバトストアなるサイトで見つけたアプリ、アニリンガル、暇潰しにダウンロードして起動、我が家の番犬ナキに使ってみる。
「ナキーうぇーいうぇーい、今日も可愛いですなぁー」
転がるナキのちっこい腹をわしゃわしゃすると、ナキはこっちを見てワンと一鳴き、あとは目を閉じてじっとしていた。
片手で腹を撫でながら、起動したアニリンガルを見てみる、さてさてナキさんは何を思ってるのですかーっと。
『ああ、いよいよ奪われるのですね…………』
「何を奪うんだ……」
思わず呟いた、いや、あのナキさん? 何も奪いませんよ?
ちらりとナキに目をやると、ナキはこっちを見つめていた、クリクリした目が、いつもよりちょっと潤んでるような気がした。
「ワゥーン」
そして甘えるような声で鳴いた、またアニリンガルを見てみる。
『どうかな、可愛くらしくできたかなぁ……ふふっ、ご主人様…………私の口から言わせるなんて、意地悪ですよ♪』
「意地悪て」
なんだこれ、メイドに手を出す悪徳領主みたいだなってか会話できてないか?ログを見てそう思っているとナキは近寄ってきてスマホを持っている手の手首を甘噛みしてきた。
「いたいよーナキーはなしてー」
「ウゥ……」
『そんな物見てないで私を見て下さい!』
「そんな物て、いいじゃんよーたまの休みだしー」
手首を甘噛みするナキとスマホを同時に見てヘラヘラ笑ってそう言うと、ナキは歯を剥き出しにして低く唸った、あ、怒った? まずい?
「ヴゥ……!」
『言葉さえ、言葉さえ話せればご主人様に私の気持ちを伝える事が出来るのに悔しくてたまらないこの体になんで生まれてしまったのかあれでもちょっとお話しできてたようなああご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジンサマゴシュジ』
「ナキちゃーん!?」
「ワゥ、ワゥゥン!」
「んんっーナキちゃん! ナキちゃん! よーしよしよし! よーしよしよしよし! 良い毛並みだねぇ可愛いよぉ!」
突然ホラーじみたログに背筋が冷たくなってスマホを置いてナキを全力でわしゃわしゃする、そりゃもう全力で、ナキが本格的にヤンデレる前に。
しっかし、ナキの様子といいログの内容といい、本当に言いたい事を当てているっぽい? いやでもなぁ。
「あんた、何してんの?」
わしゃわしゃしながら考えていると、勝手に部屋に入ってきた幼馴染みのワーウルフ、リコに声をかけられた。
「見ての通り、愛犬とたわむれている!」
「ワウ!」
「うるさい、もっと他にすることあるでしょ」
アホみたい、とリコは頭の黒色の耳をピクピクさせて自分をジト目で見てくる。
「他にすることと言ってもねぇ……」
ナキを抱いてあぐらをかく、そして充電するためにスマホを手に取りながら、アニリンガルのログをちらりと見る。
『まーたあの腹黒といちゃついてる、はぁ』
『ちっ、こんな時になんで来るの』
『とりあえず引き離すか、このメス犬の匂いが付く前に、あーあ、今日は暑いから良い感じに汗が染みてるのになぁ、昨日のパンツは使い終わっちゃったし、しょうがない、ちょっとパンツに匂いが付いてても我慢するか』
「んんんっ!?」
え、おい、なんだこれ。
「なに見てんの?」
「クゥン」
「い、いいや、何も見ていないぞーうん、私は、何も、見ていない」
スマホを二人の目から隠しつつ混乱した、パンツを使い終わった? パンツって使い捨てなの? これ誰? いや分かってるけどさ、え? 確かに犬だけどさ、半分。
アニリンガルを見ながら白に近い灰色を真っ白にするために一つ質問をぶん投げる。
「リコさんや」
「なによ?」
「あなたが一番好きなものは!」
「パンッ…………パンよ! 食パン!」
『あっぶない、ってか卑怯よそんなパンツ丸見えの状態で好きなものは? 何て聞かれたら誰だってパンツっていっちゃうでしょ、もうこれは罰としてシャツも取っていかないとね!』
「ワウウ」
『パンツって聞こえたような……気のせいかしら?』
驚きの白さでした。
「あんたさっきから何を見てんの?」
気を抜いたその一瞬、自分の手の内からスマホが引き抜かれた。
リコのなぁにこれぇ、と言った表情が少しずつ、凍り付いていき、すっと正座をする、そしておもむろにナキを呼んだ。
「……ナキーおいでー」
「ヴゥゥゥ…………」
「大丈夫、あんたにも良い話だから」
「ワゥ……」
そっとナキはリコに近づいていき、リコの膝の上に乗る。
「ねぇ、駄犬のあんたでも文字は読めるでしょ」
「ワッ! ワウウゥゥゥ!」
「よかったねーあんたの気持ち伝わってたよー、ついでに私の秘密もー」
「ワンっ! ワンっ!」
「うるさいなー、いいじゃん別にパンツぐらい、本当だったら監禁して一日中嗅ぎ回したいぐらいなんだから、あんたもあたしの事言えないじゃん」
リコの周囲にどす黒いオーラが渦巻いているように感じる。
「ヴァン!」
「そうだね、お腹割って話そうか」
「ワン」
一人と一匹は一つのスマホを見ながら話し始めた。
「……それは、あいつ次第だよ」
「ワゥン」
「引く気はないよ」
「ワウ」
「ふん、分かってるじゃん、じゃあどうする?」
「ワン」
「へぇ以外、なんで?」
「ワン」
「まぁ、そうだね」
「ワゥゥ……」
「…………なに考えてるの?」
「ゥゥウ、ワン、ワンワン」
「……あたしはそれで良いけどさ、一応言っとくよ……あいつがあんたになびく事なんて無いと思うよ、それでも?」
「ワン!」
「……ふん、よろしく……」
「ワウ」
手と前足で握手して、取引っぽいものを終えたようだ、リコが少し苦い顔をしてナキの顔が少しキリッとしている。
「さて、と」
リコは立ち上がると、スマホを自分のあぐらの中にポンと放って何事も無かったように部屋を出ていこうとして足を止めた、そして軽く振り返り。
「わん」
と言って出ていった。
あのやり取りはいったい何だったのでしょうか、置いていきぼり感がものすごい。
「ワン」
いつの間にか戻ってきたナキは、スマホを前足でポンポンと踏んでこっちを見る、ここ掘れワンワンならぬこれ見てワンワン状態だ。
さて見つかるのは鬼か蛇か、一息入れて自分はアニリンガルの過去ログを見た。
数ヶ月後、とある家にて。
「ちょっとリコさん!? 勝手にパンツ持っていかないで下さい! 私の分が無いじゃないですか!」
「うるさいわねー、ほら返すわよ、ほら」
「あなたの使用済みなんていりません!」
「ああ、良い匂い……」
「ああっ! いつの間に!? とりあえずそれも返して下さい!」
「ちっ、あんただって昨日あいつとしっぽりヤってたじゃん! あたし抜きで! あたし抜きで!!!」
「それとこれとは話が別……って! ガァァ! 逃げんなゴラァ! メス犬ガァァァァ!!!」
「また一枚、俺のパンツが星になった…………」
ワーウルフとクー・シーの二人が、一人の恋人兼主人とパンツを争いつつも分け合う光景がそこにはあった。
15/10/21 13:21更新 / ミノスキー
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