連載小説
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全駒〜紅く染まった盤面〜
 のどかな農村の外れにある古い小屋の中、すきま風に吹かれながら刑部狸と少年が将棋盤を挟む。

「本当何だろうな、その条件」

「嘘じゃないよ……ただし投了なんてしたら金額倍増、だけどね」

 疑いの視線を向ける少年に微笑んで応える刑部狸、少年は歩を五枚両手で包み盤の横に放った、刑部狸が先手番、少年は後手番となった。

 対局が始まり手が進む事に深くなる少年の眉間のしわ、徐々に長考する手番が増えていくそして終盤、少年の赤くなった顔を見て目を細めてニヤリと笑う刑部狸。

「投了したらどうかね、コウ君や?」

 白く細い指先が滑らかにと金を寄せる、王手がかかったコウの玉。

「投了したら借金倍増って言ったのはアンタだろ……ツミカさん」

 玉の行き先は一つしか残されていない、震える手で対局開始時の地点に玉を移動する。

「いやぁ、男の子が苦しみ悶えてるって素敵だと思わない?」

 ツミカは頬を染めて駒台から最後の一枚、金将を中指と人差し指でつまみ上げると、手首の力を効かせて玉の頭に打つ。

「詰み、だねぇ」

コウは終局した盤面を見てため息をついた、相手駒が全て紅い盤上、自分に残されたのは玉のみ。

「全駒……」

 一勝できたら割った壺の代金帳消しという条件に飛び付いて挑んだ勝負だが、攻める前に潰されあれよあれよと言う間に駒が刈られてこの結果。
 将棋をするのは年に数回程度のコウ、しかしこんな負け方をするのは初めてだった。

 (この狸に勝負を挑むよりは真面目に働いた方が早く借金を返せるんじゃないか?)


「勝てる気がしない」

「まぁ長い間行く先々でやってるからね、でも落ち込む事はない。」

いつの間に、コウを背後から抱き締めるツミカ、片手が降りて行きコウの股間を捉える。

「勝負で負けたら、コッチで払ってもらうから」

「えっ、ちょっと聞いてないっ、待て、まって、うぁぁぁ」

「いいじゃないか、子種を全部取るまで帰さないよ?」

 その後、昼から翌朝までコウは搾られた。

 チュンチュンと雀が鳴いて朝日が戸のすきまから差し込む、気絶したコウの隣で顔に付いた白い液を指で拭い口に運ぶツミカ、夢の中でも搾られているのか唸るコウの頭を撫でてぽつりと漏らす。

「やっちゃったね……我慢が効かなかったよ体払いなんて初めてだ」

「絶対に……次こそは……かつ」

「ふふ、気長に待つとしよう、それまでに何回体で払う事になるのかな?」

 ツミカは寝言に返事をすると、コウを抱き枕にして眠りについた。
15/03/20 01:52更新 / ミノスキー
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