第六話 裕也の記憶??
意識が目覚めたとき、見たことがない綺麗な夜空の下、数人の人影が静かに浮かび上がっている。
その日はお祭りがあるぐらい特別な日だった。
町がいろんなイルミネーションで着飾っていて、その下では魔物娘と人が、楽しそうにダンスをしていた。
みんな幸せそうに寄り添い、踊り、笑いあっていた。
そんな中、町から少し離れた公園でオレ達はいた。
『裕也・・・この子が・・・本当になりうるのか?・・・フム、お前さん達が言うなら・・・』
聞き覚えがあるような幼い声が、なにやら難しい話をしている。
声にフィルターがかかった様に、上手く聞こえない。
忘れているという感じではなくて、思い出せないと言った方が正しいか。
話の中身はほとんど思い出すことはできないけれど、大切な話をしていたことだけは覚えている。
それに・・・
『ああ・・・オレ達の子供だ・・・必ず・・・なってくれるだろう』
『そうよ・・・必ずこの子は・・・になってくれるわ』
懐かしく、暖かな声。
体の奥底に刻み込まれていて、忘れることのない両親のぬくもり。
そのぬくもりの中、幼かったオレは寝ぼけながらその話を聞いていた。
なぜだろう。
これまでこんな記憶、思い出したことがなくて。
こんなにも鮮明に思い出すことなんてなくて。
オレはこれまで両親の顔をはっきりと思い出したことがない。
いままでの記憶の中では、いつもピントがずれたカメラのようにぼやけていた。
そのはずなのに、なぜか今ははっきりと両親の顔を思い出すことができる。
まるでこの世界に来て、欠けていたピースが少しずつ見つかっていくような・・・
まさか、な。
記憶を意図的に消すなんて事、できるわけがない。
それに、オレはこの世界に来たことはない。
魔物娘と会うことなんてないはず。
そう・・・ないはずなんだ。
否定しようとするけど、得体の知れない違和感が胸に重く残る。
来た事がないはずなのに、心の奥底でこの世界のことを何かが叫んでいる。
オレは何か大切なものを失っている気がする。
何か・・・忘れてはいけないものを失っている・・・
このとき、初めて自分の記憶に疑問が生まれた。
オレが『覚えている記憶』とは、本当に正しいのか??
今思えば、オレの記憶には細やかな矛盾点が存在していた。
もしかして・・・オレは・・・
バチッ・・・
「グァッ!!!!」
突然、頭に高圧電流が流れるような痛みが広がっていく。
夢の中であるはずなのに、痛みがダイレクトに送られてくる。
まるで、思い出してはいけないものに触れたように。
痛みのあまり、意識が遠くなってくる。
遠くなっていく意識の中、声が聞こえてきた。
『おぬしらのその言葉を信じよう・・・いつの日か・・・この世界を・・・』
『そのときは・・・またこの日に・・・この綺麗な夜空の下で・・・会おうのじゃ』
それを聞き終わると同時に、オレは意識を失った。
気づいたときには、ベッドの上で横になっていた。
露天風呂でよくわからないけど、大泣きしてそのまま寝てしまったのだろう。
あたりを見回そうと体を起こそうとしたとき。
「ようやく起きたか」
すぐそばから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の方向に顔を向けると、ベッドに寄りかかるセラがいた。
どうやら彼女が運んでくれたようだ。
「ああ、すまん、ここまで運んできてくれて」
「いや、気にしないさ。それよりも気分はどうだ??」
今さっきまで見ていた夢のこともあってか、あまりよろしくはないけれど。
それでも、そこまで体調が悪いわけではない。
少し夢見が悪かっただけの話だ。
・・・そう、少しだけ。
言うほどのことでもないし、これはオレの問題だ。
オレが解決していかなければならないことだ。
「大丈夫だ。少し休めばよくなる」
そう言うものの、セラは何やら心配そうに顔を覗き込んでいる。
心配・・・というよりも、何かを言うか言うまいか、迷っているようだ。
オレがそのことを聞こうとしようとしたとき、彼女はそのまま出て行ってしまった。
(一体なんだったんだ????)
まあ、今は眠って明日からの仕事に備えますか。
オレは疑問に思いながら、そのまま眠りについた。
そのときのオレは、明日の仕事のことしか頭になかった。
けれども、よくよく考えてみると、このときから始まっていたのかもしれない。
オレの記憶に『歪み』が現れ出していることに・・・
一方その頃・・・
(・・・あれはなんだったのだろうか??)
セラ、いや私は部屋から出て、すぐ友人の下へ走った。
私の頭の中で一つの疑問が生まれていた。
それは、つい今さっき裕也が目覚める前のときだった。
それまで普通に眠っていたはずの裕也の頭部から突然、魔方陣が現れてバチバチと音を鳴らしながら裕也を苦しめていた。
私が立ち上がろうとしたときには、魔方陣は跡形もなく消え去っていた。
本人に聞こうとはしたが、何かを隠しているような目をしていた。
(裕也・・・お前は一体何者なんだ??)
その日はお祭りがあるぐらい特別な日だった。
町がいろんなイルミネーションで着飾っていて、その下では魔物娘と人が、楽しそうにダンスをしていた。
みんな幸せそうに寄り添い、踊り、笑いあっていた。
そんな中、町から少し離れた公園でオレ達はいた。
『裕也・・・この子が・・・本当になりうるのか?・・・フム、お前さん達が言うなら・・・』
聞き覚えがあるような幼い声が、なにやら難しい話をしている。
声にフィルターがかかった様に、上手く聞こえない。
忘れているという感じではなくて、思い出せないと言った方が正しいか。
話の中身はほとんど思い出すことはできないけれど、大切な話をしていたことだけは覚えている。
それに・・・
『ああ・・・オレ達の子供だ・・・必ず・・・なってくれるだろう』
『そうよ・・・必ずこの子は・・・になってくれるわ』
懐かしく、暖かな声。
体の奥底に刻み込まれていて、忘れることのない両親のぬくもり。
そのぬくもりの中、幼かったオレは寝ぼけながらその話を聞いていた。
なぜだろう。
これまでこんな記憶、思い出したことがなくて。
こんなにも鮮明に思い出すことなんてなくて。
オレはこれまで両親の顔をはっきりと思い出したことがない。
いままでの記憶の中では、いつもピントがずれたカメラのようにぼやけていた。
そのはずなのに、なぜか今ははっきりと両親の顔を思い出すことができる。
まるでこの世界に来て、欠けていたピースが少しずつ見つかっていくような・・・
まさか、な。
記憶を意図的に消すなんて事、できるわけがない。
それに、オレはこの世界に来たことはない。
魔物娘と会うことなんてないはず。
そう・・・ないはずなんだ。
否定しようとするけど、得体の知れない違和感が胸に重く残る。
来た事がないはずなのに、心の奥底でこの世界のことを何かが叫んでいる。
オレは何か大切なものを失っている気がする。
何か・・・忘れてはいけないものを失っている・・・
このとき、初めて自分の記憶に疑問が生まれた。
オレが『覚えている記憶』とは、本当に正しいのか??
今思えば、オレの記憶には細やかな矛盾点が存在していた。
もしかして・・・オレは・・・
バチッ・・・
「グァッ!!!!」
突然、頭に高圧電流が流れるような痛みが広がっていく。
夢の中であるはずなのに、痛みがダイレクトに送られてくる。
まるで、思い出してはいけないものに触れたように。
痛みのあまり、意識が遠くなってくる。
遠くなっていく意識の中、声が聞こえてきた。
『おぬしらのその言葉を信じよう・・・いつの日か・・・この世界を・・・』
『そのときは・・・またこの日に・・・この綺麗な夜空の下で・・・会おうのじゃ』
それを聞き終わると同時に、オレは意識を失った。
気づいたときには、ベッドの上で横になっていた。
露天風呂でよくわからないけど、大泣きしてそのまま寝てしまったのだろう。
あたりを見回そうと体を起こそうとしたとき。
「ようやく起きたか」
すぐそばから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
声の方向に顔を向けると、ベッドに寄りかかるセラがいた。
どうやら彼女が運んでくれたようだ。
「ああ、すまん、ここまで運んできてくれて」
「いや、気にしないさ。それよりも気分はどうだ??」
今さっきまで見ていた夢のこともあってか、あまりよろしくはないけれど。
それでも、そこまで体調が悪いわけではない。
少し夢見が悪かっただけの話だ。
・・・そう、少しだけ。
言うほどのことでもないし、これはオレの問題だ。
オレが解決していかなければならないことだ。
「大丈夫だ。少し休めばよくなる」
そう言うものの、セラは何やら心配そうに顔を覗き込んでいる。
心配・・・というよりも、何かを言うか言うまいか、迷っているようだ。
オレがそのことを聞こうとしようとしたとき、彼女はそのまま出て行ってしまった。
(一体なんだったんだ????)
まあ、今は眠って明日からの仕事に備えますか。
オレは疑問に思いながら、そのまま眠りについた。
そのときのオレは、明日の仕事のことしか頭になかった。
けれども、よくよく考えてみると、このときから始まっていたのかもしれない。
オレの記憶に『歪み』が現れ出していることに・・・
一方その頃・・・
(・・・あれはなんだったのだろうか??)
セラ、いや私は部屋から出て、すぐ友人の下へ走った。
私の頭の中で一つの疑問が生まれていた。
それは、つい今さっき裕也が目覚める前のときだった。
それまで普通に眠っていたはずの裕也の頭部から突然、魔方陣が現れてバチバチと音を鳴らしながら裕也を苦しめていた。
私が立ち上がろうとしたときには、魔方陣は跡形もなく消え去っていた。
本人に聞こうとはしたが、何かを隠しているような目をしていた。
(裕也・・・お前は一体何者なんだ??)
13/01/14 01:03更新 / マドレ〜ヌ
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