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第四話 動き出した物語
目が覚めると、前と同じ部屋で横になっていた。
周りには、あの夫婦と思われる二人と、剣を携えた黒騎士が立っていた。
他にも、何名か見覚えのある人も・・・・

「ようやく起きたようだな」

「あ、セラ」

彼女もその中の一人として立っていた。
その姿を見たとき、オレの記憶後少しずつ巻き戻っていく。
オレがあの夫婦に目を向けたとき。

「さて、ようやく全員そろったようですし、話を再開しましょうか」

黒騎士の女性が淡々と話を進めていく。
・・・・なんで首止めがついているのだろう??

「まず、あなた方が何をしでかしたか、お解かりですね??」

「「いいえ、何も」」

ピクッ

黒騎士の額から青筋が見え隠れしている。
顔は笑顔だが、目が笑ってない。
相当、怒ってるな、コレ。

(オレ達、何か悪いことしたか??)

(いや、まったく覚えがないな)

セラにアイコンタクトをとるが、彼女もいまいち理解ができていない。
そんなオレ達の姿を見て、黒騎士は頭を下げて、不気味に笑い出した。

「ふ、ふふふ・・・・あれだけ訓練場を廃墟にした上に、とぼけるつもりですか」

あ、そういうことか。

オレは窓から訓練場があったと思われる場所を見つけた。
もはや訓練場ではなく、跡地であるといったほうがよいだろう。
建物は跡形もなく崩れ落ち、地面にはたくさんのクレーターができている。
修理にはかなりの費用に時間がかかりそうだ。

「それに、魔王様に勇者様!!」

ビクッ!!!!

部屋からこっそりと抜け出そうとしている二人の腕をつかみ連れ戻す。
あのときの気迫は何処へ行ったのか、二人ともズルズルと黒騎士に引きずられている。

(それにしても、この二人、そんな大物だったんだ)

「お仕事をほったらかして、何処へ向かうつもりですか??」

「いや、この半年間、まったく外に出ていなかったから、少し空気を吸いに・・・・」

「そうよ、別にやましいことがあったわけではないわ」

「旅行道具を持っていても、ですか??」

「「!!!!!!」」

「それに、私を欺こうとして、この二人の戦いに手を出したことまでわかっていますよ」

「「そんな理由でオレ(私)の戦いの邪魔をしたのか(ですか)」」

オレ達は二人に冷たい目線で責める。
最後の最後で邪魔をされたのだ。怒らずにはいられない。
二人とも、目をキョロキョロして目線を合わせないようにしている。

「・・・・あなた方には、あの建物の修理費、全額支払ってもらいますからね」

話の邪魔をしたオレ達に、黒騎士がキッ、と睨んでくる。
冗談じゃない!!
オレはまだこの世界のことを、まったく知りもしないのに、払えるわけがない!!
絶望感で気絶しそうになっているオレは、勇者と目が合った。

(俺が全額負担するから、ここから逃がしてくれ)

(・・・・本当に??)

(頼む!!また、あの書類の山を見るのはたくさんだ)

どうやら本当に長い間、外へ出ていないようだ。
少しばかりか、同情心も生まれてきた。
そうなると、今さっきまでの怒りは何処かへと吹き飛んでしまった。

(・・・・・わかったよ)

オレは少しの間、考え込んだ。
全額負担してくれるのはいいが、どうやってこの黒騎士の注意をそらせるか・・・・

キラーン!!!

頭の上にいきなり電球が現れ、名案が頭に浮かび上がった。

(そうだ、この手があった!!)

かつて友人たちを死ぬほど驚かせた、あの特技があった!!

「なあ、黒騎士さんよ、ガハッ!!」

オレはベッドの上に、思いっきり血を吐き出した。
はっはっは!!・・・何を隠そう!!オレは自由自在に血を吐くことができるのだ!!
祖父との過酷な修行のストレスによって、体にこんな力が生まれた。
ちなみに、祖父も同じスキルを持っている。
祖父が言うには、必ず習得するスキルだという。
・・・・そんなスキル欲しくねえ。

そう思っていたが、今まさにそのスキルが役に立っている。
人生何が起こるかわからないものだな。
そうかみ締めながら、オレはそのままベッドで気絶したふりをする。

「は??えっ!!??」

黒騎士はかなり動揺している。
目の前で血を吐き出して倒れたのだ、無理もない。
そのおかげで、勇者たちから注意がそれた。

作戦成功。

視線を勇者に向けると、オレのたくらみを理解してくれたようだ。
勇者と魔王はその間に、窓へと走っていく。

「約束は必ず守るからな!!」

勇者はそう叫んで、窓から逃げていく。

魔王は勇者の手を握り、漆黒の翼を広げて空を飛んでいった。
もちろん、片手には旅行バッグを持つことを忘れずに・・・・

「はっ!!しまった!!!!」

黒騎士が窓から身を乗り出すと、明日の方向へと飛び去る二人の姿が見えた。

「ああ、これでまた私に仕事が・・・・」

黒騎士はガクッと肩を落とした。
どうやら、二人のいない間の仕事が彼女の身に降りかかるようだ。
残念だったねえ。

そう思っていると、セラが心配そうに顔色を伺ってくる。

「あんなに血を吐き出して大丈夫か??」

「ああ、血を吐くぐらい、なんともないさ」

セラと会話していると突然、黒騎士の方からまた不気味な笑い声が聞こえてきた。

「ふ、ふふ・・・・そうよ、みんな私ばっかりに仕事任せて旦那といちゃいちゃしやがって、未婚の私への当て付けですか。仕事場でもカップル、プライベートでもカップル、何処にいってもカップル尽くし。・・・・リア充なんて爆発してしまえばいいのに・・・・」

「「・・・・・・・」」

黒騎士はフラフラとした足取りで部屋を出て行った。

かなり病んできてるね、コレ。
セラと顔を合わせながら、一緒に苦笑いをした。
そして、彼女はベッドの端に腰を下ろして、不思議そうにオレを見ている。

「それにしても、なぜ彼らを助けたのだ??」

「まあ・・・気まぐれだ」

彼女は目を点にした後、クスクスと笑い出した。
初めて見た彼女の笑顔に、見とれてしまったのは内緒だ。

「お前って奴は、本当に面白い男だな」

「友人にもよく言われるよ」

そんなことを話しながら二人で笑っていた時。
ふと、あることを思い出した。

「あ、そういえば、お互いにまだ名前を名乗ってなかったな」

「そうだったな。
私はセラ。このギルドの一員だ」

「オレは桜井裕也。よろしく」

二人とも右手を出して握手を交わした。
なんとも不思議な出会いに巡り合ったものだ。
そう思いながら、オレは空を見上げた。
そこには、オレが見たことがない空が広がっていた。
これからの出来事にちょっぴり期待を持たせてくれる、そんな空だった。
12/09/09 02:05更新 / マドレ〜ヌ
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■作者メッセージ
マドレ〜ヌ「お久しぶりです、マドレ〜ヌです。
今回の更新では、タイトルなどを変えてみました!!」

裕也「まあ、投稿するとき、物語が出来上がっていたものの、タイトルがまったく思い浮かばなかったもんな」

マドレ〜ヌ「YES!! 内容を妄想するのはできるが、タイトルを考えることは嫌いだ!!」

裕也(こんな作者についていって大丈夫かな)

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