『その名はアヌビス』
あの後、俺とバフォ様はジャットさん御一行を仲間に加えて再び遺跡を目指すこととなりました。
現在、俺達は地図を頼りに森の中を歩いている最中です。
「……それにしても、この世界の地図ってすごいですね」
「む?そうなのか? わしにとっては普通の地図なのじゃが………」
バフォ様が手にした地図ですが、羊皮紙なのに普通にナビを搭載してやがります。
いや、俺達の現在位置がリアルタイムで更新されて表記されるんですよ。
RPGでは地味ながらも定番のアイテムですが実際に手にしてみるとすごいですよ、コレ。
バフォ様が言うには、なにやら魔術的な加工がされているそうですが………
いったい、どんな仕組みなんでしょうね?
「さて、そろそろ辿り着くはずなのじゃが………」
「ん? おい、アレがそうじゃないか?」
ジャットさんがそう言って指差した先には石造りの巨大な建物が存在しました。
……他に目立つ建造物もありませんし、おそらくアレが目的の遺跡なのでしょう。
「……それにしても、なんでアヌビスの遺跡がこんな森の中にあるんだろうな?」
「え?これって珍しいことなんですか?」
「ああ、アヌビスってのは基本的に砂漠に住む魔物だからな」
そういえば、俺のいた世界ではアヌビスはエジプトの神でしたけど………
もしかして、そのことも関係してたりするんでしょうか?
うーん、どうなんでしょうねぇ……… まぁ、考えても仕方がないか。
「まぁ、そんなことはどうでもよいのじゃ。 とにかく中に入るとするのじゃ」
「では、そうしましょうか。 ジャットさんにスイさん、頼りにさせていただきますね」
「……………ん。 まかせてほしい、です」
「そっちの方こそ、頼りにしているぜ」
では、さっそく遺跡の中に突入するとしましょうか。
「先頭はジャットさんに任せますが、構いせんか?」
「ああ、任せてくれ。 ………とその前に、『ライトスフィア』」
ジャットさんは手の目の前に翳し、呪文を唱えた。
するとジャットさんの手のひらの上に浮遊する光の球が生まれました。
「よし、明かりはこれでいいだろう。 暗いから足元に気をつけろよ」
「………ジャットも、罠には気をつけて、ね」
「ああ、わかっている。 十分に気をつけるさ」
そして、俺達は遺跡の内部へと踏み入った。
俺達はジャットさんを先頭にして、慎重に歩いていきます。
「そういえばナオヤよ、何故にあやつが先頭なのじゃ?
………やはり、冒険に慣れていそうじゃからか?」
「それもありますけどね。 ……バフォ様は漢探知というものをご存じありませんか?」
「おとこたんち?なんじゃそれは?」
【漢探知】
それはパーティのうちの一人が罠に掛かることで、罠の存在とその効果をその身をもって味方に知らせるという、まさに漢の探知術である。
「………そういうことです。 バフォ様、理解しましたか?」
「なるほどな。 うむ、理解したのじゃ」
「まぁ、ジャットさんは格闘も出来るとのことですし、耐久力に問題はないでしょう………たぶん」
「主よ、さりげなく酷いやつじゃな」
「はっはっはっ、それほどでもありませんよ」
「? アンタ達、いったいなにを話してるんだ?」
「いえ、気にしないでください」 「うむ、気にすることはないのじゃよ」
「??? まぁ、警戒だけは怠らないでくれよ」
「わかってます。 それよりもちゃんと前を向いて歩いたほうがよろしいですよ。
………あ、そこなんか怪しいですよ」
俺はジャットさんの目の前に存在する石畳を指差した。
あー、たぶんアレが罠だな。
「ん?コレか? ………確かに一枚だけ色が違うな。
まぁ、こんな見え見えな罠には掛からんよ。 ……さ、奥に行くぞ」
「あ、いえ、そこじゃあなくって……………」
俺がそう言う前に、ジャットさんは色違いの石畳をまたいで歩こうとし───────────────
──────────その時、不意にジャットさんが踏んだ一枚の石畳が深く沈んだ。
……………あー、言おうとしたのに。
気がつけば周囲の壁面が格子状に展開し、その隙間から無数の矢がその頭を覗かせていた。
「やれやれ、漢探知というのも案外役に立たぬものじゃな」
「………ジャットさん、あなたの所為ですよ。 コレ、なんとかしてくださいね」
「いや、手伝えよ!!! ──────────ッ!!飛んでくるぞ!!!」
「はぁ……… ジャットさん、右の矢は任せますよ」
「ああ、任せてくれ!! 左の方は任せるぞ!!!」
俺はすぐさま教鞭を展開し、左の壁面に向けて構える。
同時にジャットさんは両手を右の壁面に向けて構えた。
───────────────そして、矢は放たれたッ!!
「疾ッ!!!」
「『アクアウォール』!!!」
俺は風の防壁を、ジャットさんは水の防壁をそれぞれ左右に展開した。
風の防壁は襲い来る矢を絡め取り、明後日の方向へと誘導した。
水の防壁は襲い来る矢を飲み込み、飲まれた矢は水の中で失速し、その勢いを失った。
「はぁ……… なんとかなりましたかね」
「うむ、そのようじゃな。 ……ところでナオヤよ、先程の罠に気付いていたのかの?」
「ええ、まぁ一応。 ほら、先程ジャットさんが踏んだ石畳だけ周囲が削れているでしょう?
コレ、たぶんですけど何度も踏まれて沈んでいるうちに削れたんですよ、きっと」
「………なぁ、もしかしてナオヤは元盗賊だったりするのか?」
「いえ、そんなことはありませんが………
ジャットさん、なんでそんなことを聞くんですか?」
「いや、なんか俺よりも罠の対処に慣れてそうだからな」
………さりげなく失礼な人ですね。
まぁ、別に構いませんけど。
「ところで、本当にもう大丈夫なのじゃろうか?」
「なんなら確かめてみましょうか」
「……………出来るん、ですか?」
「まぁ、たぶん出来るのではないかと」
「ふむ、出来るのならばやっておいた方がよいじゃろう。 ナオヤよ、試してみるのじゃ」
「はい、ではさっそく……………疾っ」
俺が掲げた教鞭を振るうと、遺跡の内部を柔らかな風が吹き抜けた。
この風は自然のものとは違い、俺の魔力で創られた風だ。
しっかりと意識すれば空気の流れを読んで周囲の状況を探るくらい出来る筈だ………たぶん。
……………ん?これは?
「どうした?なにかあったのか?」
「いえ、そこの角なんですが………何かがいますね」
俺はそう言って角になっている通路を指差した。
ここからだとよく見えないが、あそこに何かがいるのだろう。
「いる?罠じゃあなくって魔物ってことか?」
「さあ?そこまではわかりませんけど………
でも呼吸をしている様子ですし、生物なのは間違いないかと」
「そうか、まぁこんな場所にいるってことは魔物で間違いないだろ。
………そういうわけで、出てきたらどうだ?」
ジャットさんはそう言って、通路の角に呼びかけた。
すると──────────
「にゃはは、ばれちゃったみたいだにゃあ」
「ふむ、どうやら今回の侵入者はなかなか優秀なようですね」
俺達の目の前に犬耳と猫耳が現れた。
惜しげもなく晒された褐色の素肌が、非常にセクシーです。
そういえば、幼女じゃない女性を目にするのは久しぶりです。
サバトの皆さんは当然幼女ですし、スイさんも幼女でしたからね。
「アヌビスに………スフィンクス? アヌビスだけじゃなかったのか?」
「にゃはは、今回は特別なんだにゃ♪」
「はぁ……… 貴方はただ遊びにきていただけでしょうに」
「むぅ、別にいいじゃにゃいか。 ………細かいことを気にしてると禿げるにゃよ」
「禿げませんからね!! とにかく、侵入者を撃退します!!」
「にゃはは、わかったにゃ」
猫耳はそういうと握り締めた拳を突き出すように構え、同時に犬耳は手に持った杖を構えた。
「やれやれ、どうやら襲ってくるようだがどうする?」
「んー……… バフォ様、どうしましょうか?」
「うむ、これも修行じゃ。 ナオヤよ、存分にやってしまうのじゃ」
「わかりました。 ではジャットさん猫耳は任せますね、俺は犬耳の相手をしますので」
「いいのか? あいつ、相当に手強いぞ」
「………まぁ、これも修行ですよ。 それに俺はどちらかというと犬派ですから」
まぁ、猫も好きですけどね。
毛皮もふもふ、肉球ぷにぷに。
「そうか、じゃあアヌビスは任せた。
……スイ、下がってろ。 スフィンクスは俺がやる」
「……………ジャット、大丈夫?」
「心配するなって、俺の実力はスイが一番知っているだろ?」
「ん、わかった。 ……………がんばって、ね」
「ああ、任せろ」
ジャットさんはそういうと、拳を構えて猫耳と対峙した。
つーか、あれがスフィンクスなのか。 ………エジプトの人が見たらなんていうのかな?
まぁ、気にしても仕方がないか。
俺はそう割り切って、教鞭を構えて犬耳と対峙する。
「それではお相手を願えますか?」
「なるほど、私の相手は貴方ですか……… いいでしょう、掛かって来なさい!!」
さて、それでは見せて貰いましょうか。
この世界のアヌビスの実力とやらを。
現在、俺達は地図を頼りに森の中を歩いている最中です。
「……それにしても、この世界の地図ってすごいですね」
「む?そうなのか? わしにとっては普通の地図なのじゃが………」
バフォ様が手にした地図ですが、羊皮紙なのに普通にナビを搭載してやがります。
いや、俺達の現在位置がリアルタイムで更新されて表記されるんですよ。
RPGでは地味ながらも定番のアイテムですが実際に手にしてみるとすごいですよ、コレ。
バフォ様が言うには、なにやら魔術的な加工がされているそうですが………
いったい、どんな仕組みなんでしょうね?
「さて、そろそろ辿り着くはずなのじゃが………」
「ん? おい、アレがそうじゃないか?」
ジャットさんがそう言って指差した先には石造りの巨大な建物が存在しました。
……他に目立つ建造物もありませんし、おそらくアレが目的の遺跡なのでしょう。
「……それにしても、なんでアヌビスの遺跡がこんな森の中にあるんだろうな?」
「え?これって珍しいことなんですか?」
「ああ、アヌビスってのは基本的に砂漠に住む魔物だからな」
そういえば、俺のいた世界ではアヌビスはエジプトの神でしたけど………
もしかして、そのことも関係してたりするんでしょうか?
うーん、どうなんでしょうねぇ……… まぁ、考えても仕方がないか。
「まぁ、そんなことはどうでもよいのじゃ。 とにかく中に入るとするのじゃ」
「では、そうしましょうか。 ジャットさんにスイさん、頼りにさせていただきますね」
「……………ん。 まかせてほしい、です」
「そっちの方こそ、頼りにしているぜ」
では、さっそく遺跡の中に突入するとしましょうか。
「先頭はジャットさんに任せますが、構いせんか?」
「ああ、任せてくれ。 ………とその前に、『ライトスフィア』」
ジャットさんは手の目の前に翳し、呪文を唱えた。
するとジャットさんの手のひらの上に浮遊する光の球が生まれました。
「よし、明かりはこれでいいだろう。 暗いから足元に気をつけろよ」
「………ジャットも、罠には気をつけて、ね」
「ああ、わかっている。 十分に気をつけるさ」
そして、俺達は遺跡の内部へと踏み入った。
俺達はジャットさんを先頭にして、慎重に歩いていきます。
「そういえばナオヤよ、何故にあやつが先頭なのじゃ?
………やはり、冒険に慣れていそうじゃからか?」
「それもありますけどね。 ……バフォ様は漢探知というものをご存じありませんか?」
「おとこたんち?なんじゃそれは?」
【漢探知】
それはパーティのうちの一人が罠に掛かることで、罠の存在とその効果をその身をもって味方に知らせるという、まさに漢の探知術である。
「………そういうことです。 バフォ様、理解しましたか?」
「なるほどな。 うむ、理解したのじゃ」
「まぁ、ジャットさんは格闘も出来るとのことですし、耐久力に問題はないでしょう………たぶん」
「主よ、さりげなく酷いやつじゃな」
「はっはっはっ、それほどでもありませんよ」
「? アンタ達、いったいなにを話してるんだ?」
「いえ、気にしないでください」 「うむ、気にすることはないのじゃよ」
「??? まぁ、警戒だけは怠らないでくれよ」
「わかってます。 それよりもちゃんと前を向いて歩いたほうがよろしいですよ。
………あ、そこなんか怪しいですよ」
俺はジャットさんの目の前に存在する石畳を指差した。
あー、たぶんアレが罠だな。
「ん?コレか? ………確かに一枚だけ色が違うな。
まぁ、こんな見え見えな罠には掛からんよ。 ……さ、奥に行くぞ」
「あ、いえ、そこじゃあなくって……………」
俺がそう言う前に、ジャットさんは色違いの石畳をまたいで歩こうとし───────────────
──────────その時、不意にジャットさんが踏んだ一枚の石畳が深く沈んだ。
……………あー、言おうとしたのに。
気がつけば周囲の壁面が格子状に展開し、その隙間から無数の矢がその頭を覗かせていた。
「やれやれ、漢探知というのも案外役に立たぬものじゃな」
「………ジャットさん、あなたの所為ですよ。 コレ、なんとかしてくださいね」
「いや、手伝えよ!!! ──────────ッ!!飛んでくるぞ!!!」
「はぁ……… ジャットさん、右の矢は任せますよ」
「ああ、任せてくれ!! 左の方は任せるぞ!!!」
俺はすぐさま教鞭を展開し、左の壁面に向けて構える。
同時にジャットさんは両手を右の壁面に向けて構えた。
───────────────そして、矢は放たれたッ!!
「疾ッ!!!」
「『アクアウォール』!!!」
俺は風の防壁を、ジャットさんは水の防壁をそれぞれ左右に展開した。
風の防壁は襲い来る矢を絡め取り、明後日の方向へと誘導した。
水の防壁は襲い来る矢を飲み込み、飲まれた矢は水の中で失速し、その勢いを失った。
「はぁ……… なんとかなりましたかね」
「うむ、そのようじゃな。 ……ところでナオヤよ、先程の罠に気付いていたのかの?」
「ええ、まぁ一応。 ほら、先程ジャットさんが踏んだ石畳だけ周囲が削れているでしょう?
コレ、たぶんですけど何度も踏まれて沈んでいるうちに削れたんですよ、きっと」
「………なぁ、もしかしてナオヤは元盗賊だったりするのか?」
「いえ、そんなことはありませんが………
ジャットさん、なんでそんなことを聞くんですか?」
「いや、なんか俺よりも罠の対処に慣れてそうだからな」
………さりげなく失礼な人ですね。
まぁ、別に構いませんけど。
「ところで、本当にもう大丈夫なのじゃろうか?」
「なんなら確かめてみましょうか」
「……………出来るん、ですか?」
「まぁ、たぶん出来るのではないかと」
「ふむ、出来るのならばやっておいた方がよいじゃろう。 ナオヤよ、試してみるのじゃ」
「はい、ではさっそく……………疾っ」
俺が掲げた教鞭を振るうと、遺跡の内部を柔らかな風が吹き抜けた。
この風は自然のものとは違い、俺の魔力で創られた風だ。
しっかりと意識すれば空気の流れを読んで周囲の状況を探るくらい出来る筈だ………たぶん。
……………ん?これは?
「どうした?なにかあったのか?」
「いえ、そこの角なんですが………何かがいますね」
俺はそう言って角になっている通路を指差した。
ここからだとよく見えないが、あそこに何かがいるのだろう。
「いる?罠じゃあなくって魔物ってことか?」
「さあ?そこまではわかりませんけど………
でも呼吸をしている様子ですし、生物なのは間違いないかと」
「そうか、まぁこんな場所にいるってことは魔物で間違いないだろ。
………そういうわけで、出てきたらどうだ?」
ジャットさんはそう言って、通路の角に呼びかけた。
すると──────────
「にゃはは、ばれちゃったみたいだにゃあ」
「ふむ、どうやら今回の侵入者はなかなか優秀なようですね」
俺達の目の前に犬耳と猫耳が現れた。
惜しげもなく晒された褐色の素肌が、非常にセクシーです。
そういえば、幼女じゃない女性を目にするのは久しぶりです。
サバトの皆さんは当然幼女ですし、スイさんも幼女でしたからね。
「アヌビスに………スフィンクス? アヌビスだけじゃなかったのか?」
「にゃはは、今回は特別なんだにゃ♪」
「はぁ……… 貴方はただ遊びにきていただけでしょうに」
「むぅ、別にいいじゃにゃいか。 ………細かいことを気にしてると禿げるにゃよ」
「禿げませんからね!! とにかく、侵入者を撃退します!!」
「にゃはは、わかったにゃ」
猫耳はそういうと握り締めた拳を突き出すように構え、同時に犬耳は手に持った杖を構えた。
「やれやれ、どうやら襲ってくるようだがどうする?」
「んー……… バフォ様、どうしましょうか?」
「うむ、これも修行じゃ。 ナオヤよ、存分にやってしまうのじゃ」
「わかりました。 ではジャットさん猫耳は任せますね、俺は犬耳の相手をしますので」
「いいのか? あいつ、相当に手強いぞ」
「………まぁ、これも修行ですよ。 それに俺はどちらかというと犬派ですから」
まぁ、猫も好きですけどね。
毛皮もふもふ、肉球ぷにぷに。
「そうか、じゃあアヌビスは任せた。
……スイ、下がってろ。 スフィンクスは俺がやる」
「……………ジャット、大丈夫?」
「心配するなって、俺の実力はスイが一番知っているだろ?」
「ん、わかった。 ……………がんばって、ね」
「ああ、任せろ」
ジャットさんはそういうと、拳を構えて猫耳と対峙した。
つーか、あれがスフィンクスなのか。 ………エジプトの人が見たらなんていうのかな?
まぁ、気にしても仕方がないか。
俺はそう割り切って、教鞭を構えて犬耳と対峙する。
「それではお相手を願えますか?」
「なるほど、私の相手は貴方ですか……… いいでしょう、掛かって来なさい!!」
さて、それでは見せて貰いましょうか。
この世界のアヌビスの実力とやらを。
11/02/28 21:56更新 / 植木鉢
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