-Side Story- 『瞬迅と竜を討つ者』
「ったく…… こんな登場の仕方、ヒーローみたいで恥ずかしいじゃねぇか」
やれやれ、危機一髪といったところか。
ギルドから受け取った手配書に描かれた人物……
『瞬迅のマルク』がリザードマンの少女を襲っている場面に出くわした俺は、竜形態のフレナの背から飛び降りてその間に割り込んだ。
「さて、とりあえず名乗らしてもらおうか。 ケルヴ=ヴォラスト、冒険者だ」
「ケルヴ? 『竜を討つ者《ドラゴンスレイヤー》』のケルヴかよッ!
チッ、マジにウゼェ。 なんでA級の冒険者がこんな辺境にいるんだよォッ!」
どらごんすれいやぁ?
おー、俺の名前にも箔が付いたもんだな。
ま、それはそれとしてだ。
「俺がここにいる理由? いや、お前の所為だろ?」
「あ゛あ゛ン?」
「あー、だからさ、お前が馬車を止めたせいで他の奴らがこれなかったんだよ。
俺はさ、頼れるパートナーがいるから馬車なしでもすぐに動けるし」
俺は空に向けて指を差す。
そこには一匹の竜が翼をはばたかせ、ゆっくりと降りてくるのが見えた。
そして竜は俺の傍へと降り立つと、眩い光に包まれて人の姿へと変化する。
「まったく、飛び降りるだなんて無茶なことはしないでください。 びっくりするじゃないですか」
「そう言ってくれるなって、これも人助けの為だろ?
とりあえず、その娘は任せる。 毒にやられてるみたいだから解毒も頼むぞ。
俺はこいつを片付けるからさ」
少女のことをフレナに任せると、俺は抜き放った剣を目の前のならず者に向けて構える。
『瞬迅』は不快そうに唾を吐き捨てると、鋭い眼光で睨みつけ……… 口の端を吊り上げた。
「キキキ、片付ける? この俺様を? 嘗めてんじゃネエエエエエエエエエエッッッ!!」
『瞬迅』は土埃を巻き上げると音も無く消えた。
―――その刹那。
「―――――!」
冒険者としての経験が警鐘を鳴らし、俺は死角から迫る殺意を剣で切り払った。
すると、飛来するナイフが音を立てて弾け飛ぶ。
「オラオラッ! 続けて喰らいなァッ!!!」
『瞬迅』が吠え、立て続けにナイフを投擲してくる。
そして―――――
―――閃ッ
―――――――閃ッ
―――――――――――閃ッ
俺は様々な方向から繰り返し投擲されるナイフを次々に撃ち落とした。
「チッ、言い勘してやがる。流石だな『竜殺し』」
「所詮お前は盗賊だからな。暗殺者と違って殺気の隠し方が下手糞なんだ―――――よッ!」
ナイフに慣れてきた俺は飛来するナイフの一本を殺意に向かって撃ち"返す"。
そして、弾かれたナイフは回転しながら飛んで行くと―――――
「んなァッ!」
『瞬迅』の目の前を通り過ぎた。
「あー、外れたか。 流石に狙い通りには飛ばないな……」
「〜〜〜ッ! おいッ!てめー何しやがるッ!」
「何って…… 打ち落とすのに慣れてきたから試しに打ち返してみただけだろ?
……それで、どうするんだ? もう遠距離からの攻撃は安全じゃないぜ?
ナイフの数も無限じゃないだろ?」
「ウゼェ・・・・・・ ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェェェェェェェェェェェェェッッッ!!!」
『瞬迅』は半ば狂乱状態でナイフを連投する。
しかし、その軌跡には先程までの鋭さが無く、明らかに冷静さを欠いているのが目に見えた。
そんな攻撃が届く訳も無く、俺が剣を振るう度に次々に迎撃されていき―――――
「ぐあァッ!」
弾き返したナイフの内の一本が『瞬迅』の左肩に突き刺さった。
『瞬迅』は右手で肩を押さえて蹲る。
「勝負ありだな。 どうせそいつにも毒が仕込んであるんだろ?」
「……畜生ォ、俺は負けなんて認めねェぞ」
「はいはい、判ったからじっとしてろよ。 ……とは言っても、どうせ動けないんだろうけどよ」
俺は懐から一枚の呪符を取り出して『瞬迅』の額に貼りつけ……
「放電《ディスチャージ》!」
俺は呪符に封じられた魔力を解放する。
すると―――――
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
呪符は電撃を浴びせて『瞬迅』を気絶させた。
よし、これにて一件落着と。 あ、一応解毒はしておいてあげよう。
後はギルドにこいつを届ければ依頼達成だな。
俺は先程とは違う呪符を『瞬迅』に貼りつけ……
「転送《テレポート》!」
ギルドへと転送した。 ほんと、便利だよなぁコレ。
いくら気絶してるとはいっても、盗賊なんかをフレナの背中に乗せるのは嫌だしな。
なにより大規模の盗賊団とか壊滅させても、コレがないと全員の捕縛なんてできないしな。
さて、と……
一仕事終えた俺は、リザードマンの少女を介抱するフレナの下へと駆けつける。
「フレナー、こっちは終わったぞ。 その娘の様子はどうだ?」
「お疲れ様です。 この娘のことは大丈夫です、解毒は先程済ませました」
「そうか。 ……って、あれ?」
「? どうかしたのですか?」
「いや…… その娘の顔、どこかで見た覚えが……」
俺は記憶を辿り、思いだそうとする。
―――その時だ。
少女はいきなり俺を引きよせると、強い力で抱きついてきて―――――
「兄様♪ お久しぶりですねっ♪」
少女は嬉しそうに声を上げるのだった。
やれやれ、危機一髪といったところか。
ギルドから受け取った手配書に描かれた人物……
『瞬迅のマルク』がリザードマンの少女を襲っている場面に出くわした俺は、竜形態のフレナの背から飛び降りてその間に割り込んだ。
「さて、とりあえず名乗らしてもらおうか。 ケルヴ=ヴォラスト、冒険者だ」
「ケルヴ? 『竜を討つ者《ドラゴンスレイヤー》』のケルヴかよッ!
チッ、マジにウゼェ。 なんでA級の冒険者がこんな辺境にいるんだよォッ!」
どらごんすれいやぁ?
おー、俺の名前にも箔が付いたもんだな。
ま、それはそれとしてだ。
「俺がここにいる理由? いや、お前の所為だろ?」
「あ゛あ゛ン?」
「あー、だからさ、お前が馬車を止めたせいで他の奴らがこれなかったんだよ。
俺はさ、頼れるパートナーがいるから馬車なしでもすぐに動けるし」
俺は空に向けて指を差す。
そこには一匹の竜が翼をはばたかせ、ゆっくりと降りてくるのが見えた。
そして竜は俺の傍へと降り立つと、眩い光に包まれて人の姿へと変化する。
「まったく、飛び降りるだなんて無茶なことはしないでください。 びっくりするじゃないですか」
「そう言ってくれるなって、これも人助けの為だろ?
とりあえず、その娘は任せる。 毒にやられてるみたいだから解毒も頼むぞ。
俺はこいつを片付けるからさ」
少女のことをフレナに任せると、俺は抜き放った剣を目の前のならず者に向けて構える。
『瞬迅』は不快そうに唾を吐き捨てると、鋭い眼光で睨みつけ……… 口の端を吊り上げた。
「キキキ、片付ける? この俺様を? 嘗めてんじゃネエエエエエエエエエエッッッ!!」
『瞬迅』は土埃を巻き上げると音も無く消えた。
―――その刹那。
「―――――!」
冒険者としての経験が警鐘を鳴らし、俺は死角から迫る殺意を剣で切り払った。
すると、飛来するナイフが音を立てて弾け飛ぶ。
「オラオラッ! 続けて喰らいなァッ!!!」
『瞬迅』が吠え、立て続けにナイフを投擲してくる。
そして―――――
―――閃ッ
―――――――閃ッ
―――――――――――閃ッ
俺は様々な方向から繰り返し投擲されるナイフを次々に撃ち落とした。
「チッ、言い勘してやがる。流石だな『竜殺し』」
「所詮お前は盗賊だからな。暗殺者と違って殺気の隠し方が下手糞なんだ―――――よッ!」
ナイフに慣れてきた俺は飛来するナイフの一本を殺意に向かって撃ち"返す"。
そして、弾かれたナイフは回転しながら飛んで行くと―――――
「んなァッ!」
『瞬迅』の目の前を通り過ぎた。
「あー、外れたか。 流石に狙い通りには飛ばないな……」
「〜〜〜ッ! おいッ!てめー何しやがるッ!」
「何って…… 打ち落とすのに慣れてきたから試しに打ち返してみただけだろ?
……それで、どうするんだ? もう遠距離からの攻撃は安全じゃないぜ?
ナイフの数も無限じゃないだろ?」
「ウゼェ・・・・・・ ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ、ウゼェェェェェェェェェェェェェッッッ!!!」
『瞬迅』は半ば狂乱状態でナイフを連投する。
しかし、その軌跡には先程までの鋭さが無く、明らかに冷静さを欠いているのが目に見えた。
そんな攻撃が届く訳も無く、俺が剣を振るう度に次々に迎撃されていき―――――
「ぐあァッ!」
弾き返したナイフの内の一本が『瞬迅』の左肩に突き刺さった。
『瞬迅』は右手で肩を押さえて蹲る。
「勝負ありだな。 どうせそいつにも毒が仕込んであるんだろ?」
「……畜生ォ、俺は負けなんて認めねェぞ」
「はいはい、判ったからじっとしてろよ。 ……とは言っても、どうせ動けないんだろうけどよ」
俺は懐から一枚の呪符を取り出して『瞬迅』の額に貼りつけ……
「放電《ディスチャージ》!」
俺は呪符に封じられた魔力を解放する。
すると―――――
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
呪符は電撃を浴びせて『瞬迅』を気絶させた。
よし、これにて一件落着と。 あ、一応解毒はしておいてあげよう。
後はギルドにこいつを届ければ依頼達成だな。
俺は先程とは違う呪符を『瞬迅』に貼りつけ……
「転送《テレポート》!」
ギルドへと転送した。 ほんと、便利だよなぁコレ。
いくら気絶してるとはいっても、盗賊なんかをフレナの背中に乗せるのは嫌だしな。
なにより大規模の盗賊団とか壊滅させても、コレがないと全員の捕縛なんてできないしな。
さて、と……
一仕事終えた俺は、リザードマンの少女を介抱するフレナの下へと駆けつける。
「フレナー、こっちは終わったぞ。 その娘の様子はどうだ?」
「お疲れ様です。 この娘のことは大丈夫です、解毒は先程済ませました」
「そうか。 ……って、あれ?」
「? どうかしたのですか?」
「いや…… その娘の顔、どこかで見た覚えが……」
俺は記憶を辿り、思いだそうとする。
―――その時だ。
少女はいきなり俺を引きよせると、強い力で抱きついてきて―――――
「兄様♪ お久しぶりですねっ♪」
少女は嬉しそうに声を上げるのだった。
10/12/05 12:43更新 / 植木鉢
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