謝罪とブラ
チュンチュンというスズメの鳴き声が聞こえる。どうやら朝になっていたようだ。
俺は取り敢えず身体を起こした。フローリングの床で眠っていたから身体が痛い。
俺は「ふわぁ......」と欠伸を一回すると、自分の寝ていた場所を見た。そこには、黒髪ロングの褐色の女性が、あぬさんが全裸で寝ていた。そして、俺自身も全裸だった。
まだ覚醒し切っていない脳に昨日の出来事が一気に蘇る。血の気がさーっと引いていくのを感じた。
「やっちまった......!」
俺の口からポツリと後悔が漏れる。すると、あぬさんが「う〜ん......」と言いながら、寝返りを打つ。彼女もフローリングで寝ているため、ゴツゴツと痛そうな音がなった。
「うわぁ」
俺は思わず声が出てしまった。なぜなら、今俺の目の前には、寝返りを打ったことで仰向けになったあぬさんの裸体がそこにあるからだ。
可愛いらしい寝顔の下には、グラドルにも劣らない肉感のある身体は、本人のズボラな性格とは真逆の美しさがある。
服越しでも分かる大きな胸は、おそらくHかG辺りであろうか。見ているだけで揉みしだきたくなる衝動に駆られそうだ。
お腹は胸と対称的に余計な肉が付いていないスリムなものだ。沖縄の暑さがこの人に太ることを許さないのか。
そして、全く処理してないのであろう陰毛。たまに見てるサキュバスのAVのイメージから魔物娘は全員ツルツルだと思っていたが、やはりAVと現実は違うようだ。
しかし、これはこれでエロい...... 俺はあぬさんの無防備の裸体から目が話せなかった。やがて、自分でも分かるくらいに心臓が動きが早まり、それに合わせて俺の呼吸も荒くてなっていく。
そして、段々と全身の血液が下半身のある箇所に一点集中する。これは朝立ちではなく、あぬさんに対する興奮だ。
「うーん......あれ?」
「あ、あぬさん!?」
「うーん?ああ、正志さん。おはようございますー」
最悪のタイミングであぬさんが目覚めてしまった。俺は咄嗟にいきりたった肉棒を手で覆うように隠した。
昨日のあぬさんは完全に我を失っていた。もしかしたら、昨日の出来事を覚えていないかもしれない。だが、俺のモノを見られたら思い出してしまうかもしれない。俺は一縷の望みに全てを賭けた。
が、俺はすぐに気付いてしまった。
男女で裸でいる時点で、“事後”だと言ってるようなものだと......
「すみませんでした!!!」
俺は誠心誠意の気持ちを込めて土下座した。頭でそうすべきと理解するより先に身体が勝手に動いた。
「もしかしなくても昨日のことですよね?」
「はい、本当にすみませんでした!!!」
俺は怖くてあぬさんの方が見れない。どれだけ責められても自業自得とはいえ、耳を塞ぎたくなる。気付けば、あれ程勃っていたモノも縮こまっていた。すると、あぬさんが口を開いた。
「顔を上げてください。正志さんは悪くないですよー」
「えっ?いや、でも......」
「私が襲い掛かったんですからー、正志さんが気にすることはありません」
俺は上半身を上げ、恐る恐るあぬさんの顔を見た。そこには怒りや失望の表情はなく、空港で出会った時から見ている気楽そうで、それでいて優しそうな微笑みだけがあった。
俺はそんなあぬさんの表情を見て、少しだけホッとした。
「ですけどー」
「えっ?」
あぬさんが正座する俺に近づき、耳元で一言囁くように言った。
「私があんなことになったのはー、正志さんのせいですからねー?」
「えっ!?それはどういう!?」
マジで心当たりがないぞ!?昨日の記憶を必死に辿る。しかし、答えに辿り着く前にあぬさんが俺の正面に向き直して、呆れたような表情になっていた。
「あんなことを言っておいて自覚ないんですかー?」
「えっ!?あんなことって?もしかして俺、なんか酷いこと言っちゃいました?」
「逆ですよー、正志さんはこんな私にはもったいない言葉をくれたんですよー?本当に覚えてないですかー?」
俺は再び脳を全力で動かす。すると、これかなと思う発言を思い出した。
ーーーーーーーーー
「あぬさんは綺麗です!」
「それでいて、すごく優しい人です!」
「だから、もっと自信を持って下さい!!」
「ズボラが気になるなら、生活を改善すればいい!部屋が汚いなら掃除をすればいい!」
「一人で出来ないなら、俺も手伝います。ご近所ですから」
ーーーーーーーーー
そうだ!この直後にあぬさんが突然、俺に飛び掛かってきたんだ!
っていうか、こうして思い返すとすごいこと言ってるな俺!しかも、酒も入ってないのに!暑さでどうかしてたのかな?
あぬさんみたいに鋭い人には本音を言った方が良いとは思ったが、これは酷い......
「その顔、昨日の発言を思い出しましたねー♪」
「えっ!ああ、はい......恥ずかしいことを言ってましたね......」
「いいえー、すっごく嬉しかったです♪」
俺は自分の発言の恥ずかしさに思わず俯いたが、あぬさんは嬉しそうに微笑んでいた。どうやら、彼女の心には響いたらしい。そういうことにしておこう。
「あのー、正志さーん?」
「はい?」
「もし、正志さんが良ければ——」
「ハッックシュ!!」
あぬさんが何か言っていたが、いくら真夏の沖縄でも裸に冷房は冷える。
「あ、そういえば私たちー、裸でしたねー」
「取り敢えず、着替えましょうか」
あぬさんは何を言おうとしたのだろう?まあ、後で聞けば良いか。取り敢えず、風邪を引く前に服を着よう。
俺は立ち上がって、昨日着ていた衣服をかき集めた。俺は二日連続で同じ衣服は着たくない。
そして、昨日の衣服を持って、昨日キャリーケースを置いておいた玄関に向かう。そして、キャリーケースから洗い替えのスーツ一式を取り出し、そのまま玄関前で着替えた。昨日のスーツはYシャツだけでも洗濯したいが、あぬさんが俺の部屋の鍵を無くしてしまったため、部屋にすら入れない。
着替え終わりと俺は、玄関前の短い通路とリビングを隔てる白いドア越しにあぬさんに声をかけた。
「あぬさん、着替え終わりました?」
「すみませーん、ちょっとブラが見つからなくてー」
俺の部屋の鍵の次はブラジャーか...... 本当に部屋は綺麗にするに越したことはないと改めて思う。
「一緒に探してくれませーん?」
「ええっ!?」
「お願いしますー、本当に見つからないんですー!」
「新しいの出せばいいでしょ!?」
「出すってどこからですかー!」
「どこからって、その、ブラとか入れてある収納からですよ!」
流石に収納はあるよな?仕舞うのが面倒だから、この汚部屋が出来たんだよな?なんだか嫌な予感がしてきたぞ!
「そんなの、この家にはないですよー!」
「マジですか......」
予感的中!この世に収納を作らない人がいるとは...... 世界は広い。国内だけど。
「だから、お願いしますー!このままじゃ、会社に遅れちゃいますよー!」
「いやでも、あぬさん今付けてないでしょう!?」
「そんなの今更ですよー、さっきまでお互い裸だったんですよー?」
「いやいや!?」
赤の他人同士の男女でも裸を見合ったら、もう気にしないってこと!?これは魔物娘の価値観なのか!?それとも、この人がおかしいだけか!?
「ほーらー!早く手伝ってくださいー!」
「うおっ!」
「えっ、何ですかー?」
「少しは隠してくださいよ!」
あぬさんが突然、短い廊下とリビングを隔てる白い扉を開いた。そこにはおっぱい丸出しのあぬさんが......!って、うん!?
「ってあぬさん!何で下も穿いてないんですか!?」
「いや、パンツ穿いてますけどー?」
「ズボンも穿いてください!」
「えー、暑いから嫌なんですけどー」
「いやいや、冷房効きまくってるでしょう!」
「手脚の毛に熱が溜まって常に暑いんですよー!」
そうなの!?だったら、沖縄にいない方が良いんじゃ?沖縄って常に暑いよ?あなた死んじゃうよ?
「というかー、正志さんはそれで会社まで行くんですかー?」
「ああ、俺まだかりゆしウェアとか持ってないんで」
「死にますよー?暑さで」
うん、あぬさんには言われたくない。
っていうか、今気付いたが、俺はあれ程あぬさんの格好に対して、目のやり場に困るとか言ってたのに、今俺はTバック一枚のあぬさんを相手に普通に会話している。
......もしかして俺、インキュバスになりかけてる?魔物娘とSEXを繰り返すと男はインキュバスに変わるってのは常識だが。実際、東京本社に勤めていた頃の同僚の1人がサキュバスと結婚して、インキュバスになっていた。まあ、見た目は人間のままだから、言われなきゃ気付かなかったけど。
っていうか、俺はあぬさんと一回しかヤってないぞ。これは一体?
「私の裸を見慣れただけだと思いますよー?」
「えっ!?何で分かったんですか!?」
「何となくー」
もう鋭いなんてレベルじゃない!実はアヌビスって心を読めるのか?だから、アヌビスと結婚した男は尻に敷かれるのか?
「あのー、私の裸が見慣れたのなら、もう目のやり場はだいじょぶですよね?ブラ探すの手伝ってくださいー」
色々と考え込んでしまっている俺とは、逆にあぬさんは相変わらずブラ探しの手伝えか...... 一旦考えるのを辞めよう。
「......分かりましたよ」
「ありがとうございますー!」
「どんなブラを探せばいいか聞いても?」
「ああ、ブラなら何でも良いですー」
「え?今穿いてる下着とセットのブラとかじゃ?」
「私、上下気にしないんで、見えないしー」
うら若き乙女がそれで良いのか。まあいい。さっさと見つけてあげるか。
俺は衣服やゴミが散乱したリビングに入る。ここからブラを探すのか。まあ、小さな部屋の鍵よりはすぐに見つかるだろう。
ーーーーーーーー
「ありましたよ......」
「おー!ありがとうございますー!どこにありましたー?」
「......そこのゴミ箱の中に」
ブラを探すだけで10分ぐらい掛かった。収納してれば10秒も掛からないのに...... ゴミ箱にブラなんか聞いたことがない。
「あー、もしかしたらー、ゴミと間違えて捨てちゃってたかもー」
「そうですか......」
もはやツッコむ気力も湧かない。使ってるブラをゴミと間違えて捨てた!?もっとものを大事にしてくれ!
「正志さーん」
「はい......何ですか?」
「ブラのホック留めてくれませーん?」
「はい」
俺はあぬさんの背後に回り、自分でも驚くほど冷静にあぬさんの大きな紫のブラのホックを留めた。後ろから見てもデカいなー。
「はい」
「ありがとうございますー」
すると、疑問が湧いた。これだけ探して紫のブラが一つしか見つからないのは何故だ?まさか......
「あぬさん、ちなみに何ですけど」
「はい?」
「それ以外のブラって?」
「後一つ、黒いやつを持ってますけどー?」
それじゃブラを二つしか持っていないってこと!?この真夏で汗もかくというのに、絶対に足りないと思うが。
「あれー♥、もしかして見たいんですかー♥」
「違います......」
「......なんか疲れてます?」
「はい、すごく......」
いつもの俺なら、あぬさんのような美人にそんな揶揄われ方をされれば、思わずムキになって否定するだろうが、今はそんな気力も無くなっていた
「それじゃー、一緒に朝ご飯を食べましょー!」
「ああ、そういえばまだ何も食べてなかったですね」
「美味しいものを食べればー、元気になれますよー」
「そうですね、じゃあ一緒に食べましょう!」
俺はかなりの労力と時間を費やしたと思ったが、まだ起きて30分ぐらいしか経っていなかった。
とりあえず、あぬさんの言う通り、朝ご飯を食べよう。ただあの、汚いキッチンでまともな料理が出来ると思えない。
っていうか、あぬさんに料理が出来る気がしない......
続く......
俺は取り敢えず身体を起こした。フローリングの床で眠っていたから身体が痛い。
俺は「ふわぁ......」と欠伸を一回すると、自分の寝ていた場所を見た。そこには、黒髪ロングの褐色の女性が、あぬさんが全裸で寝ていた。そして、俺自身も全裸だった。
まだ覚醒し切っていない脳に昨日の出来事が一気に蘇る。血の気がさーっと引いていくのを感じた。
「やっちまった......!」
俺の口からポツリと後悔が漏れる。すると、あぬさんが「う〜ん......」と言いながら、寝返りを打つ。彼女もフローリングで寝ているため、ゴツゴツと痛そうな音がなった。
「うわぁ」
俺は思わず声が出てしまった。なぜなら、今俺の目の前には、寝返りを打ったことで仰向けになったあぬさんの裸体がそこにあるからだ。
可愛いらしい寝顔の下には、グラドルにも劣らない肉感のある身体は、本人のズボラな性格とは真逆の美しさがある。
服越しでも分かる大きな胸は、おそらくHかG辺りであろうか。見ているだけで揉みしだきたくなる衝動に駆られそうだ。
お腹は胸と対称的に余計な肉が付いていないスリムなものだ。沖縄の暑さがこの人に太ることを許さないのか。
そして、全く処理してないのであろう陰毛。たまに見てるサキュバスのAVのイメージから魔物娘は全員ツルツルだと思っていたが、やはりAVと現実は違うようだ。
しかし、これはこれでエロい...... 俺はあぬさんの無防備の裸体から目が話せなかった。やがて、自分でも分かるくらいに心臓が動きが早まり、それに合わせて俺の呼吸も荒くてなっていく。
そして、段々と全身の血液が下半身のある箇所に一点集中する。これは朝立ちではなく、あぬさんに対する興奮だ。
「うーん......あれ?」
「あ、あぬさん!?」
「うーん?ああ、正志さん。おはようございますー」
最悪のタイミングであぬさんが目覚めてしまった。俺は咄嗟にいきりたった肉棒を手で覆うように隠した。
昨日のあぬさんは完全に我を失っていた。もしかしたら、昨日の出来事を覚えていないかもしれない。だが、俺のモノを見られたら思い出してしまうかもしれない。俺は一縷の望みに全てを賭けた。
が、俺はすぐに気付いてしまった。
男女で裸でいる時点で、“事後”だと言ってるようなものだと......
「すみませんでした!!!」
俺は誠心誠意の気持ちを込めて土下座した。頭でそうすべきと理解するより先に身体が勝手に動いた。
「もしかしなくても昨日のことですよね?」
「はい、本当にすみませんでした!!!」
俺は怖くてあぬさんの方が見れない。どれだけ責められても自業自得とはいえ、耳を塞ぎたくなる。気付けば、あれ程勃っていたモノも縮こまっていた。すると、あぬさんが口を開いた。
「顔を上げてください。正志さんは悪くないですよー」
「えっ?いや、でも......」
「私が襲い掛かったんですからー、正志さんが気にすることはありません」
俺は上半身を上げ、恐る恐るあぬさんの顔を見た。そこには怒りや失望の表情はなく、空港で出会った時から見ている気楽そうで、それでいて優しそうな微笑みだけがあった。
俺はそんなあぬさんの表情を見て、少しだけホッとした。
「ですけどー」
「えっ?」
あぬさんが正座する俺に近づき、耳元で一言囁くように言った。
「私があんなことになったのはー、正志さんのせいですからねー?」
「えっ!?それはどういう!?」
マジで心当たりがないぞ!?昨日の記憶を必死に辿る。しかし、答えに辿り着く前にあぬさんが俺の正面に向き直して、呆れたような表情になっていた。
「あんなことを言っておいて自覚ないんですかー?」
「えっ!?あんなことって?もしかして俺、なんか酷いこと言っちゃいました?」
「逆ですよー、正志さんはこんな私にはもったいない言葉をくれたんですよー?本当に覚えてないですかー?」
俺は再び脳を全力で動かす。すると、これかなと思う発言を思い出した。
ーーーーーーーーー
「あぬさんは綺麗です!」
「それでいて、すごく優しい人です!」
「だから、もっと自信を持って下さい!!」
「ズボラが気になるなら、生活を改善すればいい!部屋が汚いなら掃除をすればいい!」
「一人で出来ないなら、俺も手伝います。ご近所ですから」
ーーーーーーーーー
そうだ!この直後にあぬさんが突然、俺に飛び掛かってきたんだ!
っていうか、こうして思い返すとすごいこと言ってるな俺!しかも、酒も入ってないのに!暑さでどうかしてたのかな?
あぬさんみたいに鋭い人には本音を言った方が良いとは思ったが、これは酷い......
「その顔、昨日の発言を思い出しましたねー♪」
「えっ!ああ、はい......恥ずかしいことを言ってましたね......」
「いいえー、すっごく嬉しかったです♪」
俺は自分の発言の恥ずかしさに思わず俯いたが、あぬさんは嬉しそうに微笑んでいた。どうやら、彼女の心には響いたらしい。そういうことにしておこう。
「あのー、正志さーん?」
「はい?」
「もし、正志さんが良ければ——」
「ハッックシュ!!」
あぬさんが何か言っていたが、いくら真夏の沖縄でも裸に冷房は冷える。
「あ、そういえば私たちー、裸でしたねー」
「取り敢えず、着替えましょうか」
あぬさんは何を言おうとしたのだろう?まあ、後で聞けば良いか。取り敢えず、風邪を引く前に服を着よう。
俺は立ち上がって、昨日着ていた衣服をかき集めた。俺は二日連続で同じ衣服は着たくない。
そして、昨日の衣服を持って、昨日キャリーケースを置いておいた玄関に向かう。そして、キャリーケースから洗い替えのスーツ一式を取り出し、そのまま玄関前で着替えた。昨日のスーツはYシャツだけでも洗濯したいが、あぬさんが俺の部屋の鍵を無くしてしまったため、部屋にすら入れない。
着替え終わりと俺は、玄関前の短い通路とリビングを隔てる白いドア越しにあぬさんに声をかけた。
「あぬさん、着替え終わりました?」
「すみませーん、ちょっとブラが見つからなくてー」
俺の部屋の鍵の次はブラジャーか...... 本当に部屋は綺麗にするに越したことはないと改めて思う。
「一緒に探してくれませーん?」
「ええっ!?」
「お願いしますー、本当に見つからないんですー!」
「新しいの出せばいいでしょ!?」
「出すってどこからですかー!」
「どこからって、その、ブラとか入れてある収納からですよ!」
流石に収納はあるよな?仕舞うのが面倒だから、この汚部屋が出来たんだよな?なんだか嫌な予感がしてきたぞ!
「そんなの、この家にはないですよー!」
「マジですか......」
予感的中!この世に収納を作らない人がいるとは...... 世界は広い。国内だけど。
「だから、お願いしますー!このままじゃ、会社に遅れちゃいますよー!」
「いやでも、あぬさん今付けてないでしょう!?」
「そんなの今更ですよー、さっきまでお互い裸だったんですよー?」
「いやいや!?」
赤の他人同士の男女でも裸を見合ったら、もう気にしないってこと!?これは魔物娘の価値観なのか!?それとも、この人がおかしいだけか!?
「ほーらー!早く手伝ってくださいー!」
「うおっ!」
「えっ、何ですかー?」
「少しは隠してくださいよ!」
あぬさんが突然、短い廊下とリビングを隔てる白い扉を開いた。そこにはおっぱい丸出しのあぬさんが......!って、うん!?
「ってあぬさん!何で下も穿いてないんですか!?」
「いや、パンツ穿いてますけどー?」
「ズボンも穿いてください!」
「えー、暑いから嫌なんですけどー」
「いやいや、冷房効きまくってるでしょう!」
「手脚の毛に熱が溜まって常に暑いんですよー!」
そうなの!?だったら、沖縄にいない方が良いんじゃ?沖縄って常に暑いよ?あなた死んじゃうよ?
「というかー、正志さんはそれで会社まで行くんですかー?」
「ああ、俺まだかりゆしウェアとか持ってないんで」
「死にますよー?暑さで」
うん、あぬさんには言われたくない。
っていうか、今気付いたが、俺はあれ程あぬさんの格好に対して、目のやり場に困るとか言ってたのに、今俺はTバック一枚のあぬさんを相手に普通に会話している。
......もしかして俺、インキュバスになりかけてる?魔物娘とSEXを繰り返すと男はインキュバスに変わるってのは常識だが。実際、東京本社に勤めていた頃の同僚の1人がサキュバスと結婚して、インキュバスになっていた。まあ、見た目は人間のままだから、言われなきゃ気付かなかったけど。
っていうか、俺はあぬさんと一回しかヤってないぞ。これは一体?
「私の裸を見慣れただけだと思いますよー?」
「えっ!?何で分かったんですか!?」
「何となくー」
もう鋭いなんてレベルじゃない!実はアヌビスって心を読めるのか?だから、アヌビスと結婚した男は尻に敷かれるのか?
「あのー、私の裸が見慣れたのなら、もう目のやり場はだいじょぶですよね?ブラ探すの手伝ってくださいー」
色々と考え込んでしまっている俺とは、逆にあぬさんは相変わらずブラ探しの手伝えか...... 一旦考えるのを辞めよう。
「......分かりましたよ」
「ありがとうございますー!」
「どんなブラを探せばいいか聞いても?」
「ああ、ブラなら何でも良いですー」
「え?今穿いてる下着とセットのブラとかじゃ?」
「私、上下気にしないんで、見えないしー」
うら若き乙女がそれで良いのか。まあいい。さっさと見つけてあげるか。
俺は衣服やゴミが散乱したリビングに入る。ここからブラを探すのか。まあ、小さな部屋の鍵よりはすぐに見つかるだろう。
ーーーーーーーー
「ありましたよ......」
「おー!ありがとうございますー!どこにありましたー?」
「......そこのゴミ箱の中に」
ブラを探すだけで10分ぐらい掛かった。収納してれば10秒も掛からないのに...... ゴミ箱にブラなんか聞いたことがない。
「あー、もしかしたらー、ゴミと間違えて捨てちゃってたかもー」
「そうですか......」
もはやツッコむ気力も湧かない。使ってるブラをゴミと間違えて捨てた!?もっとものを大事にしてくれ!
「正志さーん」
「はい......何ですか?」
「ブラのホック留めてくれませーん?」
「はい」
俺はあぬさんの背後に回り、自分でも驚くほど冷静にあぬさんの大きな紫のブラのホックを留めた。後ろから見てもデカいなー。
「はい」
「ありがとうございますー」
すると、疑問が湧いた。これだけ探して紫のブラが一つしか見つからないのは何故だ?まさか......
「あぬさん、ちなみに何ですけど」
「はい?」
「それ以外のブラって?」
「後一つ、黒いやつを持ってますけどー?」
それじゃブラを二つしか持っていないってこと!?この真夏で汗もかくというのに、絶対に足りないと思うが。
「あれー♥、もしかして見たいんですかー♥」
「違います......」
「......なんか疲れてます?」
「はい、すごく......」
いつもの俺なら、あぬさんのような美人にそんな揶揄われ方をされれば、思わずムキになって否定するだろうが、今はそんな気力も無くなっていた
「それじゃー、一緒に朝ご飯を食べましょー!」
「ああ、そういえばまだ何も食べてなかったですね」
「美味しいものを食べればー、元気になれますよー」
「そうですね、じゃあ一緒に食べましょう!」
俺はかなりの労力と時間を費やしたと思ったが、まだ起きて30分ぐらいしか経っていなかった。
とりあえず、あぬさんの言う通り、朝ご飯を食べよう。ただあの、汚いキッチンでまともな料理が出来ると思えない。
っていうか、あぬさんに料理が出来る気がしない......
続く......
25/07/19 01:42更新 / 魔物娘愛好家
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