連載小説
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ズボラアヌビスはヘベレケアヌビスに進化するようです。
社宅アパートの部屋の鍵をあぬさんと探していたら、色々あってあぬさんと交際することになった俺は今現在、勤め先である沖縄支社で絶賛お仕事中である。

 自慢じゃないが、俺は仕事が出来る人間だと思っている。東京本社で勤めていた時は同期の誰よりも仕事を早く終わらせて、残業も殆どしなかったし、上司からの評価も高い方だった。......なんで俺は沖縄支社に異動になった?

 まあ、ともかく、東京本社で優秀だった俺なら沖縄支社なんて楽勝だと、そう思ってたんだが......

「部長ー。一通りの書類が完成したのでー、確認お願いしますー」

 ええぇ!?もうさっき頼まれたばっかの書類作成終わったのか!?

「これぐらい余裕ですよー」
「ナチュラルに心読むのやめてください!」
「はーい♪」

 そう、あぬさんは俺以上に仕事が早くて、それでいて正確だった。

 東京本社でもあぬさんほど優秀な人はいなかった。東京本社が彼女の存在を知ったら、相当欲しがるだろうな。

 ......本当になんで俺、沖縄支社に異動になったの?

「うん!完璧だ!流石はあぬさんだな!」
「いやー、それほどでもー♪」

 俺が配属された部署の部長は中年ぐらいでハーフで、まさにイケオジという感じの人だった。東京本社にもそれぐらいの年齢の部長はいたが、東京本社の部長と比べると圧倒的に若々しく、陽気でお気楽そうな、the沖縄って感じの人だった。

 すると、その部長がハンサムな顔と青のかりゆしウェアを自慢げにこっちに向けてきた。

「すごいだろ伊藤君!うちの部署のエースの仕事ぶりは!」
「素直に驚いてますよ。東京本社にもここまで優秀な人はいなかったですから」
「正志さんに褒められたー♪うれしー♪」

 すごい速さでパソコンをカタカタ打ちながら、あぬさんは嬉しそうに俺に言葉を返した。ちなみに、あぬさんのデスクは俺のデスクの隣だ。そのせいで、仕事中ずっとあぬさんの熱い視線を感じて、ぶっちゃけ仕事が捗らない。

 パソコンを打ちながら、俺を凝視したり、会話に混ざったりと、あぬさんのマルチタスクと言うべきか、器用で羨ましい......

「ん?なんだなんだ?あぬさん随分と伊藤君と仲良いな?」
「ああ、分かりますー?エヘヘッ♪」

 いや、エヘヘッ♪て! 上司に対してエヘヘッ♪て!

 というか、さっきからあぬさんののんびりと喋り方!会社であの喋り方は東京本社じゃ許されないぞ!なんというか、沖縄だなー!

「へー。伊藤君」
「は、はい?」
「あぬさんと何かあったな?」
「い、いや、別になにも———」
「私たちー、お付き合いすることになりましたー!」
「ちょっ!?あぬさん!?」

 言いやがったー!!職場恋愛ってあんまり上司に報告するもんでもないでしょ!?

 ほら!仕事中だった周りの社員がザワザワし出したぞー!
 
「ええええ!?ああそう!!おめでとう!!」
「ありがとうございますー♪」

 部長は驚きつつも祝福してくれた。それと同時にザワザワしていた他の社員からも祝福の声援と拍手が俺たちの向けられた。

 なんかこういうの、沖縄っぽいなー。知らんけど。

 というかさっきから、左腕で俺と腕を組みながら、空いた片っぽの腕でパソコンカタカタしてるー!すげー!




ーーーーーーーーーーーー

 あぬさんの恋愛報告のせいで、あぬさんだけでなく、部署の社員や部長からもチラチラ見られながらの沖縄初仕事となった。

 まあでも、部長や社員はみんなどこかのんびりしてて、居心地が良い。東京本社のピリピリした空気は正直苦手だったからな。沖縄では楽しい会社員生活を送れそうだ。

 そして、今現在......

「それでは伊藤君を歓迎して!そして、我らのエースあぬさんと伊藤君の交際を祝して!」

「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」

 部長の計らいで俺の歓迎会と、あぬさんと俺の交際記念と称して、沖縄支社の社員御用達の居酒屋で飲み会を行っている。

 キンキンに冷えたビールが美味い!!これのために労働しているとこあるし!

「伊藤君どう?沖縄でやっていけそうか?」
「はい!東京にいた時よりも楽しくやっていけそうです!」
「そりゃあ良かった!もしなんかあったら遠慮せず相談してくれよ!」
「はい!その時は頼りにしてます、部長!」

 部長良い人だなー!東京では億劫だった飲み会がこんなに楽しいなんてなー!

 ん?なんだ?ワイシャツの右腕の裾が軽く引っ張られた。右を向くと裾を引っ張っていたのはあぬさんだった。

 あぬさんの右手には箸で摘んだ唐揚げがあった。

「正志さーん♪この店の唐揚げは天下一品ですよー!はい、あーん♥」
「んんっ!あ、あーん......」

 あぬさんに唐揚げを口に押し付けられながらも、俺は何とかあぬさんの唐揚げを口に入れた。

 うん!これは美味い!東京では味わったことがない!

「ヒューヒュー!二人ともお熱いねー!」

 し、しまった!!一瞬、飲み会のこと忘れてた!恥ずかしい!

「ねぇ!あぬさんは伊藤さんのどんなとこが好きなの?」
「あー!気になるー!」

 あぬさんの向かいの席に座る女性の先輩二人がビール片手にあぬさんに質問し出した。

 まあ、そりゃ気になるよなー!あんな会社で堂々と交際宣言されたらなー。

「正志さんの好きなとこー?うーん?」

 俺の隣でほろ酔いのあぬさんが若干フラフラしながら悩む。

 俺も内心ドキドキしている。これでないとか言われたらショックだなー!

「私のダメな所を受け入れてくれるとこー!」
「えぇ!あぬさんってダメなとこないでしょ!」
「そうだよ!美人で仕事も出来るあぬさんに欠点なんてないでしょー!」
「いやいやー、私なんてダメなとこだらけだよー」

 それは確かにそうだ。出会って一日しか経ってないが、それは間違いない。

 部屋が汚いとか、掃除しようとしないとか、ブラが二つしかないとかな。

「ウッソだー!」
「でも確かに!伊藤さんって包容力高そうだもんねー!」
「そ、そうですかね?」

 女性に褒められるとやっぱり嬉しい。思わず口角が上がってしまう。

「はい!伊藤さんみたいな人が彼氏だったら、毎日が幸せだろうなー!」
「いや、それは褒め過ぎですよー!へへへ......!」

 この先輩。男の扱いを分かってるなー!それでも喜んでしまうのは男の性だなー。

 とりあえず、気分が良いからビール飲もう!

「正志さーん?」

 なんだ!?急に右側から強烈に恐ろしい視線を感じるんだが!

 恐る恐る首を右に向けると、あぬさんが不気味なまでに穏やかな笑みを浮かべながら、ドス暗いオーラを放っていた。

 俺としたことが......!恋人の横で他の女性の発言に喜んでしまうなんて!そりゃあ、あぬさんもこんなことになるよなー......

「家に帰ったら覚悟しておいてくださいねー?」
「は、はい......」

 なんかあっという間に尻に敷かれた。

 俺たちの会話を聞いていた部長は俺に「どんまい」と口だけ動かし、あぬさんがブチギレる原因となった先輩は申し訳さなそうに「ごめんね、伊藤さん」と謝った。

「ま、まあまあ。あぬさんほら!伊藤さんも悪気があったわけじゃないんだし。それに今は楽しい飲み会の最中なんだから。ね!」

 飲み会の空気を取り戻したかったからなのか、もう一人の先輩があぬさんを諭す。

「......分かりましたー」

 あぬさんは不服そうな声と態度であるが、怒りを収めてくれた。

 俺はあぬさんの怒りを収めてくれた先輩に最大限の感謝を込めて、「ありがとうございます」と小声で伝えた。

 すると、先輩も片手を振りながら、小声で「いえいえ」と返してきてくれた。

 この後も飲み会は続き、どうにか楽しい空気のまま終わったが、本当に大変だったのは飲み会が終わってからだった......



ーーーーーーーーーーーー

「ましゃししゃ〜ん!わらひはまだ!なっとくしてないしゅからね〜!」
「はいはいはい」

 俺の背中に乗るあぬさんがなんか言っている。

 あれから、あぬさんは俺への怒りをかき消すためか、それはもうハイペースでビールを飲みまくった。見ているこっちが心配になるほどに。

 そして、案の定飲み会が終わる頃にはヘベレケアヌビスが誕生してしまったというわけだ。

「あぬさん、家着きましたよ。鍵開けてください」
「うーん、かぎぃー?しょんなの知らなーい」

 俺の鍵の次は自分の鍵が消えたのか!?
 
 っていや待てよ?まさかと思うけど......

 俺は鍵が掛かってるはずのあぬさんの部屋の扉を引いた。

「開いた......」

 開いちゃダメでしょ!外出中に鍵掛けないってどんだけズボラなんだよ!このアヌビス!

「お邪魔しますよー?」
「どーじょー」

 あぬさんの許可を得ると俺は靴を脱いで、その次に背中にいるあぬさんの靴を脱がした。

 そして、そのままあの汚部屋に足を踏み入れた。

「うわぁ......やっぱ汚ねぇ」
「汚くないでしゅ!じぇーんぶひちゅようなものでしゅ!」

 典型的なゴミ屋敷の主人の台詞だ。まさか、現実で聞けるとは。

「ええっと...... ベッドは...... これ?」
「べっど〜!」

 おそらくベッドはこれだろう。花柄の布団が敷いてある。そして、その上にゴミと洋服が散乱している。

 よくこんなとこで寝れるな。このズボラアヌビス。

「よいしょっと......」
「うわ〜♪」

 俺は背中をベッドの方に向けて屈み、そのまま身体を後ろに傾けて、ヘベレケアヌビスをベッドに寝かせた。

「それじゃあ、俺はこれで......」

 そう言って、俺は隣の自分の部屋に帰ろうとした。すると突然、右手を強い力で引っ張られ、そのまま、あぬさんの隣に倒れてしまった。

「ちょ!?あぬさん!?」
「ましゃししゃーん♪どこいくにょー?」
「いや、俺は家に......」
「ダメ〜♪ましゃししゃんはー、ずーっとここにいりゅのー!」
「あぬさん!ちょ———!?」

 俺はあぬさんに強引に熱烈なキスをされる。抜け出そうとしても、あぬさんの力が強過ぎて抜け出せる気がしなかった。

 まずい!このままじゃ綺麗な我が家に帰れない!

「ハァ......ハァ...... 離してください?あぬさん」
「はなしたら〜、ましゃししゃんが行っひゃうから、いや〜」

 あぬさんの身体から抜け出すどころか、あぬさんの拘束はどんどんキツくなっていった。

 うん。これはもう抜け出すのは無理だな。

「......分かりました。今日はこのまま一緒に寝ましょうか」

 ちょうど明日は会社休みだし、別にいいか.....

「やった〜♪ましゃししゃんだいしゅき〜♥」
「......俺も大好きですよ。あぬさん」
「わーい♪エヘヘへへ......」

 あぬさんは笑いながら眠りに落ちた。その寝顔はとても幸せそうで可愛かった。

「お休みあぬさん。明日起きれたらデートでも行きましょう」

 そして、俺もあぬさんに続いて夢の世界に旅立った......
26/01/22 03:33更新 / 魔物娘愛好家
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■作者メッセージ
大変長らくお待たせいたしました!🙇
どうやら、自分は複数の連載を並行して行うことが出来ないタイプだったようで、ここしばらくは“病魔の取引”に集中してました。
この小説も完結させる気でいるので、応援お願いします !🙇

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