連載小説
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少女が少女であること
片目が見えないというのは、ひどく不安定なことだ。
片目が見えていないと、物を掴むということがやりづらい。
なぜって、距離感がつかめないから。

義眼なんてものは、付けても付けなくても変わらないけれど。
私の左目は、生まれた時から光を宿していなかった。
生まれつき左目は盲目だった。
それでも色を失ってはいなかった、でも、私は左目を捨てた。

小さい頃、私は左目が見えないことがコンプレックスだった。
なんで皆と見えているものが違うんだろう、なんで皆が見えているように見えないんだろう。
そんなことで暴れて、自分の目をナイフで突き刺した。
もともと見えなかった目は、とうとう身体の一部でもなくなった。
見えなくてもじんわりと目が熱い感じがした。
私はその時泣いていた、目頭から熱いものが流れていく。
右目からは涙、左目からは、赤い、赤い、血。
母親にはすごく怒られた、当たり前だろう、目を潰したんだから。
それでも私は悪いとは思わなかった、あってもなくてもおんなじだった。
結局見栄えが悪いからと義眼を使うことになった。
小学5年生の頃のこと。

明日は中学校の卒業式、誰とも話さない、話そうとも思わなかった氷の3年間。
これからもきっと、続くのだろう、こんな生活が。
変わらないだろう、幸い、目は見える、全盲ではない。
仕事の効率は落ちるだろうが就職もできるだろう。
・・・私は一人でもいい、高校に入ったら一人暮らしをする、と。
母親には頼らない、私のために、私自身のため。


山の奥、苔むして、雑草が生えた神社の石段、100を超える石段の奥。
目を閉じて、耳を伏せ、尻尾もクルッと身体に巻きつけて、スヤスヤと寝息を立てている妖狐の姿があった。
この妖狐、元は縁結びの神様であり、当時は「縁結びの銀稲荷、月夜」という名を持っていたのだが。
今は自分の名前すら忘れ、ただの妖狐と成り下がってしまった、だが力は健在である。
名前を忘れ、妖狐となり、信仰する人がいなくなって尚、縁の橋と縁の橋をつなげようと微笑んでいる。
もともと優しい彼女なのだが、最近は信仰が薄れ、神社の状態が悪くなったせいか少し荒れている。

春休み、隻眼の少女はとある場所、山奥の古い神社…に来ていた。


荒れた神社、彼女はココが好きだった、この石段に座っているととても落ち着いて、ひんやりとして、だが、春休みが終われば引っ越してしまうために、この神社に来ることはなくなってしまう、故に、この神社、唯一心を許し、
心から笑える場所に来た、少しでも長く居るために。


少女、銀髪の少女、いや、白髪と言ってもいいだろう、とても色素の薄い(ように見える)少女が来た。
色素の薄い、とは言ったが、それは儚げな印象を与えるものではなく、むしろ、氷のように刺すような力の流れがある。
それは、彼女の霊力が漏れ出しているんだ、狐は直感でそう感じ取った。
しかし、こんな刺すような冷たさを持った霊力は人間ではそうありえない。
一瞬彼女も人外かと疑ってしまうがやはり人外である特徴的な部分はなく、それが彼女が人間であることを示していた。

まるで氷の彫像のような少女、どこか悲しげな表情をした少女、時々目を閉じて微笑む少女。
美しい、と、思う。
恋慕にもにたその感情、それは彼女が行う数日の行為によって少しづつ深められることとなる。

少女は眠っていた、いつの間にかまわりは真っ暗で、居眠りしていたのか。
こんなところで居眠りして、妖怪にでもさらわれたらおしまいだっただろう。
そんなことになれば一生妖怪の慰み者にされてしまいそうだ、恐ろしい。
・・・そういえば、あれ、ここはどこだろう。
おそらく室内だろう、随分と広い割には真正面の格子以外に窓が取り付けられていない。
社の中だろうか。
とりあえず家を出てきたのはいいのだが、住む場所などないし、お金も不安定だ。
ふむ、ここにご厄介になるのも悪くはない、が、ここには確か神様がいたはずだ、挨拶くらいはしておこう。
祭壇に向き直り赤色をした石に手を合わせ祈る。

「しばらくここで住まわせて頂きます、できる限りの奉仕をさせて頂きますので、何卒お許し下さい。」

こんなものだろう、庭履きやお祈りをするくらいなら構わない。

「ほんとに信仰してくれるのかや?」

頭の上から声が掛かる、顔を上げると、三本の尻尾、銀色の髪、縦長の三角のような耳、おそらく、この神社のお稲荷様、挨拶してもバチは当たらんだろう。
ひと目見て、見惚れてしまうような美しさを持った少女。
だが、その笑顔は、優しく、どこか子供のようでもあり、妖艶な笑顔にも見える。

少女はかなり変わったお願いをしてきた、いつも受けていた縁結びのお願いではなく、ココに住まわせてくれないか、と。
本来なら帰れと蹴りだすところなのだが、狐はこの少女のことが気に入り、そしてまた気になっていた。
そして、できる限りの奉仕をする、と、彼女は祈りながらこう言った。
だから、姿を表しこう言ってみた。

「ほんとに信仰してくれるのかや?」

ワタシの事を見て怯える、驚くようなら蹴りだしてやろう、そんな意地悪な考えをしながら。

少女は少し困惑した、奉仕すると入っても信仰するとは一言も言っていない。
いや、奉仕するということは同時に信仰しているということでもあるのだろうか。
動返事をするか迷う、下手なことを言えば追い出されてしまうかもしれない。
母親には友達の家に止まる、と言っている、が、母親もウソを言っているのは百も承知であろう。
しかもそんな嘘をついてまで家を出てきたのだ、今更フラフラ帰るわけにもいかない、というかそれは彼女の自尊心が許さなかった。
いや、自尊心云々より、夜に一人で街をうろつくのは嫌だと、女の子らしい考えもいくらか頭をよぎっていた。
そして、最終的に、折れた、考えても仕方ない。

「うん、信仰する、アナタに祈る」

少女はそう答え、狐は笑顔を向けた。

「よし、ならば、明日からはこの服をきてくりゃれ。」

変な言葉遣いだが、一応神様ではあるらしい、で、神に仕える物、ということで、巫女服、と。

「明日は早起きしてもらうからな、とりあえず今日はもう寝るが良い」

いつの間にか布団が敷かれていて、ぽんぽんと手で叩かれている。
まぁ、断るつもりはないし、寝過ごしては大変だから、今日はもう寝ることにする。
13/01/10 00:59更新 / 八夢=ルスト
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■作者メッセージ
第一話です

未熟な文ですが失礼致します

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