連載小説
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氷る花、溶ける凍
神社、とても美しく、綺麗に掃除され、ゴミ一つない境内。
神社に居る、とても美しい境内で、私は一人の女性と話していた。
何を話しているのかは分からないが、受け答えはできている、否、口が勝手に動く。
私自身が喋ってるわけではないのに、勝手に喉から声が出る、口が動いて言葉を話す。
口を閉じようと思えば閉じられるのだが、急に黙ってしまった私を見ると、女性は少し不安そうにする。
いや、そんなつもりじゃないんだけれど、少し困らせてしまったようだ、一番困っているのは私なわけだが。
なんでもないよ、と告げると、私はまわりを見渡した、綺麗だ、どこも埃一つなく、神を祀るにふさわしい場所。
誰が掃除したの?と私が質問すると、彼女は顔を顰め、何を言ってるの?と返してきた。
続いて、アナタが掃除したんじゃない、との言葉も飛んできた。
いや、ちょっと待て、私はこんな神社しらない、そう答えようとして、彼女の方に向き直ると。

「‥‥‥あれ?」

何か不思議な夢を見ていた気がする、しばらく布団の上で胡座をかいてぼーっとしていると、お稲荷さまから声がかかった。

「おーい、早くこっちへ来るんじゃー」

立ち上がって社の外へ出てみる、どこから呼ばれているんだろう。
キョロキョロと境内を見回しながら歩いていると、こっちこっち、と手招きするお稲荷さまが居た。
誘われるままにフラフラと足を運ぶ、まるで操られているようだ、いや、もうすでに操られているのかもしれない。
手招きしていた場所につくと、不意に手を捕まれ、抱え上げられる、おい、一体どこからそんな力が出てるんだ。
と、今まで気づいていなかったが、全裸だ、いつの間に剥かれたんだ。
この狐、人を裸に剥いて何をしたんだ、まさかいかがわしいことではないだろうな。
そんなことをしたなら、一発殴る、それだけは確実だ、神様?昨日の言葉?知ったことか。
だが、なんだ、抱えられて、えらくニコニコしたお稲荷様に誰が声をかけられよう、なんだかすごく嬉しそうな顔で、不気味だ。

「うむ、ついたぞ、そこで体を清めてくるんじゃ」

……相変わらず花魁言葉と姫言葉が混じった変な喋り方だ。
とりあえず、言われたとおりに‥‥‥っておい、なぜ裸にされてるんだ。

「あぁ、服か?、下着に関しては洗わなければいけないし、服は皺になってはいかんからの、脱がした。」

あぁ、そういうこと、ふざけんな、本人の了承なくして服を脱がすとはなんて神様だ。

「神様じゃないしのう、なんてやつだと言われても困るぞ。」

まさか考えを読めるとは思わなかった、考えるのもダメなのか。

「別に、顔に出てただけじゃが」

あら、そうだったか、気をつけなくては…。

水は思ったより冷たく、入る瞬間は思わず身震いしたが、温度になれると潜ってしまいたくなった、が、潜ろうとした瞬間。

「水に潜ってはならん!」

と、怒声が飛んできたのでやめておこう、とりあえず水溜りから出て、用意された巫女服を着る。
‥‥‥えらい胸が強調されてる気がするが、コレはお稲荷様の趣味だろうか?。
とりあえず、掃き掃除をしておこう、箒はどこにあるのだろう。
とりあえずお稲荷様に聞いて見ることにする。

「あの、箒はどこにあるんですか?」

すぐに答えてくれた。

「あぁ、社の裏にあるじゃろう、適当に掃き掃除を終わらせてはよう話し相手になってくれい」

なんだ、話し相手がほしいだけなのか、まぁ掃除は苦手ってわけでもないしすぐに終わるだろう。
そう思いながら境内を掃いていく、掃き掃除はやったこと無いけれど、まぁそんなに気にすることもない。
落ち葉や吸い殻、ゴミがたくさんある、全く、こんな綺麗な場所にどうしてゴミなんか捨てるのか。
少女はそう思いながら掃き掃除を続けている、その様子を妖狐は微笑みながら見守っていた。
あぁ、やはり美しい、私の巫女にふさわしい、と。
ふむ、いたずらしてみようか、そうしようそうしよう。
どうしようか、大きいってわけではないが小さくもない、うむ、いい乳だ、あれも私のものなんだな‥‥‥。
などとセクハラ的な思考をしていると、こんもりと山になったゴミが見えた、ほう、なかなか速いな。
ふむ‥‥見れば見るほど揉みたい乳だ、どれ、一度揉んでやろう。

‥‥もにゅっ

「ひゃわん!?」

うむ、良い反応だ、可愛らしい、氷のような表情が驚いたような表情に変わった、なかなか可愛い顔するじゃないか。
うむうむ、いい感度ではないか、これならよく啼いてくれそうだ。
おっと、よだれが‥‥などと不埒な考えをしている間に裏手の掃き掃除にいってしまった。
ちっ、おもしろうないのう。

驚いた、いきなり乳を揉まれた、意味がわからない、何を考えてるんだ‥‥。
とりあえず掃き掃除は終わった、さて、話し相手に慣れと言われたし、話してみようか。
何を話そう、そうだ、どんな名前かを聞いておこう、教えてくれないならそれもまたよし。

「ねぇ、あのさ、一つだけ聞いていいかな。」

「お?なんじゃ?なんでも聞け聞け、こたえてやるぞ〜」

花魁言葉も使っていたような気もするがたぶんあれは見栄を張ってる時‥‥だと思う。
一呼吸おいてから話す。

「あなたの名前って、教えてもらえるかな。」

お稲荷様は明らかに嫌そうな顔をした、いや、これは困っているのか?、もしかして地雷を踏んだのかもしれない、どうしよう。

「‥‥私は‥‥名前を忘れてしまったんだ、すまんな。」

‥‥‥これまた変な地雷を踏んだようだ、だが、祈るのならば名前がなくては困る。
どうしたものか‥‥、お稲荷様、ということしか知らないし、名前がわかるものなんて持ってない、本人が忘れてしまったの言うのなら、私がしるすべはないということだ。
はてさて‥‥‥。
そうだ、私が名前をつければいいんだ、この、素敵に優しいお狐さまに。

「‥‥じゃあ、私が付けてもいいかな。」

なぜだろうか、人と話すなんてしなかったのに、この御狐様には、どうしてか口が開いてしまう。
まるで自分じゃないようだ、でも、自分の意志で話している。
心が暖かくなる、とても素敵な時間だ。
そんな素敵な時間をくれる狐様に、私はこんな名前をつける。

「‥‥珠萌、なんて、どうかな」

少女、氷のような少女、仮面のように無表情だった彼女が、笑った。
おそらく初めて人に見せるであろう笑顔、それは、とても優しく、小さな花のようだった。

「‥‥名前をつけてくれるのかや?」

狐様はそう答えた、彼女としては呼びやすいからつけただけなのだろう、だが、狐にとって、神にとって、名前とは非常に大切なもの。
同時に、ただ、その行為、その笑顔が、とても愛しいものに見えた。
ただ、数週間仕えるだけ、居住する代償、ただそれだけのはずなのに。
見えてしまった、自分の心が、彼女が愛しいということが。
どうしても、手放したくなくなってしまった、だから。

彼女は、目の前の、初めて咲いた氷の花に、口付けをした。
12/10/08 21:51更新 / 月詠月雲
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■作者メッセージ
第2話です、次エロかもしれません、でもエロ無しで終わるかもしれません。
わかりません、無計画ですいませんorz

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