連載小説
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絶望少年と、最愛の妹
「ラクス、街に買い物に行かぬか?」


ある日、唐突にロードにそう誘われた。


「別に良いけど…。なんで?」

「まあまあ、たまには良いじゃろう?」


疑問に思う俺を、有無を言わさず引っ張る。

まあ、別に良いか。ロードと出掛けたくない理由なんてないし。


「ほれ、早く行くぞ!ラクス!」

「判ってるから、そんなはしゃぐなって」


はしゃぐロードと共に、俺は街へと向かった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「それで、まずどこに行く?」


街に出たものの、特に用事はない。
ロードが誘ったんだから、ロードは何か用事があるんだろうけど。


「とりあえず、プリンを買いに行こう!ストックが切れておった」

「オッケー」


無邪気に笑うロードが愛しくなって、つい頭を撫でる。

最近ロードは俺と二人きりの時に子供っぽい一面を見せる事が多くなった。
俺に心を許してくれた証なのだろうか?


「さ、ゆくぞ!ラクス!」

「うわっ!袖を引っ張るなって……!」


笑顔で走るロードに置いて行かれないよう、俺は急いでロードの後を追った。





はしゃぎながら歩いていた二人は、気付いていなかった。

建物の陰から二人を見つめる存在に。


「あれが、ラクス=グラファイトです」


彼らを見つめる二人の人間は、教団騎士の服装をしており、片方はいかにも騎士然とした好青年だが、もう片方はまだあどけない少女だ。しかしそれでも身のこなしからただ者ではない事が判る。


「間違いないな。手配書と同じ顔だ。隣にいるのはロード=ヴェルベットか。少し厄介だな」

「怖じ気付いたのですか?」


少女の露骨すぎる台詞に、青年はいかにも不快そうな表情をする。


「貴様はバフォメットという魔物を知らぬからそんなことを言える。奴は紛れも無く高位の魔物。半端な戦力では倒せん」

「なら、集められる限りの戦力を集めて下さい」

「…貴様、先程から生意気な口を!自分の立場が判っているのか!?」


少女の口調が気に障った青年は、そう少女を怒鳴り付ける。


「判ってますよ。私はこの任務が終わるまでの命。ラクス=グラファイトを生け捕りにしたら私の様に人体実験。体を弄り終えた私は任務終了後に殺処分。そうでしょう?」


自らの運命を悟ってなお、平然とそう言ってのける少女。その諦めにも近い様子に、青年は何も言えなくなる。


「となると、彼の捕縛は明日、ですか」

「いや、今日行う」

「?」


青年の言葉の真意が理解できない少女。


「私の話を聞いていましたか?出来る限りの戦力を集めて下さいと――」

「もう既に集まっている。この街には、教団騎士が二十人ほど潜んでいる」


少女は疑念を浮かべる。当初の任務はラクス=グラファイトの捕獲だけだったはずだ。何故それほどの人員を――。


「なるほど、私が逃亡しないように。ですか」


納得した少女は嫌みな笑みを浮かべる。教団を嘲笑うかの様な笑みを。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「むふふ〜、プリンが一杯、幸せじゃ〜」


沢山のプリンが詰められた袋を抱えて、ロードはさぞ嬉しそうに笑う。


その様子が可愛かったので、ついまた頭を撫でてしまう。


「ラクスは最近、よく笑うようになったの」


頭を撫でられて、気持ち良さそうにしていたロードが、突然そう言った。


「そう…か?」

「うむ、会ったばかりの頃とは大違いじゃぞ」


そういえば、最近よくサバトの魔女達に『明るくなった』と言われる。

あの事件から俺が立ち直ってきた証拠なんだろうか。

だとすれば――


「そうだとしても、それはお前のおかげだよ」

「ワシは何もしておらんぞ?ただお主を励まして、見守っていただけじゃ」


それが俺には、何より嬉しかったんだよ。判ってるくせに。


「へえ、仲が良いんですね?お二人さん」


前方から、誰かの声がした。


少女だ。まだ10に満たないかというくらいの、幼い少女。
しかしその服装は、俺が憎むべき教団騎士の恰好だった。
顔はフードに隠れて見えないが、そこからは刺すような鋭い嫌悪の視線が滲み出ていた。


「教団騎士か。ワシらに何か用かの?」

「貴女に用はありませんよ。用があるのは、貴方一人」


俺を指差して、そう言い放つ少女。

そんな少女を見て、俺はある違和感を感じていた。

――この少女の声、どこかで聞いたような…。


「反逆者リオン=グラファイトの息子である貴方を教団は異端分子と見て、身柄を拘束する事にしました。ラクス=グラファイト…、いえ、お兄様」


「……ッッ!?」


そう言って少女はフードを脱ぎ捨てた。

そこには、半年前生き別れた妹の顔があった。


「リ、リィナ…?」

「異端分子ラクス=グラファイト。貴方を拘束します」


驚愕する俺を意に介さず、リィナはそう宣言する。
するといつから隠れていたのか、街の至る所から教団騎士が出て来た。


「…フン。少年一人捕らえるのにどれだけの人数を割いとるんじゃ。教団の連中は暇人ばかりじゃのう」


ロードがそう吐き捨てる。
その言葉を聞いてリィナの側にいた騎士が表情を歪める。


「リィナ=グラファイト。貴様はラクス=グラファイトを捕らえろ。あのバフォメットは我々が教団の威信にかけて討ち取る!」


その騎士の言葉を皮切りに、教団騎士達が一斉に襲い掛かってきた。


「ロード…ッッ!」

「心配するな。ワシに任せておけ」


俺に一度笑いかけてから、ロードは詠唱を始めた。


「天光満つる処に我はあり、黄泉の門開く所に汝あり――、」


ロードが練り出す魔力が空に浮かび上がり、巨大な雷雲を形作る。

それを見た先程の騎士が驚嘆の声を上げる。


「バカなっ!街中でこれを使うだと!?」

「出でよ、神の雷!インディグネイション!」


ロードが詠唱を終えると、巨大な雷が轟音と共に地上を貫いた。

それと同時に発生した爆風が、騎士達を吹き飛ばした。


「…すっげえ」


魔法一つで、あれだけの教団騎士を蹴散らした。


「き、貴様…。こんな街中で、やはり、魔物は……」


意識の残っていた騎士が、ロードに向かってそう毒を吐く。


「何か勘違いしておる用じゃな。ワシは街に被害など微塵も与えておらんぞ?」

「馬鹿な!あれほどの落雷、確実に街にも被害が……」


ロードの言う通り、街の建物には傷一つ付いていなかった。


「結構大変なんじゃぞ?魔法を二つ同時に唱えるのは」

おそらく、ロードはインディグネイションを唱えると同時に、街全体に防御魔法もかけたのだろう。

第三者に迷惑をかけず、自分の敵だけを葬る戦い方、やっぱりロードは凄い。


「はぁ、想像を絶する役立たずですね。教団騎士は」


騎士達に侮蔑の視線を浴びせながら、リィナは歩いて来る。


「行け、ラクス」

「え、でも…」

「やんちゃする妹を諌めるのは、兄の役目じゃろう?」


もう戦う気は無いのか、地面に胡座をかいて言うロード。

ロードの言わんとする事は判った。

教団の奴隷としての道を歩くリィナを、俺が引き戻せと言っているのだ。


「行くぞ、リィナ!」

「それは私の台詞です。お兄様」


リィナは懐からナイフを取り出すと、それを全て俺に向かって投げてくる。

右へ大きくステップして、それを躱す。


「スキあり!」

「ぐっ…!」


そこへすかさずリィナが跳び蹴りをお見舞いする。

咄嗟に鎌で受け止めたが、震動が腕に響く。


「はぁッ!」


リィナは空中から続けて踵落としを繰り出す。

それも鎌で受け止めるが、一撃一撃が重く、腕の感覚が鈍くなってくる。

このままではマズい――。
そう思った俺はリィナの攻撃を防ぎつつ詠唱を試みた。


「灼熱の軌跡を以て、野卑なる蛮行を滅せよ…」

「ッッ!させない!」


俺に詠唱をさせまいと、リィナはナイフを投げる。
しかしそれはスピードもなく、軌道も単純。詠唱しながらでも躱す事が出来た。


「くらえ!スパイラルフレア!」


直径数メートルはあろうかという大きさの炎が、渦を巻きながらリィナへと飛んでいく。


「くっ…、アンチマジック…!」


至近距離で撃たれた為回避が間に合わず、咄嗟に防御魔法を使う事で攻撃を凌いだ。


「リィナ、お前…?」

「どうしました?まさか今更戦えないとか世迷い言を言う訳じゃないでしょう」


おかしい、腑に落ちない点が多過ぎる。

目の前の少女は間違いなくリィナだ、少し性格が歪んでいるが、どうせ教団の仕業だろう。


だがリィナのこの強さは何だ?
半年前までリィナは至って普通の少女だった。将来冒険者になりたいと言って剣術を少し習っていたが、格闘技もナイフ投げもリィナは習っていない。そもそも八歳の少女にそんな運動能力がある訳無い。


だとすると――、


「さあ、行きますよ!今度は受け止めきれますか?」

「…ッッ!リィナ!お前教団に何された!?」


再び攻撃を始めたリィナにそう問う。


「大した事はされてませんよ?不気味な魔法陣を身体に刻まれて、変な薬を大量に飲まされただけです」


リィナが自嘲めいた笑いを浮かべながら答える。
確かに、よく見るとリィナの身体には魔術的な紋様が幾つも刻まれている。


「何!?あれは…!」


後ろでロードが驚きの声を上げる。


「ロード!何か知ってるのか!?」

「彼女の身体に刻まれた魔法陣、どれも今魔界では封印された危険な魔術のものばかりじゃ!」


危険な魔術…。そんなものを教団の連中はリィナに…ッッ!!


「ラクス!それ以上長引かせるな!戦えば戦う程魔法陣はリィナの身体を蝕むぞ!」

「くっ…、そ…!」

「そうですね。お兄様を教団へ連行したら私の命は尽きるでしょうね」


リィナはロードの言葉を聞いても、特に驚いた様子を見せない。

そんなリィナを見て、俺は決めた。


――何が何でも、リィナを救うと。


「その御名の許、この穢れた魂に裁きの光を降らせたまえ!ジャッジメント!」


天空から幾百の光が、俺とリィナに降り注ぐ。


「しまっ、これは…!」


逃げ場が無いように、俺とリィナの周りを埋めつくす程の量を降らせた。ジャッジメント程の高位魔法。アンチマジックなどでは防げない。

これならリィナを確実に倒せる。当然ジャッジメントは俺にも降り注ぐが、リィナの為ならそれを厭わない覚悟が出来た。


ジャッジメントの閃光は、俺とリィナを包み込んだ。



―――――――――――――――――――――――――――――――――


「う、うぅ…」


身体が動かない。それに節々が痛む。


「目が覚めたかの?」


傍で声がした。不思議と癒される、愛しい人の声。


「ん…、ここは…?」

「ワシの家じゃ。あの後倒れたお主らをワシがここまで運んだのじゃぞ」


そうだ、俺はリィナと戦ってて……。


「リ、リィナ!リィナは!?」

「安心せい。今は別の部屋で安静にしておる」


慌てる俺をロードが宥める。

…てゆーか、


「……何やってんの?」


今の今まで気付かなかったが、ロードは下着姿で俺の上に馬乗りになっていた。


「え、それは…、その…、あの…」


珍しく口ごもるロード。


「先の戦いで大技を使ったじゃろ?それで…、体内の魔力が…」


確か魔物は魔力を人間の『精』で供給するんだよな。…ってことは――、


「要するに、ラクス…。ワシを、抱いてくれ」


顔を真っ赤にさせて、耳元で囁かれる。

好きな女性にこんな事を言われて、その気にならない男なんていないだろう。もちろん、俺もロードを抱きたい。


「ロードが良いなら、俺は…、良いよ」

「ありがとう…、ラクス…」


俺が了承すると、ロードは下着を外した。


「どうかの…?ラクス…、ワシの、身体…」


一糸纏わぬ姿を俺に見せ、ロードは恥ずかしそうに言う。


「綺麗だよ。白くて、胸も可愛くて」


真っ白な肌の上で一際目を引く薄桃色の乳首を口に含む。


「ひゃうんっ!」


それに反応して、声を上げるロード。

その様子が可愛かったので、両方の乳首を口と手で同時に責める。


「んんっ、くうっ!ラ、ラクス……」


快感で喘ぎながら、ロードは何かを訴える。


「下も…、弄ってくれんかの…?」

「うん、判った…」


乳首から口を離し、ロードの秘所に顔を近付ける。


「なんか、良い匂いするな」

「や…、そんな、スーハーしちゃ駄目…じゃ…」


匂いを嗅がれて、恥ずかしそうな声を上げる。

…舐めたら何て言うかな。


…ペロ。


「ひゃっ…!」


突然の感覚に、ロードはさっきよりも大きい喘ぎ声を漏らす。


「ラクス…、ここ…」

「ん…?」


ロードは、自分の秘所にある突起を指差した。


「クリトリス…、そこを責められるのが一番気持ち良いんじゃ…」


つまり、ここを弄って欲しいという事だろう。


クリトリスの先端を舌で少し舐める。


「んあぁっ…!良い…!」


良いらしい。もっと入念に責めてみよう。

膣内に指を入れながら、クリトリスを舌で弄ぶ。


「ひゃっ、ダメ…!イク……ッッ!」


ロードは辛そうな声を漏らした後、


「んあああぁぁッッッッ!」


大きく身体を反らして、ビクビクと震えた。

絶頂が終わると、ロードはこちらに身体を預ける。


「あー…、気持ち良かったぞ。なかなか上手いではないか」

「あ、ありがとう…、で、良いのか?」

「お礼に次はワシがお主を気持ち良くしてやろう」


そう言うとロードは俺のズボンを下ろし、俺のペニスを剥き出しにした。


「ふふ、立派なモノを持っておるのう」


さっきの愛撫の影響で、俺のペニスは既にギンギンになっている。

それをロードは、その小さな口でくわえる。


「はむ…、んじゅっ…、んむっ…」


ロードの唾液でヌルヌルになったペニスを、優しく、されど激しく口内で舐め回す。


「れろ…、はむ…、じゅるっ」


陰茎とカリを入念に舐め上げ、亀頭から滲み出る先走り汁を吸い上げる。


「ひょろひょろ、ひひほうひゃろ?(そろそろ、イキそうじゃの?)」


再びペニスをくわえ、射精に導く為に舌を這い纏わらせる。

そこで俺は、我慢の限界に達した。


「んっ!ロード…っ!出るっ…!」


ロードの口内に、精液を漏らす。

口から溢れ出るそれを、ロードは舐め取り、掬い上げ、全て口に含んだ。


「新鮮なラクスの精、堪能させてもらったぞ」


精液を全て飲み込むと、ロードは満足そうに微笑んでそう言った。


「じゃあ…、次はこっちに出してもらおうかの」


射精の余韻で身体が満足に動かないのを良いことに、ロードは俺を横にさせて騎乗位の体勢をとる。

そしてロードは腰を落とした。
ロードの膣内に俺のペニスがズブズブと侵入していく。


「んっ…、あ、凄い、これ…、大きい…っ」


小柄な彼女の身体に、俺の息子は不釣り合いだったのか、受け入れる容量の大きさにロードはうめき声を上げる。

しかしそれでもロードは腰を上下に動かし、俺に快感を与える。


その時俺は、ロードと俺の結合部から紅い液体が流れるのを見た。


「ロード…ッッ!お前、それ…ッッ!」

「大丈夫じゃ、大した痛みはない。処女だったのじゃから、血が出るのは当然じゃ」


俺が心配するも本人は大して問題はないらしく、腰をグラインドさせ続けた。


「あぐっ…!ロード…ッッ!」

「ふふ、顔が可愛くなってきたぞ?そろそろ出るじゃろ?」


ラストスパートと言わんばかりに、腰の動きを激しくさせるロード。


「ダメだッッ!ロード!出るッッッッ!!」

「良いぞ!出せッッ!ワシの中に、ありったけの精をッッ!!」

「んあああああぁぁぁッッッッ!!」





「ふう、これがセックス…。気持ち良いものじゃな〜」


精を供給できで大満足のロードは、顔を紅くさせて余韻に浸る。


逆に精を搾り取られた側の俺は、ベッドで横になりながらゼーゼーと肩で息をする。


「ロード…。お前、初めてなら初めてって言ってくれよ……」

「別に良いではないか。処女でも非処女でも大して変わらんじゃろう?」


まあ…、後半はリードされっぱなしだったけど。


「ワシの処女はな、将来ワシが兄と認められる男に捧げる予定だったんじゃ」


初めてを兄と認められる男に…?


「え、それ良いのか?俺が貰っちゃったけど…」

「まったく、肝心な所で鈍いのう」


ロードは呆れた表情で、溜め息をつく。


「――お主に、ワシの兄上になってほしいのじゃ。ラクス=グラファイト」


真っ直ぐに、俺の目を見据えて、ロードはそう言った。


「俺…で、良いのか?」

「ああ、ワシはこの半年間、ずっとお主を見ておった。魔物を軽蔑しない優しさ、人の親切を肌で感じる純粋さ、強くありたいと願う向上心、仲間を大切にできる友愛、自分の非を認める誠実さ、家族の為に命を懸ける勇気。その一つ一つが、お主をワシの兄上にしたいとワシに思わせたんじゃ」


優しく微笑みながらロードは言う。普段見せる威厳ある笑みとも、時折見せる無邪気な笑みとも違う。俺を包み込んでくれるような優しい笑みを浮かべて。


「お主こそが、ワシの兄上となるべき人物。今一度言う、ワシの兄上になってくれ」


頭を下げてそう言うロード。その身体は、少し震えていた。
断られないか、心配なのだろう。

俺は、そんな彼女の身体を優しく、力強く抱きしめた。


「俺も、ロードの兄になりたい。ずっと、ロードの傍に居たい」


ロードが顔を上げる。目尻に涙を浮かべており、今にも泣き出しそうな顔だった。

直後ロードは、力一杯俺を抱きしめた。


「嬉しい…!ラクスが兄上になってくれて、嬉しい……!」

「俺も嬉しいよ。ロードの兄になれて」


ロードが顔を上げ、自分の顔を俺の顔に近付ける。


「本当は、エッチよりこれが先なんじゃがな」


照れ臭そうに笑うと、ロードはこう続けた。


「好きじゃ、ラクス」

「俺も好きだ、ロード」


俺とロードは、静かにキスを交わした。



―――――――――――――――――――――――――――――――――


「本当に、言っちゃうんだね」


リリカが名残惜しそうに、俺とロードを見る。


あの後、ロードの兄となった俺に、ロードはある頼み事をして来た。


それは、ロードの一つの『夢』だったらしい。


『ワシは、兄上と共に世界中を旅したいのじゃ!』


初めロードにそう言われた時は、本当に驚いた。
でも俺は止めなかった。

ロードがそうしたいと言うなら、俺はそれに付き合うだけだ。


妹の我が儘に付き合うってのも、兄の役目だろう?


「お兄様!寝癖がついてますよ!しゃきっとして下さい!」


サバトの魔女達がロードに別れの言葉を言っている間、俺はずっと少女――リィナに身だしなみを整えられたり、荷物のチェックをされている。


結局、リィナは助かった。
ロードが他のバフォメット達にも協力を仰ぎ、魔法を解く方法を調べたのだ。
薬物の方は、リリカが解決してくれた。リリカは冒険者の頃、薬剤師としての顔も持っていたらしく、すぐに薬の効果を消す薬を作ってくれた。


本当にリリカには世話になった。いつか必ず礼がしたい。

「リリカ、ワシが居ない間は、お主がサバトを引っ張っていくのじゃ」


「うん…、そうだよね。私が居ないとね」


ロードの言葉で、ようやくリリカは元気を出した。


「ロードさん」

「む?」


俺のチェックが終わった後、リィナはロードの方を向いた。


「ウチの兄は、根暗だし、ドジだし、クール振ってるくせにすぐテンパるお調子者ですが、どうか兄をよろしくお願いします!」

俺の事を散々に言った後、ロードに頭を下げる。


「うむ、任せておけ。兄上はワシが守るからの!」


がっちりと固い握手を躱す二人。知らない間に何か変な友情が芽生えた様だ。


「じゃ、そろそろ行くかの?」

「ああ」


俺達は、リィナ達に背を向け、歩き出した。


「二人とも、元気でねーッッ!!」

「リリカもしっかりやるんじゃぞー!」

「リリカやサバトの皆に迷惑かけるなよ!リィナ!」

「はい!お兄様も、ロードさんのお荷物にならないように!」


二人の声援を受け、俺とロードは街を出た。


「まずどこに行く?」

「とりあえずジパングに向かおうかの。あそこの文化はとても独特らしいぞ」


俺の隣でロードは朗らかに笑う。



俺は、両親と今までの日常を失った。
けれど希望は、ロードが与えてくれた。

この愛しい妹が与えてくれる新しい日常を、俺は精一杯駆け抜けたいと思う。
11/07/23 21:24更新 / ソーマ
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■作者メッセージ
絶望したぁ!

こんな需要の無いエロしか書けない自分に絶望したぁぁぁ!


はい、という訳で最終章です。。
今回はかなり悩みました。
初めはリィナは助からず、それによって傷ついたラクスをロードが妹代わりになって励ますというストーリーで考えていたんですが、感想でリィナの無事を願う感想があったので、誰も死なないハッピーエンドにしてみました。

『絶望少年と、愉快なバフォメット』はこれにて完結となります。ですが、ラクスとロードの話はこれからも書いていきたいです。結構愛着が湧いたので。

これからの展望としましては、ラクスとロードが世界中を旅する『幽明兄妹』シリーズと、サバトを任されたリリカとリィナの奮闘記『有閑魔女』シリーズの執筆を予定しています。

今回は無謀にもエロに挑戦しましたが、限界を感じたので、今後エロ要素が入ることはほとんど無いと思います。

最後になりましたが、私の作品に最後まで付き合って下さり、ありがとうございます!

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33