序章‐2【贖罪】※世界観説明、エロ無し
〜現代:魔界某所【エデンの檻 施設内】〜
「やぁ、ライル。元気そうで何よりだ。」
「ハインツ、お前また捕…いや違う。」
ライルは新たに現れた存在に混乱を極めたが一つの結論を得た。
国家機密。[勇者]という王国の重要人物。つまり…
「お前のせいか!!!!」
「流石は僕の親友♪そうさ僕が全ての黒幕。この惨劇を引き起…」
「てめぇっ!!!!ふざけてんのか!!」
ライルは激怒した。いつもいつもこいつはこの調子で面倒事に巻き込みやがって。腕は縛られているが、関係ない。腕が駄目なら脚で蹴ってやる。脚も駄目なら這って噛みついてやる。
とりあえず一回殴らせろ!!
「えっ、ちょ、待っ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「申し訳ありませんでした。」
絨毯の上で勇者が綺麗な土下座している。
頭には踵落としでつけてやったタンコブがある。顔面は見えないが何回か蹴りを入れたから人相も変ってる事だろう。
一般人には到底見せられない無様な姿だ。
まぁ、見せた所でこいつの評価が下がる訳ではないだろうがな。
『そ、そろそろ茶番はやめにして本題に移りませんか?』
ずっと後ろで見ていたクリスタがおずおずと声をかける。
口調は変わらないが、なんかさっきと様子が違う。
「どうした?」
『ヒァッ!?な、何でもありません。』
あ、これ引かれてるわ…さすがに暴れすぎたか。
「そうだね、そろそろ話をしようか。全く…すごく痛かったよ。」
「…。」
部屋にあった椅子に腰かけて向かい合う。ハインリッヒの顔からは腫れもタンコブを消えている。勇者由来の回復能力はまだ健在か。
「まずは改めて謝罪させてくれ。君を巻き込みたくはなかったんだが。」
「…一体何しでかしたんだよ。」
こいつがここまで真剣な姿勢になるのも久しぶりだな。
「君は僕の妻を見てしまったんだ。」
「…記憶には無いがな。それが関係あるのか?」
「ある。…はっきりと言おう。僕の嫁は現魔王だ。」
「…は?」
冗談にしては突拍子過ぎるぞ。
「これは嘘じゃないんだ。昨日僕が捕虜になってた時の話は覚えているかい?」
4年前、こいつは初陣でいきなり捕虜として敵に降りやがった。
救出作戦で他国の勇者と捕虜収容所を襲撃したりもしたが結局見つける事が出来なかった。
王国から新たな勇者が現れないからまだ生きているのは分かっていたが
まさか内通者を作って独自に行動しているとは思わなかった。
まぁ、終戦後にひょっこり帰って来る&問題発言の2コンボで国民全員から怒りを買ってしまった事は同情するが。
「あぁ、魔王軍の協力者を見つけたって話か…まさか」
「そのまさかだよ。その時の協力者が現魔王であるエミリアだ。協力して前魔王を打ち滅ぼしたんだ。そして代替わりとしてエミリアが選ばれた訳だよ。」
「…。」
言葉が出ない。こんなの俺の知ってるハインツじゃない。
「この事は王国は知っているのか?」
「あぁ。そしてこれから話す事も。それを君は知る必要がある。」
いつの間にか机の上にはクレスタが淹れたお茶が並んでいた。
傍らでクレスタが指で宙をなぞる。不思議な事に手の拘束が崩れて消えてしまった。
『拘束したままでは不便かと』
「…。」
「すまないね、ありがたく頂くよ。」
ハインリッヒはお茶の飲みつつ話は続く。
「前魔王を打ち滅ぼした後についてだけどその前に君に聞きたい事がある。終戦後、君は魔物を見たかい?」
「隣にいるじゃないか」
「そうだね、彼女達はサキュバスだ。ではそうだな…ミノタウロスやメロウを見たかい?」
「…いや見てないな。戦争中は腐る程見たが。」
「これもはっきりと言おう。君の知っている魔物はもういないんだ。皆魔物娘として転生している。」
「…魔物[娘]?」
聞いた事のない言葉が出てきたぞ。
「後で本物を見てもらえればどういう事かわかるだろう。そして、これはエミリアが魔王となった事による。」
「魔王になるだけで何か変わるのか…信じがたいが…。」
「仕組みは分からないがどうも魔王というのは最初に魔物の性質を決める能力があるらくてな全魔族がこれに準ずる事になるらしい。例えば先代魔王の場合[人間と対立し隷属させるべし]かな。」
成程、そんな力が魔王にはあったのか。という事はこの戦争の発端も代替わりから突然始まったのか…?
「そしてエミリアの場合[人間と共存し、性春を謳歌すべし]と願っちゃったらしいね。」
「ちょっと待て、なんだその[性春]って。」
「簡単な話、エロい事だな。」
「そんな事を聞いてるんじゃない!!何でそんな願いなんだ。」
「サキュバスだからでしょ。」
「…。」
空いた口が塞がらない。
「まぁ、止めようとしても無理だな。こんな力があるのを誰も知らなかったんだし。話を戻すけどこの力のおかげで魔界側の対立理由はほぼ消滅した。だからこそ停戦にこぎつける事が出来た。」
確かに戦争を終らせた事は大きい。だからこそ一つ疑問が残る。
「何でその事を世界に伝えないんだ?そうすればお前は世界の英雄だろうが。妻が魔王なのは確かに問題だが、いまや魔物の性質は対立ではなく共存なのだろう?サキュバスも魔物ではなく異種族として見ればエルフと同じハズだ。異種族との結婚を禁忌とする教国の連中は黙ってないかもしれないがそれでも今みたいに日陰暮らしはしなくて済むはずだ。」
そうだ、ハインツは終戦後ずっと後ろ指をさされて生きている。
役立たず、勇者(置物)、神託の無駄遣い
軍属の者ですら、蔑む者がいるぐらいだ。
そうしてこいつは3年間生きてきたはずだ。
昨日、偶然見つけた時は最初声をかけてものか考えてしまった。
でも考えるだけ無駄だった。向こうから声をかけて来たからのだから。
昔と変わらない声で。
「…そうだね、その通りだ。」
「だったら…!!」
「でも、まだできない。この平和はあくまで仮初の物で、絶妙なバランスの元に成り立っている。そしてこれは僕たちの責任だ。」
そう言ったハインツの目は強い意志を感じた。いつもの柔和でふざけた雰囲気ではなく、それはそう、神託を受けた勇者の目。
責任とは何の事だろうか。聞こうとしたと同時にハインツが立ち上がる。
「少し外に出ようか。魔物[娘]がどういう存在か、見に行こう。」
「やぁ、ライル。元気そうで何よりだ。」
「ハインツ、お前また捕…いや違う。」
ライルは新たに現れた存在に混乱を極めたが一つの結論を得た。
国家機密。[勇者]という王国の重要人物。つまり…
「お前のせいか!!!!」
「流石は僕の親友♪そうさ僕が全ての黒幕。この惨劇を引き起…」
「てめぇっ!!!!ふざけてんのか!!」
ライルは激怒した。いつもいつもこいつはこの調子で面倒事に巻き込みやがって。腕は縛られているが、関係ない。腕が駄目なら脚で蹴ってやる。脚も駄目なら這って噛みついてやる。
とりあえず一回殴らせろ!!
「えっ、ちょ、待っ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「申し訳ありませんでした。」
絨毯の上で勇者が綺麗な土下座している。
頭には踵落としでつけてやったタンコブがある。顔面は見えないが何回か蹴りを入れたから人相も変ってる事だろう。
一般人には到底見せられない無様な姿だ。
まぁ、見せた所でこいつの評価が下がる訳ではないだろうがな。
『そ、そろそろ茶番はやめにして本題に移りませんか?』
ずっと後ろで見ていたクリスタがおずおずと声をかける。
口調は変わらないが、なんかさっきと様子が違う。
「どうした?」
『ヒァッ!?な、何でもありません。』
あ、これ引かれてるわ…さすがに暴れすぎたか。
「そうだね、そろそろ話をしようか。全く…すごく痛かったよ。」
「…。」
部屋にあった椅子に腰かけて向かい合う。ハインリッヒの顔からは腫れもタンコブを消えている。勇者由来の回復能力はまだ健在か。
「まずは改めて謝罪させてくれ。君を巻き込みたくはなかったんだが。」
「…一体何しでかしたんだよ。」
こいつがここまで真剣な姿勢になるのも久しぶりだな。
「君は僕の妻を見てしまったんだ。」
「…記憶には無いがな。それが関係あるのか?」
「ある。…はっきりと言おう。僕の嫁は現魔王だ。」
「…は?」
冗談にしては突拍子過ぎるぞ。
「これは嘘じゃないんだ。昨日僕が捕虜になってた時の話は覚えているかい?」
4年前、こいつは初陣でいきなり捕虜として敵に降りやがった。
救出作戦で他国の勇者と捕虜収容所を襲撃したりもしたが結局見つける事が出来なかった。
王国から新たな勇者が現れないからまだ生きているのは分かっていたが
まさか内通者を作って独自に行動しているとは思わなかった。
まぁ、終戦後にひょっこり帰って来る&問題発言の2コンボで国民全員から怒りを買ってしまった事は同情するが。
「あぁ、魔王軍の協力者を見つけたって話か…まさか」
「そのまさかだよ。その時の協力者が現魔王であるエミリアだ。協力して前魔王を打ち滅ぼしたんだ。そして代替わりとしてエミリアが選ばれた訳だよ。」
「…。」
言葉が出ない。こんなの俺の知ってるハインツじゃない。
「この事は王国は知っているのか?」
「あぁ。そしてこれから話す事も。それを君は知る必要がある。」
いつの間にか机の上にはクレスタが淹れたお茶が並んでいた。
傍らでクレスタが指で宙をなぞる。不思議な事に手の拘束が崩れて消えてしまった。
『拘束したままでは不便かと』
「…。」
「すまないね、ありがたく頂くよ。」
ハインリッヒはお茶の飲みつつ話は続く。
「前魔王を打ち滅ぼした後についてだけどその前に君に聞きたい事がある。終戦後、君は魔物を見たかい?」
「隣にいるじゃないか」
「そうだね、彼女達はサキュバスだ。ではそうだな…ミノタウロスやメロウを見たかい?」
「…いや見てないな。戦争中は腐る程見たが。」
「これもはっきりと言おう。君の知っている魔物はもういないんだ。皆魔物娘として転生している。」
「…魔物[娘]?」
聞いた事のない言葉が出てきたぞ。
「後で本物を見てもらえればどういう事かわかるだろう。そして、これはエミリアが魔王となった事による。」
「魔王になるだけで何か変わるのか…信じがたいが…。」
「仕組みは分からないがどうも魔王というのは最初に魔物の性質を決める能力があるらくてな全魔族がこれに準ずる事になるらしい。例えば先代魔王の場合[人間と対立し隷属させるべし]かな。」
成程、そんな力が魔王にはあったのか。という事はこの戦争の発端も代替わりから突然始まったのか…?
「そしてエミリアの場合[人間と共存し、性春を謳歌すべし]と願っちゃったらしいね。」
「ちょっと待て、なんだその[性春]って。」
「簡単な話、エロい事だな。」
「そんな事を聞いてるんじゃない!!何でそんな願いなんだ。」
「サキュバスだからでしょ。」
「…。」
空いた口が塞がらない。
「まぁ、止めようとしても無理だな。こんな力があるのを誰も知らなかったんだし。話を戻すけどこの力のおかげで魔界側の対立理由はほぼ消滅した。だからこそ停戦にこぎつける事が出来た。」
確かに戦争を終らせた事は大きい。だからこそ一つ疑問が残る。
「何でその事を世界に伝えないんだ?そうすればお前は世界の英雄だろうが。妻が魔王なのは確かに問題だが、いまや魔物の性質は対立ではなく共存なのだろう?サキュバスも魔物ではなく異種族として見ればエルフと同じハズだ。異種族との結婚を禁忌とする教国の連中は黙ってないかもしれないがそれでも今みたいに日陰暮らしはしなくて済むはずだ。」
そうだ、ハインツは終戦後ずっと後ろ指をさされて生きている。
役立たず、勇者(置物)、神託の無駄遣い
軍属の者ですら、蔑む者がいるぐらいだ。
そうしてこいつは3年間生きてきたはずだ。
昨日、偶然見つけた時は最初声をかけてものか考えてしまった。
でも考えるだけ無駄だった。向こうから声をかけて来たからのだから。
昔と変わらない声で。
「…そうだね、その通りだ。」
「だったら…!!」
「でも、まだできない。この平和はあくまで仮初の物で、絶妙なバランスの元に成り立っている。そしてこれは僕たちの責任だ。」
そう言ったハインツの目は強い意志を感じた。いつもの柔和でふざけた雰囲気ではなく、それはそう、神託を受けた勇者の目。
責任とは何の事だろうか。聞こうとしたと同時にハインツが立ち上がる。
「少し外に出ようか。魔物[娘]がどういう存在か、見に行こう。」
17/05/11 03:58更新 / 深紅烏
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