土人形
こんにちは。
いきなりですがあたしの名前はエイチと言います。種族はゴーレムです。
「エイチー。水まだかー」
はーい。今行きまーす。あ、今あたしを呼んだのはお母さんです。白いすべすべの骨に、所々黄色のアクセントが綺麗な自慢のお母さんです。
ええ、スケルトンです。おっぱいぼいんぼいんです。出るとこは出て、引きしまった所は皮すらない超絶スタイルがポイントです。
そんなお母さんの所へ、えっちらおっちらと水入り桶を運びます。あたしの幼女ボディは防水加工されているので溢しても問題ありません。
溢さずに桶を持って行くと、お母さんが麦わら帽子をかぶって花壇の土を掘り返しています。
「んじゃ、穴に水入れてってくれ。少し溜まる位で良いぞ」
お母さんの言う通りに杓子で水を穴に流し込んでいきます。入れた所からお母さんの手によって花の苗が植えられて行きました。どんな花が咲くのかは咲いてからのお楽しみだそうです。そうこうしている内に全ての穴に草が入りました。
「よっと。これで終わりだな。昼飯の準備でもするか」
あたしはこのまま外で遊ぶ事にします。綺麗に晴れていますし、お日様は暖かいです。
「そか。じゃ、あんま遠く行くなよ。今日は荷物も届くし」
はいです。お母さんは被っていた麦わら帽子をあたしに被せてお家に入って行きます。スケルトンのお母さんは太陽が眩しいらしいですが、ゴーレムのあたしには必要の無い物です。
ですが、麦わら帽子を得たことであたしの魅力は更に上昇します。何を隠そう、今のあたしの胴装備は白いワンピース。そして頭装備に麦わら帽子。真夏の穢れ無き清純少女の完成です。爽やかな風の吹く森を軽やかに駆けるあたし。自分で言うのもなんですがポイント高い。これはお父さんに感謝ですね。
え?なんでかって?この二つのステキアイテムはお父さんが作ったものですから。お父さんは筋肉もりもりですが手先は器用で、体育会系と文化系を足して2で割らない様な人です。除算しない所がポイントです。正直超人だと思いますが人間です。
おおっと、こうしてはいられません。林の中でピーちゃんとピーちゃん2号が待っています。友達を待たせてはおけません。
ピーちゃんとピーちゃん2号と遊びます。飛ぶピーちゃんとピーちゃん2号を追いかけたり、気付いたら居なくなっていたピーちゃんとピーちゃん2号を探したり、後ろからそーっと近づいたりします。もっぱらあたしが鬼になってかくれんぼか鬼ごっこしかしません。
……ええ、一緒に遊んでいません。あたしが執拗に追いたてているだけです。そもそも今日のピーちゃんとピーちゃん2号が、昨日のピーちゃんとピーちゃん2号と同個体かは分かりません。おそらく違うと思います。大体、追いかけるのが切なくなってきたら止めます。痛い子とは思わないでください。もうあたしが思っています。
まぁ、こんな人の寄りつかない森に人なんているはずがないですけどね。
――からからから
おや、辺りをきょろきょろしながら荷馬車を操る青年を発見しました。あの馬車はあたしたちのお家に食べ物とか運んでくれているやつですね。おそらく道に迷ってるんでしょう。見た事の無い顔なのであたらいしい人ですね。
「うおっ!?」
それならとさっそうと飛び出すあたし。青年は心底驚いた顔をしてします。こんな所に誰か居たと言うのと、白ワンピ+麦わら帽子の清純ゴーレムに驚いているのでしょう。ですが有無を言わさずあたしは荷馬車に飛び乗り、びしっ、とお家の方向を指さします。
「ひいっ!?」
ビビリですね。さっさと行って下さい。
「新しい方ですか…って、エイチなにしてるの?」
あらお父さん。お家まで案内しただけですよ?ついでに乗っけて貰いはしましたけど。
「すみません。御迷惑かけてしまって」
「え、いや、そ、そんなことは…」
こんなに可愛い愛娘が迷惑だなんてお父さんも良く言いますね。ま、乗っけてくれてありがとうございます。
するりと荷台から降りて青年に手をふってからお家に入ります。
「乗せて来てくれた事はありがとうございます。………手、出してないですよね」
「ひいっ!!?い、いいいいえっ!そのような事実は何処にもっ」
お父さんが何か言って、青年はすごい勢いで委縮しています。お父さんは筋骨逞しいので無理ないです。
「お。おかえり」
ただいまです。あたしは頭の麦わら帽子を外へ出て行くお母さんに渡しました。
「あっ、あとっ、ウルオラさん、あなた宛の手紙も、預かってますっ」
「ああ、僕はヨクアっていうんです。ウルオラは―」
「ウルオラはあたしだな。これからよろしく…って」
「………」
「あっ」
「あらあら」
ああ、お母さんを見て、哀れ青年は倒れてしまいました。始めて来る多くの人が通る道です。二人とも慣れた手つきでお家の中に運び入れます。まあ一時間もすれば目を覚ますでしょう。
お母さんに届く手紙は、お母さんのお母さん、つまりあたしのおばあちゃんからのものです。お母さんとおばあちゃんは文通していて、たまにお父さんも書いています。
「…ふふっ、なつかしいなぁ」
おや。お母さんが手紙をよんで昔に想いを馳せています。
お母さんは湖の向こうの街に住んでいました。お父さんはずっとここでお仕事をしていました。
そうです。あたしにも今日出会いがありましたし、らぶらぶな二人の慣れ染めを本人の口から聞こうと思います。参考にしましょう。
「え?慣れ染め?」
はい。そうです。聞きたいです。
「うー。良いけど、長いぞ?」
大丈夫です。あ、でもあらすじをお願いします。
「あらすじかぁ…そうだな」
はっやっくっ!はっやっくっ!
「そんなに急かすなって……その、あれだ。あ、あいつとあたしの、えーっと、チョ、チョメチョメな話だ」
チョメチョメ…?良く分かりませんが、なんだか照れてますね。
「てれてねーよ」
………
なるほどなるほど
「と、言う事で死んじゃった訳だ。うん」
…えっ。もしかしてもう終わりですか?ほかのエピソードは?
「これで終わりな訳ないだろ。まだまだ続くぞ」
さすがにそうですよね。
………
「と、あの時は悲っっっっ惨な生活をしてたと言う訳だ」
ほほう。あのペンダントはやはり二人のキーアイテムだったんですね?
「ああ、ペンダントは今でも大切な宝物だ」
今度ちょっとだけ付けさせてください。
「ちょっとだけってお前…。絶対貸さねぇぞ」
お母さんのけち。
「けちじゃねーよ」
………
「ま、出会った時はこんなもんかな」
お母さんまた照れてますよ。
「てれてねーよ」
顔が赤くなってます。
「赤くなってねーよ」
見苦しい嘘はやめて正直になりましょうよ。
「う、うるせーー!!」
うるさいのはお母さんのほうです。それに
「喋ってないから煩くないなんてツッコミいらねーから!!」
そうですか。残念です。
………
「まぁ、そう言う訳だ。あと、ゲレネックスとアマナディキは作家だ。マイナーな二人だけどこれがなかなか面白いだろ?子供からお年寄りまで楽しめる。お前が知らない話もまだまだ沢山あるぞ。あとあの白身魚のムニエルは傑作だ。良い出来だよ、まったく。そんであとは死因だが、他人の恋路を邪魔した訳でもないのに馬に蹴られてしんでしまうとはなさけない。まぁ馬は臆病な生き物だからな、ちゃんと気を使ってあげないとパニックになったりストレスで死んだりするからな。うん、そんな所で終わりだ」
そのまとめは、いろいろと大事な場面が欠けている様な気がします。
「はぁ?大事な所なんて抜いてねーよ。馬はデリケートなんだぞ」
お母さんやっぱり顔が赤くなってます。
「だ、だだだから赤くなんてなってねーよ!!」
………
「…うん」
そうですか。
「…まぁ、そう言う訳でな。死んじまった、と言う、ね」
お母さんは、どう思っているんですか?
「ん?…まあ、あれがあって今があるからなぁ。複雑だけど礼は言うよ」
………
「そんでもって、あたしらの子供として、エイチ。あんたが生まれてきたと言う訳だ」
なかなか数奇な人生を歩んでいますよね。
「まぁな。でも、あたしは今の生活が気に入ってるよ。あいつが居て、あんたが居て、それだけで十分幸せだよ。ヨクアだって幸せだって言うさ。言わなくても分かる」
そうですか。それを聞いて安心しました。
「子供を不安にはさせらんねーよ。っと、それにしてもお前も喋んないよなぁ。まあ意思疎通はできるからいいけど。……ほらもう寝な、明日も忙しいぞ」
そうですね。今日はいっぱいあそんで疲れたのでもう寝ます。お話ありがとうございます。おやすみなさい。
「おやすみ」
本当ならまだ寝るには早い気もしますが、この後は二人でしっぽりな気配がするのでおじゃま虫は退散します。
今、彼ら二人が幸せだと言うのなら、『あたし』もむくわ……いえ、あたしも、今すごく幸せです。
あ、あと一つだけ。
あたしが喋らないのは、今も昔も声帯が無いからです。付け忘れですかね。今は困ってないですが、あのビビリとの意思疎通には困ると思うので今度ちゃんとつけて貰いましょう。
では、おやすみなさい。良い夢を。
いきなりですがあたしの名前はエイチと言います。種族はゴーレムです。
「エイチー。水まだかー」
はーい。今行きまーす。あ、今あたしを呼んだのはお母さんです。白いすべすべの骨に、所々黄色のアクセントが綺麗な自慢のお母さんです。
ええ、スケルトンです。おっぱいぼいんぼいんです。出るとこは出て、引きしまった所は皮すらない超絶スタイルがポイントです。
そんなお母さんの所へ、えっちらおっちらと水入り桶を運びます。あたしの幼女ボディは防水加工されているので溢しても問題ありません。
溢さずに桶を持って行くと、お母さんが麦わら帽子をかぶって花壇の土を掘り返しています。
「んじゃ、穴に水入れてってくれ。少し溜まる位で良いぞ」
お母さんの言う通りに杓子で水を穴に流し込んでいきます。入れた所からお母さんの手によって花の苗が植えられて行きました。どんな花が咲くのかは咲いてからのお楽しみだそうです。そうこうしている内に全ての穴に草が入りました。
「よっと。これで終わりだな。昼飯の準備でもするか」
あたしはこのまま外で遊ぶ事にします。綺麗に晴れていますし、お日様は暖かいです。
「そか。じゃ、あんま遠く行くなよ。今日は荷物も届くし」
はいです。お母さんは被っていた麦わら帽子をあたしに被せてお家に入って行きます。スケルトンのお母さんは太陽が眩しいらしいですが、ゴーレムのあたしには必要の無い物です。
ですが、麦わら帽子を得たことであたしの魅力は更に上昇します。何を隠そう、今のあたしの胴装備は白いワンピース。そして頭装備に麦わら帽子。真夏の穢れ無き清純少女の完成です。爽やかな風の吹く森を軽やかに駆けるあたし。自分で言うのもなんですがポイント高い。これはお父さんに感謝ですね。
え?なんでかって?この二つのステキアイテムはお父さんが作ったものですから。お父さんは筋肉もりもりですが手先は器用で、体育会系と文化系を足して2で割らない様な人です。除算しない所がポイントです。正直超人だと思いますが人間です。
おおっと、こうしてはいられません。林の中でピーちゃんとピーちゃん2号が待っています。友達を待たせてはおけません。
ピーちゃんとピーちゃん2号と遊びます。飛ぶピーちゃんとピーちゃん2号を追いかけたり、気付いたら居なくなっていたピーちゃんとピーちゃん2号を探したり、後ろからそーっと近づいたりします。もっぱらあたしが鬼になってかくれんぼか鬼ごっこしかしません。
……ええ、一緒に遊んでいません。あたしが執拗に追いたてているだけです。そもそも今日のピーちゃんとピーちゃん2号が、昨日のピーちゃんとピーちゃん2号と同個体かは分かりません。おそらく違うと思います。大体、追いかけるのが切なくなってきたら止めます。痛い子とは思わないでください。もうあたしが思っています。
まぁ、こんな人の寄りつかない森に人なんているはずがないですけどね。
――からからから
おや、辺りをきょろきょろしながら荷馬車を操る青年を発見しました。あの馬車はあたしたちのお家に食べ物とか運んでくれているやつですね。おそらく道に迷ってるんでしょう。見た事の無い顔なのであたらいしい人ですね。
「うおっ!?」
それならとさっそうと飛び出すあたし。青年は心底驚いた顔をしてします。こんな所に誰か居たと言うのと、白ワンピ+麦わら帽子の清純ゴーレムに驚いているのでしょう。ですが有無を言わさずあたしは荷馬車に飛び乗り、びしっ、とお家の方向を指さします。
「ひいっ!?」
ビビリですね。さっさと行って下さい。
「新しい方ですか…って、エイチなにしてるの?」
あらお父さん。お家まで案内しただけですよ?ついでに乗っけて貰いはしましたけど。
「すみません。御迷惑かけてしまって」
「え、いや、そ、そんなことは…」
こんなに可愛い愛娘が迷惑だなんてお父さんも良く言いますね。ま、乗っけてくれてありがとうございます。
するりと荷台から降りて青年に手をふってからお家に入ります。
「乗せて来てくれた事はありがとうございます。………手、出してないですよね」
「ひいっ!!?い、いいいいえっ!そのような事実は何処にもっ」
お父さんが何か言って、青年はすごい勢いで委縮しています。お父さんは筋骨逞しいので無理ないです。
「お。おかえり」
ただいまです。あたしは頭の麦わら帽子を外へ出て行くお母さんに渡しました。
「あっ、あとっ、ウルオラさん、あなた宛の手紙も、預かってますっ」
「ああ、僕はヨクアっていうんです。ウルオラは―」
「ウルオラはあたしだな。これからよろしく…って」
「………」
「あっ」
「あらあら」
ああ、お母さんを見て、哀れ青年は倒れてしまいました。始めて来る多くの人が通る道です。二人とも慣れた手つきでお家の中に運び入れます。まあ一時間もすれば目を覚ますでしょう。
お母さんに届く手紙は、お母さんのお母さん、つまりあたしのおばあちゃんからのものです。お母さんとおばあちゃんは文通していて、たまにお父さんも書いています。
「…ふふっ、なつかしいなぁ」
おや。お母さんが手紙をよんで昔に想いを馳せています。
お母さんは湖の向こうの街に住んでいました。お父さんはずっとここでお仕事をしていました。
そうです。あたしにも今日出会いがありましたし、らぶらぶな二人の慣れ染めを本人の口から聞こうと思います。参考にしましょう。
「え?慣れ染め?」
はい。そうです。聞きたいです。
「うー。良いけど、長いぞ?」
大丈夫です。あ、でもあらすじをお願いします。
「あらすじかぁ…そうだな」
はっやっくっ!はっやっくっ!
「そんなに急かすなって……その、あれだ。あ、あいつとあたしの、えーっと、チョ、チョメチョメな話だ」
チョメチョメ…?良く分かりませんが、なんだか照れてますね。
「てれてねーよ」
………
なるほどなるほど
「と、言う事で死んじゃった訳だ。うん」
…えっ。もしかしてもう終わりですか?ほかのエピソードは?
「これで終わりな訳ないだろ。まだまだ続くぞ」
さすがにそうですよね。
………
「と、あの時は悲っっっっ惨な生活をしてたと言う訳だ」
ほほう。あのペンダントはやはり二人のキーアイテムだったんですね?
「ああ、ペンダントは今でも大切な宝物だ」
今度ちょっとだけ付けさせてください。
「ちょっとだけってお前…。絶対貸さねぇぞ」
お母さんのけち。
「けちじゃねーよ」
………
「ま、出会った時はこんなもんかな」
お母さんまた照れてますよ。
「てれてねーよ」
顔が赤くなってます。
「赤くなってねーよ」
見苦しい嘘はやめて正直になりましょうよ。
「う、うるせーー!!」
うるさいのはお母さんのほうです。それに
「喋ってないから煩くないなんてツッコミいらねーから!!」
そうですか。残念です。
………
「まぁ、そう言う訳だ。あと、ゲレネックスとアマナディキは作家だ。マイナーな二人だけどこれがなかなか面白いだろ?子供からお年寄りまで楽しめる。お前が知らない話もまだまだ沢山あるぞ。あとあの白身魚のムニエルは傑作だ。良い出来だよ、まったく。そんであとは死因だが、他人の恋路を邪魔した訳でもないのに馬に蹴られてしんでしまうとはなさけない。まぁ馬は臆病な生き物だからな、ちゃんと気を使ってあげないとパニックになったりストレスで死んだりするからな。うん、そんな所で終わりだ」
そのまとめは、いろいろと大事な場面が欠けている様な気がします。
「はぁ?大事な所なんて抜いてねーよ。馬はデリケートなんだぞ」
お母さんやっぱり顔が赤くなってます。
「だ、だだだから赤くなんてなってねーよ!!」
………
「…うん」
そうですか。
「…まぁ、そう言う訳でな。死んじまった、と言う、ね」
お母さんは、どう思っているんですか?
「ん?…まあ、あれがあって今があるからなぁ。複雑だけど礼は言うよ」
………
「そんでもって、あたしらの子供として、エイチ。あんたが生まれてきたと言う訳だ」
なかなか数奇な人生を歩んでいますよね。
「まぁな。でも、あたしは今の生活が気に入ってるよ。あいつが居て、あんたが居て、それだけで十分幸せだよ。ヨクアだって幸せだって言うさ。言わなくても分かる」
そうですか。それを聞いて安心しました。
「子供を不安にはさせらんねーよ。っと、それにしてもお前も喋んないよなぁ。まあ意思疎通はできるからいいけど。……ほらもう寝な、明日も忙しいぞ」
そうですね。今日はいっぱいあそんで疲れたのでもう寝ます。お話ありがとうございます。おやすみなさい。
「おやすみ」
本当ならまだ寝るには早い気もしますが、この後は二人でしっぽりな気配がするのでおじゃま虫は退散します。
今、彼ら二人が幸せだと言うのなら、『あたし』もむくわ……いえ、あたしも、今すごく幸せです。
あ、あと一つだけ。
あたしが喋らないのは、今も昔も声帯が無いからです。付け忘れですかね。今は困ってないですが、あのビビリとの意思疎通には困ると思うので今度ちゃんとつけて貰いましょう。
では、おやすみなさい。良い夢を。
12/07/09 19:18更新 / チトセミドリ
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