act3・お面ライダー龍姫
シュパァー……(バイクの音)
ズガーン!
ズガーン!
「お面ライダァァァァー、龍姫ぃぃぃー!!!!」
(みんなも一緒に叫んでみよう)
『お面ライダー龍姫のうた』
白い、白い、白い
白い鱗の龍姫
ドラゴンスマッシュ
正義の拳
子供の声に正義が騒ぐ
友よ、夫よ、愛しい子よ
風の唸りに血が叫び
龍の誇りが目を醒ます
敵は地獄のオナニスト
戦う、正義の
お面ライダー龍姫
『お面ライダー龍姫、ダオラはドラゴンである。
夫と娘を奪われた悲しみを
誰かを守るための力に変え、
今日も彼女は戦い続けるのだ。
だがここまで言っておいて何だけど、
別に、シリアスな話なんかじゃ…、ないんだからね!』
――――――――――――――――――
「幼女ハァハァ…。」
「アリスたん、マジハァハァ…。」
サクリスト戦闘員たちがいそいそと着替えをする。
いつものフンドシスタイルに白衣を羽織る。
「なぁ、俺、何故か今日、荒縄を持ってるんだ。」
「マッジ?お前、天才!?」
「少女の柔肌に食い込む荒縄。身動き取れずに悶える少女。もがけばもがく程に食い込む荒縄に、やがて歪んだ性に目覚め……グボァッ!?」
「ど、どうしたんだブラザー!?」
「駄目だ、想像力が脳のデータ処理を追い抜いた!?」
「想像するのは、駄目か…。」
「なら、実践するしかないなぁ…(ギシィ)。」
黒い覆面の向こうで悪い笑みを浮かべるフンドシブラザーズ。
「おいおい、落ち着けよ。」
「そうだった…。つい……、興奮してしまったな……。」
「みんな若い証拠さ。」
「……おい、おかしいところはないよな?」
おかしいところだらけです。
そうツッコみたいのだが、所詮私はナレーター。
「よし、今日はとことん……、あの日あの時置き忘れた少年の日の思いを…、取り戻そうではないか!」
「俺、戦闘員なんか時給は安いし、危ない目にあうから辞めようと思っていたんだ。でも、こんな良い思いを出来るのなら………、俺、この仕事を誇りに思うよ。」
「みんなそうやって戦闘員としての誇りに目覚めるのさ。おめでとう、今日から君も本当の意味での、我らの仲間だ。」
「先輩…!よろしくお願いします!!」
「あ、今日の上司(怪人役)は?」
「すでに潜入済みだ。」
「はいはい、静かに。サクリストの社訓を復唱するぞー。」
「「「「「好きだから、手を出さない!ルールを守って楽しいオナニー!!」」」」」
「では円陣を組んでぇ。今日の無事と成功を祈りまして…、せぇーの!」
「「「「「「アーッ!!!」」」」」」
今日は楽しいセラエノ学園、身体検査の日である。
秘密結社サクリストの戦闘員は、保険医に変装して学園に侵入した。
色んな意味での危機が、今学園に迫る。
―――――――――――――――――
「ロウガさん…、あの人たちあからさまに怪しくないですか?」
私は思わず眉を顰める。
「覆面にフンドシ…。どう見てもサクリストの人たちですよね?」
「秘密結社の連中がこんなとこまで来る訳がないだろう…?それに彼らは立派な紳士だよ。ちゃんと身元も確かな連中ばかりさ。」
ロウガさんが書類を読みながらお茶を啜った。
「身元、確かなんですね?」
「ああ…、大切な生徒と教師を診てもらうんだからさ。えっと…、あったあった。『節操なき医師団 医療法人サクリスト』。な、身元がしっかりしているだろ?」
「バブゥッ!?」
思わず飲んだ紅茶を噴き出した。
「行儀が悪いぞ、アヌビス。」
「それ以前に、サクリストの戦闘員じゃないですか!!!」
もし万が一、間違いが起こってしまったら……!
こうしてはいられない。
「ロウガさん、変身します!彼らの目的は……、間違いなく覗きです!!」
「クックック…、アヌビスは心配性だな。」
「彼らは……、間違いなくアスティアさんやマイアさんも覗きますよ?」
「…………………………………。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「アヌビス、一人も生かして帰すな。」
「いえっさ!!!」
「変身、承認!」
「了解、ベータカプセル……、輝け…、もっと輝けぇぇ!!!」
ピカァッ
『魔女っ娘わんわん☆ねふぇるてぃーたは改造人間である。
その能力は毎回様々なコスプレをすることで
無限の可能性を叩き出す夢の希望の魔女っ娘なのである。
そしてメカっぽくないコスプレをする時は
何と一旦オールヌードになって、
光が彼女の衣装を作っていくのである!
え……?
解説邪魔?
見せろ?
それは出来ない。
ネフェルティータが恥ずかしがって変身中は物陰に隠れてしまうからである。
そんな奥ゆかしいネフェルティータが……、良い……!』
「魔女っ娘わんわん☆ねふぇるてぃーた、ご期待通りに即参上!!!」
変身完了!
……って。
「ロ、ロウガさん……、このコスチュームのスカート……、ミニすぎですよ〜。」
「安心しろ。当代随一のエロ造形師、バフォメット勘斎が設計した衣装だ。見えそうで絶対見えない。男心を刺激し、尚且つ女性にも可愛いと思わせる繊細な計算に基いたギリギリライン。どんなに激しく動いても、スカートの中身が見えることは……、絶対ない!」
「それは安心……ん?何だか、スースーする…?」
そう…、スカートの中の安心感が足りない…?
「ああ、バフォメットが言っていたな。『穿いていないは所詮、穿いているけどそう見えないだけ。ならばワシは本当の穿いてないを目指す。それがエロ造形師と名を馳せたワシの使命じゃ!』と言っていたから、下着はないはずだぞ?」
「うぇ!?うわ、ほんとに穿いてない!!ってこの胸がやけに不安定な感触……、まさか……。(どきどき……、ぷにん♪)ノ、ノ、ノーブラぁ!?」
「あー……、最近あいつ魔女っ娘系の触手陵辱ゲームにハマっていたっけか?」
「うわ〜〜〜〜〜〜ん!!!!帰るぅ〜!!おうち帰って着替えてくるぅ〜〜!!!セトにスパッツ用意してもらうぅ〜!!!!」
「ノーパン、ノーブラで町の中走るのか?そのフリフリの格好で?」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
この後、私の悲鳴を聞いて佐々鍼灸医院の佐々先生が乱入したり、最近公認した熱心党のみんなが大きな毛布や身体がスッポリ入る大きなバスタオルを持って、心配のあまり学園長室の壁や扉や窓を破って入って来たりして、学園長室は混乱に包まれたのであった。
うう……、何でこんなセクハラ衣装が存在するんですか……。
――――――――――――――――――
「はい、お大事に。次の人どうぞ〜。」
私は秘密結社サクリストの戦闘員の一人。
名前は明かせない。
普段は町の名士として、妻と子供に囲まれた幸せな…、そう…、世間一般の幸せな家庭を築いている。
やさしい妻。
可愛い子供たち。
安定した裕福な生活。
だが……、私は満たされない。
何かが足りない、そんな思いを抱いたまま人生を終わるのか。
そう思っていた時、私は大首領・宗近様に出会ったのだ。
『その満たされない思い、うちで働いてみませんか?』
まさに女神だった。
誰かが言っていた。
悪には、悪の英雄が必要だと…!
その時から私は満ち足りた日々を送っている。
今日は学園の身体測定、健康検査の派遣医師として潜入している。
時に組織に疑問を持つことはあるが、やはり私にはこの仕事が合っているようだ。
特に………、
この聴診器を……………、
15歳以上の女の子の健康的な
背中に当てる時など、もう堪らない!
ちょっと冷たい聴診器が背中に当たり、
「ひゃっ。」
と、小さく悲鳴を上げた時など私は私の中の獣を抑えるのに必死になる。
特にこの学園は最高だ。
健康的な生活を心掛けるように適度な運動をする女性とが大変多い。
私も男だから…、
膨らみかけた胸や尻に興味がない訳ではない。
だが、それ以上に私は少女の背中に魅力を感じるのである。
そして髪の長い女子が髪を掻き揚げた時にチラリと見えるうなじは、まさに神に出会うような思いで心が凛と引き締まる。
「せ、先輩…。」
彼は先日組織に入社した新人君。
彼はつるぺたロリが大好きで、主に低学年クラスの診断を担当している。
もっとも彼は若いのでいつ暴走してしまうとも知れないので、心の箸休めに男子も兼任して受け持つように指示してある。
「…失礼、何か問題が起こったようですな。」
私は楽園に暫しの別れを告げ、新人君の元へと走った。
「どうしました?」
「先輩、俺……、俺……、もう駄目かもしれません。」
「どうしたのですか、君らしくもない。」
入社してすぐにロリへの熱い思いを語った彼らしくもない弱気である。
「俺はつるぺたロリ幼女最高、これ最強って思っていました。今日もつるぺたロリ幼女を存分に観察出来ると聞いて、いつもよりきつくフンドシを締めて、勃起しても気付かれないくらいにギッチギチに締めてきました。昨日の晩も娼館で干乾びて命がなくなる寸前まで抜いてもらいました…。なのに……、なのに……!!」
彼は診察室を指差した。
私も何が起こったのか確かめたくて、中を覗く。
そこにいたのは少女と見紛うばかりの少年であった。
というか我が組織の御神体、サクラ少年である。
「彼に……勃ってしまったんです………!」
「何と!?」
「俺はこの組織にいる資格のない男です。自分の正義も貫けない、腰抜け野郎なんです!」
すべてを悟った私は彼の肩を叩く。
「大丈夫、君は…、正しい。」
「せ、先輩。」
「私にも自分の愛する世界がある。だが、彼は別格だ…。私は少女の背中とうなじを見れば、マックスまで硬度を上げられるが……、サクラ君にはそれ以上の未知の世界まで自分を持っていける。おめでとう、君は真の意味での戦闘員に今なったのだ。」
大首領がたまたま街角で見かけた少年に熱を上げ、今の組織を作った。
そしてその同志が集まって今の組織が出来上がったのだ。
我らが一切の性交渉を否定する理由は唯一つ。
彼、サクラ君が我々のストライクゾーンに侵入してしまい、普通の女性ではもはや性交渉まで持っていけなくなってしまったからにすぎない。
実際、私も妻とは3年ご無沙汰なのだ。
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
診察を放り出し同志が駆けつける。
「せ、先輩たち…。」
「自分に素直になるんだ。」
「そうすれば、今の自分も好きになれるさ!」
「うう…………、ありがとう……、ありがとうございます!!」
こうして秘密結社サクリストに新たな戦士が生まれた。
おめでとう、新人君。
君の未来は燦然と輝いている。
「さぁ、みんな。いつまでもここにいれば怪しまれる。行こうじゃないか。みんなでサクラ君を診察しよう。」
「「「「「アーッ!」」」」」
―――――――――――――――――
どうでも良いが、我は今の会話を聞いてしまった。
セラエノ学園警備員として学園のどこかで寝ていたのだが、たまたま寝ていた体育倉庫でエラい話を聞いてしまった。
サクラが……、危ない……!
いや、それどころかやつらのリミッターが外れ、いつ学園の生徒たちに獣の本性を出し、その溢れる情欲を向けないという保障はない。
どうにかしなければ…。
屠るのは簡単だ。
だが、学園の低学年たちに『やさしい龍のお姉さん』で通った我が彼らを力尽くで排除しようものなら、少年少女たちが我を恐れてしまうやもしれぬ…。
「そんなダオラ殿に朗報じゃ。」
「そ、そなたはバフォメット教諭!?一体いつの間に体育倉庫に!?」
「細かいことはどうでも良いのじゃ。要は正体を知られたくないのなら、変身じゃ!変身してやつらを蹴散らせば良いのじゃ。」
「しかし……、そうか前世紀の姿に変化すれば…!!」
「それだと学園そのものを壊してしまうじゃろ?そんな時は……。」
どこから取り出したのか、バフォメット教諭はとあるアイテムを取り出した。
「こ、これは……!?」
「ふっふっふ…、さすがに存じておったか。その通り、かつて魔界でもあまりの影響力から前世紀の魔王が封じ、さらに闇に葬ったという魔界においても曰く付きの暗黒の変身アイテム、『雷陀阿邊瑠徒(らいだあべると)』。ワシもこういうご禁制の品を集めるコレクターでのう。どうじゃ、ワシから買わぬか?今月、ワシの購入リストが多くてのう。特にお気に入りの新作エロゲーが9本も出るので難儀しておったのだ…。御代は……、なぁに。ヌシの給料の三分の一で良いぞ。」
「買った!!」
迷う必要はなかった。
子供たちの笑顔と金、我に天秤にかけるものなど何もなかった。
腰に雷陀阿邊瑠徒を巻き、変身ポーズを取る。
このアイテムを使う時は、必ず派手なポーズを決めなければならないのだ。
両腕を右へ真っ直ぐ横一文字に伸ばす。
シャキーン
どこからともなく効果音が流れてくる。
「ライダァァァァ…。」
ゆっくりと頭の上で弧を描くように腕を左へ動かしていく。
「へんっしん!!!」
左でガッツポーズのように腕を畳む。
雷陀阿邊瑠徒の中央の蓋が左右に開き、魔力が迸る。
このアイテムは持ち主の魔力に比例して、その効果を上げるのだ。
我のようなドラゴンが使えば……、
それは凄まじい効果を生むのである!
「トウ!!!!!」
我は大空に大きく跳ぶ。
虹色の光が世界を包んだ。
――――――――――――――――――
(画面の前のお友達も歌ってみよう)
『お面ライダー龍姫 挿入歌』
刻を超えろ!
空を駆けろ!
この学園のため
君は見たか龍が真っ赤に萌えるのを
普段警備の仕事
合間にすぐサボる
信じるものがジャスティス
大吟醸が好きさ
夢を見続けることが我のファンタジー
君のために戦うさ
白く光る鱗
刻を超えろ!
空を駆けろ!
この学園のため
熱く燃やせ!
正義燃やせ!
明日を掴むため
お面ライダー龍姫
お面ライダー龍姫
―――――――――――――――――
「そこまでだ!」
「何奴!?」
戦闘員が振り返る。
そこにいたのは、白銀の甲殻に覆われた一人のドラゴンが立っている。
腰に大きなベルト、肌の露出の面積が極端に少なくなった甲殻。
顔に銀色のお面を付け、その美しい長い髪と赤いマフラーが風もないのにたなびいていた。
「人々の信頼を利用し、自らの欲望を満たさんとする蛆虫どもめ。
我が姿を見るが良い!
人々に正しき道を示す姿。人、それを正義と呼ぶ!!」
「だから、誰だキサンブルゥアァァァァァァーッ!?」
「ジョ、ジョニィィィィィィー!!!!」
問答無用で蹴り飛ばされる戦闘員。
ドラゴンは特撮ヒーローっぽい大袈裟なポーズを取った。
シャキーン
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
聞け、変質者ども!!
我は正義の戦士、お面ライダー…、お面ライダー龍姫だ!!!」
ジャキーン
ダオラのお面が輝く。
ダオラのベルトの風車が回転する。
「お、お面ライダーだと!ええい…、我らの野望を邪魔するのなら相手になってやる!!!行くぞ、同志たち!!!!」
「「「「「アーッ!」」」」」
「来い、サクリスト!学園の子供たちは我が守る!!」
「アーッ!」
ダオラの拳が戦闘員を打ち抜く。
「ドラゴォォーンスマァァッシュ!……成敗!!!」
「アーッ!」
翼で空を飛び、翼が空を割き、戦闘員を薙ぎ倒す!
「スクランブルカッター!!!」
「アーッ!」
ダオラの怪力で戦闘員が投げ飛ばされる。
「大雪山下ろしぃぃぃ!!!」
「アーッ!」
気が付けば後に残ったのは新人戦闘員ただ一人だけであった。
「く、くそぉ…!後少しで…、後少しで俺たちの忘れかけた夢が…、取り戻せたのに!!」
「そなたの夢など興味がない。だが………、お前はサクラに『欲情』した!サクラはマイアのもの。そしていつか我が『襲う』と決めた男ぞ!!!」
「て、てめえもか!?」
「問答無用、トウ!!!」
ダオラが空高く飛び上がる。
天上があって低いはずなのに、物理法則を無視してお面ライダーは飛ぶ。
「ドラゴン、キィィィィッッック!!!!」
急降下するスピードでダオラの蹴りが新人の顔面にヒットする。
「やわらか!!!!!」
意外にやわらかいダオラの足の裏の感触を一瞬だけ楽しんだ戦闘員はそのまま床に叩き付けられる。
そして何故かカメラが引いた。
「うわぁぁぁぁぁぁ……!!!」
どかぁぁぁぁぁーん
大爆発と共に戦闘員は木っ端微塵になる。
どう見ても発泡スチロールで作ったような破片が当たりに飛ぶ。
その爆発を背に、ダオラは勝利の決めポーズを取っていた。
「………これは、クセになりそうだ。」
何故魔界で封印されたのか、ダオラはわかった気がしていた。
―――――――――――――――
………あれ?
そう言えば、今回の上司が出てない?
実はサクリスト幹部は来ていたのだ。
だが………。
「駄目です、ルゥさん!私こんな格好恥ずかしいです!」
「勇気を出すのよ、ディオーレちゃん。女幹部役なんだからこれくらいしなきゃ。」
普段よりも露出の高い服を着て、ディオーレとルゥは学園医務室で待機していたのである。
「じゃあ練習しときましょう。台本、良い?サンハイ。」
「えっと……、フッフッフ。ヨクキタナ、ネフェルティータ!」
「完璧よ、ディオーレちゃん♪」
もちろん、この頃戦闘員が全員やられていたなど、彼女たちが知る由もない。
―――――――――――――――
次回予告
みんながやるなら俺もやる。
日本昔話が割りと好きな作者は実はずっとやりたかった。
次回、風雲!セラエノ学園第四話。
『学芸会 桃太郎』
「ロウガ…、まさか私をおばあちゃん役にはしないよね?」
ズガーン!
ズガーン!
「お面ライダァァァァー、龍姫ぃぃぃー!!!!」
(みんなも一緒に叫んでみよう)
『お面ライダー龍姫のうた』
白い、白い、白い
白い鱗の龍姫
ドラゴンスマッシュ
正義の拳
子供の声に正義が騒ぐ
友よ、夫よ、愛しい子よ
風の唸りに血が叫び
龍の誇りが目を醒ます
敵は地獄のオナニスト
戦う、正義の
お面ライダー龍姫
『お面ライダー龍姫、ダオラはドラゴンである。
夫と娘を奪われた悲しみを
誰かを守るための力に変え、
今日も彼女は戦い続けるのだ。
だがここまで言っておいて何だけど、
別に、シリアスな話なんかじゃ…、ないんだからね!』
――――――――――――――――――
「幼女ハァハァ…。」
「アリスたん、マジハァハァ…。」
サクリスト戦闘員たちがいそいそと着替えをする。
いつものフンドシスタイルに白衣を羽織る。
「なぁ、俺、何故か今日、荒縄を持ってるんだ。」
「マッジ?お前、天才!?」
「少女の柔肌に食い込む荒縄。身動き取れずに悶える少女。もがけばもがく程に食い込む荒縄に、やがて歪んだ性に目覚め……グボァッ!?」
「ど、どうしたんだブラザー!?」
「駄目だ、想像力が脳のデータ処理を追い抜いた!?」
「想像するのは、駄目か…。」
「なら、実践するしかないなぁ…(ギシィ)。」
黒い覆面の向こうで悪い笑みを浮かべるフンドシブラザーズ。
「おいおい、落ち着けよ。」
「そうだった…。つい……、興奮してしまったな……。」
「みんな若い証拠さ。」
「……おい、おかしいところはないよな?」
おかしいところだらけです。
そうツッコみたいのだが、所詮私はナレーター。
「よし、今日はとことん……、あの日あの時置き忘れた少年の日の思いを…、取り戻そうではないか!」
「俺、戦闘員なんか時給は安いし、危ない目にあうから辞めようと思っていたんだ。でも、こんな良い思いを出来るのなら………、俺、この仕事を誇りに思うよ。」
「みんなそうやって戦闘員としての誇りに目覚めるのさ。おめでとう、今日から君も本当の意味での、我らの仲間だ。」
「先輩…!よろしくお願いします!!」
「あ、今日の上司(怪人役)は?」
「すでに潜入済みだ。」
「はいはい、静かに。サクリストの社訓を復唱するぞー。」
「「「「「好きだから、手を出さない!ルールを守って楽しいオナニー!!」」」」」
「では円陣を組んでぇ。今日の無事と成功を祈りまして…、せぇーの!」
「「「「「「アーッ!!!」」」」」」
今日は楽しいセラエノ学園、身体検査の日である。
秘密結社サクリストの戦闘員は、保険医に変装して学園に侵入した。
色んな意味での危機が、今学園に迫る。
―――――――――――――――――
「ロウガさん…、あの人たちあからさまに怪しくないですか?」
私は思わず眉を顰める。
「覆面にフンドシ…。どう見てもサクリストの人たちですよね?」
「秘密結社の連中がこんなとこまで来る訳がないだろう…?それに彼らは立派な紳士だよ。ちゃんと身元も確かな連中ばかりさ。」
ロウガさんが書類を読みながらお茶を啜った。
「身元、確かなんですね?」
「ああ…、大切な生徒と教師を診てもらうんだからさ。えっと…、あったあった。『節操なき医師団 医療法人サクリスト』。な、身元がしっかりしているだろ?」
「バブゥッ!?」
思わず飲んだ紅茶を噴き出した。
「行儀が悪いぞ、アヌビス。」
「それ以前に、サクリストの戦闘員じゃないですか!!!」
もし万が一、間違いが起こってしまったら……!
こうしてはいられない。
「ロウガさん、変身します!彼らの目的は……、間違いなく覗きです!!」
「クックック…、アヌビスは心配性だな。」
「彼らは……、間違いなくアスティアさんやマイアさんも覗きますよ?」
「…………………………………。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「アヌビス、一人も生かして帰すな。」
「いえっさ!!!」
「変身、承認!」
「了解、ベータカプセル……、輝け…、もっと輝けぇぇ!!!」
ピカァッ
『魔女っ娘わんわん☆ねふぇるてぃーたは改造人間である。
その能力は毎回様々なコスプレをすることで
無限の可能性を叩き出す夢の希望の魔女っ娘なのである。
そしてメカっぽくないコスプレをする時は
何と一旦オールヌードになって、
光が彼女の衣装を作っていくのである!
え……?
解説邪魔?
見せろ?
それは出来ない。
ネフェルティータが恥ずかしがって変身中は物陰に隠れてしまうからである。
そんな奥ゆかしいネフェルティータが……、良い……!』
「魔女っ娘わんわん☆ねふぇるてぃーた、ご期待通りに即参上!!!」
変身完了!
……って。
「ロ、ロウガさん……、このコスチュームのスカート……、ミニすぎですよ〜。」
「安心しろ。当代随一のエロ造形師、バフォメット勘斎が設計した衣装だ。見えそうで絶対見えない。男心を刺激し、尚且つ女性にも可愛いと思わせる繊細な計算に基いたギリギリライン。どんなに激しく動いても、スカートの中身が見えることは……、絶対ない!」
「それは安心……ん?何だか、スースーする…?」
そう…、スカートの中の安心感が足りない…?
「ああ、バフォメットが言っていたな。『穿いていないは所詮、穿いているけどそう見えないだけ。ならばワシは本当の穿いてないを目指す。それがエロ造形師と名を馳せたワシの使命じゃ!』と言っていたから、下着はないはずだぞ?」
「うぇ!?うわ、ほんとに穿いてない!!ってこの胸がやけに不安定な感触……、まさか……。(どきどき……、ぷにん♪)ノ、ノ、ノーブラぁ!?」
「あー……、最近あいつ魔女っ娘系の触手陵辱ゲームにハマっていたっけか?」
「うわ〜〜〜〜〜〜ん!!!!帰るぅ〜!!おうち帰って着替えてくるぅ〜〜!!!セトにスパッツ用意してもらうぅ〜!!!!」
「ノーパン、ノーブラで町の中走るのか?そのフリフリの格好で?」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
この後、私の悲鳴を聞いて佐々鍼灸医院の佐々先生が乱入したり、最近公認した熱心党のみんなが大きな毛布や身体がスッポリ入る大きなバスタオルを持って、心配のあまり学園長室の壁や扉や窓を破って入って来たりして、学園長室は混乱に包まれたのであった。
うう……、何でこんなセクハラ衣装が存在するんですか……。
――――――――――――――――――
「はい、お大事に。次の人どうぞ〜。」
私は秘密結社サクリストの戦闘員の一人。
名前は明かせない。
普段は町の名士として、妻と子供に囲まれた幸せな…、そう…、世間一般の幸せな家庭を築いている。
やさしい妻。
可愛い子供たち。
安定した裕福な生活。
だが……、私は満たされない。
何かが足りない、そんな思いを抱いたまま人生を終わるのか。
そう思っていた時、私は大首領・宗近様に出会ったのだ。
『その満たされない思い、うちで働いてみませんか?』
まさに女神だった。
誰かが言っていた。
悪には、悪の英雄が必要だと…!
その時から私は満ち足りた日々を送っている。
今日は学園の身体測定、健康検査の派遣医師として潜入している。
時に組織に疑問を持つことはあるが、やはり私にはこの仕事が合っているようだ。
特に………、
この聴診器を……………、
15歳以上の女の子の健康的な
背中に当てる時など、もう堪らない!
ちょっと冷たい聴診器が背中に当たり、
「ひゃっ。」
と、小さく悲鳴を上げた時など私は私の中の獣を抑えるのに必死になる。
特にこの学園は最高だ。
健康的な生活を心掛けるように適度な運動をする女性とが大変多い。
私も男だから…、
膨らみかけた胸や尻に興味がない訳ではない。
だが、それ以上に私は少女の背中に魅力を感じるのである。
そして髪の長い女子が髪を掻き揚げた時にチラリと見えるうなじは、まさに神に出会うような思いで心が凛と引き締まる。
「せ、先輩…。」
彼は先日組織に入社した新人君。
彼はつるぺたロリが大好きで、主に低学年クラスの診断を担当している。
もっとも彼は若いのでいつ暴走してしまうとも知れないので、心の箸休めに男子も兼任して受け持つように指示してある。
「…失礼、何か問題が起こったようですな。」
私は楽園に暫しの別れを告げ、新人君の元へと走った。
「どうしました?」
「先輩、俺……、俺……、もう駄目かもしれません。」
「どうしたのですか、君らしくもない。」
入社してすぐにロリへの熱い思いを語った彼らしくもない弱気である。
「俺はつるぺたロリ幼女最高、これ最強って思っていました。今日もつるぺたロリ幼女を存分に観察出来ると聞いて、いつもよりきつくフンドシを締めて、勃起しても気付かれないくらいにギッチギチに締めてきました。昨日の晩も娼館で干乾びて命がなくなる寸前まで抜いてもらいました…。なのに……、なのに……!!」
彼は診察室を指差した。
私も何が起こったのか確かめたくて、中を覗く。
そこにいたのは少女と見紛うばかりの少年であった。
というか我が組織の御神体、サクラ少年である。
「彼に……勃ってしまったんです………!」
「何と!?」
「俺はこの組織にいる資格のない男です。自分の正義も貫けない、腰抜け野郎なんです!」
すべてを悟った私は彼の肩を叩く。
「大丈夫、君は…、正しい。」
「せ、先輩。」
「私にも自分の愛する世界がある。だが、彼は別格だ…。私は少女の背中とうなじを見れば、マックスまで硬度を上げられるが……、サクラ君にはそれ以上の未知の世界まで自分を持っていける。おめでとう、君は真の意味での戦闘員に今なったのだ。」
大首領がたまたま街角で見かけた少年に熱を上げ、今の組織を作った。
そしてその同志が集まって今の組織が出来上がったのだ。
我らが一切の性交渉を否定する理由は唯一つ。
彼、サクラ君が我々のストライクゾーンに侵入してしまい、普通の女性ではもはや性交渉まで持っていけなくなってしまったからにすぎない。
実際、私も妻とは3年ご無沙汰なのだ。
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
パチパチパチパチパチ…
「おめでとう。」
診察を放り出し同志が駆けつける。
「せ、先輩たち…。」
「自分に素直になるんだ。」
「そうすれば、今の自分も好きになれるさ!」
「うう…………、ありがとう……、ありがとうございます!!」
こうして秘密結社サクリストに新たな戦士が生まれた。
おめでとう、新人君。
君の未来は燦然と輝いている。
「さぁ、みんな。いつまでもここにいれば怪しまれる。行こうじゃないか。みんなでサクラ君を診察しよう。」
「「「「「アーッ!」」」」」
―――――――――――――――――
どうでも良いが、我は今の会話を聞いてしまった。
セラエノ学園警備員として学園のどこかで寝ていたのだが、たまたま寝ていた体育倉庫でエラい話を聞いてしまった。
サクラが……、危ない……!
いや、それどころかやつらのリミッターが外れ、いつ学園の生徒たちに獣の本性を出し、その溢れる情欲を向けないという保障はない。
どうにかしなければ…。
屠るのは簡単だ。
だが、学園の低学年たちに『やさしい龍のお姉さん』で通った我が彼らを力尽くで排除しようものなら、少年少女たちが我を恐れてしまうやもしれぬ…。
「そんなダオラ殿に朗報じゃ。」
「そ、そなたはバフォメット教諭!?一体いつの間に体育倉庫に!?」
「細かいことはどうでも良いのじゃ。要は正体を知られたくないのなら、変身じゃ!変身してやつらを蹴散らせば良いのじゃ。」
「しかし……、そうか前世紀の姿に変化すれば…!!」
「それだと学園そのものを壊してしまうじゃろ?そんな時は……。」
どこから取り出したのか、バフォメット教諭はとあるアイテムを取り出した。
「こ、これは……!?」
「ふっふっふ…、さすがに存じておったか。その通り、かつて魔界でもあまりの影響力から前世紀の魔王が封じ、さらに闇に葬ったという魔界においても曰く付きの暗黒の変身アイテム、『雷陀阿邊瑠徒(らいだあべると)』。ワシもこういうご禁制の品を集めるコレクターでのう。どうじゃ、ワシから買わぬか?今月、ワシの購入リストが多くてのう。特にお気に入りの新作エロゲーが9本も出るので難儀しておったのだ…。御代は……、なぁに。ヌシの給料の三分の一で良いぞ。」
「買った!!」
迷う必要はなかった。
子供たちの笑顔と金、我に天秤にかけるものなど何もなかった。
腰に雷陀阿邊瑠徒を巻き、変身ポーズを取る。
このアイテムを使う時は、必ず派手なポーズを決めなければならないのだ。
両腕を右へ真っ直ぐ横一文字に伸ばす。
シャキーン
どこからともなく効果音が流れてくる。
「ライダァァァァ…。」
ゆっくりと頭の上で弧を描くように腕を左へ動かしていく。
「へんっしん!!!」
左でガッツポーズのように腕を畳む。
雷陀阿邊瑠徒の中央の蓋が左右に開き、魔力が迸る。
このアイテムは持ち主の魔力に比例して、その効果を上げるのだ。
我のようなドラゴンが使えば……、
それは凄まじい効果を生むのである!
「トウ!!!!!」
我は大空に大きく跳ぶ。
虹色の光が世界を包んだ。
――――――――――――――――――
(画面の前のお友達も歌ってみよう)
『お面ライダー龍姫 挿入歌』
刻を超えろ!
空を駆けろ!
この学園のため
君は見たか龍が真っ赤に萌えるのを
普段警備の仕事
合間にすぐサボる
信じるものがジャスティス
大吟醸が好きさ
夢を見続けることが我のファンタジー
君のために戦うさ
白く光る鱗
刻を超えろ!
空を駆けろ!
この学園のため
熱く燃やせ!
正義燃やせ!
明日を掴むため
お面ライダー龍姫
お面ライダー龍姫
―――――――――――――――――
「そこまでだ!」
「何奴!?」
戦闘員が振り返る。
そこにいたのは、白銀の甲殻に覆われた一人のドラゴンが立っている。
腰に大きなベルト、肌の露出の面積が極端に少なくなった甲殻。
顔に銀色のお面を付け、その美しい長い髪と赤いマフラーが風もないのにたなびいていた。
「人々の信頼を利用し、自らの欲望を満たさんとする蛆虫どもめ。
我が姿を見るが良い!
人々に正しき道を示す姿。人、それを正義と呼ぶ!!」
「だから、誰だキサンブルゥアァァァァァァーッ!?」
「ジョ、ジョニィィィィィィー!!!!」
問答無用で蹴り飛ばされる戦闘員。
ドラゴンは特撮ヒーローっぽい大袈裟なポーズを取った。
シャキーン
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!
聞け、変質者ども!!
我は正義の戦士、お面ライダー…、お面ライダー龍姫だ!!!」
ジャキーン
ダオラのお面が輝く。
ダオラのベルトの風車が回転する。
「お、お面ライダーだと!ええい…、我らの野望を邪魔するのなら相手になってやる!!!行くぞ、同志たち!!!!」
「「「「「アーッ!」」」」」
「来い、サクリスト!学園の子供たちは我が守る!!」
「アーッ!」
ダオラの拳が戦闘員を打ち抜く。
「ドラゴォォーンスマァァッシュ!……成敗!!!」
「アーッ!」
翼で空を飛び、翼が空を割き、戦闘員を薙ぎ倒す!
「スクランブルカッター!!!」
「アーッ!」
ダオラの怪力で戦闘員が投げ飛ばされる。
「大雪山下ろしぃぃぃ!!!」
「アーッ!」
気が付けば後に残ったのは新人戦闘員ただ一人だけであった。
「く、くそぉ…!後少しで…、後少しで俺たちの忘れかけた夢が…、取り戻せたのに!!」
「そなたの夢など興味がない。だが………、お前はサクラに『欲情』した!サクラはマイアのもの。そしていつか我が『襲う』と決めた男ぞ!!!」
「て、てめえもか!?」
「問答無用、トウ!!!」
ダオラが空高く飛び上がる。
天上があって低いはずなのに、物理法則を無視してお面ライダーは飛ぶ。
「ドラゴン、キィィィィッッック!!!!」
急降下するスピードでダオラの蹴りが新人の顔面にヒットする。
「やわらか!!!!!」
意外にやわらかいダオラの足の裏の感触を一瞬だけ楽しんだ戦闘員はそのまま床に叩き付けられる。
そして何故かカメラが引いた。
「うわぁぁぁぁぁぁ……!!!」
どかぁぁぁぁぁーん
大爆発と共に戦闘員は木っ端微塵になる。
どう見ても発泡スチロールで作ったような破片が当たりに飛ぶ。
その爆発を背に、ダオラは勝利の決めポーズを取っていた。
「………これは、クセになりそうだ。」
何故魔界で封印されたのか、ダオラはわかった気がしていた。
―――――――――――――――
………あれ?
そう言えば、今回の上司が出てない?
実はサクリスト幹部は来ていたのだ。
だが………。
「駄目です、ルゥさん!私こんな格好恥ずかしいです!」
「勇気を出すのよ、ディオーレちゃん。女幹部役なんだからこれくらいしなきゃ。」
普段よりも露出の高い服を着て、ディオーレとルゥは学園医務室で待機していたのである。
「じゃあ練習しときましょう。台本、良い?サンハイ。」
「えっと……、フッフッフ。ヨクキタナ、ネフェルティータ!」
「完璧よ、ディオーレちゃん♪」
もちろん、この頃戦闘員が全員やられていたなど、彼女たちが知る由もない。
―――――――――――――――
次回予告
みんながやるなら俺もやる。
日本昔話が割りと好きな作者は実はずっとやりたかった。
次回、風雲!セラエノ学園第四話。
『学芸会 桃太郎』
「ロウガ…、まさか私をおばあちゃん役にはしないよね?」
10/11/30 17:04更新 / 宿利京祐
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