今日もレスカティエは平和です
「大変だ!デルエラ様がまた逃げたぞ!!」(;゚д゚)
「な、何だと!?警備の連中は何をしていたんだ!!」
「アリスがわざわざ手料理のアップルパイを持ってきてくれたらしい。それに夢中になってフゴフゴやっていたら、気が付いた時には執務室の椅子に大人しく座ってはずのデルエラ様が、ぴにゃこら太に変わっていたんだ、と聞いている」(・ω・;)
「うちの警備は本当にザルだな!?」
「しかも黒くて目付きが悪くて声が低かったらしい」(・ω・;)
「知らねえよ!!」
‘
「まあ、それがレスカティエの伝統みたいなものだけどな」(`・ω・´)キリッ
「捨てちまえそんな伝統!今すぐ!ハリー!ハリー!ハリー!!どうするんだよ、これバレたらまたウィルマリナさんに怒られちまうよ。あの人の説教長いんだぞ。しかも汚物、というか養豚場の豚を見るような冷たい目で」
「ウィルマリナ様のお説教は我々の業界ではご褒美れすわ〜♪」(^q^)
「顔文字うぜえ!何なんだよ、さっきから!!」
「いやね?俺、幹部Cの後釜を狙おうと思ってね」(´・ω・`)
「お、おう……が、頑張れ…」
「そういえば今宵様が『ウチな、未だに信じられないやけど、魔法とか妖術をあらゆる意味で冒涜するようなもの見たんや。言っても信じてもらえへんやろうけど、風船……バルーン、そう、ちっちゃいバルーン一つで空に飛んでく貨物コンテナを見てん。ウチ疲れてるやろか……アハハ…』とか言っていたような?」(・ω・)
「言っていたような?じゃねえ!!何だよ、そのクソ怪しい情報!?明らかに不審すぎるし、それ聞いてお前ら何も調べなかったのかよ!?いくら何でも無能すぎるだろ情熱的に考えて!!」
「困惑する今宵様を堪能してた。反省はしているが後悔はしてない」(`・ω・´)
「…………お前、しばらく昇進はないわ」
今頃、城ではてんやわんやしているだろうな、と思いながら私は路地裏で着替える。
ダメージジーンズにその辺で買ってきた『働いたら負け』とデカデカとヘタウマな字がプリントされたTシャツ、ちょっとオシャレな伊達眼鏡、大手スポーツメーカーのごく一般的なスニーカー、およそサキュバスらしくない露出のやたら少ない格好になる。
これは異性を誘うためではない。
むしろ敵(?)の目を欺くためのカムフラージュ。
私の名前はデルエラ。
この魔界国家レスカティエの黒幕(フィクサー)……いや、よそう。
今の私はデルエラでも美しき影の支配者でもない。
退屈な日常を飛び出した一人のリリム、それで十分かしら。
(ジャジャジャ♪)
Midnight 気合上等!夢に特攻 Let's Go! キメるぜ
さぁ限界なんて追い越して 風に乗ってその先の未来へ行こうぜ
Oi Oi Oi そうさ今宵は Ai Ai Ai 愛の集会(つどい)さ
Boom Boom Boom 胸のエンジン 今 うなりを上げて 伝説になる
(ピッ♪)
「あ、はい、お疲れ様ですデルエラです」
『もっしー?デルさん?』
「あ、メルセ」
私のスマホに電話を掛けてきたのはエキドナのメルセ。昔、ちょっとした縁があって堕とした筋肉メスゴリス。てっきり魔物化したらバイオゴリラみたくなるかと思ってワクワクしていたけどそんなことはなかった。いざ堕落させてみるとそれはそれは艶めかしいエキドナになってしまい、当時はかなりガッカリしたのも良い思い出だったりする。
彼女の内面は意外と乙女チックだったのだろうか。
『さっきフルトン回収装置で飛んでったのデルさんだろ?』
「…見てたの?」
この子もそうだけど、相変わらず私への敬意が感じられないわね。
人間社会みたく身分云々でうまくいかないものかしら。
『あー………やっぱりかぁ。じゃあ、今はいつもの共存区?』
「ええ、そうよ。息抜きにはちょうど良いもの」
現代の魔界国家レスカティエの首都には三つのブロックが存在する。
一つ目は『天外魔境区』と呼ばれるブロック。通称、アウター・ヘル。天国ではない。これはレスカティエを最初に堕とした時には生まれたブロックで、謂わば魔界そのものと言っても過言ではない。王城やレスカティエ主要人物の屋敷は主にこのブロックに集中している。何故か『陸のロアナプラ』として旅行番組に紹介されたこともあるけど、そのあたりは私の関知するところではないので知ったこっちゃない。
二つ目は『移民区』と呼ばれるブロック。ついこの間(確かパリにエッフェル塔が出来たぐらいかしら?)出来たばかりのブロックで、住人のほとんどは人間で魔界国家レスカティエの玄関口とも言える。当然のようにここが一番人口が多い。ここから希望者は天外魔境区で堕落してもらうことになるのだけれど、興味はあっても性風俗のように気軽には出来ないので足踏みしている者がほとんどなのが実情である。…………えっ?昔レスカティエを堕としたように無理矢理やっちまえば良いのに、ですって?………嫌よ、面倒臭い。あくまで本人の意思で堕ちてもらわないと後々余所から色々言われるのよ。それを口実に二度も世界大戦に巻き込まれたんだから堪ったものじゃないわ。
コテンパンにしてやったけど。
そして三つ目のブロックが今私のいる『共存区』。通称『レスカティエの神室町』。いつも思うけど『陸のロアナプラ』とどこがどう違うのかしら。教えてエロい人。読んで字の如くちょうど魔境区と移民区の混ざり合ったブロックで魔物娘と人間がごった返しているブロック。これ、私たちが制定していないのよね。気が付いたら勝手に出来上がっていたブロックで、何やらぬるま湯みたいな居心地の良い空気が漂っているのが特徴。欲望渦巻く闇夜の歓楽街丸出しで酒と涙と真島と女はここでだいたい揃う。
それが、日常に疲れた私の憩いの場である。
「一週間ぐらい遊んで帰るわ」
『せめて翌朝にしてくれよ。デルさん急ぎの決裁もほっぽり出してるだろ』
「フランツィスカにでもやらせておきなさいな」
彼女、一応政治の経験者なんだし。
『駄目だ。つーか、フランツィスカは無理』
「え゛っ!?」
『頼み込んだ瞬間マーライオンみたいに血を吐いて倒れた』
「え゛え゛っ!?」
『人間時代のストレスが一瞬で蘇ったみたいでさ。すごかったぞ。医務室でレントゲン写真見たら、胃が助けてリボンズって断末魔上げそうなぐらいボコボコに穴だらけで』
「やめて」
ちょっと想像したら私も胃が痛い。
『だからなるべく早く帰ってきてくれよ。アタシも事務仕事は苦手だし、ウィルマリナとミミルとサーシャとプリメーラは留守してるんだしさ』
「え、今日のお城、あなたと今宵とフランツィスカだけだったの?」
道理で逃げやすいと思ったわ。
でもおかしいわね。
私、あの子たちの有給休暇の申請とか受けてないのだけど?
『あいつら、デルさんが逃げた混乱に乗じて城を抜け出したんだよ。アタシらに内緒で刀剣乱舞のオンリーイベントに行ったらしい。それにさっき今宵のLINEに連絡が入ったんだけどさ、ついでに刀剣乱舞のミュージカルも見て帰るから日本に来月まで滞在するそうだ。だからな、デルさん………頼む、なるべく早く帰ってきてくれ』
………………………………………えー(;´Д`)ワタシ、キイテナイヨ、ナニソレ
「……あの子たちに伝えてくれる?胴田貫総受け触手陵辱の薄い本があったら買えるだけ買ってきてって。お金は後からいくらでも払うから」
『ラジャった』
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「新商品のメロンソーダ、お試しにどぞー♪」
共存区の大通りをぶらぶらと歩く。
誰もここ レスカティエの黒幕がいるなど思いもしないだろうと考えると妙に可笑しくなって変な笑いが込み上げてくる。今、笑いを噛み殺してちょっと気持ち悪い表情をしているという自覚がある。これが中二病バリバリだったあの頃(確かラファエロに肖像画を描いてもらった頃だったかしら?)だったら間違いなく八神庵みたいなの三段笑いをかましていたと思う。
「へえ、懐かしい感じのビンね」
手にしているのは『お試しにどうぞ』とレッサーサキュバスのキャンペーンガールからもらったメロンソーダのビン。コカコーラのビンによく似たやや厚ぼったい重量感を否応なしに感じさせるビンには、商品名である『チェスト』の文字と共にイメージキャラクターなのかイチローを追って渡米した謎の日本人メジャーリーガーが描かれている。
…………チェリオじゃないのね。
それよりもこの謎のメジャーリーガー、一体何サキ何ノリなのかしら。
「まあ、考えても仕方ないわね」
せっかくなので一口飲んでみることにする。
ご丁寧にフタを開けてくれていたので、行儀は悪いけど歩きながらグイッとビンを傾けた。
緑色の液体が舌を、喉を通り抜けたその刹那、まるで夏の草原を渡る風のように爽やかに駆け抜ける炭酸。甘さは控えめでこれなら飽きることなく一本をあっという間に飲み干せる。スポーツ(意味深)の後ならきっと美味しさはさらにドン。倍率ドン。倍増すること間違いなし。文句の付けようのないとはまさにこれ。これならお試しにと渡されたがもう一本、今度はお金を出してでも飲みたくなる。
でも、言わねばならないだろう。
そう、これはメロンソーダなのだ。
メロンソーダに対してこれを言わねばむしろ失礼に当たるだろう。
「このわざとらしい」
「うっ」
ドサッ
「あらあら、お兄さーんどうされましたー?あらー大変ですねー日頃の疲れが出ちゃいましたかーこんなところではアレですし事務所の方でごゆっくり休んじゃってくださいねー今なら最先端のデトックス(意味深)もお試しいただけますのでどうぞご遠慮なさらずーウフフフフフ♪」(棒読み)
「メロン味……って、え゛え゛っ!?」
決め台詞を言おうとした私の目の前で突然若い男が倒れた。
糸が切れたマリオネット……いいえ、モハメド・アリにキレイにカウンターをもらった歴代のヘヴィ級ボクサーたちがマットに沈んでいくようにぐんにゃりと崩れ落ちた。それも彼一人ではない。気が付けば何人もの若い男たちが崩れ落ちていく。みんな手には私と同じメロンソーダのビンを握っている。
なるほど、理解した。
ビンの中身は二種類あったんだ。
「…………なんてわざとらしい、睡眠薬」
……………………………
…………………………
………………………
……………………
「かいじゅーたいじはアイスのついで、もえるまーちでアームロック、どーのつらさげて、のーこのこと、かえーってきたぞ、かえーってきたぞー♪」
少し前に観た特撮の『帰ってきたリザアドマン』の主題歌を小声で歌いながら大通りを練り歩く。目的がない訳ではないのだけれど、ついさっき目的地がなくなってしまった。
簡単に言うとお腹が空いた。
ペコペコのペコちゃんです。
目的地はあった。今日はカレー……それもカレーラーメンな気分だったからお気に入りのラーメン屋に向かってみたら、店の前に嘘みたいな長蛇の列が出来ていて閉口した。行列の出来るような人気店じゃなかったはずなのに。並んでいたお兄さんに話を聞いてみると、オチッター(魔界版のツイッター)で有名人がここが美味しいと言ったものだからみんな並んでいるのだとか。
誰よ、私のオアシス荒らしたのは。
うぃるまりな@刀剣イベで宗近コスしますww
メビウス堂のカレーラーメン最高ぅ〜(>ω<)
原稿中の気合い入れにはヤッパリこれだね!
オチッターの呟きを並んでいたお兄さんに見せてもらった時、私の心の中に言い知れぬ黒い感情が芽生えた。怒りとも悲しみとも言えない、それでいて純粋で静かで豊かな破壊衝動。そう、これを闇堕ちと言うのかしらね。
そして追い討ちのように響き渡る『スープ終了のため本日の営業を終了します。ありがとうございました』という表に出てきた店長の声。ありがとうございました、じゃないわ。散っていく行列の人々の中で私も呆然としたままその場を後にした。
本当に残酷だ。残酷です。
お腹は空いたまま。
この黒い感情をそのままに暴れてやろうかと思ったけど、そんな気力すら空腹というヤツは奪っていく。焦るんじゃない。私は腹が空いているだけなんだ、と自分に言い聞かすのだが、そうなると今度はどこで食べようかという悩みが付いて回る。身も心もカレーラーメンになっていた程の一番食べたかったものが駄目だったのだから心が宙ぶらりんだ。
そんな訳で私は空腹を抱えたまま大通りをぶらぶらしている。
たが何も決まらない内に時間だけが過ぎていき、空腹も限界に来て、もう適当にその辺の飯屋にでも入っちまえ、と半ばやけっぱちになっていたその時、小汚い居酒屋が私の目の前に現れた。現れた、というのは適切ではないかもしれない。最初からそこにあるものを『現れた』と表現するのはどうかと思ったけど、その居酒屋は私の意識の中に急に現れた。
大衆酒場 馬豊庵
なかなか年期の入った縄暖簾。今日オススメの魚などを書いた手書きのお品書きの看板が非常にわかりやすい。へぇ、今日のオススメは今朝釣れたばかりの関アジと関サバのお造り……ってこれジパング、日本の食材よね。
………どうやって取り寄せてるのかしら。
まあ、そんなことよりも……
ランチあります
とても魅力的な呪文じゃない。この先はもう食事出来そうなところはないし、私の権力も及ばないレスカティエ2丁目もあるし、引き返すのも馬鹿らしいし、ここで良いような気がしてきた。
決めた。
ここにしよう。
「すみません、まだランチやってます?」
カラリと小気味の良い音を立てて磨り硝子の引き戸を開ける。このカラリという音。クセになりそう。店の中身は至ってシンプル。6人ほど座れるL字型のカウンター、四人掛けのテーブルが2つ、椅子はすべて酒樽の上に座布団置いただけという味のあるものだった。客の姿はない。カウンターの中で店の大将らしきバフォメットが皿洗いをしているだけだった。
どうやらうまいこと昼時を外せたらしい。
「らっしぇーい。うちのランチは2時までやっとるき大丈夫……………ん?………ゲッ、デル公!なしこんな場末に!?」
……入る店を間違えたかしら。
いきなり正体バレるし、デル公扱いだし。初対面のバフォメットにいきなりデル公よわばりされる謂われはないはずなんだけど………んん?……こいつ、初対面じゃないわ。そう、半世紀ぐらい前に顔を合わせ……あっ!
「セラエノのバフォメット!」
「チッ」
「本気の舌打ちやめて」
確か、イチゴって名前だったはず。
「あなたこんなとこで何してんのよ。ルオゥム帝国の外務大臣やってたんじゃないの?」
「あれからいろいろあって責任問われてのう。ちょうど潮時ってもん感じちょったけえ、娘に跡目譲って30年ほど前からここで道楽商売をしておったところじゃ」
イチゴ促されてカウンター席に腰を下ろす。
「責任問われて、って何やったのよ」
「汚職」
正真正銘のクズでした。
「それはそれとして世界大戦の時ゃ本当に世話になったのう。お主らレスカティエが介入してくれなんだらルオゥム帝国も危なかったのじゃ」
「別にお礼言われるようなことはしていわ。あなたたちの頼みの綱のセラエノが四方を敵に囲まれて動けなきゃね。人間寄りとは言っても同じ魔物国家。そう簡単に見捨てられる訳がないじゃないの」
第二次世界大戦中、あちら方面の足場作りの一環で彼女たちを助けたことがある。そのままレスカティエに取り込もうかと思ったこともあったが、同じ魔物同士で敵対しても利益はないというウィルマリナらの意見を採用し、その懐柔策として私の妹たちを何人かセラエノとルオゥム帝国の有力者や皇族と結婚させている。その時のルオゥム帝国側の外交相手が目の前のバフォメット、イチゴだった。
ちなみに妹たちの夫婦仲は非常に良好らしい。
…………私は、まだ独身なのに。
「せっかくじゃ。ろくに礼も出来んまま失脚しちまったし、あの時の礼も兼ねて今日はお姉さんが奢っちゃろう。2万円まで」
「気前良いのね。それに気にしなくても良いのよ。こちらにもこちらなりの思惑あった訳だし。それにしてもあなたがお姉さん?可愛らしい冗談ね」
「……一応言うておくがの。ぶっちゃけるとワシ、お前んとこの第三王女と同い年じゃけんね?」
「嘘っ!?ちい姉様と!?」
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『猪狩、仲間の灰を集めてバットを創れ。俺たちはそれを抱いて戦場(スタジアム)に行く』
『死してなお、戦い続ける。仲間(チームメイト)の下で』
『俺たちは野球選手(ダイヤモンド・ドッグス)だ』
平日の昼間から居酒屋でお酒(清酒 女装少年)を飲みながらのんびりとテレビを観るって、考えてみたら最高の贅沢よね、と私は一人コップを傾ける。イチゴにはオバサン通り越してオッサンくさいと言われてしまったが、お酒のアテはご飯と漬け物(出汁醤油の掛かった白菜漬け)。
これがなかなかイケる。
白菜漬けは少し酸味が出るほど漬け込まれたまさに家庭の味。それに掛けられたら出汁醤油の破壊力。これが漬け物とご飯を一緒に食べなければという使命感を私に掻き立てるのだ。この私、魔王の娘たるデルエラをしてでも抗えない魅力。やはりご飯は生命の源、原始の魔法なのだと、私は口の中でご飯と漬け物をモグモグさせながら幸せに浸っている。
………それにしてもこのドラマ、面白いわね。
確か『実写版パワフルプロ野球The Phantom Pain』。今時スポーツ根性物なんて流行らないと華麗にスルーして第一話から見てなかったけど、それは間違いだったと認識する。これは、最初からチェックするべきだったわ。なかなか面白いしBOX出たら買おうかしら。
『オイラと矢部田さんをトレードするなんてどうかしているでヤンス!同じメガネだからって、矢部田さんがオイラより能力が高いとかパワプロくんたちは幻を見ているんでヤンスよ!まともなのはオイラだけでヤンスか!?』
チャンス2の貴様に慈悲はない。
さて、そろそろ何か別のを頼もうかしらね。まだランチメニューやってるみたいだし、単品ばかり頼むよりはこういうランチメニューの方がどこかお得感があって良い。さてさて…………唐揚げ定食も捨て難いわね。生姜焼き定食も食欲をそそられる。少しお高いけど刺身定食なんてのも良いわね。
…………むむむ?
「何がむむむじゃ?」
「心の声に割り込まないでよ。この炭火焼き肉定食って……」
「ああ、それな。テーブルに金網乗っけた小さい七輪を持ってくるから自分で肉を適当に焼いて食えっちゅうワシが楽したいだけのヤツじゃよ」
「身も蓋もないわね」
確かに身も蓋もない。だが、イチゴの説明を聞いて私は俄然それに興味を惹かれた。自分で焼いて食べられる。しかも小さな七輪で、肉の焼ける匂いと煙を感じながら。これは堪らない。
「じゃあ、炭火焼き肉定食を」
「肉は適当に選ぶが良いか?」
「構わないわ」
「あいよー、じゃあ、しばし待つのじゃ」
そう言ってイチゴはカウンターから店の奥へと姿を消した。奥に冷蔵庫でもあるのかしら。……いや、そんなことよりも、さっきからどうも同じ目線で違和感を感じていたら、あいつ踏み台に乗っていたのね。
さて、あいつが来るまでテレビの続きでも……
ジョインジョインワシィ
デデデデザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー
ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ ゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケン K.O. イノチハナゲステルモノ
…………………………見れない!
気になって見れる訳がない!!何!?何なの!?
店の奥から圧倒的な絶望が聞こえてくるんだけど!?
「いやー、待たせたのう♪」
そして店の奥から炭火の入った七輪とお肉の盛られた皿を持って現れたイチゴ。ものすごい笑顔。スッキリしたって感じの笑顔。純然たる高位の魔物娘は例え普段がぐーたらのろくでなしであっても牛ぐらいなら素手で苦もなく倒せるようだ。後、返り血がヤバい。待たせたと言う割に私はたいして待ってもいなかった。何故ならイチゴが店の奥に消えてからここまで一分足らず。
ここがゲーセンならリアルな血の雨が降っているだろう。
「ちょうど新鮮なヤツが残ってて良かったわい♪……が、すまんのう。ホルモンとかは下処理にちょっと手間取っちまってて、とりあえずこれだけでも食いながら待っててほしいのじゃ」
私の目の前にゴトンと置かれた七輪とお肉の盛り皿。新鮮、というかこれさっきまで生きていたのよね?こういうのを目の当たりにすると、まさに生きるとは他者の命を糧にするものであることを思い知らされる。
もっとも、それで食欲失せるようなやわな神経してないけど。
見たところ皿に乗っているのはカルビ、ロース、タン塩と言ったところね。しかも加工どころか血抜きからその他諸々の処理まで完璧にキレイに出来てる。あのジョインジョインから始まる超短時間で。
「何あなたどこの錬金術師?」
「今のワシ、料理人よ?これぐらい出来て当たり前じゃ」
料理人ってすごい。
本当にそう思った。
「ところで」
「え?」
「タレは何にするのじゃ?」
「何があるの?」
「えーっとのう、エバラ」
いきなり商品名。
「後は絞ったレモンに塩胡椒混ぜただけのレモンだれ」
シンプルね。だがそれが良い。特にここにあるタン塩なんかレモンだれで食べたいところだし、他のお肉もかなりサッパリ食べられる よし、レモンだれにしよう。
「じゃあ、レモン」
「ああ後のう、大根おろし」
なん………だと……!?
こいつ、アレか!?私はまだ後一回変身を残している、とかいうジャンプ黄金期か!?い、いや、落ち着け。落ち着くのよ、デルエラ。たかだか焼き肉のタレ如きで動揺しているなどと悟られてはいけないわ。ダメージを平然と受け流すのよ。呼吸を整えて、そう、素数を、素数をゆっくり数えるの。素数は1と自分でしか割ることの出来ない孤独な数字。私に勇気を与えてくれる。1、3、5、7、9、11、13、15……。
「それ全部奇数じゃな」
「だから心の声を聞くのはやめなさいってば。……で、でも大根おろしよね?よくあるあらかじめすり下ろしたヤツが入った真空パックか何かでしょ?アレって便利だけど香りも味も辛味もあんまりなくて私好きじゃないのよね」
「いつからワシが真空パックを使うだのと勘違いしてた?」(ニタリ)
スッとイチゴの上げた手に握られていたもの。
意外!
それは卸し金と一本まんまの大根!
「なにぃーーー!?」
「クケケケ、おろすぞ。こいつをザリザリおろすぞ。しかもこいつは大根特有の爽やかな香りと強烈な辛味のあるワシ好みの大根じゃ」
「ワンダホーーッ!!」
「さらに」
「ま、まだ上が……ある……ッ!?」
「ただの市販のポン酢を掛けたのでは面白うない。そのへん、お主もわかっとろう。そこでじゃ。ワシ好みの配合ではあるがの、この、特製カボス醤油を掛ける!ほれ、この味と香りを貴様も確かみてみろ」
一升瓶からほんの少しだけ黒い液体が小皿に盛られる。
私はそれをイチゴから受け取ると人差し指の先にちょこんと付けて口の中で舐めとった。
「こ、これはッ!」
一口舐めてみてすぐにわかった。これはカボス醤油だ。紛うことなきカボス醤油なのだ。ただ『醤油』を『カボス』で割っただけのシンプルなもの。そこに出汁などが割り込むことがない純粋なカボス醤油だ。ただ、この柑橘系の爽やかな香りと酸味は只事ではない。
「醤油はそこのスーパーで買うた徳用旨口醤油じゃが、カボスそのものはわざわざセラエノから取り寄せたものじゃ。いやあ、これ作るんに苦労したぞ。丸のまんまのやつを大量に切って握り潰し……もとい絞って、絞ったヤツを布でこしてカボスと醤油を酸味強めな6:4で割って(云々)」
「イチゴ、レモンはやめにするわ。大根おろし。スチュワーデスがファーストクラスの乗客をもてなすように出来る限り素早く、そしてスマートに」
堪らん。
この説明を舌で楽しみたくなった。
「まいどー。さて、茶碗よこせ」
「え?」
「焼き肉には、白い飯、じゃろ。炊き立て盛っちゃる」
「パーフェクトよ、イチゴ」
……………………………
…………………………
………………………
……………………
肉を焼け。
網の上でひたすら無心に肉を焼く。
焼けたら大根おろしのタレをたっぷり付けてご飯に乗せる。そして乗せた肉ごとご飯を口に放り込むのだ。噛み締めると肉の旨み、脂の旨み、大根おろしの辛み、カボスの爽やかな酸味と香り、それらが染み込んだご飯が何と幸せなことだろうか。しかもこのご飯は麦ご飯。ただ美味しいだけじゃなく食物繊維も豊富。肉ばかり食べても明日のお通じが怖くない。
「はふはふ♪」
「落ち着いて食え。誰も盗りゃせんわい」
「いやね、美味しいのよ」
「シンプルなんが一番美味いきね。ご飯のお代わりは?」
「麦ご飯大盛りで」
ついでに白菜漬けも注文する。
客がいないからなのか待ち時間などほとんどなく麦ご飯のお代わりと白菜漬けが目の前に出された。白菜漬けはさっきより僅かながら量が多く、そしてさっき掛けられていた出汁醤油が掛かっていない。
「イチゴ、出汁醤油が掛かってないわ」
「おや、そのつもりじゃったろ?」
ニヤニヤとイチゴがカウンターの向こうで笑っている。
私の意図を完全に理解しているようだ。
「ええ、パーフェクトよ」
おもむろに箸で白菜漬けを掴むと、そのまま大根おろしのタレの中に放り込み、満遍なく白菜漬けと大根おろしを混ぜ込んだ。イチゴは黙ってそれを見ている。私とてこれが決して行儀の良い食べ方ではないのは理解している。しかしこれが正解なのだ。
「……はむっ」
その時私に電流走る。
大根おろしの辛味、漬け物の酸味、麦ご飯の甘味の絶妙なるハーモニーって言うんですか?それに漬け物のシャリシャリという小気味の良い食感が素敵なアクセントになって食べることを飽きさせない。いかん、これではいつまでも肉を焼いて、食べてを繰り返すだけの永久機関になってしまう。
うおぉぉーん、まるで私は
「人間火力発電所け?」
「台詞取るのやめて」
「おんし、人より考えとうことが顔に出やすいみたいじゃき気ぃ付けえよ。まあ、ほんなこつより大根おろしはまだあるきね、替えが欲しゅうなったらいつでん言ってん良かばい。麦飯んもまだまだようけあるき」
大根を擦りながら喋るイチゴは気が抜けているのか、それとも擦るのに集中しているからなのか、いつも以上にひどく訛った口調だった。つーかどこの言葉だそれは。発音もひどすぎてテレパシーで聞かなきゃ半分近く何言ってるのかわからなかったわ。
「むっ、デルエラ!貴様、見ておるな!」
「見てないわ。聞いただけよ。その台詞吐きたきゃ、せめて時間止めるか、真実を書き換えることが出来るようになってから使いなさいな」
「見た目だけの時間は止めておるがそれじゃいかんのか?」
「ええんやで。……っと、そうじゃないわ。さっきから大根をおろしてるけど、それ明らかに多すぎじゃないの?いくら何でも焼き肉のタレに使うには多いわ」
さっきからカウンターの向こうではザリザリと大根をおろす音が鳴り止まない。確実にこれは二本目に突入している。コナン君が推理を披露する前に犯人もトリックも読み取ってしまう私の勘がそう告げているのだ。
間違いない。
「あ、これ?いやね、おぬしの食べっぷりを見てたらワシも腹が減っちゃって。昼飯もそこそこにしか食うてなかったきワシも一緒に食おうと思うて」
「あら、そうなの?じゃあ、一緒に焼き肉しちゃう?」
「それはやめとく。あんまり腰を落ち着けて食えんしのう。じゃけんね、これを食うつもりじゃよ」
そう言ってイチゴが取り出したもの。
それは『うどん』。
どこのコンビニ、スーパーマーケットでも売っているごく普通の乾麺、棒うどんとも呼ばれている代物である。使い勝手が良く、しかも価格が安くて、腰があって美味しいのが特徴。どこかの誰かのお気に入り食材である。
「こいつをササッと湯がいて冷水で締めたら、この大根おろしと大きめに切った大ネギをどんっと乗っけて、カボス醤油ぶっかけて食っちまおうとか思っておったところじゃ。これがのう、客にゃ出せんがなかなかにうまくて……」
「イチゴ、私もそれ食べたい」
「○月某日、食欲旺盛じゃのう。ええけど、味は期待するなよ?これ賞味期限直前のヤツをまとめ買いで安く買うてきたやつじゃからな」
私は一向に構わん。
死亡フラグっぽいけど私は一向に構わん!
こうして私の幸せなご飯タイムはもうしばらく続くのであった。
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「…………………ほぅ」
感動的満腹。
時計はすっかり三時を回った頃、出された口直しの冷たい黒豆茶を飲みながら私は食後の余韻を楽しんでいた。あれから何だかんだと追加で頼んでしまった。ホルモンにもずく酢に冷や奴。それにまかない飯の大ネギの辛みが利いた大根おろしの冷たいうどん。麦ご飯は結局何杯食べたのか覚えていない。満腹にもなるわ。いくら何でも食べ過ぎね。
「よく食ったのう」
「ええ、満足」
イチゴは私の食べた後の食器を片付けている。
店内には食器を洗うカチャカチャという心地良い音だけが響いている。お腹は満足。店内は涼しくて程々に暗い。それに適度にアルコールも入っていて良い按配に夢見心地。これでタバコでも吸えたらちょっとはイケてるお姉さんに見えるのかもしれないけど、残念ながらここ六世紀ほど禁煙を続けている。姪っ子がね、嫌いなのよ。タバコの臭いが。まだまだ可愛い盛りの姪っ子に嫌われたくない。だから、禁煙の真っ只中。
……………さて。
「ねえ、イチゴ」
「あいよ」
「食後のデザートはあるのかしら?」
「おぬしも好きじゃのう。クケケ♪」
「あら、私だってまだまだ女の子だもの。好きに決まってるじゃない」
「お互い女の子って歳かよ(笑)。直接扱っておるっちゅう訳じゃないがの。いろんなとことデリバリー契約結んでおるから、このメニューから好きなもん頼めや。ショタ、ホスト系、好青年、ナイスミドル、あらゆるジャンルの男を用意出来っぞなもし!」
「あなた有能!」
イチゴに手渡されたデザート(意味深)のメニューをマジマジと見る。ほうほう、あの店この店、結構レスカティエでも大手の魔物娘向けの出張型風俗店とも契約している訳ね。お腹を満たすメニューにも驚いたけど、下半身を満たす方も油断ならない品揃え。恐れ入ったわ。
…………え?
デルエラともあろう者がわざわざ男娼漁りするなんて如何なもの、ですって?………良いのよ。そりゃあ私だって結婚とかにも憧れていた時期が確かにあったわ。でもね、王族出身の悲しい性。付き合う男の底という底まで見えちゃったりして長く続かないのよ。付き合った男は数知れずだけど、体も心も許せる関係になったのは一人もいないの。
あー……、結婚したい…。
とりあえず対等にお付き合い出来る異性が欲しい。
「どうした、死にかけのフルフルみたいに遠くを見詰めて」
「ちょっと宇宙と一つになっていたわ」(´;ω;`)ブワッ
「おい、泣いとるぞ!?」
「あら、目にゴミが入ったのかしらね」
歳を取ると涙もろくなるしのう、とか無礼なことを言っているイチゴは無視して再びメニューと向き合う。忘れよう。今は遠き理想郷ではなく、目の前にある刹那的な享楽に身を委ねて忘れてしまおう。うん、そうしよう。
………………ほう?
「ねえ、イチゴ」
「何じゃ?」
「この『密着!満員痴漢電車(清純男子高校生編)』とかいうイメージプレイなんだけど……」
「お、それ気になるんけ?」
「これ、半ズボンの似合うウブな小学校中学年男子をあの手この手で身動き取れない状況でデュフフフしちゃうコースってのはないのかしら?」
「あー………その店、小学生使用許可取っておらんのよ」
「……あ、そうなの」
今日のカレーラーメンからずっとツキがない。
どうも空回りばかりだ。
「高校生じゃいかんのか?」
「うーん、ちょっとね。私のストライクゾーンからは上過ぎるかなぁ」
「おいおい、その理屈で行くとストライクゾーン低過ぎてもうワンバンじゃそれ。野茂か佐々木のフォークボールじゃねーんじゃぞ」
「でも私にはホームランボールよ」
「岩鬼か!」
何と言われようともこればかりは譲れない。
「しかし残念よのう。痴漢電車の男子高校生編はうちの常連のおっさんたちに人気のプレイなんじゃがな。まあ、時間もあるようじゃから納得するまで選ぶとええよ」
………常連の……おっさん…?
…………………………………私は何も聞かなかった。他人の冷蔵庫の中身と性癖に深く立ち入ってはいけない。魔王たる私の母の教えだし、何より古事記にも書いている。深入りしてもろくなことはない。それにしても、おっさんどもにあんなことこんなことされちゃう清純男子高校生か。………………嫌いじゃないわ、かなり。
さて、そうなるとどれを食べよう(意味深)かしら。
第一候補はたった今夢破れたところだし………んむ。この『女装少年トンネル開通式』なんてどうだろう。うん、これこれ。これにしよう。ちゃんと横に『当店の女装少年はすべて小学生の男の娘です』と書いている注意書きも心憎い。私のストライクゾーンど真ん中。可愛い男の娘、それに初アナルだなんて気が利いているじゃないの。運が良かったらうちの人手(アルプ)も増えちゃうし。うん、これにしよう。
「イチゴ、この女装少年トンネル開通式ってのを…」
「あ、すまん。それ先月で終わったんじゃよ」
「じゃあ、『女教師・深夜のいけない筆おろし課外授業』は…」
「それもすまんのう。その店の系列、先月経営陣が丸ごとおぬしんとこの治安警備隊に人身売買でパクられてそっくりそのまま潰れちまったんじゃわ」
「うっそ、あいつらの店だったの!?」
ガーン、だわ。
いろんな意味で出鼻を挫かれた。
しかしここまで今日はツキがないとなると、物珍しい奇をてらったデザート(意味深)は避けた方が良いような気がしてきた。そんな中で私好み且つ奇をてらってなくてハズレのない美味しいデザート(意味深)となると……むぅ。
「まめかん、お願い」
「まいどー♪」
※豆姦(まめかん)
魔界における典型的な定番おやつ(意味深)。
少年サイズのインキュバスが誠心誠意お相手する。見た目こそ少年だがかなりの年数を生きており、さらに経験人数もかなりのもの。若い少年の肌と元気さ(意味深)に加え、中年男性並みのねちっこい老獪さ(意味深)を併せ持つために昔から人気のおやつ(意味深)である。しかも後腐れない。そのため魔界では庶民から王族、老いも若きも、男も女もみんな下半身がお世話になっている。
ふぅ、注文したら少し余裕が出てきた。
それにしても私ともあろう者がたかがデザート(意味深)を選ぶだけでこんなにも時間が掛かろうとは思いもしなかった。こんな情けない姿、ウィルマリナたちにも、母にも姉妹たちにも見せられないわね。絶対『プギャー』って顔して指差して笑うに決まっているんだから。
さあ、豆姦の準備が出来るまで時間掛かるだろうしテレビの続きでも見ながらのんびり待つと…
「あいよ、まめかんお待ち!」
……しましょう、と思ったんだけど早かったわね。もしかしてお店って近くだったのかしら…………って、おい。
「………イチゴ、何これ?」
「何って、豆かん」
※豆かん(まめかん)
豆と寒天の甘味。
控えめな甘さで美味しい。
どこまで食べても飽きの来ない昔ながらの味。
「豆かん。大事なことなので二回言いました」
「……………………………………」(・ω・)
………………………………………………………………………ブチッ(º∀º#)アッハー
それはある晴れた日のこと
いつもと変わらない日常
どこにでも転がっている穏やかな日々
そんなありふれた幸せの中を僕らは生きている
「ダンソン!フィーザキー!」
「ワ、ワシが悪かった!すぐに豆姦の方は用意する!だから、歌うな!踊るな!円を描きながらワシに近寄るなぁぁぁーー!!」
「ニーブラ!!」
「アバァァァーーーーッッッッッ!!!」
デルエラの豪腕が当たり前のように
イチゴの首をニーブラ(チョークスリーパー)したその頃
ベンチで冷たくなっているUCHI川が発見され
村TAとYOSHI村が病院内で静かに息を引き取り
蒲田のあいつがレスカティエにどこからか上陸した
今日もレスカティエは平和です(白目)
「な、何だと!?警備の連中は何をしていたんだ!!」
「アリスがわざわざ手料理のアップルパイを持ってきてくれたらしい。それに夢中になってフゴフゴやっていたら、気が付いた時には執務室の椅子に大人しく座ってはずのデルエラ様が、ぴにゃこら太に変わっていたんだ、と聞いている」(・ω・;)
「うちの警備は本当にザルだな!?」
「しかも黒くて目付きが悪くて声が低かったらしい」(・ω・;)
「知らねえよ!!」
‘
「まあ、それがレスカティエの伝統みたいなものだけどな」(`・ω・´)キリッ
「捨てちまえそんな伝統!今すぐ!ハリー!ハリー!ハリー!!どうするんだよ、これバレたらまたウィルマリナさんに怒られちまうよ。あの人の説教長いんだぞ。しかも汚物、というか養豚場の豚を見るような冷たい目で」
「ウィルマリナ様のお説教は我々の業界ではご褒美れすわ〜♪」(^q^)
「顔文字うぜえ!何なんだよ、さっきから!!」
「いやね?俺、幹部Cの後釜を狙おうと思ってね」(´・ω・`)
「お、おう……が、頑張れ…」
「そういえば今宵様が『ウチな、未だに信じられないやけど、魔法とか妖術をあらゆる意味で冒涜するようなもの見たんや。言っても信じてもらえへんやろうけど、風船……バルーン、そう、ちっちゃいバルーン一つで空に飛んでく貨物コンテナを見てん。ウチ疲れてるやろか……アハハ…』とか言っていたような?」(・ω・)
「言っていたような?じゃねえ!!何だよ、そのクソ怪しい情報!?明らかに不審すぎるし、それ聞いてお前ら何も調べなかったのかよ!?いくら何でも無能すぎるだろ情熱的に考えて!!」
「困惑する今宵様を堪能してた。反省はしているが後悔はしてない」(`・ω・´)
「…………お前、しばらく昇進はないわ」
今頃、城ではてんやわんやしているだろうな、と思いながら私は路地裏で着替える。
ダメージジーンズにその辺で買ってきた『働いたら負け』とデカデカとヘタウマな字がプリントされたTシャツ、ちょっとオシャレな伊達眼鏡、大手スポーツメーカーのごく一般的なスニーカー、およそサキュバスらしくない露出のやたら少ない格好になる。
これは異性を誘うためではない。
むしろ敵(?)の目を欺くためのカムフラージュ。
私の名前はデルエラ。
この魔界国家レスカティエの黒幕(フィクサー)……いや、よそう。
今の私はデルエラでも美しき影の支配者でもない。
退屈な日常を飛び出した一人のリリム、それで十分かしら。
(ジャジャジャ♪)
Midnight 気合上等!夢に特攻 Let's Go! キメるぜ
さぁ限界なんて追い越して 風に乗ってその先の未来へ行こうぜ
Oi Oi Oi そうさ今宵は Ai Ai Ai 愛の集会(つどい)さ
Boom Boom Boom 胸のエンジン 今 うなりを上げて 伝説になる
(ピッ♪)
「あ、はい、お疲れ様ですデルエラです」
『もっしー?デルさん?』
「あ、メルセ」
私のスマホに電話を掛けてきたのはエキドナのメルセ。昔、ちょっとした縁があって堕とした筋肉メスゴリス。てっきり魔物化したらバイオゴリラみたくなるかと思ってワクワクしていたけどそんなことはなかった。いざ堕落させてみるとそれはそれは艶めかしいエキドナになってしまい、当時はかなりガッカリしたのも良い思い出だったりする。
彼女の内面は意外と乙女チックだったのだろうか。
『さっきフルトン回収装置で飛んでったのデルさんだろ?』
「…見てたの?」
この子もそうだけど、相変わらず私への敬意が感じられないわね。
人間社会みたく身分云々でうまくいかないものかしら。
『あー………やっぱりかぁ。じゃあ、今はいつもの共存区?』
「ええ、そうよ。息抜きにはちょうど良いもの」
現代の魔界国家レスカティエの首都には三つのブロックが存在する。
一つ目は『天外魔境区』と呼ばれるブロック。通称、アウター・ヘル。天国ではない。これはレスカティエを最初に堕とした時には生まれたブロックで、謂わば魔界そのものと言っても過言ではない。王城やレスカティエ主要人物の屋敷は主にこのブロックに集中している。何故か『陸のロアナプラ』として旅行番組に紹介されたこともあるけど、そのあたりは私の関知するところではないので知ったこっちゃない。
二つ目は『移民区』と呼ばれるブロック。ついこの間(確かパリにエッフェル塔が出来たぐらいかしら?)出来たばかりのブロックで、住人のほとんどは人間で魔界国家レスカティエの玄関口とも言える。当然のようにここが一番人口が多い。ここから希望者は天外魔境区で堕落してもらうことになるのだけれど、興味はあっても性風俗のように気軽には出来ないので足踏みしている者がほとんどなのが実情である。…………えっ?昔レスカティエを堕としたように無理矢理やっちまえば良いのに、ですって?………嫌よ、面倒臭い。あくまで本人の意思で堕ちてもらわないと後々余所から色々言われるのよ。それを口実に二度も世界大戦に巻き込まれたんだから堪ったものじゃないわ。
コテンパンにしてやったけど。
そして三つ目のブロックが今私のいる『共存区』。通称『レスカティエの神室町』。いつも思うけど『陸のロアナプラ』とどこがどう違うのかしら。教えてエロい人。読んで字の如くちょうど魔境区と移民区の混ざり合ったブロックで魔物娘と人間がごった返しているブロック。これ、私たちが制定していないのよね。気が付いたら勝手に出来上がっていたブロックで、何やらぬるま湯みたいな居心地の良い空気が漂っているのが特徴。欲望渦巻く闇夜の歓楽街丸出しで酒と涙と真島と女はここでだいたい揃う。
それが、日常に疲れた私の憩いの場である。
「一週間ぐらい遊んで帰るわ」
『せめて翌朝にしてくれよ。デルさん急ぎの決裁もほっぽり出してるだろ』
「フランツィスカにでもやらせておきなさいな」
彼女、一応政治の経験者なんだし。
『駄目だ。つーか、フランツィスカは無理』
「え゛っ!?」
『頼み込んだ瞬間マーライオンみたいに血を吐いて倒れた』
「え゛え゛っ!?」
『人間時代のストレスが一瞬で蘇ったみたいでさ。すごかったぞ。医務室でレントゲン写真見たら、胃が助けてリボンズって断末魔上げそうなぐらいボコボコに穴だらけで』
「やめて」
ちょっと想像したら私も胃が痛い。
『だからなるべく早く帰ってきてくれよ。アタシも事務仕事は苦手だし、ウィルマリナとミミルとサーシャとプリメーラは留守してるんだしさ』
「え、今日のお城、あなたと今宵とフランツィスカだけだったの?」
道理で逃げやすいと思ったわ。
でもおかしいわね。
私、あの子たちの有給休暇の申請とか受けてないのだけど?
『あいつら、デルさんが逃げた混乱に乗じて城を抜け出したんだよ。アタシらに内緒で刀剣乱舞のオンリーイベントに行ったらしい。それにさっき今宵のLINEに連絡が入ったんだけどさ、ついでに刀剣乱舞のミュージカルも見て帰るから日本に来月まで滞在するそうだ。だからな、デルさん………頼む、なるべく早く帰ってきてくれ』
………………………………………えー(;´Д`)ワタシ、キイテナイヨ、ナニソレ
「……あの子たちに伝えてくれる?胴田貫総受け触手陵辱の薄い本があったら買えるだけ買ってきてって。お金は後からいくらでも払うから」
『ラジャった』
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「新商品のメロンソーダ、お試しにどぞー♪」
共存区の大通りをぶらぶらと歩く。
誰もここ レスカティエの黒幕がいるなど思いもしないだろうと考えると妙に可笑しくなって変な笑いが込み上げてくる。今、笑いを噛み殺してちょっと気持ち悪い表情をしているという自覚がある。これが中二病バリバリだったあの頃(確かラファエロに肖像画を描いてもらった頃だったかしら?)だったら間違いなく八神庵みたいなの三段笑いをかましていたと思う。
「へえ、懐かしい感じのビンね」
手にしているのは『お試しにどうぞ』とレッサーサキュバスのキャンペーンガールからもらったメロンソーダのビン。コカコーラのビンによく似たやや厚ぼったい重量感を否応なしに感じさせるビンには、商品名である『チェスト』の文字と共にイメージキャラクターなのかイチローを追って渡米した謎の日本人メジャーリーガーが描かれている。
…………チェリオじゃないのね。
それよりもこの謎のメジャーリーガー、一体何サキ何ノリなのかしら。
「まあ、考えても仕方ないわね」
せっかくなので一口飲んでみることにする。
ご丁寧にフタを開けてくれていたので、行儀は悪いけど歩きながらグイッとビンを傾けた。
緑色の液体が舌を、喉を通り抜けたその刹那、まるで夏の草原を渡る風のように爽やかに駆け抜ける炭酸。甘さは控えめでこれなら飽きることなく一本をあっという間に飲み干せる。スポーツ(意味深)の後ならきっと美味しさはさらにドン。倍率ドン。倍増すること間違いなし。文句の付けようのないとはまさにこれ。これならお試しにと渡されたがもう一本、今度はお金を出してでも飲みたくなる。
でも、言わねばならないだろう。
そう、これはメロンソーダなのだ。
メロンソーダに対してこれを言わねばむしろ失礼に当たるだろう。
「このわざとらしい」
「うっ」
ドサッ
「あらあら、お兄さーんどうされましたー?あらー大変ですねー日頃の疲れが出ちゃいましたかーこんなところではアレですし事務所の方でごゆっくり休んじゃってくださいねー今なら最先端のデトックス(意味深)もお試しいただけますのでどうぞご遠慮なさらずーウフフフフフ♪」(棒読み)
「メロン味……って、え゛え゛っ!?」
決め台詞を言おうとした私の目の前で突然若い男が倒れた。
糸が切れたマリオネット……いいえ、モハメド・アリにキレイにカウンターをもらった歴代のヘヴィ級ボクサーたちがマットに沈んでいくようにぐんにゃりと崩れ落ちた。それも彼一人ではない。気が付けば何人もの若い男たちが崩れ落ちていく。みんな手には私と同じメロンソーダのビンを握っている。
なるほど、理解した。
ビンの中身は二種類あったんだ。
「…………なんてわざとらしい、睡眠薬」
……………………………
…………………………
………………………
……………………
「かいじゅーたいじはアイスのついで、もえるまーちでアームロック、どーのつらさげて、のーこのこと、かえーってきたぞ、かえーってきたぞー♪」
少し前に観た特撮の『帰ってきたリザアドマン』の主題歌を小声で歌いながら大通りを練り歩く。目的がない訳ではないのだけれど、ついさっき目的地がなくなってしまった。
簡単に言うとお腹が空いた。
ペコペコのペコちゃんです。
目的地はあった。今日はカレー……それもカレーラーメンな気分だったからお気に入りのラーメン屋に向かってみたら、店の前に嘘みたいな長蛇の列が出来ていて閉口した。行列の出来るような人気店じゃなかったはずなのに。並んでいたお兄さんに話を聞いてみると、オチッター(魔界版のツイッター)で有名人がここが美味しいと言ったものだからみんな並んでいるのだとか。
誰よ、私のオアシス荒らしたのは。
うぃるまりな@刀剣イベで宗近コスしますww
メビウス堂のカレーラーメン最高ぅ〜(>ω<)
原稿中の気合い入れにはヤッパリこれだね!
オチッターの呟きを並んでいたお兄さんに見せてもらった時、私の心の中に言い知れぬ黒い感情が芽生えた。怒りとも悲しみとも言えない、それでいて純粋で静かで豊かな破壊衝動。そう、これを闇堕ちと言うのかしらね。
そして追い討ちのように響き渡る『スープ終了のため本日の営業を終了します。ありがとうございました』という表に出てきた店長の声。ありがとうございました、じゃないわ。散っていく行列の人々の中で私も呆然としたままその場を後にした。
本当に残酷だ。残酷です。
お腹は空いたまま。
この黒い感情をそのままに暴れてやろうかと思ったけど、そんな気力すら空腹というヤツは奪っていく。焦るんじゃない。私は腹が空いているだけなんだ、と自分に言い聞かすのだが、そうなると今度はどこで食べようかという悩みが付いて回る。身も心もカレーラーメンになっていた程の一番食べたかったものが駄目だったのだから心が宙ぶらりんだ。
そんな訳で私は空腹を抱えたまま大通りをぶらぶらしている。
たが何も決まらない内に時間だけが過ぎていき、空腹も限界に来て、もう適当にその辺の飯屋にでも入っちまえ、と半ばやけっぱちになっていたその時、小汚い居酒屋が私の目の前に現れた。現れた、というのは適切ではないかもしれない。最初からそこにあるものを『現れた』と表現するのはどうかと思ったけど、その居酒屋は私の意識の中に急に現れた。
大衆酒場 馬豊庵
なかなか年期の入った縄暖簾。今日オススメの魚などを書いた手書きのお品書きの看板が非常にわかりやすい。へぇ、今日のオススメは今朝釣れたばかりの関アジと関サバのお造り……ってこれジパング、日本の食材よね。
………どうやって取り寄せてるのかしら。
まあ、そんなことよりも……
ランチあります
とても魅力的な呪文じゃない。この先はもう食事出来そうなところはないし、私の権力も及ばないレスカティエ2丁目もあるし、引き返すのも馬鹿らしいし、ここで良いような気がしてきた。
決めた。
ここにしよう。
「すみません、まだランチやってます?」
カラリと小気味の良い音を立てて磨り硝子の引き戸を開ける。このカラリという音。クセになりそう。店の中身は至ってシンプル。6人ほど座れるL字型のカウンター、四人掛けのテーブルが2つ、椅子はすべて酒樽の上に座布団置いただけという味のあるものだった。客の姿はない。カウンターの中で店の大将らしきバフォメットが皿洗いをしているだけだった。
どうやらうまいこと昼時を外せたらしい。
「らっしぇーい。うちのランチは2時までやっとるき大丈夫……………ん?………ゲッ、デル公!なしこんな場末に!?」
……入る店を間違えたかしら。
いきなり正体バレるし、デル公扱いだし。初対面のバフォメットにいきなりデル公よわばりされる謂われはないはずなんだけど………んん?……こいつ、初対面じゃないわ。そう、半世紀ぐらい前に顔を合わせ……あっ!
「セラエノのバフォメット!」
「チッ」
「本気の舌打ちやめて」
確か、イチゴって名前だったはず。
「あなたこんなとこで何してんのよ。ルオゥム帝国の外務大臣やってたんじゃないの?」
「あれからいろいろあって責任問われてのう。ちょうど潮時ってもん感じちょったけえ、娘に跡目譲って30年ほど前からここで道楽商売をしておったところじゃ」
イチゴ促されてカウンター席に腰を下ろす。
「責任問われて、って何やったのよ」
「汚職」
正真正銘のクズでした。
「それはそれとして世界大戦の時ゃ本当に世話になったのう。お主らレスカティエが介入してくれなんだらルオゥム帝国も危なかったのじゃ」
「別にお礼言われるようなことはしていわ。あなたたちの頼みの綱のセラエノが四方を敵に囲まれて動けなきゃね。人間寄りとは言っても同じ魔物国家。そう簡単に見捨てられる訳がないじゃないの」
第二次世界大戦中、あちら方面の足場作りの一環で彼女たちを助けたことがある。そのままレスカティエに取り込もうかと思ったこともあったが、同じ魔物同士で敵対しても利益はないというウィルマリナらの意見を採用し、その懐柔策として私の妹たちを何人かセラエノとルオゥム帝国の有力者や皇族と結婚させている。その時のルオゥム帝国側の外交相手が目の前のバフォメット、イチゴだった。
ちなみに妹たちの夫婦仲は非常に良好らしい。
…………私は、まだ独身なのに。
「せっかくじゃ。ろくに礼も出来んまま失脚しちまったし、あの時の礼も兼ねて今日はお姉さんが奢っちゃろう。2万円まで」
「気前良いのね。それに気にしなくても良いのよ。こちらにもこちらなりの思惑あった訳だし。それにしてもあなたがお姉さん?可愛らしい冗談ね」
「……一応言うておくがの。ぶっちゃけるとワシ、お前んとこの第三王女と同い年じゃけんね?」
「嘘っ!?ちい姉様と!?」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『猪狩、仲間の灰を集めてバットを創れ。俺たちはそれを抱いて戦場(スタジアム)に行く』
『死してなお、戦い続ける。仲間(チームメイト)の下で』
『俺たちは野球選手(ダイヤモンド・ドッグス)だ』
平日の昼間から居酒屋でお酒(清酒 女装少年)を飲みながらのんびりとテレビを観るって、考えてみたら最高の贅沢よね、と私は一人コップを傾ける。イチゴにはオバサン通り越してオッサンくさいと言われてしまったが、お酒のアテはご飯と漬け物(出汁醤油の掛かった白菜漬け)。
これがなかなかイケる。
白菜漬けは少し酸味が出るほど漬け込まれたまさに家庭の味。それに掛けられたら出汁醤油の破壊力。これが漬け物とご飯を一緒に食べなければという使命感を私に掻き立てるのだ。この私、魔王の娘たるデルエラをしてでも抗えない魅力。やはりご飯は生命の源、原始の魔法なのだと、私は口の中でご飯と漬け物をモグモグさせながら幸せに浸っている。
………それにしてもこのドラマ、面白いわね。
確か『実写版パワフルプロ野球The Phantom Pain』。今時スポーツ根性物なんて流行らないと華麗にスルーして第一話から見てなかったけど、それは間違いだったと認識する。これは、最初からチェックするべきだったわ。なかなか面白いしBOX出たら買おうかしら。
『オイラと矢部田さんをトレードするなんてどうかしているでヤンス!同じメガネだからって、矢部田さんがオイラより能力が高いとかパワプロくんたちは幻を見ているんでヤンスよ!まともなのはオイラだけでヤンスか!?』
チャンス2の貴様に慈悲はない。
さて、そろそろ何か別のを頼もうかしらね。まだランチメニューやってるみたいだし、単品ばかり頼むよりはこういうランチメニューの方がどこかお得感があって良い。さてさて…………唐揚げ定食も捨て難いわね。生姜焼き定食も食欲をそそられる。少しお高いけど刺身定食なんてのも良いわね。
…………むむむ?
「何がむむむじゃ?」
「心の声に割り込まないでよ。この炭火焼き肉定食って……」
「ああ、それな。テーブルに金網乗っけた小さい七輪を持ってくるから自分で肉を適当に焼いて食えっちゅうワシが楽したいだけのヤツじゃよ」
「身も蓋もないわね」
確かに身も蓋もない。だが、イチゴの説明を聞いて私は俄然それに興味を惹かれた。自分で焼いて食べられる。しかも小さな七輪で、肉の焼ける匂いと煙を感じながら。これは堪らない。
「じゃあ、炭火焼き肉定食を」
「肉は適当に選ぶが良いか?」
「構わないわ」
「あいよー、じゃあ、しばし待つのじゃ」
そう言ってイチゴはカウンターから店の奥へと姿を消した。奥に冷蔵庫でもあるのかしら。……いや、そんなことよりも、さっきからどうも同じ目線で違和感を感じていたら、あいつ踏み台に乗っていたのね。
さて、あいつが来るまでテレビの続きでも……
ジョインジョインワシィ
デデデデザタイムオブレトビューション バトーワンデッサイダデステニー
ナギッペシペシナギッペシペシハァーンナギッハァーンテンショーヒャクレツナギッカクゴォ ゲキリュウデハカテヌナギッナギッゲキリュウニゲキリュウニミヲマカセドウカナギッカクゴーハァーンテンショウヒャクレツケンナギッハアアアアキィーンホクトウジョウダンジンケン K.O. イノチハナゲステルモノ
…………………………見れない!
気になって見れる訳がない!!何!?何なの!?
店の奥から圧倒的な絶望が聞こえてくるんだけど!?
「いやー、待たせたのう♪」
そして店の奥から炭火の入った七輪とお肉の盛られた皿を持って現れたイチゴ。ものすごい笑顔。スッキリしたって感じの笑顔。純然たる高位の魔物娘は例え普段がぐーたらのろくでなしであっても牛ぐらいなら素手で苦もなく倒せるようだ。後、返り血がヤバい。待たせたと言う割に私はたいして待ってもいなかった。何故ならイチゴが店の奥に消えてからここまで一分足らず。
ここがゲーセンならリアルな血の雨が降っているだろう。
「ちょうど新鮮なヤツが残ってて良かったわい♪……が、すまんのう。ホルモンとかは下処理にちょっと手間取っちまってて、とりあえずこれだけでも食いながら待っててほしいのじゃ」
私の目の前にゴトンと置かれた七輪とお肉の盛り皿。新鮮、というかこれさっきまで生きていたのよね?こういうのを目の当たりにすると、まさに生きるとは他者の命を糧にするものであることを思い知らされる。
もっとも、それで食欲失せるようなやわな神経してないけど。
見たところ皿に乗っているのはカルビ、ロース、タン塩と言ったところね。しかも加工どころか血抜きからその他諸々の処理まで完璧にキレイに出来てる。あのジョインジョインから始まる超短時間で。
「何あなたどこの錬金術師?」
「今のワシ、料理人よ?これぐらい出来て当たり前じゃ」
料理人ってすごい。
本当にそう思った。
「ところで」
「え?」
「タレは何にするのじゃ?」
「何があるの?」
「えーっとのう、エバラ」
いきなり商品名。
「後は絞ったレモンに塩胡椒混ぜただけのレモンだれ」
シンプルね。だがそれが良い。特にここにあるタン塩なんかレモンだれで食べたいところだし、他のお肉もかなりサッパリ食べられる よし、レモンだれにしよう。
「じゃあ、レモン」
「ああ後のう、大根おろし」
なん………だと……!?
こいつ、アレか!?私はまだ後一回変身を残している、とかいうジャンプ黄金期か!?い、いや、落ち着け。落ち着くのよ、デルエラ。たかだか焼き肉のタレ如きで動揺しているなどと悟られてはいけないわ。ダメージを平然と受け流すのよ。呼吸を整えて、そう、素数を、素数をゆっくり数えるの。素数は1と自分でしか割ることの出来ない孤独な数字。私に勇気を与えてくれる。1、3、5、7、9、11、13、15……。
「それ全部奇数じゃな」
「だから心の声を聞くのはやめなさいってば。……で、でも大根おろしよね?よくあるあらかじめすり下ろしたヤツが入った真空パックか何かでしょ?アレって便利だけど香りも味も辛味もあんまりなくて私好きじゃないのよね」
「いつからワシが真空パックを使うだのと勘違いしてた?」(ニタリ)
スッとイチゴの上げた手に握られていたもの。
意外!
それは卸し金と一本まんまの大根!
「なにぃーーー!?」
「クケケケ、おろすぞ。こいつをザリザリおろすぞ。しかもこいつは大根特有の爽やかな香りと強烈な辛味のあるワシ好みの大根じゃ」
「ワンダホーーッ!!」
「さらに」
「ま、まだ上が……ある……ッ!?」
「ただの市販のポン酢を掛けたのでは面白うない。そのへん、お主もわかっとろう。そこでじゃ。ワシ好みの配合ではあるがの、この、特製カボス醤油を掛ける!ほれ、この味と香りを貴様も確かみてみろ」
一升瓶からほんの少しだけ黒い液体が小皿に盛られる。
私はそれをイチゴから受け取ると人差し指の先にちょこんと付けて口の中で舐めとった。
「こ、これはッ!」
一口舐めてみてすぐにわかった。これはカボス醤油だ。紛うことなきカボス醤油なのだ。ただ『醤油』を『カボス』で割っただけのシンプルなもの。そこに出汁などが割り込むことがない純粋なカボス醤油だ。ただ、この柑橘系の爽やかな香りと酸味は只事ではない。
「醤油はそこのスーパーで買うた徳用旨口醤油じゃが、カボスそのものはわざわざセラエノから取り寄せたものじゃ。いやあ、これ作るんに苦労したぞ。丸のまんまのやつを大量に切って握り潰し……もとい絞って、絞ったヤツを布でこしてカボスと醤油を酸味強めな6:4で割って(云々)」
「イチゴ、レモンはやめにするわ。大根おろし。スチュワーデスがファーストクラスの乗客をもてなすように出来る限り素早く、そしてスマートに」
堪らん。
この説明を舌で楽しみたくなった。
「まいどー。さて、茶碗よこせ」
「え?」
「焼き肉には、白い飯、じゃろ。炊き立て盛っちゃる」
「パーフェクトよ、イチゴ」
……………………………
…………………………
………………………
……………………
肉を焼け。
網の上でひたすら無心に肉を焼く。
焼けたら大根おろしのタレをたっぷり付けてご飯に乗せる。そして乗せた肉ごとご飯を口に放り込むのだ。噛み締めると肉の旨み、脂の旨み、大根おろしの辛み、カボスの爽やかな酸味と香り、それらが染み込んだご飯が何と幸せなことだろうか。しかもこのご飯は麦ご飯。ただ美味しいだけじゃなく食物繊維も豊富。肉ばかり食べても明日のお通じが怖くない。
「はふはふ♪」
「落ち着いて食え。誰も盗りゃせんわい」
「いやね、美味しいのよ」
「シンプルなんが一番美味いきね。ご飯のお代わりは?」
「麦ご飯大盛りで」
ついでに白菜漬けも注文する。
客がいないからなのか待ち時間などほとんどなく麦ご飯のお代わりと白菜漬けが目の前に出された。白菜漬けはさっきより僅かながら量が多く、そしてさっき掛けられていた出汁醤油が掛かっていない。
「イチゴ、出汁醤油が掛かってないわ」
「おや、そのつもりじゃったろ?」
ニヤニヤとイチゴがカウンターの向こうで笑っている。
私の意図を完全に理解しているようだ。
「ええ、パーフェクトよ」
おもむろに箸で白菜漬けを掴むと、そのまま大根おろしのタレの中に放り込み、満遍なく白菜漬けと大根おろしを混ぜ込んだ。イチゴは黙ってそれを見ている。私とてこれが決して行儀の良い食べ方ではないのは理解している。しかしこれが正解なのだ。
「……はむっ」
その時私に電流走る。
大根おろしの辛味、漬け物の酸味、麦ご飯の甘味の絶妙なるハーモニーって言うんですか?それに漬け物のシャリシャリという小気味の良い食感が素敵なアクセントになって食べることを飽きさせない。いかん、これではいつまでも肉を焼いて、食べてを繰り返すだけの永久機関になってしまう。
うおぉぉーん、まるで私は
「人間火力発電所け?」
「台詞取るのやめて」
「おんし、人より考えとうことが顔に出やすいみたいじゃき気ぃ付けえよ。まあ、ほんなこつより大根おろしはまだあるきね、替えが欲しゅうなったらいつでん言ってん良かばい。麦飯んもまだまだようけあるき」
大根を擦りながら喋るイチゴは気が抜けているのか、それとも擦るのに集中しているからなのか、いつも以上にひどく訛った口調だった。つーかどこの言葉だそれは。発音もひどすぎてテレパシーで聞かなきゃ半分近く何言ってるのかわからなかったわ。
「むっ、デルエラ!貴様、見ておるな!」
「見てないわ。聞いただけよ。その台詞吐きたきゃ、せめて時間止めるか、真実を書き換えることが出来るようになってから使いなさいな」
「見た目だけの時間は止めておるがそれじゃいかんのか?」
「ええんやで。……っと、そうじゃないわ。さっきから大根をおろしてるけど、それ明らかに多すぎじゃないの?いくら何でも焼き肉のタレに使うには多いわ」
さっきからカウンターの向こうではザリザリと大根をおろす音が鳴り止まない。確実にこれは二本目に突入している。コナン君が推理を披露する前に犯人もトリックも読み取ってしまう私の勘がそう告げているのだ。
間違いない。
「あ、これ?いやね、おぬしの食べっぷりを見てたらワシも腹が減っちゃって。昼飯もそこそこにしか食うてなかったきワシも一緒に食おうと思うて」
「あら、そうなの?じゃあ、一緒に焼き肉しちゃう?」
「それはやめとく。あんまり腰を落ち着けて食えんしのう。じゃけんね、これを食うつもりじゃよ」
そう言ってイチゴが取り出したもの。
それは『うどん』。
どこのコンビニ、スーパーマーケットでも売っているごく普通の乾麺、棒うどんとも呼ばれている代物である。使い勝手が良く、しかも価格が安くて、腰があって美味しいのが特徴。どこかの誰かのお気に入り食材である。
「こいつをササッと湯がいて冷水で締めたら、この大根おろしと大きめに切った大ネギをどんっと乗っけて、カボス醤油ぶっかけて食っちまおうとか思っておったところじゃ。これがのう、客にゃ出せんがなかなかにうまくて……」
「イチゴ、私もそれ食べたい」
「○月某日、食欲旺盛じゃのう。ええけど、味は期待するなよ?これ賞味期限直前のヤツをまとめ買いで安く買うてきたやつじゃからな」
私は一向に構わん。
死亡フラグっぽいけど私は一向に構わん!
こうして私の幸せなご飯タイムはもうしばらく続くのであった。
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「…………………ほぅ」
感動的満腹。
時計はすっかり三時を回った頃、出された口直しの冷たい黒豆茶を飲みながら私は食後の余韻を楽しんでいた。あれから何だかんだと追加で頼んでしまった。ホルモンにもずく酢に冷や奴。それにまかない飯の大ネギの辛みが利いた大根おろしの冷たいうどん。麦ご飯は結局何杯食べたのか覚えていない。満腹にもなるわ。いくら何でも食べ過ぎね。
「よく食ったのう」
「ええ、満足」
イチゴは私の食べた後の食器を片付けている。
店内には食器を洗うカチャカチャという心地良い音だけが響いている。お腹は満足。店内は涼しくて程々に暗い。それに適度にアルコールも入っていて良い按配に夢見心地。これでタバコでも吸えたらちょっとはイケてるお姉さんに見えるのかもしれないけど、残念ながらここ六世紀ほど禁煙を続けている。姪っ子がね、嫌いなのよ。タバコの臭いが。まだまだ可愛い盛りの姪っ子に嫌われたくない。だから、禁煙の真っ只中。
……………さて。
「ねえ、イチゴ」
「あいよ」
「食後のデザートはあるのかしら?」
「おぬしも好きじゃのう。クケケ♪」
「あら、私だってまだまだ女の子だもの。好きに決まってるじゃない」
「お互い女の子って歳かよ(笑)。直接扱っておるっちゅう訳じゃないがの。いろんなとことデリバリー契約結んでおるから、このメニューから好きなもん頼めや。ショタ、ホスト系、好青年、ナイスミドル、あらゆるジャンルの男を用意出来っぞなもし!」
「あなた有能!」
イチゴに手渡されたデザート(意味深)のメニューをマジマジと見る。ほうほう、あの店この店、結構レスカティエでも大手の魔物娘向けの出張型風俗店とも契約している訳ね。お腹を満たすメニューにも驚いたけど、下半身を満たす方も油断ならない品揃え。恐れ入ったわ。
…………え?
デルエラともあろう者がわざわざ男娼漁りするなんて如何なもの、ですって?………良いのよ。そりゃあ私だって結婚とかにも憧れていた時期が確かにあったわ。でもね、王族出身の悲しい性。付き合う男の底という底まで見えちゃったりして長く続かないのよ。付き合った男は数知れずだけど、体も心も許せる関係になったのは一人もいないの。
あー……、結婚したい…。
とりあえず対等にお付き合い出来る異性が欲しい。
「どうした、死にかけのフルフルみたいに遠くを見詰めて」
「ちょっと宇宙と一つになっていたわ」(´;ω;`)ブワッ
「おい、泣いとるぞ!?」
「あら、目にゴミが入ったのかしらね」
歳を取ると涙もろくなるしのう、とか無礼なことを言っているイチゴは無視して再びメニューと向き合う。忘れよう。今は遠き理想郷ではなく、目の前にある刹那的な享楽に身を委ねて忘れてしまおう。うん、そうしよう。
………………ほう?
「ねえ、イチゴ」
「何じゃ?」
「この『密着!満員痴漢電車(清純男子高校生編)』とかいうイメージプレイなんだけど……」
「お、それ気になるんけ?」
「これ、半ズボンの似合うウブな小学校中学年男子をあの手この手で身動き取れない状況でデュフフフしちゃうコースってのはないのかしら?」
「あー………その店、小学生使用許可取っておらんのよ」
「……あ、そうなの」
今日のカレーラーメンからずっとツキがない。
どうも空回りばかりだ。
「高校生じゃいかんのか?」
「うーん、ちょっとね。私のストライクゾーンからは上過ぎるかなぁ」
「おいおい、その理屈で行くとストライクゾーン低過ぎてもうワンバンじゃそれ。野茂か佐々木のフォークボールじゃねーんじゃぞ」
「でも私にはホームランボールよ」
「岩鬼か!」
何と言われようともこればかりは譲れない。
「しかし残念よのう。痴漢電車の男子高校生編はうちの常連のおっさんたちに人気のプレイなんじゃがな。まあ、時間もあるようじゃから納得するまで選ぶとええよ」
………常連の……おっさん…?
…………………………………私は何も聞かなかった。他人の冷蔵庫の中身と性癖に深く立ち入ってはいけない。魔王たる私の母の教えだし、何より古事記にも書いている。深入りしてもろくなことはない。それにしても、おっさんどもにあんなことこんなことされちゃう清純男子高校生か。………………嫌いじゃないわ、かなり。
さて、そうなるとどれを食べよう(意味深)かしら。
第一候補はたった今夢破れたところだし………んむ。この『女装少年トンネル開通式』なんてどうだろう。うん、これこれ。これにしよう。ちゃんと横に『当店の女装少年はすべて小学生の男の娘です』と書いている注意書きも心憎い。私のストライクゾーンど真ん中。可愛い男の娘、それに初アナルだなんて気が利いているじゃないの。運が良かったらうちの人手(アルプ)も増えちゃうし。うん、これにしよう。
「イチゴ、この女装少年トンネル開通式ってのを…」
「あ、すまん。それ先月で終わったんじゃよ」
「じゃあ、『女教師・深夜のいけない筆おろし課外授業』は…」
「それもすまんのう。その店の系列、先月経営陣が丸ごとおぬしんとこの治安警備隊に人身売買でパクられてそっくりそのまま潰れちまったんじゃわ」
「うっそ、あいつらの店だったの!?」
ガーン、だわ。
いろんな意味で出鼻を挫かれた。
しかしここまで今日はツキがないとなると、物珍しい奇をてらったデザート(意味深)は避けた方が良いような気がしてきた。そんな中で私好み且つ奇をてらってなくてハズレのない美味しいデザート(意味深)となると……むぅ。
「まめかん、お願い」
「まいどー♪」
※豆姦(まめかん)
魔界における典型的な定番おやつ(意味深)。
少年サイズのインキュバスが誠心誠意お相手する。見た目こそ少年だがかなりの年数を生きており、さらに経験人数もかなりのもの。若い少年の肌と元気さ(意味深)に加え、中年男性並みのねちっこい老獪さ(意味深)を併せ持つために昔から人気のおやつ(意味深)である。しかも後腐れない。そのため魔界では庶民から王族、老いも若きも、男も女もみんな下半身がお世話になっている。
ふぅ、注文したら少し余裕が出てきた。
それにしても私ともあろう者がたかがデザート(意味深)を選ぶだけでこんなにも時間が掛かろうとは思いもしなかった。こんな情けない姿、ウィルマリナたちにも、母にも姉妹たちにも見せられないわね。絶対『プギャー』って顔して指差して笑うに決まっているんだから。
さあ、豆姦の準備が出来るまで時間掛かるだろうしテレビの続きでも見ながらのんびり待つと…
「あいよ、まめかんお待ち!」
……しましょう、と思ったんだけど早かったわね。もしかしてお店って近くだったのかしら…………って、おい。
「………イチゴ、何これ?」
「何って、豆かん」
※豆かん(まめかん)
豆と寒天の甘味。
控えめな甘さで美味しい。
どこまで食べても飽きの来ない昔ながらの味。
「豆かん。大事なことなので二回言いました」
「……………………………………」(・ω・)
………………………………………………………………………ブチッ(º∀º#)アッハー
それはある晴れた日のこと
いつもと変わらない日常
どこにでも転がっている穏やかな日々
そんなありふれた幸せの中を僕らは生きている
「ダンソン!フィーザキー!」
「ワ、ワシが悪かった!すぐに豆姦の方は用意する!だから、歌うな!踊るな!円を描きながらワシに近寄るなぁぁぁーー!!」
「ニーブラ!!」
「アバァァァーーーーッッッッッ!!!」
デルエラの豪腕が当たり前のように
イチゴの首をニーブラ(チョークスリーパー)したその頃
ベンチで冷たくなっているUCHI川が発見され
村TAとYOSHI村が病院内で静かに息を引き取り
蒲田のあいつがレスカティエにどこからか上陸した
今日もレスカティエは平和です(白目)
16/08/17 09:18更新 / 宿利京祐