ゴザルッ！
俺の名前は『諏訪 四郎』。
一応長男で一人っ子なのだが『四郎』とは是如何に？
ごく普通の家庭に生まれて、ごく普通の人生を送って、精々髪の毛が金髪という以外に何の特徴もないごく普通の容姿を持つ、元気だけが取り得の彼女いない歴＝年齢という、大学入学を機に“一人暮らし”という名の自由を手に入れたばかりの１９歳の男だ。ちなみに例に漏れず童貞で、性欲は愛用のエロ本でチャチャッと手早く処理してしまっているというところまで何ら特徴はない。
まあ、ラノベとかアニメだとよくあるだろ？
実は特殊能力を持っているだの、特殊な武術を身に付けているだの、果てはどこかの英雄の生まれ変わりで世界の運命を握った存在だの、ちょっと想像するだけで頭が痛くなりそうな裏設定。そんなもの、俺にはないよ。
髪だって金髪だけど、これは好きなロックバンドのメンバーの髪型を真似たくて小まめに美容院で染めているだけで、どこをどう探しても俺自身の設定に普通以上のものは見当たらない。
見当たらないんだけどなぁ…。
「若君、如何致した」
爽やかな朝を迎えて、いつもの朝勃ちをトイレで素早く処理して、一人暮らしだからフルチンのままでも良いや♪ってトイレのドアを開けたら、俺の目の前ですごくセクシーな格好をした忍者が、何故か俺に傅いているんだよ。
しかも俺のことを若君とか呼んでさ。
「………えっと、俺のこと？」
「左様でゴザル」
「何で、俺が若君？」
「若君は若君でゴザル。某（それがし）は命を賭けて若君に御仕えする使命を受けて、不躾でゴザったがこうして押し掛けた次第。某がお側に御仕えする以上、あらゆる危険や困難から若君を御守りする所存にゴザル」
……………さっぱり、わからない。
俺、“落第忍者乱太郎”の愛読者だから言えるんだけどさ……忍者、いやこの場合は“くのいち”だよね。そもそも忍者がこんな肌色一杯の目立つ格好で良い訳なのか？こんなの敵、がいればという仮定だけど、敵に見付かったら即捕まって、エロゲーとかアダルトビデオとかにありがちな拷問とか尋問と証した安っぽいシチュエーションプレイが絶対待っているよね？
まさかコスプレ趣味のちょっとアレな人？
「若君、それは誤解でゴザル。某は“くのいち”ではゴザらん。某は魔界忍者“クノイチ”でゴザル故、闇に生き闇に死する人外の者でゴザル。この装束も我ら淫香流忍術の正装でゴザれば、このように肌の露出の多きデザインになるのも仕方なきこと」
「さりげなく俺の心を読まないで欲しいな。むしろ俺が聞きたいのはそういうことじゃなくっていうか不法侵入だろいやいやそれよりも、ちょっとドア閉めさせてくれ！！いい加減手で隠し続けるのはそろそろ限界なんだ！！！」
片手で股間を隠しつつ、俺はトイレのドアを再び閉じようとした。
だって傅いている彼女の凶悪な谷間が否応なしに目に入って、スッキリ処理したはずのチンコがウズウズと疼き出して、もう一度隆々と超元気にバキバキにそびえ立ちたいと欲望が叫び続けている。
まったく、こんな狂暴なオッパイは童貞には目の毒だ。
早くドアを閉めて、もう一度スッキリしておかないと正直ヤバい。
ガシッ
「そんな勿体無きお言葉。若君の御宝刀を拝見出来て、某は至極幸福の極みでゴザル。ささ、どうぞ遠慮なさらず、若君の逞しい御宝刀を今一度某の前に突き出し、某の不法侵入に対する御仕置きを是非ッ！」（ハァーッ、ハァーッ、ハーッ）
「く、来るな、や、やめろぉぉぉぉぉぉーーーーッ！！！」
物凄い力でトイレのドアを掴んで閉めさせまいとする自称クノイチ。
目は俺の隠された股間を凝視し、一体どんな鍛え方をすればそうなるのかわからないが、俺がいくら引っ張っても彼女が掴んでいるドアはピクリとも動かない。ちょっと前までやってた引越し屋のバイトでそこそこ筋力は付いたと思っていたのに、俺の自信をあっさりと打ち砕く不法侵入者の尋常じゃない腕力に俺は戦慄を覚えていた。
このままでは………奪われるッ…！
「まあまあ若君、まずは御近付きの印に若君厳選のエッチな本を某が耳元でウェイスパー気味に朗読しながら、淫香流忍術一門切っての腕前と言われている手コキにて骨抜きにして差し上げませう。御安心めされよ、文字通り某の手に掛かればもう他の女には見向きも出来なくなります故♪」（フヒーッ、フヒーッ）
「指をワキワキさせんな馬鹿ぁぁぁぁーッ！！！！」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………という出来事が起こったのが１週間前。
今はすっかり落ち着いたもので、あのクノイチ“焔”さんも最初の２日間以降はあまり俺にちょっかいを出すことはなく、あの性的な意味で獲物を狙う肉食獣のような執拗な挑発も今は鳴りを潜めている。
よくある話だけど、どうやら俺の一族っていうのは代々彼女たちクノイチから守ってもらっているらしく、それは俺の親父も知っていることらしい。まあ、焔さんほど過激（？）なクノイチというのは滅多にいないようで、基本的にそういう存在がいると言い伝えられるばかりで、焔さんのように主人（この場合は俺）の目の前に姿を現すということはほとんどないのだと彼女は言う。
らしい、らしい、と続くのはすべて焔さんの口から教えてもらったことばかりであって、俺より事情を知っている親父に小一時間くらい問い詰めたいと電話をしてみたのだが、何故か親父に繋がらないまま時が過ぎたので一応保留ということにしてある。
ちなみに焔、というのは偽名というかコードネームのようなものらしい。
そのことは彼女が俺の携帯ゲーム機で遊んでいた時点で何となく予想は付いたけど、例によって彼女の本名は教えてはくれなかった。いつか時期が来たら教えてくれるらしいのだが、その時期が来たらというのはいつなのだろうか。
年齢に関して言えば意外にすんなり答えてくれて、今は２６歳なのだという。
色々と問題が山積みであり、一つ間違えば落とされたり奪われてしまう危険を大いに孕んではいるものの、魔物とは言えこんな極上の年上のお姉さんとの同居。トイレという超個人空間さえ確保しておけば、いつでも好きな時に欲求不満を解消出来ることを考えれば、
心 躍 ら な い 方 が ど う か し て る ぜ ☆
「……して若君、本日の夕食は何を御所望でゴザル？」
「………肉、かな」
そして今日も焔さんは俺に代わって家事一切を引き受けてくれている。
特に食事の準備は彼女がしてくれることになり、毎日のように質素ながら絶品の料理を振舞ってくれる。さすが俺が５歳の時から俺のことをストーキングしているだけあって、俺の好みは完璧に把握済みだったりする。ちなみに隠していたはずの秘蔵のエロ本、アダルトＤＶＤはすでに発見済みで、俺の知らない内にいつの間にかショップに売り飛ばされて生活費の足ししてしまっているところも完璧であるチクショウ。
焔さんは忍び装束ではなく、リラックスしたいとのことで俺のＴシャツを着て、腰のラインがくっきり見えるピッタリとしたスパッツを穿いている。Ｔシャツは俺のだから焔さんには大きいらしくダボダボしているのだが、彼女曰く『余計な締め付けがなく最高でゴザル』とのこと。スパッツには彼女の尻尾用の穴を開けているのだが、これがまた形の良いお尻と相まって俺の欲求不満は高まっていく。
しかし………あのスパッツは近所のジ（わん♪）スコに彼女が一人で買いに行ったもので、あの破廉恥な忍び装束姿で買いに行ったことを考えると、もしかして焔さんって露出狂のケでもあるのだろうかと勘繰ってしまう。
「肉でゴザルか…」
ううん、と唸るように焔さんが悩み込む。
そういえばこの１週間、彼女が作ってくれたのは魚と野菜料理ばかり。後は食べると丸一日何も食べなくても良いぐらいお腹の膨れる妖しげな原材料不明のちょっと臭い丸薬だった。もしかして肉料理は苦手だったのだろうか。
「若君、このあたりにドラム缶はゴザらぬか？」
「何故ドラム缶なんだ」
「食材は新鮮さが命でゴザル。しかしこの都会、近隣に牛や豚、鶏などの獣を飼育している家は皆無。しかもスーパーマーケットで購入しようにも昨今産地偽装などの問題が浮上してゴザル。某、産地のハッキリしない安いお肉などアウトオブ眼中でゴザル！！」
いや、そんなところ力説されても困るんだけど…。
「そこでドラム缶の登場でゴザル」
「待って、話が繋がらない！」
「某たちの忍者界に今尚伝説として語り継がれている先輩がこう語っておりました。ドラム缶の中には夢と希望が詰まっているというのでゴザル。ドラム缶を一つ蹴り倒せば、中からナイフ。二つ蹴り倒せば鉄パイプ。三つ蹴り倒せば、美味しそうに調理された肉が現れるのだと！」
ファイナル・ファ（わん♪）トじゃねえか！！
「先輩、元気でゴザろうか」
何かを思い出すように遠い目をする焔さん。
何か、あったのだろうか。
「……先輩、腕試しに吸血鬼に闘いを挑んだら返り討ちに遭い、ミッドナイト……えーっと、ミッドナイトうんたらなる技を喰らってしまったために、堕落して女子になってしまったのでゴザル」
「とことんカプ（わん♪）ンネタかよ！！」
ほんっとうにここの作者は（わん♪）プコンが好きだな、オイ。
そういえばカプコ（わん♪）と言えば、そろそろアレの発売だよな。俺もアマゾネス・ドットコムの通販で予約したから、発売日に向けてクック先生の生態の予習復習でもしておこうかな。
「可哀想に……今も先輩は吸血鬼の魔力が抜けるまで地下の牢獄で…」
「それは……深刻そうだな…」
地下の牢獄で苦痛に耐えているのか。
確かにゲームの中だと一瞬だけど、現実はそうはいかない。オカルト関係に詳しい“初女野”という自称霊能力者の知り合いに聞いたことがあるのだが、魔物の魔力は例えド（わん♪）クエ最弱の名を欲しいままにしてきたスライムのものでさえ、一度身体を蝕めば実質逃げ出すことは不可能に近いのだという。
それを地下の牢獄で耐え続ける……忍者の世界とは、俺の思っていた以上に過酷で残酷で、それ以上に何と高潔なのだろうと実感せざるを得ない。俺に出来ることは、ただその男の無事を祈ることだけなのだ。
「……という建前で地下の牢獄を自室に改造して、夜な夜な後輩の男子を連れ込んで、すっかり魔物娘らしくなっちゃって…。だというのにウチの里にいる男共と来たら、モノは粗末だわ早いわ回数こなせないわで、先輩ってば欲求不満をツブヤイッターにぶつける毎日。同じ魔物娘として同情するばかりでゴザル」
「返せ、俺の感動を返せッッ！！！」
結局、魚料理にしてもらうことにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ご馳走様でした」
いつの間にか一日が終わっている。
おかしい……俺は設定上『大学生』という肩書きがある以上、青春色のキャンパス・ライフが待っていたり、アルバイトで社会勉強したりとスリリングなイベントが目白押しのはずなのに、気が付けばもう一日が終わっている。そういえばどういう理屈かわからないけど、１週間もあっという間に過ぎ去ったような気がする。
いくら読み切りだからって手抜きすぎじゃないか？
「若君、味の方は如何でゴザったか？」
「如何も何も美味かったよ」
それは良かった、と静かな声で言いながら、焔さんは食器の後片付けを始めた。手伝おうとしたのだが、これは従者の役目だから手出し無用と断られる。今夜の献立は“ブリの塩焼き”をメインディッシュに焔さんお手製の“白菜の漬物”、それに焔さんの里から送られてきた里芋の“煮っ転がし”と白味噌の味噌汁。見事なまでに和食だった。
「若君はジャンクフードの食べすぎでゴザル。某も高校時代には“ドスバアガー”のチーズバーガーが実は好きでゴザルが、お手軽だからとて何でも食べすぎは身体に毒でゴザルよ」
「焔さん、高校行ってたんだ」
「クックック、これでも女子高の生徒会長でゴザったのさ。だから友人たちとも帰宅中の買い食いやプリクラといった、ごくごく一般的な放課後ライフをエンジョイしており申した。まあ、現在は若君のお世話で精一杯でゴザルよ」
ニヤリと笑って、台所で洗い物を始める焔さん。
これって、もしかしてかなり幸せな光景なんじゃないだろうか？
いや絶対そうだよな？
今の俺ってリア充モゲロって言われる立場にいるのか？
「リア充モゲロ」
「焔さんッッッ！？」
「何やらそう罵って欲しそうな顔をしており申した故」
「マジっすか！！！」
「ハッハッハ、若君ってば♪……………冗談に決まっているでゴザル」
「ＨＯＭＵＲＡＳＡＮＧッッッ！？」
真顔で冗談を言われると何だか傷付くことを発見した俺。
「大丈夫、某理解はある方でゴザル。若君が無自覚なＭであることなど、若君が５歳の時からストーキングしていたおかげで把握済みでゴザルよ。ああ、御安心召されよ。若君のために先日、里に連絡を入れて女王様変身セットを送ってもらう手筈を、すでに準備万端整えてゴザル」
「誤解だッ！！俺はそんな趣味はねえ！！！」
「……し、しまった…。某としたことが何たる迂闊ッ」
どうやら俺にＭっ気がないことを理解してくれたらしい。
良かった……これで俺の社会的地位は守られる。
「先日売り飛ばした若君のエロ漫画……内容のほとんどがドＳメイドさん本でゴザったのを失念しておりました。若君はメイドさんに苛められることに性的な興奮を催す変態でゴザった。これはとんだ失礼を…、某今すぐにそこの“ドンキ暴帝”にてメイド服を買い求めて参りますッ！」
ぜんっぜん、わかってくれていなかった！
しかもよりによって深夜まで営業しているディスカウント・ショップ“ドンキ暴帝”のエロコーナーに置いているメイド服を買いに行こうと、焔さんの神速の運動神経を駆使して財布を手にしていやがる。確かにドＳメイドさん本が多かったのは認めよう。だがそれはその作者の作画が好みだったからだ。
それ以上でもそれ以下でもないッッ！
まあ何度もお世話になって、ゴミ箱を妊娠させかけたけど。
「待ってくれ、焔さん！！俺は………ッ！！！」
俺はディスカウント・ショップのメイド服に興味はないんだ。
俺が好きなのは安易な萌えに走ったミニスカ萌え系メイド服じゃなくて、安心の実績と実用性の中に芽生えた至高の芸術・俗に天神スタイルと呼ばれる正統派メイド様にしか興味がないんだッ！！……と叫びたかったのだが、俺の燃え盛る意思とは裏腹に急に舌が痺れ、焔さんを呼び止めようとした足はもつれて、俺は受身も取れないままフローリングの床に叩き付けられた。
何が……何が一体…ッ！？
「………ようやく薬が効いてきたようでゴザルな」
く、薬ッ！？
「いやあ、若君ってば意外に薬の耐性が強うゴザった故、毎日毎日食事にほんの少しずつ混ぜて蓄積させていく方法を取らせてもらったでゴザルよ。大丈夫、媚薬の類ではなく純粋に痺れ薬でゴザル」
何してくれてけつかんねん！と叫びたいけど舌が痺れて喋れない。
「動けないでゴザろう？動けないでゴザろうねぇ♪某、この１週間ずっと考えていたでゴザルよ。若君ってば童貞を拗らせすぎて、せっかく某が誘っているにも関わらず、欲求不満をトイレで解消するほど身持ちが固すぎでゴザル故ね、もう無理矢理犯っちゃうしかないかな〜という結論に達したでゴザル」
「ふ、ふざけんな！！！」
ようやく出た言葉も虚しく、焔さんはワキワキ指を動かしながら近付いてくる。
表情は満面の笑み。
荒々しい呼吸が俺の部屋に響く。
ハッキリ言って超怖い。
「足掻いても無駄でゴザル。某の一族が代々エロ漫画やアニメを参考に作り出した『射精しないと抜けない痺れ薬』の威力は絶大でゴザルよ。それにしても“抜かない”と“抜けない”というのはコレ如何にでゴザルな♪」
上機嫌で笑いながら、焔さんはＴシャツやスパッツを脱ぎ捨てると忍び装束になった。久し振りに見た忍び装束姿は何だか新鮮で、下から見上げる彼女の巨乳は思わず息を呑むほどシンプルな破壊力で俺の目に飛び込んでくる。見えそうで見えない深いスリットの前掛けの中身を見たくて、動けないのについ首を伸ばそうと努力してしまう。
「クックック、若君……童貞を拗らせてすっかりプロ・オナニストに進化してしまった故初めては怖いかもしれぬが、某が優しく優しく一生消えぬトラウマになるくらい犯して抜いてあげるでゴザルよ♪」
「お、俺はプロ・オナニストとして魔法使いになりたいんですけども…！？」
必死の抵抗を試みる。
苦しい言い訳をしてみるが、どうやっても回避出来そうにない。
「若君、正直こうして会話するのも面倒でゴザル。某、もう１週間も若君の雄の匂いを我慢し続けたおかげで我慢の限界でゴザルよ。しかし調度良うゴザった。今日の某は危険日中のド危険日。生で犯っちゃえば、若君のゴミ箱と違って妊娠は確実でゴザろうなあ」
「誰も俺に近寄るなぁぁぁぁーーーーーッッッ」
「オ（わん♪）ンコは友達、怖くないよ♪では若君にはたくさんの年上のお姉さんに犯される、屈辱的な集団逆レイプによる童貞喪失というトラウマ初体験をしていただくとしようかな。そおれ、忍法・影分身！」
「焔さんが一人二人三人……た、たくさん……！？」
諦めるな俺っ！
諦めなければ何か手があるはずなんだ俺っ！
最後まで……最後まで諦めなければ…ッ！！
……………………………。
…………………………。
………………………。
……………………。
「ふぅ…」
ベッドの上で気だるそうに彼女は煙草の煙を吐いていた。
「可愛かったでゴザルよ、若君」
「シクシクシクシクシクシクシクシク」
はい、抵抗は無意味でした。
痺れ薬で動けなかった俺は焔さん’ｓに何度も何度も代わる代わる犯されて、彼女の気が済むまで生中出しを強要された挙句、すべてを自分好みに調教すると言って俺のアナル開発、尿道責めなどなど心も身体も犯され尽くされた。しかも最悪なことに、気が付けばそれを悦んでいる自分に気が付き、焔さんのことを“お姉様”と口走って自分からおねだりしていた始末。
冷静になると恥ずかしくて情けなくて、俺はこうして泣いている。
「それにしても某の魔力の影響とはいえ、若君もなかなかの絶倫でゴザルな。伊達に１日１０回というハード・オナニー・ライフを１１歳の頃からやっていた訳ではゴザらんね。まさか最後の方は某が童貞相手に気をやってしまうとは夢にも思わなんだ」
「褒められたって嬉しくもないわい！！」
「魔物娘の主人たる者、それは誇っても良うゴザルよ。何にせよ、某への種付けは大成功でゴザル。この様子では例え危険日中のド危険日でなかったとしても、そう例え大丈夫な日だったとしても妊娠は確定でゴザっただろうな。もっとも、若君も覚えておくと良い。女の子の大丈夫な日というのは絶対大丈夫じゃないでゴザルから」
いらない余計なトリビアをありがとう。
でもこちとら本当に嬉しくないんだよ！
エッチってのはもっとこう夢があるものだと思っていたのに……まさかあんなアブノーマルな快感を身体に刻み付けられて、自分の身体が自分の所有物ではなく、まさしく焔さんの所有物だと思い知らされたようなエッチがまさか俺の初体験だったなんて…。俺、もう日溜まりの中には戻れないよ…。
じりりりりりりり〜ん…
じりりりりりりり〜ん…
「………おっと、若君。電話でゴザル」
「わかってるよ、これ俺の携帯の着信音だし……もしもしッ！」
ちょっとイライラしていたので、携帯電話のディスプレイを見ずに通話ボタンを押すと、電話の向こう側から聞こえてきたのは誰であろう俺の親父のビール樽のような体型をした奥さん、つまり俺の実のオカンだった。
「オカン！？どうしたんだよ急に…………そう、親父に電話してたんだけど出なくってさ…………はあ！？親父、入院してたの！？どうして…………オカンが窓から放り投げた！？」
何考えてるんだよ、オカン。
ウチの実家、マンションの５階だぜ？
「じゃあ俺も近い内に見舞いに………うっ！？」
電話をしていると、悪戯心に火が点いたのか焔さんが俺の乳首を舐めつつ、まだ逆レイプの余韻が残る半勃ちのチンコを手でしごき始めていた。突然の快感にうっかり声を挙げてしまった。
（ほ、焔さん、マジ勘弁してくださいってば！？）
（大丈夫、後戯みたいなものでゴザルよ♪）
声には出せないのでアイコンタクトで文句を言う。どうやらちゃんと伝わったらしいが、いやらしい彼女の舌と手は執拗に俺を責め続けるのでバレないように必死に声を抑え、平静を装わなければならない。
「ご、ごめん……こっちの話………で、親父は何でオカンに投げられたん？」
『お父ちゃんの浮気が発覚したんや』
あー………、そういえば親父って昔から綺麗な女の人には弱かったっけな。
俺はそういう親父を見て、反面教師からオナニストの道に踏み込んだようなもんだけど、窓から投げ捨てられるってことは普段の浮気よりも、もっと絶望的な浮気をやっちまったんだろうなあ。
そんなことを考えていると、オカンは何かを思い出したように一呼吸置いてこう言った。
『あんたんとこに何や忍者来とるやろ？その人、お父ちゃんの浮気相手との間に出来たあんたの姉ちゃんやさかい、絶対に手ぇ出したらアカンで』
「………………………は？」ﾉｳﾅｲ（・ω・）ﾌﾘｰｽﾞ
何を……何を言っているんだ、このオカンは。
落ち着け、落ち着いて物事を整理するんだ。
うちに来ている忍者は俺の姉ちゃん？
いやいやオカンの腹から生まれたのは俺だけであって、血の繋がりはまったくもって一切何もない……訳ないよなぁ。親父と浮気相手の子供が焔さん……ってことはウチの一族を守ってくれたクノイチという訳で、つまり俺が何を言いたいのかと言うと“焔さんは俺の姉”だということだ。何を言っているのかわからねえと思うが、俺にもわからねえので誰か教えてください安西先生。
そろそろ警察に行って事情聴取を受けてくる、とオカンが言ったので電話を切り、ギギギというほどぎこちない仕草で焔さんを見ると、最初から全部わかってました的な笑顔でテヘペロをしている。
どういうことなの？と恐る恐る聞いてみる。
すると焔さん……否、お姉ちゃんは俺を抱き締めてこう言うのであった。
「では改めて、某の名は“諏訪 焔”。お聞きの通り若君の姉であり、うっかり弟のことを本気で全力で愛してしまった変態気質のクノイチでゴザル。バレてしまった以上、最早手加減は致さぬ。ブラコンの某に釣り合うシスコンに若君を生まれ変わらせ、某たち姉弟で幸せな一族繁栄を目指しましょうぞ。今後はより一層昼も夜もお世話して差し上げる故、必ずや若君を骨抜きにしてみせるでゴザルッ！！」
こんなことを平然と言い放つ姉。
魔物娘だからかもしれないが、常識とかそんなものはもうないらしい。
たぶん、抜けられないんだろうなぁ……、なんてことを俺はぼんやり考えていた。何故なら俺自身、彼女が姉だと告げられた瞬間、心の中に湧き上がった劣情を瞬時に自覚してしまったのだから。
だけど、言わせてくださいこれだけは。
俺は、生き延びることが出来るのか！？
一応長男で一人っ子なのだが『四郎』とは是如何に？
ごく普通の家庭に生まれて、ごく普通の人生を送って、精々髪の毛が金髪という以外に何の特徴もないごく普通の容姿を持つ、元気だけが取り得の彼女いない歴＝年齢という、大学入学を機に“一人暮らし”という名の自由を手に入れたばかりの１９歳の男だ。ちなみに例に漏れず童貞で、性欲は愛用のエロ本でチャチャッと手早く処理してしまっているというところまで何ら特徴はない。
まあ、ラノベとかアニメだとよくあるだろ？
実は特殊能力を持っているだの、特殊な武術を身に付けているだの、果てはどこかの英雄の生まれ変わりで世界の運命を握った存在だの、ちょっと想像するだけで頭が痛くなりそうな裏設定。そんなもの、俺にはないよ。
髪だって金髪だけど、これは好きなロックバンドのメンバーの髪型を真似たくて小まめに美容院で染めているだけで、どこをどう探しても俺自身の設定に普通以上のものは見当たらない。
見当たらないんだけどなぁ…。
「若君、如何致した」
爽やかな朝を迎えて、いつもの朝勃ちをトイレで素早く処理して、一人暮らしだからフルチンのままでも良いや♪ってトイレのドアを開けたら、俺の目の前ですごくセクシーな格好をした忍者が、何故か俺に傅いているんだよ。
しかも俺のことを若君とか呼んでさ。
「………えっと、俺のこと？」
「左様でゴザル」
「何で、俺が若君？」
「若君は若君でゴザル。某（それがし）は命を賭けて若君に御仕えする使命を受けて、不躾でゴザったがこうして押し掛けた次第。某がお側に御仕えする以上、あらゆる危険や困難から若君を御守りする所存にゴザル」
……………さっぱり、わからない。
俺、“落第忍者乱太郎”の愛読者だから言えるんだけどさ……忍者、いやこの場合は“くのいち”だよね。そもそも忍者がこんな肌色一杯の目立つ格好で良い訳なのか？こんなの敵、がいればという仮定だけど、敵に見付かったら即捕まって、エロゲーとかアダルトビデオとかにありがちな拷問とか尋問と証した安っぽいシチュエーションプレイが絶対待っているよね？
まさかコスプレ趣味のちょっとアレな人？
「若君、それは誤解でゴザル。某は“くのいち”ではゴザらん。某は魔界忍者“クノイチ”でゴザル故、闇に生き闇に死する人外の者でゴザル。この装束も我ら淫香流忍術の正装でゴザれば、このように肌の露出の多きデザインになるのも仕方なきこと」
「さりげなく俺の心を読まないで欲しいな。むしろ俺が聞きたいのはそういうことじゃなくっていうか不法侵入だろいやいやそれよりも、ちょっとドア閉めさせてくれ！！いい加減手で隠し続けるのはそろそろ限界なんだ！！！」
片手で股間を隠しつつ、俺はトイレのドアを再び閉じようとした。
だって傅いている彼女の凶悪な谷間が否応なしに目に入って、スッキリ処理したはずのチンコがウズウズと疼き出して、もう一度隆々と超元気にバキバキにそびえ立ちたいと欲望が叫び続けている。
まったく、こんな狂暴なオッパイは童貞には目の毒だ。
早くドアを閉めて、もう一度スッキリしておかないと正直ヤバい。
ガシッ
「そんな勿体無きお言葉。若君の御宝刀を拝見出来て、某は至極幸福の極みでゴザル。ささ、どうぞ遠慮なさらず、若君の逞しい御宝刀を今一度某の前に突き出し、某の不法侵入に対する御仕置きを是非ッ！」（ハァーッ、ハァーッ、ハーッ）
「く、来るな、や、やめろぉぉぉぉぉぉーーーーッ！！！」
物凄い力でトイレのドアを掴んで閉めさせまいとする自称クノイチ。
目は俺の隠された股間を凝視し、一体どんな鍛え方をすればそうなるのかわからないが、俺がいくら引っ張っても彼女が掴んでいるドアはピクリとも動かない。ちょっと前までやってた引越し屋のバイトでそこそこ筋力は付いたと思っていたのに、俺の自信をあっさりと打ち砕く不法侵入者の尋常じゃない腕力に俺は戦慄を覚えていた。
このままでは………奪われるッ…！
「まあまあ若君、まずは御近付きの印に若君厳選のエッチな本を某が耳元でウェイスパー気味に朗読しながら、淫香流忍術一門切っての腕前と言われている手コキにて骨抜きにして差し上げませう。御安心めされよ、文字通り某の手に掛かればもう他の女には見向きも出来なくなります故♪」（フヒーッ、フヒーッ）
「指をワキワキさせんな馬鹿ぁぁぁぁーッ！！！！」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………という出来事が起こったのが１週間前。
今はすっかり落ち着いたもので、あのクノイチ“焔”さんも最初の２日間以降はあまり俺にちょっかいを出すことはなく、あの性的な意味で獲物を狙う肉食獣のような執拗な挑発も今は鳴りを潜めている。
よくある話だけど、どうやら俺の一族っていうのは代々彼女たちクノイチから守ってもらっているらしく、それは俺の親父も知っていることらしい。まあ、焔さんほど過激（？）なクノイチというのは滅多にいないようで、基本的にそういう存在がいると言い伝えられるばかりで、焔さんのように主人（この場合は俺）の目の前に姿を現すということはほとんどないのだと彼女は言う。
らしい、らしい、と続くのはすべて焔さんの口から教えてもらったことばかりであって、俺より事情を知っている親父に小一時間くらい問い詰めたいと電話をしてみたのだが、何故か親父に繋がらないまま時が過ぎたので一応保留ということにしてある。
ちなみに焔、というのは偽名というかコードネームのようなものらしい。
そのことは彼女が俺の携帯ゲーム機で遊んでいた時点で何となく予想は付いたけど、例によって彼女の本名は教えてはくれなかった。いつか時期が来たら教えてくれるらしいのだが、その時期が来たらというのはいつなのだろうか。
年齢に関して言えば意外にすんなり答えてくれて、今は２６歳なのだという。
色々と問題が山積みであり、一つ間違えば落とされたり奪われてしまう危険を大いに孕んではいるものの、魔物とは言えこんな極上の年上のお姉さんとの同居。トイレという超個人空間さえ確保しておけば、いつでも好きな時に欲求不満を解消出来ることを考えれば、
心 躍 ら な い 方 が ど う か し て る ぜ ☆
「……して若君、本日の夕食は何を御所望でゴザル？」
「………肉、かな」
そして今日も焔さんは俺に代わって家事一切を引き受けてくれている。
特に食事の準備は彼女がしてくれることになり、毎日のように質素ながら絶品の料理を振舞ってくれる。さすが俺が５歳の時から俺のことをストーキングしているだけあって、俺の好みは完璧に把握済みだったりする。ちなみに隠していたはずの秘蔵のエロ本、アダルトＤＶＤはすでに発見済みで、俺の知らない内にいつの間にかショップに売り飛ばされて生活費の足ししてしまっているところも完璧であるチクショウ。
焔さんは忍び装束ではなく、リラックスしたいとのことで俺のＴシャツを着て、腰のラインがくっきり見えるピッタリとしたスパッツを穿いている。Ｔシャツは俺のだから焔さんには大きいらしくダボダボしているのだが、彼女曰く『余計な締め付けがなく最高でゴザル』とのこと。スパッツには彼女の尻尾用の穴を開けているのだが、これがまた形の良いお尻と相まって俺の欲求不満は高まっていく。
しかし………あのスパッツは近所のジ（わん♪）スコに彼女が一人で買いに行ったもので、あの破廉恥な忍び装束姿で買いに行ったことを考えると、もしかして焔さんって露出狂のケでもあるのだろうかと勘繰ってしまう。
「肉でゴザルか…」
ううん、と唸るように焔さんが悩み込む。
そういえばこの１週間、彼女が作ってくれたのは魚と野菜料理ばかり。後は食べると丸一日何も食べなくても良いぐらいお腹の膨れる妖しげな原材料不明のちょっと臭い丸薬だった。もしかして肉料理は苦手だったのだろうか。
「若君、このあたりにドラム缶はゴザらぬか？」
「何故ドラム缶なんだ」
「食材は新鮮さが命でゴザル。しかしこの都会、近隣に牛や豚、鶏などの獣を飼育している家は皆無。しかもスーパーマーケットで購入しようにも昨今産地偽装などの問題が浮上してゴザル。某、産地のハッキリしない安いお肉などアウトオブ眼中でゴザル！！」
いや、そんなところ力説されても困るんだけど…。
「そこでドラム缶の登場でゴザル」
「待って、話が繋がらない！」
「某たちの忍者界に今尚伝説として語り継がれている先輩がこう語っておりました。ドラム缶の中には夢と希望が詰まっているというのでゴザル。ドラム缶を一つ蹴り倒せば、中からナイフ。二つ蹴り倒せば鉄パイプ。三つ蹴り倒せば、美味しそうに調理された肉が現れるのだと！」
ファイナル・ファ（わん♪）トじゃねえか！！
「先輩、元気でゴザろうか」
何かを思い出すように遠い目をする焔さん。
何か、あったのだろうか。
「……先輩、腕試しに吸血鬼に闘いを挑んだら返り討ちに遭い、ミッドナイト……えーっと、ミッドナイトうんたらなる技を喰らってしまったために、堕落して女子になってしまったのでゴザル」
「とことんカプ（わん♪）ンネタかよ！！」
ほんっとうにここの作者は（わん♪）プコンが好きだな、オイ。
そういえばカプコ（わん♪）と言えば、そろそろアレの発売だよな。俺もアマゾネス・ドットコムの通販で予約したから、発売日に向けてクック先生の生態の予習復習でもしておこうかな。
「可哀想に……今も先輩は吸血鬼の魔力が抜けるまで地下の牢獄で…」
「それは……深刻そうだな…」
地下の牢獄で苦痛に耐えているのか。
確かにゲームの中だと一瞬だけど、現実はそうはいかない。オカルト関係に詳しい“初女野”という自称霊能力者の知り合いに聞いたことがあるのだが、魔物の魔力は例えド（わん♪）クエ最弱の名を欲しいままにしてきたスライムのものでさえ、一度身体を蝕めば実質逃げ出すことは不可能に近いのだという。
それを地下の牢獄で耐え続ける……忍者の世界とは、俺の思っていた以上に過酷で残酷で、それ以上に何と高潔なのだろうと実感せざるを得ない。俺に出来ることは、ただその男の無事を祈ることだけなのだ。
「……という建前で地下の牢獄を自室に改造して、夜な夜な後輩の男子を連れ込んで、すっかり魔物娘らしくなっちゃって…。だというのにウチの里にいる男共と来たら、モノは粗末だわ早いわ回数こなせないわで、先輩ってば欲求不満をツブヤイッターにぶつける毎日。同じ魔物娘として同情するばかりでゴザル」
「返せ、俺の感動を返せッッ！！！」
結局、魚料理にしてもらうことにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ご馳走様でした」
いつの間にか一日が終わっている。
おかしい……俺は設定上『大学生』という肩書きがある以上、青春色のキャンパス・ライフが待っていたり、アルバイトで社会勉強したりとスリリングなイベントが目白押しのはずなのに、気が付けばもう一日が終わっている。そういえばどういう理屈かわからないけど、１週間もあっという間に過ぎ去ったような気がする。
いくら読み切りだからって手抜きすぎじゃないか？
「若君、味の方は如何でゴザったか？」
「如何も何も美味かったよ」
それは良かった、と静かな声で言いながら、焔さんは食器の後片付けを始めた。手伝おうとしたのだが、これは従者の役目だから手出し無用と断られる。今夜の献立は“ブリの塩焼き”をメインディッシュに焔さんお手製の“白菜の漬物”、それに焔さんの里から送られてきた里芋の“煮っ転がし”と白味噌の味噌汁。見事なまでに和食だった。
「若君はジャンクフードの食べすぎでゴザル。某も高校時代には“ドスバアガー”のチーズバーガーが実は好きでゴザルが、お手軽だからとて何でも食べすぎは身体に毒でゴザルよ」
「焔さん、高校行ってたんだ」
「クックック、これでも女子高の生徒会長でゴザったのさ。だから友人たちとも帰宅中の買い食いやプリクラといった、ごくごく一般的な放課後ライフをエンジョイしており申した。まあ、現在は若君のお世話で精一杯でゴザルよ」
ニヤリと笑って、台所で洗い物を始める焔さん。
これって、もしかしてかなり幸せな光景なんじゃないだろうか？
いや絶対そうだよな？
今の俺ってリア充モゲロって言われる立場にいるのか？
「リア充モゲロ」
「焔さんッッッ！？」
「何やらそう罵って欲しそうな顔をしており申した故」
「マジっすか！！！」
「ハッハッハ、若君ってば♪……………冗談に決まっているでゴザル」
「ＨＯＭＵＲＡＳＡＮＧッッッ！？」
真顔で冗談を言われると何だか傷付くことを発見した俺。
「大丈夫、某理解はある方でゴザル。若君が無自覚なＭであることなど、若君が５歳の時からストーキングしていたおかげで把握済みでゴザルよ。ああ、御安心召されよ。若君のために先日、里に連絡を入れて女王様変身セットを送ってもらう手筈を、すでに準備万端整えてゴザル」
「誤解だッ！！俺はそんな趣味はねえ！！！」
「……し、しまった…。某としたことが何たる迂闊ッ」
どうやら俺にＭっ気がないことを理解してくれたらしい。
良かった……これで俺の社会的地位は守られる。
「先日売り飛ばした若君のエロ漫画……内容のほとんどがドＳメイドさん本でゴザったのを失念しておりました。若君はメイドさんに苛められることに性的な興奮を催す変態でゴザった。これはとんだ失礼を…、某今すぐにそこの“ドンキ暴帝”にてメイド服を買い求めて参りますッ！」
ぜんっぜん、わかってくれていなかった！
しかもよりによって深夜まで営業しているディスカウント・ショップ“ドンキ暴帝”のエロコーナーに置いているメイド服を買いに行こうと、焔さんの神速の運動神経を駆使して財布を手にしていやがる。確かにドＳメイドさん本が多かったのは認めよう。だがそれはその作者の作画が好みだったからだ。
それ以上でもそれ以下でもないッッ！
まあ何度もお世話になって、ゴミ箱を妊娠させかけたけど。
「待ってくれ、焔さん！！俺は………ッ！！！」
俺はディスカウント・ショップのメイド服に興味はないんだ。
俺が好きなのは安易な萌えに走ったミニスカ萌え系メイド服じゃなくて、安心の実績と実用性の中に芽生えた至高の芸術・俗に天神スタイルと呼ばれる正統派メイド様にしか興味がないんだッ！！……と叫びたかったのだが、俺の燃え盛る意思とは裏腹に急に舌が痺れ、焔さんを呼び止めようとした足はもつれて、俺は受身も取れないままフローリングの床に叩き付けられた。
何が……何が一体…ッ！？
「………ようやく薬が効いてきたようでゴザルな」
く、薬ッ！？
「いやあ、若君ってば意外に薬の耐性が強うゴザった故、毎日毎日食事にほんの少しずつ混ぜて蓄積させていく方法を取らせてもらったでゴザルよ。大丈夫、媚薬の類ではなく純粋に痺れ薬でゴザル」
何してくれてけつかんねん！と叫びたいけど舌が痺れて喋れない。
「動けないでゴザろう？動けないでゴザろうねぇ♪某、この１週間ずっと考えていたでゴザルよ。若君ってば童貞を拗らせすぎて、せっかく某が誘っているにも関わらず、欲求不満をトイレで解消するほど身持ちが固すぎでゴザル故ね、もう無理矢理犯っちゃうしかないかな〜という結論に達したでゴザル」
「ふ、ふざけんな！！！」
ようやく出た言葉も虚しく、焔さんはワキワキ指を動かしながら近付いてくる。
表情は満面の笑み。
荒々しい呼吸が俺の部屋に響く。
ハッキリ言って超怖い。
「足掻いても無駄でゴザル。某の一族が代々エロ漫画やアニメを参考に作り出した『射精しないと抜けない痺れ薬』の威力は絶大でゴザルよ。それにしても“抜かない”と“抜けない”というのはコレ如何にでゴザルな♪」
上機嫌で笑いながら、焔さんはＴシャツやスパッツを脱ぎ捨てると忍び装束になった。久し振りに見た忍び装束姿は何だか新鮮で、下から見上げる彼女の巨乳は思わず息を呑むほどシンプルな破壊力で俺の目に飛び込んでくる。見えそうで見えない深いスリットの前掛けの中身を見たくて、動けないのについ首を伸ばそうと努力してしまう。
「クックック、若君……童貞を拗らせてすっかりプロ・オナニストに進化してしまった故初めては怖いかもしれぬが、某が優しく優しく一生消えぬトラウマになるくらい犯して抜いてあげるでゴザルよ♪」
「お、俺はプロ・オナニストとして魔法使いになりたいんですけども…！？」
必死の抵抗を試みる。
苦しい言い訳をしてみるが、どうやっても回避出来そうにない。
「若君、正直こうして会話するのも面倒でゴザル。某、もう１週間も若君の雄の匂いを我慢し続けたおかげで我慢の限界でゴザルよ。しかし調度良うゴザった。今日の某は危険日中のド危険日。生で犯っちゃえば、若君のゴミ箱と違って妊娠は確実でゴザろうなあ」
「誰も俺に近寄るなぁぁぁぁーーーーーッッッ」
「オ（わん♪）ンコは友達、怖くないよ♪では若君にはたくさんの年上のお姉さんに犯される、屈辱的な集団逆レイプによる童貞喪失というトラウマ初体験をしていただくとしようかな。そおれ、忍法・影分身！」
「焔さんが一人二人三人……た、たくさん……！？」
諦めるな俺っ！
諦めなければ何か手があるはずなんだ俺っ！
最後まで……最後まで諦めなければ…ッ！！
……………………………。
…………………………。
………………………。
……………………。
「ふぅ…」
ベッドの上で気だるそうに彼女は煙草の煙を吐いていた。
「可愛かったでゴザルよ、若君」
「シクシクシクシクシクシクシクシク」
はい、抵抗は無意味でした。
痺れ薬で動けなかった俺は焔さん’ｓに何度も何度も代わる代わる犯されて、彼女の気が済むまで生中出しを強要された挙句、すべてを自分好みに調教すると言って俺のアナル開発、尿道責めなどなど心も身体も犯され尽くされた。しかも最悪なことに、気が付けばそれを悦んでいる自分に気が付き、焔さんのことを“お姉様”と口走って自分からおねだりしていた始末。
冷静になると恥ずかしくて情けなくて、俺はこうして泣いている。
「それにしても某の魔力の影響とはいえ、若君もなかなかの絶倫でゴザルな。伊達に１日１０回というハード・オナニー・ライフを１１歳の頃からやっていた訳ではゴザらんね。まさか最後の方は某が童貞相手に気をやってしまうとは夢にも思わなんだ」
「褒められたって嬉しくもないわい！！」
「魔物娘の主人たる者、それは誇っても良うゴザルよ。何にせよ、某への種付けは大成功でゴザル。この様子では例え危険日中のド危険日でなかったとしても、そう例え大丈夫な日だったとしても妊娠は確定でゴザっただろうな。もっとも、若君も覚えておくと良い。女の子の大丈夫な日というのは絶対大丈夫じゃないでゴザルから」
いらない余計なトリビアをありがとう。
でもこちとら本当に嬉しくないんだよ！
エッチってのはもっとこう夢があるものだと思っていたのに……まさかあんなアブノーマルな快感を身体に刻み付けられて、自分の身体が自分の所有物ではなく、まさしく焔さんの所有物だと思い知らされたようなエッチがまさか俺の初体験だったなんて…。俺、もう日溜まりの中には戻れないよ…。
じりりりりりりり〜ん…
じりりりりりりり〜ん…
「………おっと、若君。電話でゴザル」
「わかってるよ、これ俺の携帯の着信音だし……もしもしッ！」
ちょっとイライラしていたので、携帯電話のディスプレイを見ずに通話ボタンを押すと、電話の向こう側から聞こえてきたのは誰であろう俺の親父のビール樽のような体型をした奥さん、つまり俺の実のオカンだった。
「オカン！？どうしたんだよ急に…………そう、親父に電話してたんだけど出なくってさ…………はあ！？親父、入院してたの！？どうして…………オカンが窓から放り投げた！？」
何考えてるんだよ、オカン。
ウチの実家、マンションの５階だぜ？
「じゃあ俺も近い内に見舞いに………うっ！？」
電話をしていると、悪戯心に火が点いたのか焔さんが俺の乳首を舐めつつ、まだ逆レイプの余韻が残る半勃ちのチンコを手でしごき始めていた。突然の快感にうっかり声を挙げてしまった。
（ほ、焔さん、マジ勘弁してくださいってば！？）
（大丈夫、後戯みたいなものでゴザルよ♪）
声には出せないのでアイコンタクトで文句を言う。どうやらちゃんと伝わったらしいが、いやらしい彼女の舌と手は執拗に俺を責め続けるのでバレないように必死に声を抑え、平静を装わなければならない。
「ご、ごめん……こっちの話………で、親父は何でオカンに投げられたん？」
『お父ちゃんの浮気が発覚したんや』
あー………、そういえば親父って昔から綺麗な女の人には弱かったっけな。
俺はそういう親父を見て、反面教師からオナニストの道に踏み込んだようなもんだけど、窓から投げ捨てられるってことは普段の浮気よりも、もっと絶望的な浮気をやっちまったんだろうなあ。
そんなことを考えていると、オカンは何かを思い出したように一呼吸置いてこう言った。
『あんたんとこに何や忍者来とるやろ？その人、お父ちゃんの浮気相手との間に出来たあんたの姉ちゃんやさかい、絶対に手ぇ出したらアカンで』
「………………………は？」ﾉｳﾅｲ（・ω・）ﾌﾘｰｽﾞ
何を……何を言っているんだ、このオカンは。
落ち着け、落ち着いて物事を整理するんだ。
うちに来ている忍者は俺の姉ちゃん？
いやいやオカンの腹から生まれたのは俺だけであって、血の繋がりはまったくもって一切何もない……訳ないよなぁ。親父と浮気相手の子供が焔さん……ってことはウチの一族を守ってくれたクノイチという訳で、つまり俺が何を言いたいのかと言うと“焔さんは俺の姉”だということだ。何を言っているのかわからねえと思うが、俺にもわからねえので誰か教えてください安西先生。
そろそろ警察に行って事情聴取を受けてくる、とオカンが言ったので電話を切り、ギギギというほどぎこちない仕草で焔さんを見ると、最初から全部わかってました的な笑顔でテヘペロをしている。
どういうことなの？と恐る恐る聞いてみる。
すると焔さん……否、お姉ちゃんは俺を抱き締めてこう言うのであった。
「では改めて、某の名は“諏訪 焔”。お聞きの通り若君の姉であり、うっかり弟のことを本気で全力で愛してしまった変態気質のクノイチでゴザル。バレてしまった以上、最早手加減は致さぬ。ブラコンの某に釣り合うシスコンに若君を生まれ変わらせ、某たち姉弟で幸せな一族繁栄を目指しましょうぞ。今後はより一層昼も夜もお世話して差し上げる故、必ずや若君を骨抜きにしてみせるでゴザルッ！！」
こんなことを平然と言い放つ姉。
魔物娘だからかもしれないが、常識とかそんなものはもうないらしい。
たぶん、抜けられないんだろうなぁ……、なんてことを俺はぼんやり考えていた。何故なら俺自身、彼女が姉だと告げられた瞬間、心の中に湧き上がった劣情を瞬時に自覚してしまったのだから。
だけど、言わせてくださいこれだけは。
俺は、生き延びることが出来るのか！？
13/09/09 00:24更新 / 宿利京祐