外道!ふかしばなし
むか〜しむか〜しの〜ことぉじゃった〜。
山奥に治平という名のおとぉこが〜、おった〜そうなぁ〜。
……………………うん、やりずらい。
こほん……。
昔々、ジパングのあるところに治平という名の若い男がいました。
治平は山奥に一人住んで、薪を拾っては麓の町に売りに行く若者でした。
「薪〜、薪は〜いらんかね〜。」
「うるせえ、今時薪なんか使わねえよ!今はIHコンロの時代じゃー!!」
そんな感じで薪は売れず、生活は大変苦しいものでした。
いつものように薪が売れず、治平は肩を落として家路に着きました。
折りしも季節は冬。
雪深い山道に治平は難儀しながら、思い悩んでおりました。
「今日も一つも売れなんだ…。このまま傘地蔵の爺さんの真似して、寒くて震えていそうなお地蔵さんの周りに薪を積んで火でも点ければ、ワシも爺さんのようにお礼を貰ってウハウハになれるじゃろうか…。」
やめておけ。
きっと祟られるぞ。
治平がとても不謹慎なことを考えていると、どこからか助けを呼ぶ声が聞こえてきます。
「だれか〜……寒いの〜…!誰か助けて〜!!」
「おや、こんな山奥に誰じゃろうか?」
茂みを掻き分けて、治平が声のする方へ向かうと、そこには……
「うおあ!?」
立派なワニの頭が顔を覗かしていました。
「何故こんな場所にワニ!?『見た』ことも『聞いた』こともないのに、ワシはこれがワニだと『知っている』!?馬鹿な、何故これがワニとわかるんだ!!まさか、これがヤツの『スタンド』の能力だと言うのか!?」
「スタンドって何ですか〜。そんなことより助けてくださいよ〜。」
パクパクとワニの口が動いたかと思うと、その口の中には可愛らしい女の子の顔がよよよ、と涙を滲ませて治平に助けを請うように見詰めていました。
よく見ると、そのワニの頭は被り物で、少女には腕の代わりに立派な翼が生えています。
「何じゃ、鳥人間コンテストの参加者か。」
「どこをどう見たらそんな結論に行き着くんですか〜!鶴ですよ〜、とっても優雅で美しい鶴のハーピーですよ〜!罠にかかってしまって、動けなくって困っていたんです〜…。どうか罠を外していただけないでしょうか〜。」
なるほど、と治平は罠を外してやろうと足を見ましたが、罠が見当たりません。
「おかしいのぉ。罠なんざ、どこにも見当たらんぞ?」
「あるじゃないですか〜、私の目の前に〜!」
「目の前?」
ハーピーの目の前にあるのは、罠なんかではありません。
ちょっとだけエッチな本が開いて置いているだけです。
「………………それ、罠?」
「罠に見えないのも仕方がありません〜…。実は…これには恐ろしくも悲しい理由が…。」
ハーピーが涙ながらに語りました。
冬を越すために南の島にバカンスに行く途中、今年最後の思い出にサバイバルゲームをしていたら、この恐ろしい『エロ本トラップ』に引っ掛かってしまって、動けなくなったところを、仲間に額を麻酔銃で撃ち抜かれてしまい、うっかりこの雪の中で眠ってしまったというのです。
しかも仲間たちは楽しむだけ楽しんだら、『鶏脳』全開でハーピーのことを完璧に忘れてしまい、彼女を雪の中に取り残したまま南の島に旅立ってしまった、と鶴は泣いて治平に語るのでした。
「………で、それで何でエロ本が罠なんじゃ?」
とりあえず、目のやりどころに困って治平がエロ本を閉じると、金縛りのように動けなかったハーピーが、急にマイケル=ジャクソンのように激しく動き始めました。
どうやら呪縛は解けたようです。
「わかってないですね〜。サバゲー中にエロ本を地面に置かれるとついつい読んでしまうじゃないですか〜。そんなこともわからないんですか、このど素人。」
子供の頃から貧乏のどん底で、プレイステーション2もプレイステーションポータブルも持っていない治平は、ハーピーが暑苦しく語るメタルギアソリッドのネタがわからず、首を傾げます。
「……で、話は変わるんじゃが。何でワニの被り物を?」
「ワニの被り物は戦場の淑女の嗜みです〜♪」
「……………あっそ。まーよくわからんが、無事動けるなら仲間のとこに行くと良い。追い付けない距離じゃないはずじゃ。少ないけど、このおにぎりを持って行け。途中で喰えば腹ごしらえにはなるじゃろうて。」
「ありがとうございます〜。このご恩は………。」
ハーピーが治平の耳元で囁きます。
「必ず晴らしてやるからね。」
バサバサ、と大きな羽ばたく音を立てて、鶴が飛び去りました。
「ま、待つんじゃ!日本語の使い方が違う…、いや、何かワシ、恨みでも買ったかぁー!!」
治平は鶴に向かって精一杯叫びましたが、ハーピーは振り返ることなく雪の降りそうな重たい雲の彼方へと飛び去り、治平に大きな不安だけを残して、その姿を雲の中に隠してしまいました、とさ。
「……何だったじゃ、あいつは。………まぁ、手ぶらでもないし、良いか。」
今夜のオカズが予期せず手に入ったし、と治平はエロ本を手に、異常に軽い足取りで、まるでスキップするように家路に着いたのでした。
この、エロめ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
その夜、外は凍て付くような吹雪でした。
治平は凍えてしまわないように、囲炉裏に火をくべ、囲炉裏の側に布団を敷くと、その上で体温を保つべく腕の上下運動と、身体の一部の乾布摩擦に努めていました。
ぶっちゃけて言うと自慰です。
「おお……ホルスタウロスたんのビキニ水着がはち切れんばかりのオッパイは堪らないのぉ…。ハァハァ…、この谷間に光る汗をチュッチュしてみたいものじゃ…。むむむ…、こっちのリリムたんはやけに幼い感じじゃが、これはこれでそそるものが…。貧乳も……なか…なか…ウッ…!?やべぇ、うっかり気をやってしまうところじゃった…!」
気持ち悪い独り言をブツブツと言いながら、治平はガチガチに勃起したチ(わおーん♪)を欲望の赴くままに慰め、昼間拾ったちょっとエッチな本の水着グラビアをオカズに夜の寂しさを紛らわしていました。
とんとん…
その時、弱々しく戸を叩く音がしました。
空耳だろうか、と治平が自慰の手を緩めるとまた、
とんとん…
と弱々しく戸を叩く音がします。
扉の向こうで何か声がしますが、吹雪の音がひどくて何を言っているのかわかりません。
「はいはい、今イキますよー。」
とは言うものの、治平は再び勃起した(わおーん♪)ンコを握り締めると、水着グラビアに全神経を集中し、ハァハァと息を荒くして自慰を再開します。
とんとん…
また、外で誰かが戸を叩きました。
「今イキますってばー。」
その言葉通りに、治平は自慰のラストスパートをかけます。
下半身丸出しの姿は間抜けですが、どうやら、誘うような視線で挑発的なポーズを決めたビキニ水着姿の某有名美巨乳ピクシーのグラビアに狙いを搾ったようで、チ(わおーん♪)nコはまるでスナイパーライフルのように、グラビアのピクシーの胸の谷間を目指しています。
「ハァハァ…ス…ステ(わおーん♪)ちゃんのオッパイ…!」
駄目だこいつ、何とかしないと。
とんとん…
とんとん…
とんとん…
とんとん…
……………
何度戸を叩いても、治平は一向に戸を開ける様子はありません。
それどころか自慰の激しさが増すばかりです。
我慢の限界が来たのでしょう。
戸を叩く音の主は、ついに叩き方を変えました。
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
「な、何じゃ何じゃ!?このよく知っているような親しみのあるリズムは!?」
驚いた治平は下半身丸出しのまま、布団から飛び起きました。
勃起したチン(わおーん♪)がブルンブルンと動き、我慢汁が勢いよく飛び散ります。
……どうでも良いですけど、あまり描写したくない光景です。
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
戸を叩く音はまだ続いています。
耳を澄ましてみると、その音の主は何かを歌っているようです。
ですが、その歌詞は絶対に載せてはいけないのです。
著作権的な意味で。
メキィッ
入り口のつっかえ棒が、悲鳴を当てて拉げました。
「お、おお!?まさか、向こう側から抉じ開けようとしておるのか!何という力じゃ…!だが、人のオナニ(わおーん♪)を邪魔するヤツはナイトメアたんに踏まれてアヘって堕ちろという言葉通りに、地獄に落としてやる!!」
うぃー…………あー……きゅー!
うぃーうぃる…………ろっきゅー! しぎなーう!
「うぃーうぃるーうぃーあーろっきゅー!!」
ベキィ
つっかえ棒が圧し折られ、バンッという大きな音を立てて入り口が開き、凄まじい冷気と共に現れたのは、奇抜なデザインのエレキギターを肩からぶら下げて、激しいピック捌きでギターを掻き鳴らす、昼間に治平が助けたワニの被り物をしたハーピーでした。
「結局仲間に追い付けなくて、散々吹雪の中を彷徨って寒い思いをしながら民家に辿り着いたって言うのに〜!!ち(わおーん♪)ニギニギする方が人命救助よりも大切ですか、こんちくしょ〜!!暖かくなるまで居候させるです〜!!あんたの答えは聞いていない〜!!!」
まるで洋楽バンドのギタリストのように激しいギターソロを終えると、ハーピーは肩から下げたギターを外すと、まるで斧のように振り被り、寒かったにも関わらず自慰に興じて助けてくれなかった怒りをギターに乗せて、治平の頭に満身の力を込めて振り下ろしました。
撲っ★
―――――――――――――――――――――――――――――――――
冬が過ぎて、春が来て、夏が駆け抜けて、秋が舞い降りて。
再び冬がやってきました。
治平の家は、相変わらず貧しいままです。
しかも……
「おい、ハーピー。」
「何ですか〜?」
暖かくなるまで、と言っていたハーピー本人がまだ居座っているのです。
ボリボリと、寝そべって煎餅を食べながら、ミノタウロスの人気司会者が好き勝手に暴言を垂れ流すお昼のワイドショー、『犯るときゃこだわり生挿れテレビ」を見るその姿は、暇を持て余した熟練主婦そのもの。
「暖かくなるまでじゃなかったんけ?」
「あ〜…。」
まるで今思い出したと言わんばかりに、ハーピーは間延びした声を上げると、面倒臭そうに起き上がり、ポリポリと頭を掻きながら言いました。
「確かに言いましたよ〜。でも懐が暖まるまでは、果てしなく遠いですね〜。」
「とんちかよ!!出てけ!!!」
1年以上家に置いていた治平も治平ですが、さすがに堪忍袋の緒が切れたようでした。
「あんたが居座ってくれたくれたおかげで、うちの家計は火の車じゃ!ただでさえ貧乏で、日々食うにも困っておるってぇのに!!あんたがうちで食っちゃ寝、食っちゃ寝ばっかしとって、一歩も家から出ずに生活費すら納めんから、もう限界じゃー!!」
ハーピーのニート具合に治平は大激怒。
ハーピーはこの一年間、治平の言う通り一歩も外に出ることなく、日がな一日テレビを見ながら煎餅を食べるか、新作のゲームを廃人プレイし続けるか、wiiフィットで健康のために軽い運動をするという生活だったのです。
ちなみにゲームなどは、ネット通販で仕入れていたので余計に外出をしなかったのです。
「しかも支払いは全部ワシのカードだし!一体、いつの間にスったかわからんけんど、あんたのせいでワシャ馬車馬んごたる働かなにゃならんくなって、日々支払いに怯える日々じゃー!!」
「そうだったんですか〜。毎日、梅干一つしか食卓に上らなかったので、薄々生活が厳しいんじゃないかな〜とは思ってはいたんですけど〜。」
ハーピーはのんびり口調でも『シャ乱Q』の歌っていたようなズルくて良い女なので、自分だけ栄養満点の自分で生んだ無性卵を食べていたことを黙っておくことにしました。
「仕方がないですね〜。では〜ちょっとお隣をお借りします〜。覗かないでくださいね〜。絶対ですよ〜?もしも覗いたららですね〜♪」
ニコリ、とハーピーは治平に微笑みました。
ちょっと可愛いかも、と治平が思った瞬間…
「バラすからね♪」
言い方こそ可愛らしかったものの、声には殺気が篭り、凍て付くような冷気と魔王のような迫力に、治平は何も言えず、腰を抜かしてへたり込むと、虎の首振り置物のようにガクガクと首を縦に振るばかりでした。
そんな治平の脇を、蔑むような視線でハーピーは通り過ぎると、使っていない物置と化している部屋に入り、戸を完全に閉めてしまいました。
「こ…ここでやっと原作通りに機織りをするんじゃろか…?でもうちには機織り機なんて高級品はないし…。生活に困って売り飛ばしてしもうたから一体…。」
ごそごそ
しゅる……ぱさ…
ひょお〜
まっするまっするむ〜ちむち〜
ずんずんずんずんずんずんどっこ
ずんずんずんずんずんずんどっこ
すかっぱらぶりゅりらだんぶりゅりだんぶりゅりだんだんでべぇれろ…
あいますきゃ〜っめ〜ん
やったやった にほんだいひょ〜
やったやった ノンケせんげん〜
やんなるくらいけんこうだ〜
え〜びばでせい……や ら な い か
「何の音じゃー!!!!」
意味不明な音と、歌声に治平は堪らず、開けてはならない戸を開けてしまったのです。
バンッと勢い良く開けると、一本の蝋燭の妖しい明かりの中、キチンと布団が引かれて、全裸のハーピーが三つ指を突いて頭を下げていました。
着ていた着物も几帳面に畳まれ、あたりにはハーピーの醸し出す何とも知れぬ良い匂いが漂っていました。
「私は〜昔話みたいに反物を織るスキルはありません〜。ですから、家賃代わりに私が出来ることでお返ししようかと思います〜。」
「で、出来ることって…!?」
治平も男です。
どんなことがあっても、エロ本から目を背けることが出来なくて(わおーん♪)nこから手を放せないくらいに、欲望逞しく、性欲を持て余すようなケダモノ青年です。
この状況からして、ハーピーが何を言わんとしているのかを察していました。
股間はすでに期待で、はち切れんばかりに大きくなっています。
「き…気持ちは嬉しいけど…。ワシら、別にそこまで深い仲じゃ…。」
一応断るあたり、治平もなかなかの偽善者です。
「私はご覧の通り〜職もスキルもありません〜。確かにあなたに甘えてず〜っと、いい加減なニート暮らしをしてきました〜。それがあなたの負担になっているのでしたら〜、私はこうやってお返しするしかありません〜。」
ごくり、と治平は唾を飲み込みました。
ハーピーの決して小さくはない胸。
食っちゃ寝を繰り返していたのが不思議なくらい、細く引き締まった腰。
輝かんばかりの美しい肌。
それらが自分の物になるのかと思うと、治平の心臓は飛び出そうなくらいに高鳴ります。
伊達に年齢=童貞という訳ではないようです。
「私の脱ぎたての服をブルセラに持って行ってください〜。恥ずかしいですけど、ちょっとエロゲをやったおかげで濡れてしまった下着も揃えています〜。持っていけば高値が付くはずですよ〜♪」
「…………………え、ブルセラ?」
君自身がお返しって訳じゃないの?と治平は思わず聞いてしまいました。
「当たり前じゃないですか〜。この程度で身体を売る程〜、私は落ちぶれていませんよ〜。」
「……………………。」
余程ショックが大きかったのでしょう。
治平は無言で、ハーピーの着物+下着のセットを受け取ると、風呂敷に包んで麓の町にあるブルセラショップに行く準備をもそもそと緩慢な動作で始めました。
「あ、私、寒いんでお布団で寝て待ってますね〜♪」
「……………………はーい。」
治平はトボトボと家を出ると、雪の山道を下って町へと降りました。
そしてハーピーの思った通り、ブルセラショップで良い金になりましたとさ。
その後…
「たっだいま〜、じへ〜さ〜ん♪今日は8万勝っちゃった〜。」
「おかえりー、もうすぐご飯出来るからな。今日は競馬?」
「スロット〜♪今日はアクエリオンが出まくり〜♪」
治平とハーピーは、何となく気が合い、何となく付き合うようになり、何となくそのまま惰性で夫婦になってしまいました。
治平は薪拾いをやめ、主夫として充実した日々を送り、ハーピーは仲間たちの下へ行くことを面倒臭くなって諦め、日々株とギャンブルでお金を稼いでくるアコギな毎日を楽しんで、何となく二人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
山奥に治平という名のおとぉこが〜、おった〜そうなぁ〜。
……………………うん、やりずらい。
こほん……。
昔々、ジパングのあるところに治平という名の若い男がいました。
治平は山奥に一人住んで、薪を拾っては麓の町に売りに行く若者でした。
「薪〜、薪は〜いらんかね〜。」
「うるせえ、今時薪なんか使わねえよ!今はIHコンロの時代じゃー!!」
そんな感じで薪は売れず、生活は大変苦しいものでした。
いつものように薪が売れず、治平は肩を落として家路に着きました。
折りしも季節は冬。
雪深い山道に治平は難儀しながら、思い悩んでおりました。
「今日も一つも売れなんだ…。このまま傘地蔵の爺さんの真似して、寒くて震えていそうなお地蔵さんの周りに薪を積んで火でも点ければ、ワシも爺さんのようにお礼を貰ってウハウハになれるじゃろうか…。」
やめておけ。
きっと祟られるぞ。
治平がとても不謹慎なことを考えていると、どこからか助けを呼ぶ声が聞こえてきます。
「だれか〜……寒いの〜…!誰か助けて〜!!」
「おや、こんな山奥に誰じゃろうか?」
茂みを掻き分けて、治平が声のする方へ向かうと、そこには……
「うおあ!?」
立派なワニの頭が顔を覗かしていました。
「何故こんな場所にワニ!?『見た』ことも『聞いた』こともないのに、ワシはこれがワニだと『知っている』!?馬鹿な、何故これがワニとわかるんだ!!まさか、これがヤツの『スタンド』の能力だと言うのか!?」
「スタンドって何ですか〜。そんなことより助けてくださいよ〜。」
パクパクとワニの口が動いたかと思うと、その口の中には可愛らしい女の子の顔がよよよ、と涙を滲ませて治平に助けを請うように見詰めていました。
よく見ると、そのワニの頭は被り物で、少女には腕の代わりに立派な翼が生えています。
「何じゃ、鳥人間コンテストの参加者か。」
「どこをどう見たらそんな結論に行き着くんですか〜!鶴ですよ〜、とっても優雅で美しい鶴のハーピーですよ〜!罠にかかってしまって、動けなくって困っていたんです〜…。どうか罠を外していただけないでしょうか〜。」
なるほど、と治平は罠を外してやろうと足を見ましたが、罠が見当たりません。
「おかしいのぉ。罠なんざ、どこにも見当たらんぞ?」
「あるじゃないですか〜、私の目の前に〜!」
「目の前?」
ハーピーの目の前にあるのは、罠なんかではありません。
ちょっとだけエッチな本が開いて置いているだけです。
「………………それ、罠?」
「罠に見えないのも仕方がありません〜…。実は…これには恐ろしくも悲しい理由が…。」
ハーピーが涙ながらに語りました。
冬を越すために南の島にバカンスに行く途中、今年最後の思い出にサバイバルゲームをしていたら、この恐ろしい『エロ本トラップ』に引っ掛かってしまって、動けなくなったところを、仲間に額を麻酔銃で撃ち抜かれてしまい、うっかりこの雪の中で眠ってしまったというのです。
しかも仲間たちは楽しむだけ楽しんだら、『鶏脳』全開でハーピーのことを完璧に忘れてしまい、彼女を雪の中に取り残したまま南の島に旅立ってしまった、と鶴は泣いて治平に語るのでした。
「………で、それで何でエロ本が罠なんじゃ?」
とりあえず、目のやりどころに困って治平がエロ本を閉じると、金縛りのように動けなかったハーピーが、急にマイケル=ジャクソンのように激しく動き始めました。
どうやら呪縛は解けたようです。
「わかってないですね〜。サバゲー中にエロ本を地面に置かれるとついつい読んでしまうじゃないですか〜。そんなこともわからないんですか、このど素人。」
子供の頃から貧乏のどん底で、プレイステーション2もプレイステーションポータブルも持っていない治平は、ハーピーが暑苦しく語るメタルギアソリッドのネタがわからず、首を傾げます。
「……で、話は変わるんじゃが。何でワニの被り物を?」
「ワニの被り物は戦場の淑女の嗜みです〜♪」
「……………あっそ。まーよくわからんが、無事動けるなら仲間のとこに行くと良い。追い付けない距離じゃないはずじゃ。少ないけど、このおにぎりを持って行け。途中で喰えば腹ごしらえにはなるじゃろうて。」
「ありがとうございます〜。このご恩は………。」
ハーピーが治平の耳元で囁きます。
「必ず晴らしてやるからね。」
バサバサ、と大きな羽ばたく音を立てて、鶴が飛び去りました。
「ま、待つんじゃ!日本語の使い方が違う…、いや、何かワシ、恨みでも買ったかぁー!!」
治平は鶴に向かって精一杯叫びましたが、ハーピーは振り返ることなく雪の降りそうな重たい雲の彼方へと飛び去り、治平に大きな不安だけを残して、その姿を雲の中に隠してしまいました、とさ。
「……何だったじゃ、あいつは。………まぁ、手ぶらでもないし、良いか。」
今夜のオカズが予期せず手に入ったし、と治平はエロ本を手に、異常に軽い足取りで、まるでスキップするように家路に着いたのでした。
この、エロめ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
その夜、外は凍て付くような吹雪でした。
治平は凍えてしまわないように、囲炉裏に火をくべ、囲炉裏の側に布団を敷くと、その上で体温を保つべく腕の上下運動と、身体の一部の乾布摩擦に努めていました。
ぶっちゃけて言うと自慰です。
「おお……ホルスタウロスたんのビキニ水着がはち切れんばかりのオッパイは堪らないのぉ…。ハァハァ…、この谷間に光る汗をチュッチュしてみたいものじゃ…。むむむ…、こっちのリリムたんはやけに幼い感じじゃが、これはこれでそそるものが…。貧乳も……なか…なか…ウッ…!?やべぇ、うっかり気をやってしまうところじゃった…!」
気持ち悪い独り言をブツブツと言いながら、治平はガチガチに勃起したチ(わおーん♪)を欲望の赴くままに慰め、昼間拾ったちょっとエッチな本の水着グラビアをオカズに夜の寂しさを紛らわしていました。
とんとん…
その時、弱々しく戸を叩く音がしました。
空耳だろうか、と治平が自慰の手を緩めるとまた、
とんとん…
と弱々しく戸を叩く音がします。
扉の向こうで何か声がしますが、吹雪の音がひどくて何を言っているのかわかりません。
「はいはい、今イキますよー。」
とは言うものの、治平は再び勃起した(わおーん♪)ンコを握り締めると、水着グラビアに全神経を集中し、ハァハァと息を荒くして自慰を再開します。
とんとん…
また、外で誰かが戸を叩きました。
「今イキますってばー。」
その言葉通りに、治平は自慰のラストスパートをかけます。
下半身丸出しの姿は間抜けですが、どうやら、誘うような視線で挑発的なポーズを決めたビキニ水着姿の某有名美巨乳ピクシーのグラビアに狙いを搾ったようで、チ(わおーん♪)nコはまるでスナイパーライフルのように、グラビアのピクシーの胸の谷間を目指しています。
「ハァハァ…ス…ステ(わおーん♪)ちゃんのオッパイ…!」
駄目だこいつ、何とかしないと。
とんとん…
とんとん…
とんとん…
とんとん…
……………
何度戸を叩いても、治平は一向に戸を開ける様子はありません。
それどころか自慰の激しさが増すばかりです。
我慢の限界が来たのでしょう。
戸を叩く音の主は、ついに叩き方を変えました。
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
「な、何じゃ何じゃ!?このよく知っているような親しみのあるリズムは!?」
驚いた治平は下半身丸出しのまま、布団から飛び起きました。
勃起したチン(わおーん♪)がブルンブルンと動き、我慢汁が勢いよく飛び散ります。
……どうでも良いですけど、あまり描写したくない光景です。
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
ドンドンッ バンッ
戸を叩く音はまだ続いています。
耳を澄ましてみると、その音の主は何かを歌っているようです。
ですが、その歌詞は絶対に載せてはいけないのです。
著作権的な意味で。
メキィッ
入り口のつっかえ棒が、悲鳴を当てて拉げました。
「お、おお!?まさか、向こう側から抉じ開けようとしておるのか!何という力じゃ…!だが、人のオナニ(わおーん♪)を邪魔するヤツはナイトメアたんに踏まれてアヘって堕ちろという言葉通りに、地獄に落としてやる!!」
うぃー…………あー……きゅー!
うぃーうぃる…………ろっきゅー! しぎなーう!
「うぃーうぃるーうぃーあーろっきゅー!!」
ベキィ
つっかえ棒が圧し折られ、バンッという大きな音を立てて入り口が開き、凄まじい冷気と共に現れたのは、奇抜なデザインのエレキギターを肩からぶら下げて、激しいピック捌きでギターを掻き鳴らす、昼間に治平が助けたワニの被り物をしたハーピーでした。
「結局仲間に追い付けなくて、散々吹雪の中を彷徨って寒い思いをしながら民家に辿り着いたって言うのに〜!!ち(わおーん♪)ニギニギする方が人命救助よりも大切ですか、こんちくしょ〜!!暖かくなるまで居候させるです〜!!あんたの答えは聞いていない〜!!!」
まるで洋楽バンドのギタリストのように激しいギターソロを終えると、ハーピーは肩から下げたギターを外すと、まるで斧のように振り被り、寒かったにも関わらず自慰に興じて助けてくれなかった怒りをギターに乗せて、治平の頭に満身の力を込めて振り下ろしました。
撲っ★
―――――――――――――――――――――――――――――――――
冬が過ぎて、春が来て、夏が駆け抜けて、秋が舞い降りて。
再び冬がやってきました。
治平の家は、相変わらず貧しいままです。
しかも……
「おい、ハーピー。」
「何ですか〜?」
暖かくなるまで、と言っていたハーピー本人がまだ居座っているのです。
ボリボリと、寝そべって煎餅を食べながら、ミノタウロスの人気司会者が好き勝手に暴言を垂れ流すお昼のワイドショー、『犯るときゃこだわり生挿れテレビ」を見るその姿は、暇を持て余した熟練主婦そのもの。
「暖かくなるまでじゃなかったんけ?」
「あ〜…。」
まるで今思い出したと言わんばかりに、ハーピーは間延びした声を上げると、面倒臭そうに起き上がり、ポリポリと頭を掻きながら言いました。
「確かに言いましたよ〜。でも懐が暖まるまでは、果てしなく遠いですね〜。」
「とんちかよ!!出てけ!!!」
1年以上家に置いていた治平も治平ですが、さすがに堪忍袋の緒が切れたようでした。
「あんたが居座ってくれたくれたおかげで、うちの家計は火の車じゃ!ただでさえ貧乏で、日々食うにも困っておるってぇのに!!あんたがうちで食っちゃ寝、食っちゃ寝ばっかしとって、一歩も家から出ずに生活費すら納めんから、もう限界じゃー!!」
ハーピーのニート具合に治平は大激怒。
ハーピーはこの一年間、治平の言う通り一歩も外に出ることなく、日がな一日テレビを見ながら煎餅を食べるか、新作のゲームを廃人プレイし続けるか、wiiフィットで健康のために軽い運動をするという生活だったのです。
ちなみにゲームなどは、ネット通販で仕入れていたので余計に外出をしなかったのです。
「しかも支払いは全部ワシのカードだし!一体、いつの間にスったかわからんけんど、あんたのせいでワシャ馬車馬んごたる働かなにゃならんくなって、日々支払いに怯える日々じゃー!!」
「そうだったんですか〜。毎日、梅干一つしか食卓に上らなかったので、薄々生活が厳しいんじゃないかな〜とは思ってはいたんですけど〜。」
ハーピーはのんびり口調でも『シャ乱Q』の歌っていたようなズルくて良い女なので、自分だけ栄養満点の自分で生んだ無性卵を食べていたことを黙っておくことにしました。
「仕方がないですね〜。では〜ちょっとお隣をお借りします〜。覗かないでくださいね〜。絶対ですよ〜?もしも覗いたららですね〜♪」
ニコリ、とハーピーは治平に微笑みました。
ちょっと可愛いかも、と治平が思った瞬間…
「バラすからね♪」
言い方こそ可愛らしかったものの、声には殺気が篭り、凍て付くような冷気と魔王のような迫力に、治平は何も言えず、腰を抜かしてへたり込むと、虎の首振り置物のようにガクガクと首を縦に振るばかりでした。
そんな治平の脇を、蔑むような視線でハーピーは通り過ぎると、使っていない物置と化している部屋に入り、戸を完全に閉めてしまいました。
「こ…ここでやっと原作通りに機織りをするんじゃろか…?でもうちには機織り機なんて高級品はないし…。生活に困って売り飛ばしてしもうたから一体…。」
ごそごそ
しゅる……ぱさ…
ひょお〜
まっするまっするむ〜ちむち〜
ずんずんずんずんずんずんどっこ
ずんずんずんずんずんずんどっこ
すかっぱらぶりゅりらだんぶりゅりだんぶりゅりだんだんでべぇれろ…
あいますきゃ〜っめ〜ん
やったやった にほんだいひょ〜
やったやった ノンケせんげん〜
やんなるくらいけんこうだ〜
え〜びばでせい……や ら な い か
「何の音じゃー!!!!」
意味不明な音と、歌声に治平は堪らず、開けてはならない戸を開けてしまったのです。
バンッと勢い良く開けると、一本の蝋燭の妖しい明かりの中、キチンと布団が引かれて、全裸のハーピーが三つ指を突いて頭を下げていました。
着ていた着物も几帳面に畳まれ、あたりにはハーピーの醸し出す何とも知れぬ良い匂いが漂っていました。
「私は〜昔話みたいに反物を織るスキルはありません〜。ですから、家賃代わりに私が出来ることでお返ししようかと思います〜。」
「で、出来ることって…!?」
治平も男です。
どんなことがあっても、エロ本から目を背けることが出来なくて(わおーん♪)nこから手を放せないくらいに、欲望逞しく、性欲を持て余すようなケダモノ青年です。
この状況からして、ハーピーが何を言わんとしているのかを察していました。
股間はすでに期待で、はち切れんばかりに大きくなっています。
「き…気持ちは嬉しいけど…。ワシら、別にそこまで深い仲じゃ…。」
一応断るあたり、治平もなかなかの偽善者です。
「私はご覧の通り〜職もスキルもありません〜。確かにあなたに甘えてず〜っと、いい加減なニート暮らしをしてきました〜。それがあなたの負担になっているのでしたら〜、私はこうやってお返しするしかありません〜。」
ごくり、と治平は唾を飲み込みました。
ハーピーの決して小さくはない胸。
食っちゃ寝を繰り返していたのが不思議なくらい、細く引き締まった腰。
輝かんばかりの美しい肌。
それらが自分の物になるのかと思うと、治平の心臓は飛び出そうなくらいに高鳴ります。
伊達に年齢=童貞という訳ではないようです。
「私の脱ぎたての服をブルセラに持って行ってください〜。恥ずかしいですけど、ちょっとエロゲをやったおかげで濡れてしまった下着も揃えています〜。持っていけば高値が付くはずですよ〜♪」
「…………………え、ブルセラ?」
君自身がお返しって訳じゃないの?と治平は思わず聞いてしまいました。
「当たり前じゃないですか〜。この程度で身体を売る程〜、私は落ちぶれていませんよ〜。」
「……………………。」
余程ショックが大きかったのでしょう。
治平は無言で、ハーピーの着物+下着のセットを受け取ると、風呂敷に包んで麓の町にあるブルセラショップに行く準備をもそもそと緩慢な動作で始めました。
「あ、私、寒いんでお布団で寝て待ってますね〜♪」
「……………………はーい。」
治平はトボトボと家を出ると、雪の山道を下って町へと降りました。
そしてハーピーの思った通り、ブルセラショップで良い金になりましたとさ。
その後…
「たっだいま〜、じへ〜さ〜ん♪今日は8万勝っちゃった〜。」
「おかえりー、もうすぐご飯出来るからな。今日は競馬?」
「スロット〜♪今日はアクエリオンが出まくり〜♪」
治平とハーピーは、何となく気が合い、何となく付き合うようになり、何となくそのまま惰性で夫婦になってしまいました。
治平は薪拾いをやめ、主夫として充実した日々を送り、ハーピーは仲間たちの下へ行くことを面倒臭くなって諦め、日々株とギャンブルでお金を稼いでくるアコギな毎日を楽しんで、何となく二人は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
11/10/18 00:03更新 / 宿利京祐