act18・うろこ日和〜ごぜんちゅう〜
学園都市セラエノ中心部、セラエノ学園に程近い閑静な住宅街。
ジパングからやってきた職人が凝りに凝って作り上げた木造建築、俗に言う六畳二間の安アパートの一室に、この物語の主人公は血の繋がらない姉と呼ぶ人と仲良く暮らしている。
「む〜〜〜〜〜、うまうま…。」
「ガーベラ…、前々から思っていたけど君って器用だよね?」
ピンクのパジャマ姿で朝食を食べているのは12歳のリザードマン、ガーベラ。
そしてテーブルの対面で彼女のトーストにマーガリンを塗りながら、呆れつつ感心しているのは、彼女の保護者で義理の姉、アルフォンスである。
アルフォンスが器用だと言うのは、半分夢の中にいながらガーベラは目玉焼きを白身と黄身に分けて、塩と胡椒を適量ずつかけながら食べているということ。
その動きは起きているのではないかと思われるのだが、彼女は間違いなく寝ている。
うつらうつらと首が船を漕ぎ、完全に閉じた瞼、時々動きが止まったかと思うと、
「す〜〜。」
という安らかな寝息が聞こえてくる。
そんなガーベラをアルフォンスは困った笑いを浮かべながら眺めていた。
しかし、困ったと笑ってばかりもいられない。
アルフォンスはもう少ししたら自警団の仕事に出なければならないし、ガーベラも学校があるからこのままという訳にはいかないのである。
ちなみにガーベラの方は、あまり時間の余裕がない。
「ほら、ガーベラ。早く起きないと遅刻してしまうよ。」
「あ〜い〜……、くー。」
アルフォンスの言葉に、ガーベラは眠ったままで、もそもそと食事を続ける。
「先に顔を洗っておいで。冷たい水で顔を洗えば目が覚めるよ。」
「ん〜〜〜〜〜。」
わかったのか、わかっていないのか、よくわからない返事をして、ナマケモノのようにゆっくりとした動作で、ガーベラは洗面所に顔を洗いに席を立った。
「………うわぁ!?つ、冷たっ!!え、何で私洗面所にいるの!?」
冷たい水でやっと目を覚ました彼女は、身に覚えのない状況に素っ頓狂な声を出して、驚き狼狽していた。
そんないつもと変わらないやり取りに幸せを感じながら、アルフォンスは冷めてしまったトーストを温め直し、ガーベラの驚く声に耳を傾けていた。
こうして、ガーベラの一日が始まるのであった。
ちなみに、
「セ、セトォーーー!!何で起こしてくれなかったのよー!!遅刻、完全に遅刻じゃないのぉー!!!」
「お嬢様、着替えはこちらです!それはお嬢様のネグリジェです!!!」
彼女たちの家の隣は、アヌビスことネフェルティータの家だったりする。
――――――――――――――――――
(画面の前のお友達も一緒に歌ってみよう)
『たゆん、たゆん♪』(ガーベラ、愛のテーマ)
たわわに実る二つの
果実が揺れるナイスバディ
憧れのあの人に抱き付いたとこで目が覚めた
劇場のヒロインとか
おとぎ話のお姫様
綺麗な心とかやさしさが売りだけど
心は目に見えないし
何故かみんな巨乳でナイスバディ
所詮第一印象がすべてだってことですね…
「でかけりゃ良いってものでもないんだよ」
ってマイア先輩、力説するけど
私先輩みたいなまな板、嫌なの♪
たゆん、たゆん♪
たゆん、たゆん♪
夢を乗せて揺らそう
目指せ『馬鹿ね、当ててるのよ』
ぷるん、ぷるん♪
ぷるん、ぷるん♪
育ち盛りのエブリデイ
あの人、大きいのが好きかしら?
君を誘惑しちゃうから
「おはよー♪」
セラエノ学園初等科2組、それが私のクラス。
人間の子供や色んな種類の子供の魔物がごちゃ混ぜにいるクラス。
何だか学園長の気分次第でコロコロとクラス替えされちゃうけど、それはそれで楽しいです。
あ、そうだ。
私はガーベラ。
お芝居大好き。
鶏肉大好き。
お姉ちゃん大好き。
天使様大好き。
それで剣士さん…、その…、ド、ドライグさんは…、も〜っと好きな12歳。
「おはよー!あ、それ新しいリボン♪」
「うん、お姉ちゃんが買ってくれたんだよ。」
この子は私の友達で、ホルスタウロスのアモン。
アモンのお姉さんは、学園のアスク先生。
私と同い年のはずなのに確実に自己主張している…、胸。
自分の成長しているはずの胸を押さえてみて、あまりのボリュームのなさに悲しくなる。
………ちょっとだけ、朝からアモンに嫉妬の炎がメラメラと。
「あれ?どうしたの、ガーベラ?」
「え、あ、ううん!何でもないよ。うん、ほんとに。」
アモンの頭の上に『?』マークが浮かんでいるのが見えるけど、うまく誤魔化せたみたい。
アモンは勉強の成績は良いんだけど、疑うことを知らないから、こういう時は助かるよ。
それにしても……、胸かぁ…。
アモンって体育の時間に走ってたら、ぶるんぶるんって上下左右に圧倒的な破壊力を撒き散らして、クラスの男子を前屈みにさせちゃうもんねぇ。
イチゴ先生曰く、『体操服×ブルマ×爆乳=破壊力』らしい。
今まではあまりよくわからなかったけど、最近始めたアルバイトとかアスク先生の保健体育の授業で、教えてもらったりして、理解しちゃったら案外簡単な話だった。
…男の子の、アレがおっきくなっているんだってさ。
それに、最近はお姉ちゃんがお仕事帰りにデートしてて、アルバイト先のお店でバッタリ会ったりするから、何となくわかっちゃった。
そういえば、お姉ちゃん。
今日、家を出る時にお洒落していたな…。
お姉ちゃんが砂漠で暮らしていた頃のすごく良い服で、色鮮やかで綺麗な『サリー』って言う服だっけ?
すっごく身体のラインが出る格好でお仕事に行ったけど、きっと今夜もデートだ。
「………うふ♪」
「あら、今度は楽しそう。何か良いことあったの?」
「うふふふ、もしかしたら近い内にお兄ちゃんが出来るかも♪」
「え、何それ!詳しく教えてよ。」
そんな朝の会話。
お互いに楽しかったこと。
嬉しかったことを話している内に朝の予鈴が鳴った。
『き〜んこ〜んか〜んこ〜ん♪みんなー、ちゃんと遅刻せずに来たかなー?アタシも遅刻せずにちゃんと来てるよー!実は寝てないんだよね。チャールズが朝までアタシのことを放してくれなくってさ〜♪一睡もしてないけど、今日も一日頑張ろうねー。』
『ルナ先生!朝っぱらから何を言っているんですかー!!!』
『ゲッ、寝坊わん娘め!もう来やがっt(ブチ)』
……毎朝、ルナ先生ってテンションが高いよね。
良いなぁ…、幸せそうで。
私もいつか………。
(大人になった自分を妄想中。)
「ガーベラ、綺麗になったな。」
「お久し振りです、ドライグさ…あ!だ、駄目ぇ…。こんなところで…。」
何も言わずに私を抱き締めるドライグさん。
背が伸びて、ぼゆんぼゆんに育った私を隙間がないくらいに強く。
「すまない。俺としたことが…、美しく成長したお前に我を忘れてしまった。」
「良いんです、私。ビックリしちゃいましたけど、ドライグさんにだったら…。」
「ガーベラ……。」
「やさしく……、してね?」
一つに重なっていく影。
そしてお互いに服を脱いで…………………。
キャー♪
駄目だー♪
これ以上は恥ずかしくて想像出来ないよー♪
「何だか、今日のガーベラって…、見てて面白いよね。」
ガラッ
「おーい、お前らー。予鈴が鳴ったの聞こえなかったかー?出席取るぞー。」
あ、あれ?
学園長先生だ。
うちの担任はどうしたんだろう。
「えー、お前らも不思議に思っているだろうから先に言っておくが、担任のイチゴは遅刻だ。馬鹿だから病気はしないが、どうも最近副業とエロゲが忙しくてなかなか現実世界に帰って来れないらしい。まぁ、どうせいつものように昼頃にノコノコ出勤してくるはずだから、姿を見たやつは誰でも良いから先生たちに言うように。」
本当にうちの学園って、クラス分けも適当なら教師も適当だよね。
よくイチゴ先生ってクビにならないよね。
オアシスにいた頃の教会の人たちとは大違いだよ。
「じゃあ出席取るぞー。アドルフ、スターリン、ムッソリーニ、ポルポト、カリギュラ、ネロ、イヴァン、ロベスピエール(以下略)。よーし、みんな来ているな。良い子には後で飴ちゃんをやろう。」
前から思ってたけど、うちのクラスってどうして独裁者っぽい名前が多いんだろう。
特に男子。
こうして朝のホームルームは過ぎていくのでした。
――――――――――――――――――
「では、次のページから……、ガーベラさん。」
「はい。えっと…。」
2時間目、国語。
朝の時間でもっとも気だるい時間帯。
最近、二束の草鞋に疲れたアスティアを見かねて、急遽綾乃が国語教師として就任した。
いつも勇ましい姿の彼女ではあったが、やはりアスティアと同じように子供が好きなのか、淡い水色の着物を着て、生徒たちの前に立つ。
そして、彼女の胸の前には……。
「あぶ〜。」
スリングに包まれて、抱っこされた赤ん坊。
ふっくらした頬っぺたの可愛い男の子だった。
「先生!読む前に物申す!!」
「はい、どうぞ。」
「何で唐突に赤ちゃんがいるんですか!?」
「何でも何も、この子は私とカズサ…っと、えーっと学園長先生の子供だからだよ。一緒に暮らすようになったんだから不思議な話じゃないはずだが?」
納得出来ない、と言いたげにガーベラもクラスメイトも首を振る。
「私、教頭先生のラジオは毎回欠かさず聞いているので、アヤノ先生が妊娠していることは知っていましたが…。生まれたとか、もうすぐ生まれそうっていうイベントをぶっ飛ばして、何でいきなり赤ちゃんが登場なんですか!!」
「ふむ、良い質問だ。大和…、じゃなくてジパングにはこういう古事がある。アニメ版ではなく、単行本版においてタラちゃんは何の前触れもなく3巻から突然出てきた。つまり、そういうことだ。」
原作版サ○エさんを例に出して、綾乃は説明を省く。
ギャグSSだから、そんなこともあると綾乃は言った。
「ちなみに、この子の名前は募集中だから。読者諸君、良い名前を送ってくれよ。」
「先生、誰に言っているんですか?」
「さて、誰にだろうね。さぁ、授業を中断する訳にはいかないよ。ガーベラさん、次のページから3ページ読んでください。」
「は〜い。ええっと……、良かったのかい、ホイホイ付いて来てしまって。俺は母親に似ているからって幼女だって構わず喰っちまうようなマザコン男なんだぜ。と源氏の宮は言いましたが、彼は若紫の姫を無理矢理攫って……。」
国語の授業で読まれているのは『新解釈・源氏物語』である。
ちなみに新解釈をして本にまとめたのは、学園一の問題教師であるイチゴ。
そしてガチホモな作品が大好きで、自分でも執筆している爆乳教師。
アスティアと綾乃、そしてマイアの共通の敵。
超ぼゆんぼゆん、ホルスタウロスのアスクである。
当然、無事な解釈などありえない。
「そうだ、源氏の宮。私のケツの中にションベンしろ。そう言うと若紫は、その言葉に驚く源氏の宮に鍛えられた逞しい尻を向けました。……以上です。」
「はい、ハキハキとした良い声でした。……うーむ、大和にいた時に真面目に読んだことがなかったのだが、源氏物語とはこんなにも荒々しくて肉々しい世界だったのか…。」
尚、アスクとイチゴの手にかかればどんな作品も肉々しい作品へと生まれ変わる。
例えば、『走れ、メロス』は一糸纏わぬ全裸の男が友を助けるという大義名分を盾に、国中をそのはちきれんばかりの荒々しい肉体を大衆に曝け出しながら見られ蔑まされているという快楽と共に、ギンギンにおっ勃てて駆け抜けるという変態物語に変わり、『伊豆の踊り子』は某オンラインゲーム、通称R○と呼ばれるゲームに存在するステージ、イズルードで踊り続けるダンサーというジョブの少女が主人公になり、恋あり冒険あり謎解きありの長編サスペンス作品へと生まれ変わるのである。
早い話が、新解釈という名を借りた名作への冒涜。
ちなみに作者も高校時代まで、そんな冒涜をやっていた。
自分の番が終わり、ガーベラはホッと一息吐く。
「ねぇねぇ、この源氏の宮って何か良いよね。」
ヒソヒソとアモンがガーベラに声をかけた。
ガーベラは、う〜んと唸る。
「でもやっぱり、同じマザコンでも私の彼氏の方がカッコ良いよ。」
ガーベラの中で、彼女の思い人であるウェールズ=ドライグは本人の了承なく彼氏になっている。
恋は盲目。
特に恋に恋するお年頃で悪意など欠片もないのであるから、尚性質が悪い。
「あー、例の年上の?でも何と言うか、その人もなかなか業が深い人だよね。マザコンでロリコンって、そんじょそこらじゃ見ないよね?」
「へっくしゅ。」
「うわ、唾が飛んできた!?何だ、風邪か?」
「すまん、クック。ふむ、昨夜は冷えたからな。」
「ほら、君たち。おしゃべりはしない…っと。何だ、もうこんな時間だったのか…。」
時計は11時58分。
後2分くらいでお昼休みが始まる。
(今日の給食は、学園長先生が作るカレーだって聞いてたから楽しみだなぁ♪)
そんなことを考えながら、ガーベラが窓の外を見ると、見知った人物が校庭を如何にもやる気なさそうに歩いているのが目に入った。
誰もが想像し得る人物、ガーベラのクラス担任、魔術特別講師ことバフォメットのイチゴである。
「先生、イチゴ先生が歩いてます!」
同じように窓際に座る男子生徒が手を挙げて、イチゴ出勤を綾乃に報告する。
それを聞いて綾乃は色々言いたそうに目を瞑って、コメカミを押さえる。
「………うん、ありがとう。最近、あの娘の素行の悪さも目に余ってきたからアヌビスとアスティアを交えて、軽く説教するか。時間もあれば、フレイヤ殿もお呼びした方が良いかもしれんな。」
アスティアと同じ魂を持つだけに、やたらと気苦労が多く、真面目な性格をしているせいか、綾乃はブツブツと独り言を呟いた。
『きーんこーんかーんこ…ゲホゲホ!?ゲホッゲホ……、ああ、ビックリした。唾が気管に入っちゃったよ。みんなー、お昼休みだよー。今日の給食は学園長が気合入れて作ったカレーライスだよー。ご飯が嫌いな人はナンもあるからねー。でもお米を残すと天罰喰らって目が潰れ(ぶち)。』
「おっと、終わってしまったね。では委員長、号令を。」
「きりーつ、れー。着陸。」
号令が終わるや否や、給食当番が教室から走り去った。
誰もがロウガの給食を楽しみにしているのである。
そしてガーベラもいそいそと鼻歌交じりで給食の準備をするのであった。
カレーのルーは2回おかわり。
最初はご飯で、次はナンに付けて食べようと予定を立てながら。
ジパングからやってきた職人が凝りに凝って作り上げた木造建築、俗に言う六畳二間の安アパートの一室に、この物語の主人公は血の繋がらない姉と呼ぶ人と仲良く暮らしている。
「む〜〜〜〜〜、うまうま…。」
「ガーベラ…、前々から思っていたけど君って器用だよね?」
ピンクのパジャマ姿で朝食を食べているのは12歳のリザードマン、ガーベラ。
そしてテーブルの対面で彼女のトーストにマーガリンを塗りながら、呆れつつ感心しているのは、彼女の保護者で義理の姉、アルフォンスである。
アルフォンスが器用だと言うのは、半分夢の中にいながらガーベラは目玉焼きを白身と黄身に分けて、塩と胡椒を適量ずつかけながら食べているということ。
その動きは起きているのではないかと思われるのだが、彼女は間違いなく寝ている。
うつらうつらと首が船を漕ぎ、完全に閉じた瞼、時々動きが止まったかと思うと、
「す〜〜。」
という安らかな寝息が聞こえてくる。
そんなガーベラをアルフォンスは困った笑いを浮かべながら眺めていた。
しかし、困ったと笑ってばかりもいられない。
アルフォンスはもう少ししたら自警団の仕事に出なければならないし、ガーベラも学校があるからこのままという訳にはいかないのである。
ちなみにガーベラの方は、あまり時間の余裕がない。
「ほら、ガーベラ。早く起きないと遅刻してしまうよ。」
「あ〜い〜……、くー。」
アルフォンスの言葉に、ガーベラは眠ったままで、もそもそと食事を続ける。
「先に顔を洗っておいで。冷たい水で顔を洗えば目が覚めるよ。」
「ん〜〜〜〜〜。」
わかったのか、わかっていないのか、よくわからない返事をして、ナマケモノのようにゆっくりとした動作で、ガーベラは洗面所に顔を洗いに席を立った。
「………うわぁ!?つ、冷たっ!!え、何で私洗面所にいるの!?」
冷たい水でやっと目を覚ました彼女は、身に覚えのない状況に素っ頓狂な声を出して、驚き狼狽していた。
そんないつもと変わらないやり取りに幸せを感じながら、アルフォンスは冷めてしまったトーストを温め直し、ガーベラの驚く声に耳を傾けていた。
こうして、ガーベラの一日が始まるのであった。
ちなみに、
「セ、セトォーーー!!何で起こしてくれなかったのよー!!遅刻、完全に遅刻じゃないのぉー!!!」
「お嬢様、着替えはこちらです!それはお嬢様のネグリジェです!!!」
彼女たちの家の隣は、アヌビスことネフェルティータの家だったりする。
――――――――――――――――――
(画面の前のお友達も一緒に歌ってみよう)
『たゆん、たゆん♪』(ガーベラ、愛のテーマ)
たわわに実る二つの
果実が揺れるナイスバディ
憧れのあの人に抱き付いたとこで目が覚めた
劇場のヒロインとか
おとぎ話のお姫様
綺麗な心とかやさしさが売りだけど
心は目に見えないし
何故かみんな巨乳でナイスバディ
所詮第一印象がすべてだってことですね…
「でかけりゃ良いってものでもないんだよ」
ってマイア先輩、力説するけど
私先輩みたいなまな板、嫌なの♪
たゆん、たゆん♪
たゆん、たゆん♪
夢を乗せて揺らそう
目指せ『馬鹿ね、当ててるのよ』
ぷるん、ぷるん♪
ぷるん、ぷるん♪
育ち盛りのエブリデイ
あの人、大きいのが好きかしら?
君を誘惑しちゃうから
「おはよー♪」
セラエノ学園初等科2組、それが私のクラス。
人間の子供や色んな種類の子供の魔物がごちゃ混ぜにいるクラス。
何だか学園長の気分次第でコロコロとクラス替えされちゃうけど、それはそれで楽しいです。
あ、そうだ。
私はガーベラ。
お芝居大好き。
鶏肉大好き。
お姉ちゃん大好き。
天使様大好き。
それで剣士さん…、その…、ド、ドライグさんは…、も〜っと好きな12歳。
「おはよー!あ、それ新しいリボン♪」
「うん、お姉ちゃんが買ってくれたんだよ。」
この子は私の友達で、ホルスタウロスのアモン。
アモンのお姉さんは、学園のアスク先生。
私と同い年のはずなのに確実に自己主張している…、胸。
自分の成長しているはずの胸を押さえてみて、あまりのボリュームのなさに悲しくなる。
………ちょっとだけ、朝からアモンに嫉妬の炎がメラメラと。
「あれ?どうしたの、ガーベラ?」
「え、あ、ううん!何でもないよ。うん、ほんとに。」
アモンの頭の上に『?』マークが浮かんでいるのが見えるけど、うまく誤魔化せたみたい。
アモンは勉強の成績は良いんだけど、疑うことを知らないから、こういう時は助かるよ。
それにしても……、胸かぁ…。
アモンって体育の時間に走ってたら、ぶるんぶるんって上下左右に圧倒的な破壊力を撒き散らして、クラスの男子を前屈みにさせちゃうもんねぇ。
イチゴ先生曰く、『体操服×ブルマ×爆乳=破壊力』らしい。
今まではあまりよくわからなかったけど、最近始めたアルバイトとかアスク先生の保健体育の授業で、教えてもらったりして、理解しちゃったら案外簡単な話だった。
…男の子の、アレがおっきくなっているんだってさ。
それに、最近はお姉ちゃんがお仕事帰りにデートしてて、アルバイト先のお店でバッタリ会ったりするから、何となくわかっちゃった。
そういえば、お姉ちゃん。
今日、家を出る時にお洒落していたな…。
お姉ちゃんが砂漠で暮らしていた頃のすごく良い服で、色鮮やかで綺麗な『サリー』って言う服だっけ?
すっごく身体のラインが出る格好でお仕事に行ったけど、きっと今夜もデートだ。
「………うふ♪」
「あら、今度は楽しそう。何か良いことあったの?」
「うふふふ、もしかしたら近い内にお兄ちゃんが出来るかも♪」
「え、何それ!詳しく教えてよ。」
そんな朝の会話。
お互いに楽しかったこと。
嬉しかったことを話している内に朝の予鈴が鳴った。
『き〜んこ〜んか〜んこ〜ん♪みんなー、ちゃんと遅刻せずに来たかなー?アタシも遅刻せずにちゃんと来てるよー!実は寝てないんだよね。チャールズが朝までアタシのことを放してくれなくってさ〜♪一睡もしてないけど、今日も一日頑張ろうねー。』
『ルナ先生!朝っぱらから何を言っているんですかー!!!』
『ゲッ、寝坊わん娘め!もう来やがっt(ブチ)』
……毎朝、ルナ先生ってテンションが高いよね。
良いなぁ…、幸せそうで。
私もいつか………。
(大人になった自分を妄想中。)
「ガーベラ、綺麗になったな。」
「お久し振りです、ドライグさ…あ!だ、駄目ぇ…。こんなところで…。」
何も言わずに私を抱き締めるドライグさん。
背が伸びて、ぼゆんぼゆんに育った私を隙間がないくらいに強く。
「すまない。俺としたことが…、美しく成長したお前に我を忘れてしまった。」
「良いんです、私。ビックリしちゃいましたけど、ドライグさんにだったら…。」
「ガーベラ……。」
「やさしく……、してね?」
一つに重なっていく影。
そしてお互いに服を脱いで…………………。
キャー♪
駄目だー♪
これ以上は恥ずかしくて想像出来ないよー♪
「何だか、今日のガーベラって…、見てて面白いよね。」
ガラッ
「おーい、お前らー。予鈴が鳴ったの聞こえなかったかー?出席取るぞー。」
あ、あれ?
学園長先生だ。
うちの担任はどうしたんだろう。
「えー、お前らも不思議に思っているだろうから先に言っておくが、担任のイチゴは遅刻だ。馬鹿だから病気はしないが、どうも最近副業とエロゲが忙しくてなかなか現実世界に帰って来れないらしい。まぁ、どうせいつものように昼頃にノコノコ出勤してくるはずだから、姿を見たやつは誰でも良いから先生たちに言うように。」
本当にうちの学園って、クラス分けも適当なら教師も適当だよね。
よくイチゴ先生ってクビにならないよね。
オアシスにいた頃の教会の人たちとは大違いだよ。
「じゃあ出席取るぞー。アドルフ、スターリン、ムッソリーニ、ポルポト、カリギュラ、ネロ、イヴァン、ロベスピエール(以下略)。よーし、みんな来ているな。良い子には後で飴ちゃんをやろう。」
前から思ってたけど、うちのクラスってどうして独裁者っぽい名前が多いんだろう。
特に男子。
こうして朝のホームルームは過ぎていくのでした。
――――――――――――――――――
「では、次のページから……、ガーベラさん。」
「はい。えっと…。」
2時間目、国語。
朝の時間でもっとも気だるい時間帯。
最近、二束の草鞋に疲れたアスティアを見かねて、急遽綾乃が国語教師として就任した。
いつも勇ましい姿の彼女ではあったが、やはりアスティアと同じように子供が好きなのか、淡い水色の着物を着て、生徒たちの前に立つ。
そして、彼女の胸の前には……。
「あぶ〜。」
スリングに包まれて、抱っこされた赤ん坊。
ふっくらした頬っぺたの可愛い男の子だった。
「先生!読む前に物申す!!」
「はい、どうぞ。」
「何で唐突に赤ちゃんがいるんですか!?」
「何でも何も、この子は私とカズサ…っと、えーっと学園長先生の子供だからだよ。一緒に暮らすようになったんだから不思議な話じゃないはずだが?」
納得出来ない、と言いたげにガーベラもクラスメイトも首を振る。
「私、教頭先生のラジオは毎回欠かさず聞いているので、アヤノ先生が妊娠していることは知っていましたが…。生まれたとか、もうすぐ生まれそうっていうイベントをぶっ飛ばして、何でいきなり赤ちゃんが登場なんですか!!」
「ふむ、良い質問だ。大和…、じゃなくてジパングにはこういう古事がある。アニメ版ではなく、単行本版においてタラちゃんは何の前触れもなく3巻から突然出てきた。つまり、そういうことだ。」
原作版サ○エさんを例に出して、綾乃は説明を省く。
ギャグSSだから、そんなこともあると綾乃は言った。
「ちなみに、この子の名前は募集中だから。読者諸君、良い名前を送ってくれよ。」
「先生、誰に言っているんですか?」
「さて、誰にだろうね。さぁ、授業を中断する訳にはいかないよ。ガーベラさん、次のページから3ページ読んでください。」
「は〜い。ええっと……、良かったのかい、ホイホイ付いて来てしまって。俺は母親に似ているからって幼女だって構わず喰っちまうようなマザコン男なんだぜ。と源氏の宮は言いましたが、彼は若紫の姫を無理矢理攫って……。」
国語の授業で読まれているのは『新解釈・源氏物語』である。
ちなみに新解釈をして本にまとめたのは、学園一の問題教師であるイチゴ。
そしてガチホモな作品が大好きで、自分でも執筆している爆乳教師。
アスティアと綾乃、そしてマイアの共通の敵。
超ぼゆんぼゆん、ホルスタウロスのアスクである。
当然、無事な解釈などありえない。
「そうだ、源氏の宮。私のケツの中にションベンしろ。そう言うと若紫は、その言葉に驚く源氏の宮に鍛えられた逞しい尻を向けました。……以上です。」
「はい、ハキハキとした良い声でした。……うーむ、大和にいた時に真面目に読んだことがなかったのだが、源氏物語とはこんなにも荒々しくて肉々しい世界だったのか…。」
尚、アスクとイチゴの手にかかればどんな作品も肉々しい作品へと生まれ変わる。
例えば、『走れ、メロス』は一糸纏わぬ全裸の男が友を助けるという大義名分を盾に、国中をそのはちきれんばかりの荒々しい肉体を大衆に曝け出しながら見られ蔑まされているという快楽と共に、ギンギンにおっ勃てて駆け抜けるという変態物語に変わり、『伊豆の踊り子』は某オンラインゲーム、通称R○と呼ばれるゲームに存在するステージ、イズルードで踊り続けるダンサーというジョブの少女が主人公になり、恋あり冒険あり謎解きありの長編サスペンス作品へと生まれ変わるのである。
早い話が、新解釈という名を借りた名作への冒涜。
ちなみに作者も高校時代まで、そんな冒涜をやっていた。
自分の番が終わり、ガーベラはホッと一息吐く。
「ねぇねぇ、この源氏の宮って何か良いよね。」
ヒソヒソとアモンがガーベラに声をかけた。
ガーベラは、う〜んと唸る。
「でもやっぱり、同じマザコンでも私の彼氏の方がカッコ良いよ。」
ガーベラの中で、彼女の思い人であるウェールズ=ドライグは本人の了承なく彼氏になっている。
恋は盲目。
特に恋に恋するお年頃で悪意など欠片もないのであるから、尚性質が悪い。
「あー、例の年上の?でも何と言うか、その人もなかなか業が深い人だよね。マザコンでロリコンって、そんじょそこらじゃ見ないよね?」
「へっくしゅ。」
「うわ、唾が飛んできた!?何だ、風邪か?」
「すまん、クック。ふむ、昨夜は冷えたからな。」
「ほら、君たち。おしゃべりはしない…っと。何だ、もうこんな時間だったのか…。」
時計は11時58分。
後2分くらいでお昼休みが始まる。
(今日の給食は、学園長先生が作るカレーだって聞いてたから楽しみだなぁ♪)
そんなことを考えながら、ガーベラが窓の外を見ると、見知った人物が校庭を如何にもやる気なさそうに歩いているのが目に入った。
誰もが想像し得る人物、ガーベラのクラス担任、魔術特別講師ことバフォメットのイチゴである。
「先生、イチゴ先生が歩いてます!」
同じように窓際に座る男子生徒が手を挙げて、イチゴ出勤を綾乃に報告する。
それを聞いて綾乃は色々言いたそうに目を瞑って、コメカミを押さえる。
「………うん、ありがとう。最近、あの娘の素行の悪さも目に余ってきたからアヌビスとアスティアを交えて、軽く説教するか。時間もあれば、フレイヤ殿もお呼びした方が良いかもしれんな。」
アスティアと同じ魂を持つだけに、やたらと気苦労が多く、真面目な性格をしているせいか、綾乃はブツブツと独り言を呟いた。
『きーんこーんかーんこ…ゲホゲホ!?ゲホッゲホ……、ああ、ビックリした。唾が気管に入っちゃったよ。みんなー、お昼休みだよー。今日の給食は学園長が気合入れて作ったカレーライスだよー。ご飯が嫌いな人はナンもあるからねー。でもお米を残すと天罰喰らって目が潰れ(ぶち)。』
「おっと、終わってしまったね。では委員長、号令を。」
「きりーつ、れー。着陸。」
号令が終わるや否や、給食当番が教室から走り去った。
誰もがロウガの給食を楽しみにしているのである。
そしてガーベラもいそいそと鼻歌交じりで給食の準備をするのであった。
カレーのルーは2回おかわり。
最初はご飯で、次はナンに付けて食べようと予定を立てながら。
11/03/17 00:05更新 / 宿利京祐
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