魔物娘といっしょ！ ハロウィン編！
魔女ちゃん達がお家に来た場合 その1
「トリック・オア・トリート！ おにーさん、こんばんは！」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃいますよ、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
「はい♪ このバスケットにお菓子を入れてくださいね♪」ﾜﾗﾜﾗ
わぁ、皆おっきいバスケットだね。あはは、用意したお菓子で足りるか心配になっちゃうなぁ。
バニップちゃんのお家に行った場合
「ぁ……こ、こんばん……は……は、はろうぃん……？」
「どうしよ……おかし……なくて……！えっと……いた、いたずら……！ いたずらされちゃっ……！」ｱﾜｱﾜ
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ！！」ｶﾞﾊﾞｧｯ!
いやイタズラたってもそんな猥褻な行為に及ぶつもりは――きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ！ 誰か助けてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ！！
おおなめくじちゃんがお家に来た場合
「とりっくぅ〜・おあぁ〜・とり〜とぉ〜、ですぅ〜」
「いつもはぁ〜、あんまりぃ〜、おうちにぃ〜、まわれませんからぁ〜」
「ことしはぁ〜、このばすけっとをぉ〜、いっぱいにするのがぁ〜、もくひょうなんですぅ〜」
あははっ。それじゃあここでいっぱいにしてあげるから急がなくて大丈夫だよ。
マンティコアさんのお家に行った場合
「へぇ……アタシの家に来るなんて良い度胸してるね、アンタ」
「まあ待ちなって。お菓子だったらちゃーんと用意してあるよ」
「ほぉら、この尻尾の中に手を入れてお菓子を取るか……アタシに悪戯されるか、どっちが良い？ くくくくくっ♪」
こ、この尻尾噛まない？ 噛みませんよね？ 大丈夫ですよねぇ！？ ねぇっ！？
レッドキャップちゃんがお家に来た場合
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ！！」ｶﾞﾝｶﾞﾝ
「トリック・オア・トリート！ トリック・オア・トリートだ、このドアを開けろっ！」ｶﾞﾝｶﾞﾝ
「扉を開けないならこじ開けるぞっ！ 犯してやるっ！ 犯してやるからな、アハハハハハハハハハハハハハッ！！」ｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝ
ひいいいいぃぃぃぃぃぃ！？ ちょっとこの娘ガチホラー過ぎない！？ 誰かぁっ、ヘルプミイイイイイィィィィィッ！！
サイクロプスさんのお家に行った場合
「あ……いらっしゃい。今年も準備してあるよ……」
「はい、特製バスケット……軽くて丈夫で沢山入るように作ってある」
「……帰りにまた、寄ってきてくれるの？ うん、ありがと……」
毎年ありがとうございます。後で貰ったお菓子で一緒にお茶しましょうね。
ティターニアさんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリートです。うふふ、この娘達にお菓子をくださいな」
「えっ、私の分も？ まぁ、ありがとうございます！ それじゃあ早速頂いちゃおうかしら……」
「うーん、このチョコ甘くて美味しい♪ あっ、コラっ！ それは私が貰った分だから取っちゃダメよぉ！」
妖精ちゃん達の引率ご苦労様です。あ、お菓子はまだまだあるからケンカはダメですよー。
グリフォンさんのお家に行った場合
「フン、騒ぎに乗じて宝を狙いに来た卑しい盗掘者め！ 宝は渡さん、覚悟しろ――」
「え？ 自分はただお菓子を貰いに来ただけだって？ そ、そうか……そうなのか……」ｼｮﾎﾞﾝ
「……お菓子よりお宝の方が良いぞぉ。売ればお菓子だって食べ放題になるぞぉ。ほぉら、欲しくなって来ないかぁ？」ｼﾞｰｯ
あー、そう言われれば欲しくなって来たようなー。そんな気がしてきちゃったなー。
アークインプちゃんがお家に来た場合
「えへへぇ……こんばんは、おにーさん♪」
「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうけど……わたし、どっちも欲しいんだぁ」
「ねぇねぇ、おにーさーん♪ お菓子とイタズラ、両方とも良いよねぇ？ ねぇねぇ♪」
もちろんだよさぁ家の中においでお菓子もあるしベッドもすぐに綺麗にするから（お目目ﾊｰﾄﾏｰｸ
ダークメイジさんのお家に行った場合
「あ……いらっしゃい、ボク……」
「ゴメンね、ハロウィンだから張り切ってお菓子の家を用意してたんだけど……」
「通りすがりのデビルバグちゃん達が全部食べちゃって……家、残ってなくて……ひっく、ぐすっ」ｼｸｼｸ
わわっ、お、落ち込まないでください！ 良かったらボクのお家に来ませんか、ほらっ！
魔女ちゃん達がお家に来た場合 その2
「わぁい、こんなに貰っちゃったぁ♪ おにーさん、ありがとー♪」ﾜﾗﾜﾗ
「えへへ、おにーさん♪ まだまだサバトの皆が来ますからねー♪」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子をくれなきゃ……イタズラですからね、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
あはは、こ、これお菓子足りないんじゃないかなぁ。ちょっとマズイかな、あは、あはははは……。
フロウケルプちゃんのお家に行った場合
「いらっしゃい……お菓子なら用意してあるけど……」
「……ねえ、あなたは昆布飴は好き？ 苦手だって子が多くて、私の家にはあんまり人が来てくれなくて……」
「好きなの？ そう、良かったぁ……」ﾊﾟｧｧ
渋い味なんだけど、俺は昔から好きなんだよなぁ……わ、こんなに沢山ありがとうございます。
ワイトさんがお家に来た場合
「とりっく・おあ・とり〜とぉ……すてきな夜ですわね、あなたさまぁ……」
「げんきがないですかぁ……？ もう300年も恋人ができずにアメだけもらっていればこうもなりますのよぉ……」
「……え、悪戯をして良いって、それって……？ えっ、はわっ、あ、なっ！？ わ、私ったらなんて恥ずかしいところをお見せしてしまってっ！ はわわわわわわわわわわっ！」ｱﾜｱﾜ
クスッ……慌てて大丈夫ですよ。そういう親しみやすさに俺は惚れちゃったんですから。
刑部狸ちゃんのお家の兄妹の場合
「おー、お兄ちゃん。なんや、今年は随分けったいな格好しとるなぁ。え、何で怒ってないのかって？」ﾆｺﾆｺ
「確かにお兄ちゃんには去年、ジンギスカンキャラメルなんてもん掴まされたけど……ウチは全然怒ってへんよ？」ﾆｺﾆｺ
「はい、ほんならアメちゃんをどうぞ！ 海外の珍しいアメちゃんでな、サルミアッキ言うねん♪」ﾆｺﾆｺ
おお、なんか去年に悪戯したのが申し訳なくなるな……どれどれ、いっただきまーす――
ドーマウスちゃんがお家に来た場合
「とりっく・おあ・とりーとぉ……おかしをくれないとイタズラしちゃうのぉ……」
「ふみゅぅ……？ このかそうしてると、たくさんおかしがもらえるってきいたのぉ……」
「えっとぉ、せりふはぁ……『ははっ。やぁ、ぼくミッｋ――』」
お菓子ならいくらでもあげるから止めてその台詞はディズられるからお願い。
鰻女郎さんのお家に行った場合
「あら……こんばんは、お隣くん♪ お菓子を貰いに来てくれたんですね♪」
「もしかしてお隣くん、悪戯を期待してましたか……？ うふふっ、顔が真っ赤になってますよ？」
「さ、今日のために用意した鰻パイ……どうぞ手を伸ばして取ってくださいな♪」
いや、その、そんな胸の谷間の奥深くに挟まれてると……て、手が伸ばせないっていうか……。
エンジェルちゃんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリートです！ ダークエンジェルちゃんがお菓子を貰いに来ましたよ！」ﾄﾞﾔｧ
「え、仮装しててもエンジェルちゃんにしか見えないですって？ やっぱり可愛いエンジェルちゃんのオーラは隠せないんですねぇ」ﾄﾞﾔｧ
「あぁ！ こんなに可愛いエンジェルちゃんにお菓子をあげられるだなんて、あなたはなんて幸せなんでしょう！」ﾄﾞﾔｱｧ
お菓子だったらあげますから早く次の家に行ってください（真顔
リッチちゃんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリート。悪戯しに来た……うん、確かにお菓子ならあるみたいだね」
「でも、ワン・ツー・スリー……はい、お菓子が無くなっちゃいました。残念だったなぁ、トリックだよ」
「さ、私の家にお持ち帰り。悪戯したいこと、いっぱいあるの。楽しみ、わくわく」ｽﾞﾙｽﾞﾙ
ちょっと、魔術でお菓子を消すのはズルっこじゃないの！？ だあああああああぁぁぁぁぁぁぁ！――
メドゥーサちゃんのお家に行った場合
「はぁ……アンタ、また今年もそんなヘンテコな格好して来たの？」
「いつも付き合わせられる私の身にもなって――だっ、誰が悪戯なんてするもんですか！ 何言ってんのよおバカ！」
「もうっ、さっさと中に入りなさいよ！ ちゃんとアンタの好きなパンプキンパイ、作ってあるんだからっ！」
だってお前の作ってくれるパイ、メッチャ美味いからさー。毎年の楽しみなんだよなー。
魔女ちゃん達がお家に来た場合 その3
「トリック・オア・トリート――あれぇ、お菓子はもう無くなっちゃったんですかぁ？」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子が無いなら……イタズラされても仕方ないですよねぇ、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
「「「「「「「「「「 か っ か れ ー ！ 」」」」」」」」」」」ﾜｱｱｱｱｱｱｧｧｧｧｧｧ!!
ひっ！？ いやっ、いやああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！
おまけ 稲荷ちゃんのお家の兄妹の場合
我が家には妖怪『カボチャ被り』が住んでいる。
カボチャ被りは年に一回、ハロウィンの日になると意気揚々と出現し。
その名の通りカボチャの被り物をして、俺に卑猥な悪戯をしようと迫り来る、あしらうのに手間のかかる妖怪だ。
しかも、ほぼ毎年。
毎年毎年、飽きもせず、カボチャの被り物を用意してくる。
そのため俺はヤツの悪戯を阻止すべく、毎年溢れんばかりの大量のお菓子を準備しておくのだが――
「おい、カボチャ被り。その手を離せ」
「やぁです、お兄様」
「いいから離せ」
「やぁです」
「離せって言ってるだろ」
「やぁです、ウチは絶対にやぁですぅ……」
俺の視線の先で、パンプキンヘッドを抱えながらイヤイヤをする、狐耳と尻尾の生えた美女。
これがカボチャ被り――別名『俺の妹の稲荷』だ。
カボチャ被りはこんな風に、俺がヤツの間抜けた仮装を止めさせようとすると、頑なに抵抗をするのである。
更に性質が悪いことに、いつも泣きそうな顔で。
それからしばらくイヤイヤをすると、カボチャ被りは決まって次の行動に移る。
目に涙を溜めながら、もう一つのパンプキンヘッドを取り出すと、それを高々と掲げ。
ちょうど人の頭が一つ入りそうな、穴の部分を指差すと。
その空間を、チョイチョイ。
チョイチョイ、チョイチョイと、指でさす。
「……それは何の真似だ？」
「こっち、です。お兄様は、こっち、です」
これはカボチャ被り、第二の習性だ。
カボチャ被りは自分が被りものをするだけでは飽き足らず、俺にもそのカボチャを被るようにとねだってくるのである。
要するに、俺に悪戯もしたければ逆に俺に悪戯もされたいということらしい。
……行動が幼児から、変なところで変わったような、変わってないような。
「お前、最近は少し大人になってきてなかったっけ？」
「だって……ウチはちゃんと大人になって、お兄様のお嫁さんになるんですから……」
確かに、妹はこの頃、精神的にも大人に近づいてき始めていた。
寝るのも、風呂も、食事も、ありとあらゆることを俺と一緒じゃないとイヤだと駄々をこねていたのが影を潜め始め。
俺とイチャつきたがるのは変わりないが、それでも泣きじゃくって俺を困らせるようなことも少なくなり。
これが兄離れってものなのかなぁと、なんだか嬉しいような寂しいような気持ちになっていたのだけれど。
……でもやっぱり、こいつはまだまだ子供なようである。
「そろそろハロウィンも卒業しても良いんじゃないか？」
「やぁです……ウチはお兄様に悪戯をしてもらうんですぅ……」
過去、確かに俺たちはこの日が大好きであった。
そりゃもう、仮装して人の家に行くだけでお菓子が貰い放題な訳である。子供は喜ぶ。
ところがしかし、段々とカボチャ被りは大きくなるにつれて、お菓子よりも悪戯の方を求め始め。
口の中に飴玉を入れて『お兄様、どうぞ♪』なんて唇を突き出し、後頭部に空手チョップを食らって飴を吐き出すようになったのは、中学生の始めだったろうか。
「……お前の言うことは分かった」
「お兄様……っ！」
「ほら、お菓子だったらいくらだってくれてやる。たーんと食うが良い」
「――っ！？」
「全部お前が食べても良いぞ。あ、でもたけのこの里は残してくれると嬉しい」
明るくなりかけた表情が一転、絶望に叩き落されるカボチャ被り。
「そういう事で。さぁ、どれから開けるんだ？」
「ぁ……ぁ……」
手を振って、俺がお菓子の包みへと手を伸ばしかけると。
遂にカボチャ被りの行動は第三段階へと移る。
……これが今までは、非っ常に厄介だったのだが。
「うぅ……お兄様はつれないですぅ……少しはウチにえっちな悪戯をしてくれても……」
「俺の鉄の意志と鋼の強さはまだまだ折れることはないのだ」
およよ、と涙目のままでいるけれど、俺と一緒にお菓子の封を開け始めるカボチャ被り。
これが昨年までだったら、パンプキンヘッドを抱きしめ、そこに頭を突っ込みながらうずくまり。
シクシクシクシク、今度は本当に泣き出していたのである。
身体を小さく震わせ、尻尾がパタン、パタンと哀しそうに床を叩き。
嗚咽を漏らして、俺のことを呼び続けていたのだが。
遂に妹はそれを堪えて、ちゃんと我慢ができるようになったのである。
……こういう所を見ると、妹は本当に大人に変わりつつあるんだなと実感をする。
それは……こうやって我慢をさせていると俺の方も、可哀相というか、罪悪感というか、そんな感情が湧いて来てしまうのだけれど。
だけどまあ、まさか子供ができた時に、その目の前で跪いて泣くような姿を見せたくはないわけで。
そういう羞恥心を取っ払うと、親父とお袋のような埒外色ボケ夫婦になってしまうのである。それだけは避けたい、何としても。
「……まあでも、俺も一安心だな」
「……？ お兄様？」
俺はカボチャ被りの横に置いてあったパンプキンヘッドを取り上げると、その中に頭を通して、すっぽりとカボチャ顔に変身し。
「ほれ、トリック・オア・トリートだ。お菓子をよこさなきゃ悪戯をしちゃるぞ」
「……っ！ はいっ、お兄様っ！」
妹は花の咲くような笑顔になると、広げてあったお菓子をいそいそと尻尾の後ろに片付け始める。
……我ながら甘いとは思うのだけれど、もうこの程度のことなら大丈夫なんだろう。
「さぁ、お菓子をよこすかよこさないか、どうなんだ？」
「やぁです、お菓子をあげるのはやぁですぅ」
「それなら悪戯をされても良いってことだな？」
「はい、お兄様♪ たっぷりウチに悪戯をしてくださいな♪」
「よーし、それじゃこっちに来い！ たっぷりその尻尾をモフってやるからな！」
「きゃあ、お兄様ったらぁ♪」
カボチャ被りの身体を引き寄せて、背後から抱きしめて、あぐらをかいた俺の膝の上に乗せる。
カボチャ被りはそれに満足したように、俺の腕の中に収まりながら、カボチャからはみ出た耳をピコピコさせて。
その様子に思わず俺も顔が綻んでしまって。
「はぁ、ようやく甘えん坊がマシになってきたなぁ、もう」
「ふふっ……お兄様は逆に、ウチに甘えてくださるようになって来ましたね？」
「お前が良い女になってきたのが悪い。俺は基本的には親父と同類のダメ男なのだ、認めたくはないが」
「あら、お父様だって立派な方ですよ？ お母様が絡まなければですけれど」
「いっつも親父とお袋は絡んでるだろ、性的な意味で」
「素敵なことじゃありませんか……夫婦なんですもの、それが一番です」
「まあ、そうかもだが……保護者面談の時に、俺と先生の眼前で絡みだしたのは未だに恨んでるぞ。トラウマになるわ、あんなの」
「……お兄様、あの時は本当の本当に激怒されてましたものね」
「あったりまえだ。発情した先生はデキてた同級生に絡みに行くし、何故かどいつもこいつも『素晴らしい両親ですね』って俺に笑顔を向けやがるし」
とりとめのない話をしながら、俺はヤツを胸に抱いたまま、その温もりを感じ続ける。
こうして今年もまた、カボチャ被りはパンプキンヘッドを持ち出して。
だけど今年は、カボチャ被りに俺から悪戯をすることになり。
そして、最後に。
カボチャ被りの口から、出てきた言葉。
「お兄様……」
「……なんだ？」
「……愛してます、お兄様」
俺からの返事は無しに、ただ黙ってヤツの顔を引き寄せて、唇を重ね合わせ――
「むっ」
「あっ」
――ようとしたところで、ゴツンと。
お互いの頭にある巨大なカボチャの被り物が、キスを邪魔することに気付き。
二人で顔を見合わせて笑いながら、それを取り外して。
今度こそと、唇同士を触れさせあう。
……まったく、本っ当に。
カボチャ被りという妖怪は。
厄介で、甘えん坊で、どうしようもない泣き虫だったけれど。
いつまでも手に負えない、困った妖怪だなと思ってたのに。
こうやって、俺のことを夢中にさせるような、素敵な女性に成長してきたなと。
俺は温かな気持ちになるのであった、
おしま――
――ｷﾞｬｱｱｱｱｱｱｱｧｧｧｧｧｧｯ!! ﾀｲﾔﾉｱｼﾞｶﾞｽﾙｳｳｳｳｩｩｩｩｩｩｩｯ!!
「？」
「？」
おしまい♪
「トリック・オア・トリート！ おにーさん、こんばんは！」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃいますよ、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
「はい♪ このバスケットにお菓子を入れてくださいね♪」ﾜﾗﾜﾗ
わぁ、皆おっきいバスケットだね。あはは、用意したお菓子で足りるか心配になっちゃうなぁ。
バニップちゃんのお家に行った場合
「ぁ……こ、こんばん……は……は、はろうぃん……？」
「どうしよ……おかし……なくて……！えっと……いた、いたずら……！ いたずらされちゃっ……！」ｱﾜｱﾜ
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ！！」ｶﾞﾊﾞｧｯ!
いやイタズラたってもそんな猥褻な行為に及ぶつもりは――きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ！ 誰か助けてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ！！
おおなめくじちゃんがお家に来た場合
「とりっくぅ〜・おあぁ〜・とり〜とぉ〜、ですぅ〜」
「いつもはぁ〜、あんまりぃ〜、おうちにぃ〜、まわれませんからぁ〜」
「ことしはぁ〜、このばすけっとをぉ〜、いっぱいにするのがぁ〜、もくひょうなんですぅ〜」
あははっ。それじゃあここでいっぱいにしてあげるから急がなくて大丈夫だよ。
マンティコアさんのお家に行った場合
「へぇ……アタシの家に来るなんて良い度胸してるね、アンタ」
「まあ待ちなって。お菓子だったらちゃーんと用意してあるよ」
「ほぉら、この尻尾の中に手を入れてお菓子を取るか……アタシに悪戯されるか、どっちが良い？ くくくくくっ♪」
こ、この尻尾噛まない？ 噛みませんよね？ 大丈夫ですよねぇ！？ ねぇっ！？
レッドキャップちゃんがお家に来た場合
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ！！」ｶﾞﾝｶﾞﾝ
「トリック・オア・トリート！ トリック・オア・トリートだ、このドアを開けろっ！」ｶﾞﾝｶﾞﾝ
「扉を開けないならこじ開けるぞっ！ 犯してやるっ！ 犯してやるからな、アハハハハハハハハハハハハハッ！！」ｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝｶﾞﾝ
ひいいいいぃぃぃぃぃぃ！？ ちょっとこの娘ガチホラー過ぎない！？ 誰かぁっ、ヘルプミイイイイイィィィィィッ！！
サイクロプスさんのお家に行った場合
「あ……いらっしゃい。今年も準備してあるよ……」
「はい、特製バスケット……軽くて丈夫で沢山入るように作ってある」
「……帰りにまた、寄ってきてくれるの？ うん、ありがと……」
毎年ありがとうございます。後で貰ったお菓子で一緒にお茶しましょうね。
ティターニアさんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリートです。うふふ、この娘達にお菓子をくださいな」
「えっ、私の分も？ まぁ、ありがとうございます！ それじゃあ早速頂いちゃおうかしら……」
「うーん、このチョコ甘くて美味しい♪ あっ、コラっ！ それは私が貰った分だから取っちゃダメよぉ！」
妖精ちゃん達の引率ご苦労様です。あ、お菓子はまだまだあるからケンカはダメですよー。
グリフォンさんのお家に行った場合
「フン、騒ぎに乗じて宝を狙いに来た卑しい盗掘者め！ 宝は渡さん、覚悟しろ――」
「え？ 自分はただお菓子を貰いに来ただけだって？ そ、そうか……そうなのか……」ｼｮﾎﾞﾝ
「……お菓子よりお宝の方が良いぞぉ。売ればお菓子だって食べ放題になるぞぉ。ほぉら、欲しくなって来ないかぁ？」ｼﾞｰｯ
あー、そう言われれば欲しくなって来たようなー。そんな気がしてきちゃったなー。
アークインプちゃんがお家に来た場合
「えへへぇ……こんばんは、おにーさん♪」
「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうけど……わたし、どっちも欲しいんだぁ」
「ねぇねぇ、おにーさーん♪ お菓子とイタズラ、両方とも良いよねぇ？ ねぇねぇ♪」
もちろんだよさぁ家の中においでお菓子もあるしベッドもすぐに綺麗にするから（お目目ﾊｰﾄﾏｰｸ
ダークメイジさんのお家に行った場合
「あ……いらっしゃい、ボク……」
「ゴメンね、ハロウィンだから張り切ってお菓子の家を用意してたんだけど……」
「通りすがりのデビルバグちゃん達が全部食べちゃって……家、残ってなくて……ひっく、ぐすっ」ｼｸｼｸ
わわっ、お、落ち込まないでください！ 良かったらボクのお家に来ませんか、ほらっ！
魔女ちゃん達がお家に来た場合 その2
「わぁい、こんなに貰っちゃったぁ♪ おにーさん、ありがとー♪」ﾜﾗﾜﾗ
「えへへ、おにーさん♪ まだまだサバトの皆が来ますからねー♪」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子をくれなきゃ……イタズラですからね、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
あはは、こ、これお菓子足りないんじゃないかなぁ。ちょっとマズイかな、あは、あはははは……。
フロウケルプちゃんのお家に行った場合
「いらっしゃい……お菓子なら用意してあるけど……」
「……ねえ、あなたは昆布飴は好き？ 苦手だって子が多くて、私の家にはあんまり人が来てくれなくて……」
「好きなの？ そう、良かったぁ……」ﾊﾟｧｧ
渋い味なんだけど、俺は昔から好きなんだよなぁ……わ、こんなに沢山ありがとうございます。
ワイトさんがお家に来た場合
「とりっく・おあ・とり〜とぉ……すてきな夜ですわね、あなたさまぁ……」
「げんきがないですかぁ……？ もう300年も恋人ができずにアメだけもらっていればこうもなりますのよぉ……」
「……え、悪戯をして良いって、それって……？ えっ、はわっ、あ、なっ！？ わ、私ったらなんて恥ずかしいところをお見せしてしまってっ！ はわわわわわわわわわわっ！」ｱﾜｱﾜ
クスッ……慌てて大丈夫ですよ。そういう親しみやすさに俺は惚れちゃったんですから。
刑部狸ちゃんのお家の兄妹の場合
「おー、お兄ちゃん。なんや、今年は随分けったいな格好しとるなぁ。え、何で怒ってないのかって？」ﾆｺﾆｺ
「確かにお兄ちゃんには去年、ジンギスカンキャラメルなんてもん掴まされたけど……ウチは全然怒ってへんよ？」ﾆｺﾆｺ
「はい、ほんならアメちゃんをどうぞ！ 海外の珍しいアメちゃんでな、サルミアッキ言うねん♪」ﾆｺﾆｺ
おお、なんか去年に悪戯したのが申し訳なくなるな……どれどれ、いっただきまーす――
ドーマウスちゃんがお家に来た場合
「とりっく・おあ・とりーとぉ……おかしをくれないとイタズラしちゃうのぉ……」
「ふみゅぅ……？ このかそうしてると、たくさんおかしがもらえるってきいたのぉ……」
「えっとぉ、せりふはぁ……『ははっ。やぁ、ぼくミッｋ――』」
お菓子ならいくらでもあげるから止めてその台詞はディズられるからお願い。
鰻女郎さんのお家に行った場合
「あら……こんばんは、お隣くん♪ お菓子を貰いに来てくれたんですね♪」
「もしかしてお隣くん、悪戯を期待してましたか……？ うふふっ、顔が真っ赤になってますよ？」
「さ、今日のために用意した鰻パイ……どうぞ手を伸ばして取ってくださいな♪」
いや、その、そんな胸の谷間の奥深くに挟まれてると……て、手が伸ばせないっていうか……。
エンジェルちゃんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリートです！ ダークエンジェルちゃんがお菓子を貰いに来ましたよ！」ﾄﾞﾔｧ
「え、仮装しててもエンジェルちゃんにしか見えないですって？ やっぱり可愛いエンジェルちゃんのオーラは隠せないんですねぇ」ﾄﾞﾔｧ
「あぁ！ こんなに可愛いエンジェルちゃんにお菓子をあげられるだなんて、あなたはなんて幸せなんでしょう！」ﾄﾞﾔｱｧ
お菓子だったらあげますから早く次の家に行ってください（真顔
リッチちゃんがお家に来た場合
「トリック・オア・トリート。悪戯しに来た……うん、確かにお菓子ならあるみたいだね」
「でも、ワン・ツー・スリー……はい、お菓子が無くなっちゃいました。残念だったなぁ、トリックだよ」
「さ、私の家にお持ち帰り。悪戯したいこと、いっぱいあるの。楽しみ、わくわく」ｽﾞﾙｽﾞﾙ
ちょっと、魔術でお菓子を消すのはズルっこじゃないの！？ だあああああああぁぁぁぁぁぁぁ！――
メドゥーサちゃんのお家に行った場合
「はぁ……アンタ、また今年もそんなヘンテコな格好して来たの？」
「いつも付き合わせられる私の身にもなって――だっ、誰が悪戯なんてするもんですか！ 何言ってんのよおバカ！」
「もうっ、さっさと中に入りなさいよ！ ちゃんとアンタの好きなパンプキンパイ、作ってあるんだからっ！」
だってお前の作ってくれるパイ、メッチャ美味いからさー。毎年の楽しみなんだよなー。
魔女ちゃん達がお家に来た場合 その3
「トリック・オア・トリート――あれぇ、お菓子はもう無くなっちゃったんですかぁ？」ﾜﾗﾜﾗ
「お菓子が無いなら……イタズラされても仕方ないですよねぇ、おにーさん♪」ﾜﾗﾜﾗ
「「「「「「「「「「 か っ か れ ー ！ 」」」」」」」」」」」ﾜｱｱｱｱｱｱｧｧｧｧｧｧ!!
ひっ！？ いやっ、いやああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！
おまけ 稲荷ちゃんのお家の兄妹の場合
我が家には妖怪『カボチャ被り』が住んでいる。
カボチャ被りは年に一回、ハロウィンの日になると意気揚々と出現し。
その名の通りカボチャの被り物をして、俺に卑猥な悪戯をしようと迫り来る、あしらうのに手間のかかる妖怪だ。
しかも、ほぼ毎年。
毎年毎年、飽きもせず、カボチャの被り物を用意してくる。
そのため俺はヤツの悪戯を阻止すべく、毎年溢れんばかりの大量のお菓子を準備しておくのだが――
「おい、カボチャ被り。その手を離せ」
「やぁです、お兄様」
「いいから離せ」
「やぁです」
「離せって言ってるだろ」
「やぁです、ウチは絶対にやぁですぅ……」
俺の視線の先で、パンプキンヘッドを抱えながらイヤイヤをする、狐耳と尻尾の生えた美女。
これがカボチャ被り――別名『俺の妹の稲荷』だ。
カボチャ被りはこんな風に、俺がヤツの間抜けた仮装を止めさせようとすると、頑なに抵抗をするのである。
更に性質が悪いことに、いつも泣きそうな顔で。
それからしばらくイヤイヤをすると、カボチャ被りは決まって次の行動に移る。
目に涙を溜めながら、もう一つのパンプキンヘッドを取り出すと、それを高々と掲げ。
ちょうど人の頭が一つ入りそうな、穴の部分を指差すと。
その空間を、チョイチョイ。
チョイチョイ、チョイチョイと、指でさす。
「……それは何の真似だ？」
「こっち、です。お兄様は、こっち、です」
これはカボチャ被り、第二の習性だ。
カボチャ被りは自分が被りものをするだけでは飽き足らず、俺にもそのカボチャを被るようにとねだってくるのである。
要するに、俺に悪戯もしたければ逆に俺に悪戯もされたいということらしい。
……行動が幼児から、変なところで変わったような、変わってないような。
「お前、最近は少し大人になってきてなかったっけ？」
「だって……ウチはちゃんと大人になって、お兄様のお嫁さんになるんですから……」
確かに、妹はこの頃、精神的にも大人に近づいてき始めていた。
寝るのも、風呂も、食事も、ありとあらゆることを俺と一緒じゃないとイヤだと駄々をこねていたのが影を潜め始め。
俺とイチャつきたがるのは変わりないが、それでも泣きじゃくって俺を困らせるようなことも少なくなり。
これが兄離れってものなのかなぁと、なんだか嬉しいような寂しいような気持ちになっていたのだけれど。
……でもやっぱり、こいつはまだまだ子供なようである。
「そろそろハロウィンも卒業しても良いんじゃないか？」
「やぁです……ウチはお兄様に悪戯をしてもらうんですぅ……」
過去、確かに俺たちはこの日が大好きであった。
そりゃもう、仮装して人の家に行くだけでお菓子が貰い放題な訳である。子供は喜ぶ。
ところがしかし、段々とカボチャ被りは大きくなるにつれて、お菓子よりも悪戯の方を求め始め。
口の中に飴玉を入れて『お兄様、どうぞ♪』なんて唇を突き出し、後頭部に空手チョップを食らって飴を吐き出すようになったのは、中学生の始めだったろうか。
「……お前の言うことは分かった」
「お兄様……っ！」
「ほら、お菓子だったらいくらだってくれてやる。たーんと食うが良い」
「――っ！？」
「全部お前が食べても良いぞ。あ、でもたけのこの里は残してくれると嬉しい」
明るくなりかけた表情が一転、絶望に叩き落されるカボチャ被り。
「そういう事で。さぁ、どれから開けるんだ？」
「ぁ……ぁ……」
手を振って、俺がお菓子の包みへと手を伸ばしかけると。
遂にカボチャ被りの行動は第三段階へと移る。
……これが今までは、非っ常に厄介だったのだが。
「うぅ……お兄様はつれないですぅ……少しはウチにえっちな悪戯をしてくれても……」
「俺の鉄の意志と鋼の強さはまだまだ折れることはないのだ」
およよ、と涙目のままでいるけれど、俺と一緒にお菓子の封を開け始めるカボチャ被り。
これが昨年までだったら、パンプキンヘッドを抱きしめ、そこに頭を突っ込みながらうずくまり。
シクシクシクシク、今度は本当に泣き出していたのである。
身体を小さく震わせ、尻尾がパタン、パタンと哀しそうに床を叩き。
嗚咽を漏らして、俺のことを呼び続けていたのだが。
遂に妹はそれを堪えて、ちゃんと我慢ができるようになったのである。
……こういう所を見ると、妹は本当に大人に変わりつつあるんだなと実感をする。
それは……こうやって我慢をさせていると俺の方も、可哀相というか、罪悪感というか、そんな感情が湧いて来てしまうのだけれど。
だけどまあ、まさか子供ができた時に、その目の前で跪いて泣くような姿を見せたくはないわけで。
そういう羞恥心を取っ払うと、親父とお袋のような埒外色ボケ夫婦になってしまうのである。それだけは避けたい、何としても。
「……まあでも、俺も一安心だな」
「……？ お兄様？」
俺はカボチャ被りの横に置いてあったパンプキンヘッドを取り上げると、その中に頭を通して、すっぽりとカボチャ顔に変身し。
「ほれ、トリック・オア・トリートだ。お菓子をよこさなきゃ悪戯をしちゃるぞ」
「……っ！ はいっ、お兄様っ！」
妹は花の咲くような笑顔になると、広げてあったお菓子をいそいそと尻尾の後ろに片付け始める。
……我ながら甘いとは思うのだけれど、もうこの程度のことなら大丈夫なんだろう。
「さぁ、お菓子をよこすかよこさないか、どうなんだ？」
「やぁです、お菓子をあげるのはやぁですぅ」
「それなら悪戯をされても良いってことだな？」
「はい、お兄様♪ たっぷりウチに悪戯をしてくださいな♪」
「よーし、それじゃこっちに来い！ たっぷりその尻尾をモフってやるからな！」
「きゃあ、お兄様ったらぁ♪」
カボチャ被りの身体を引き寄せて、背後から抱きしめて、あぐらをかいた俺の膝の上に乗せる。
カボチャ被りはそれに満足したように、俺の腕の中に収まりながら、カボチャからはみ出た耳をピコピコさせて。
その様子に思わず俺も顔が綻んでしまって。
「はぁ、ようやく甘えん坊がマシになってきたなぁ、もう」
「ふふっ……お兄様は逆に、ウチに甘えてくださるようになって来ましたね？」
「お前が良い女になってきたのが悪い。俺は基本的には親父と同類のダメ男なのだ、認めたくはないが」
「あら、お父様だって立派な方ですよ？ お母様が絡まなければですけれど」
「いっつも親父とお袋は絡んでるだろ、性的な意味で」
「素敵なことじゃありませんか……夫婦なんですもの、それが一番です」
「まあ、そうかもだが……保護者面談の時に、俺と先生の眼前で絡みだしたのは未だに恨んでるぞ。トラウマになるわ、あんなの」
「……お兄様、あの時は本当の本当に激怒されてましたものね」
「あったりまえだ。発情した先生はデキてた同級生に絡みに行くし、何故かどいつもこいつも『素晴らしい両親ですね』って俺に笑顔を向けやがるし」
とりとめのない話をしながら、俺はヤツを胸に抱いたまま、その温もりを感じ続ける。
こうして今年もまた、カボチャ被りはパンプキンヘッドを持ち出して。
だけど今年は、カボチャ被りに俺から悪戯をすることになり。
そして、最後に。
カボチャ被りの口から、出てきた言葉。
「お兄様……」
「……なんだ？」
「……愛してます、お兄様」
俺からの返事は無しに、ただ黙ってヤツの顔を引き寄せて、唇を重ね合わせ――
「むっ」
「あっ」
――ようとしたところで、ゴツンと。
お互いの頭にある巨大なカボチャの被り物が、キスを邪魔することに気付き。
二人で顔を見合わせて笑いながら、それを取り外して。
今度こそと、唇同士を触れさせあう。
……まったく、本っ当に。
カボチャ被りという妖怪は。
厄介で、甘えん坊で、どうしようもない泣き虫だったけれど。
いつまでも手に負えない、困った妖怪だなと思ってたのに。
こうやって、俺のことを夢中にさせるような、素敵な女性に成長してきたなと。
俺は温かな気持ちになるのであった、
おしま――
――ｷﾞｬｱｱｱｱｱｱｱｧｧｧｧｧｧｯ!! ﾀｲﾔﾉｱｼﾞｶﾞｽﾙｳｳｳｳｩｩｩｩｩｩｩｯ!!
「？」
「？」
おしまい♪
18/10/28 21:18更新 / まわりの客