読切小説
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けいやく書
けいやく書





わたしとあなたは、大きくなったらけっこんしてふうふになることを、このけいやく書にちかいます。


このけいやく書はまりょくでむすばれたものなので、内ようはぜったいにやぶれません。


それでも、もしもあなたがけいやく書の内ようをやぶろうとしたときには、まかいぎんのはりを千本のませてしまいます。





あなたは、ふうふになったらかならずわたしに毎日、あいのことばをささやかないといけません。


おはようのキスも、行ってきますのキスも、おかえりのキスも、お休みのキスも、ぜんぶかかしてはいけません。


わたしが言ったらすぐに、わたしのことをだきしめないといけません。ぎゅーっと、だきしめないといけません。


手をつないだりするのも同じです。わたしが言ったことはことわってはいけません。


そして毎日、赤ちゃんをつくるためにわたしとえっちをしないといけません。


赤ちゃんができても、毎日わたしとえっちをしないといけません。


わたしのパパとママみたいに、いつもらぶらぶにえっちをしないといけません。



かわりに、わたしもあなたのおねがいを、なんでもきいてあげます。


おいしいお料理だって、おいしいおかしだって、がんばって作れるようになります。


よごれたお洋ふくだっておせんたくして、やぶれたお洋ふくもなおしてあげられるようになります。


おそうじだってできるようになります。おべんきょうをおしえてあげられるようにもなります。


まだおっぱいもちっちゃいけど、きっと大きくなって、あなたのことをよろこばせてあげられるようになります。





だからね。


だから、ぜったいにね。


わたしのことをわすれないでね。


キミが今日、とおくの町にひっこしちゃって。


二人が大人になるまで、ずっと会えなくても。


ぜったいにわたしのことをわすれないでね。


わたしはずっと、キミのことをまってるからね。



ずっとキミのこと、大好きだからね。


ぜったいにわたしに会いにきてね。


やくそくだよ。








しょ名らん


ぼくはおおきくなったらかならず

おねえちゃんのことをむかえにきて

おねえちゃんをしあわせにすることを

ここにちかいます――



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「――とまあ、母さんはこんなものを渡すぐらい、子供の頃から俺にメロメロでな?」


「ぷくくっ……お母さんってば純情なんだね〜?」


「ああ、その通りだ。これにサインをさせながら母さんは号泣してたっけ」


「なるほど、このシミは涙の跡か〜。ぷくくくくくっ」


「大きくなって俺が会いに行ったときも、一目俺を見た瞬間にボロボロ泣き始めてこっちに飛びついて来たんだぞ?」


「うっわ、マジ?」


「マジマジ。その後も『ずっとあなたに会いたかった』とか『もう二度と離さないから』とか、小っ恥ずかしくなる台詞のオンパレードだったし」


「アハハハハハッ! お母さんったら完全にお父さんにベタ惚れじゃん! これじゃ言ってたことと全然逆だよねぇ〜」


「そうだぞー。まったく、なにが『お父さんは小さな時から私にベッタリだったのよ』だ。正しくは『2才下の俺にベッタリだった近所のお姉ちゃん』だったくせに」


「でもさ、お父さんもお母さんのこと大好きだったんでしょー?」


「そりゃ、まあな。プロポーズも俺からだったというか、何というかだったし――げっ、ヤバッ!」


「――ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああなたあああああああああああっ!! それは何があっても見せちゃ駄目って言ってたでしょおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


「ちょっとお父さん、お母さんの超顔真っ赤だよっ! 怒ってるのか照れてるのか分かんないけどマズくない!?」


「このままだと二人ともお仕置きの満腹フルコースデザート付きだ! かくなる上は逃げるぞ、娘よ!」


「がってんしょーち! いやっほう、このまま二人で愛の逃避行だぁっ!」


「二人とも待ちなさああああぁぁぁぁいいいいぃぃぃぃっ!! それとお父さんはずっと私のものなんだから渡さないわよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!――」





<クライナサイ! ヒッサツ、フライングデーモンダーイブッ!!
<ダッハァァァァッ!?
<キャアアァァッ!? オトウサーーンッ!!

















 おしまい♪
18/03/23 21:04更新 / まわりの客

■作者メッセージ
ちょっとだけ手直し。

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