連載小説
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サバトナンバー02 メアリ 主人 小林一輝

小林一輝は悩んでいた、その悩みとは癒しと休息が足りないのである。このコンクリートジャングルの現代社会、田舎から上京してきた一輝がやっとの思いで内定を勝ち取ったIT系の会社は外面だけいいブラック企業であった。
 出社すれば延々働きもしない上司の意味も分からない説教を食らい、不当な残業をほぼ毎日し、挙句家に帰ったところでストレスからの不眠で寝ることすらままならず疲れすら取れない。そんな地獄の方がまだ快適とも思える毎日を送っていた。

 その日も上司の説教とサビ残のコンボを食らってしまい、気が付いた頃には終電はとっくに過ぎてしまっていた、なので仕方なくその日は歩いて帰る事にした。
 しばらく歩いていると見覚えない建物が建っていた、その建物は昔話や童話にに出てきそうな風貌で、既にツタが繁茂していて年季を感じる。しかし両隣の小型ビルとのギャップで都会の無機質感からはあまりにも浮いている。
 まぁ何かのお店だろうと素通りをしてすぐカランコロンとドアベルの音が辺りに響き、都会の暗闇に溶けていく。ドアを開けたのは小学生くらいの女の子だった。女の子は俺に近づくと

「あなたにビビっときました、私のご主人様になってくだしゃ…  うえぇーん噛んだぁ…」

 噛んで泣き出した…一体何なんだこの子は、僕が困惑しているとさらに女の子が出てきた。その光景に僕はさらに困惑する。
 こんな時間に女の子に絡まれているからでもなく、更に女の子が出てきたことでもなかった。出てきた女の子がどこからどう見ても人間じゃないのが混ざってたからだ。

「メアリちゃん泣かないでください。ささ、もう一度。今度は噛まないように」

「メアリちゃん、ふぁいとーですー」

「メアリさん、頑張ってください」

「逃げられんよう辺り一面に魔法をかけたのじゃ、頑張るのじゃぞメアリ」

 犬の獣人だったり、動物の耳が生えてる子やヤギのような角が頭から生えてる子もいた、まるでこの世の物とは思えず僕の頭はショートしてしまった。さっきの子が何か言ってる気がするけど分からない。

「ねぇ、何も言ってくれないよ」

「沈黙は否定も肯定もしておらん、つまりわし達の都合のいいように判断すればよいよい」

「じゃあ、ご主人様になってくれるんだ。やったー」

「まだですよメアリ、主人契約を交わして初めてご主人様になってくれるのですよ」

「じゃあさー、まずこのおにいさんをなかにいれましょー」

「そうじゃのう、じゃあ…えいっ」

 僕は角の生えた女の子が放った何かを浴びると久しぶりの強い眠気に襲われ、そのまま深い眠りについた。

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 目が覚めてくる、まだ視界はしょぼしょぼする。代わりに触覚が今まで寝ていたマットがかなりふかふかで家のせんべい布団とは大違いと信号を送る。それにいい匂いもするなぁ。
 視界がある程度回復してきた、辺りを見回すとさっき僕にご主人様になってと言ってきた子が寝ていた。とりあえず今の時間が気になり携帯を探すことにした。
 幸い僕の荷物は机の上にあった、中から携帯を探し当て見てみるとなんとあの日から丸2日もたっており会社からとてつもない数のメールと電話がかかってきていた。

「うっそだろ…」

 僕が非常な現実に意気消沈していると彼女が起きたのか後ろから

「うっん あぁ、ごひゅじんしゃま。おきてくれたんですね〜」

 と眠気を含んだ声が聞こえてくる、そこにはさっきの女の子がいた。しかしまだ眠そうな彼女を宥めもう一度眠りへ誘うのは簡単だった。
 しかしその時、僕の後ろからガチャリと音がした。他の子だろうか、身構えていたの僕の考えは外れた。そこにいたのは男の人だったからだ。その人は

「ああ、起きていたんですね。ではこちらへ、説明をします」

 と言い僕を応接室へ案内した。

「さて、いろいろ言いたいこともあると思うのですが…まずはここの説明からですかね。ここはサバトと言われる幼女ちゃんたちの集まりでこの建物は私たちコラルサバトの本部です」

サバト?幼女?もしかしてこの人ヤバい人じゃ…

「待てい、樹。まずはサバトがどんなところか説明せねば何もわからぬだろう」

 !?いつの間にかヤギの角が生えた子が後ろにいた

「そうでしたね、ではまずサバトがどんなところか「は、このコラルサバトが長。コラルが説明しよう」

「確かその方がいいですね」

 よし、あの人たちがなんか話してる間に…今だっ。僕は隙をついて部屋から飛び出だした。あわよくばそのまま外まで行ってしまおう。

「あっ、待ってください。 行ってしまった良かったんですか?」

「あーよいよい。ここは我がサバトの本拠地じゃぞ、仕掛けくらいしかけとる。そろそろ…」

ガタッ、っとドアが勢いよく開く、そこには先ほど逃げた一輝がいる。

「なんでだ? 何でここにいるんだ?」

一輝はガクッと膝から崩れ落ち落胆する

「もう逃げることすらできんのじゃ、いい加減諦めて話位は聞いてみたらどうじゃ?」

女の子はそう一輝に語りかける

「なんだよもう、毎日毎日会社ではクソ上司にこき使われて、さっきまでサビ残して、挙句の果てに意味の分からない集団に捕まるって。こんなことなら都会なんて来るんじゃなかった」

遂に心のダムが決壊したのか一輝は遂に泣き出してしまった

「あーどうする樹よ、わしは大人の宥め方はわからんぞ」

「そうですね、どうしましょうか」

二人が悩んでいると後ろのドアが開く、そこにいたのは先ほどまで寝ていたはずの魔女メアリだった。恐らく先ほど一輝が走った音で目が覚めたのだろう。

「ご主人様…悲しんでるの?」

「君は…さっきの」

「大丈夫ですよ、今まで辛かったですね。これからは私がご主人様の身の回りの事ぜーんぶしますからね。今まで頑張ったご主人様はもう休んでいいんですよ」

 あぁ、頑張ったか。そういえば就職してからそんな事一度も言われたことなかったな。

「沢山…甘えてもいいんですか? 沢山褒めてくれますか?」

「勿論ですよ、だってあなたのメイドですから」

その時頭の中でプチプチと理性の糸が切れる音が聞こえてくる

「だから、私のご主人様になってください」

プチンッと理性の糸が完全に切れる。堕ちた、たった今小林一輝は完全に堕ちた

「もういい?休んでいい?」

「はい、沢山休んでください。身の回りの事はぜーんぶ私がやるので」

 そこからの記憶はない、どうやらいつのまにか寝てしまったようだ。

「うーん…メイドさん、甘えさせて…  うんん…ここは…」

「起きましたね、メアリさんのご主人様さん」

昨日と同じベットに寝ていた僕に声をかけたのは同じく昨日見た男性だ。

「昨日は急いで出て行ってしまったので説明ができませんでしたね。改めて説明します」

今波元太と名乗る男性から自分たちの説明やサバトの事、自分がどうすればよいかなどを聞いた。

「っとまあこんなものですね、何か質問は?」

「いえ、特には」

「では最後に聞きます、貴方は本当にコラルサバトに入りますか?」

覚悟は決まっていた

「はい、入ります」

「入ったからにはあなたもロリコン野郎になりますがよろしいでしょうか?」

「覚悟は決まってます」

男性はコクリと頷き、

「わかりました、ではこのコラルサバトに歓迎しますよ。一輝さん」

これで俺も晴れてロリコンになったわけだ、ロリコンになりたかったわけではないが
元太さんは「皆さん、入ってもいいですよ」と声をかける。するとドアがガチャリと開き

「おめでとうなのじゃ、サバトの長として歓迎するぞ」

「これから末永くお願いします、ご主人様」

「おめでとうですぅ」

「よろしくお願いします、一輝さま」

さっきの子、名前を教えてもらったがまだよくわからない

「じゃあ早速主人契約をしましょう」

主人契約、確かさっき聞いた話によるとこの子の魔力を俺に流して印?を作り契約をするものだったかな?

「じゃあ早速手を出してください」

「うん、はい」

彼女は手を取ると何かブツブツとしゃべりだした。すると何かが流れてくると同時に俺の右手がピンクに光りだした。
流れてくる感覚が無くなると俺の手のひらにはピンク色の幾何学模様ができていた。

「これで正式にご主人になってくれましたね」

ここから僕のサバトライフが始まる。
22/07/10 12:59更新 / photon
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■作者メッセージ
このシリーズはチャットでアイデアを出して考えました。多分不定期更新です

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