Eternal・Tentacles・Heart

とある国のとある町、森に囲まれた人間達の棲む街
そこでは一人の研究者が住んでいた

「ねぇ・・・あいつ」

「うん・・・ミドラシュよ・・・」

あまり大きくもない町を練り歩くミドラシュと呼ばれたその男に町の視線は向けられていた
高い身長に多少の髭をつけ、白衣を纏った青年は町の商店を渡り歩いている

「おばちゃん、いつもの、ある?」

「えぇ・・・ほら、さっさと代金置いて行った行った」

言葉少なく、嫌悪感をむき出しにした店員のおばちゃんや町の住民から向けられる好奇の視線を気に留める事も無く、ミドラシュは手早く買い物を済ませてゆく

特に彼が何か人々に危害を加えた訳ではない、ただ彼は研究者なのだ
物事を探求し、真実を世に知らせるのが彼の、研究者としての使命
世界にはびこる魔物娘たちの生態の研究、それが彼の仕事
かつては優秀な研究者として、世に名を広めていた彼だが、今はそのころの姿は見る影もなくなり、魔物討伐を掲げる教団からの支援金も無くなってしまった

なぜ彼が町の人々からこのような扱いを受けるか、それは彼が出しかけている魔物研究の結論のせいである

「魔物たちは邪悪な存在なんかじゃない、尊く、愛すべき存在だ」

彼は研究の末そんな結論にたどり着いた
だが、一般的に魔物は邪悪で、恐ろしいものというのが世の見解
更には町では神と交信でき崇められている教団が魔物は悪だというのだから、こんなことを言うミドラシュは異端だと町の人からは徐々に距離を置かれていった

だが彼はそんなことは気にせず、研究に没頭している
なぜそこまで魔物にこだわるのか、そんなことは誰一人として知らない
ただ普通の人間と考え方が違うから、たったそれだけの事で、人々は彼を毛嫌いするのだ

(・・・必要な物は買ったし、今日はもう戻るか)

彼の家、もとい研究所は、町から外れた森の中にある
彼は両手に、研究材料や食料品を抱え、帰路につく
だがその足は重い
別に町の人から邪険に扱われているのを気にしているからではない
彼の研究は今、煮詰まっているのだ

数々の実験を繰り返すうちにたどり着いた、研究の結論も、今のままでは証明できない
そう、彼の言葉はまだ理論でしかない
言いきれるほどの実験を繰り返していたといても、それはまだ憶測の域を出ないのだ

だから彼は今、本物の魔物に会いたいと思っていた
だがもし自分の理論が外れていたら、その時は命を落とすだろう、それは死を恐怖する本能的に嫌だった
勇者や冒険者でもない研究者である自分が、そう簡単に彼女らに会えるはずもないというのもミドラシュは知っていた
だからこそ、彼はなんとかして魔物に会いたいという思いだけが日に日に強くなっていった

魔物に会ってみたい、悶々とした思いを抱えながらミドラシュは家にたどり着いた
するとそこには、人が一人はいれそうなほど大きな箱が赤いリボンに包まれ置かれていた

「おいおい・・・いやがらせにしちゃやりすぎだろ・・・」

ため息をつき、家に荷物を置いて、包みを抱えてみる

「んんっしょぉ」

思ったより軽いその包みを家の中へと運び込む

その箱はよく見れば差出人の記載も、手紙も見当たらない

「開けたらドカン・・・とか、ないよな・・・?」

誰にともなく一瞬頭に浮かんだ妄想を振り払うようにつぶやき、箱のふたを開けてみる・・・すると

「こりゃ・・・何の冗談だ・・・?」

箱の中にはすやすやと寝息を立て眠る、腰より下が植木鉢に埋まった少女のようなものが寝息を立てていた

そしてそれは、箱を開けた時の光で気が付いたのだろう、ゆっくりと目を開け開口一番に寝ぼけ眼なのか、キリッとした表情でこう、いった

「・・・とおう、あなたが私のマスターか?・・・なーんてね☆」

さっきのきりっとした表情を崩し、人懐っこくテヘっと笑顔を見せるそれを見たミドラシュは目を見開き、反応ができずにいた

「・・・あれ?もしかして私・・・すべってる?」

今度は驚いたような表情になり、すぐさま泣きそうな顔になる
感情の起伏の激しいそれを呆けた様子で見ていたミドラシュはそこではっと我に返った

「あぁ・・・いやいや、そんなことはないよ、うん・・・」

どう聞いてもそんなふうに見えない下手なフォローが入る
それをきいて、それは喋るのをやめた

(やば・・・やっちまったか・・・)

額を汗が伝ったその時

「ふー・・・あぶなかったぜ・・・やっぱり私がすべるわけないよねーよかったよかった」

なんてまた笑い出す
そんな姿が面白くて、ミドラシュもまた笑みをこぼした

「それではあらためまして、てんたくるです、よろしくです」

「あぁ・・・これは、ご丁寧に・・・ってお前、テンタクルって、魔物・・・?」

「はい、そですよ?」

願ってもない事だった
というか、これだけで解る
自分は間違ってなかった、やはり魔物は人に危害を加えるような物じゃない

興奮状態となり冷静な判断ができなくなっているのか、その一匹に会っただけで彼は自分の研究が本物だったと瞬時にそう判断した

「あれ・・・?あの・・・もしかして、こーふん、してます?」

「あぁ、すごくッ!」

息をあらげつつ、素直に感想を述べる
それを聞いて、テンタクルは頬を赤らめ、もじもじと身をよじり始めた

「そですか・・・よかったのです・・・マスターがそーゆー人で・・・」

そういうと、テンタクルは手の代わりに生えている触手を器用に使い植木鉢からからまるで立ち上がるようにして這い出て、ミドラシュを押し倒した

「お、おい、なにしてん―――ッ!」

ミドラシュが抗議の声を上げるのとほぼ同時に、テンタクルの唇がミドラシュの唇を塞いだ

「ん・・・ちゅ、ちゅむ・・・ちゅ・・・」

テンタクルはついばむように、少しおびえた様子で唇を貪る
ミドラシュはとっさの事に、抵抗も忘れ、それを受け入れる

「ん・・・ちゅぱぁ・・・えへへ、マスター、おひげくすぐったいかも」

目を潤ませ、まっすぐ瞳を覗いてくるテンタクルの顔を見ているだけで、どうしようもないほどに熱く、火照っていく感覚に体を支配されていく

息を荒げ、テンタクルと見つめ合った永遠と思えるほどの刹那にテンタクルは触手を使い、ミドラシュのズボンをはぎ取っていた

「わぁ・・・マスター、ちゅ−だけでこんなになっちゃったんだ・・・」

「お、おい、やめ・・・」

ミドラシュの言葉はまたも遮られる
今度は快感によって、だが

テンタクルの触手はミドラシュの衣服をはぎ取るだけでなく、そのまま膨れ上がった肉棒に巻きついた

「あっつぃ・・・でも、なんか、これ、かわいい・・」

おもちゃを買ってもらったかのような、子供のような目でまじまじとその肉槍をみつめるのも一瞬、テンタクルは巻きつけた触手を上下にしごきあげ始めた

「ッく・・・ぁ・・・っ」

えもいわれぬ快感がミドラシュの脳天まで駆け上がる
もちろん自分ですることもあったが、ここまでの刺激は感じたことがなかった

「マスターのかおも、だんだん、かわいくなってきたぁ・・・私も、なんか、へんなきもちぃ・・・」

そういうとテンタクルは、他の触手を自分の胸や秘所に触手を回し、自らそれらをまさぐり始める

「んぁ・・・えへへ・・・ちょっとこえ出ちゃう・・・ますたぁ、いっしょに、きもちよく・・・なってね?」

また人懐っこく笑って見せる
だがそこには妖艶な雰囲気が混じり、それらはミドラシュの理性をそぎ落とすのには十分すぎる働きをした

たがを外したように、陰部に血液が集まり、その肉竿はますます肥大していく

「ますたぁ・・・でそ?・・・でちゃいそうなの?いいよ、だしても・・・だしちゃっていいんだよ・・・?」

ミドラシュの様子を窺うように見つめるのとは裏腹に自分を弄るその触手の動きはじょじょに激化していき、声にも艶が出てくる
それと同時にまるでオナホールのような筒状の触手がペニスを包み込んだ

「ッッッ!?」

「んぅ・・・はぁ、はっぁ・・・ますた・・・あっ、く・・・ますたぁ・・・いっしょに・・・イこ?」

そう首をかしげながらいわれたとき、ミドラシュの中で何かがはじけた
頭が快楽を受け入れ、抗う事の一切をやめた

くちゅ、くちゅぅ・・・

テンタクルの秘部から、淫らな水音が漏れる
それすらも興奮材料となって、彼の一物は膨れ上がっていった

「あ、あぁ・・・ますたぁ、びくびく、してるぅ・・・私も、イキそ・・・」

二人の吐息と喘ぎが重なり始める
それはもうすぐ限界が近い事を知らせる呻きでもあり、この甘美な時の終わりを意味する鳴き声でもあった

「ぁ・・・っく、て、テンタクル・・・お、俺・・・ッ」

「うん・・・わかる・・・わかるよぉ・・・いこ・・・ましゅたぁ・・・わた、し・・・イッちゃう・・・から・・・イク、からぁ・・・ッ!」

「あ、あぁ・・・ぅ・・・ぃ・・・く・・・」

「あ・・・あ、あぁああッ!イ、くぅぅぅっっっ!」

どぴゅうっ!ぶびゅるっ!ぶびゅびゅっ!
ぷじゅじゅぅ!びゅじゅびじゅっ!

お互いが絶頂にたどり着いたのはほぼ同時、しかも今までに感じたことがないほどに深く大きな絶頂
二人は息を切らし、テンタクルはそのままミドラシュの上に寝そべる

「っは・・・はぁ・・・お前、なにやって・・・んだよ・・・」

息を整えながら、文句のようにつぶやく

「・・・zzz」

だがそのテンタクルは幸せそうな顔で寝息を立ていた

「まったくしょうがないな・・・」

やれやれといった感じで、ミドラシュもそのまま余韻に浸るように目を閉じた



どれぐらいの時間がたったのだろうか
軽く眠っていたようでさっきまでのことが夢のようにも思える
だが自分の上にかかる重みでそれが夢でない事がわかる

そっと首だけを動かしてみると、少女と変わらない寝顔が目に入ってくる

(起こすのも悪いか・・・)

そう考えるも、この体勢では動くだけで彼女を起こしてしまうだろう
結局起こすしかない事をさとる

だが肌の色は違えど見れば見るほど少女にしか見えないその姿になんだか起こすのもためらわれてしまう
そこで、ミドラシュは頭の部分を撫でることにした
これなら、優しく起こせると思ったのだ

そっと頭部に手を触れるとぴくっと反応した
それもなんだか可愛らしく見えて、ゆっくりと撫でてみる

「・・・ますたぁ・・・zzz」

甘えたような声の寝言
そういえば彼女はなぜ自分の事をマスターなんて呼ぶのだろう
ミドラシュはふとそんなことが気になった
まだあったばかりなのにマスターと呼ばれるのもなんだか照れ臭い

「んん・・・?」

そんな事を考えているうちに胸の上の彼女が目を覚ます

「あれ・・・私ねちゃってた・・・」

テンタクルは目をこすり頭をもたげる
そのとき、テンタクルとミドラシュの目が合う

「おはよう」

なるべく笑顔であいさつしようとする
まぁ、しばらく人とまともにかかわってこなかったためか、随分ぎこちない感じになってしまったが

「・・・きゃぁぁ!」

一瞬呆けたテンタクルは状況を飲み込んだのか、驚くほどの悲鳴を上げ後ろに飛び退く

「あわわわ・・・ま、マスター、ごめんなさい、ちょうしのっちゃいましたぁ・・・」

「いや、それはきにしなくていいけど・・・」

やっと解放された起き上がって脱がされた衣服を着なおしてミドラシュは肩を振って軽く伸びをする

「なんで俺のこと、マスターって呼ぶの?」

単刀直入に聞いてみることにした
するとテンタクルは少し悩んでこう答えた

「うーん・・・ここにくるとき言われたんですよ、つぎに私があったひとが私のごしゅじんさま、マスターだって」

「それは、誰に?」

「うーん・・・わかりません」

重要な所が解らないと来た
うーん・・・どういうことなんだろうか

「たぶん、かみさまが、私をつくって、マスターのところにおくってくれたんだとおもいます」

「神さま、か・・・」

テンタクルはおずおずと這いよってきて触手を絡めてくっついてくる
ロマンチックな回答もこの行為も、なんだか悪い気はしなくてミドラシュはそれで納得してしまった

一応研究にもこれで結論が付いた、だがこのことを他の者に言うわけにはいかない、むしろ、魔物と関係を持ってしまったことが他者にばれたら、おそらくただでは済まないだろう
この調子では、ミドラシュもテンタクルも、おたがい離れられそうにない

「マスター・・・むずかしいかお、どうしたの?」

「ん?あ、あぁ・・・ちょっとね」

どうやら考え込んでしまったらしく、テンタクルに心配されてしまったようだ

「・・・ごめんね、マスター、私がきたから、マスターただでさえもまちのひとからいやがられてるのに、ますます、こわがられちゃうよね・・・」

「い、いや・・・テンタクルの気にすることじゃない・・・」

泣きそうな顔になってしまうテンタクルを見ていたたまれない気持ちでいっぱいになる
そこでミドラシュは覚悟を決めた

「・・・じゃあ、二人で居れるところに行こう」

「え?」

テンタクルは驚いたように顔を上げる
その目を見てミドラシュは続ける

「俺はお前と一緒に居たい、だから、お前と一緒に居れる場所まで、行こう」

ここにいても、結局知り合いもなく未練も無い
そんなことより、彼女の屈託のない笑顔を、なによりあの快楽を手放すということが彼には考えられなかった

「で、でも・・・教団のひととかにみつかったら・・・」

「・・・大丈夫だ、魔界に、触手の森に行こう、前に本で読んだ、あそこなら見つからない、魔物たちも来るのをためらうんだろう?教団も来ないし、君はテンタクルだから、森が受け入れてくれるはずだよ・・・」

そういうとテンタクルは少しだけ考えて

「いいの・・・?」

と希望を手にしたような目で見上げてきた

「あぁ・・・俺はテンタクルと一緒に居たい、ずっとずっと・・・永遠に」

「うん・・・私も、マスターといっしょにいたいな・・・永遠に」

そこでミドラシュとテンタクルは抱き合う
強く二本の腕で抱き寄せるミドラシュと
よわよわしくも多くの腕で恐る恐る抱きつくテンタクル
二人は知らずに知らずの内にキスをしていた
さっきのように激しくはない、触れ合うだけの優しいキス
だが二人はそれで満たされたような気持ちになった

そしてミドラシュは身支度を整えた
もう研究の必要はなくなった
魔物娘は悪でないと、知る事が出来たから
研究に必要な物しかなかった家からは特に持っていくものも無く
ただただ、彼女が、テンタクルがいれば、何とかなるんじゃないか、なんて思えた

「ねぇ、マスター、なまえ、ほしい」

「え?」

「マスターだけがよぶ、なまえ、ほしいなぁ」

ほとんど用意することも無い荷作りの最中にまた甘えたような声で彼女が言ってきた

「・・・たしかに、いつまでもテンタクルじゃだめだよな・・・そうだな、じゃあ・・・フローラ、君の名前は、フローラだ」

「フローラ・・・うん、いいなまえ」

「そのかわり、俺の事は、マスターじゃなく、ミドラシュと呼んでくれ」

「・・・うん、わかった・・・ミドラシュ」

恥ずかしげに微笑んで、自分の名前を呼ぶフローラに、果てしないほどの幸福感に包まれ、ミドラシュはその地を去った

愛する魔物娘と、愛する自分の妻と、永遠の、幸せを手に入れるために






だが、どうして、彼女は、ミドラシュが町で嫌われていることを、知っていたのだろうか

それ以降ミドラシュの姿を見たものは、永遠に、いなかったという

         HAPPY                    END


ご清聴どうもです、オチが気に食わないって? すみませんでしたぁぁ(土下座)最後まで読んでいただいたのにこんな気持ちにさせてしまいほんとにほんんとに申し訳ありませんでした・・・でもミドラシュは幸せになりましたよ・・・永遠に

フローラはスペイン語で花のフロルから、ミドラシュはヘブライ語で探し求める者のミドラーシュから頂いてますです


15/09/14 13:02 シュウザキ

top / 感想 / 投票 / RSS / DL

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33