そうだ、異世界に行こう
ーーー私の名前は、「青田 澄駆」です。
ーーー友人からは、「すくすく」と呼ばれています。
ーーー私は、このつまらない世界に飽きました。
ーーーどうか、私を異世界へ送って下さい。
「…確か、ネットにはこう唱えて眠ると異世界に行けるって書いてたんだけど大丈夫かな…?」
先ほどから何やらブツブツと唱えているのは、この物語の主人公。
彼は、普段の生活に飽きてしまい、この世界を離れたいと思った。
そこで、ネットで異世界へ行く方法を探し、それを今晩試している様だ。
「まあ、上手くいくかわかんないし、とりあえず寝ようっと。明日は異世界にいけますように…」
小鳥のさえずる声や、川のせせらぎの音が聞こえる…
ここは何処だ…? というか、良い夢だな…。
リアルな夢だな…
「凄く…良い所だな…ってこれは夢じゃない!!」
ーーーどうやら、青年は本当に異世界に来てしまったようだ。
「えーっと、異世界にこれたのは良かったとして、これからどうしよう…。何にも考えてなかった…」
青年…もとい、すくすく(あだ名。友人達から呼ばれている)は困っていた。
なぜなら、彼の格好は、和風の寝巻きだけで、他には何も持っていなかったからだ。
「このままだと、行き倒れになっちゃうな。とりあえず、適当な棒でも拾って、それが倒れた方向に歩くか。」
幸い、近くの森から手頃なサイズの棒を手に入れたので、その方向へと進んで行く。
「これからどうしよっかなー。街や村があれば、そこでこの世界の事を調べられるのに……。まあ、頑張ろう。」
彼が歩いていると、前から大きなイノシシの様な怪物が襲ってきた。
「うわっ!」流石に初めて見る怪物に、彼は驚きを隠せずにいた。
「何なんだっ!あの怪物は!避けても避けても追ってくるぞ!」彼は、此処で死ぬ事だけは絶対に避けたかった。来て早々殺されるのはあんまりだからだ。
「この野郎っ!来るなら来い!」彼は戦う事にした。
イノシシもどきは、彼に向かって突進を続けている。というか、全力で殺しに来ている。
「このっ…!!喰らえ‼」
棒を全力で叩きつける。毎日、異世界へ行く妄想をしている時、こんな事態になった時に自分を守るために、槍を習っていた事が良かった。更に、ゲームなどのキャラクターの動きもしっかり身につけていたのだ。
「喰らえっ!裂駆槍!」槍に見立てた棒を突き出す。彼自慢のその技は、いともたやすく弾かれた。
「ブモオオオオオオオオ!!!!!」イノシシもどきは、彼の武器ごと、彼を吹き飛ばした。彼は普通の人間だ。この一撃を喰らえばひとたまりもない筈だ。しかし、彼はまだ生きていた。
棒を持つ手に力がこもる。何処からか、途轍もないチカラが湧く。
「うおおおおおッ!!」イノシシもどきを、全力で打ち上げる。空中に浮かんだイノシシもどきに向かって、彼は放った。
ーーーーーーーーーー秘奥技ーーーーーーーーー
「この一瞬に全てを賭ける!!翔破裂光閃!!」
光を纏った突きが何回も放たれる。普通の人間には出来ないような突きを何十回も放つと、流石のイノシシもどきも堪らずに倒れた。同時に、彼も倒れてしまった。
「これは…一体!?」
そう声をあげたのは、魔王城で剣の指導などをしている、デュラハンの「メラン」と言う者だった。
「危険な怪物が実験所から逃げたから、被害を出さないうちに処分してきてと頼まれて来たはいいが、何なんだこの状況は⁉」
彼女の目に映るのは、処分対象のキメラと、そのそばに倒れている変な格好の青年だ。
「とにかく、治療が先だ!!魔王城につれて行かねば!」
そうして、この青年の異世界生活が始まったのであった。
15/02/08 21:00更新 / Mr.すくすく
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