好意の視線
さて、まず最初に、僕は今何処に居るでしょうか?
答えは泉の底で〜す!水深は五、六十メートルかと思ってたけど実はもっと深かったみたいで七十メートルはありまーす!人間が潜れる限界の深さまであと少しだ!
……僕は今物凄くピンチです。
「え〜っとですね〜、僕もう外に上がりたいんだけど?」
「フフ、だめです♥」
ニッコリと笑うその表情は肉食獣の顔だった。
駄目か〜。
状況を説明しよう!
ある日僕とフィアンセのヴィヴィアンがオアシスでイチャイチャラブラブしていると、そこに謎のイカ娘が現れ僕を拐って深い泉の底に連れ去ってしまったのである!
でさらに彼女の足で拘束プレイされ、僕のファーストキスが奪われてしまった!……ヴィヴィアンに捧げる筈のファーストキスがあああ‼
でもそのせいか水の中で息ができると言うとんでも体験をしている。
「あの、僕をどうするつもりで?」
「私のお婿さんにします♥」
「お婿さん?いやいや僕には心に決めた人が居るのですが」
「なら奪い去ります♥」
うわー!これがいわゆる『NTR』ってやつか!
にしてもあれって何の略なんだろうね?ネットリ?……ヤバイ、どこぞのタレントみたいになってきた。昔はちゃんと長文もできたのにね。あの人。
大丈夫!ちゃんと意味は分かってるから!
「おいおい、好きでもない女性のお婿さんなんか行くわけないでしょ!」
いくら美貌、巨乳、括れ、巨尻があったって目移りなんか………。め、目移りなんかしないんだからね!
「これから好きになれば良いんですよ!ではまず一つ。クラーケンのライラと申します!」
無茶振りはよしてくれ〜‼良い名前だけど!
「僕にはね、大事な大事な未来のお嫁さんが居まして……」
「なら私もその一員に入れさせて下さい」
俺のヴィヴィアン攻略ルートにまぁ巨大な障害が現れたもんだぜ……。ゲームみたいにセーブできないから僕困っちゃう!
う〜ん、どうフラグ回避しようか。
「お姉さん」
「何ですか?」
「浮気はしますか?」
「魔物は夫一筋ですよ」
「僕も意中の女性一筋なので浮気は勘弁です」
「男の浮気は別ですよ」
ハーレム好きには嬉しい世界だね、ここ。浮気を許せるなんて何と大きな器だろうか。僕には必用ないけど!
「いやいやホントに勘弁してください」
「でも見た限り貴方、あの娘とキスもセックスもしてないですよね?」
グッ!出たよ、魔物娘特有の超感覚。僕も欲しいなー。
彼女は痛い所を突いたつもりだろう。だが惜しい。
「残念だったな!そんな言葉、僕の左胸しか刺さってないぞ!」
「それ心臓ですよね?」
グハァ!なんて事だ!急所じゃないか!
「こ、これから目一杯イチャイチャラブラブデレデレチュッチュエロエロアヘアヘするんだよ‼」
アヘアヘは冗談半分。でもヴィヴィアンのアへ顔は見たいので半分って所を強調します。
「む〜、頑固ですね。攻略のし甲斐があります」
「む〜、しつこいな。油汚れのごときしつこさだ」
ヌルヌルする感触もそっくりだ。拒否のし甲斐は要らないよ!
「って言うかさっきから近くでウツボみたいな魚が近くでうろうろしてるんだけど。怖い、あっち行って。君も」
「嫌です♥」
イカ娘はその足で魚を追い払った。あ〜怖かった。こっちも怖いけど。
「……仕方がないですね。ここまで愛が硬いと嫉妬心を覚えます。強行突破しますか」
「はい?」
「セックスしましょう♥」
「ヤです♥」
僕を拘束している足が僕の服を脱がそうする。
キャー!童貞まで奪われる〜‼ヴィヴィアンのお婿に行けない〜‼
危機迫るその時だった。
「セイカァ!」
「ヴィヴィアン!」
白馬ならぬ蛇足の王子様がお姫様を助けに来てくれた!……ある意味合ってるよね?蛇足。
「今助けるぞ!」
って言うか、水の中で叫んでるから凄くガボガボ言ってて聴こえにくい。酸素は大丈夫だろうか。
ヴィヴィアンがイカ娘に爪で切りかかる。
イカ娘は避けるが僕の事は放そうとしない。
「彼は私のお婿さんです、渡しません‼」
「僕は彼女のお嫁さんです、諦めて‼」
「誰が嫁だ!」
「貴方楽しんでません?」
おっと、お姫様気分が抜けない。頑張れ、ヴィヴィ王子!
ヴィヴィアンはイカ娘を引っ掻き続けるけど水の中ではやはりイカ娘に遅れを取る。
う〜ん、このままだと相等不利だ。
「……あれ?」
イカ娘の足、移動するためかヴィヴィアンの攻撃をかわす度に動いてる。僕を拘束している足もだ。
……つまり。
「よ!」
足が動いてる時は拘束が緩かった。おかげでスッポリと抜けた。
「ーーしまっ!」
「ヴィヴィアン!」
「ああ‼」
ヴィヴィアンは僕を掴み猛スピードで浮上する。すごいね。
「ああ、ヴィヴィアン、愛してる……」
なんだろう、何故かちょっと気分が悪い。
「っ、馬鹿かお前は」
僕らはジェット機並みの速さで陸に上がり、酸素を得る。
それはほんの一瞬の事だった。
「取り敢えず、奴が来る前にもう帰ろう。……セイカ?」
私が声を掛けた時、返事が返って来なかった。
「……」
「セイカ?おい、大丈夫か、セイカァ!」
セイカは力なく目を瞑り、意識を手放していた。
……皆さん、減圧症と言う現象をご存知だろうか。
登山や航空機等で上昇する場合、急激な減圧により空気が膨張し血液沸騰や吐き気、気絶など様々な症状が起こる現象である。
僕の場合、水深六十メートルの水圧からかなりの速さで上がったが為に気絶してしまったのである。
「……ん」
「ぁ、セイカ!大丈夫か?」
「あ、ヴィヴィアン?」
と言う訳で目を覚ますとヴィヴィアンの顔が目の前にあった。
長い時間気絶していたのか空はもう暗い。
「目を覚まさないから心配したんだぞ!?」
「大丈夫。目、覚めたから」
僕は起き上がろうとして、頭がズキズキ痛んだ。
「馬鹿、安静にしていろ」
言葉とは裏腹に優しい声色。癒されるな〜。
「はーい」
寝転がると後頭部にやや硬い感触が伝わる。
ん?待てよ。この感触、ヴィヴィアンを見上げるこのアングル、そして何となく香るこの良い香り。
「もしかして僕、膝枕されてる?」
「あ、ああ……」
聞くと、返事とともにヴィヴィアンの顔が赤くなっていく。
「や、やはり……、その、寝心地悪いか?」
「……ううん。最高だよ。特にヴィヴィアンの下乳を眺められる角度は絶妙だね!」
「馬鹿!」
「痛い!体調不良者を叩くんじゃありませーー!」
僕の叱責は遮られた。ヴィヴィアンに顔を抱き寄せられる形で。
「……」
「馬鹿……」
「…………うん」
……冗談抜きで癒される。
「……ありがとう、ヴィヴィアン」
「ラブラブですね〜」
「ワオッ!」
声に驚いて振り向けばそこには先程僕を縛っていたクラーケンことライラさん。
現在思いっ切りほっぺを膨らましている。
「完全に二人の世界ではないですか。嫉妬します」
「う、うん。……分かったからそのまま墨を吐くような真似だけは止めてね?」
「しませんよ」
「それは良かった。……ところで何故ここに?」
僕の質問に答えたのはライラさんではなくヴィヴィアンだった。
「お前が助かったのは彼女の魔法のお陰だ」
「え、ヴィヴィ王子の目覚めのキスじゃないの?」
「本当に馬鹿かお前は。それに何故私が王子なんだ」
また襲われやしないかと身構えるが、彼女は腕を組み溜め息を吐いた。
「私はまだ諦めきれなくてここまで来たんです。恋人は欲しいですし、貴方もまぁまぁタイプです」
「諦めて下さい」
「ええ、諦めました」
「はい?」
僕は予想外の言葉に心底驚いた。あんなにしつこく迫ってきたのに。
「知っていますか?人は好きな人を見つめるとき、二通りの種類に分けられるんです」
え、何それ。ライラさんは一息吐いて続ける。
「まずは身体的に好きな場合。これは相手の輪郭をより把握しようと視線が色んな方向へ行ったり来たりします」
「要はエロい視線でありますか」
「ええ、そうです。さっき貴方が私の顔とおっぱいと腰とお尻を見ていたのがそれです」
「セイカ?」
「な、何の事だか……」
さっきのエロい視線バレてたか〜。
「もう一つは心から好きな場合です」
「心から?」
「そうです」
ヴィヴィアンが口を挟む。もしかしたらライラさんが言いたい事を何となく予想しているのではないのだろうか。
「相手を心から好きな場合、その人一点を見つめるんです」
ライラさんは何処か寂しげに微笑み、言った。
「セイカさんのヴィヴィアンさんを見つめる視線は、正に心から好きな人を見つめる視線です」
「セイカ、お前……」
ヴィヴィアンは大層驚いていた。や、止めてよ恥ずかしい。
「彼の態度だけみればふざけたものですが、貴女への好意は本物です。ヴィヴィアンさんはバジリスクですから仕方がないですが、一度は目隠しを取って、彼の瞳を確認してはいかがですか?」
ヴィヴィアンは何とも言えないと言った表情で話を聞いていた。
話終えると、ライラさんは踵を返して泉に向かっていった。
「は〜あ〜、まさか失恋するなんて思いませんでした。身体的なものと心からのものとどちらが強い好意かは言うまでもありません。おこぼれに預かろうなんて、逆に惨めです」
ライラさんは盛大に溜め息を吐いた。
「セイカさん」
「何?」
「貴方は魔物娘をフッたんです。それは並大抵の事ではありません。ヴィヴィアンさんと末永くお幸せに。さもないとまた拐いに来ますから」
ライラさんはそう言い残し、泉の中へと去っていった。
……直後、僕らの空気は少し気まずいものへと変わっていった。
答えは泉の底で〜す!水深は五、六十メートルかと思ってたけど実はもっと深かったみたいで七十メートルはありまーす!人間が潜れる限界の深さまであと少しだ!
……僕は今物凄くピンチです。
「え〜っとですね〜、僕もう外に上がりたいんだけど?」
「フフ、だめです♥」
ニッコリと笑うその表情は肉食獣の顔だった。
駄目か〜。
状況を説明しよう!
ある日僕とフィアンセのヴィヴィアンがオアシスでイチャイチャラブラブしていると、そこに謎のイカ娘が現れ僕を拐って深い泉の底に連れ去ってしまったのである!
でさらに彼女の足で拘束プレイされ、僕のファーストキスが奪われてしまった!……ヴィヴィアンに捧げる筈のファーストキスがあああ‼
でもそのせいか水の中で息ができると言うとんでも体験をしている。
「あの、僕をどうするつもりで?」
「私のお婿さんにします♥」
「お婿さん?いやいや僕には心に決めた人が居るのですが」
「なら奪い去ります♥」
うわー!これがいわゆる『NTR』ってやつか!
にしてもあれって何の略なんだろうね?ネットリ?……ヤバイ、どこぞのタレントみたいになってきた。昔はちゃんと長文もできたのにね。あの人。
大丈夫!ちゃんと意味は分かってるから!
「おいおい、好きでもない女性のお婿さんなんか行くわけないでしょ!」
いくら美貌、巨乳、括れ、巨尻があったって目移りなんか………。め、目移りなんかしないんだからね!
「これから好きになれば良いんですよ!ではまず一つ。クラーケンのライラと申します!」
無茶振りはよしてくれ〜‼良い名前だけど!
「僕にはね、大事な大事な未来のお嫁さんが居まして……」
「なら私もその一員に入れさせて下さい」
俺のヴィヴィアン攻略ルートにまぁ巨大な障害が現れたもんだぜ……。ゲームみたいにセーブできないから僕困っちゃう!
う〜ん、どうフラグ回避しようか。
「お姉さん」
「何ですか?」
「浮気はしますか?」
「魔物は夫一筋ですよ」
「僕も意中の女性一筋なので浮気は勘弁です」
「男の浮気は別ですよ」
ハーレム好きには嬉しい世界だね、ここ。浮気を許せるなんて何と大きな器だろうか。僕には必用ないけど!
「いやいやホントに勘弁してください」
「でも見た限り貴方、あの娘とキスもセックスもしてないですよね?」
グッ!出たよ、魔物娘特有の超感覚。僕も欲しいなー。
彼女は痛い所を突いたつもりだろう。だが惜しい。
「残念だったな!そんな言葉、僕の左胸しか刺さってないぞ!」
「それ心臓ですよね?」
グハァ!なんて事だ!急所じゃないか!
「こ、これから目一杯イチャイチャラブラブデレデレチュッチュエロエロアヘアヘするんだよ‼」
アヘアヘは冗談半分。でもヴィヴィアンのアへ顔は見たいので半分って所を強調します。
「む〜、頑固ですね。攻略のし甲斐があります」
「む〜、しつこいな。油汚れのごときしつこさだ」
ヌルヌルする感触もそっくりだ。拒否のし甲斐は要らないよ!
「って言うかさっきから近くでウツボみたいな魚が近くでうろうろしてるんだけど。怖い、あっち行って。君も」
「嫌です♥」
イカ娘はその足で魚を追い払った。あ〜怖かった。こっちも怖いけど。
「……仕方がないですね。ここまで愛が硬いと嫉妬心を覚えます。強行突破しますか」
「はい?」
「セックスしましょう♥」
「ヤです♥」
僕を拘束している足が僕の服を脱がそうする。
キャー!童貞まで奪われる〜‼ヴィヴィアンのお婿に行けない〜‼
危機迫るその時だった。
「セイカァ!」
「ヴィヴィアン!」
白馬ならぬ蛇足の王子様がお姫様を助けに来てくれた!……ある意味合ってるよね?蛇足。
「今助けるぞ!」
って言うか、水の中で叫んでるから凄くガボガボ言ってて聴こえにくい。酸素は大丈夫だろうか。
ヴィヴィアンがイカ娘に爪で切りかかる。
イカ娘は避けるが僕の事は放そうとしない。
「彼は私のお婿さんです、渡しません‼」
「僕は彼女のお嫁さんです、諦めて‼」
「誰が嫁だ!」
「貴方楽しんでません?」
おっと、お姫様気分が抜けない。頑張れ、ヴィヴィ王子!
ヴィヴィアンはイカ娘を引っ掻き続けるけど水の中ではやはりイカ娘に遅れを取る。
う〜ん、このままだと相等不利だ。
「……あれ?」
イカ娘の足、移動するためかヴィヴィアンの攻撃をかわす度に動いてる。僕を拘束している足もだ。
……つまり。
「よ!」
足が動いてる時は拘束が緩かった。おかげでスッポリと抜けた。
「ーーしまっ!」
「ヴィヴィアン!」
「ああ‼」
ヴィヴィアンは僕を掴み猛スピードで浮上する。すごいね。
「ああ、ヴィヴィアン、愛してる……」
なんだろう、何故かちょっと気分が悪い。
「っ、馬鹿かお前は」
僕らはジェット機並みの速さで陸に上がり、酸素を得る。
それはほんの一瞬の事だった。
「取り敢えず、奴が来る前にもう帰ろう。……セイカ?」
私が声を掛けた時、返事が返って来なかった。
「……」
「セイカ?おい、大丈夫か、セイカァ!」
セイカは力なく目を瞑り、意識を手放していた。
……皆さん、減圧症と言う現象をご存知だろうか。
登山や航空機等で上昇する場合、急激な減圧により空気が膨張し血液沸騰や吐き気、気絶など様々な症状が起こる現象である。
僕の場合、水深六十メートルの水圧からかなりの速さで上がったが為に気絶してしまったのである。
「……ん」
「ぁ、セイカ!大丈夫か?」
「あ、ヴィヴィアン?」
と言う訳で目を覚ますとヴィヴィアンの顔が目の前にあった。
長い時間気絶していたのか空はもう暗い。
「目を覚まさないから心配したんだぞ!?」
「大丈夫。目、覚めたから」
僕は起き上がろうとして、頭がズキズキ痛んだ。
「馬鹿、安静にしていろ」
言葉とは裏腹に優しい声色。癒されるな〜。
「はーい」
寝転がると後頭部にやや硬い感触が伝わる。
ん?待てよ。この感触、ヴィヴィアンを見上げるこのアングル、そして何となく香るこの良い香り。
「もしかして僕、膝枕されてる?」
「あ、ああ……」
聞くと、返事とともにヴィヴィアンの顔が赤くなっていく。
「や、やはり……、その、寝心地悪いか?」
「……ううん。最高だよ。特にヴィヴィアンの下乳を眺められる角度は絶妙だね!」
「馬鹿!」
「痛い!体調不良者を叩くんじゃありませーー!」
僕の叱責は遮られた。ヴィヴィアンに顔を抱き寄せられる形で。
「……」
「馬鹿……」
「…………うん」
……冗談抜きで癒される。
「……ありがとう、ヴィヴィアン」
「ラブラブですね〜」
「ワオッ!」
声に驚いて振り向けばそこには先程僕を縛っていたクラーケンことライラさん。
現在思いっ切りほっぺを膨らましている。
「完全に二人の世界ではないですか。嫉妬します」
「う、うん。……分かったからそのまま墨を吐くような真似だけは止めてね?」
「しませんよ」
「それは良かった。……ところで何故ここに?」
僕の質問に答えたのはライラさんではなくヴィヴィアンだった。
「お前が助かったのは彼女の魔法のお陰だ」
「え、ヴィヴィ王子の目覚めのキスじゃないの?」
「本当に馬鹿かお前は。それに何故私が王子なんだ」
また襲われやしないかと身構えるが、彼女は腕を組み溜め息を吐いた。
「私はまだ諦めきれなくてここまで来たんです。恋人は欲しいですし、貴方もまぁまぁタイプです」
「諦めて下さい」
「ええ、諦めました」
「はい?」
僕は予想外の言葉に心底驚いた。あんなにしつこく迫ってきたのに。
「知っていますか?人は好きな人を見つめるとき、二通りの種類に分けられるんです」
え、何それ。ライラさんは一息吐いて続ける。
「まずは身体的に好きな場合。これは相手の輪郭をより把握しようと視線が色んな方向へ行ったり来たりします」
「要はエロい視線でありますか」
「ええ、そうです。さっき貴方が私の顔とおっぱいと腰とお尻を見ていたのがそれです」
「セイカ?」
「な、何の事だか……」
さっきのエロい視線バレてたか〜。
「もう一つは心から好きな場合です」
「心から?」
「そうです」
ヴィヴィアンが口を挟む。もしかしたらライラさんが言いたい事を何となく予想しているのではないのだろうか。
「相手を心から好きな場合、その人一点を見つめるんです」
ライラさんは何処か寂しげに微笑み、言った。
「セイカさんのヴィヴィアンさんを見つめる視線は、正に心から好きな人を見つめる視線です」
「セイカ、お前……」
ヴィヴィアンは大層驚いていた。や、止めてよ恥ずかしい。
「彼の態度だけみればふざけたものですが、貴女への好意は本物です。ヴィヴィアンさんはバジリスクですから仕方がないですが、一度は目隠しを取って、彼の瞳を確認してはいかがですか?」
ヴィヴィアンは何とも言えないと言った表情で話を聞いていた。
話終えると、ライラさんは踵を返して泉に向かっていった。
「は〜あ〜、まさか失恋するなんて思いませんでした。身体的なものと心からのものとどちらが強い好意かは言うまでもありません。おこぼれに預かろうなんて、逆に惨めです」
ライラさんは盛大に溜め息を吐いた。
「セイカさん」
「何?」
「貴方は魔物娘をフッたんです。それは並大抵の事ではありません。ヴィヴィアンさんと末永くお幸せに。さもないとまた拐いに来ますから」
ライラさんはそう言い残し、泉の中へと去っていった。
……直後、僕らの空気は少し気まずいものへと変わっていった。
16/04/24 03:10更新 / アスク
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