連載小説
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デートとオアシス
僕が住んでいる洞窟は砂漠と岩壁地帯みたいな所にに囲まれている。
近い絵面としては『ス○ー・ウ○ーズ』のタ○ゥイーンみたいな場所である。ほら、第一部のレースのとことか。
ヴィヴィアンはそんな所で狩りだとかしながら生きてる。
砂漠って結構暑いからただでさえ厳しい。そのなかで暮らしていると言うのはかなりのもんだよ。
流石ヴィヴィアン、可愛いし逞しいね!
まあ、実際は死ぬほど暑い訳じゃないけど。
で、僕は何をしているかって?

聞いて驚け専業主夫である!

……たいしてインパクトないね。
「戻ったぞ。セイカ」
おっと、愛しのヴィヴィアンが蛇の足でもって帰って来た!
「お帰りヴィヴィアン!この後何にする?」
「……何がだ?」
何だか呆れた様子。
「ご飯にする?お風呂にする?それともーー」
「飯だ」
「……はーい」
最近ヴィヴィアンにスルースキルと言うか、防御スキルが身に付いた気がする。
まあ帰ってくる度に同じ質問じゃ慣れるか。
全く、最後まで言わせてくれても良いと思うんだけど。
もしかして照れ隠しだとか?なら可愛いので許す!
「……良い匂いだな」
「やだ嬉しい!僕そんなに良い匂い?」
「あぁ、なかなかーーゴホン!……い、いや、料理の匂いだ」
おや、今一瞬素直な声が……。
ツンデレめ〜!
「そっかぁ、じゃあ食事にしましょ。もうすぐ出来るから」
「ああ、ありがとう」
「その後はヴィヴィアンも頂きーー」
「火を見ていなくて良いのか?」
おっとっと。火が危ないくらい大きくなってる!
僕は慌てて鍋を手に取った。
「ほっ、ふう。救出成功」
幸い料理に別状は無いようだ。
「という訳でご飯だよ〜!」
今日のメニューは聞いて驚けカレーだ!
こんな砂漠でよく作れたなって?照れるな〜!
僕達は床に座り盛られたカレーを食べ始めた。
「お前また街に行ったのか?」

……ヴィヴィアン察しが良い。

「うん。そうだよ」
「やはりな。嗅ぎ慣れない匂いだ」
実はここから歩いて一、二時間の所に砂漠の街がある。
何かないかな〜、と思って砂漠を散策してたら見つけたんだ。
普通、一、二時間も生身で砂漠はかなりキツいんだけど、ここの砂漠って真っ昼間でもそこまで暑くないんだよね。何でだろ。
初めて街に出た時は田舎の実家から上京した気分だった。東京とは比べられない文明の差だけど。
そこの商店街で綺麗な人外お姉様に会って必要な食器や食材を買って戻って料理する。
品揃えはそこまでたいした事はなかったんだけど、料理をするにはあまり困らなかった。
「あそこには行くなと言っただろう」
ヴィヴィアンは溜め息を吐いた。
ヴィヴィアンは何故かあまり街に行こうとしないし、僕が行くのも良く思ってない。
「でも料理の材料には事欠かないんだ」
「私の狩りで充分だろう?」
「お肉ばかりは健康に悪いよ」
「魔物に健康は関係ない」
僕には関係あります。
「そもそも何で行っちゃ駄目なの?」
「男が一人で街をふらついていたら危険だ。その内そこらの女に襲われるぞ」
何それ、いつの間に男女の貞操観念は逆転したの?
あー、でも魔物娘って結構淫乱って言ってたけ。それでいて皆美女とか、本当に夢の様な世界だね!
でも確かに声を掛けられたり遠目から獲物を狙う様な視線を感じた気がしなくもなかった。
……ん?でもちょっと待って?
「ヴィヴィアン、もしかして妬いてる?」
「ーー!ケホッケホッ!」
ヴィヴィアンは噎せた。
「な、ば、馬鹿な事を言うな!私は、ただ、その、何だ、えっと……!」
ヴィヴィアンは動揺して言葉が出ない。
顔を赤くして必至に言い訳を考えてる。
可愛いな〜。
「……あの、だから……!……んっ」
僕は彼女の頭を撫で、にやけの混ざった微笑みをヴィヴィアンに向ける。
「大丈夫だよ。僕はヴィヴィアンが大好きだから」
「…………ぅ、私はお前の事そこまで好きじゃない!……ただ同居人としてだなぁ……」
ヴィヴィアンは顔を俯かせ口ごもる。
好きな人に「好きじゃない」と言われるとちょっと傷つく。
……嘘なのは分かりきってるんだけど。
「そっかぁ。好きじゃないのかぁ。じゃあ僕は街に行って可愛くて美人な人外お姉さんを探してお付き合いしてイチャイチャラブラブするよ。ほんの数日間だったけど楽しかったよ……」
はぁ、と僕は溜め息を吐いて腰を浮かせた。
「な、待て、おい!別に嫌いな訳じゃないんだ!ちょっと待ってくれ!分かったから行くな!お前の気持ちは考えておくからぁ‼」

ニヤリ。

「そっかぁ!僕の告白をOKしてくれるんだね!」
「いや、考えておくと言うだけで別に……」

「OKしてくれるんだね!?」

「考えておくと言っただろう‼」

ム〜、固いな。ツンデレめ。
「……仕方ないな〜。良い返事を期待するよ?」
「…………善処する」
ヴィヴィアンは渋々と言った感じで承諾する。
しかしここでおとなしく引き下がる僕じゃない。
「ねえ、今度デートしない?」
「はぁ?」
「今度街に遊びに行くなりオアシスに行くなりしようよ!」
「な、それは……」
ちなみに僕はオアシスに行ったことはない。ヴィヴィアンがたまにオアシスで魚を獲って来たりするので近くにあるのを知ってるだけだ。
「あ、せっかくだし、今度オアシスに連れてってよ!」


そして次の日、僕とヴィヴィアンのデートが結構される。
ムフフ〜!オアシスであんな事こんな事しちゃうぞ〜!
「いや、デートではない」
え?
「デートでしょ。男と女、二人きり、お出掛け。でしょ?」
何か間違ってますか先生?
「いや、それを言ったら普段同居しているのは何なのだ?」
「結婚?事実婚?」
「分かった。聞いた私が馬鹿だった」
ヴィヴィアンは呆れて溜め息を吐いた。
僕らが今進んでいるのは砂漠とは反対側の岩壁地帯。
今はそこの洞窟だったり谷間だったりを抜けている所だ。
「ねぇねぇ、オアシスってどんな所?広い?涼しい?泉は綺麗?」
「妙にハイテンションだな」
「ヴィヴィアンとのデートだよ?そりゃウキウキワクワクするじゃない!」
『デート』と言う言葉に顔を赤らめつつもヴィヴィアンはその言葉を否定する。
「だからデートではない」
「じゃぁ何さ?」
「オアシスへの道案内だ」
ちっ、即答か。クーデレめ。
「にしても、ここは日陰が多いだけあって涼しいねぇ」
上を見れば岩の天井や日が差し込む大きな裂目。本当に『○ター・○ォーズ』のタト○イーンみたいな場所だ。
「ああ、普段あの砂漠はそこまで暑くないが、たまに砂漠らしい気温まで上がる日があってな。その時はここを通ってオアシスで魚を獲るんだ」
「へぇ。……あ」
「お、着いたな」
歩くこと一時間半で目の前に天井からではない日光が見える。出口だ!
「……ぉお!」
出口を抜ければそこには正にオアシスと言うにふさわしい景色が僕の視界に映っていた!
広い泉にそこだけ生い茂る緑。緑の中に幾つか並ぶヤシの木みたいな木!
「どうだ?」
「うん、良いね!」
勢いに任せてサムズアップ!
「フフ、そうか」
はしゃぐ僕の様子にヴィヴィアンは笑う。
「良い景色だろう?」
「うん、良い景色だね!……あれ、ヴィヴィアン、見えてるの?」
ヴィヴィアンは今仮面付けてるよね?
「ん?いや、いつもは目隠し等付けていないからな。ここの景色はとっくの昔に堪能したよ」
ヴィヴィアンは微笑みながら返答した。
「そっかぁ。外しても良いんだよ、それ?」
「駄目だ。お前に毒を浴びせたくない」
「ヴィヴィアンの綺麗なおめめを拝みたい」
「だから駄目だ。お前の短所はしつこい所だ。自覚しろ!」
「好きじゃなきゃしつこくしないよ」
「すっ!……全く、良くそんな恥ずかしい台詞を…………」
ヴィヴィアンが真っ赤な顔で何か言っている。小さくて聞き取れないや。
まぁいいや。取り敢えずこんな広い泉に来たんだ。まずやることは。
「……ん?お、おい!何故脱ぐ!?」
「え?泳ぐから」
愚問だな。何を言う。
「駄目だ!ここは遊びで泳げる程安全じゃない!」
「何で?」
「このオアシスの泉には主が居るんだ!」
「え?泉で主?沼とかなら聞いたことあるんだけど」
ヴィヴィアンは溜め息を吐いた。僕変な事言った?
彼女が説明し始めた。
「このオアシスの水源はここからそう遠くない海だ。だからこの泉には地下洞窟があって、そこから海の魚がやってくる」
「なるほど、通りでしょっぱい訳だ」
僕は水を掬ってペロリと舐める。
「で、魚達に紛れて主まで住み着く様になったんだ」
「ちなみに主ってどんなの?」
「…………」
……あれ、黙った。何だか気まずい顔してる。
「……実は見ていないんだ。仮面を付けたまま潜っていたから」
「何で付けてるのさ!?」
「その方が魚の位置とか分かりやすいんだ!……それに、あんなに大きな存在は、……少し……怖い」
おっとぉ!恥じらってさらに弱みを見せたぁ!ヴィヴィアン選手、これは高得点です!
「……見るのが怖いんだ」
肩を抱く姿でさらに加点が!……危うく鼻血がでるとこだった。
「……そっかぁ。じゃあ代わりに僕が見てくるよ」
「な、おい!」
僕は大きく息を吸って勢い良く泉に飛び込み、潜り始める。
凄い。この泉、深さが五、六十メートルはある。規模的にどうなの?
その中をゆうゆうと泳ぎ回る魚達。本当に小さいのから腕一本分のウツボみたいな魚までいっぱいだ。……噛まれるの嫌だから近付かないでおこう。
さて、主は何処かな。と底を見てみる。
良く見れば底の方に大きな穴がある。あそこに海への通り道があるみたいだ。
その近くに黒い影。底に行くに連れ暗くなってくるから見えづらい。もうちょっと近付こう。
僕、これでも泳ぎは得意なんだ。測った事はないけど、多分三十メートルは行ける。
で、今ちょうど三十メートル切ったかな。ちょっと耳が痛いので耳抜き。
少しは見えてきた。タコか何かかな。何本も長い足が。
…………あれ、何だろう。少しって言うか大人一人分くらいあるんだけど。
しかも視線を感じる。……もしかしてこっちを見てる?

あ、動いた。……近付いて来てる!ヤバッ!

僕は慌てて浮上する。
下を見るとイカっぽい生き物が僕の倍の速さで追っ掛けてくる!
逃げないと喰われるかもしれない!
こんな時にどうでも良いようなバラエティー番組で取り上げられた人喰い巨大イカを思い出した。
喰われたらヴィヴィアンの可愛い(多分)おめめを拝めない!
僕はやっとの思いで水面に顔を出す。
「……セイカ?」
「ヴィヴィアン、助けて‼」
「セイカどうした、大丈夫か!?」
「ぬ、主が‼」
僕はヴィヴィアンの許へ泳ぐけど、足を掴まれ水中に引き込まれる。
「ぁ、わプッ‼」

「セイカァ‼」


気付けばそこは泉の底。
そこで僕が見たのはイカの足を持った女性の姿だった。
直後、唇に柔らかいものが触れた。
16/04/15 03:40更新 / アスク
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■作者メッセージ
ヒーローピンチ!
確かそんな名前の雑誌か何かがあった気が。
……ヒロインか。純愛派だから読む気ないけど。

それにしても聖火くんの地文が暴走してるのは気のせいですかね?

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