深い愛に沈む
ジパングの北方で古くから港町として栄えた街がある。
その街は夜景がきれいだとかガラスやオルゴールの工房があるとかで観光も人気がある街であったりする。よく言えばレトロ、悪く言えば古臭い街だ。
そんな街の夜景を楽しむため自治体が運営している遊覧船に、多くの観光客が乗っている。
人々がカメラ片手に夜景を楽しむ中、帽子を目深にかぶりサングラスをかけた男が一人いた。彼は人々が集まる船首から少し離れた後方でやや憂鬱そうに佇み、船が発する光を反射する海面をじっと見つめている。それは見る人によっては今にも海に身を投げてしまうのではと勘違いしてしまうかもしれない。
男の名前は、松本肇という。
以前の彼は比較的活発で、周りからも好青年という評価を受けていた。そんな彼から以前の様な活気や勢いを奪ったのは、半年前に起こった火事だった。在籍するゼミのメンバーと学会に出席するために利用したホテルで火事が起きたのだ。肇はその火事で顔や背中などに重度の火傷を負ってしまい、回復に時間と忍耐を要した。
しかし、ただそれだけが彼を変えてしまったのではない。
問題はその後だった。適切な治療によって傷は全治したのだが、彼の背中や顔など広範囲に広がった浅黒い火傷の跡を消す事が出来なかった。そしてその傷跡に向けられた事情を知らない人々の好奇の目は彼の心に幾重にもダメージをあたえた。最初は彼も気にしないように努めたのだが、見知らぬ人の視線や小さく囁く声、小さい子供たちに指を差されるという行為は非常に彼を憂鬱にさせた。次第にそれを回避するために彼は必要最低限にしか外出しなくなり、友人たちとの交友もほとんどなくなっていった。
そんな彼をこのジパングの北方まで連れてきたのはその友人たちだった。
「どこか旅行にでも行って思いっきり遊んで、憂さを晴らそう！！」魔物娘たちが跋扈するこのジパングで今まで浮いた話の一つさえない青春を過ごした、ある種独特の仲間意識が強い友人たちはいつでも彼の心配をしてくれていた。彼は最初、その話を聞いた時には断ろうと思っていたが、同時に友人たちの思いやりを無下にするのも申し訳ないと思った。それに自分の事を全く知らない場所に行くのも、気持ちの整理をつけるのにいいかもしれないと考え旅行へ行くことを決めたのだった。
この話はそんな彼がある魔物娘と出会い、愛を育んでいく物語。
最初に感じたのは下から突き上げるような強烈な衝撃だった。
楽しそうに夜景を眺めている友人たちから少し離れた場所で、海面に視線を落としていると船は大きく揺れて傾き、船尾のほうからゆっくりと沈んでいくのが分かった。これが事故なのかどうかは勿論何一つ分からないが、冬の海上で舟が沈没してしまうかもしれないという危機的状況にあることだけは分かった。しかし人間というのは案外のんびりしている生き物なのか、傾く船体の手すりになんとかしがみついていた肇の頭には一昔前に社会現象の様に流行した洋画が頭の中に浮んでいた。だがこの船は豪華船ではないし、隣にローズが居るわけでもない。それにあの船は真っ二つに折れていたしなあとそこまで考えていた馬鹿な妄想を直ぐに捨て去り、肇が友人たちの無事を確認しようとしたその瞬間―――
「な、んだ…これ。イカの足？」
彼の前に突然、二本の触腕が現れた。
先がぷっくりと膨らみ、先端に行くほど青が濃くなっているそれには沢山の吸盤が付いている。海から差し出されたそれはまさにイカの…しかし、今までに見た事が無いほど大きな足だった。
「ってうわっ…何を！？」
それは驚きのあまり固まる肇に容赦なく襲いかかった。
片方はベルトの様に肇の腰にがっちりと絡みつき、もう片方はまるでたすきがけでもするかのようにするすると上半身にその身を絡ませた。二本の足は獲物を捕まえたことを確かめるように力をぐっと入れて締め付け、数え切れない多くの吸盤を吸いつかせる。沢山の吸盤が張りつく感覚や、逃げられないと直感的に分かる力で締め付けてくる触腕に恐怖が沸き上がった。
「誰か…たすけ、ぐぅ、ぁあ！！？」
舟が沈没するかもしれないという緊急時、誰もが自分自身の事で手一杯であるこの状況で馬鹿な事だと分かっていても、助けを求める言葉を口にすることをやめることができなかった。だが、非情にもそれをあざ笑うかのように二本の足は力を込めて海中へと肇の体を引っ張り始めた。ただでさえよくわからないこの状況で、さらに海中に引き込まれるという恐怖になんとか抵抗しようと船体にしがみつくが、その有無を言わせない強力な力の前に肇の抵抗は一瞬で打ち破られる。まさに風の前の塵、風前の灯火というやつだ。こうして成人男性の平均体重ほどある肇の体は楽々と海中へと引き摺りこまれた。
海中へ今まで体験した事が無いほどの力で引き込まれ、パニックに陥る寸前にまで追い込まれた肇が意識を保つことができたのはここまでだった。最後のその一瞬、女性の笑い声を聞いたように感じたが、それが走馬灯なのか本物なのかを確かめることは出来なかった。
「っは！！？」
多少の息苦しさを感じながら沈んだ意識を手繰り寄せる。
「あら、ようやく御目覚めになられたのですね。」
「……！？」
「おはようございます。」
目覚めると、目の前にはぞっとするほど美しい女の笑顔が浮かんでいた。
「おはよう…って」
「中々御目覚めにならないから心配いたしました…」
「あんた誰だ？」
そこまで言って肇は女を観察する。
髪は紫色で顔はやや面長の瓜実、それに端正な目鼻が浮かぶ。暗闇の中で月光を浴びているようにぼんやりと光る透明な白い肌に、目尻や頬を彩る赤がとても鮮烈で美しい。その顔からのびるすらりとした首筋をたどると、黒のドレスの様な服から覗く目を釘づけにするほど大きな乳房が待ち構えていた。大きいが決して下品だと思わせないそれはまさに魔性のものだ。肇は美しくも可憐なその姿に思わず見とれてしまう。それはまさに一目惚れというやつなのだろう、彼女を見た瞬間にまるで心臓が壊れてしまったかのように鼓動が速くなっていく。勿論今まで沢山の魔物娘を見る機会があったが、こんな気持ちになったのは初めてだった。そのことも合わさり肇の頭の中はぐしゃぐしゃになっていく。
「私ですか？」
混乱する肇とは対照的に女はおっとりとした口調で自己紹介を始める。
「私は美那。クラーケンの美那と申します。」
「クラーケンって…まさかあの足は！？」
肇はその言葉で我に返り彼女の下半身に目をやった。
するとそこには人間の下半身は無く、軟体で細長いイカの足が蠢いている。思わず釘づけになっていると、先程肇を海中へと引きずり込んだ先の青い特徴的な二本の足がこちらにのびてきて、握手を求めるように絡みついてきた。吸盤の吸いつく強さなど全く違うが、あの足の正体が彼女であることを嫌というほど理解した。
「はい。船でこちらを覗いていらしたあなた様をここまで御招きしたのは私です♡」
「御招きって、俺がどんなに驚いたと…」
「まあ、あなた様も驚かれたのですね！？」
「当り前だろう…あんな」
「私も心の底から驚きました。あなた様を見た瞬間、あなた様という存在と出会う事が出来たその時に、私の旦那様になる方はこの方しかいないと本能で理解をし、了解を通して納得したのです。あの感覚は理屈などでは説明できない…そう運命だと私は信じております。まさか…それをあなた様も感じてくださっていたとは、やはりこの縁は本物だと言う事なのですね！！美那はこの上なく幸せです♡」
「……………違う」
「ああ成程…運命などというあやふやな言葉ではなく、私たちの縁は必然と呼ぶべきだとおっしゃるのですね。さすがです、あなた様♡美那は改めて御見それいたしました♡」
「………。」
なにやら一人で盛り上がり、頬に手を置きうっとりとした表情で微笑む魔物娘に完全にペースを握られてしまった。
「ああ、素敵♡まさかこんなドラマチックでロマンチックな恋をする事ができるなんて〜♡それも全てあなた様…」
「…？」それまでの笑顔から一変して突然真顔になった彼女が何を言うのか分からず身構えてしまう。
「ところであなた様は童貞で間違いありません、よね？」
「ぶっー！？」
「ぶーってまさかもうお相手が！？」
「いや、いない。いるわけがない。それぐらい魔物娘なら分かるだろ！？」
「確認は大事なのですよ、あなた様………えっと」
「こ、今度はなんだよ！？」
「あなた様の御名前はなんとおっしゃるのですか？」
それまで嬉々として運命だの必然だのといっていた相手の名前を今頃になって気にする彼女のおおらかさというか思考の独自性に圧倒されてしまった肇は、停止してしまった頭を何とか動かし素直に美那の質問に答えた。
「肇、松本肇だよ。」
「は・じ・め…なんとも素敵な御名前です。ますます肇様が好きになりました♡」
「素敵だなんて…そんな馬鹿な事を…」
そこまで言ってふと肇は我に返った。思わず頭や顔に手をやってしまう。
「どうなさいました？」
「………。」
肇は固まってしまった。
あまりにも非日常的な出来事の連続に圧倒されて今の今まで気がつかなかったが、自分がかぶっていた帽子も、かけていたサングラスも無くなっていた。つまり先程からずっと醜い傷跡をこの美しい人外にさらしていたと言う事だ。それを理解した途端、ぐっと心が冷たくなっていくような気がした。
「俺の…俺のサングラスと帽子は？」震えた声でなんとか尋ねる。「海に入るまで俺が身に着けていた…」
「ああ…どうやらここまで御招きする間にどこかへいってしまったようです。」
「………」
「海底では帽子もサングラスも必要があるとは思えませんが…大切なものだったのですか？」
「ああ、当り前だ。こんな醜い肌を人前にさらすなんて…」
「肌？」美那は首を傾げながら相槌をうつ。
「あんたは何とも思わないのか？」
「何がでしょう。」
「こんな焼け爛れた肌をした奴なんて嫌だろう？みんなそういうんだ！！俺の顔を見て笑ったり、指を差したり…俺なんか誰にも相手にされないんだよ！！」
感情が高ぶり汚い言葉を美那にぶつけてしまう。
その言葉には火事に遭遇してからの自分自身を受け入れられない苦しみや、目の前の魔物娘に醜い自分を受け入れて貰えないのではといった恐怖が混じっている。我ながらなんて幼稚で、自己勝手なのだろう―――そう思うと余計に自己嫌悪がひどくなってきた。
「だから何だと言うのです？」
だが、美那は全く表情を変えずそう言った。
「え？」
想像もしなかったリアクションを起こした彼女に呆然としていると、にわかにこちらを見つめる彼女の白い肌に変化が起こり始めた。
「ちょ、ちょっと…あんた」
ニキビの様な小さな斑点が体に浮びあがったかと思うと、それがだんだんと大きさを増しながら全身に広がっていったのだ。白く雪の様に美しかった肌はあっという間にくすみ、先程まで輝いていた肌とは思えないほど浅黒く変色していた。変化を遂げた彼女の肌の色はまさに自分の体に広がる火傷痕と同じかそれ以上のものだ。
「何をしているんだ…一体」
「ふぅ…私はイカの魔物娘、クラーケン。このように肌の色を変化させることぐらいわけはありません。これで御揃いですね、肇様。」
「え…？」
「では改めてお聞きしますね、肌の色や傷跡が何だと言うのです。それともこのような肌の色になった私は、あなたの御言葉をお借りするならば『誰にも相手にされない』…そんな陳腐でくだらない存在だとおっしゃいますか？」
「そんなことは」
「なら、何故御自分を卑下なさるのです。例え御身にどれほどの傷跡があろうともあなたという存在に一体何の影響があると言うのです。私は、あなたの外見を見て求愛しているのではありません。松本肇という存在そのものを求めているのです。」
「……っ」
「信じられませんか？」
今まで聞いた彼女の言葉の中で一番冷たい声色にたじろぎながらもゆっくりと頷くと、彼女は頭をふりながら語りかけてきた。
「率直に言わせていただければ、あなたはその傷跡を言い訳に相手に拒まれることをただ恐れているだけなのではないですか。自分が嫌われるのはこの傷のせい、相手がこちらを向いてくれないのも全ては傷のせいだと…現実から逃げているようにしか見えません！！」
「…お前っ」
あまりにも図星で、しかも反論を許さない彼女の言葉が突き刺さった。
そんな肇に音もなくクラーケンは近寄り、まるで労わるかのようにそっと足を体に絡ませ胸板に顔を埋めながら言葉を続ける。その言葉は先程の冷たいものとは一転し、慈愛に満ち溢れるものだった。
「安心してください。私は決して肇様から逃げません。だって私は肇様を心の底から愛しているのですから」
「…本当に？」
「愛というのは不思議ですね。だって私と肇様は出会ってまだ一時間もたっていないのに…あなたと言葉をかわしたい、あなたと愛し合いたい、あなたを笑顔にしたい、あなたの隣で私も笑いたい…そんな考えで私の頭はいっぱいなのです。」
美那はうっすらと涙をその眼に溜め、だけれど人懐っこい笑顔を浮かべてこちらを見上げる。
その笑顔は先ほどまでの美しい白い肌の時と寸分も変わりの無い魅力を感じさせる。その頬笑みは彼女が言った言葉を体現していた。まさに外見など関係ない、彼女という存在がこんなにも愛おしく大切な存在だと自分が思っているからこそそう感じさせるのだろう。ならば、自分はどうだろうか…。あの火事以来自分はこんな笑顔を他人に向けていただろうか。がらがらと自分の中で何かが崩れていく様な音が、聞こえた気がした。
「(俺が…ただ逃げていただけじゃないか)」
そんな簡単な答えにやっとたどり着いた。いや、目の前の彼女が教えてくれたのだ。
「こんな俺を愛してくれて…」肇はそっと目の前にいる彼女を抱きしめた。「ありがとう。」
「やんっ…嬉しい♡」
彼女はぱあっと明るい表情を浮かべ、足をさらに複雑に体に絡みつけぐっと力を込める。
「ねえ、美那。」
「はい、なんでしょう」
「君の愛に応えるために、俺は何をすればいいかな？」
抱きしめる腕の力を強めつつ、彼女に尋ねる。すると美那はこちらを見上げ僅かに小首を傾げたかとおもうと甘えるような声でおねだりをしてきた。
「それでは…キスを、私にキスをしていただけますか？」
「…分かった。き、キスも初めてだから、その上手く出来なかったらごめん。」
「くすっ、私からすれば初めてを頂けると言う方が嬉しいのです。だから御気になさらないでください♡」
そう言って微笑む彼女の顎にそっと手を持っていき、ゆっくりと顔を近づけていく。
「じゃあ…いくよ。」
「はい、肇様♡」
ちゅ、ちゅぅ…
「ん、ぅん…♡」
「ちゅ、んちゅ♡」
恐る恐る啄ばむ様なキスを美しい唇に落とす。
すると彼女はそれを嬉しそうに受け止め、腕を肇の首に絡めさらに強請るようにひき寄せた。どうやら自分は失敗しなかったという安堵感を感じつつ、期待にこたえるようにそっと唇を開けて舌を彼女の口内へ差し入れた。
「あん、んく！！んちゅぅぅ♡」
「ぅんちゅ…れろ、ちゅぱ…」
一瞬だけ驚いた様な反応を美那はしたが、直ぐに喉の奥の方から喜んだ声を上げながら肇の舌に自分の舌を絡めつけてきた。それは彼女の足の様に器用に動き、おずおずと進入してきた肇の舌を歓迎した。最初は初めてキスをしたという緊張感や動揺にうろたえていたが、キスを通じてそれらの感情を覆い尽くすほどの彼女の愛情が伝わってくるような気がして、肇はあっという間に夢中になった。
「(気持ちいい、キスだけで…なんて気持ちいいんだ…)」
ただ口づけをしている、ただそれだけの行為なのに今まで経験した事の無い様な快感や満足感が肇の心の中に巻き起こっていた。それまで周りの魔物娘とのカップルが場所や時間を選ばずやたらとキスをしているのを見て疑問に思っていたが、何故彼女達がこうもキスをしたがっていたのか分かるような気がした。こんな甘美で、気持ちいい事をしたいと思うのは当たり前の事だ。肇はそんなことを考えつつ、美那に回す腕の力を込めつつキスに集中していった。
「んっちゅ…はぁ…うふふ、キスしてしまいました♡肇様と♡」
初めてのキスは、ゆうに数分間続いたディープなものだった。
「あぁ…俺も、美那とできて…嬉しいよ。」
「ありがとうございます♡…あの、肇様？」
「ん？何？」
「私、キスだけで…もう我慢できなくなってしまいました♡肇様、私の純潔を貰ってくださいますか♡？」
目をとろんとさせていた美那は、その眼に妖しい光を灯らせながら迫ってくる。
キスの間回していた腕をどけ、少し離れた美那は徐に人間の形をした上半身とイカの形をした下半身の境目辺りに手をのばした。そしてスカートの様な黒衣を掻きわけ、自身の秘部を肇にさらした。するとそこだけ淡いピンク色をした秘裂からはむせかえるほど甘い彼女の体臭を濃縮したような香りが匂い立ち、周りをベタベタに汚している愛液が肇の眼に飛び込んできた。
「それに…」
今まで見たことないような魅惑的なその光景に釘づけになっている肇の股間に美那はそっと手をのばす。
「肇様も…しっかりと興奮されているようですし♡」
「あぁ…」
既に限界まで勃起しているペニスを嬉しそうにさすりながら、妖しい笑みで美那は誘う。
「私と共に気持ちよく、なりませんか？」
「ああ、勿論だ！！」
「ひゃぅう、入って…きた♡！！」
にちゃぁちゅくっ…ずちゅ、じゅぷぷ
肇は頷くが早いかペニスを直ぐに露出させ、美那の女性器に押し当てた。
彼女の膣口は卑猥な水音と共にいとも簡単に口を開き、先走りを吐きだす男根を咥えこんだ。彼女の中は熱くうねり、進入してきたペニスに群がってくる。まだ亀頭が入っただけというのに気を抜けば射精してしまいそうになり、肇は気を引き締めゆっくりと腰を進めていく。すると彼女の純潔の証である処女膜に亀頭の先が触れる感触がした。
「いくよ、美那」
「はい…私を、肇様の女にしてくださいませ♡」
ぬちぃ、じゅるるぅぅ…ずりゅん
彼女に痛みを感じさせてはいけないと思い、ゆっくりと腰を押し進めていくと処女膜の真ん中より上部にある穴に亀頭がゆっくりと食い込んでいき、押し広がっていく感触がペニスを通じてリアルに感じられた。そしてその感触が亀頭の真ん中まできた時、ずるりと音がしたかと思うと彼女の純潔は散り、勢い余った亀頭が一気に彼女の最奥まで突き刺さったのだった。
「ぁあぁ♡！？お、く…までいっぱい♡いっぱい♡」
「はいった…くぅ」
美那は処女を失ったことで肉体的にも精神的にも軽いエクスタシーを感じてしまったらしく、ぴくぴくと全身、特に肇に絡みつく十本の足を細かく痙攣させていた。そして、軽い絶頂を向かえたせいか、先程まで彼女の肌に起こっていた変化が腹部の辺りから解け、元の綺麗な白い肌へと戻っていた。
「美那、この肌…」
「へぁ♡！？す、すみません…あんまり、にも、気持ちよくって…♡集中が途切れてしまいましたぁ♡い、今すぐ元に戻します♡」
「いや、いい…このままでいいよ」
「…え♡？」
きょとんとした顔でこちらを窺う美那をそっと抱きしめ、耳元でその理由を囁く。
「俺は自分の傷と一生向き合って行くと決めた。俺はもうこの傷を理由に逃げることはしない…。だから、美那も肌の色を変えないで、素肌のままで俺と向き合って欲しいんだ。頼む。」
「…はい。分かりました、肇様♡」
「愛してるよ、美那。」
「私もです。肇様♡」
「…ありがとう。じゃああまり長くはもたないと思うけど…」
そんな弱気な言葉を聞いた美那はくすりと笑みをこぼし、肇をぎゅっと抱擁して呟いた。
「そんなこと御気になさらず、目一杯私を愛してくださいませ♡」
ずちゅ、ぬぷ…ぬぷぬちゅ、ぴちゅぐちゅ
美那のその言葉がスイッチとなり、肇は腰に力を込めて動き始めた。
ピストンする度に美那のおまんこから漏れ出した大量の愛液がペニスによって撹拌される卑猥な音が聞こえてきて、否が応でも興奮を助長させる。それはどうやら美那も同じらしく、耳を真っ赤にさせながら自分の痴態を聞き、きゅっきゅっと膣を締め付け肇を絶頂へと導いた。インキュバスですらない人間の、しかも童貞の肇にその感触を我慢することは不可能だった。
「くぁ…もう、ダメ…出る、出るよ美那！！！」
「ください♡！！美那に肇様のザーメンをたっぷり注ぎ込んでください♡！！！」
ッビュ、ビュウ…ビュルル、びゅくっびゅくっ…
「…っかっは…出る！！！」
「いっぱい…いっぱい出てるぅ♡…あったかい♡」
今までしたことが無いほど長い射精を美那の中で行った。
精液はまるで堰を切ったかのようにとめどなくペニスから吐き出され、彼女の子宮口から進入し胎内を汚していった。美那もその感触で絶頂をむかえたらしく、幸せそうに腹をさすりながらさらにザーメンを強請るように膣を蠢かせた。そのせいか射精を終えて間もないと言うのに、ペニスは萎えるどころかさらに勃起したとさえ思うほど彼女の膣の中で硬度を増していた。それをいち早く察した彼女は肇の頬に手を置きながら優しく言う。
「肇様が、満足されるまで…どうか私の体を好きに使ってくださいね♡」
そんな彼女の優しさや思いやりが嬉しくて、肇は彼女に軽いキスを落として囁きかける。
「ありがとう…一緒に気持ちよくなろうな、美那！！」
「はい、肇様♡！！」
満面の笑みが浮かぶ美那を抱きしめつつ、再び肇はペニスの抽送を開始した。
こうして深海に再びクラーケンの嬌声が響き渡り、吐きだされたイカスミが数日間にわたって立ち込めたのだった。
…………………………
……………………
………………
数日後
「一つ、聞きたい事があるんだけど…」
「なんでしょう」
「俺は…これから一生この海底で生活することになるのかな？」
「……何か地上に未練でも御有りなのですか？」
「未練、か…。確かに未練といえば未練だ。」
「………。」
「あの船に乗っていた友人たちに言いたい事があってさ」
「言いたいこと？」
どこか不安げに尋ねる美那に肇は答える。
「お前たちの御蔭で、俺は最高の恋人と出会う事が出来た。これも全ては旅行に俺を誘ってくれた御蔭だ―――ありがとう」
ただそれだけを、伝えたいだけさ
そう言葉を締めくくった肇の顔には、本人も最後にいつしたのか分からないほど最高の笑顔が浮かんでいた。
その街は夜景がきれいだとかガラスやオルゴールの工房があるとかで観光も人気がある街であったりする。よく言えばレトロ、悪く言えば古臭い街だ。
そんな街の夜景を楽しむため自治体が運営している遊覧船に、多くの観光客が乗っている。
人々がカメラ片手に夜景を楽しむ中、帽子を目深にかぶりサングラスをかけた男が一人いた。彼は人々が集まる船首から少し離れた後方でやや憂鬱そうに佇み、船が発する光を反射する海面をじっと見つめている。それは見る人によっては今にも海に身を投げてしまうのではと勘違いしてしまうかもしれない。
男の名前は、松本肇という。
以前の彼は比較的活発で、周りからも好青年という評価を受けていた。そんな彼から以前の様な活気や勢いを奪ったのは、半年前に起こった火事だった。在籍するゼミのメンバーと学会に出席するために利用したホテルで火事が起きたのだ。肇はその火事で顔や背中などに重度の火傷を負ってしまい、回復に時間と忍耐を要した。
しかし、ただそれだけが彼を変えてしまったのではない。
問題はその後だった。適切な治療によって傷は全治したのだが、彼の背中や顔など広範囲に広がった浅黒い火傷の跡を消す事が出来なかった。そしてその傷跡に向けられた事情を知らない人々の好奇の目は彼の心に幾重にもダメージをあたえた。最初は彼も気にしないように努めたのだが、見知らぬ人の視線や小さく囁く声、小さい子供たちに指を差されるという行為は非常に彼を憂鬱にさせた。次第にそれを回避するために彼は必要最低限にしか外出しなくなり、友人たちとの交友もほとんどなくなっていった。
そんな彼をこのジパングの北方まで連れてきたのはその友人たちだった。
「どこか旅行にでも行って思いっきり遊んで、憂さを晴らそう！！」魔物娘たちが跋扈するこのジパングで今まで浮いた話の一つさえない青春を過ごした、ある種独特の仲間意識が強い友人たちはいつでも彼の心配をしてくれていた。彼は最初、その話を聞いた時には断ろうと思っていたが、同時に友人たちの思いやりを無下にするのも申し訳ないと思った。それに自分の事を全く知らない場所に行くのも、気持ちの整理をつけるのにいいかもしれないと考え旅行へ行くことを決めたのだった。
この話はそんな彼がある魔物娘と出会い、愛を育んでいく物語。
最初に感じたのは下から突き上げるような強烈な衝撃だった。
楽しそうに夜景を眺めている友人たちから少し離れた場所で、海面に視線を落としていると船は大きく揺れて傾き、船尾のほうからゆっくりと沈んでいくのが分かった。これが事故なのかどうかは勿論何一つ分からないが、冬の海上で舟が沈没してしまうかもしれないという危機的状況にあることだけは分かった。しかし人間というのは案外のんびりしている生き物なのか、傾く船体の手すりになんとかしがみついていた肇の頭には一昔前に社会現象の様に流行した洋画が頭の中に浮んでいた。だがこの船は豪華船ではないし、隣にローズが居るわけでもない。それにあの船は真っ二つに折れていたしなあとそこまで考えていた馬鹿な妄想を直ぐに捨て去り、肇が友人たちの無事を確認しようとしたその瞬間―――
「な、んだ…これ。イカの足？」
彼の前に突然、二本の触腕が現れた。
先がぷっくりと膨らみ、先端に行くほど青が濃くなっているそれには沢山の吸盤が付いている。海から差し出されたそれはまさにイカの…しかし、今までに見た事が無いほど大きな足だった。
「ってうわっ…何を！？」
それは驚きのあまり固まる肇に容赦なく襲いかかった。
片方はベルトの様に肇の腰にがっちりと絡みつき、もう片方はまるでたすきがけでもするかのようにするすると上半身にその身を絡ませた。二本の足は獲物を捕まえたことを確かめるように力をぐっと入れて締め付け、数え切れない多くの吸盤を吸いつかせる。沢山の吸盤が張りつく感覚や、逃げられないと直感的に分かる力で締め付けてくる触腕に恐怖が沸き上がった。
「誰か…たすけ、ぐぅ、ぁあ！！？」
舟が沈没するかもしれないという緊急時、誰もが自分自身の事で手一杯であるこの状況で馬鹿な事だと分かっていても、助けを求める言葉を口にすることをやめることができなかった。だが、非情にもそれをあざ笑うかのように二本の足は力を込めて海中へと肇の体を引っ張り始めた。ただでさえよくわからないこの状況で、さらに海中に引き込まれるという恐怖になんとか抵抗しようと船体にしがみつくが、その有無を言わせない強力な力の前に肇の抵抗は一瞬で打ち破られる。まさに風の前の塵、風前の灯火というやつだ。こうして成人男性の平均体重ほどある肇の体は楽々と海中へと引き摺りこまれた。
海中へ今まで体験した事が無いほどの力で引き込まれ、パニックに陥る寸前にまで追い込まれた肇が意識を保つことができたのはここまでだった。最後のその一瞬、女性の笑い声を聞いたように感じたが、それが走馬灯なのか本物なのかを確かめることは出来なかった。
「っは！！？」
多少の息苦しさを感じながら沈んだ意識を手繰り寄せる。
「あら、ようやく御目覚めになられたのですね。」
「……！？」
「おはようございます。」
目覚めると、目の前にはぞっとするほど美しい女の笑顔が浮かんでいた。
「おはよう…って」
「中々御目覚めにならないから心配いたしました…」
「あんた誰だ？」
そこまで言って肇は女を観察する。
髪は紫色で顔はやや面長の瓜実、それに端正な目鼻が浮かぶ。暗闇の中で月光を浴びているようにぼんやりと光る透明な白い肌に、目尻や頬を彩る赤がとても鮮烈で美しい。その顔からのびるすらりとした首筋をたどると、黒のドレスの様な服から覗く目を釘づけにするほど大きな乳房が待ち構えていた。大きいが決して下品だと思わせないそれはまさに魔性のものだ。肇は美しくも可憐なその姿に思わず見とれてしまう。それはまさに一目惚れというやつなのだろう、彼女を見た瞬間にまるで心臓が壊れてしまったかのように鼓動が速くなっていく。勿論今まで沢山の魔物娘を見る機会があったが、こんな気持ちになったのは初めてだった。そのことも合わさり肇の頭の中はぐしゃぐしゃになっていく。
「私ですか？」
混乱する肇とは対照的に女はおっとりとした口調で自己紹介を始める。
「私は美那。クラーケンの美那と申します。」
「クラーケンって…まさかあの足は！？」
肇はその言葉で我に返り彼女の下半身に目をやった。
するとそこには人間の下半身は無く、軟体で細長いイカの足が蠢いている。思わず釘づけになっていると、先程肇を海中へと引きずり込んだ先の青い特徴的な二本の足がこちらにのびてきて、握手を求めるように絡みついてきた。吸盤の吸いつく強さなど全く違うが、あの足の正体が彼女であることを嫌というほど理解した。
「はい。船でこちらを覗いていらしたあなた様をここまで御招きしたのは私です♡」
「御招きって、俺がどんなに驚いたと…」
「まあ、あなた様も驚かれたのですね！？」
「当り前だろう…あんな」
「私も心の底から驚きました。あなた様を見た瞬間、あなた様という存在と出会う事が出来たその時に、私の旦那様になる方はこの方しかいないと本能で理解をし、了解を通して納得したのです。あの感覚は理屈などでは説明できない…そう運命だと私は信じております。まさか…それをあなた様も感じてくださっていたとは、やはりこの縁は本物だと言う事なのですね！！美那はこの上なく幸せです♡」
「……………違う」
「ああ成程…運命などというあやふやな言葉ではなく、私たちの縁は必然と呼ぶべきだとおっしゃるのですね。さすがです、あなた様♡美那は改めて御見それいたしました♡」
「………。」
なにやら一人で盛り上がり、頬に手を置きうっとりとした表情で微笑む魔物娘に完全にペースを握られてしまった。
「ああ、素敵♡まさかこんなドラマチックでロマンチックな恋をする事ができるなんて〜♡それも全てあなた様…」
「…？」それまでの笑顔から一変して突然真顔になった彼女が何を言うのか分からず身構えてしまう。
「ところであなた様は童貞で間違いありません、よね？」
「ぶっー！？」
「ぶーってまさかもうお相手が！？」
「いや、いない。いるわけがない。それぐらい魔物娘なら分かるだろ！？」
「確認は大事なのですよ、あなた様………えっと」
「こ、今度はなんだよ！？」
「あなた様の御名前はなんとおっしゃるのですか？」
それまで嬉々として運命だの必然だのといっていた相手の名前を今頃になって気にする彼女のおおらかさというか思考の独自性に圧倒されてしまった肇は、停止してしまった頭を何とか動かし素直に美那の質問に答えた。
「肇、松本肇だよ。」
「は・じ・め…なんとも素敵な御名前です。ますます肇様が好きになりました♡」
「素敵だなんて…そんな馬鹿な事を…」
そこまで言ってふと肇は我に返った。思わず頭や顔に手をやってしまう。
「どうなさいました？」
「………。」
肇は固まってしまった。
あまりにも非日常的な出来事の連続に圧倒されて今の今まで気がつかなかったが、自分がかぶっていた帽子も、かけていたサングラスも無くなっていた。つまり先程からずっと醜い傷跡をこの美しい人外にさらしていたと言う事だ。それを理解した途端、ぐっと心が冷たくなっていくような気がした。
「俺の…俺のサングラスと帽子は？」震えた声でなんとか尋ねる。「海に入るまで俺が身に着けていた…」
「ああ…どうやらここまで御招きする間にどこかへいってしまったようです。」
「………」
「海底では帽子もサングラスも必要があるとは思えませんが…大切なものだったのですか？」
「ああ、当り前だ。こんな醜い肌を人前にさらすなんて…」
「肌？」美那は首を傾げながら相槌をうつ。
「あんたは何とも思わないのか？」
「何がでしょう。」
「こんな焼け爛れた肌をした奴なんて嫌だろう？みんなそういうんだ！！俺の顔を見て笑ったり、指を差したり…俺なんか誰にも相手にされないんだよ！！」
感情が高ぶり汚い言葉を美那にぶつけてしまう。
その言葉には火事に遭遇してからの自分自身を受け入れられない苦しみや、目の前の魔物娘に醜い自分を受け入れて貰えないのではといった恐怖が混じっている。我ながらなんて幼稚で、自己勝手なのだろう―――そう思うと余計に自己嫌悪がひどくなってきた。
「だから何だと言うのです？」
だが、美那は全く表情を変えずそう言った。
「え？」
想像もしなかったリアクションを起こした彼女に呆然としていると、にわかにこちらを見つめる彼女の白い肌に変化が起こり始めた。
「ちょ、ちょっと…あんた」
ニキビの様な小さな斑点が体に浮びあがったかと思うと、それがだんだんと大きさを増しながら全身に広がっていったのだ。白く雪の様に美しかった肌はあっという間にくすみ、先程まで輝いていた肌とは思えないほど浅黒く変色していた。変化を遂げた彼女の肌の色はまさに自分の体に広がる火傷痕と同じかそれ以上のものだ。
「何をしているんだ…一体」
「ふぅ…私はイカの魔物娘、クラーケン。このように肌の色を変化させることぐらいわけはありません。これで御揃いですね、肇様。」
「え…？」
「では改めてお聞きしますね、肌の色や傷跡が何だと言うのです。それともこのような肌の色になった私は、あなたの御言葉をお借りするならば『誰にも相手にされない』…そんな陳腐でくだらない存在だとおっしゃいますか？」
「そんなことは」
「なら、何故御自分を卑下なさるのです。例え御身にどれほどの傷跡があろうともあなたという存在に一体何の影響があると言うのです。私は、あなたの外見を見て求愛しているのではありません。松本肇という存在そのものを求めているのです。」
「……っ」
「信じられませんか？」
今まで聞いた彼女の言葉の中で一番冷たい声色にたじろぎながらもゆっくりと頷くと、彼女は頭をふりながら語りかけてきた。
「率直に言わせていただければ、あなたはその傷跡を言い訳に相手に拒まれることをただ恐れているだけなのではないですか。自分が嫌われるのはこの傷のせい、相手がこちらを向いてくれないのも全ては傷のせいだと…現実から逃げているようにしか見えません！！」
「…お前っ」
あまりにも図星で、しかも反論を許さない彼女の言葉が突き刺さった。
そんな肇に音もなくクラーケンは近寄り、まるで労わるかのようにそっと足を体に絡ませ胸板に顔を埋めながら言葉を続ける。その言葉は先程の冷たいものとは一転し、慈愛に満ち溢れるものだった。
「安心してください。私は決して肇様から逃げません。だって私は肇様を心の底から愛しているのですから」
「…本当に？」
「愛というのは不思議ですね。だって私と肇様は出会ってまだ一時間もたっていないのに…あなたと言葉をかわしたい、あなたと愛し合いたい、あなたを笑顔にしたい、あなたの隣で私も笑いたい…そんな考えで私の頭はいっぱいなのです。」
美那はうっすらと涙をその眼に溜め、だけれど人懐っこい笑顔を浮かべてこちらを見上げる。
その笑顔は先ほどまでの美しい白い肌の時と寸分も変わりの無い魅力を感じさせる。その頬笑みは彼女が言った言葉を体現していた。まさに外見など関係ない、彼女という存在がこんなにも愛おしく大切な存在だと自分が思っているからこそそう感じさせるのだろう。ならば、自分はどうだろうか…。あの火事以来自分はこんな笑顔を他人に向けていただろうか。がらがらと自分の中で何かが崩れていく様な音が、聞こえた気がした。
「(俺が…ただ逃げていただけじゃないか)」
そんな簡単な答えにやっとたどり着いた。いや、目の前の彼女が教えてくれたのだ。
「こんな俺を愛してくれて…」肇はそっと目の前にいる彼女を抱きしめた。「ありがとう。」
「やんっ…嬉しい♡」
彼女はぱあっと明るい表情を浮かべ、足をさらに複雑に体に絡みつけぐっと力を込める。
「ねえ、美那。」
「はい、なんでしょう」
「君の愛に応えるために、俺は何をすればいいかな？」
抱きしめる腕の力を強めつつ、彼女に尋ねる。すると美那はこちらを見上げ僅かに小首を傾げたかとおもうと甘えるような声でおねだりをしてきた。
「それでは…キスを、私にキスをしていただけますか？」
「…分かった。き、キスも初めてだから、その上手く出来なかったらごめん。」
「くすっ、私からすれば初めてを頂けると言う方が嬉しいのです。だから御気になさらないでください♡」
そう言って微笑む彼女の顎にそっと手を持っていき、ゆっくりと顔を近づけていく。
「じゃあ…いくよ。」
「はい、肇様♡」
ちゅ、ちゅぅ…
「ん、ぅん…♡」
「ちゅ、んちゅ♡」
恐る恐る啄ばむ様なキスを美しい唇に落とす。
すると彼女はそれを嬉しそうに受け止め、腕を肇の首に絡めさらに強請るようにひき寄せた。どうやら自分は失敗しなかったという安堵感を感じつつ、期待にこたえるようにそっと唇を開けて舌を彼女の口内へ差し入れた。
「あん、んく！！んちゅぅぅ♡」
「ぅんちゅ…れろ、ちゅぱ…」
一瞬だけ驚いた様な反応を美那はしたが、直ぐに喉の奥の方から喜んだ声を上げながら肇の舌に自分の舌を絡めつけてきた。それは彼女の足の様に器用に動き、おずおずと進入してきた肇の舌を歓迎した。最初は初めてキスをしたという緊張感や動揺にうろたえていたが、キスを通じてそれらの感情を覆い尽くすほどの彼女の愛情が伝わってくるような気がして、肇はあっという間に夢中になった。
「(気持ちいい、キスだけで…なんて気持ちいいんだ…)」
ただ口づけをしている、ただそれだけの行為なのに今まで経験した事の無い様な快感や満足感が肇の心の中に巻き起こっていた。それまで周りの魔物娘とのカップルが場所や時間を選ばずやたらとキスをしているのを見て疑問に思っていたが、何故彼女達がこうもキスをしたがっていたのか分かるような気がした。こんな甘美で、気持ちいい事をしたいと思うのは当たり前の事だ。肇はそんなことを考えつつ、美那に回す腕の力を込めつつキスに集中していった。
「んっちゅ…はぁ…うふふ、キスしてしまいました♡肇様と♡」
初めてのキスは、ゆうに数分間続いたディープなものだった。
「あぁ…俺も、美那とできて…嬉しいよ。」
「ありがとうございます♡…あの、肇様？」
「ん？何？」
「私、キスだけで…もう我慢できなくなってしまいました♡肇様、私の純潔を貰ってくださいますか♡？」
目をとろんとさせていた美那は、その眼に妖しい光を灯らせながら迫ってくる。
キスの間回していた腕をどけ、少し離れた美那は徐に人間の形をした上半身とイカの形をした下半身の境目辺りに手をのばした。そしてスカートの様な黒衣を掻きわけ、自身の秘部を肇にさらした。するとそこだけ淡いピンク色をした秘裂からはむせかえるほど甘い彼女の体臭を濃縮したような香りが匂い立ち、周りをベタベタに汚している愛液が肇の眼に飛び込んできた。
「それに…」
今まで見たことないような魅惑的なその光景に釘づけになっている肇の股間に美那はそっと手をのばす。
「肇様も…しっかりと興奮されているようですし♡」
「あぁ…」
既に限界まで勃起しているペニスを嬉しそうにさすりながら、妖しい笑みで美那は誘う。
「私と共に気持ちよく、なりませんか？」
「ああ、勿論だ！！」
「ひゃぅう、入って…きた♡！！」
にちゃぁちゅくっ…ずちゅ、じゅぷぷ
肇は頷くが早いかペニスを直ぐに露出させ、美那の女性器に押し当てた。
彼女の膣口は卑猥な水音と共にいとも簡単に口を開き、先走りを吐きだす男根を咥えこんだ。彼女の中は熱くうねり、進入してきたペニスに群がってくる。まだ亀頭が入っただけというのに気を抜けば射精してしまいそうになり、肇は気を引き締めゆっくりと腰を進めていく。すると彼女の純潔の証である処女膜に亀頭の先が触れる感触がした。
「いくよ、美那」
「はい…私を、肇様の女にしてくださいませ♡」
ぬちぃ、じゅるるぅぅ…ずりゅん
彼女に痛みを感じさせてはいけないと思い、ゆっくりと腰を押し進めていくと処女膜の真ん中より上部にある穴に亀頭がゆっくりと食い込んでいき、押し広がっていく感触がペニスを通じてリアルに感じられた。そしてその感触が亀頭の真ん中まできた時、ずるりと音がしたかと思うと彼女の純潔は散り、勢い余った亀頭が一気に彼女の最奥まで突き刺さったのだった。
「ぁあぁ♡！？お、く…までいっぱい♡いっぱい♡」
「はいった…くぅ」
美那は処女を失ったことで肉体的にも精神的にも軽いエクスタシーを感じてしまったらしく、ぴくぴくと全身、特に肇に絡みつく十本の足を細かく痙攣させていた。そして、軽い絶頂を向かえたせいか、先程まで彼女の肌に起こっていた変化が腹部の辺りから解け、元の綺麗な白い肌へと戻っていた。
「美那、この肌…」
「へぁ♡！？す、すみません…あんまり、にも、気持ちよくって…♡集中が途切れてしまいましたぁ♡い、今すぐ元に戻します♡」
「いや、いい…このままでいいよ」
「…え♡？」
きょとんとした顔でこちらを窺う美那をそっと抱きしめ、耳元でその理由を囁く。
「俺は自分の傷と一生向き合って行くと決めた。俺はもうこの傷を理由に逃げることはしない…。だから、美那も肌の色を変えないで、素肌のままで俺と向き合って欲しいんだ。頼む。」
「…はい。分かりました、肇様♡」
「愛してるよ、美那。」
「私もです。肇様♡」
「…ありがとう。じゃああまり長くはもたないと思うけど…」
そんな弱気な言葉を聞いた美那はくすりと笑みをこぼし、肇をぎゅっと抱擁して呟いた。
「そんなこと御気になさらず、目一杯私を愛してくださいませ♡」
ずちゅ、ぬぷ…ぬぷぬちゅ、ぴちゅぐちゅ
美那のその言葉がスイッチとなり、肇は腰に力を込めて動き始めた。
ピストンする度に美那のおまんこから漏れ出した大量の愛液がペニスによって撹拌される卑猥な音が聞こえてきて、否が応でも興奮を助長させる。それはどうやら美那も同じらしく、耳を真っ赤にさせながら自分の痴態を聞き、きゅっきゅっと膣を締め付け肇を絶頂へと導いた。インキュバスですらない人間の、しかも童貞の肇にその感触を我慢することは不可能だった。
「くぁ…もう、ダメ…出る、出るよ美那！！！」
「ください♡！！美那に肇様のザーメンをたっぷり注ぎ込んでください♡！！！」
ッビュ、ビュウ…ビュルル、びゅくっびゅくっ…
「…っかっは…出る！！！」
「いっぱい…いっぱい出てるぅ♡…あったかい♡」
今までしたことが無いほど長い射精を美那の中で行った。
精液はまるで堰を切ったかのようにとめどなくペニスから吐き出され、彼女の子宮口から進入し胎内を汚していった。美那もその感触で絶頂をむかえたらしく、幸せそうに腹をさすりながらさらにザーメンを強請るように膣を蠢かせた。そのせいか射精を終えて間もないと言うのに、ペニスは萎えるどころかさらに勃起したとさえ思うほど彼女の膣の中で硬度を増していた。それをいち早く察した彼女は肇の頬に手を置きながら優しく言う。
「肇様が、満足されるまで…どうか私の体を好きに使ってくださいね♡」
そんな彼女の優しさや思いやりが嬉しくて、肇は彼女に軽いキスを落として囁きかける。
「ありがとう…一緒に気持ちよくなろうな、美那！！」
「はい、肇様♡！！」
満面の笑みが浮かぶ美那を抱きしめつつ、再び肇はペニスの抽送を開始した。
こうして深海に再びクラーケンの嬌声が響き渡り、吐きだされたイカスミが数日間にわたって立ち込めたのだった。
…………………………
……………………
………………
数日後
「一つ、聞きたい事があるんだけど…」
「なんでしょう」
「俺は…これから一生この海底で生活することになるのかな？」
「……何か地上に未練でも御有りなのですか？」
「未練、か…。確かに未練といえば未練だ。」
「………。」
「あの船に乗っていた友人たちに言いたい事があってさ」
「言いたいこと？」
どこか不安げに尋ねる美那に肇は答える。
「お前たちの御蔭で、俺は最高の恋人と出会う事が出来た。これも全ては旅行に俺を誘ってくれた御蔭だ―――ありがとう」
ただそれだけを、伝えたいだけさ
そう言葉を締めくくった肇の顔には、本人も最後にいつしたのか分からないほど最高の笑顔が浮かんでいた。
14/02/02 09:15更新 / 松崎 ノス