前篇
日が落ち、暗闇が立ち込める寝室で一組の男女が褥を共にしている。
「美嘉…愛しているよ…」
藤堂崇は床に敷かれた布団の上に横たわり、愛する妻の美嘉を見上げながら愛の言葉を囁く。すると彼女も瞳に情欲を浮かべながら親愛を口にする。
「私もです…旦那様。この世の誰よりも、お慕いしております♡」
間接照明の光を受け、闇の中に怪しく浮かび上がる美嘉の顔が愉悦に歪む。
崇にまたがる妻は息をのむほど美しい。シミ一つない雪のような白い肌をした面長の瓜実顔、やや憂いに沈む重たげな瞼から覗く漆黒の瞳、端正な鼻梁から延びる可愛らしい小鼻、紅をさしていないのにそれ以上に可憐に発色する赤い口唇。そしてそこから視線を下していくと、成人男性の手からも悠々と零れ落ちてしまうほど大きく柔らかな乳房が待ち受ける。しかし決して太っているわけではなく、腰などはまさに柳腰というやつだし、足などは健康的でひきしまった筋肉美を保持している。彼女の体で胸以外に、ぜい肉は全くと言ってもいいほどついていない。そんな誰もが美しいと認めざるを得ない肉体は彼女が人ならざる者、魔物娘であることを雄弁に語っていた。
シュル、シュル…
「あぁ…美嘉、美嘉ぁ…」
だが毛娼妓である妻の魅力は、それだけではない。
「今日も、私の髪で…包んであげますね♡」
言い終わるや否や、彼女の美しい髪が意思を持つように動き始めた。
その髪の毛こそが、もっとも簡単に崇を狂わせる。全身を覆うことができるのではないかと思うほど長い美嘉の髪の毛は、それまで触れたどの髪の毛や体毛とも違っていた。人間や他の魔物娘にあるはずのキューティクルを全く感じさせない、まるで最高級品のベルベットをさらにつややかにしたような手触りだ。しかもそれは同時に今まで嗅いだことのないような優しい香りを発している。彼女が髪を振り乱すと、まるで香を焚いたかのように匂い立つ。その香りをかいでいると、とても心が安らぎ、気が付くと彼女への想いを止めることができなくなってしまうのだ。美嘉の意のままに動かすことができるらしい髪の毛と香りは、彼女と結ばれて以来毎日崇を翻弄する。今も全身を包み込むように毛を巻かれただけで、肌に触れる毛の気持ちよさに体が弛緩して情けない喘ぎ声が口から漏れ出してしまう。そして股間にどくどくと海綿体に血液がたまっていき、男根が硬くいきり立ってしまった。すると美嘉はその様子を余裕たっぷりに見下ろしながら尋ねてくる。
「情けない声♡そんなに気持ちがいいんですかぁ…私の髪は♡？」
「気持ちがいい…本当に…美嘉の髪の毛、たまらないよ…！！」
「うふふ〜♡」
崇から欲しい返事を引き出した美嘉が満面の笑みを浮かべた。
濃くなっていく嗜虐的な笑みと呼応するように、彼女は頭髪の動きを活発にさせる。彼女の髪が横たわっている崇の首、腕、腹、足と体躯の要所をゆっくりと絡み取っていった。ざわざわと波打つように動くことによって光を反射する髪の毛は、鴉の濡れ羽色というのだろうか、ただ黒いだけではなく青みのあるつややかな色を発している。その様は実に、美しい。何度となくその美に目を奪われ、見惚れているというのに美嘉の髪を見飽きるということはない。それが不思議で、崇は妻に質問する。
「なぜ…」
「なんですか、旦那様？」
「なぜ美嘉の髪はそんなに…美しいんだい？」
疑問を聞いた美嘉は、先ほどまでの笑みとは違う、うら若い女性がそうするように口に手をあててくすくすと笑いながら答えた。
「私の髪が美しいのは…ひとえに旦那様のおかげです。」
「え？」
「髪の毛というのは、とっても繊細なもの。」
美嘉は自身の髪の毛を一房つかみ、話を続ける。
「私の感情やストレスがすぐに現れてしまいますし…生えている間の記憶をずっと蓄えているのです。つまり、私の髪の毛が美しさを保っているということは…私が幸せだということ。この髪の毛はちゃんと覚えているんですよ、旦那様にたっぷりと愛してもらっていることを、他にかわりのない大切な精液を与えてもらったことを、そして私がどれほど深く旦那様を愛しているのかを、ね…♡」
「……じゃあ」
「はい。私の髪の毛の美しさは…旦那様がいなければありえないのです。もし三日も旦那様のお傍にいられなかったら、私の髪の毛は目も当てられないほどボロボロになってしまうでしょう。旦那様が私のことをたっぷりと愛してくだされば、この美しさはずっと向上し続けるのです♡」
そう言って美嘉はゆっくりと自分の髪を手櫛で丁寧に梳いていく。
その様はまるで中世の絵画に描かれているような美しいポーズだった。口が開いているのも気にせず、妻をじっと凝望してしまう。するとその視線を受け止めた美嘉は、不敵な笑みを浮かべながら誘いの言葉を投げかけた。
「さて、と。それでは髪の毛の秘密を知った旦那様は…この髪の毛で何をして欲しいのですか？」
その言葉はとてもエロティックで、心の奥底をざわつかせる。
しかも小首を傾げ、口の端を少しだけ釣り上げているのだからたまらない。彼女の髪の毛の説明を真面目に聞いていた崇の心もすぐさまピンク色に染められていく。崇は一つ唾を飲み込んだあと、ゆっくりと美嘉におねだりをした。
「髪の毛を纏った…足でしてくれないか？」
「わかりました…旦那様♡」
そう言うと、すくっと美嘉は立ち上がり右足を一歩前に踏み出した。
すると余計な肉も脂肪もついていない、細く均整のとれた生足に植物の蔓が絡みつくかのように髪の毛が纏わりついていく。最初は細くしなやかな髪の毛が無造作に絡まっているように見えたが、しばらくするとその様が一変する。一本一歩の髪の毛がまるで編み上げられていくように規則正しい形を成していった。それはまさに、ストッキングそのもの。世界に一つとない、美嘉の髪の毛を使った贅沢な代物だ。
「さて、と。…えい♡」
白い足に映える、黒く美しいタイツに釘づけになっていると、美嘉がその足ですでに固く勃起したペニスを踏みつけた。
「あぁッ！！？」
妻に秘部を踏みつけられ、崇は情けなく声を漏らしてしまう。
もっちりとした柔らかい足の感触と、つるつるとした髪の毛の感触のコントラストがたまらない。ただ踏まれただけなのに我慢できない気持ちよさが心に沸き立ってしまう。自らが望んでいた快感が全身に走り、どうしようもなく体が痙攣してしまった。妻の美嘉はそんな夫の情けない様を見下ろし、熱に浮かれた声で優しく罵倒する。
「もう…。妻の私は本来愛をもっておちんちんに奉仕しなければいけない立場だというのに…こんなことをさせるなんて、旦那様の変態♡」
しかし言葉とは裏腹に、美嘉の態度からは微塵もその行為を拒む雰囲気はない。
それどころか頬を赤く染め軽く息を弾ませながら、これまでに何度もしている髪コキと足コキを同時に行うこの行為を心から楽しんでいるようにも見える。そんな妻の表情に見とれていると、ストッキングのように髪で包まれた足で、美嘉が徐に体重をかけて崇のペニスを踏みつけ始めた。
「うぅっ…！！」
痛みを感じることのない、快楽だけを感じさせる絶妙な力加減だ。
「ふふ…苦しそうにおちんちんをおっきさせちゃって♡そんなに私の足はいいのかしらぁ？」
本来奉仕すべきものを足蹴にするという行為に妻は酔いしれている。
完全に美嘉はサディスティックなスイッチが入ってしまったらしく、足の動きを少しずつ激しくしていった。遠慮のない動きはダンスを踊るかのように楽しげで、リズムよく踏みつけを繰り返してくる。動きだけみればそれは単調なものだが…
「(がぁ…気持ちいい…！！)」
彼女の吸い付くような白く柔らかい足の裏に加え、すべすべとした感触の髪の毛が…最高級品のストッキングでさえ足元にも及ばない肌触りが崇の心拍数を一気に底上げする。猛烈な快感によって目には涙が滲み、口は情けなく戦慄き、ペニスからは大量の先走り液を吐き出してしまう。
にちゃにちゃ、ぐちゅくちゅ
「あはぁ…こんなにやらしく先走り汁を吐き出すなんて♡そんなに髪の毛のストッキングは気持ちいいですか♡？」
「あ、ああ…ものすごく、気持ちがいいッ」
「嬉しい♡ならこれなんか…どうですかぁ？」
嬉しそうに笑う妻が足の指を開き、亀頭のくびれを握るように圧迫を始めた。
ただでさえ敏感な亀頭を刺激されただけでも気持ちがいいが、先走りで余計に滑りがよくなった髪の毛の刺激は体に毒だと思うほど気持ちがよかった。
「う、うわぁあああぁ…もう、もう！！」
「出してください♡私の髪の毛に…旦那様の濃い種を、たぁっぷりと出してください♡」
その言葉が引き金となった。
びゅ、びゅぅ、どく、どくん、びゅくびゅく
「すっごい量…♡」
「あ、ぅあ…美嘉ッ！！！」
亀頭の先には、いつの間にかのびた彼女の髪が待ち受ける。
我慢の限界に達した崇は、ｓの髪の毛に向かって大量の背液を吐き出した。美嘉は少しでも多くの精液をペニスから出そうと、射精を終えてひくつく陰茎の根元から搾り上げるように足コキを続けた。そうして絞り出された精液も、美嘉の美しい髪の毛を彩っていく。美嘉のつややかで美しい髪の毛に自分の精液がべったりとこびりついている光景は、まるで聖なるものを汚してしまったような背徳感と、征服感にも似た満足感をいやでも感じさせる。崇は目の前の光景に釘づけになってしまった。
「んふふ〜♡旦那様の濃い〜精液、いただきます♡」
美嘉はゆらゆらと毛髪を扇情的に動かしながらゆっくりと精液を味わっていく。
普通の人間であればできない芸当だが、彼女たち毛娼妓の髪の毛は搾精器官でもある。崇がその光景に釘づけになっている間にも髪の毛で精液を吸収していく。自分が吐き出した白濁液が、ゆっくりとだが確実に髪の毛の中に消えていく様は、実に淫靡で何かいけないものを見ているような気分になってしまう。そして徐々に綺麗になっていく美嘉の髪の毛を見ていると、再び自分のザーメンで汚してしまいたい、彼女に子種を搾り取られたいという欲がむらむらと湧き出してくる。
「ごちそうさま…ってあらまぁ♡」
「み、美嘉…頼む、もっと…もっと気持ちよくしてくれ……」
先ほど射精したばかりだというのに、崇のペニスはこれ以上ないほど勃起してしまう。
「ふふ、ふふふ。」
一方の美嘉は、自分の体に完全に堕落したオスの姿を嬉しそうに目を細めて眺めた後、見せつけるようにゆっくりと足を動かし、足コキを再開した。そして与えられる快感に呻く崇に向かって隠すことなく独占欲や底の見えないほど深い愛をぶつけていく。
「ああ、旦那様♡勿論です。だってこうやって旦那様を気持ちよくできるのは、この私だけですもの♡私の体を、髪を使って……他のメスなんか考えられないほど愛しつくしてみせます♡だから、旦那様も私だけを…美嘉だけを愛してくださいね！！！」
「ああ、僕は美嘉だけを愛する…愛するよ！！！」
「うふふ、嬉しい♪」
崇の誓いの言葉を聞いた美嘉の足がより激しくペニスをしごき上げる。
「さあ、旦那様…心から私の体を堪能してくださいね♡」
こうして夫婦の寝室に長い夜の幕があけ、寝室に二人の嬌声が響いたのだった。
…………………………………………………………………
ある日のことだった。
「ただいま〜。」
会社から戻った崇が帰宅を告げる挨拶を口にしながら玄関を開けると、座って待っていた美嘉が恭しく迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。旦那様。」
「ただいま、美嘉。今帰ったよ。」
「今日も一日ご苦労様です。」
普段と変わりない素敵な笑顔で挨拶を返してくれる美嘉に荷物を預ける。
美嘉は荷物を大事そうに持ちながら、するするとこちらに髪の毛を伸ばし、たっぷりと汗を吸ったワイシャツを脱がしにかかる。まるで何本もの腕があるように同時にいくつものことを行えるのが彼女の強みだ。着替えがある寝室に着くまでもなくあっという間にすべてのボタンを器用に外し、なんの抵抗もなくするりと服を取り去ってしまう機敏な動きに舌をまきつつ、ねぎらいの意味もこめて髪の毛をそっとなでる。
「いつもありがとうって…あれ？」
ところが、触れた彼女の髪の毛から今まで感じたことのない感触がした。
「どうか、されましたか？」
「いや、今さっきなんだか…」
慌てて彼女の髪の毛をたどり、違和感のもとを探す。
「って、これは…枝毛！！？」
すると、原因は髪の毛先にあった。
彼女と出会い、今まで何度となく触っている髪の毛に枝毛ができていたのだ。それも一本だけではない、多くの毛先がまるで反乱を起こしているかのように枝分かれを始めていた。
「み、美嘉…髪の毛に枝毛ができているよ！！」
崇は慌てて妻に詰め寄った。
まるで純白のウエディングドレスにシミがついてしまったかのような…完璧な美が汚されてしまったようなそんな焦りが崇の中で掻き立てられる。しかし、美嘉は事の重大さとは裏腹に慌てることなく崇の言葉を受け止める。
「枝毛ができているのは、知っています。だって私の髪ですもの。」
少なくとも彼女が狼狽するだろうと思っていた崇は、拍子抜けしてしまう。
しかしただ呆けていることもできず、何故彼女がそこまで悠然と構えていられるのかを質問した。
「いやいや、なんでそんなに落ち着いていられるんだ？今までにこんなことはなかったのに…突然たくさん枝毛ができるだなんて…」
「旦那様…」
慌てふためく崇に、ひどく落ち着いた一言が投げかけられた。
「この枝毛は…いいのです。」
「え？」
「だって…」
妻は一旦言葉を切り、こちらを真顔でじっと見据えたかと思うと予想もしなかった言葉を放った。
「この枝毛は…私の業なのですから。」
妻の答えを聞いた崇にはその言葉の真意が分からず、ただ立ち尽くすことしかできなかったのだった。
「美嘉…愛しているよ…」
藤堂崇は床に敷かれた布団の上に横たわり、愛する妻の美嘉を見上げながら愛の言葉を囁く。すると彼女も瞳に情欲を浮かべながら親愛を口にする。
「私もです…旦那様。この世の誰よりも、お慕いしております♡」
間接照明の光を受け、闇の中に怪しく浮かび上がる美嘉の顔が愉悦に歪む。
崇にまたがる妻は息をのむほど美しい。シミ一つない雪のような白い肌をした面長の瓜実顔、やや憂いに沈む重たげな瞼から覗く漆黒の瞳、端正な鼻梁から延びる可愛らしい小鼻、紅をさしていないのにそれ以上に可憐に発色する赤い口唇。そしてそこから視線を下していくと、成人男性の手からも悠々と零れ落ちてしまうほど大きく柔らかな乳房が待ち受ける。しかし決して太っているわけではなく、腰などはまさに柳腰というやつだし、足などは健康的でひきしまった筋肉美を保持している。彼女の体で胸以外に、ぜい肉は全くと言ってもいいほどついていない。そんな誰もが美しいと認めざるを得ない肉体は彼女が人ならざる者、魔物娘であることを雄弁に語っていた。
シュル、シュル…
「あぁ…美嘉、美嘉ぁ…」
だが毛娼妓である妻の魅力は、それだけではない。
「今日も、私の髪で…包んであげますね♡」
言い終わるや否や、彼女の美しい髪が意思を持つように動き始めた。
その髪の毛こそが、もっとも簡単に崇を狂わせる。全身を覆うことができるのではないかと思うほど長い美嘉の髪の毛は、それまで触れたどの髪の毛や体毛とも違っていた。人間や他の魔物娘にあるはずのキューティクルを全く感じさせない、まるで最高級品のベルベットをさらにつややかにしたような手触りだ。しかもそれは同時に今まで嗅いだことのないような優しい香りを発している。彼女が髪を振り乱すと、まるで香を焚いたかのように匂い立つ。その香りをかいでいると、とても心が安らぎ、気が付くと彼女への想いを止めることができなくなってしまうのだ。美嘉の意のままに動かすことができるらしい髪の毛と香りは、彼女と結ばれて以来毎日崇を翻弄する。今も全身を包み込むように毛を巻かれただけで、肌に触れる毛の気持ちよさに体が弛緩して情けない喘ぎ声が口から漏れ出してしまう。そして股間にどくどくと海綿体に血液がたまっていき、男根が硬くいきり立ってしまった。すると美嘉はその様子を余裕たっぷりに見下ろしながら尋ねてくる。
「情けない声♡そんなに気持ちがいいんですかぁ…私の髪は♡？」
「気持ちがいい…本当に…美嘉の髪の毛、たまらないよ…！！」
「うふふ〜♡」
崇から欲しい返事を引き出した美嘉が満面の笑みを浮かべた。
濃くなっていく嗜虐的な笑みと呼応するように、彼女は頭髪の動きを活発にさせる。彼女の髪が横たわっている崇の首、腕、腹、足と体躯の要所をゆっくりと絡み取っていった。ざわざわと波打つように動くことによって光を反射する髪の毛は、鴉の濡れ羽色というのだろうか、ただ黒いだけではなく青みのあるつややかな色を発している。その様は実に、美しい。何度となくその美に目を奪われ、見惚れているというのに美嘉の髪を見飽きるということはない。それが不思議で、崇は妻に質問する。
「なぜ…」
「なんですか、旦那様？」
「なぜ美嘉の髪はそんなに…美しいんだい？」
疑問を聞いた美嘉は、先ほどまでの笑みとは違う、うら若い女性がそうするように口に手をあててくすくすと笑いながら答えた。
「私の髪が美しいのは…ひとえに旦那様のおかげです。」
「え？」
「髪の毛というのは、とっても繊細なもの。」
美嘉は自身の髪の毛を一房つかみ、話を続ける。
「私の感情やストレスがすぐに現れてしまいますし…生えている間の記憶をずっと蓄えているのです。つまり、私の髪の毛が美しさを保っているということは…私が幸せだということ。この髪の毛はちゃんと覚えているんですよ、旦那様にたっぷりと愛してもらっていることを、他にかわりのない大切な精液を与えてもらったことを、そして私がどれほど深く旦那様を愛しているのかを、ね…♡」
「……じゃあ」
「はい。私の髪の毛の美しさは…旦那様がいなければありえないのです。もし三日も旦那様のお傍にいられなかったら、私の髪の毛は目も当てられないほどボロボロになってしまうでしょう。旦那様が私のことをたっぷりと愛してくだされば、この美しさはずっと向上し続けるのです♡」
そう言って美嘉はゆっくりと自分の髪を手櫛で丁寧に梳いていく。
その様はまるで中世の絵画に描かれているような美しいポーズだった。口が開いているのも気にせず、妻をじっと凝望してしまう。するとその視線を受け止めた美嘉は、不敵な笑みを浮かべながら誘いの言葉を投げかけた。
「さて、と。それでは髪の毛の秘密を知った旦那様は…この髪の毛で何をして欲しいのですか？」
その言葉はとてもエロティックで、心の奥底をざわつかせる。
しかも小首を傾げ、口の端を少しだけ釣り上げているのだからたまらない。彼女の髪の毛の説明を真面目に聞いていた崇の心もすぐさまピンク色に染められていく。崇は一つ唾を飲み込んだあと、ゆっくりと美嘉におねだりをした。
「髪の毛を纏った…足でしてくれないか？」
「わかりました…旦那様♡」
そう言うと、すくっと美嘉は立ち上がり右足を一歩前に踏み出した。
すると余計な肉も脂肪もついていない、細く均整のとれた生足に植物の蔓が絡みつくかのように髪の毛が纏わりついていく。最初は細くしなやかな髪の毛が無造作に絡まっているように見えたが、しばらくするとその様が一変する。一本一歩の髪の毛がまるで編み上げられていくように規則正しい形を成していった。それはまさに、ストッキングそのもの。世界に一つとない、美嘉の髪の毛を使った贅沢な代物だ。
「さて、と。…えい♡」
白い足に映える、黒く美しいタイツに釘づけになっていると、美嘉がその足ですでに固く勃起したペニスを踏みつけた。
「あぁッ！！？」
妻に秘部を踏みつけられ、崇は情けなく声を漏らしてしまう。
もっちりとした柔らかい足の感触と、つるつるとした髪の毛の感触のコントラストがたまらない。ただ踏まれただけなのに我慢できない気持ちよさが心に沸き立ってしまう。自らが望んでいた快感が全身に走り、どうしようもなく体が痙攣してしまった。妻の美嘉はそんな夫の情けない様を見下ろし、熱に浮かれた声で優しく罵倒する。
「もう…。妻の私は本来愛をもっておちんちんに奉仕しなければいけない立場だというのに…こんなことをさせるなんて、旦那様の変態♡」
しかし言葉とは裏腹に、美嘉の態度からは微塵もその行為を拒む雰囲気はない。
それどころか頬を赤く染め軽く息を弾ませながら、これまでに何度もしている髪コキと足コキを同時に行うこの行為を心から楽しんでいるようにも見える。そんな妻の表情に見とれていると、ストッキングのように髪で包まれた足で、美嘉が徐に体重をかけて崇のペニスを踏みつけ始めた。
「うぅっ…！！」
痛みを感じることのない、快楽だけを感じさせる絶妙な力加減だ。
「ふふ…苦しそうにおちんちんをおっきさせちゃって♡そんなに私の足はいいのかしらぁ？」
本来奉仕すべきものを足蹴にするという行為に妻は酔いしれている。
完全に美嘉はサディスティックなスイッチが入ってしまったらしく、足の動きを少しずつ激しくしていった。遠慮のない動きはダンスを踊るかのように楽しげで、リズムよく踏みつけを繰り返してくる。動きだけみればそれは単調なものだが…
「(がぁ…気持ちいい…！！)」
彼女の吸い付くような白く柔らかい足の裏に加え、すべすべとした感触の髪の毛が…最高級品のストッキングでさえ足元にも及ばない肌触りが崇の心拍数を一気に底上げする。猛烈な快感によって目には涙が滲み、口は情けなく戦慄き、ペニスからは大量の先走り液を吐き出してしまう。
にちゃにちゃ、ぐちゅくちゅ
「あはぁ…こんなにやらしく先走り汁を吐き出すなんて♡そんなに髪の毛のストッキングは気持ちいいですか♡？」
「あ、ああ…ものすごく、気持ちがいいッ」
「嬉しい♡ならこれなんか…どうですかぁ？」
嬉しそうに笑う妻が足の指を開き、亀頭のくびれを握るように圧迫を始めた。
ただでさえ敏感な亀頭を刺激されただけでも気持ちがいいが、先走りで余計に滑りがよくなった髪の毛の刺激は体に毒だと思うほど気持ちがよかった。
「う、うわぁあああぁ…もう、もう！！」
「出してください♡私の髪の毛に…旦那様の濃い種を、たぁっぷりと出してください♡」
その言葉が引き金となった。
びゅ、びゅぅ、どく、どくん、びゅくびゅく
「すっごい量…♡」
「あ、ぅあ…美嘉ッ！！！」
亀頭の先には、いつの間にかのびた彼女の髪が待ち受ける。
我慢の限界に達した崇は、ｓの髪の毛に向かって大量の背液を吐き出した。美嘉は少しでも多くの精液をペニスから出そうと、射精を終えてひくつく陰茎の根元から搾り上げるように足コキを続けた。そうして絞り出された精液も、美嘉の美しい髪の毛を彩っていく。美嘉のつややかで美しい髪の毛に自分の精液がべったりとこびりついている光景は、まるで聖なるものを汚してしまったような背徳感と、征服感にも似た満足感をいやでも感じさせる。崇は目の前の光景に釘づけになってしまった。
「んふふ〜♡旦那様の濃い〜精液、いただきます♡」
美嘉はゆらゆらと毛髪を扇情的に動かしながらゆっくりと精液を味わっていく。
普通の人間であればできない芸当だが、彼女たち毛娼妓の髪の毛は搾精器官でもある。崇がその光景に釘づけになっている間にも髪の毛で精液を吸収していく。自分が吐き出した白濁液が、ゆっくりとだが確実に髪の毛の中に消えていく様は、実に淫靡で何かいけないものを見ているような気分になってしまう。そして徐々に綺麗になっていく美嘉の髪の毛を見ていると、再び自分のザーメンで汚してしまいたい、彼女に子種を搾り取られたいという欲がむらむらと湧き出してくる。
「ごちそうさま…ってあらまぁ♡」
「み、美嘉…頼む、もっと…もっと気持ちよくしてくれ……」
先ほど射精したばかりだというのに、崇のペニスはこれ以上ないほど勃起してしまう。
「ふふ、ふふふ。」
一方の美嘉は、自分の体に完全に堕落したオスの姿を嬉しそうに目を細めて眺めた後、見せつけるようにゆっくりと足を動かし、足コキを再開した。そして与えられる快感に呻く崇に向かって隠すことなく独占欲や底の見えないほど深い愛をぶつけていく。
「ああ、旦那様♡勿論です。だってこうやって旦那様を気持ちよくできるのは、この私だけですもの♡私の体を、髪を使って……他のメスなんか考えられないほど愛しつくしてみせます♡だから、旦那様も私だけを…美嘉だけを愛してくださいね！！！」
「ああ、僕は美嘉だけを愛する…愛するよ！！！」
「うふふ、嬉しい♪」
崇の誓いの言葉を聞いた美嘉の足がより激しくペニスをしごき上げる。
「さあ、旦那様…心から私の体を堪能してくださいね♡」
こうして夫婦の寝室に長い夜の幕があけ、寝室に二人の嬌声が響いたのだった。
…………………………………………………………………
ある日のことだった。
「ただいま〜。」
会社から戻った崇が帰宅を告げる挨拶を口にしながら玄関を開けると、座って待っていた美嘉が恭しく迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。旦那様。」
「ただいま、美嘉。今帰ったよ。」
「今日も一日ご苦労様です。」
普段と変わりない素敵な笑顔で挨拶を返してくれる美嘉に荷物を預ける。
美嘉は荷物を大事そうに持ちながら、するするとこちらに髪の毛を伸ばし、たっぷりと汗を吸ったワイシャツを脱がしにかかる。まるで何本もの腕があるように同時にいくつものことを行えるのが彼女の強みだ。着替えがある寝室に着くまでもなくあっという間にすべてのボタンを器用に外し、なんの抵抗もなくするりと服を取り去ってしまう機敏な動きに舌をまきつつ、ねぎらいの意味もこめて髪の毛をそっとなでる。
「いつもありがとうって…あれ？」
ところが、触れた彼女の髪の毛から今まで感じたことのない感触がした。
「どうか、されましたか？」
「いや、今さっきなんだか…」
慌てて彼女の髪の毛をたどり、違和感のもとを探す。
「って、これは…枝毛！！？」
すると、原因は髪の毛先にあった。
彼女と出会い、今まで何度となく触っている髪の毛に枝毛ができていたのだ。それも一本だけではない、多くの毛先がまるで反乱を起こしているかのように枝分かれを始めていた。
「み、美嘉…髪の毛に枝毛ができているよ！！」
崇は慌てて妻に詰め寄った。
まるで純白のウエディングドレスにシミがついてしまったかのような…完璧な美が汚されてしまったようなそんな焦りが崇の中で掻き立てられる。しかし、美嘉は事の重大さとは裏腹に慌てることなく崇の言葉を受け止める。
「枝毛ができているのは、知っています。だって私の髪ですもの。」
少なくとも彼女が狼狽するだろうと思っていた崇は、拍子抜けしてしまう。
しかしただ呆けていることもできず、何故彼女がそこまで悠然と構えていられるのかを質問した。
「いやいや、なんでそんなに落ち着いていられるんだ？今までにこんなことはなかったのに…突然たくさん枝毛ができるだなんて…」
「旦那様…」
慌てふためく崇に、ひどく落ち着いた一言が投げかけられた。
「この枝毛は…いいのです。」
「え？」
「だって…」
妻は一旦言葉を切り、こちらを真顔でじっと見据えたかと思うと予想もしなかった言葉を放った。
「この枝毛は…私の業なのですから。」
妻の答えを聞いた崇にはその言葉の真意が分からず、ただ立ち尽くすことしかできなかったのだった。
14/08/23 21:38更新 / 松崎 ノス
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