おまけ 初夜
学校での授業を終え、一緒に帰宅した栗原麗は真っ直ぐに部屋に入り、ベッドに腰掛けながら周りを興味深そうに見渡している。
「はぁ〜…相変わらず清志の部屋はいいねぇ。」
彼女にそう言われ、改めて自分の部屋を眺めてみる。
大きめの勉強机、参考書や小説、辞書などがきちっと整理され収められた本棚、制服や私服が入っている箪笥、間接照明が置かれた小さめの卓袱台、そして低反発で寝心地の良いベッド。引っ越しが多いおかげであまり物は多いというわけではないが、それなりに色々なものがあふれるいつも通りの味気ない自分の、日野清志の部屋だ。
「そう、かな。」
「ああ。綺麗ですっきりしていて…とっても落ち着くよ。」
だがそんな自分の部屋に彼女が居るだけで、なんだか部屋全体が華やいでいるように感じてしまう。モノクロの部屋がカラーになったような感じだ。
「それになにより、部屋中に清志の匂いがしみついてるってのが最高なところだな。何度来ても、この濃縮されたお前の匂いを嗅ぐとむらむらするよ…ふふふ。」
妖艶に麗は笑う。
最近、麗は自分の家を毎日のように訪れていた。清志の両親は突然出来た息子の交際相手に最初はとても驚いていたが、今では彼女が訪れるのをむしろ歓迎するほど仲が深まっている。麗はすっかり日野家に溶け込んでいた。
……………………………………………………
「初めまして、私は栗原麗といいます。清志さんとお付き合いさせていただいています。お義母様、お義父様…不躾で至らないところが多分にある私ですが、どうかよろしくお願いいたします。」
初めて対峙した父と母に、麗はこれ以上ないほどの好印象を与えた。
旧家のお嬢様といっても過言ではないほど柔らかで上品な笑みと物腰、そして言葉遣い。交際を始めた息子の相手が魔物娘であるマンティコアと知り、いくらばかりか緊張の色を見せていた両親は、彼女のそんな様子に半ば拍子抜けしたように驚きつつ、「こんなにいい人と一緒になれるなんて清志は幸せだな!!」と笑みを浮かべた。
しかも麗は何時の間に知ったのか父の好きな銘柄の酒や手に入りにくいことで有名な高級美容品を母への手土産に持ってきており、清志の両親からすこぶる高い好評価を獲得した。中でも母親は休日に麗と二人で買い物に行ったり、来る度に「日野家の味を教えてあげなきゃね」と言って一緒に台所で料理をするなどいたく彼女の事を気に入ったようだった。
こうして外堀は―――初日から完璧に埋められたのだった。
その時の彼女の変わりように驚き、あからさまにその感情が顔に出てしまったのだろう。
「お前を生んで、育ててくれたお二人なんだ。自分に出来る限りで礼を尽くすのは当たり前だろ?恥ずかしい事言わせんな、馬鹿。」
少しだけむすっと不機嫌さを浮かべながら、二人きりになった彼女はそんな表情を浮かべる清志にぶっきらぼうな説明をした。改めて、麗に惚れ直したのは言うまでもない。
……………………………………………………
そんなこんなで、彼女が我が家にいる風景は日常となりつつあるのだが、今日はちょっとばかり違っていた。
「今日はお二人が居ないんだし、目一杯楽しめるから余計に興奮しちまうよな〜。お前も、そうなんだろ?」
そう、今日は両親が家を空けている。
栄転してきた父への接待があるらしく、泊まりがけで県内の保養地へと行ったようだ。なんでも有名な花火師のウシオニが花火をあげる祭りを楽しむそうで、父は非常に楽しみにしていた。いつもは父だけで行くことが多いのだが、その花火を見たいと母も思ったことに加え、「麗ちゃんが一緒にいてくれるなら安心だし、私はお邪魔だろうからお父さんと一緒に楽しんでこようかしら〜。麗ちゃんを泣かせる様なことをしちゃダメよ?」と妙な気を回してくれた御蔭で、こうして麗と二人で家にいる。両親がいる普段では、こうして麗が訪れ尻尾による性行為を楽しむ時、さすがに清志の気持ちをくんでくれているのか、彼女は部屋に防音の呪文をかけてくれている。しかし今日はその必要が無いと言う事で、清志から精を搾り取ることに集中できると言わんばかりににやにやと笑いながら意味深な視線と言葉を投げかけてくる。
「そ、それよりもさ。喉乾かない?お茶を入れて来るから待っててよ。」
決して彼女とそういう行為をすることが嫌なわけではない。
しかし改めてこれから自分の家で麗に犯されるのだと思うと、なんだか急に気恥ずかしくなった。だから飲み物を出すと言う言い訳を口にしてベッドで寛ぐ麗に背を向け、部屋のドアに手をかける。
「まあ、待てよ。」
だが、彼女は決して獲物は逃がさない。
先程の誘惑する言葉よりもたっぷりと色香や艶が込められた彼女の一言に、清志の体はびくりと反応してしまう。どうやら自分はこれから一生、彼女が放つ魔性の言葉から逃れることは出来ないのだと思ってしまう。
「素直になれよ、清志。」
「………っ。」
麗はゆっくりと立ち上がり、彼女の言葉から放たれる魅惑に魅了され立ちつくす清志を背後から抱きすくめる。制服越しに彼女の柔らかい胸が密着し、人外特有の甘い体臭がねっとりと纏わりついてきた。
「気持ちよく…して欲しいんだろぉ?私の体でおちんちんからたっぷり白い液体を搾り取ってもらいたいんだろぅ?」
「それ、は…」
大きな獣の手が清志の全身をまさぐり、既に口を開け始めた淫靡な尻尾が股間へと先端を向ける。
「なあ、折角二人っきりなんだからよ〜。たっぷり楽しもうぜぇ〜。」
「…ぅん」
「さあ清志。お前は私にどうして欲しいかいつもみたいにいってみな。」
既に数え切れないほど麗に嬲られ、精液を絞られてきた清志は完全に調教されてしまっている。だから、いつものように彼女に降伏し、おねだりの言葉を口にする。
「僕は…麗さんの尻尾で、おちんちんを気持ちよくして欲しい、です。」
いくら快感を求める気持ちが勝っているとはいえ、この台詞を言う時に恥ずかしさが消える事は無く、清志は自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。
「ふっふ〜ん。よく言えました。」
自分の愛するオスが素直に欲望を吐露したことで、麗は嬉しそうに笑う。
そして大きな獣の手で器用に清志の制服を脱がしていき、あらわになっていく素肌に甘えるようにして尻尾を絡めていく。その様子を眺めながら、ああ今日もこの尻尾に散々弄ばれるのだなと思うと同時に、徐々に陰茎に血液が集まっていく感覚を感じた。もう自分は彼女に完全に捕らわれている、そう実感する。しかし、そんな清志に向かって彼女は意外な一言を言い放つ。
「いつものようにこの尻尾でたっぷりと搾り取って…やらない。」
「え!?」
想像もしなかった彼女の一言に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「な、なんで?いつものようにちゃんとおねだりだってしたし…僕は気がつかない間になにかしちゃった!?」
「ふ、ふふっ…」
情けなく狼狽する様子に思わず苦笑しつつ、麗は清志の片腕を掴んで自身の陰へと誘い、ねっとりと絡みつく様な猫なで声で甘える。
「違うぞ、清志。尻尾じゃなくここでやらないかって言ってんだ♡」
くちゅ…にちゅぃ
「!!」
彼女の陰部は、パンツ越しでも濡れている事が分かるほどしっとりとしていた。
「やっと…やっとアタシの体が清志の精液に、完璧に馴染んだんだ。だから今日はたっぷりとこっちでお前を可愛がってやる。嬉しいだろ、清志?」
口の中が渇き、上手く言葉が出なかった。
彼女達マンティコアが、襲った男とすぐにセックスをしないことは知っていた。そうする理由はしっかりと男から精液を搾り取り、その男をより愛することができるように自分の体を作り変えていくからなのだそうだ。そんな種族である麗がこうして自分を誘っていると言う事はつまり、自分が本当に受け入れられたといっても過言ではないだろう。そう考えると嬉しさや早く結ばれたいという焦燥感などがぐるぐると自分の中で複雑に巻き上がった。それでもなんとか頷き彼女の言葉に答えると、麗は嬉しそうに笑った後に一度強く清志の体を抱きしめ、そして優しく恋人をベッドへと誘ったのだった。
目の前で下着以外を脱ぎ去った麗がゆったりと身を横たえている。
ただ横になっているだけ、それだけなのに目の前の彼女は何よりも強く清志の気持ちを昂ぶらせる。小作りな面立ちに、吸い込まれるような美しい紅の瞳を湛える切れ長の眼、ぽってりとした唇、触れれば吸いつくように柔らかいシミ一つない白い柔肌、少し体勢を変える度に悩ましげにその姿を変える豊満な乳房、彼女の全てが清志を淫靡な世界へと誘う。
「さあ、清志。来いよ。」
「……。」
無言で頷き、まるで油が切れた機械の様にぎこちなく手足を動かしベッドに上がる。
「緊張してんのか?」
「うん、だって…」
「ふふ、アタシもだ…」
いつになく優しい笑みを浮かべた麗は、清志の右手を掴んで左の胸に手を誘う。
「心臓がはちきれそうだ♡」
しっとりと汗ばんだ柔肌越しに彼女の鼓動が手に伝わってくる。
豊かな乳房の上からでも分かるほど彼女の鼓動は速く、大きかった。当り前だが、その感触は彼女が生きている証でもあり、今から自分とする行為を前に麗が昂ぶっている何よりの証。そう思うと、途端に彼女が何よりも愛おしくて堪らなくなった。その感情を彼女に伝えたくて、左手を麗の頬へそっとあて初めて清志からキスをした。
んちゅっ…ちゅっ、ちゅぅ
「んっ…んむぅ♡」
今までにない積極的な清志の態度に最初麗は驚いたように眼を剥いたが、すぐに目尻を下げて表情を緩ませた。その表情に一層魅力を感じつつ、清志は舌を彼女の口内に入れていく。すると彼女は清志の舌を受け止め、嬉しそうに舌を絡めてきた。最初はお互いの唾を撹拌するように大きな動きで舌を蠢かせ、口全体を愛撫していく。それが終わると次はねっとりと舌を絡みつかせ、互いの愛情や唾液をその身に刷り込むように絡ませていった。いつも強引にキスをされ、圧倒的性技によって口内を一方的に凌辱されていた清志は、それまでにない濃厚なキスに酔いしれた。麗もそれは同じらしく、熱に浮かれた瞳でじっとこちらを見据えつつ、頻りに顔の角度を変えながら甘いキスを堪能した。
「っぷ、はぁ…はぁ…」
「んちゅ、ぷぅ…なん、だ…やればできんじゃねえか…清志よぉ…」
軽い酸欠状態になりつつ、麗が優しい声でからかう。
「だって…麗さんが可愛かったから」
「!?」
麗は虚を突かれて様にポカンとしていた。
「だから、キスしたくなったんだ。」
「…物好きな奴だな、お前は。」
そう言って顔を真っ赤にして、そっぽを向いた麗は本当にいつになく可愛らしかった。
そんな彼女をもっと愛したくて、清志は彼女の胸へと愛撫をするために、その手をゆっくりのばしていった。
むにゅ、むにゅん…
彼女の胸は驚くほど柔らかかった。
血管が透けて見えるほど透明感のある白い肌をした乳房には興奮のためかじんわりと汗が滲み、その頂には既に固くそそり立つ綺麗なピンク色をした乳首がその存在を大きく示している。柔らかさと固さ、白と桜色の対比は堪らなく扇情的だった。
「むちゅ、んちゅ…」
清志はたまらず、乳首に吸いついた。
今まで押しつけられるだけだった愛しい乳房を一心不乱に味わう。まるで乳飲み子の様にねぶったり、乳首を吸うと同時に乳房の根元からマッサージをするように揉みあげたりと経験のないなりに工夫して彼女への愛撫に時間を費やした。
「はぅ…そんなに吸いついたって、おっぱいはでねえぞ、大きな赤ちゃん?」
すると彼女も初めての刺激に身をふるわせつつ、幼い子をあやすように大きな手で清志の頭を撫でてきた。その瞳にはまるで母親が子供に向ける様な優しさや余裕が滲んでいた。
「……かりっ」
「ひんっ…ばか、乳首を噛むなぁ……」
恋人である彼女に子供扱いされるのが何だか嫌だったので、ささやかな反撃として吸いついている乳首にあまがみしてみた。すると清志が思っていた以上にそれは効果があったらしく、彼女の瞳からは先程の余裕が消え、今まで聞いた事の無い様な可愛らしい悲鳴と制止を求める声が聞こえた。
「むちゅ、むちゅっんちゅっ…ちゅぱっ」
だが、清志は止めなかった。
ただあまがみするだけでは無く、前歯でしごくようにしてみたり、噛んだまま少しだけ引っ張ってみたりと試行錯誤を繰り返してみる。するとそのどれもが有効だったようで、彼女はびくびくと身を震わせて感じていた。いつもいいように振り回されるばかりの自分が彼女を翻弄しているという優越感も確かにあったが、それ以上にいつも自分をたっぷりと愛し、気持ちよくしてくれる彼女のために初めて自分が能動的に行動出来ているという思い、自分が彼女を気持ちよくさせることが出来ているという喜びの方が何倍も大きかった。
「バ、バカ…本当に、本当にやめろぉ!!」
「ちゅぱちゅぱ、ちゅぅ…」
だから彼女に少しでも気持ちよくなってもらおうと夢中になって愛撫を繰り返していたのだが…
「やめろっていってるだろうが、このぉ馬鹿野郎!!!」
「んぐっ、ちゅぽ…いたい、いたたた!?」
彼女の大きな両の手で頭を鷲掴みにされ、無理矢理引き剥がされてしまった。
「ふぅーっ、ふぅーっ清志!!」
そしてそのままぐいっと引っ張られ、額同士を突き合わせた状態で睨まれる。
彼女と短いとは言え濃密な時間を共に過ごし、色々な表情を見て馴れてきたとはいえ、目の据わった鋭い眼光で睨まれるとさすがに怖い。先程までの勢いはどこにいったのか清志は小さな声で返事をする。
「はい…」
「もうすぐイっちまうところだったじゃないか…やめろっていっただろ!?」
「え!?」
彼女は意外な一言を口にする。
そう言われて麗の様子を観察すると、確かに体は強張っているし、清志の頭を鷲掴みにしている両の手も微かに震えている。しかし、恋人同士がペッティングをして悪いことは何もないし、初めて彼女を自分の手で絶頂させることができたかもしれないと思うとただそうですかと食い下がるわけにもいかなかった。だから彼女を変に刺激しないよう丁寧に質問してみた。
「せっかくこうして僕が麗さんを気持ちよくしてあげられるっていうのに、なんで止めるの?」
「なんでって…そりゃあ、お前…」
「僕じゃ、嫌なの?」
「!!」
すると麗は口を躊躇いがちに数度戦慄かせたかと思うと、これ以上なく顔を真っ赤に染めて呟いた。
「せっかくお前と初めてセックスをするんだからよぅ…お前のペニス以外で、イキたくなかったんだよ…文句あるか!?」
こんな時、漫画なんかでは鼻血がすごい勢いで噴き出るんだろうなあなどとどうでもいい事が脳裏に浮かんだ。だってそんなどうでもいい考えが浮かぶほど、彼女が可愛らしいのだから仕方がない。いつもは凛々しさすら感じる女性なのに、こんなに可愛い一面も持っているなんて反則以外の何物でもない。この人は何度自分を惚れさせれば気が済むだろう。
「ごめん、麗さん。」
そっと彼女を抱きしめる。
「…分かったかよ、この馬鹿。」
すると麗は清志の体を優しく抱きしめ返した。
「アタシの準備はできてるし、もう我慢できそうにないから…」
そして手をするすると清志の股間へのばし、既にぱんぱんにそそり立つペニスを握り締めた。
「こいつで、アタシをお前だけのメスにしてくれよ♡」
「ほら、来な…」
М字に股を開き、彼女が陰部を両手で開いた。
するとうっすらと開いた膣口らしき部分からどっぷりと白く濃い愛液が流れ出て、彼女の体を伝い清志のベッドを汚していった。すこしだけ恥ずかしそうにうつむきながら、自分の女性器を見せつけるその様は、今まで清志が見たものの中でなによりもエロティックであり、オスとしての本能をくすぐった。
「いくよ、麗さん」
痛いくらいに勃起したペニスを握り、ゆっくりと彼女の蜜壺に押し当てていく。
にちぃ…ぐちゅくちゅぅ…
「あぁッ!!」
「んっんぁ…入ってきた♡!!!」
清志の男根は、いとも簡単に飲みこまれていく。
先程までうっすらとしか開いていなかったはずの彼女の膣は貪欲にオスを求め蠢きながらペニスを奥へと誘う。
「あ、これ…は」
だが亀頭が全て入ったところで、純潔の証である処女膜に亀頭の先が到達した。
魔物娘の場合、痛みを伴う事はほとんどないとされているが、彼女が全く痛まないとう保証はない。亀頭の先が処女膜に空いている穴に食いこんでいる今、腰を突き入れれば簡単に貫いてしまうだろう。しかし決して彼女を痛がらせたくはない。
「ふふ、ふふふ…」
そんな清志の戸惑いを察知した麗は、そっと笑うと腕を首の後ろに回し、自分の方へ抱きよせながら耳元で囁いた。
「本当にお前は優しい奴だな…。大丈夫。アタシは大丈夫だから…来てくれ♡」
「…わかった、痛かったら言ってね!!」
彼女の一言を聞き、清志は思いきって腰を突き出した。
ずりっ…ずちゅ、ずんっ…
「ぁ…ああ♡!!」
「お、くまで…入った!!」
すると、あっけなく処女膜は破れ一気に奥までペニスは進入していった。
その瞬間、麗は表情をこわばらせ甲高い声を上げた。しかし、その声には痛みやつらさは一切なく、代わりに艶や色香がたっぷりと含まれていて、彼女が快感に酔い痴れていることが誰の目にも明らかだった。
「な、んだ…これ、気持ちよすぎるッ!!」
一方の清志は、彼女にペニスを突き入れたまま固まっていた。
というのも、彼女の膣は想像以上だったからだ。正直にいうと、彼女の変幻自在な尻尾による度重なる搾精を経験していたので、少しは我慢できるのではないかと思っていた。
にちゅにちゅ、ぎゅちゅぐちゅ…
しかし、それはなんとも甘い考えだった。
麗のヴァギナは、本当に清志のペニスをぴったりと咥えこんだ。これは普通なようでとんでもなく凄い事だった。彼女の膣に入れた瞬間、まるでそのスキマに空気すらはいっていないのではないかと思うほど彼女の膣が陰茎に密着した。あるべきものを元に戻したような、収まるべきものを収めた様な一体感と安息感が快感と共にこみあげる。そしていつまでもこの安息感を味わいたい、ずっと彼女と繋がっていたいという気持ちでいっぱいになった。彼女達マンティコアが、精液を搾り取り自分たちのオスのために体を作り変える目的は、誰よりも愛するオスにこの感覚を味あわせ、自分から離れることが出来ないようにするためなのではと、ほんの僅かに残った理性で清志は考えた。それほどまでに、麗の膣は完璧だった。
「はぁ…ふぅ、入れられただけで、いっちまった…ははっ♡」
あまりのことに身動きが取れない清志の下で、軽い絶頂に達した麗は自虐的に笑う。
「それにしても、なんて情けない顔を…してんだ、清志。」
「だ、だって…」
清志は気を抜けば射精してしまいそうなのを堪えていた。
麗はその様子を可笑しそうにながめつつ、清志の頬を両手でおさえながら色っぽい仕草と声で強請る。
「お前はアタシだけのオスなんだ…。だから男らしく腰を動かして、さ。アタシにもっと深くて強烈なエクスタシーを感じさせてくれよ♡」
ずちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…じゅぽっ
「あぁ、あああああっ!!」
いつになくしおらしい表情でお願いされて、黙っていられる筈がない。
清志は心を奮い立たせて腰を動かした。
「麗、麗さん!!!」
完璧な密着感を保つ陰部にがむしゃらに腰を振る。
それは想像以上に大変だった。突き入れる際はまるで抵抗が無いのに、引き抜く時は真空の様な状態でどこまでも吸いついて放さない麗の膣は、執拗に、貪欲に清志の精液を望む。まるで底なしの泥沼であてどなくもがいているようだった。一瞬でもこの心地よさに身を任せてしまうと、全てが終わってしまう。それでも気を抜けば果ててしまいそうになるのをぐっと堪え、少しでも彼女を満足させてあげたい気持ちで腰を動き続ける。
「あぅ、すごい…気持ちいぃ、気持ちいいぞ、清志っ♡!!」
一方の麗は、一心不乱に打ちつける清志をフォローするようにそっと腰を浮かせつつ、より一層快感を貪る為に膣を伸縮させていく。いつも彼をリードし、余裕を見せていた彼女だが、彼女自身も全く経験のない快感をその身に受け、さすがに身も心も快楽一色に染まっていく。戦慄く口から洩れでる嬌声は揺れ、荒々しくかき回される膣からは決壊したように愛液が溢れ、腰は情けないほどがくがくと震えてしまう。
そんな二人にいよいよ絶頂が訪れようとしていた。
「もう、ダメだっ」
「!!アタシも、もうすぐ…もうすぐだからぁ♡!!!」
清志の限界を知った麗の膣がこれまでにないほどの締まりでペニスを包みこむ。
それを渾身の力で亀頭まで引き抜いた清志は、残った全ての力を腰に籠めて麗へと叩きつける。そして陰茎が全て飲み込まれ、亀頭が子宮口に当たった瞬間、彼女の尻尾でもしたことが無いと思うほどの大量のザーメンを吐きだした。
「くっはぁ、出る…出るッ!!!!」
「あぁ、イク、イクッ…いっちゃうっ…あぁああぁぁああ♡!!!」
ッビュ、ビュウ…ビュルル、びゅくっびゅくっ…
射精したと同時に麗も絶頂した。
その瞬間、大きな獣の足を組んで少しでも深く清志の男根が入るよう引き寄せつつ、麗は今まで見た事が無いほど乱れた表情で嬌声を上げた。清志もまるで腰が抜けてしまったかのようにがくがくと震えながら長く強い射精を行ったためか、体から力が抜けぐったりとその身を麗に預けるように覆いかぶさった。そうしてお互いに身をまかせつつ、しばらく荒い息をついていた二人だったが、マンティコアのタフさを表すように先に回復した麗が清志に強請った。
「おい、清志…。」
「はぁ、はあ…なに、麗さん?」
「ぎゅってして…」
「へ?」
驚いている清志の肩に顔を預けながら強く抱きしめつつ、麗は再度強請る。
「いいから、アタシをぎゅってしろ!!」
「はぁ…」
その勢いに半ば押された様に清志は麗の体を抱きしめる。
微かに震えてはいるが、彼女は清志に抱かれた途端に余分な力が抜けていった。射精後の独特の倦怠感も重なり、彼女とただこうして抱き合っている時間がたまらなく心地よかった。彼女がこうして求めるのも、頷ける。
…………………
「気持ちよかったか?」
そうして暫く二人で抱き合っていると、麗から質問された。
息が上がっていたそれまでのものとは違い、いつものようにしっかりした声だった。
「うん、麗さんの尻尾も気持ち良いけど…それとは違う気持ちよさが、あった気がするよ。」
すると麗はふふんと微かに笑ったかと思うと、その原因を口にした。
「アタシに跨って腰を振るお前はまさしく『オス』だったよ。母親から聞いてはいたが、やっぱりメスに種付けできるって分かると男ってのはこうも変わるもんなんだねぇ〜。」
「あ…」
それまでずっと尻尾で精液を搾り取られていたことで感覚が鈍っていたのか、麗に言われて初めて気がついた。
「あんなに必死に腰を動かして、こんなにたっぷりと射精するなんて…そんなにアタシを孕ませたかったのか〜♡?」
「それは…」
「そ・れ・は…?」
既にインキュバスとなっている清志の思考は既に魔物のそれに近いものになっていた。
「僕は…麗さんとの子供が、欲しい。」
人間の清志であれば、この年で父親になるなんて考えもしなかっただろう。
しかし彼女との濃密な性交を知ったインキュバスにとって、相手を孕ませるという行為はなんとも甘美で、堪らなく魅力的なものだった。欲望に素直なインキュバスは、愛する魔物娘に自分の感情を素直に吐露する。
「ふふ、ふはははは…あっはははは!!!」
「!?」
清志の回答を聞いた麗は高らかに笑ったかと思うと、突然起き上がりあっという間に体勢を入れ替えた。それまで麗の体の上で完全に脱力していた清志は瞬く間に麗に圧し掛かられた形となり、今まさに肉食動物に食いつかれる草食動物といった具合になってしまった。
「ふふふ、ふふふふ〜♡」
麗はこれ以上ないほど頬を釣り上げ、ゆっくりと顔を近づける。
「清志ぃ〜♡」
「な、なに?」
不穏な空気をひしひしと感じながらぎこちない笑みで答える。
「アタシを孕ませたいってんならよ…」
マンティコアは満面の笑みで迫る。
「今から時間を忘れてたぁっ〜ぷりと…アタシが満足するまで種付けセックスをしてくれるんだよなぁ?アタシを孕ませたいなんて大きな見栄を切ってくれたんだ〜…期待するなって方が間違いだろぉ♡」
「……え?」
麗が底なしの性欲を持っていることは、痛いほどよく知っている。
しかもこれから当分両親は帰ってこない。さらに自分は彼女にマウントポジションを奪われている。純粋な力比べでは圧倒的有利を誇る彼女から逃げられるとは到底思えない。そして彼女との会話で軽率な発言をする事の危険さを十分分かっているはずなのにしてしまった…。彼女を妊娠させたいと言ってしまった…。
「何を呆けてるんだ。そんな気概じゃアタシを孕ませることは出来んぞ〜。」
「ちょ、ちょっと待って…!!」
「ワタシ、マモノ。ヒトノ、コトバ、ワカラナイネ」
清志の制止を求める言葉はよくわからない言い分で遮られた。
「そんな」
「全く男なら、覚悟しろよ…なあ♡」
にゅにゅちぃ、すぷん…
「あぁ!!」
そして麗は腰を浮かせてそれまで咥えこんでいたペニスをぎりぎりまで引き抜いたかと思うと、力一杯腰を叩きつけた。自分が腰を振って得られるものとはまた違う気持ちよさで簡単に言葉を封じられてしまう。
「さあ、諦めろ♡」
麗は一切の躊躇いなく腰を振り続ける。
「早くお義父さんとお義母さんにいいニュースを報告できるように、頑張ろうな♡」
こうして清志が腰を振るよりも激しくベッドが軋む音が、長きに渡って清志の部屋に響き渡った。
そして“偶然にも”清志の両親は滞在先で麗の両親と出会い、意気投合した両家が“たまたま”二部屋だけ空きの出た旅館にもう一泊することを、今の清志は知る由もなかったのだった。
「ってな具合にそれから二日間、時間を忘れてセックスしたんだが、もう最高だったよな〜清志♡」
「う、うん…」
「………。」
「なんだよ、俯いて。あれだけやったのにまだ私に搾って欲しいのかぁ?」
「それは……そうだけど。さすがに堀越さんが居るから、さ。」
「それがどうした。茜にたっぷりとアタシたちの愛を見せつけてやろうぜぇ〜♡おう、茜。しっかり観とけよ〜。」
「……もう、イヤ。誰かこのポジション変わってぇ〜…」
大変に憂鬱な時間が堀越茜を待ち構えていたのは、彼女達の初夜から暫く立った時のことだったという。
おしまい。
「はぁ〜…相変わらず清志の部屋はいいねぇ。」
彼女にそう言われ、改めて自分の部屋を眺めてみる。
大きめの勉強机、参考書や小説、辞書などがきちっと整理され収められた本棚、制服や私服が入っている箪笥、間接照明が置かれた小さめの卓袱台、そして低反発で寝心地の良いベッド。引っ越しが多いおかげであまり物は多いというわけではないが、それなりに色々なものがあふれるいつも通りの味気ない自分の、日野清志の部屋だ。
「そう、かな。」
「ああ。綺麗ですっきりしていて…とっても落ち着くよ。」
だがそんな自分の部屋に彼女が居るだけで、なんだか部屋全体が華やいでいるように感じてしまう。モノクロの部屋がカラーになったような感じだ。
「それになにより、部屋中に清志の匂いがしみついてるってのが最高なところだな。何度来ても、この濃縮されたお前の匂いを嗅ぐとむらむらするよ…ふふふ。」
妖艶に麗は笑う。
最近、麗は自分の家を毎日のように訪れていた。清志の両親は突然出来た息子の交際相手に最初はとても驚いていたが、今では彼女が訪れるのをむしろ歓迎するほど仲が深まっている。麗はすっかり日野家に溶け込んでいた。
……………………………………………………
「初めまして、私は栗原麗といいます。清志さんとお付き合いさせていただいています。お義母様、お義父様…不躾で至らないところが多分にある私ですが、どうかよろしくお願いいたします。」
初めて対峙した父と母に、麗はこれ以上ないほどの好印象を与えた。
旧家のお嬢様といっても過言ではないほど柔らかで上品な笑みと物腰、そして言葉遣い。交際を始めた息子の相手が魔物娘であるマンティコアと知り、いくらばかりか緊張の色を見せていた両親は、彼女のそんな様子に半ば拍子抜けしたように驚きつつ、「こんなにいい人と一緒になれるなんて清志は幸せだな!!」と笑みを浮かべた。
しかも麗は何時の間に知ったのか父の好きな銘柄の酒や手に入りにくいことで有名な高級美容品を母への手土産に持ってきており、清志の両親からすこぶる高い好評価を獲得した。中でも母親は休日に麗と二人で買い物に行ったり、来る度に「日野家の味を教えてあげなきゃね」と言って一緒に台所で料理をするなどいたく彼女の事を気に入ったようだった。
こうして外堀は―――初日から完璧に埋められたのだった。
その時の彼女の変わりように驚き、あからさまにその感情が顔に出てしまったのだろう。
「お前を生んで、育ててくれたお二人なんだ。自分に出来る限りで礼を尽くすのは当たり前だろ?恥ずかしい事言わせんな、馬鹿。」
少しだけむすっと不機嫌さを浮かべながら、二人きりになった彼女はそんな表情を浮かべる清志にぶっきらぼうな説明をした。改めて、麗に惚れ直したのは言うまでもない。
……………………………………………………
そんなこんなで、彼女が我が家にいる風景は日常となりつつあるのだが、今日はちょっとばかり違っていた。
「今日はお二人が居ないんだし、目一杯楽しめるから余計に興奮しちまうよな〜。お前も、そうなんだろ?」
そう、今日は両親が家を空けている。
栄転してきた父への接待があるらしく、泊まりがけで県内の保養地へと行ったようだ。なんでも有名な花火師のウシオニが花火をあげる祭りを楽しむそうで、父は非常に楽しみにしていた。いつもは父だけで行くことが多いのだが、その花火を見たいと母も思ったことに加え、「麗ちゃんが一緒にいてくれるなら安心だし、私はお邪魔だろうからお父さんと一緒に楽しんでこようかしら〜。麗ちゃんを泣かせる様なことをしちゃダメよ?」と妙な気を回してくれた御蔭で、こうして麗と二人で家にいる。両親がいる普段では、こうして麗が訪れ尻尾による性行為を楽しむ時、さすがに清志の気持ちをくんでくれているのか、彼女は部屋に防音の呪文をかけてくれている。しかし今日はその必要が無いと言う事で、清志から精を搾り取ることに集中できると言わんばかりににやにやと笑いながら意味深な視線と言葉を投げかけてくる。
「そ、それよりもさ。喉乾かない?お茶を入れて来るから待っててよ。」
決して彼女とそういう行為をすることが嫌なわけではない。
しかし改めてこれから自分の家で麗に犯されるのだと思うと、なんだか急に気恥ずかしくなった。だから飲み物を出すと言う言い訳を口にしてベッドで寛ぐ麗に背を向け、部屋のドアに手をかける。
「まあ、待てよ。」
だが、彼女は決して獲物は逃がさない。
先程の誘惑する言葉よりもたっぷりと色香や艶が込められた彼女の一言に、清志の体はびくりと反応してしまう。どうやら自分はこれから一生、彼女が放つ魔性の言葉から逃れることは出来ないのだと思ってしまう。
「素直になれよ、清志。」
「………っ。」
麗はゆっくりと立ち上がり、彼女の言葉から放たれる魅惑に魅了され立ちつくす清志を背後から抱きすくめる。制服越しに彼女の柔らかい胸が密着し、人外特有の甘い体臭がねっとりと纏わりついてきた。
「気持ちよく…して欲しいんだろぉ?私の体でおちんちんからたっぷり白い液体を搾り取ってもらいたいんだろぅ?」
「それ、は…」
大きな獣の手が清志の全身をまさぐり、既に口を開け始めた淫靡な尻尾が股間へと先端を向ける。
「なあ、折角二人っきりなんだからよ〜。たっぷり楽しもうぜぇ〜。」
「…ぅん」
「さあ清志。お前は私にどうして欲しいかいつもみたいにいってみな。」
既に数え切れないほど麗に嬲られ、精液を絞られてきた清志は完全に調教されてしまっている。だから、いつものように彼女に降伏し、おねだりの言葉を口にする。
「僕は…麗さんの尻尾で、おちんちんを気持ちよくして欲しい、です。」
いくら快感を求める気持ちが勝っているとはいえ、この台詞を言う時に恥ずかしさが消える事は無く、清志は自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。
「ふっふ〜ん。よく言えました。」
自分の愛するオスが素直に欲望を吐露したことで、麗は嬉しそうに笑う。
そして大きな獣の手で器用に清志の制服を脱がしていき、あらわになっていく素肌に甘えるようにして尻尾を絡めていく。その様子を眺めながら、ああ今日もこの尻尾に散々弄ばれるのだなと思うと同時に、徐々に陰茎に血液が集まっていく感覚を感じた。もう自分は彼女に完全に捕らわれている、そう実感する。しかし、そんな清志に向かって彼女は意外な一言を言い放つ。
「いつものようにこの尻尾でたっぷりと搾り取って…やらない。」
「え!?」
想像もしなかった彼女の一言に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「な、なんで?いつものようにちゃんとおねだりだってしたし…僕は気がつかない間になにかしちゃった!?」
「ふ、ふふっ…」
情けなく狼狽する様子に思わず苦笑しつつ、麗は清志の片腕を掴んで自身の陰へと誘い、ねっとりと絡みつく様な猫なで声で甘える。
「違うぞ、清志。尻尾じゃなくここでやらないかって言ってんだ♡」
くちゅ…にちゅぃ
「!!」
彼女の陰部は、パンツ越しでも濡れている事が分かるほどしっとりとしていた。
「やっと…やっとアタシの体が清志の精液に、完璧に馴染んだんだ。だから今日はたっぷりとこっちでお前を可愛がってやる。嬉しいだろ、清志?」
口の中が渇き、上手く言葉が出なかった。
彼女達マンティコアが、襲った男とすぐにセックスをしないことは知っていた。そうする理由はしっかりと男から精液を搾り取り、その男をより愛することができるように自分の体を作り変えていくからなのだそうだ。そんな種族である麗がこうして自分を誘っていると言う事はつまり、自分が本当に受け入れられたといっても過言ではないだろう。そう考えると嬉しさや早く結ばれたいという焦燥感などがぐるぐると自分の中で複雑に巻き上がった。それでもなんとか頷き彼女の言葉に答えると、麗は嬉しそうに笑った後に一度強く清志の体を抱きしめ、そして優しく恋人をベッドへと誘ったのだった。
目の前で下着以外を脱ぎ去った麗がゆったりと身を横たえている。
ただ横になっているだけ、それだけなのに目の前の彼女は何よりも強く清志の気持ちを昂ぶらせる。小作りな面立ちに、吸い込まれるような美しい紅の瞳を湛える切れ長の眼、ぽってりとした唇、触れれば吸いつくように柔らかいシミ一つない白い柔肌、少し体勢を変える度に悩ましげにその姿を変える豊満な乳房、彼女の全てが清志を淫靡な世界へと誘う。
「さあ、清志。来いよ。」
「……。」
無言で頷き、まるで油が切れた機械の様にぎこちなく手足を動かしベッドに上がる。
「緊張してんのか?」
「うん、だって…」
「ふふ、アタシもだ…」
いつになく優しい笑みを浮かべた麗は、清志の右手を掴んで左の胸に手を誘う。
「心臓がはちきれそうだ♡」
しっとりと汗ばんだ柔肌越しに彼女の鼓動が手に伝わってくる。
豊かな乳房の上からでも分かるほど彼女の鼓動は速く、大きかった。当り前だが、その感触は彼女が生きている証でもあり、今から自分とする行為を前に麗が昂ぶっている何よりの証。そう思うと、途端に彼女が何よりも愛おしくて堪らなくなった。その感情を彼女に伝えたくて、左手を麗の頬へそっとあて初めて清志からキスをした。
んちゅっ…ちゅっ、ちゅぅ
「んっ…んむぅ♡」
今までにない積極的な清志の態度に最初麗は驚いたように眼を剥いたが、すぐに目尻を下げて表情を緩ませた。その表情に一層魅力を感じつつ、清志は舌を彼女の口内に入れていく。すると彼女は清志の舌を受け止め、嬉しそうに舌を絡めてきた。最初はお互いの唾を撹拌するように大きな動きで舌を蠢かせ、口全体を愛撫していく。それが終わると次はねっとりと舌を絡みつかせ、互いの愛情や唾液をその身に刷り込むように絡ませていった。いつも強引にキスをされ、圧倒的性技によって口内を一方的に凌辱されていた清志は、それまでにない濃厚なキスに酔いしれた。麗もそれは同じらしく、熱に浮かれた瞳でじっとこちらを見据えつつ、頻りに顔の角度を変えながら甘いキスを堪能した。
「っぷ、はぁ…はぁ…」
「んちゅ、ぷぅ…なん、だ…やればできんじゃねえか…清志よぉ…」
軽い酸欠状態になりつつ、麗が優しい声でからかう。
「だって…麗さんが可愛かったから」
「!?」
麗は虚を突かれて様にポカンとしていた。
「だから、キスしたくなったんだ。」
「…物好きな奴だな、お前は。」
そう言って顔を真っ赤にして、そっぽを向いた麗は本当にいつになく可愛らしかった。
そんな彼女をもっと愛したくて、清志は彼女の胸へと愛撫をするために、その手をゆっくりのばしていった。
むにゅ、むにゅん…
彼女の胸は驚くほど柔らかかった。
血管が透けて見えるほど透明感のある白い肌をした乳房には興奮のためかじんわりと汗が滲み、その頂には既に固くそそり立つ綺麗なピンク色をした乳首がその存在を大きく示している。柔らかさと固さ、白と桜色の対比は堪らなく扇情的だった。
「むちゅ、んちゅ…」
清志はたまらず、乳首に吸いついた。
今まで押しつけられるだけだった愛しい乳房を一心不乱に味わう。まるで乳飲み子の様にねぶったり、乳首を吸うと同時に乳房の根元からマッサージをするように揉みあげたりと経験のないなりに工夫して彼女への愛撫に時間を費やした。
「はぅ…そんなに吸いついたって、おっぱいはでねえぞ、大きな赤ちゃん?」
すると彼女も初めての刺激に身をふるわせつつ、幼い子をあやすように大きな手で清志の頭を撫でてきた。その瞳にはまるで母親が子供に向ける様な優しさや余裕が滲んでいた。
「……かりっ」
「ひんっ…ばか、乳首を噛むなぁ……」
恋人である彼女に子供扱いされるのが何だか嫌だったので、ささやかな反撃として吸いついている乳首にあまがみしてみた。すると清志が思っていた以上にそれは効果があったらしく、彼女の瞳からは先程の余裕が消え、今まで聞いた事の無い様な可愛らしい悲鳴と制止を求める声が聞こえた。
「むちゅ、むちゅっんちゅっ…ちゅぱっ」
だが、清志は止めなかった。
ただあまがみするだけでは無く、前歯でしごくようにしてみたり、噛んだまま少しだけ引っ張ってみたりと試行錯誤を繰り返してみる。するとそのどれもが有効だったようで、彼女はびくびくと身を震わせて感じていた。いつもいいように振り回されるばかりの自分が彼女を翻弄しているという優越感も確かにあったが、それ以上にいつも自分をたっぷりと愛し、気持ちよくしてくれる彼女のために初めて自分が能動的に行動出来ているという思い、自分が彼女を気持ちよくさせることが出来ているという喜びの方が何倍も大きかった。
「バ、バカ…本当に、本当にやめろぉ!!」
「ちゅぱちゅぱ、ちゅぅ…」
だから彼女に少しでも気持ちよくなってもらおうと夢中になって愛撫を繰り返していたのだが…
「やめろっていってるだろうが、このぉ馬鹿野郎!!!」
「んぐっ、ちゅぽ…いたい、いたたた!?」
彼女の大きな両の手で頭を鷲掴みにされ、無理矢理引き剥がされてしまった。
「ふぅーっ、ふぅーっ清志!!」
そしてそのままぐいっと引っ張られ、額同士を突き合わせた状態で睨まれる。
彼女と短いとは言え濃密な時間を共に過ごし、色々な表情を見て馴れてきたとはいえ、目の据わった鋭い眼光で睨まれるとさすがに怖い。先程までの勢いはどこにいったのか清志は小さな声で返事をする。
「はい…」
「もうすぐイっちまうところだったじゃないか…やめろっていっただろ!?」
「え!?」
彼女は意外な一言を口にする。
そう言われて麗の様子を観察すると、確かに体は強張っているし、清志の頭を鷲掴みにしている両の手も微かに震えている。しかし、恋人同士がペッティングをして悪いことは何もないし、初めて彼女を自分の手で絶頂させることができたかもしれないと思うとただそうですかと食い下がるわけにもいかなかった。だから彼女を変に刺激しないよう丁寧に質問してみた。
「せっかくこうして僕が麗さんを気持ちよくしてあげられるっていうのに、なんで止めるの?」
「なんでって…そりゃあ、お前…」
「僕じゃ、嫌なの?」
「!!」
すると麗は口を躊躇いがちに数度戦慄かせたかと思うと、これ以上なく顔を真っ赤に染めて呟いた。
「せっかくお前と初めてセックスをするんだからよぅ…お前のペニス以外で、イキたくなかったんだよ…文句あるか!?」
こんな時、漫画なんかでは鼻血がすごい勢いで噴き出るんだろうなあなどとどうでもいい事が脳裏に浮かんだ。だってそんなどうでもいい考えが浮かぶほど、彼女が可愛らしいのだから仕方がない。いつもは凛々しさすら感じる女性なのに、こんなに可愛い一面も持っているなんて反則以外の何物でもない。この人は何度自分を惚れさせれば気が済むだろう。
「ごめん、麗さん。」
そっと彼女を抱きしめる。
「…分かったかよ、この馬鹿。」
すると麗は清志の体を優しく抱きしめ返した。
「アタシの準備はできてるし、もう我慢できそうにないから…」
そして手をするすると清志の股間へのばし、既にぱんぱんにそそり立つペニスを握り締めた。
「こいつで、アタシをお前だけのメスにしてくれよ♡」
「ほら、来な…」
М字に股を開き、彼女が陰部を両手で開いた。
するとうっすらと開いた膣口らしき部分からどっぷりと白く濃い愛液が流れ出て、彼女の体を伝い清志のベッドを汚していった。すこしだけ恥ずかしそうにうつむきながら、自分の女性器を見せつけるその様は、今まで清志が見たものの中でなによりもエロティックであり、オスとしての本能をくすぐった。
「いくよ、麗さん」
痛いくらいに勃起したペニスを握り、ゆっくりと彼女の蜜壺に押し当てていく。
にちぃ…ぐちゅくちゅぅ…
「あぁッ!!」
「んっんぁ…入ってきた♡!!!」
清志の男根は、いとも簡単に飲みこまれていく。
先程までうっすらとしか開いていなかったはずの彼女の膣は貪欲にオスを求め蠢きながらペニスを奥へと誘う。
「あ、これ…は」
だが亀頭が全て入ったところで、純潔の証である処女膜に亀頭の先が到達した。
魔物娘の場合、痛みを伴う事はほとんどないとされているが、彼女が全く痛まないとう保証はない。亀頭の先が処女膜に空いている穴に食いこんでいる今、腰を突き入れれば簡単に貫いてしまうだろう。しかし決して彼女を痛がらせたくはない。
「ふふ、ふふふ…」
そんな清志の戸惑いを察知した麗は、そっと笑うと腕を首の後ろに回し、自分の方へ抱きよせながら耳元で囁いた。
「本当にお前は優しい奴だな…。大丈夫。アタシは大丈夫だから…来てくれ♡」
「…わかった、痛かったら言ってね!!」
彼女の一言を聞き、清志は思いきって腰を突き出した。
ずりっ…ずちゅ、ずんっ…
「ぁ…ああ♡!!」
「お、くまで…入った!!」
すると、あっけなく処女膜は破れ一気に奥までペニスは進入していった。
その瞬間、麗は表情をこわばらせ甲高い声を上げた。しかし、その声には痛みやつらさは一切なく、代わりに艶や色香がたっぷりと含まれていて、彼女が快感に酔い痴れていることが誰の目にも明らかだった。
「な、んだ…これ、気持ちよすぎるッ!!」
一方の清志は、彼女にペニスを突き入れたまま固まっていた。
というのも、彼女の膣は想像以上だったからだ。正直にいうと、彼女の変幻自在な尻尾による度重なる搾精を経験していたので、少しは我慢できるのではないかと思っていた。
にちゅにちゅ、ぎゅちゅぐちゅ…
しかし、それはなんとも甘い考えだった。
麗のヴァギナは、本当に清志のペニスをぴったりと咥えこんだ。これは普通なようでとんでもなく凄い事だった。彼女の膣に入れた瞬間、まるでそのスキマに空気すらはいっていないのではないかと思うほど彼女の膣が陰茎に密着した。あるべきものを元に戻したような、収まるべきものを収めた様な一体感と安息感が快感と共にこみあげる。そしていつまでもこの安息感を味わいたい、ずっと彼女と繋がっていたいという気持ちでいっぱいになった。彼女達マンティコアが、精液を搾り取り自分たちのオスのために体を作り変える目的は、誰よりも愛するオスにこの感覚を味あわせ、自分から離れることが出来ないようにするためなのではと、ほんの僅かに残った理性で清志は考えた。それほどまでに、麗の膣は完璧だった。
「はぁ…ふぅ、入れられただけで、いっちまった…ははっ♡」
あまりのことに身動きが取れない清志の下で、軽い絶頂に達した麗は自虐的に笑う。
「それにしても、なんて情けない顔を…してんだ、清志。」
「だ、だって…」
清志は気を抜けば射精してしまいそうなのを堪えていた。
麗はその様子を可笑しそうにながめつつ、清志の頬を両手でおさえながら色っぽい仕草と声で強請る。
「お前はアタシだけのオスなんだ…。だから男らしく腰を動かして、さ。アタシにもっと深くて強烈なエクスタシーを感じさせてくれよ♡」
ずちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ…じゅぽっ
「あぁ、あああああっ!!」
いつになくしおらしい表情でお願いされて、黙っていられる筈がない。
清志は心を奮い立たせて腰を動かした。
「麗、麗さん!!!」
完璧な密着感を保つ陰部にがむしゃらに腰を振る。
それは想像以上に大変だった。突き入れる際はまるで抵抗が無いのに、引き抜く時は真空の様な状態でどこまでも吸いついて放さない麗の膣は、執拗に、貪欲に清志の精液を望む。まるで底なしの泥沼であてどなくもがいているようだった。一瞬でもこの心地よさに身を任せてしまうと、全てが終わってしまう。それでも気を抜けば果ててしまいそうになるのをぐっと堪え、少しでも彼女を満足させてあげたい気持ちで腰を動き続ける。
「あぅ、すごい…気持ちいぃ、気持ちいいぞ、清志っ♡!!」
一方の麗は、一心不乱に打ちつける清志をフォローするようにそっと腰を浮かせつつ、より一層快感を貪る為に膣を伸縮させていく。いつも彼をリードし、余裕を見せていた彼女だが、彼女自身も全く経験のない快感をその身に受け、さすがに身も心も快楽一色に染まっていく。戦慄く口から洩れでる嬌声は揺れ、荒々しくかき回される膣からは決壊したように愛液が溢れ、腰は情けないほどがくがくと震えてしまう。
そんな二人にいよいよ絶頂が訪れようとしていた。
「もう、ダメだっ」
「!!アタシも、もうすぐ…もうすぐだからぁ♡!!!」
清志の限界を知った麗の膣がこれまでにないほどの締まりでペニスを包みこむ。
それを渾身の力で亀頭まで引き抜いた清志は、残った全ての力を腰に籠めて麗へと叩きつける。そして陰茎が全て飲み込まれ、亀頭が子宮口に当たった瞬間、彼女の尻尾でもしたことが無いと思うほどの大量のザーメンを吐きだした。
「くっはぁ、出る…出るッ!!!!」
「あぁ、イク、イクッ…いっちゃうっ…あぁああぁぁああ♡!!!」
ッビュ、ビュウ…ビュルル、びゅくっびゅくっ…
射精したと同時に麗も絶頂した。
その瞬間、大きな獣の足を組んで少しでも深く清志の男根が入るよう引き寄せつつ、麗は今まで見た事が無いほど乱れた表情で嬌声を上げた。清志もまるで腰が抜けてしまったかのようにがくがくと震えながら長く強い射精を行ったためか、体から力が抜けぐったりとその身を麗に預けるように覆いかぶさった。そうしてお互いに身をまかせつつ、しばらく荒い息をついていた二人だったが、マンティコアのタフさを表すように先に回復した麗が清志に強請った。
「おい、清志…。」
「はぁ、はあ…なに、麗さん?」
「ぎゅってして…」
「へ?」
驚いている清志の肩に顔を預けながら強く抱きしめつつ、麗は再度強請る。
「いいから、アタシをぎゅってしろ!!」
「はぁ…」
その勢いに半ば押された様に清志は麗の体を抱きしめる。
微かに震えてはいるが、彼女は清志に抱かれた途端に余分な力が抜けていった。射精後の独特の倦怠感も重なり、彼女とただこうして抱き合っている時間がたまらなく心地よかった。彼女がこうして求めるのも、頷ける。
…………………
「気持ちよかったか?」
そうして暫く二人で抱き合っていると、麗から質問された。
息が上がっていたそれまでのものとは違い、いつものようにしっかりした声だった。
「うん、麗さんの尻尾も気持ち良いけど…それとは違う気持ちよさが、あった気がするよ。」
すると麗はふふんと微かに笑ったかと思うと、その原因を口にした。
「アタシに跨って腰を振るお前はまさしく『オス』だったよ。母親から聞いてはいたが、やっぱりメスに種付けできるって分かると男ってのはこうも変わるもんなんだねぇ〜。」
「あ…」
それまでずっと尻尾で精液を搾り取られていたことで感覚が鈍っていたのか、麗に言われて初めて気がついた。
「あんなに必死に腰を動かして、こんなにたっぷりと射精するなんて…そんなにアタシを孕ませたかったのか〜♡?」
「それは…」
「そ・れ・は…?」
既にインキュバスとなっている清志の思考は既に魔物のそれに近いものになっていた。
「僕は…麗さんとの子供が、欲しい。」
人間の清志であれば、この年で父親になるなんて考えもしなかっただろう。
しかし彼女との濃密な性交を知ったインキュバスにとって、相手を孕ませるという行為はなんとも甘美で、堪らなく魅力的なものだった。欲望に素直なインキュバスは、愛する魔物娘に自分の感情を素直に吐露する。
「ふふ、ふはははは…あっはははは!!!」
「!?」
清志の回答を聞いた麗は高らかに笑ったかと思うと、突然起き上がりあっという間に体勢を入れ替えた。それまで麗の体の上で完全に脱力していた清志は瞬く間に麗に圧し掛かられた形となり、今まさに肉食動物に食いつかれる草食動物といった具合になってしまった。
「ふふふ、ふふふふ〜♡」
麗はこれ以上ないほど頬を釣り上げ、ゆっくりと顔を近づける。
「清志ぃ〜♡」
「な、なに?」
不穏な空気をひしひしと感じながらぎこちない笑みで答える。
「アタシを孕ませたいってんならよ…」
マンティコアは満面の笑みで迫る。
「今から時間を忘れてたぁっ〜ぷりと…アタシが満足するまで種付けセックスをしてくれるんだよなぁ?アタシを孕ませたいなんて大きな見栄を切ってくれたんだ〜…期待するなって方が間違いだろぉ♡」
「……え?」
麗が底なしの性欲を持っていることは、痛いほどよく知っている。
しかもこれから当分両親は帰ってこない。さらに自分は彼女にマウントポジションを奪われている。純粋な力比べでは圧倒的有利を誇る彼女から逃げられるとは到底思えない。そして彼女との会話で軽率な発言をする事の危険さを十分分かっているはずなのにしてしまった…。彼女を妊娠させたいと言ってしまった…。
「何を呆けてるんだ。そんな気概じゃアタシを孕ませることは出来んぞ〜。」
「ちょ、ちょっと待って…!!」
「ワタシ、マモノ。ヒトノ、コトバ、ワカラナイネ」
清志の制止を求める言葉はよくわからない言い分で遮られた。
「そんな」
「全く男なら、覚悟しろよ…なあ♡」
にゅにゅちぃ、すぷん…
「あぁ!!」
そして麗は腰を浮かせてそれまで咥えこんでいたペニスをぎりぎりまで引き抜いたかと思うと、力一杯腰を叩きつけた。自分が腰を振って得られるものとはまた違う気持ちよさで簡単に言葉を封じられてしまう。
「さあ、諦めろ♡」
麗は一切の躊躇いなく腰を振り続ける。
「早くお義父さんとお義母さんにいいニュースを報告できるように、頑張ろうな♡」
こうして清志が腰を振るよりも激しくベッドが軋む音が、長きに渡って清志の部屋に響き渡った。
そして“偶然にも”清志の両親は滞在先で麗の両親と出会い、意気投合した両家が“たまたま”二部屋だけ空きの出た旅館にもう一泊することを、今の清志は知る由もなかったのだった。
「ってな具合にそれから二日間、時間を忘れてセックスしたんだが、もう最高だったよな〜清志♡」
「う、うん…」
「………。」
「なんだよ、俯いて。あれだけやったのにまだ私に搾って欲しいのかぁ?」
「それは……そうだけど。さすがに堀越さんが居るから、さ。」
「それがどうした。茜にたっぷりとアタシたちの愛を見せつけてやろうぜぇ〜♡おう、茜。しっかり観とけよ〜。」
「……もう、イヤ。誰かこのポジション変わってぇ〜…」
大変に憂鬱な時間が堀越茜を待ち構えていたのは、彼女達の初夜から暫く立った時のことだったという。
おしまい。
14/07/08 00:30更新 / 松崎 ノス
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