騎乗位のススメ
街中にある隠れ家のような雰囲気の喫茶店。
マスターが淹れる自慢の紅茶や珈琲、彼の妻である妖孤が作るお菓子が大変に評判で常連客が多いことでも知られるこの店。
「だから、バックがいいにきまってるだろ?」
「いいえ、見つめあってする正常位こそが正義です。」
「どんな体位でしようが、旦那にしてもらえればどうでもいいじゃろうに。…まあワシは甘い言葉を囁かれながら後座位で抱っこされるのがいいかのう♡」
そんな店内では、まだ正午とは思えない赤裸々な言葉が飛び交っている。
声が聞こえてくるのは店の奥の方、十人以上の魔物娘が飲み物やお菓子を堪能しながら話に花を咲かせているあたりから。雪女、稲荷、ラミアなど種族は様々だが、彼女達の左手にはみな指輪が輝いている。どうやら午後のひと時、旦那様の話題で盛り上がっているマダム達のようだ。
「うちは…やっぱり自分が主導権を握るような体位ってのがいいなあ。あなたはどう?」
しみじみと自分の好みを語ったダークエルフが話題を隣にいる魔物娘にふる。
ふんわりと軽いウェーブがかかるクリーム色をした髪の毛
女性的で見るものに強く母性を感じさせる柔和な顔立ち
穏やかで優しさに溢れる目尻が少し下がった眼
人間には決してない額の角と獣の耳。
ほっそりとした肩口や腰とは対照的に、たわわに膨らむ胸部
華奢な人間の上半身からのびる逞しい馬の下半身
ダークエルフが話しかけた相手はある意味、魔物娘の中でも異彩を放つユニコーン。
それまで話をしていた周りの奥様たちも、性に奔放な魔物娘の中において『純潔の象徴』と称されるユニコーンがどのように答えるのかを楽しげに待ち構えている。
「ほえ?」
ところがユニコーンは目の前にあるチョコレートケーキに夢中になっていたようで、豆鉄砲を食らった鳩の様にポカンとしていた。どのような話の流れで自分に話題が回ってきたのか分からないらしく、助けを求めるようにきょろきょろと回りに視線を巡らせる。
「最近どんな風に旦那様と愛し合うのがいいかって話ですよ、奥さん。ですから奥さんも最近のお気に入りを教えてくださいな。」
ユニコーンの様子を可笑しそうに眺めながら、向かいに座るカラステングが助け船を出す。
「最近の…お気に入りですかぁ」
するとユニコーンは口に運ぼうとしたケーキを皿に戻し、何かを考えるように視線を上げる。
「あ、そうですね。最近よくやる体位がありますよ。」
「お、なんだい。早くゲロッちまいな〜。」
他のメンツとは違い、一人日本酒を飲んでいる赤鬼が楽しそうに茶々を入れる。
「私ですね、最近よく恵一さんと騎乗位でするんです。旦那様に覆いかぶさって腰を振ると堪らなく気持ちがいいですよね♪」
「え?騎乗位…?」
「……!?」
「旦那を背にのせて…赤ちゃんプレイでも、するのかね?」
しんとその場が静まり返り、やがて小波のようにざわめきが広がる。
「ふふ、ケーキ…美味しい♪」
ところが困惑する他のマダム達をよそに、ユニコーンは丁寧に切り取ったケーキを一切れ口に放り込み満面の笑みを浮かべたのだった。
…………………………
……………………
………………
木村由美江は家への帰路を急いでいた。
今日は月に一度、当番制で行う町内の婦人会の集まりに参加していた。資源回収の手順、町の主だった公共施設の掃除や手入れなど話し合わなければならない話題はすぐに片付いたのだが、その後立ち寄った喫茶店で数時間話しこんでしまい帰りが遅くなってしまった。日がだいぶ長くなったとはいえ、それでも夏の盛りに比べれば日が暮れるのは早い。既に辺りは薄暗くなり始め、日が落ちる辺りにそびえる山脈は独特の夕焼け色に染まっている。
「でも、なんであんなに話し続けることができるのかしらねえ。」
自身の軽快な蹄の音を聞きながら、可笑しくてくすりと笑ってしまう。
身も蓋もないことをいってしまえば、婦人会の集まりは話し合う内容よりもその後行われる井戸端会議がもっぱらの目的となりつつある。それぞれの地区から代表として集まった奥様方で話す内容は実に他愛もない話ばかり。時には子育てについてなど真面目な話もあるにはあるのだが、大抵が旦那との惚気話や普段している痴態の自慢など。やれうちの旦那様はかっこいい、やれうちの旦那様は優しい、昨日の晩は激しかった、昨日旦那様にたっぷり注がれてお腹がちゃぽちゃぽだとかいつも似たような話ばかりしている。
だが、不思議と毎回時間を忘れて話し込んでしまう。
同じような話を繰り返しているというのに、気がつけば時計の針が信じられない位進んでいるのだ。そんな時、いつも由美江は学生時代、特に高校生であった頃のことを思い出してしまう。あのころは毎日あのように女同士で集まっては姦しく話しに花を咲かせたものだった。ただ、あの時はパートナーのいないもの同士がこれから訪れるだろう輝かしい未来、まだ見ぬ素敵な旦那様に対する願望やくだらない妄想をぶつけあったり、ボーイフレンドのできた友人を質問攻めしたりと様子が少し違うものだったかもしれないが。
そんなことを考えていると、防風林に囲まれた我が家が見えてきた。
田舎の住まいというのは都会の標準的なそれに比べて規模が大きいものが多い。由美江が嫁いだ木村家の母屋もその例にもれず、広大な敷地に大きな日本家屋が建てられ、その周りを立派な庭と防風林が囲んでいる。嫁いだ時にはその大きさに随分と驚いたものだが、家が広くて困ることはないし、階段など由美江には辛い機構が少ないまさに自分のスタイルに合うこの家がすぐ大好きになった。今ではこの家以外の生活は考えられないほどだ。
「さあ、早く帰って恵一さんと一緒に晩御飯を食べましょう♪」
現金なもので、家が見えた私の足はより軽快に動きだす。
大好きな自宅、そしてそこには最愛の夫が居る。それだけで無条件に気分が高揚する。背中に乗せた喫茶店で購入したお菓子の入った箱やお会いした奥様方から頂いたお土産を落とさないように気をつけつつ、まるで子供が機嫌よくスキップするように家路を急いだのだった。
「ただいま戻りました〜。」
玄関の引き戸を開け、お土産を下駄箱の上に置きながら帰宅の挨拶を口にする。
私専用の足を清潔にするマットで蹄をぬぐっていると、奥から夫である恵一が顔を出した。180を超える身長、少し痩せ形で筋肉質な体躯、見るものに好青年と思わせるやや童顔な顔立ちをしている夫は、私の姿を見ると顔を明るくさせて声をかけてきた。
「やあ、お帰り。今日は楽しかった?」
そして私に近づいてそっとハグをし、頬にキスをしてくれる。
「ええ、とっても。けど遅くなってごめんなさい。もうちょっと早く帰ってくるつもりだったんだけど…」
お帰りのキスにただいまのキスで応じながらそう言うと、夫は眩しい笑顔を向けてくれる。
「気にしなくていいさ。由美江が楽しそうにしてくれていたら、俺も嬉しいからね。」
その笑顔を見るだけで、私の胸はじんわりと熱くなる。
夫がさりげない心遣いをしてくれる…こういうなんでもない瞬間に由美江はたまらなく幸せを感じ、そしていつも思う。ああこの人と出会う事が出来て、結ばれることができてよかったと。
…………………………
由美江が初めて木村恵一と出会ったのは、彼女がアルバイトをしていた書店だった。
大学に入学して二カ月。
ようやく環境に慣れてきた由美江は元来本を読むのが好きだったこともあり、駅前にある書店のアルバイトに応募した。無事に採用され、アルバイトの先輩や社員さん達から優しく仕事の手順や対応を教えて貰い、初めて店頭に立つ日。かなり緊張をしていたから動作や言動はかなりたどたどしいものだったが、由美江は任された仕事を持ち前の明るさと真面目な態度で着実にこなしていった。
だが、えてして油断というものは馴れてきた時に生まれるもの。
客足のピークを乗り越えた午後のひと時。ようやく緊張も落ち着き、大きな失敗もせずこれまで仕事をすることができたことで『私は大丈夫だ!!』というふわふわとした自信ができあがったころに、一人の客が会計を済ませるためにレジにやってきた。笑顔で品物を受け取り、バーコードを読み取り金額を照合してから紙袋に商品を詰める。お客様から紙幣を預かり、品物、レシート、お釣りを渡しぺこりとお辞儀をしながらお礼とまたの来店を願う挨拶をする―――はずだった。
「ありがとうございました。また、ありがとうございませ。」
「……え?」
私のわけのわからない挨拶を聞き、本を受け取った男性はぽかんとしてまった。
「……あっ」
一方の由美江も、自分の口から飛び出した全く意味不明な言葉に呆けてしまったが、すぐに自分のしでかしたあまりにも恥ずかしい失態に我に返り、みるみる茹でられた蛸の様な真っ赤な顔になっていった。
「も、申し訳ありません。あの、あの…えっと、ありがとうございませじゃなくて…ま、またの御来店ひょ…あうっ」
その上慌てて言い直そうとしたが、どもったあげくに言葉を噛むというさらなる醜態をさらしてしまい、私はいたたまれなくなって顔を伏せてしまった。穴があったら入りたい…そんな言葉がぴったりな状況だった。
「ははは。面白い方ですね。」
だがそんな私を見て目の前のお客さんは嘲笑の声では無く、朗らかな笑みをかけてくれた。
それまでただただ恥ずかしさに押しつぶされそうになっていた由美江も、目の前の客がかけてくれた優しい一言によって自分の失敗なのに、なんだか他人事の様に思えてきて可笑しくなってしまい、くすくすと笑いがこみあげてきた。こちらに向けられる笑顔を見るだけで、暖かい笑い声を聞くだけで自然と由美江は笑顔になったし、笑う事が出来た。そして気がつけば二人で笑顔を突き合わせ、暫くの間静かに笑いあったのだった。
その客こそが、木村恵一だった。
それから彼とは店内で出会うと、「ありがとうございませ」と二人にしか通じない秘密の挨拶を交わしてから世間話をするようになった。
初めはお互いの好きな作家やジャンルなどごく当り障りの無い話題を一言二言。
すると好きな作品や作家など共通点も多くて話しが弾み、じゃあ都合が合う休みの日にお茶でもしませんかとお誘いを受けた。断る理由もなかったのでその週末に二人で待ち合わせ、美術館などを巡った後に寄った喫茶店でこれまではあまりしなかったお互いのプライベートな話を時間も忘れて話した。彼は隣駅が最寄りの大学の農学部に通う学生で、現在勉強している内容やそれを活かして自分の故郷を盛り上げたいなど熱く語る表情がなんだかとても頼もしくかっこよく見えたのを覚えている。
そんな魔物娘にしては珍しいプラトニックなデートらしきことを何回か繰り返し、本格的にお互いの事を意識し始めたころに恵一から告白され、私たちは結ばれたのだった。
全く以てロマンのかけらもない出会いではあるが、それまで女性の影が無いのが不思議な程、誠実で優しい恵一と夫婦になった今の由美江にとっては恥ずかしくはあるが大切な思い出となっている。
「ん?どうしたの、ぼんやりとして。疲れているんじゃない?」
どうやら短い間、思いに耽っていたらしく、恵一が心配そうにこちらを覗きこんだ。
「何でもないわ。恵一さんの素敵な笑顔を見たらなんだか初めて出会ったころを思い出しちゃっただけよ。」
「ああ…『ありがとうございませ』かい?」
彼もその当時の事を思い出したのか、にんまりと意地悪な笑顔を浮かべる。
あの時、もしこんな笑顔を向けられていたらきっと彼は『とっても嫌な奴』として自分の記憶にインプットされていたに違いないと思うとなんだか可笑しかった。しかしやられっぱなしも面白くないので、隣の地区に住む赤鬼の奥様に分けていただいた上等なお酒をわざとらしくちらつかせてため息交じりに呟く。
「はあ…折角こんなにいい日本酒を分けていただいたから、今日はこのお酒で恵一さんに晩酌を楽しんでもらおうと思っていたのに。そんな意地悪な表情を向けられてしまったら、悲しくって憂さ晴らしに私が全部飲んでしまいそうだわ〜。」
恵一は時間をかけてゆっくりちびちびと酒を飲むのが好きで、酒に強いと言うわけではないので大した量は飲まないのだが、よく晩酌をしている。対照的に私はお酒にはめっぽう強く、大量に、ちゃんぽんなど無茶な飲み方をしても酔いつぶれることは滅多にない。何度も酔いつぶれた恵一さんをお持ち帰りしているほどだ。
「おいおい。そりゃあないよ。」
「ふふ、私にイジワルするからですよ〜だ♪」
足を拭き終わった私はマットを片づけ、誘うように尻尾とお尻をわざとらしく大きく振りながら足早に室内に進んでいく。
「それはすまなかった。どうしたら許してもらえる?」
「ん〜。抱きしめてもう一度お帰りのキスを…今度はここにしてくれたら許してあげようかなあ」
上目遣いで視線を投げかけ、唇に人差し指をおいて誘惑すると、夫はすぐに先ほどと同じように優しく抱きしめてくれる。
「お安い御用だ。」
「優しくね♡」
こうして帰宅早々いつものように彼と甘いひと時を交わした後、私は晩御飯の用意をするために台所へと急いだのだった。
…………………………
……………………
………………
丸い卓袱台の上に由美江の作った自慢の料理が並ぶ。
夫と食卓を囲み、農家である彼が育てた新鮮な野菜を使った滋味あふれる料理を食べ、いただいたお酒をのんびりと楽しむ。そんな平凡な家庭の夕食風景だが、何にも代えがたい夫との時間を由美江は噛み締める。いただいたお酒は実に味わい深く飲みやすいもので、恵一の杯が空けば私が、私の杯が空けば恵一が酒を入れ、二人はいつになく早いペースで飲みすすめていった。
「それでね、あの奥さんったら可笑しいの。軽い力で抱きついたつもりが旦那さんは気を失っちゃったんですって。まるでプロレスよねえ。」
そしてゆっくりとお互いに今日あったことを話していく。
魔物娘にとってセックスによるコミュニケーションが一番であるのは間違いないが、会話でお互いの気持ちや考えを共有するのも由美江は大好きだ。自分の体験したこと、それを通じて自分が何を想い、何を感じたのかを知って欲しい。だから由美江は手ぶり身振りで熱心に恵一に話しかける。
「…あはは、相変わらずあのお家は賑やかなんだね。」
「本人はこれで三回目、なんて明るく笑っていたけど旦那さんは災難ね。」
「…ああ、そうだな。」
「しかも、あの奥さんはお子さんを授かったから、赤ちゃんが生まれたら余計に賑やかになりそうだわ〜。」
「…そう、だろうなあ。」
だからこそ、そんな一時に感じた小さな違和感が由美江には気になった。
「(もしかして、機嫌が…悪い?)」
それはほんの些細な変化だった。
きっと夫をよく知る人であっても気がつかないような僅かな違いなのだけれど、由美江にしてみれば大きな違い。微妙に私の話に対する恵一のレスポンスが鈍く、その言葉にもどこかよそよそしさを感じてしまうのだ。それはあまり見ることがない夫が怒った時に見せる表情に似ていた。初めは自分の勘違いかと思い、そんな勘違いをしてしまう自分がなんだか悔しくてより笑顔で熱心に今日の婦人会であったことを夫に話しかけた。しかし、話進めていくと徐々に恵一の表情は硬くなり、由美江が感じた違和感が間違いではないのだといわんばかりだった。だから、私はどうしていいのか分からず口を噤んで恵一の様子を窺った。
「…どうした?」
不意に会話が途切れ、じっと見つめられていることに気がついた恵一が質問してくる。
「…ねえ、恵一さん。」
私は恐る恐る口を開き、彼に尋ねる。
「ん?」
「もしかして、私の話がつまらなくて…退屈させちゃった?」
「!!」
「なんだか怒っているような感じだったから…そうじゃないかなって思って…」
「違う!!!」
「!?」
彼の変化は自分が原因ではないかという思いに駆られ、段々と萎んでいく疑問の言葉は強い否定の言葉で遮断された。
「違うんだ…」
恵一は首を振りながら躊躇いがちに口を数度ぱくぱくとさせた後、覚悟を決めたように話を始める。その言葉からは小さい子供が自分のしたいたずらを咎められた時の様な、そんな気まずさをはらんだ雰囲気を由美江に感じさせた。
「由美江が、悪いんじゃない…その、だな…。俺が腹をたてているのは、だな。」
「腹をたてているのは?」
夫が何を躊躇っているのかよく分からず先の言葉を促すように相槌を打つと、酒で赤くなった顔をさらに紅潮させながら夫は自分の思いを口にした。
「俺、自身なんだ。」
「え?」
「その、由美江がとっても楽しそうで…悔しかったんだ。由美江が笑う度に、由美江が俺以外の事で笑う度に『由美江のことを笑顔にできるのは俺だけだ』とか『俺なら由美江をもっと笑顔することができる』なんて身勝手な感情が抑えきれなくて…。口を開けばそんな感情をお前にぶつけてしまいそうで…。すまない、ちょっと酒を飲み過ぎてしまったみたいで…感情が上手くコントロールできなくって」
耳の先まで真っ赤にさせて俯き、夫はそう言葉をもらした。
それは由美江の愛を焚きつけ、母性本能を刺激するには十分すぎるほどの破壊力を持っていた。
「恵一さんッ!!」
「ちょ、ちょっと由美江!?んぐぅ…!!」
由美江は恵一を強引に引き寄せ、力いっぱい抱きしめる。
突然の出来事に驚き、咄嗟に逃げ腰になる彼の胴体を右手で掴んで手繰り寄せ、左手を使って頭を豊満な胸の谷間に抑え込む。彼の体が卓袱台にあたり食器や箸が散乱するが、今はそんなことよりも心の奥底から溢れだす愛を伝えたくて、夫を強く抱きすくめた。
「優しくて、私をいつも大切にしてくれる恵一さんが大好きです。」
そしてそんな強引な行動とは正反対の優しさを込めた声で夫に話しかける。
「確かに先程の言葉には驚きました。恵一さんがそういう感情をむき出しにしたのは殆ど初めてに近い事ですから。でもね、私はそれ以上に嬉しいのですよ?」
「……嬉しい?」
「ええ。だって独占欲をむき出しにする、嫉妬してもらえるということは…恵一さんが私をそれだけ愛してくれている証拠じゃないですか♪私たち魔物娘、いえ女にとって好いた男性にそう思ってもらえるのは何より嬉しいことなのです。」
そこまで言って胸元に埋めた彼の顔を解放し、持てる限りの慈愛を視線にこめてじっと彼の顔を覗き込む。
「優しい恵一さんが、普段抱かない感情に苦しまれているのもよくわかります。ですがそんなにご自身を責めないでください。恵一さんはその気持ちを思いっきり私にぶつけて、たっぷりと愛してくださればいいのです♡ちゅ、ちゅぅ…」
「んちゅ、ぷはぁ…由美江……」
「はい、なんですか♡」
「ありがとう、愛してるよ。」
啄ばむ様なキスを交わした恵一は一瞬だけ泣きそうな表情を浮かべたかと思うと、短いけれど自身の全ての感情を込めた言葉を囁いた。それが嬉しくて、再び力いっぱい彼を抱きしめて私も愛の言葉を口にする。
「私も、です。この世界の誰よりも愛していますよ、恵一さん♡」
抱きしめたことで伝わる恵一の体温が、胸元に感じる口から洩れた声や息がなによりも心地よくて、私は幸せを噛み締めながら抱きしめる腕に力をこめた。
「あの、恵一さん…」
そうして暫く二人でキスや抱擁を交わしていると、魔物娘の性というべきか子を宿す器官がじくじくと熱を持ち始め、蜜壺から吐き出される粘度の高い愛液が下着を濡らし始めた。
「もう、我慢ができません…その、しましょ?」
「ああ、勿論さ。」
「うふふ、嬉しい♡」
明るい表情で頷いた恵一の顔には先程まで浮かんでいた躊躇いや憂いの表情は無くなっていた。
「あ、そういえば…」
「ん?どうしたの」
お互いに軽い愛撫を施しながら服を脱がしあっていると、昼間の一幕を思い出した。
「今日みなさんとお茶をした時に…私が騎乗位をするって話をしたら随分驚かれた事を思い出したの。」
「ああ…そういえば俺も他の人に話したら驚かれた事があるなあ。『え、お前の奥さん、ユニコーンだよな?』って。」
「そんなに私が上に乗るのは珍しいのかしら。」
私がぷくっと頬を膨らませると、恵一は楽しそうに笑った。
「まあ、確かに普通はしないだろうからね。でもだからこそ、俺と由美江だからできる愛の営みだって考えることもできるんじゃないかな?」
「…それってなんだか素敵♡」
「じゃあ、今晩も…騎乗位でしようか?っん、ちゅう…」
「ちゅっ、んちゅぅ…ぷはっ。ええ、全力で恵一さんから愛を搾り取ってあげるわ♪」
提案と一つ長い口づけを受けた私が、彼にしか見せない淫猥な笑みを浮かべて頷くと、恵一は早速床に横になる。
「よい、しょっと…どうかしら?」
横になった彼を跨ぎ、踏まないように慎重に足を動かしていく。
前足を恵一の頭のあたり、後足を腰のあたりで止め体の位置を調整する。自分が人型ならば夫にこんな手間をかけることもないのにとはがゆい思いに駆られてしまうが、同時に夫婦で一つの目的のために協力しているという優越感も由美江は強く感じていて、なんだか心地が良かった。
「もう、ちょっと前かな…」
「こう?」
「ああ、いきすぎ…そう、もう半歩下がってみて」
「これぐらい…?」
「うん、大丈夫だと思う。」
夫の指示に従って位置を整えた私は、前足と後足をゆっくりと曲げていく。
「そう、そのまま…真っ直ぐ腰をおろして…っと」
「あ、うふふ〜…恵一さんのおちんちん発見♡いただきま〜す♡」
近くにある家具や柱にしがみついてバランスをとり、後足で踏ん張りながらゆっくりと胴体をおろしていくと発情しきった陰唇に熱く滾ったペニスの先が触れた。きっと私のおまんこに入りやすくする為に彼がペニスの角度を調節してくれたのだろう、その配慮も嬉しくて声が弾む。人型同士の性交ならばここで焦らす為に素股を行ったり、愛液と先走りを混ぜ合わせて楽しんだりといった前戯をするのだろうが、さすがに馬の下半身ではそこまで器用に動かせないので、亀頭の先を膣口へ合わせ、ぐいっと力を込めて腰を沈めていった。
くちぃ…じゅぷ、じゅぷぷぅ
「あぁ…きた、きた♡あなたの太くて長いおちんちんが…きゃひぃん、奥まで一気に入ってきたぁ♡」
亀頭がだらしなく愛液を吐きだす恥肉を掻きわける。
ぱんぱんに充血した海綿体によって敏感な粘膜を押し広げられる感触に溜まらず私は歓喜の声を上げてしまう。そして馬のヴァギナから齎されるぞわぞわと背筋を駆け抜ける甘い快感によって、それまで必死に踏ん張っていた後足の力が緩み、大きな馬のお尻が勢いよく彼の下半身の上に落ちていった。いきり立つ男根が疼く最奥まで一気に挿入されたことで由美江の口からは叫び声の様な嬌声が、陰茎が蜜壺に飲み込まれると共に体を圧迫されたことで恵一からは喘ぎ声と若干苦しげな声が漏れる。
「ぐぅ…重いっ、おもいぃ〜」
「あら、失礼しちゃう。」
由美江はじっとりとした目線を夫に送る。
「私、これでも3XXキロなんですよ。家族や親戚の中でも体重が軽くて『スレンダーなゆみちゃん』だとか『もっとしっかり食べて、旦那さんから精を貰って体を作らなきゃ』って言われるくらいなんですから!!」
いくら由美江が軽いといっても自分の何倍もの体重をした巨体が圧し掛かってしまうのだから、なんの変哲もない人間であればおそらくあばら骨や腰骨の骨折、圧迫による臓器破損など致命傷にもなりかねない傷を負ってしまうだろう。だが妻となる魔物娘と生活するため大幅に精力や体力、体の強度が向上するインキュバスであれば、多少の息苦しさは感じるかもしれないが何の問題もない。だからこそ、由美江はこんな軽口をたたく事が出来るし、騎乗位で交わり快楽に集中する事が出来る。
「でも、そうはいってもやっぱりおも…」
「そんなデリカシーの無い言葉を何度も女性に…しかも愛する妻に向かっていってはいけませんよ、恵一さん♡」
にゅく、にゅくぅ…ぐちゅ、ぐちゅっぶちゅぅ…
「うぅ!?あぁ…ぐぅ」
夫の反論を封じるべく、膣に力をこめてペニスを締め付ける。
子宮口が鈴口にキスするようにちゅぱちゅぱと吸いつき、白濁した愛液をたっぷりと纏う襞の一つ一つが人間には出来ない細かな動きによってペニスを亀頭から根元まで丹念に撫でまわし、嬲りつくし、快感をすりこんでいく。しかも何度となく交わり、相手を知り尽くした由美江の女性器は、的確に相手の弱点、敏感な亀頭から裏筋へ集中的に群がり責め立てる。しかもその動きに加え奥からじゅくじゅくと大量の愛液がしみ出ることによって空気が押し出され、真空に近くなったおまんこの密着感や吸着力に恵一は眼を白黒させる。
「(その表情、見ていると余計に子宮が疼いちゃう♡)」
正直、自分はどちらかというとセックスにおいて受け身の方が性に合うと思っていた。
現に普段の交わりでは恵一が常にリードしてくれるし、馬の下半身にある女性器を後背位でめちゃくちゃに犯されるのなんて大好きだ。しかし初めて騎乗位で交わって今の様に自分の体の下で快楽に震える恵一を見た時、今まで感じた事の無い鮮烈な加虐心を覚え、その欲望を夫にぶつけることによって得られる快感に虜になった。他の性行為では一切そんな感情は出ないのだが、不思議と騎乗位をするときだけ由美江は変貌してしまう。今夜もその例外なく、由美江の心の中ではサディスティックな欲望の炎がメラメラと燃えたぎっている。普段母性的で柔らかな表情を浮かべる彼女とは思えないほど瞳が爛々と光り、口の端がイヤというほどつり上がった意地悪い笑顔は、同じ魔物娘であるゲイザーやマンティコアを想起させた。
「さて、奥様に心ない言葉を何度も言ってしまった恵一さんには…謝罪の意味も込めてご奉仕していただきましょうか」
由美江は上半身をかがめて、圧し掛かられ身動きの取れない恵一の頭部に手をのばしていく。
馬の下半身を出来るだけ反らして彼との距離を縮め、まるで優しく介抱するように彼の後頭部に手を回して自身のある場所へと導く。彼の顔が向かう先はたっぷりと蜜を吐きだす私のもう一つの、人間の上半身と馬の下半身の境目にある女性器だ。
「ま、まさか…」
「はい。そのまさかです。そのお口を使ってたぁ〜ぷりと私を気持ちよくさせてください♡」
「ま、まって…うっぅぷ、ん〜!!」
「ま・ち・ま・せ・ん♪」
ぶちゅ、ぬちゅう…
静止の言葉を無視し、ピンク色のラビアを顔に押し付ける。
すっかり発情し、ぱっくりと開いた女性器は鮑が岩に張り付くように鼻の下から口にかけて吸いつき、少しでも彼からエクスタシーを貪ろうと蠢く。
「さあ、恵一さん。あなたが他人に嫉妬して、独占したいと願う私の、ここ。…しっかりと可愛がってくださいね♡」
「……っちゅ、ぐちゅちゅぅ」
「あん、気持ちいい♡その調子ですよぉ♡!!」
恵一は抵抗しても無駄だと覚悟を決めたのか、舌をのばして恥肉を舐め始めた。
太く厚い舌が敏感な秘所をぐちょぐちょと丹念に舐め溶かし、時折歯や唇を使って小陰唇や膣口をあまがみする。そんな直接的な刺激に加え、鼻から荒く吐きだされる鼻息がこれ以上ないほど固く充血するクリトリスにかかる感触や、顔面に押し付けた恥肉や陰唇にちくちくと触れる細かい髭の感触がまた違った心地よさで由美江の昂ぶりを加速させていく。
「…ずちゅ、ずちゅぅぅ」
「あんっ♡それだめぇ、刺激が強すぎる♡!!」
恵一が深々と膣内に舌を差し込み、舌先をストーローの様に丸めて溢れる愛液を吸い始める。
だらしなく蜜を吐きだすヴァギナを荒々しく啜られて漏れ出る卑猥な水音、愛液を何のためらいもなく嚥下していく音や喉仏の動きが由美江を軽い絶頂へと導いていく。気がつけば恵一の頭を掴んだ手に力をぐっとこめ、さらなる刺激を求めるようにヴァギナをこすりつける。愛液を吹き出す秘所を丹念に貪られる度に、夫に奉仕させているという倒錯感や頭の中に白い靄がかかる様な強い快感が弾け、ペニスを頬張る馬のおまんこがさらなる愉悦とザーメンを欲して動きを活発化させる。
「(もう、だめ…恵一さんの精液が欲しい!!)」
「んぐぅ!?」
我慢の限界に達した膣内が苛烈にペニスを責め始めた。
それまで夫の弱点を丹念についていた動きが様子を変え、精巣から精子を絞り出す動きへと移行する。膣口が逃がさないと言わんばかりにペニスの根元に食いつき、膣全体がまるで雑巾を絞るかのように剛直を一気に搾り上げる。屈強な馬の下半身を支える、鼠径部や臀部のしなやかで強靭な筋肉から繰り出される膣圧は、それを何度も経験した恵一であっても耐えがたいものであるらしく、愛撫を続けていた口が緩み苦しげな声が漏れ聞こえた。そしてがちがちに充血した亀頭がびくびくと切なそうに震え、塞がれた口の代わりに限界が近い事を由美江に伝えてくる。その反応を受け亀頭に子宮口が熱烈なキスを落とし、一際強い力で膣が収縮した次の瞬間――――
びゅ、びゅぐびゅぐぅ…どくっどくん…びゅるぅ
「あはぁ…きた、キタ…キタァ♡恵一さんの、熱くて濃いザーメンが♡!!!」
私の最奥で糊の様な粘度の高い精液が勢い良く吐き出される。
一度も腰を振らず膣内の動きだけで夫を満足させた達成感や、降伏させたことから生じる幸福感で由美江の心は満たされた。そして同時に胎内にまき散らされた精液の心地よさで視界がかすむ様な強いエクスタシーを感じずには居られなかった。体中をびくびくと痙攣させ、上半身をぴんと反らした状態で快楽に身を任せる。そうして胎内に溜まっていく精液の温かい感触を堪能した後、ゆっくりと秘部に押しつけていた恵一を解放する。
「はぁ〜…いっぱい、私の子宮に出しましたね、恵一さん♡」
「…はぁ、はあ…ぅん」
顔面騎乗から解放されたことで、恵一はぜえぜえと荒く息をつき、力なく頷いた。
元々強くないアルコールに加え、軽い酸欠に陥り真っ赤になった彼の顔には、口周りだけでは無く顔全体に私の濃い愛液がこびりつき、ローションをかけたような酷いあり様になっている。
「さて…」
荒い息を吐きだす夫を見て、無理をさせてしまったことに後ろめたさを感じたが、精液を注がれ完全に発情した由美江の体はもう止まらない。さらなる精を求めて、ゆっくりと後足をひいて足と腰にぐっと力を込めていく。
「さあ、恵一さん。一息つけましたか?濃い精液をたっぷりいただいて私も体が温まってきましたし、もっとザーメンを出してもらえるようにこれからは私が腰を振っていこうと思います♪」
「…ちょ、っとまって…あぁっ」
「うふふ、いきますよぉ〜♡」
脱力した夫の上半身を再び横たえた私は、ゆっくりと自身の腰を持ち上げる。
射精してもなお固く勃起したペニスを膣から抜けるぎりぎりまで引き抜いたところで動きを止め、いやらしく舌なめずりをした後に思い切り腰を叩きつけピストンを開始する。
すちゅ、ずぱぁん…ずんっずりゅ
「あぁ♡これ、好き♡!!」
「ゆ、みえ…はげしすぎっ!!もっとゆっくり…」
「むり、です♡もう私は止まりませんよぉ♡」
先程身動きせずにザーメンを搾り取ったのが嘘のように激しく恵一を犯していく。
なんとか由美江を止めようと腕をのばしたり、腰を突きあげ反撃しようとする動きをあざ笑うかのように馬の大きな臀部を叩きつける。巨大な馬の下半身に圧し掛かられ、滅茶苦茶に腰を打ちつけられている様は、か弱い人間の女性が屈強な男性に無理矢理強姦されているような、一方的な凌辱の風景に酷似していた。
「奥、奥をたっぷりと突き上げてくださいっねッ!!」
由美江は膣からペニスが抜けてしまうような長いストロークを始める。
そうやって出来る限りの高い位置から全体重をかけて最奥にある子宮口に剛直を叩きつけていく。鉄の様に固い肉幹とは違い、ぷにぷにとした独特の弾力をもった亀頭が精液を求めて疼く子宮口にぶつかる度に、頭の中でチカチカと火花が散る様な強い快感が起こり、同時に先程たっぷりと胎内に出された精液が突き上げられることで子宮の中でちゃぷちゃぷと踊る感触が最高に気持ちいい。少しでも多くその刺激が欲しくて、由美江はますます力を込めて腰を打ちつけていった。サディスティックな加虐心に加えさきほど夫に向けられた独占欲や嫉妬で抱いた、母性本能や愛がガソリンとなりその腰使いは普段よりも苛烈なものになっていた。
ずんっ…どす、ずぷん…ずぅん…
部屋には先程までの静けさから一転し、二人の喘ぎ声のほかにヘビー級のボクサーがサンドバックに拳を打ちつけたような重い打撃音と愛液が撹拌される水音が響き渡る。そして発情と激しい体の動きで由美江の体からは汗や濃い体臭がまき散らされ、部屋の中に充満していく。
「あ、あ…もう、う…」
その中で、犯され続けた恵一が苦しげに自身の限界をうめき声と共にあげる。
「あ、ふんぅ…あらあら、もう…んんっ我慢できなくなった…のぉ♡?」
騎乗位によって征服欲や加虐心が大いに刺激されている由美江は、その弱々しい降伏を聞いて自然と笑みが濃くなるのを止める事が出来なかった。釣り上がった口から恵一をからかうような、獲物を甚振る様な言葉が飛び出すが、それは自身が驚くほど蕩け、熱が籠っていた。どうやら由美江も自分が考えている以上に発情しているらしく、恵一の事を笑えないほど昂ぶっているようだった。
「しょうが、ないわね…ほら、いっちゃっえ♡」
だから一段と力を込めてペニスを締め付ける下半身とは対照的に、強請る様な甘い声で夫の射精を促した。
「っ!!ああ、でる、でるぅ!!!」
その言葉を聞いた恵一は、ぎゅっと目を固く瞑ったかと思うと、打ちつけられた馬の下半身にしがみついて二度目の射精を由美江の膣内で行った。
どくっどく…ぴゅ、ぴゅっ…ぴゅるぅ
「〜っあ、またたっぷりでてる♡」
一度目の射精に負けないほどの大量の白濁液がおまんこに流し込まれていく。
先程に比べやや粘度が落ちている所為か、恵一の子種はスムーズに子宮口を通過し広がった子袋を穢していった。目を瞑ると大量に吐き出された精液によって満たされた子宮の形や大きさをはっきりと感じることができ、私は幸せに包まれる。まだ自分は妊娠を経験したことはないが、胎児をこの身に宿す感覚はこういうものなのかもしれないと思うと、直ぐにでも種付けして欲しくて私の子宮はさらなる精液を求め疼き始めた。
「ふぅ、ふう…落ち着いたかい。」
だが、力がみなぎる由美江とは違い恵一は疲労で体を弛緩させていた。
それでもこちらを気遣ってくれる優しさがなんとも彼らしかった。だから、一先ず性欲をなんとかなだめ話しかける。
「ええ、恵一さんは…お疲れ?」
「ああ、やっぱり騎乗位で犯されるのは、普通の性行為とは段違いに疲れるよ…気持ちがいいのはいいんだけどね。ははは…」
淫靡に顔を歪める由美江とは対照的に、恵一は複雑な表情を浮かべる。
その乾いた笑みを見てこちらも複雑な心持になるが、先程までの激しい性行為で恵一が感じていると言う事実と、彼の疲れを完璧に解決する力を持っていることで、私の心はすぐに卑猥な方向へと走り出す。
「なら、こうしたら問題ないわ、ね…ほ〜ら、回復♪」
私の明るい声と共に額にある角が柔らかい光に包まれ、そこから放たれたユニコーン特有の治癒術が恵一に降り注ぐ。
「完・全・回・復っと♡ふふ、これで恵一さんの疲れは無くなりました。よって私と交わることにな〜んの障害もありませんよね♪」
「………」
「安心してください。恵一さんが疲労したらこうして直ぐに回復魔法をかけますから。それに、仮に嫌だと言われても…私が恵一さんの上に圧し掛かっている限り、私が満足するまで決して逃がしませんから♡」
「…お手柔らかに頼む、よ」
もはや悟りを開いたように諦めの境地に至ったの夫に私は話しかける。
「ねえ、恵一さん。」
「なんだい、由美江?」
「誰よりも愛しくて、大切な恵一さんをこうやって気持ちよくすることができるから…私、やっぱり騎乗位が好きだわ。今夜は徹底的に愛し合いましょうね♡」
最高の笑顔でそうつぶやき、由美江は再び恵一を犯す為に激しく腰を降り始めたのだった。
マスターが淹れる自慢の紅茶や珈琲、彼の妻である妖孤が作るお菓子が大変に評判で常連客が多いことでも知られるこの店。
「だから、バックがいいにきまってるだろ?」
「いいえ、見つめあってする正常位こそが正義です。」
「どんな体位でしようが、旦那にしてもらえればどうでもいいじゃろうに。…まあワシは甘い言葉を囁かれながら後座位で抱っこされるのがいいかのう♡」
そんな店内では、まだ正午とは思えない赤裸々な言葉が飛び交っている。
声が聞こえてくるのは店の奥の方、十人以上の魔物娘が飲み物やお菓子を堪能しながら話に花を咲かせているあたりから。雪女、稲荷、ラミアなど種族は様々だが、彼女達の左手にはみな指輪が輝いている。どうやら午後のひと時、旦那様の話題で盛り上がっているマダム達のようだ。
「うちは…やっぱり自分が主導権を握るような体位ってのがいいなあ。あなたはどう?」
しみじみと自分の好みを語ったダークエルフが話題を隣にいる魔物娘にふる。
ふんわりと軽いウェーブがかかるクリーム色をした髪の毛
女性的で見るものに強く母性を感じさせる柔和な顔立ち
穏やかで優しさに溢れる目尻が少し下がった眼
人間には決してない額の角と獣の耳。
ほっそりとした肩口や腰とは対照的に、たわわに膨らむ胸部
華奢な人間の上半身からのびる逞しい馬の下半身
ダークエルフが話しかけた相手はある意味、魔物娘の中でも異彩を放つユニコーン。
それまで話をしていた周りの奥様たちも、性に奔放な魔物娘の中において『純潔の象徴』と称されるユニコーンがどのように答えるのかを楽しげに待ち構えている。
「ほえ?」
ところがユニコーンは目の前にあるチョコレートケーキに夢中になっていたようで、豆鉄砲を食らった鳩の様にポカンとしていた。どのような話の流れで自分に話題が回ってきたのか分からないらしく、助けを求めるようにきょろきょろと回りに視線を巡らせる。
「最近どんな風に旦那様と愛し合うのがいいかって話ですよ、奥さん。ですから奥さんも最近のお気に入りを教えてくださいな。」
ユニコーンの様子を可笑しそうに眺めながら、向かいに座るカラステングが助け船を出す。
「最近の…お気に入りですかぁ」
するとユニコーンは口に運ぼうとしたケーキを皿に戻し、何かを考えるように視線を上げる。
「あ、そうですね。最近よくやる体位がありますよ。」
「お、なんだい。早くゲロッちまいな〜。」
他のメンツとは違い、一人日本酒を飲んでいる赤鬼が楽しそうに茶々を入れる。
「私ですね、最近よく恵一さんと騎乗位でするんです。旦那様に覆いかぶさって腰を振ると堪らなく気持ちがいいですよね♪」
「え?騎乗位…?」
「……!?」
「旦那を背にのせて…赤ちゃんプレイでも、するのかね?」
しんとその場が静まり返り、やがて小波のようにざわめきが広がる。
「ふふ、ケーキ…美味しい♪」
ところが困惑する他のマダム達をよそに、ユニコーンは丁寧に切り取ったケーキを一切れ口に放り込み満面の笑みを浮かべたのだった。
…………………………
……………………
………………
木村由美江は家への帰路を急いでいた。
今日は月に一度、当番制で行う町内の婦人会の集まりに参加していた。資源回収の手順、町の主だった公共施設の掃除や手入れなど話し合わなければならない話題はすぐに片付いたのだが、その後立ち寄った喫茶店で数時間話しこんでしまい帰りが遅くなってしまった。日がだいぶ長くなったとはいえ、それでも夏の盛りに比べれば日が暮れるのは早い。既に辺りは薄暗くなり始め、日が落ちる辺りにそびえる山脈は独特の夕焼け色に染まっている。
「でも、なんであんなに話し続けることができるのかしらねえ。」
自身の軽快な蹄の音を聞きながら、可笑しくてくすりと笑ってしまう。
身も蓋もないことをいってしまえば、婦人会の集まりは話し合う内容よりもその後行われる井戸端会議がもっぱらの目的となりつつある。それぞれの地区から代表として集まった奥様方で話す内容は実に他愛もない話ばかり。時には子育てについてなど真面目な話もあるにはあるのだが、大抵が旦那との惚気話や普段している痴態の自慢など。やれうちの旦那様はかっこいい、やれうちの旦那様は優しい、昨日の晩は激しかった、昨日旦那様にたっぷり注がれてお腹がちゃぽちゃぽだとかいつも似たような話ばかりしている。
だが、不思議と毎回時間を忘れて話し込んでしまう。
同じような話を繰り返しているというのに、気がつけば時計の針が信じられない位進んでいるのだ。そんな時、いつも由美江は学生時代、特に高校生であった頃のことを思い出してしまう。あのころは毎日あのように女同士で集まっては姦しく話しに花を咲かせたものだった。ただ、あの時はパートナーのいないもの同士がこれから訪れるだろう輝かしい未来、まだ見ぬ素敵な旦那様に対する願望やくだらない妄想をぶつけあったり、ボーイフレンドのできた友人を質問攻めしたりと様子が少し違うものだったかもしれないが。
そんなことを考えていると、防風林に囲まれた我が家が見えてきた。
田舎の住まいというのは都会の標準的なそれに比べて規模が大きいものが多い。由美江が嫁いだ木村家の母屋もその例にもれず、広大な敷地に大きな日本家屋が建てられ、その周りを立派な庭と防風林が囲んでいる。嫁いだ時にはその大きさに随分と驚いたものだが、家が広くて困ることはないし、階段など由美江には辛い機構が少ないまさに自分のスタイルに合うこの家がすぐ大好きになった。今ではこの家以外の生活は考えられないほどだ。
「さあ、早く帰って恵一さんと一緒に晩御飯を食べましょう♪」
現金なもので、家が見えた私の足はより軽快に動きだす。
大好きな自宅、そしてそこには最愛の夫が居る。それだけで無条件に気分が高揚する。背中に乗せた喫茶店で購入したお菓子の入った箱やお会いした奥様方から頂いたお土産を落とさないように気をつけつつ、まるで子供が機嫌よくスキップするように家路を急いだのだった。
「ただいま戻りました〜。」
玄関の引き戸を開け、お土産を下駄箱の上に置きながら帰宅の挨拶を口にする。
私専用の足を清潔にするマットで蹄をぬぐっていると、奥から夫である恵一が顔を出した。180を超える身長、少し痩せ形で筋肉質な体躯、見るものに好青年と思わせるやや童顔な顔立ちをしている夫は、私の姿を見ると顔を明るくさせて声をかけてきた。
「やあ、お帰り。今日は楽しかった?」
そして私に近づいてそっとハグをし、頬にキスをしてくれる。
「ええ、とっても。けど遅くなってごめんなさい。もうちょっと早く帰ってくるつもりだったんだけど…」
お帰りのキスにただいまのキスで応じながらそう言うと、夫は眩しい笑顔を向けてくれる。
「気にしなくていいさ。由美江が楽しそうにしてくれていたら、俺も嬉しいからね。」
その笑顔を見るだけで、私の胸はじんわりと熱くなる。
夫がさりげない心遣いをしてくれる…こういうなんでもない瞬間に由美江はたまらなく幸せを感じ、そしていつも思う。ああこの人と出会う事が出来て、結ばれることができてよかったと。
…………………………
由美江が初めて木村恵一と出会ったのは、彼女がアルバイトをしていた書店だった。
大学に入学して二カ月。
ようやく環境に慣れてきた由美江は元来本を読むのが好きだったこともあり、駅前にある書店のアルバイトに応募した。無事に採用され、アルバイトの先輩や社員さん達から優しく仕事の手順や対応を教えて貰い、初めて店頭に立つ日。かなり緊張をしていたから動作や言動はかなりたどたどしいものだったが、由美江は任された仕事を持ち前の明るさと真面目な態度で着実にこなしていった。
だが、えてして油断というものは馴れてきた時に生まれるもの。
客足のピークを乗り越えた午後のひと時。ようやく緊張も落ち着き、大きな失敗もせずこれまで仕事をすることができたことで『私は大丈夫だ!!』というふわふわとした自信ができあがったころに、一人の客が会計を済ませるためにレジにやってきた。笑顔で品物を受け取り、バーコードを読み取り金額を照合してから紙袋に商品を詰める。お客様から紙幣を預かり、品物、レシート、お釣りを渡しぺこりとお辞儀をしながらお礼とまたの来店を願う挨拶をする―――はずだった。
「ありがとうございました。また、ありがとうございませ。」
「……え?」
私のわけのわからない挨拶を聞き、本を受け取った男性はぽかんとしてまった。
「……あっ」
一方の由美江も、自分の口から飛び出した全く意味不明な言葉に呆けてしまったが、すぐに自分のしでかしたあまりにも恥ずかしい失態に我に返り、みるみる茹でられた蛸の様な真っ赤な顔になっていった。
「も、申し訳ありません。あの、あの…えっと、ありがとうございませじゃなくて…ま、またの御来店ひょ…あうっ」
その上慌てて言い直そうとしたが、どもったあげくに言葉を噛むというさらなる醜態をさらしてしまい、私はいたたまれなくなって顔を伏せてしまった。穴があったら入りたい…そんな言葉がぴったりな状況だった。
「ははは。面白い方ですね。」
だがそんな私を見て目の前のお客さんは嘲笑の声では無く、朗らかな笑みをかけてくれた。
それまでただただ恥ずかしさに押しつぶされそうになっていた由美江も、目の前の客がかけてくれた優しい一言によって自分の失敗なのに、なんだか他人事の様に思えてきて可笑しくなってしまい、くすくすと笑いがこみあげてきた。こちらに向けられる笑顔を見るだけで、暖かい笑い声を聞くだけで自然と由美江は笑顔になったし、笑う事が出来た。そして気がつけば二人で笑顔を突き合わせ、暫くの間静かに笑いあったのだった。
その客こそが、木村恵一だった。
それから彼とは店内で出会うと、「ありがとうございませ」と二人にしか通じない秘密の挨拶を交わしてから世間話をするようになった。
初めはお互いの好きな作家やジャンルなどごく当り障りの無い話題を一言二言。
すると好きな作品や作家など共通点も多くて話しが弾み、じゃあ都合が合う休みの日にお茶でもしませんかとお誘いを受けた。断る理由もなかったのでその週末に二人で待ち合わせ、美術館などを巡った後に寄った喫茶店でこれまではあまりしなかったお互いのプライベートな話を時間も忘れて話した。彼は隣駅が最寄りの大学の農学部に通う学生で、現在勉強している内容やそれを活かして自分の故郷を盛り上げたいなど熱く語る表情がなんだかとても頼もしくかっこよく見えたのを覚えている。
そんな魔物娘にしては珍しいプラトニックなデートらしきことを何回か繰り返し、本格的にお互いの事を意識し始めたころに恵一から告白され、私たちは結ばれたのだった。
全く以てロマンのかけらもない出会いではあるが、それまで女性の影が無いのが不思議な程、誠実で優しい恵一と夫婦になった今の由美江にとっては恥ずかしくはあるが大切な思い出となっている。
「ん?どうしたの、ぼんやりとして。疲れているんじゃない?」
どうやら短い間、思いに耽っていたらしく、恵一が心配そうにこちらを覗きこんだ。
「何でもないわ。恵一さんの素敵な笑顔を見たらなんだか初めて出会ったころを思い出しちゃっただけよ。」
「ああ…『ありがとうございませ』かい?」
彼もその当時の事を思い出したのか、にんまりと意地悪な笑顔を浮かべる。
あの時、もしこんな笑顔を向けられていたらきっと彼は『とっても嫌な奴』として自分の記憶にインプットされていたに違いないと思うとなんだか可笑しかった。しかしやられっぱなしも面白くないので、隣の地区に住む赤鬼の奥様に分けていただいた上等なお酒をわざとらしくちらつかせてため息交じりに呟く。
「はあ…折角こんなにいい日本酒を分けていただいたから、今日はこのお酒で恵一さんに晩酌を楽しんでもらおうと思っていたのに。そんな意地悪な表情を向けられてしまったら、悲しくって憂さ晴らしに私が全部飲んでしまいそうだわ〜。」
恵一は時間をかけてゆっくりちびちびと酒を飲むのが好きで、酒に強いと言うわけではないので大した量は飲まないのだが、よく晩酌をしている。対照的に私はお酒にはめっぽう強く、大量に、ちゃんぽんなど無茶な飲み方をしても酔いつぶれることは滅多にない。何度も酔いつぶれた恵一さんをお持ち帰りしているほどだ。
「おいおい。そりゃあないよ。」
「ふふ、私にイジワルするからですよ〜だ♪」
足を拭き終わった私はマットを片づけ、誘うように尻尾とお尻をわざとらしく大きく振りながら足早に室内に進んでいく。
「それはすまなかった。どうしたら許してもらえる?」
「ん〜。抱きしめてもう一度お帰りのキスを…今度はここにしてくれたら許してあげようかなあ」
上目遣いで視線を投げかけ、唇に人差し指をおいて誘惑すると、夫はすぐに先ほどと同じように優しく抱きしめてくれる。
「お安い御用だ。」
「優しくね♡」
こうして帰宅早々いつものように彼と甘いひと時を交わした後、私は晩御飯の用意をするために台所へと急いだのだった。
…………………………
……………………
………………
丸い卓袱台の上に由美江の作った自慢の料理が並ぶ。
夫と食卓を囲み、農家である彼が育てた新鮮な野菜を使った滋味あふれる料理を食べ、いただいたお酒をのんびりと楽しむ。そんな平凡な家庭の夕食風景だが、何にも代えがたい夫との時間を由美江は噛み締める。いただいたお酒は実に味わい深く飲みやすいもので、恵一の杯が空けば私が、私の杯が空けば恵一が酒を入れ、二人はいつになく早いペースで飲みすすめていった。
「それでね、あの奥さんったら可笑しいの。軽い力で抱きついたつもりが旦那さんは気を失っちゃったんですって。まるでプロレスよねえ。」
そしてゆっくりとお互いに今日あったことを話していく。
魔物娘にとってセックスによるコミュニケーションが一番であるのは間違いないが、会話でお互いの気持ちや考えを共有するのも由美江は大好きだ。自分の体験したこと、それを通じて自分が何を想い、何を感じたのかを知って欲しい。だから由美江は手ぶり身振りで熱心に恵一に話しかける。
「…あはは、相変わらずあのお家は賑やかなんだね。」
「本人はこれで三回目、なんて明るく笑っていたけど旦那さんは災難ね。」
「…ああ、そうだな。」
「しかも、あの奥さんはお子さんを授かったから、赤ちゃんが生まれたら余計に賑やかになりそうだわ〜。」
「…そう、だろうなあ。」
だからこそ、そんな一時に感じた小さな違和感が由美江には気になった。
「(もしかして、機嫌が…悪い?)」
それはほんの些細な変化だった。
きっと夫をよく知る人であっても気がつかないような僅かな違いなのだけれど、由美江にしてみれば大きな違い。微妙に私の話に対する恵一のレスポンスが鈍く、その言葉にもどこかよそよそしさを感じてしまうのだ。それはあまり見ることがない夫が怒った時に見せる表情に似ていた。初めは自分の勘違いかと思い、そんな勘違いをしてしまう自分がなんだか悔しくてより笑顔で熱心に今日の婦人会であったことを夫に話しかけた。しかし、話進めていくと徐々に恵一の表情は硬くなり、由美江が感じた違和感が間違いではないのだといわんばかりだった。だから、私はどうしていいのか分からず口を噤んで恵一の様子を窺った。
「…どうした?」
不意に会話が途切れ、じっと見つめられていることに気がついた恵一が質問してくる。
「…ねえ、恵一さん。」
私は恐る恐る口を開き、彼に尋ねる。
「ん?」
「もしかして、私の話がつまらなくて…退屈させちゃった?」
「!!」
「なんだか怒っているような感じだったから…そうじゃないかなって思って…」
「違う!!!」
「!?」
彼の変化は自分が原因ではないかという思いに駆られ、段々と萎んでいく疑問の言葉は強い否定の言葉で遮断された。
「違うんだ…」
恵一は首を振りながら躊躇いがちに口を数度ぱくぱくとさせた後、覚悟を決めたように話を始める。その言葉からは小さい子供が自分のしたいたずらを咎められた時の様な、そんな気まずさをはらんだ雰囲気を由美江に感じさせた。
「由美江が、悪いんじゃない…その、だな…。俺が腹をたてているのは、だな。」
「腹をたてているのは?」
夫が何を躊躇っているのかよく分からず先の言葉を促すように相槌を打つと、酒で赤くなった顔をさらに紅潮させながら夫は自分の思いを口にした。
「俺、自身なんだ。」
「え?」
「その、由美江がとっても楽しそうで…悔しかったんだ。由美江が笑う度に、由美江が俺以外の事で笑う度に『由美江のことを笑顔にできるのは俺だけだ』とか『俺なら由美江をもっと笑顔することができる』なんて身勝手な感情が抑えきれなくて…。口を開けばそんな感情をお前にぶつけてしまいそうで…。すまない、ちょっと酒を飲み過ぎてしまったみたいで…感情が上手くコントロールできなくって」
耳の先まで真っ赤にさせて俯き、夫はそう言葉をもらした。
それは由美江の愛を焚きつけ、母性本能を刺激するには十分すぎるほどの破壊力を持っていた。
「恵一さんッ!!」
「ちょ、ちょっと由美江!?んぐぅ…!!」
由美江は恵一を強引に引き寄せ、力いっぱい抱きしめる。
突然の出来事に驚き、咄嗟に逃げ腰になる彼の胴体を右手で掴んで手繰り寄せ、左手を使って頭を豊満な胸の谷間に抑え込む。彼の体が卓袱台にあたり食器や箸が散乱するが、今はそんなことよりも心の奥底から溢れだす愛を伝えたくて、夫を強く抱きすくめた。
「優しくて、私をいつも大切にしてくれる恵一さんが大好きです。」
そしてそんな強引な行動とは正反対の優しさを込めた声で夫に話しかける。
「確かに先程の言葉には驚きました。恵一さんがそういう感情をむき出しにしたのは殆ど初めてに近い事ですから。でもね、私はそれ以上に嬉しいのですよ?」
「……嬉しい?」
「ええ。だって独占欲をむき出しにする、嫉妬してもらえるということは…恵一さんが私をそれだけ愛してくれている証拠じゃないですか♪私たち魔物娘、いえ女にとって好いた男性にそう思ってもらえるのは何より嬉しいことなのです。」
そこまで言って胸元に埋めた彼の顔を解放し、持てる限りの慈愛を視線にこめてじっと彼の顔を覗き込む。
「優しい恵一さんが、普段抱かない感情に苦しまれているのもよくわかります。ですがそんなにご自身を責めないでください。恵一さんはその気持ちを思いっきり私にぶつけて、たっぷりと愛してくださればいいのです♡ちゅ、ちゅぅ…」
「んちゅ、ぷはぁ…由美江……」
「はい、なんですか♡」
「ありがとう、愛してるよ。」
啄ばむ様なキスを交わした恵一は一瞬だけ泣きそうな表情を浮かべたかと思うと、短いけれど自身の全ての感情を込めた言葉を囁いた。それが嬉しくて、再び力いっぱい彼を抱きしめて私も愛の言葉を口にする。
「私も、です。この世界の誰よりも愛していますよ、恵一さん♡」
抱きしめたことで伝わる恵一の体温が、胸元に感じる口から洩れた声や息がなによりも心地よくて、私は幸せを噛み締めながら抱きしめる腕に力をこめた。
「あの、恵一さん…」
そうして暫く二人でキスや抱擁を交わしていると、魔物娘の性というべきか子を宿す器官がじくじくと熱を持ち始め、蜜壺から吐き出される粘度の高い愛液が下着を濡らし始めた。
「もう、我慢ができません…その、しましょ?」
「ああ、勿論さ。」
「うふふ、嬉しい♡」
明るい表情で頷いた恵一の顔には先程まで浮かんでいた躊躇いや憂いの表情は無くなっていた。
「あ、そういえば…」
「ん?どうしたの」
お互いに軽い愛撫を施しながら服を脱がしあっていると、昼間の一幕を思い出した。
「今日みなさんとお茶をした時に…私が騎乗位をするって話をしたら随分驚かれた事を思い出したの。」
「ああ…そういえば俺も他の人に話したら驚かれた事があるなあ。『え、お前の奥さん、ユニコーンだよな?』って。」
「そんなに私が上に乗るのは珍しいのかしら。」
私がぷくっと頬を膨らませると、恵一は楽しそうに笑った。
「まあ、確かに普通はしないだろうからね。でもだからこそ、俺と由美江だからできる愛の営みだって考えることもできるんじゃないかな?」
「…それってなんだか素敵♡」
「じゃあ、今晩も…騎乗位でしようか?っん、ちゅう…」
「ちゅっ、んちゅぅ…ぷはっ。ええ、全力で恵一さんから愛を搾り取ってあげるわ♪」
提案と一つ長い口づけを受けた私が、彼にしか見せない淫猥な笑みを浮かべて頷くと、恵一は早速床に横になる。
「よい、しょっと…どうかしら?」
横になった彼を跨ぎ、踏まないように慎重に足を動かしていく。
前足を恵一の頭のあたり、後足を腰のあたりで止め体の位置を調整する。自分が人型ならば夫にこんな手間をかけることもないのにとはがゆい思いに駆られてしまうが、同時に夫婦で一つの目的のために協力しているという優越感も由美江は強く感じていて、なんだか心地が良かった。
「もう、ちょっと前かな…」
「こう?」
「ああ、いきすぎ…そう、もう半歩下がってみて」
「これぐらい…?」
「うん、大丈夫だと思う。」
夫の指示に従って位置を整えた私は、前足と後足をゆっくりと曲げていく。
「そう、そのまま…真っ直ぐ腰をおろして…っと」
「あ、うふふ〜…恵一さんのおちんちん発見♡いただきま〜す♡」
近くにある家具や柱にしがみついてバランスをとり、後足で踏ん張りながらゆっくりと胴体をおろしていくと発情しきった陰唇に熱く滾ったペニスの先が触れた。きっと私のおまんこに入りやすくする為に彼がペニスの角度を調節してくれたのだろう、その配慮も嬉しくて声が弾む。人型同士の性交ならばここで焦らす為に素股を行ったり、愛液と先走りを混ぜ合わせて楽しんだりといった前戯をするのだろうが、さすがに馬の下半身ではそこまで器用に動かせないので、亀頭の先を膣口へ合わせ、ぐいっと力を込めて腰を沈めていった。
くちぃ…じゅぷ、じゅぷぷぅ
「あぁ…きた、きた♡あなたの太くて長いおちんちんが…きゃひぃん、奥まで一気に入ってきたぁ♡」
亀頭がだらしなく愛液を吐きだす恥肉を掻きわける。
ぱんぱんに充血した海綿体によって敏感な粘膜を押し広げられる感触に溜まらず私は歓喜の声を上げてしまう。そして馬のヴァギナから齎されるぞわぞわと背筋を駆け抜ける甘い快感によって、それまで必死に踏ん張っていた後足の力が緩み、大きな馬のお尻が勢いよく彼の下半身の上に落ちていった。いきり立つ男根が疼く最奥まで一気に挿入されたことで由美江の口からは叫び声の様な嬌声が、陰茎が蜜壺に飲み込まれると共に体を圧迫されたことで恵一からは喘ぎ声と若干苦しげな声が漏れる。
「ぐぅ…重いっ、おもいぃ〜」
「あら、失礼しちゃう。」
由美江はじっとりとした目線を夫に送る。
「私、これでも3XXキロなんですよ。家族や親戚の中でも体重が軽くて『スレンダーなゆみちゃん』だとか『もっとしっかり食べて、旦那さんから精を貰って体を作らなきゃ』って言われるくらいなんですから!!」
いくら由美江が軽いといっても自分の何倍もの体重をした巨体が圧し掛かってしまうのだから、なんの変哲もない人間であればおそらくあばら骨や腰骨の骨折、圧迫による臓器破損など致命傷にもなりかねない傷を負ってしまうだろう。だが妻となる魔物娘と生活するため大幅に精力や体力、体の強度が向上するインキュバスであれば、多少の息苦しさは感じるかもしれないが何の問題もない。だからこそ、由美江はこんな軽口をたたく事が出来るし、騎乗位で交わり快楽に集中する事が出来る。
「でも、そうはいってもやっぱりおも…」
「そんなデリカシーの無い言葉を何度も女性に…しかも愛する妻に向かっていってはいけませんよ、恵一さん♡」
にゅく、にゅくぅ…ぐちゅ、ぐちゅっぶちゅぅ…
「うぅ!?あぁ…ぐぅ」
夫の反論を封じるべく、膣に力をこめてペニスを締め付ける。
子宮口が鈴口にキスするようにちゅぱちゅぱと吸いつき、白濁した愛液をたっぷりと纏う襞の一つ一つが人間には出来ない細かな動きによってペニスを亀頭から根元まで丹念に撫でまわし、嬲りつくし、快感をすりこんでいく。しかも何度となく交わり、相手を知り尽くした由美江の女性器は、的確に相手の弱点、敏感な亀頭から裏筋へ集中的に群がり責め立てる。しかもその動きに加え奥からじゅくじゅくと大量の愛液がしみ出ることによって空気が押し出され、真空に近くなったおまんこの密着感や吸着力に恵一は眼を白黒させる。
「(その表情、見ていると余計に子宮が疼いちゃう♡)」
正直、自分はどちらかというとセックスにおいて受け身の方が性に合うと思っていた。
現に普段の交わりでは恵一が常にリードしてくれるし、馬の下半身にある女性器を後背位でめちゃくちゃに犯されるのなんて大好きだ。しかし初めて騎乗位で交わって今の様に自分の体の下で快楽に震える恵一を見た時、今まで感じた事の無い鮮烈な加虐心を覚え、その欲望を夫にぶつけることによって得られる快感に虜になった。他の性行為では一切そんな感情は出ないのだが、不思議と騎乗位をするときだけ由美江は変貌してしまう。今夜もその例外なく、由美江の心の中ではサディスティックな欲望の炎がメラメラと燃えたぎっている。普段母性的で柔らかな表情を浮かべる彼女とは思えないほど瞳が爛々と光り、口の端がイヤというほどつり上がった意地悪い笑顔は、同じ魔物娘であるゲイザーやマンティコアを想起させた。
「さて、奥様に心ない言葉を何度も言ってしまった恵一さんには…謝罪の意味も込めてご奉仕していただきましょうか」
由美江は上半身をかがめて、圧し掛かられ身動きの取れない恵一の頭部に手をのばしていく。
馬の下半身を出来るだけ反らして彼との距離を縮め、まるで優しく介抱するように彼の後頭部に手を回して自身のある場所へと導く。彼の顔が向かう先はたっぷりと蜜を吐きだす私のもう一つの、人間の上半身と馬の下半身の境目にある女性器だ。
「ま、まさか…」
「はい。そのまさかです。そのお口を使ってたぁ〜ぷりと私を気持ちよくさせてください♡」
「ま、まって…うっぅぷ、ん〜!!」
「ま・ち・ま・せ・ん♪」
ぶちゅ、ぬちゅう…
静止の言葉を無視し、ピンク色のラビアを顔に押し付ける。
すっかり発情し、ぱっくりと開いた女性器は鮑が岩に張り付くように鼻の下から口にかけて吸いつき、少しでも彼からエクスタシーを貪ろうと蠢く。
「さあ、恵一さん。あなたが他人に嫉妬して、独占したいと願う私の、ここ。…しっかりと可愛がってくださいね♡」
「……っちゅ、ぐちゅちゅぅ」
「あん、気持ちいい♡その調子ですよぉ♡!!」
恵一は抵抗しても無駄だと覚悟を決めたのか、舌をのばして恥肉を舐め始めた。
太く厚い舌が敏感な秘所をぐちょぐちょと丹念に舐め溶かし、時折歯や唇を使って小陰唇や膣口をあまがみする。そんな直接的な刺激に加え、鼻から荒く吐きだされる鼻息がこれ以上ないほど固く充血するクリトリスにかかる感触や、顔面に押し付けた恥肉や陰唇にちくちくと触れる細かい髭の感触がまた違った心地よさで由美江の昂ぶりを加速させていく。
「…ずちゅ、ずちゅぅぅ」
「あんっ♡それだめぇ、刺激が強すぎる♡!!」
恵一が深々と膣内に舌を差し込み、舌先をストーローの様に丸めて溢れる愛液を吸い始める。
だらしなく蜜を吐きだすヴァギナを荒々しく啜られて漏れ出る卑猥な水音、愛液を何のためらいもなく嚥下していく音や喉仏の動きが由美江を軽い絶頂へと導いていく。気がつけば恵一の頭を掴んだ手に力をぐっとこめ、さらなる刺激を求めるようにヴァギナをこすりつける。愛液を吹き出す秘所を丹念に貪られる度に、夫に奉仕させているという倒錯感や頭の中に白い靄がかかる様な強い快感が弾け、ペニスを頬張る馬のおまんこがさらなる愉悦とザーメンを欲して動きを活発化させる。
「(もう、だめ…恵一さんの精液が欲しい!!)」
「んぐぅ!?」
我慢の限界に達した膣内が苛烈にペニスを責め始めた。
それまで夫の弱点を丹念についていた動きが様子を変え、精巣から精子を絞り出す動きへと移行する。膣口が逃がさないと言わんばかりにペニスの根元に食いつき、膣全体がまるで雑巾を絞るかのように剛直を一気に搾り上げる。屈強な馬の下半身を支える、鼠径部や臀部のしなやかで強靭な筋肉から繰り出される膣圧は、それを何度も経験した恵一であっても耐えがたいものであるらしく、愛撫を続けていた口が緩み苦しげな声が漏れ聞こえた。そしてがちがちに充血した亀頭がびくびくと切なそうに震え、塞がれた口の代わりに限界が近い事を由美江に伝えてくる。その反応を受け亀頭に子宮口が熱烈なキスを落とし、一際強い力で膣が収縮した次の瞬間――――
びゅ、びゅぐびゅぐぅ…どくっどくん…びゅるぅ
「あはぁ…きた、キタ…キタァ♡恵一さんの、熱くて濃いザーメンが♡!!!」
私の最奥で糊の様な粘度の高い精液が勢い良く吐き出される。
一度も腰を振らず膣内の動きだけで夫を満足させた達成感や、降伏させたことから生じる幸福感で由美江の心は満たされた。そして同時に胎内にまき散らされた精液の心地よさで視界がかすむ様な強いエクスタシーを感じずには居られなかった。体中をびくびくと痙攣させ、上半身をぴんと反らした状態で快楽に身を任せる。そうして胎内に溜まっていく精液の温かい感触を堪能した後、ゆっくりと秘部に押しつけていた恵一を解放する。
「はぁ〜…いっぱい、私の子宮に出しましたね、恵一さん♡」
「…はぁ、はあ…ぅん」
顔面騎乗から解放されたことで、恵一はぜえぜえと荒く息をつき、力なく頷いた。
元々強くないアルコールに加え、軽い酸欠に陥り真っ赤になった彼の顔には、口周りだけでは無く顔全体に私の濃い愛液がこびりつき、ローションをかけたような酷いあり様になっている。
「さて…」
荒い息を吐きだす夫を見て、無理をさせてしまったことに後ろめたさを感じたが、精液を注がれ完全に発情した由美江の体はもう止まらない。さらなる精を求めて、ゆっくりと後足をひいて足と腰にぐっと力を込めていく。
「さあ、恵一さん。一息つけましたか?濃い精液をたっぷりいただいて私も体が温まってきましたし、もっとザーメンを出してもらえるようにこれからは私が腰を振っていこうと思います♪」
「…ちょ、っとまって…あぁっ」
「うふふ、いきますよぉ〜♡」
脱力した夫の上半身を再び横たえた私は、ゆっくりと自身の腰を持ち上げる。
射精してもなお固く勃起したペニスを膣から抜けるぎりぎりまで引き抜いたところで動きを止め、いやらしく舌なめずりをした後に思い切り腰を叩きつけピストンを開始する。
すちゅ、ずぱぁん…ずんっずりゅ
「あぁ♡これ、好き♡!!」
「ゆ、みえ…はげしすぎっ!!もっとゆっくり…」
「むり、です♡もう私は止まりませんよぉ♡」
先程身動きせずにザーメンを搾り取ったのが嘘のように激しく恵一を犯していく。
なんとか由美江を止めようと腕をのばしたり、腰を突きあげ反撃しようとする動きをあざ笑うかのように馬の大きな臀部を叩きつける。巨大な馬の下半身に圧し掛かられ、滅茶苦茶に腰を打ちつけられている様は、か弱い人間の女性が屈強な男性に無理矢理強姦されているような、一方的な凌辱の風景に酷似していた。
「奥、奥をたっぷりと突き上げてくださいっねッ!!」
由美江は膣からペニスが抜けてしまうような長いストロークを始める。
そうやって出来る限りの高い位置から全体重をかけて最奥にある子宮口に剛直を叩きつけていく。鉄の様に固い肉幹とは違い、ぷにぷにとした独特の弾力をもった亀頭が精液を求めて疼く子宮口にぶつかる度に、頭の中でチカチカと火花が散る様な強い快感が起こり、同時に先程たっぷりと胎内に出された精液が突き上げられることで子宮の中でちゃぷちゃぷと踊る感触が最高に気持ちいい。少しでも多くその刺激が欲しくて、由美江はますます力を込めて腰を打ちつけていった。サディスティックな加虐心に加えさきほど夫に向けられた独占欲や嫉妬で抱いた、母性本能や愛がガソリンとなりその腰使いは普段よりも苛烈なものになっていた。
ずんっ…どす、ずぷん…ずぅん…
部屋には先程までの静けさから一転し、二人の喘ぎ声のほかにヘビー級のボクサーがサンドバックに拳を打ちつけたような重い打撃音と愛液が撹拌される水音が響き渡る。そして発情と激しい体の動きで由美江の体からは汗や濃い体臭がまき散らされ、部屋の中に充満していく。
「あ、あ…もう、う…」
その中で、犯され続けた恵一が苦しげに自身の限界をうめき声と共にあげる。
「あ、ふんぅ…あらあら、もう…んんっ我慢できなくなった…のぉ♡?」
騎乗位によって征服欲や加虐心が大いに刺激されている由美江は、その弱々しい降伏を聞いて自然と笑みが濃くなるのを止める事が出来なかった。釣り上がった口から恵一をからかうような、獲物を甚振る様な言葉が飛び出すが、それは自身が驚くほど蕩け、熱が籠っていた。どうやら由美江も自分が考えている以上に発情しているらしく、恵一の事を笑えないほど昂ぶっているようだった。
「しょうが、ないわね…ほら、いっちゃっえ♡」
だから一段と力を込めてペニスを締め付ける下半身とは対照的に、強請る様な甘い声で夫の射精を促した。
「っ!!ああ、でる、でるぅ!!!」
その言葉を聞いた恵一は、ぎゅっと目を固く瞑ったかと思うと、打ちつけられた馬の下半身にしがみついて二度目の射精を由美江の膣内で行った。
どくっどく…ぴゅ、ぴゅっ…ぴゅるぅ
「〜っあ、またたっぷりでてる♡」
一度目の射精に負けないほどの大量の白濁液がおまんこに流し込まれていく。
先程に比べやや粘度が落ちている所為か、恵一の子種はスムーズに子宮口を通過し広がった子袋を穢していった。目を瞑ると大量に吐き出された精液によって満たされた子宮の形や大きさをはっきりと感じることができ、私は幸せに包まれる。まだ自分は妊娠を経験したことはないが、胎児をこの身に宿す感覚はこういうものなのかもしれないと思うと、直ぐにでも種付けして欲しくて私の子宮はさらなる精液を求め疼き始めた。
「ふぅ、ふう…落ち着いたかい。」
だが、力がみなぎる由美江とは違い恵一は疲労で体を弛緩させていた。
それでもこちらを気遣ってくれる優しさがなんとも彼らしかった。だから、一先ず性欲をなんとかなだめ話しかける。
「ええ、恵一さんは…お疲れ?」
「ああ、やっぱり騎乗位で犯されるのは、普通の性行為とは段違いに疲れるよ…気持ちがいいのはいいんだけどね。ははは…」
淫靡に顔を歪める由美江とは対照的に、恵一は複雑な表情を浮かべる。
その乾いた笑みを見てこちらも複雑な心持になるが、先程までの激しい性行為で恵一が感じていると言う事実と、彼の疲れを完璧に解決する力を持っていることで、私の心はすぐに卑猥な方向へと走り出す。
「なら、こうしたら問題ないわ、ね…ほ〜ら、回復♪」
私の明るい声と共に額にある角が柔らかい光に包まれ、そこから放たれたユニコーン特有の治癒術が恵一に降り注ぐ。
「完・全・回・復っと♡ふふ、これで恵一さんの疲れは無くなりました。よって私と交わることにな〜んの障害もありませんよね♪」
「………」
「安心してください。恵一さんが疲労したらこうして直ぐに回復魔法をかけますから。それに、仮に嫌だと言われても…私が恵一さんの上に圧し掛かっている限り、私が満足するまで決して逃がしませんから♡」
「…お手柔らかに頼む、よ」
もはや悟りを開いたように諦めの境地に至ったの夫に私は話しかける。
「ねえ、恵一さん。」
「なんだい、由美江?」
「誰よりも愛しくて、大切な恵一さんをこうやって気持ちよくすることができるから…私、やっぱり騎乗位が好きだわ。今夜は徹底的に愛し合いましょうね♡」
最高の笑顔でそうつぶやき、由美江は再び恵一を犯す為に激しく腰を降り始めたのだった。
14/05/10 00:12更新 / 松崎 ノス