後篇
西洋クラシックのゆったりとした旋律が室内に流れている。
その部屋は朋子の部屋とはまた違った煩雑さを誇っていた。大きな本棚が三つ、そしてそこから大量の本や資料が溢れているのは同じだが、朋子の部屋にあるような妖しげで不可思議なものは一切ない。その代り部屋に置かれた硝子戸のついた大きな棚には、沢山の植物標本が所狭しと並んでいる。色とりどりの花々の標本があるせいか、朋子の部屋よりもぐっと有機的な空気を感じる事が出来る。
牧野満はそんな自室で仕事をしていた。
目の前にある机の上には沢山の花や植物が並べられていて、その一つ一つに名前や採取した場所、時刻などが丁寧に記載されている。それらは全て自分が採取したものだ。普段仕事をする際に使っているその机の奥には音楽を流す為のオーディオとコーヒーポットが置かれている。どれも長年愛用している品だ。
「ここら辺はやはり分布が偏る、な。何か要因があるのかな?」
冷めきったコーヒーを啜りつつ、ぼんやりと独り言を呟く。
満は現在、准教授として地元の大学で研究をしている。専攻は植物の生活様式を調べ、分布や外界との関係について研究する生態学と呼ばれる分野だ。特にこのジパングに数多く存在する里山とよばれる自然形態を調べることに力を入れている。目の前に置かれている多くの標本たちもその仕事における大切な資料だ。
満は幼いころより故郷の里山で過ごす事が多かった。
友達たちがゲームなどに熱中する中、一人山に行っては日が暮れるまで自然と戯れた。季節ごとに咲く美しい花々、独特のフォルムをした果実や葉を見るのが何より好きだった。そして自然に対する好奇心や親しみは一過性のものではなく、いつまでたっても消えることはなかった。だから、大学へ進学する際に迷わずこの世界へ飛び込んだ。そして運よく大学院卒業時に助手として大学に残る事ができ、今では准教授になるまでになっていた
コンコン
「満さん、いる?」
コーヒーの苦みで思考をクリアにして、今ぶつかっている問題に取り組もうとしたその時―――軽いノックと共に妻の声が聞こえてきた。
「ああ、いるよ。」
「入っていい?」
「どうぞ〜。」
妻に返事をしつつ、手をのばしてオーディオを止める。どうも妻はクラシックがあまり好きではないらしい。何事も妻と一緒に楽しみたいものだが、こういう趣味の世界は擦れ違いが起こるのも仕方がないのかもしれない。
「失礼するわ。」
音楽が止むと同時に妻が入ってくる。いつものように黒縁眼鏡をかけ、黒のワンピースの上に白衣を羽織っている。彼女がしている恰好は…完全に自分の趣味を反映したものだ。
「(…やっぱり何度見ても…綺麗だ。)」
何事も平凡で特徴の無い自分には不釣り合いな美貌を備えた彼女と、結婚して以来毎日顔を合わせているが、今でもふとした時に見惚れてしまう時がある。
そんな彼女とは、数年前にとある山の麓で出会った。
その山はこのジパングで一番の標高を誇っている山で、その周辺には高山植物を始めとして独自の生態系が確認されている。満はそこを中心に研究をしている研究仲間から合同調査の誘いを受け訪れていた。その山の北部に広がる針葉樹林、苔、キノコなどの採取や調査が出来るとあって、とても心躍ったのを今でも覚えている。
「ねえ、そこのあなた。」
「え?」
現地で友人や今回の参加者と目的地までむかい、集合時間までそれぞれに別れ自由に調査をしている時だった。服が汚れるのも厭わず、這い蹲るようになりながら夢中になって群生していた苔を観察していた満は突然声をかけられて飛び上がるほど吃驚した。なぜならその声が女性のものだったからだ。今日の合同調査に女性の参加者はいない。
「ふふ、そんなに驚かなくても。」
「ああ、すみません。って…えぇ!?」
慌てて声のする方に振り向き、自分に話しかけた女性がボロボロのマントだけを羽織った半裸の状態で立っているのを見て、二度吃驚した。それまで周りが恋を謳歌する中研究に没頭し、「あいつの恋人は植物だ」と陰で言われるような生活を送っていた満は、彼女が動く度に見え隠れする白く美しい肌や胸が視線に入っただけで、顔が真っ赤になり身動きが取れなくなってしまった。はっきりいってそこら辺の中高生より女性に対する免疫がない自信があった。
そんな様子を楽しそうにながめ、ゆっくりとこちらに近づきながら彼女は質問してきた。
「可愛らしい反応。あなたは今なにをしているの?」
「…このあたりの研究を、その、友人と一緒に…」
「まあ、研究をしているのですか?」
「ええ…大学で植物を…」
「素敵。成程…それで先程の様子も納得いきます。」
「はあ…」
「好奇心が強くて…研究熱心なんですね。」
「……まあ。」
「…まさに好都合。」
「…?」
突然目の前に現れた彼女は、こちらを値踏みするような視線を送りつつ質問をしてくる。その視線に耐えつつ、しどろもどろになりながら答えていた満にこの日三度目であり最大の、いや生涯においても最大の驚きをもたらす質問が彼女の口からなされた。
「ねえ、私の実験体…延いては夫に、なりません?」
それが妻との出会いだった
「どうしたの、ぼんやりして。」
「はは、なんでもないよ。ちょっと昔を思い出していただけさ。」
ぼんやりとしていた自分を不審に思ったのか、訝しげにこちらをみる妻に慌てて返事をする。
「昔?」
「ああ。君の突然のプロポーズを、ね。」
魔物娘に目をつけられた只の人間が逃れるなんて出来る訳もない。その場で満は朋子に押し倒され、夫婦となったのだった。
ちなみに元々朋子はその山に死体を探しにきたらしい。
このジパングでは死体を手に入れるのは至難の技らしく、自殺の名所と実しやかに囁かれることもあるこの場所ならば…と思ってやってきた。ところが山にはどこにも死体なんてなく、いるのはそういった噂に引き寄せられてやってきた自殺願望を抱いた人間を保護しようと躍起になる魔物娘ばかり。どの魔物娘の目のぎらぎらとぎらついて怖いくらいだったそうだ。
だからこれ以上長居していても意味がないと思い切り上げようとしたその時、地面に突っ伏すようにして何かをしている男を朋子は発見した。男に見つからないように気配を消し木の陰に隠れながら様子を見ていると、ノートに何かを必死に書き記したり、目の前に生える植物を丁寧に採取していることからどうやら何かしらの研究か、調査をしているのではと考えた。
「実験に使う死体を探していたら、思いもせず夫をゲットしたってわけ。」
元々彼女にそこまで強い結婚願望は無かったらしい。
それでもいつかするであろう結婚相手の唯一の条件として、彼女は『好奇心の有無』をあげていた。
「知識を欲するという飽くなき探求心を抱いている人ならば、私たちリッチが執拗に実験や研究に拘るのを理解してくれる。そうでしょ?」
それは彼女たちリッチが知識に固執する性質から来るものなのだと満は教えて貰った。
だから、地面につっぷし一心不乱に何かに没頭する満を見つけた瞬間に、これはいい実験体であり、実験体として接するうちに最愛の夫となるかもしれない男を見つける事が出来たと思ったのだそうだ。
しかし、朋子はのんびりしてはいられないと同時に考えた。なぜなら満は誰の魔力も匂いも付いていない。そんな状態でこの山を歩けば、下手をすれば先程から見てきた男に飢えた魔物娘たちが横取りするかもしれない、だからこそこの場で私のモノにしてしまおうと思い、あの唐突なプロポーズとなったのだそうだ。
そして現在に至る。
出会いは唐突だったが、今はお互いにかけがえのない唯一無二のパートナーとして生活を共にしている。夫婦仲はとても良好で、喧嘩一つした事が無い。
「と、まあそんなことは置いておくとして。何か用事?」
頭に浮かんだ回想を無理矢理断ち切り、彼女にこの部屋へ来た目的を尋ねた。朋子は首を少し傾げながら答える。
「ええ。『実験』をしたいのだけれど、大丈夫?」
「実験、か……。」
彼女が言う『実験』や『研究』というのは、二人の間では特別な意味を持っている。
理論や仮説を確かめるため、人為的に一定の条件を設定して行う一般的なものと意味合いは同じだが、自分たち夫婦が行う『実験』は全て性交やそれに準ずる行為に関する『実験』や『研究』であり、それを開始する合図でもあるのだ。
「うん。大丈夫だよ、今から?」
インキュバスとなった自分が、愛する妻のお誘いを断るわけがない。今では妻より優先するべきものは無いとさえ思っているくらいだ。
「…準備や最終確認したい事があるから、三十分後、寝室に来てもらえる?」
そう言われて机に置かれた時計の文字盤に目を向けて時間を確認する。ちょうど長身がてっぺんを指している。
「分かった。三十分後だね。」
「ええ。それじゃあ…また後に。」
自分の提案を夫が受けてくれて嬉しいのか、笑顔を浮かべながら朋子は部屋の戸をあける。こちらに背中を向けた今の彼女からは全身から喜びのオーラが見えるようだった。満はそんな朋子に声をかける。
「ちなみに今回の実験は何をするんだい?」
「それはお楽しみ♪」
よっぽどその実験が楽しみなのか、言葉を弾ませながら朋子は答える。
「そう言われると、気になるなあ。ヒントだけでもちょうだい。」
「うーん、ヒントか…。今回の実験ではある命題を証明したいと思っている、の。」
「その…命題とは、なんぞや?」
「あなたへの…」
そう言って妻はくるりとこちらへ振り向き、真っ直ぐな視線を向けながら言葉を続けた。
「私の愛を証明する。ただそれだけ。」
じゃあ寝室でと言い残し、手を振りながら彼女は去って行った。
残された満はその意味深な言葉の意図が分からず、ただ茫然と閉められた戸を眺めるしかなかったのだった。
妻の謎めいた発言からちょうど三十分経っていた。
満はその間にシャワーを浴びて体を清め、いつでも行為を始められるよう準備をした。その間、彼女が最後に残した言葉の真意を考えてみたが、どうにも彼女の意図が読めなかった。一体彼女は何をして証明しようと言うのだろうか。
コンコン
「お〜い、そろそろ時間だけど入っていいかい?」
いつまで考えても埒は明かないしこれから嫌だ応でも知ることになるだろうと思い、寝室のドアを静かにノックして声をかける。
「…どうぞ。」
すると、若干声が上ずった返事が返ってきた。どうやら準備は終わっているようだ。
「失礼するよ…って暗いね!」
妻の許可が下りたので、満はドアを開けて寝室へと入る。
妻はこちらに背を向けてベッドの上に座っていた。そして妻のいる寝室はベッドのそばで点灯しているスタンド以外が消されていた。暗闇の中、ぼんやりとした間接照明によってレースがついた下着とガーターベルトを身に付けたアンデットの肢体が暗闇に浮かびあがっている。日ごろこのような実験をする際には『経過具合を確かめたいから明りはつけた状態で』という妻の要望で、煌々と明りをつけた状態で行うことが多いので、なんだか虚をつかれたような気分になってしまう。
「今日は…暗い中で行いたいの…。」
そんな満の気持ちを察したのか、朋子はそう告げる。背を向けたままこちらを見ていないのに、今自分が考えている事を言いあてられる辺り、いかに自分が彼女に思考を読まれているかを改めて理解する。
「了解。それで今日の実験の条件は室内の暗さ以外はなに?」
「今日の条件は…私の性器に愛撫をする際はクンニリングスのみ。他の部位への愛撫はいつも通りで大丈夫。そしてこれが一番大事…挿入後は絶対途中で止めず、最後まで私を犯しぬく事。その三つ。約束、よ。」
「それはつまり…女性器に対して…例えば指を使って愛撫しちゃだめってこと?」
「ええ。結構繊細な実験なの、今回は。」
「挿入してから最後までってことは…中断せざるを得ない何かが起こる可能性が高いの?」
「私にもだし、あなたにも…とだけ言っておくわ。」
「え!?問題が起こるのは朋子だけじゃないの?」
部屋の暗さに目を慣らしていく間、今回の実験の条件を確認していく。
いくら『実験』といっているからといって、これからする性行為の段取りをわざわざ二人で話し合っているのは赤の他人から見ればなんとも滑稽に映るかもしれない。しかし、これは頻繁に実験をするものとしては欠かせない大切なプロセスなのだ。きちんとした結果を出す為にはしっかりとした条件を定めなければならない。それが当り前なのだ。
しかし、今回朋子が自分に出した条件はなんとも奇妙なものばかり。それらの条件が一体、どう愛を証明するものになるのかさっぱり見当がつかない。
「時間ももったいないし、さあ…始めましょう、あなた?」
「分かったよ…」
「…っん…」
妻の言葉を受け、目も完全に暗さに慣れた満はそっとベッドの上に上がり、背後から朋子を抱きしめた。
折れそうなくらい細く華奢な体をいきなり抱きしめられ、妻の口から自然と吐息が漏れる。満の頭には幾つかの疑問が残ったままだが、妻が実験を開始するよう宣言したことで、すぐに頭を切り替える。
「…ちょっと、っん、強い…よ…」
「いつもと変わらないよ…」
「優しく、ね?」
「我がままだな、朋子は。」
「だ、誰が!?…っンチュ…じゅっ…ちゅう…」
ちゅ…あむぅ…じゅるぅ…あむっ…
反論しようとこちらを振り向いた妻の唇に、音をたてて吸いつく。
まずはぷっくりとした艶やかな唇にむしゃぶりつく。音をたてながら口に含んだ唇に歯をたてないようにしながらあまがみをして、ささくれ一つない綺麗な唇の皺をのばしていくように、丹念にしつこく味わって行く。
「…ず、るい…っん、はぁ…」
そうして唇を丹念に味わった後、口内を堪能するためにゅるりと舌を入れていく。彼女のやや低い体温が舌に伝わり、それだけでじんわりと満に快感をもたらした。
じゅ…れろ…ちゅ、…れろぉ…
一つ一つの歯の形を確かめていくように朋子の歯や歯肉を舐めていく。
つるつるとしたエナメル質の舌触りと対照的なプルプルとした歯肉の感触が気持ちいい。異なる二つの感触を全ての歯から味わいたくて、上顎から下顎にかけて一気に舌を走らせていく。綺麗に生えそろった前歯、可愛らしい犬歯、舌を目一杯伸ばしてやっと届く奥歯をいつもの順番に舐めていく。全ての歯を舐め終わった頃には二人の体温で彼女の口内がすっかり温まり、満は得も言われぬ喜びに満たされる。
「…ちゅ…ねえ、こっちを向いて?」
「ぅん…はあ…分かった、わ…。」
一旦、彼女の口から離れ彼女に体制を返るよう促す。
すると彼女は二人の間に出来た唾液の橋が切れるのを残念そうに見つめながら、ゆっくりとこちらに体を向けていった。既に彼女は欲情のスイッチが入ったらしく、瞳は熱に潤み動きは何処となく緩慢としている。
「…じゅ、じゅうちゅ…とも、こ…」
「…んちゅ、あな、た…あなた…ん、はあ…むちゅ…」
じゅちゅう…んっは…はぁ…じゅるぅ…ちゅぅ…
こちらを向き終えた朋子の唇を味わいながら、ゆっくりとベッドに押し倒していく。
押し倒され逃げ場を奪われ、夫に圧し掛かられた重さで思わず漏れる息までも味わうかのように、満は激しく舌を朋子の口内へ突き入れていく。それを待ち受けていた朋子の舌は嬉しそうに絡みつき、力強く自身の奥へと満の舌を招き入れていく。まるで蛇が絡み合っているかの様に執拗にお互いを絡ませながら濃密な唾液交換をおこなう。そうしてかき回されたどちらともわからない唾液が朋子の可憐な口から漏れ出し、幾筋も顎を伝って流れ落ちていく。
満はそんな扇情的な光景を見つつ、朋子が着ている下着を脱がせるためにそっとベッドと背中の間に手を差し入れる。すると朋子の背中には薄っすらと汗が滲んでいた。満はそれを馴染ませるようにして背中を撫でつつ、ゆっくりとブラジャーを取り外していった。
「…ぷ、ちゅ…綺麗だよ、朋子。」
「…じっと、見ないで……」
黒いブラジャーが取り除かれ、血管が透けて見えるほど青白い肌をした乳房が姿を現した。
それは大きくはないが決して小さくもなく、実に均整のとれた美乳である。間接照明で照らされていることもあって、暗闇に浮かぶ彼女の胸はいつも以上に美しく見えた。それは一面に降り積もった足跡一つない新雪のような美を満に感じさせる。
「…やっ…んん!!」
満はしばらく見つめた後、優しく乳房を揉んでいく。
まるで自分の手にフィットするような絶妙な大きさ、触れた瞬間から手に吸いつく絹の様な肌の感触がたまらない。二つの乳房を下から中心に持ちあげるように寄せつつ、指と手のひらを使いながらピンク色に染まる乳頭に向かってゆっくりと揉みしだいていく。すると満が触れたところから血色がよくなったように汗が滲み、彼女独特の甘い匂いの体臭を発散させていった。
「…ちゅぅ…ちゅ…」
彼女の匂いを鼻孔一杯に吸い込みつつ、既に力強く立ち上がっている乳首に吸いついていく。
柔らかい乳房とは対照的に固く凝り固まった乳首を乳輪ごと口に含み、舌を使ってねっとりと愛撫する。敏感になった先端部分をあまがみし、飴を転がすように舌で乳首を舐めていく。
「ひゃぁ…強く、しないでぇ…」
すると既に性欲に瞳を濡らしていた朋子はたまらず声をあげた。
「どうしようか、な…ず、ちゅぅぅぅ…」
「ぁああぁ…!!!」
だが満は妻の懇願を無視し、わざと大きな音を出しながら乳房に吸いついた。
朋子は悲鳴に近い嬌声をあげながら気をやる。満の体の下で腰を浮かし痙攣していることからも彼女が絶頂をむかえている事がよくわかった。しかし、それでもやめることなく満は胸への愛撫を続けていった。
「はぁ…はあ…ぜ。ひゅぅ…もう胸は良いから…他の、場所を…お願い♡」
それから三度軽い絶頂をむかえるまでじっくりと満は妻の胸を堪能した。ちゅぽんという音をたてて満の口から解放された乳首や乳輪はよりいっそう濃い桜色に染まっている。
「…どこをしてほしいか、言ってもらわないと困るなあ…」
妻が蕩け切った表情でギブアップしたのを満足げに眺めつつ、わざと意地悪な質問をする。妻が次に何を望んでいるかなど手に取るように分かる。だが、それを彼女に直接言わせたいのだ。
「もぉ…意地悪…私のおまんこを…可愛がって♡」
朋子はさらに頬を赤らめつつ、満の手を自身の下半身に誘いつつおねだりをする。何度見てもその扇情的な光景を見るのは堪らない。
「じゃあ、失礼するね。」
目の前のメスをめちゃくちゃに犯したいという欲望を抑えつつ、満はゆっくりと体勢を整えていく。そして朋子が着ているパンツに手をかけて焦らすように脱がせていく。
にちゃぁ…
するとむわっとしたメスの香りが匂い立ち、女性器から溢れた愛液がねっとりとパンツにこびりつきながら糸をひいた。それはやや白く濁り、彼女が本気で感じている疑いようの無い証拠であることを示していた。。
「あらら。そんなに胸の愛撫が…というより暗い部屋でするのがよかった?」
「ノ・ノーコメント♡」
「ふふ、ここも可愛がって上げるよ…」
愛液にまみれたパンツを取り外すと、しとどに濡れた女性器が姿を現した。
ちゅぅ…じゅりゅ…れろれろ…くにゅぅ…
「あ…!あー…♡」
朋子の細くしなやかな両足を両手で支え、無防備に晒された女陰に愛撫を施していく。
事前に彼女から言われた様に、クンニリングスだけで奉仕する。まずは何度交わっても形が崩れない美しい割れ目を舌で広げつつ、ぷっくりと充血した大陰唇を丁寧に舐めていく。舌で肉唇を押し広げるように舐め、汗と愛液に濡れた小陰唇と共に彼女の最も敏感な部分を攻めていく。
「(…いつもと、違う。)」
だが、幾度となく彼女と性行為をかさねてきた満は何とも言えない違和感を覚えていた。
「(…分泌される愛液が、少ない?)」
残念ながら暗いのでクリアに見えないが、いつもの彼女であればごぽごぽと音がするのではないかと言うぐらい吐き出される愛液があまり吐き出されていないことに気がついた。それは満に一抹の不安を感じさせた。
「もっと…もっと舐めて♡」
彼女の陶酔しきった顔を見る限り、感じていないわけではないようだ。とすると―――
「…ちゅっぱ…ねえ、朋子。」
「んぁ…どうか、した?」
陰部から口を離し、妻に質問する。
「体調が悪かったり、しない?」
「え…どうしてそんな、ことを聞くの?」
それまで蕩けきっていた表情が一瞬で消え、朋子は真顔で質問を返してきた。
「いや、いつもの君だったら溺れるんじゃないかってくらい愛液がでるのに…今日はあまり出ていないようだから、さ。もしかしたら体調でも悪いのかなって思って。もし悪いなら今日は……」
「くっふふふ…ははは!!」
こちらが真剣に身を案じているのに、朋子は大きな笑い声をあげた。
「わ、笑う事はないじゃないか!!」
「…ごめん。いや、心配してくれているあなたの顔があんまりにも可愛かったから。」
「…そんな事じゃごまかされないよ?」
そんなに自分がしょぼくれた顔をしていたのかと思いつつ、じとっと彼女をねめつける。
「ふふ、いや存外…私の事をよく観察してくれているんだなって思うと嬉しくて…」
だが、それは彼女に通じなかったらしく、マイペースな笑みを返されただけだった。
「心配には及ばない。おそらくそれも今回の実験で起きる副産物だろうから、大丈夫。それより…」
それでも依然疑いの目を向けていた満の頬にそっと手をそえ、淫靡に誘う。
「あなたがしっかり濡らしてくれたから、もう大丈夫だと思う…キテ♡」
何か言い返そうかとも思ったが、妻の甘い誘惑に逆らえるわけもなく、美しい裸体へと吸い込まれていく。
「じゃあ…入れるよ。」
満は下着を脱ぎ、勃起したペニスを妻の膣口へあてがう。
既に男根は痛いほどいきりたち、びくびくとカウパー液を吐き出している。膣口から吐き出される愛液と混ざりあい、卑猥な音をたてながら混ざり合うのを確かめつつ満は朋子へ視線を向ける。
「ええ…お願い…」
朋子は一つ明るい笑顔を浮かべたかと思うと腰をこちらに押し付け、より深く膣口と亀頭をキスさせる。その感覚がたまらず、満は腰に力を入れ彼女の肉壁を掻きわけてペニスを挿入させていく。すると蕩け切った彼女の膣内は肉ひだをふるわせつつ、膣奥まで嬉しそうに男根を招き入れた―――
はず、だった。
「あ…く……んん…ッ!!!」
「!?」
「はは、予想…以上だ♡」
確かに朋子の膣に満のペニスは挿入されていた。彼女の膣内に満の亀頭がしっかり咥えこまれている。
ところが彼女の膣はまるで別人のように狭く、そしてあるはずの無いものによって進入を遮られてしまった。それは数年前、彼女と出会ったあの山の中で一度だけ出会った事があるもの、それは―――
「これは…処女、膜!?」
「そ、う…私の膣に処女膜を再現した…そ、それだけ……それだけ。」
彼女は浅く速い呼吸をしながら、にやりと笑う。
「…さあ、あな…たに処女を捧げる、のは…ッ二度目だ、けど…しっかりと奪って、よ?」
朋子が出来るだけ明るくそう告げるが、満はとてもそれをしようとは思えなかった。
なぜならペニスを挿入した妻の顔が見たこともないほど痛みを我慢するために歪み、額一杯に脂汗をかいているからだ。とてもではないが続けようとは思えない。今すぐ中断すべきだ。
「無理だ!!朋子がこんなに痛がっているのに。今すぐ止めよう!!!!」
満は膣からペニスを引き抜き、彼女を安静にさせるために立ちあがろうとした。
しかし、それよりも早く朋子が手足をのばし、満が逃れられないように絡めていく。両手はがっしりと首から後頭部にかけて、両脚は満の腰に回し逃げられないように固定する。その力は今までに感じた事が無い様な強さで、満は素直に驚いた。
「な、何をしているんだ!!こんなこと止めなき…んちゅ!?」
「…じゅるぅ…ちゅ…」
直ぐに自分から離れるように言おうとした口ごと、キスによって塞がれた。
「約束…したでしょ?…はぁ…ふぅ…どんなことがあっても…私をッ最後まで犯しぬくって…はあ…」
朋子はそう言いながらグリグリと腰をこちらに押し付け、処女膜と亀頭をこすりつけていく。
「それに、こうも…言った。っ中断せざるを……得ない状況が起こる、かもしれない…私にも、あなたにも。それはきっと…私、が…痛がる姿を見、たら…ふぅ…優しいあなたは、中断するように言い出すだろうと…私は信じていた…から、そう言った…はぁ…のよ。」
処女膜に開いた穴に、まるでいつも子宮口とそうするように亀頭の先端をあてがいながら言葉を続ける。
「私、は…大丈夫……だから、私を…信じて、もう一度私の処女を奪って?」
お願い、あなた―――朋子はそう言って微笑み、満の頬にキスをした。
「―――………。」
その笑顔を見た瞬間、彼女を心配する気持ちよりも、彼女の期待や信用に答えたいと言う気持ちが満の中で大きくなっていた。
「本当に辛かったら…言うんだよ?」
優しく朋子の頭を撫でつつ、それでもそれだけはどうしても伝えたかった。
「ありがとう…愛してる。き、て♡」
彼女の言葉が終ると同時に、満は腰に力を入れ、彼女の中に埋まった男根を奥へ入れていった。
つぅ……ズププ…
その途端、彼女の処女膜が悲鳴を上げる
ググ…ぐぐぐ……ぐ…ズシっ
そして開いていた穴を押し広げるように亀頭が食い込んでいきついに、その時が訪れる
ズニュル……ぶちぃ…ぃ…ずんっ!!!
「あ……うぁっ…は…き、た…♡」
処女膜を貫いた勢いのまま、ペニスを一気に膣奥まで挿入した。
ペニスが処女膜を突き破った瞬間、処女膜の奥で溜まっていた大量の愛液と共に破瓜の血が溢れ出る。愛液の量が少なかったのはどうやら処女膜でせき止められていたようだ。粘度が濃い愛液の甘い匂いと、鉄錆の様な血の匂いが二人の間に充満する。
「大丈夫、朋子?」
膣奥まで挿しいれたペニスを下手に動かして刺激しないように注意しながら、痛みを必死に堪える朋子の頭を撫でる。
「あー…♡に、ど…めの…はかは…しげき、てき…♡」
朋子はどこか焦点の合わない瞳に涙を一杯にしながら、嬉しそうに呟く。
「ね…キス、して♡」
「ああ、お安い御用さ…ちゅ…じゅるぅ…」
「ん…れろ…好き…んちゅ…愛して…る…ふぅ…ねえ、して?……大丈夫、だから…いつも、みたいに…腰をふって…ザーメンを、ぶちまけて♡」
「ッ!!」
耳元で甘く囁かれた言葉を切っ掛けに、満の腰がピストン運動を開始する。
ぐちゅ…ぐり、ぐりぃ…ずちゅ…
ペニスを出し入れする度に結合部から泡立った愛液と血液が溢れだす。それがもたらす淫靡な撹拌音を聞きながら満は腰を振る速度を速めていく。
「く!!ツッ…ア…はっ♡」
最初は苦痛に歪んでいた朋子の表情にも、時間が立つと普段の様な淫蕩で享楽に耽った表情が見え隠れするようになってきた。
ぱん…ぱんっ…ずん、ずぱん…
「あぁ…いい、気持ち、いぃ♡!!」
満の腰が朋子の内股に強くぶつけられるようになったころには、先ほどの痛みを堪えていた表情は消え、こみ上がってくる欲望と快楽に身を任せた嬌声が口から吐き出される。それは満の荒い息と奇妙に合わさり、二人をより深い絶頂へ導いているかのようだった。そして必死に腰を振っていた満に限界が訪れようとしていた。睾丸から精子が競り上がり、我慢していても亀頭が切なげにぶるぶると震えた。
「きて!私の、中に!!全部…出して♡」
それを敏感に感じ取った朋子は懇願する。
「ああ、出す。出すよ。出るっ!!」
びゅぐ…ぶぴゅ…ドクッ…ドクン…
「きてる…なか、わたし、の♡なかにいっぱい♡わたしも、いく♡いっちゃうぅぅぅ♡」
大量の白濁液がぶちまけられた瞬間、朋子は声を上げながら絶頂をむかえた。
「…っだい、じょうぶ…ともこ?」
数十秒は続いたであろう射精の反動で緩慢としつつ、満は優しい声色で話しかける。
「はぁ…はあ…たい、じょうぶ♡最後までしてくれて…んっぅ…ありが、とう♡」
「無事に…私、の愛を……証明、できた…わ♡」
そういってこの日一番の笑顔を浮かべ、朋子は甘えるように満に抱きついた。
抱きついたことでお互いの鼓動がひどく大きく聞こえ、それが何より心地よかった。
その部屋は朋子の部屋とはまた違った煩雑さを誇っていた。大きな本棚が三つ、そしてそこから大量の本や資料が溢れているのは同じだが、朋子の部屋にあるような妖しげで不可思議なものは一切ない。その代り部屋に置かれた硝子戸のついた大きな棚には、沢山の植物標本が所狭しと並んでいる。色とりどりの花々の標本があるせいか、朋子の部屋よりもぐっと有機的な空気を感じる事が出来る。
牧野満はそんな自室で仕事をしていた。
目の前にある机の上には沢山の花や植物が並べられていて、その一つ一つに名前や採取した場所、時刻などが丁寧に記載されている。それらは全て自分が採取したものだ。普段仕事をする際に使っているその机の奥には音楽を流す為のオーディオとコーヒーポットが置かれている。どれも長年愛用している品だ。
「ここら辺はやはり分布が偏る、な。何か要因があるのかな?」
冷めきったコーヒーを啜りつつ、ぼんやりと独り言を呟く。
満は現在、准教授として地元の大学で研究をしている。専攻は植物の生活様式を調べ、分布や外界との関係について研究する生態学と呼ばれる分野だ。特にこのジパングに数多く存在する里山とよばれる自然形態を調べることに力を入れている。目の前に置かれている多くの標本たちもその仕事における大切な資料だ。
満は幼いころより故郷の里山で過ごす事が多かった。
友達たちがゲームなどに熱中する中、一人山に行っては日が暮れるまで自然と戯れた。季節ごとに咲く美しい花々、独特のフォルムをした果実や葉を見るのが何より好きだった。そして自然に対する好奇心や親しみは一過性のものではなく、いつまでたっても消えることはなかった。だから、大学へ進学する際に迷わずこの世界へ飛び込んだ。そして運よく大学院卒業時に助手として大学に残る事ができ、今では准教授になるまでになっていた
コンコン
「満さん、いる?」
コーヒーの苦みで思考をクリアにして、今ぶつかっている問題に取り組もうとしたその時―――軽いノックと共に妻の声が聞こえてきた。
「ああ、いるよ。」
「入っていい?」
「どうぞ〜。」
妻に返事をしつつ、手をのばしてオーディオを止める。どうも妻はクラシックがあまり好きではないらしい。何事も妻と一緒に楽しみたいものだが、こういう趣味の世界は擦れ違いが起こるのも仕方がないのかもしれない。
「失礼するわ。」
音楽が止むと同時に妻が入ってくる。いつものように黒縁眼鏡をかけ、黒のワンピースの上に白衣を羽織っている。彼女がしている恰好は…完全に自分の趣味を反映したものだ。
「(…やっぱり何度見ても…綺麗だ。)」
何事も平凡で特徴の無い自分には不釣り合いな美貌を備えた彼女と、結婚して以来毎日顔を合わせているが、今でもふとした時に見惚れてしまう時がある。
そんな彼女とは、数年前にとある山の麓で出会った。
その山はこのジパングで一番の標高を誇っている山で、その周辺には高山植物を始めとして独自の生態系が確認されている。満はそこを中心に研究をしている研究仲間から合同調査の誘いを受け訪れていた。その山の北部に広がる針葉樹林、苔、キノコなどの採取や調査が出来るとあって、とても心躍ったのを今でも覚えている。
「ねえ、そこのあなた。」
「え?」
現地で友人や今回の参加者と目的地までむかい、集合時間までそれぞれに別れ自由に調査をしている時だった。服が汚れるのも厭わず、這い蹲るようになりながら夢中になって群生していた苔を観察していた満は突然声をかけられて飛び上がるほど吃驚した。なぜならその声が女性のものだったからだ。今日の合同調査に女性の参加者はいない。
「ふふ、そんなに驚かなくても。」
「ああ、すみません。って…えぇ!?」
慌てて声のする方に振り向き、自分に話しかけた女性がボロボロのマントだけを羽織った半裸の状態で立っているのを見て、二度吃驚した。それまで周りが恋を謳歌する中研究に没頭し、「あいつの恋人は植物だ」と陰で言われるような生活を送っていた満は、彼女が動く度に見え隠れする白く美しい肌や胸が視線に入っただけで、顔が真っ赤になり身動きが取れなくなってしまった。はっきりいってそこら辺の中高生より女性に対する免疫がない自信があった。
そんな様子を楽しそうにながめ、ゆっくりとこちらに近づきながら彼女は質問してきた。
「可愛らしい反応。あなたは今なにをしているの?」
「…このあたりの研究を、その、友人と一緒に…」
「まあ、研究をしているのですか?」
「ええ…大学で植物を…」
「素敵。成程…それで先程の様子も納得いきます。」
「はあ…」
「好奇心が強くて…研究熱心なんですね。」
「……まあ。」
「…まさに好都合。」
「…?」
突然目の前に現れた彼女は、こちらを値踏みするような視線を送りつつ質問をしてくる。その視線に耐えつつ、しどろもどろになりながら答えていた満にこの日三度目であり最大の、いや生涯においても最大の驚きをもたらす質問が彼女の口からなされた。
「ねえ、私の実験体…延いては夫に、なりません?」
それが妻との出会いだった
「どうしたの、ぼんやりして。」
「はは、なんでもないよ。ちょっと昔を思い出していただけさ。」
ぼんやりとしていた自分を不審に思ったのか、訝しげにこちらをみる妻に慌てて返事をする。
「昔?」
「ああ。君の突然のプロポーズを、ね。」
魔物娘に目をつけられた只の人間が逃れるなんて出来る訳もない。その場で満は朋子に押し倒され、夫婦となったのだった。
ちなみに元々朋子はその山に死体を探しにきたらしい。
このジパングでは死体を手に入れるのは至難の技らしく、自殺の名所と実しやかに囁かれることもあるこの場所ならば…と思ってやってきた。ところが山にはどこにも死体なんてなく、いるのはそういった噂に引き寄せられてやってきた自殺願望を抱いた人間を保護しようと躍起になる魔物娘ばかり。どの魔物娘の目のぎらぎらとぎらついて怖いくらいだったそうだ。
だからこれ以上長居していても意味がないと思い切り上げようとしたその時、地面に突っ伏すようにして何かをしている男を朋子は発見した。男に見つからないように気配を消し木の陰に隠れながら様子を見ていると、ノートに何かを必死に書き記したり、目の前に生える植物を丁寧に採取していることからどうやら何かしらの研究か、調査をしているのではと考えた。
「実験に使う死体を探していたら、思いもせず夫をゲットしたってわけ。」
元々彼女にそこまで強い結婚願望は無かったらしい。
それでもいつかするであろう結婚相手の唯一の条件として、彼女は『好奇心の有無』をあげていた。
「知識を欲するという飽くなき探求心を抱いている人ならば、私たちリッチが執拗に実験や研究に拘るのを理解してくれる。そうでしょ?」
それは彼女たちリッチが知識に固執する性質から来るものなのだと満は教えて貰った。
だから、地面につっぷし一心不乱に何かに没頭する満を見つけた瞬間に、これはいい実験体であり、実験体として接するうちに最愛の夫となるかもしれない男を見つける事が出来たと思ったのだそうだ。
しかし、朋子はのんびりしてはいられないと同時に考えた。なぜなら満は誰の魔力も匂いも付いていない。そんな状態でこの山を歩けば、下手をすれば先程から見てきた男に飢えた魔物娘たちが横取りするかもしれない、だからこそこの場で私のモノにしてしまおうと思い、あの唐突なプロポーズとなったのだそうだ。
そして現在に至る。
出会いは唐突だったが、今はお互いにかけがえのない唯一無二のパートナーとして生活を共にしている。夫婦仲はとても良好で、喧嘩一つした事が無い。
「と、まあそんなことは置いておくとして。何か用事?」
頭に浮かんだ回想を無理矢理断ち切り、彼女にこの部屋へ来た目的を尋ねた。朋子は首を少し傾げながら答える。
「ええ。『実験』をしたいのだけれど、大丈夫?」
「実験、か……。」
彼女が言う『実験』や『研究』というのは、二人の間では特別な意味を持っている。
理論や仮説を確かめるため、人為的に一定の条件を設定して行う一般的なものと意味合いは同じだが、自分たち夫婦が行う『実験』は全て性交やそれに準ずる行為に関する『実験』や『研究』であり、それを開始する合図でもあるのだ。
「うん。大丈夫だよ、今から?」
インキュバスとなった自分が、愛する妻のお誘いを断るわけがない。今では妻より優先するべきものは無いとさえ思っているくらいだ。
「…準備や最終確認したい事があるから、三十分後、寝室に来てもらえる?」
そう言われて机に置かれた時計の文字盤に目を向けて時間を確認する。ちょうど長身がてっぺんを指している。
「分かった。三十分後だね。」
「ええ。それじゃあ…また後に。」
自分の提案を夫が受けてくれて嬉しいのか、笑顔を浮かべながら朋子は部屋の戸をあける。こちらに背中を向けた今の彼女からは全身から喜びのオーラが見えるようだった。満はそんな朋子に声をかける。
「ちなみに今回の実験は何をするんだい?」
「それはお楽しみ♪」
よっぽどその実験が楽しみなのか、言葉を弾ませながら朋子は答える。
「そう言われると、気になるなあ。ヒントだけでもちょうだい。」
「うーん、ヒントか…。今回の実験ではある命題を証明したいと思っている、の。」
「その…命題とは、なんぞや?」
「あなたへの…」
そう言って妻はくるりとこちらへ振り向き、真っ直ぐな視線を向けながら言葉を続けた。
「私の愛を証明する。ただそれだけ。」
じゃあ寝室でと言い残し、手を振りながら彼女は去って行った。
残された満はその意味深な言葉の意図が分からず、ただ茫然と閉められた戸を眺めるしかなかったのだった。
妻の謎めいた発言からちょうど三十分経っていた。
満はその間にシャワーを浴びて体を清め、いつでも行為を始められるよう準備をした。その間、彼女が最後に残した言葉の真意を考えてみたが、どうにも彼女の意図が読めなかった。一体彼女は何をして証明しようと言うのだろうか。
コンコン
「お〜い、そろそろ時間だけど入っていいかい?」
いつまで考えても埒は明かないしこれから嫌だ応でも知ることになるだろうと思い、寝室のドアを静かにノックして声をかける。
「…どうぞ。」
すると、若干声が上ずった返事が返ってきた。どうやら準備は終わっているようだ。
「失礼するよ…って暗いね!」
妻の許可が下りたので、満はドアを開けて寝室へと入る。
妻はこちらに背を向けてベッドの上に座っていた。そして妻のいる寝室はベッドのそばで点灯しているスタンド以外が消されていた。暗闇の中、ぼんやりとした間接照明によってレースがついた下着とガーターベルトを身に付けたアンデットの肢体が暗闇に浮かびあがっている。日ごろこのような実験をする際には『経過具合を確かめたいから明りはつけた状態で』という妻の要望で、煌々と明りをつけた状態で行うことが多いので、なんだか虚をつかれたような気分になってしまう。
「今日は…暗い中で行いたいの…。」
そんな満の気持ちを察したのか、朋子はそう告げる。背を向けたままこちらを見ていないのに、今自分が考えている事を言いあてられる辺り、いかに自分が彼女に思考を読まれているかを改めて理解する。
「了解。それで今日の実験の条件は室内の暗さ以外はなに?」
「今日の条件は…私の性器に愛撫をする際はクンニリングスのみ。他の部位への愛撫はいつも通りで大丈夫。そしてこれが一番大事…挿入後は絶対途中で止めず、最後まで私を犯しぬく事。その三つ。約束、よ。」
「それはつまり…女性器に対して…例えば指を使って愛撫しちゃだめってこと?」
「ええ。結構繊細な実験なの、今回は。」
「挿入してから最後までってことは…中断せざるを得ない何かが起こる可能性が高いの?」
「私にもだし、あなたにも…とだけ言っておくわ。」
「え!?問題が起こるのは朋子だけじゃないの?」
部屋の暗さに目を慣らしていく間、今回の実験の条件を確認していく。
いくら『実験』といっているからといって、これからする性行為の段取りをわざわざ二人で話し合っているのは赤の他人から見ればなんとも滑稽に映るかもしれない。しかし、これは頻繁に実験をするものとしては欠かせない大切なプロセスなのだ。きちんとした結果を出す為にはしっかりとした条件を定めなければならない。それが当り前なのだ。
しかし、今回朋子が自分に出した条件はなんとも奇妙なものばかり。それらの条件が一体、どう愛を証明するものになるのかさっぱり見当がつかない。
「時間ももったいないし、さあ…始めましょう、あなた?」
「分かったよ…」
「…っん…」
妻の言葉を受け、目も完全に暗さに慣れた満はそっとベッドの上に上がり、背後から朋子を抱きしめた。
折れそうなくらい細く華奢な体をいきなり抱きしめられ、妻の口から自然と吐息が漏れる。満の頭には幾つかの疑問が残ったままだが、妻が実験を開始するよう宣言したことで、すぐに頭を切り替える。
「…ちょっと、っん、強い…よ…」
「いつもと変わらないよ…」
「優しく、ね?」
「我がままだな、朋子は。」
「だ、誰が!?…っンチュ…じゅっ…ちゅう…」
ちゅ…あむぅ…じゅるぅ…あむっ…
反論しようとこちらを振り向いた妻の唇に、音をたてて吸いつく。
まずはぷっくりとした艶やかな唇にむしゃぶりつく。音をたてながら口に含んだ唇に歯をたてないようにしながらあまがみをして、ささくれ一つない綺麗な唇の皺をのばしていくように、丹念にしつこく味わって行く。
「…ず、るい…っん、はぁ…」
そうして唇を丹念に味わった後、口内を堪能するためにゅるりと舌を入れていく。彼女のやや低い体温が舌に伝わり、それだけでじんわりと満に快感をもたらした。
じゅ…れろ…ちゅ、…れろぉ…
一つ一つの歯の形を確かめていくように朋子の歯や歯肉を舐めていく。
つるつるとしたエナメル質の舌触りと対照的なプルプルとした歯肉の感触が気持ちいい。異なる二つの感触を全ての歯から味わいたくて、上顎から下顎にかけて一気に舌を走らせていく。綺麗に生えそろった前歯、可愛らしい犬歯、舌を目一杯伸ばしてやっと届く奥歯をいつもの順番に舐めていく。全ての歯を舐め終わった頃には二人の体温で彼女の口内がすっかり温まり、満は得も言われぬ喜びに満たされる。
「…ちゅ…ねえ、こっちを向いて?」
「ぅん…はあ…分かった、わ…。」
一旦、彼女の口から離れ彼女に体制を返るよう促す。
すると彼女は二人の間に出来た唾液の橋が切れるのを残念そうに見つめながら、ゆっくりとこちらに体を向けていった。既に彼女は欲情のスイッチが入ったらしく、瞳は熱に潤み動きは何処となく緩慢としている。
「…じゅ、じゅうちゅ…とも、こ…」
「…んちゅ、あな、た…あなた…ん、はあ…むちゅ…」
じゅちゅう…んっは…はぁ…じゅるぅ…ちゅぅ…
こちらを向き終えた朋子の唇を味わいながら、ゆっくりとベッドに押し倒していく。
押し倒され逃げ場を奪われ、夫に圧し掛かられた重さで思わず漏れる息までも味わうかのように、満は激しく舌を朋子の口内へ突き入れていく。それを待ち受けていた朋子の舌は嬉しそうに絡みつき、力強く自身の奥へと満の舌を招き入れていく。まるで蛇が絡み合っているかの様に執拗にお互いを絡ませながら濃密な唾液交換をおこなう。そうしてかき回されたどちらともわからない唾液が朋子の可憐な口から漏れ出し、幾筋も顎を伝って流れ落ちていく。
満はそんな扇情的な光景を見つつ、朋子が着ている下着を脱がせるためにそっとベッドと背中の間に手を差し入れる。すると朋子の背中には薄っすらと汗が滲んでいた。満はそれを馴染ませるようにして背中を撫でつつ、ゆっくりとブラジャーを取り外していった。
「…ぷ、ちゅ…綺麗だよ、朋子。」
「…じっと、見ないで……」
黒いブラジャーが取り除かれ、血管が透けて見えるほど青白い肌をした乳房が姿を現した。
それは大きくはないが決して小さくもなく、実に均整のとれた美乳である。間接照明で照らされていることもあって、暗闇に浮かぶ彼女の胸はいつも以上に美しく見えた。それは一面に降り積もった足跡一つない新雪のような美を満に感じさせる。
「…やっ…んん!!」
満はしばらく見つめた後、優しく乳房を揉んでいく。
まるで自分の手にフィットするような絶妙な大きさ、触れた瞬間から手に吸いつく絹の様な肌の感触がたまらない。二つの乳房を下から中心に持ちあげるように寄せつつ、指と手のひらを使いながらピンク色に染まる乳頭に向かってゆっくりと揉みしだいていく。すると満が触れたところから血色がよくなったように汗が滲み、彼女独特の甘い匂いの体臭を発散させていった。
「…ちゅぅ…ちゅ…」
彼女の匂いを鼻孔一杯に吸い込みつつ、既に力強く立ち上がっている乳首に吸いついていく。
柔らかい乳房とは対照的に固く凝り固まった乳首を乳輪ごと口に含み、舌を使ってねっとりと愛撫する。敏感になった先端部分をあまがみし、飴を転がすように舌で乳首を舐めていく。
「ひゃぁ…強く、しないでぇ…」
すると既に性欲に瞳を濡らしていた朋子はたまらず声をあげた。
「どうしようか、な…ず、ちゅぅぅぅ…」
「ぁああぁ…!!!」
だが満は妻の懇願を無視し、わざと大きな音を出しながら乳房に吸いついた。
朋子は悲鳴に近い嬌声をあげながら気をやる。満の体の下で腰を浮かし痙攣していることからも彼女が絶頂をむかえている事がよくわかった。しかし、それでもやめることなく満は胸への愛撫を続けていった。
「はぁ…はあ…ぜ。ひゅぅ…もう胸は良いから…他の、場所を…お願い♡」
それから三度軽い絶頂をむかえるまでじっくりと満は妻の胸を堪能した。ちゅぽんという音をたてて満の口から解放された乳首や乳輪はよりいっそう濃い桜色に染まっている。
「…どこをしてほしいか、言ってもらわないと困るなあ…」
妻が蕩け切った表情でギブアップしたのを満足げに眺めつつ、わざと意地悪な質問をする。妻が次に何を望んでいるかなど手に取るように分かる。だが、それを彼女に直接言わせたいのだ。
「もぉ…意地悪…私のおまんこを…可愛がって♡」
朋子はさらに頬を赤らめつつ、満の手を自身の下半身に誘いつつおねだりをする。何度見てもその扇情的な光景を見るのは堪らない。
「じゃあ、失礼するね。」
目の前のメスをめちゃくちゃに犯したいという欲望を抑えつつ、満はゆっくりと体勢を整えていく。そして朋子が着ているパンツに手をかけて焦らすように脱がせていく。
にちゃぁ…
するとむわっとしたメスの香りが匂い立ち、女性器から溢れた愛液がねっとりとパンツにこびりつきながら糸をひいた。それはやや白く濁り、彼女が本気で感じている疑いようの無い証拠であることを示していた。。
「あらら。そんなに胸の愛撫が…というより暗い部屋でするのがよかった?」
「ノ・ノーコメント♡」
「ふふ、ここも可愛がって上げるよ…」
愛液にまみれたパンツを取り外すと、しとどに濡れた女性器が姿を現した。
ちゅぅ…じゅりゅ…れろれろ…くにゅぅ…
「あ…!あー…♡」
朋子の細くしなやかな両足を両手で支え、無防備に晒された女陰に愛撫を施していく。
事前に彼女から言われた様に、クンニリングスだけで奉仕する。まずは何度交わっても形が崩れない美しい割れ目を舌で広げつつ、ぷっくりと充血した大陰唇を丁寧に舐めていく。舌で肉唇を押し広げるように舐め、汗と愛液に濡れた小陰唇と共に彼女の最も敏感な部分を攻めていく。
「(…いつもと、違う。)」
だが、幾度となく彼女と性行為をかさねてきた満は何とも言えない違和感を覚えていた。
「(…分泌される愛液が、少ない?)」
残念ながら暗いのでクリアに見えないが、いつもの彼女であればごぽごぽと音がするのではないかと言うぐらい吐き出される愛液があまり吐き出されていないことに気がついた。それは満に一抹の不安を感じさせた。
「もっと…もっと舐めて♡」
彼女の陶酔しきった顔を見る限り、感じていないわけではないようだ。とすると―――
「…ちゅっぱ…ねえ、朋子。」
「んぁ…どうか、した?」
陰部から口を離し、妻に質問する。
「体調が悪かったり、しない?」
「え…どうしてそんな、ことを聞くの?」
それまで蕩けきっていた表情が一瞬で消え、朋子は真顔で質問を返してきた。
「いや、いつもの君だったら溺れるんじゃないかってくらい愛液がでるのに…今日はあまり出ていないようだから、さ。もしかしたら体調でも悪いのかなって思って。もし悪いなら今日は……」
「くっふふふ…ははは!!」
こちらが真剣に身を案じているのに、朋子は大きな笑い声をあげた。
「わ、笑う事はないじゃないか!!」
「…ごめん。いや、心配してくれているあなたの顔があんまりにも可愛かったから。」
「…そんな事じゃごまかされないよ?」
そんなに自分がしょぼくれた顔をしていたのかと思いつつ、じとっと彼女をねめつける。
「ふふ、いや存外…私の事をよく観察してくれているんだなって思うと嬉しくて…」
だが、それは彼女に通じなかったらしく、マイペースな笑みを返されただけだった。
「心配には及ばない。おそらくそれも今回の実験で起きる副産物だろうから、大丈夫。それより…」
それでも依然疑いの目を向けていた満の頬にそっと手をそえ、淫靡に誘う。
「あなたがしっかり濡らしてくれたから、もう大丈夫だと思う…キテ♡」
何か言い返そうかとも思ったが、妻の甘い誘惑に逆らえるわけもなく、美しい裸体へと吸い込まれていく。
「じゃあ…入れるよ。」
満は下着を脱ぎ、勃起したペニスを妻の膣口へあてがう。
既に男根は痛いほどいきりたち、びくびくとカウパー液を吐き出している。膣口から吐き出される愛液と混ざりあい、卑猥な音をたてながら混ざり合うのを確かめつつ満は朋子へ視線を向ける。
「ええ…お願い…」
朋子は一つ明るい笑顔を浮かべたかと思うと腰をこちらに押し付け、より深く膣口と亀頭をキスさせる。その感覚がたまらず、満は腰に力を入れ彼女の肉壁を掻きわけてペニスを挿入させていく。すると蕩け切った彼女の膣内は肉ひだをふるわせつつ、膣奥まで嬉しそうに男根を招き入れた―――
はず、だった。
「あ…く……んん…ッ!!!」
「!?」
「はは、予想…以上だ♡」
確かに朋子の膣に満のペニスは挿入されていた。彼女の膣内に満の亀頭がしっかり咥えこまれている。
ところが彼女の膣はまるで別人のように狭く、そしてあるはずの無いものによって進入を遮られてしまった。それは数年前、彼女と出会ったあの山の中で一度だけ出会った事があるもの、それは―――
「これは…処女、膜!?」
「そ、う…私の膣に処女膜を再現した…そ、それだけ……それだけ。」
彼女は浅く速い呼吸をしながら、にやりと笑う。
「…さあ、あな…たに処女を捧げる、のは…ッ二度目だ、けど…しっかりと奪って、よ?」
朋子が出来るだけ明るくそう告げるが、満はとてもそれをしようとは思えなかった。
なぜならペニスを挿入した妻の顔が見たこともないほど痛みを我慢するために歪み、額一杯に脂汗をかいているからだ。とてもではないが続けようとは思えない。今すぐ中断すべきだ。
「無理だ!!朋子がこんなに痛がっているのに。今すぐ止めよう!!!!」
満は膣からペニスを引き抜き、彼女を安静にさせるために立ちあがろうとした。
しかし、それよりも早く朋子が手足をのばし、満が逃れられないように絡めていく。両手はがっしりと首から後頭部にかけて、両脚は満の腰に回し逃げられないように固定する。その力は今までに感じた事が無い様な強さで、満は素直に驚いた。
「な、何をしているんだ!!こんなこと止めなき…んちゅ!?」
「…じゅるぅ…ちゅ…」
直ぐに自分から離れるように言おうとした口ごと、キスによって塞がれた。
「約束…したでしょ?…はぁ…ふぅ…どんなことがあっても…私をッ最後まで犯しぬくって…はあ…」
朋子はそう言いながらグリグリと腰をこちらに押し付け、処女膜と亀頭をこすりつけていく。
「それに、こうも…言った。っ中断せざるを……得ない状況が起こる、かもしれない…私にも、あなたにも。それはきっと…私、が…痛がる姿を見、たら…ふぅ…優しいあなたは、中断するように言い出すだろうと…私は信じていた…から、そう言った…はぁ…のよ。」
処女膜に開いた穴に、まるでいつも子宮口とそうするように亀頭の先端をあてがいながら言葉を続ける。
「私、は…大丈夫……だから、私を…信じて、もう一度私の処女を奪って?」
お願い、あなた―――朋子はそう言って微笑み、満の頬にキスをした。
「―――………。」
その笑顔を見た瞬間、彼女を心配する気持ちよりも、彼女の期待や信用に答えたいと言う気持ちが満の中で大きくなっていた。
「本当に辛かったら…言うんだよ?」
優しく朋子の頭を撫でつつ、それでもそれだけはどうしても伝えたかった。
「ありがとう…愛してる。き、て♡」
彼女の言葉が終ると同時に、満は腰に力を入れ、彼女の中に埋まった男根を奥へ入れていった。
つぅ……ズププ…
その途端、彼女の処女膜が悲鳴を上げる
ググ…ぐぐぐ……ぐ…ズシっ
そして開いていた穴を押し広げるように亀頭が食い込んでいきついに、その時が訪れる
ズニュル……ぶちぃ…ぃ…ずんっ!!!
「あ……うぁっ…は…き、た…♡」
処女膜を貫いた勢いのまま、ペニスを一気に膣奥まで挿入した。
ペニスが処女膜を突き破った瞬間、処女膜の奥で溜まっていた大量の愛液と共に破瓜の血が溢れ出る。愛液の量が少なかったのはどうやら処女膜でせき止められていたようだ。粘度が濃い愛液の甘い匂いと、鉄錆の様な血の匂いが二人の間に充満する。
「大丈夫、朋子?」
膣奥まで挿しいれたペニスを下手に動かして刺激しないように注意しながら、痛みを必死に堪える朋子の頭を撫でる。
「あー…♡に、ど…めの…はかは…しげき、てき…♡」
朋子はどこか焦点の合わない瞳に涙を一杯にしながら、嬉しそうに呟く。
「ね…キス、して♡」
「ああ、お安い御用さ…ちゅ…じゅるぅ…」
「ん…れろ…好き…んちゅ…愛して…る…ふぅ…ねえ、して?……大丈夫、だから…いつも、みたいに…腰をふって…ザーメンを、ぶちまけて♡」
「ッ!!」
耳元で甘く囁かれた言葉を切っ掛けに、満の腰がピストン運動を開始する。
ぐちゅ…ぐり、ぐりぃ…ずちゅ…
ペニスを出し入れする度に結合部から泡立った愛液と血液が溢れだす。それがもたらす淫靡な撹拌音を聞きながら満は腰を振る速度を速めていく。
「く!!ツッ…ア…はっ♡」
最初は苦痛に歪んでいた朋子の表情にも、時間が立つと普段の様な淫蕩で享楽に耽った表情が見え隠れするようになってきた。
ぱん…ぱんっ…ずん、ずぱん…
「あぁ…いい、気持ち、いぃ♡!!」
満の腰が朋子の内股に強くぶつけられるようになったころには、先ほどの痛みを堪えていた表情は消え、こみ上がってくる欲望と快楽に身を任せた嬌声が口から吐き出される。それは満の荒い息と奇妙に合わさり、二人をより深い絶頂へ導いているかのようだった。そして必死に腰を振っていた満に限界が訪れようとしていた。睾丸から精子が競り上がり、我慢していても亀頭が切なげにぶるぶると震えた。
「きて!私の、中に!!全部…出して♡」
それを敏感に感じ取った朋子は懇願する。
「ああ、出す。出すよ。出るっ!!」
びゅぐ…ぶぴゅ…ドクッ…ドクン…
「きてる…なか、わたし、の♡なかにいっぱい♡わたしも、いく♡いっちゃうぅぅぅ♡」
大量の白濁液がぶちまけられた瞬間、朋子は声を上げながら絶頂をむかえた。
「…っだい、じょうぶ…ともこ?」
数十秒は続いたであろう射精の反動で緩慢としつつ、満は優しい声色で話しかける。
「はぁ…はあ…たい、じょうぶ♡最後までしてくれて…んっぅ…ありが、とう♡」
「無事に…私、の愛を……証明、できた…わ♡」
そういってこの日一番の笑顔を浮かべ、朋子は甘えるように満に抱きついた。
抱きついたことでお互いの鼓動がひどく大きく聞こえ、それが何より心地よかった。
13/10/31 22:22更新 / 松崎 ノス
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