愛の結晶
愛するオスを組みふせ、白く長い下半身で身動きを封じ、膣に差し込まれた男根を貪る。
胴体で完全に自由を奪われ、汗がにじむ顔を両手で抑えつけ、その表情を見つめる。
ああ、愛しい旦那様。
射精したいのですね。
鼻をひくひくさせて。
引き攣ったように右の頬を僅かにつりあげる。
それは旦那様が射精する前に無意識にする行動。
そう、私しか知らない貴方のオスの顔。
だから私は愛液をだらしなく吐き出す恥肉をさらにきつく締めつけます。
するとあなたの亀頭は一段と広がり、オスの本能なのか必死に私の子宮口を広げ少しでも多くの精液が子袋に入るようになさいますね。
でも意地悪な私はそれを確認してからわざと子宮口を奥へと引っ込めてしまいます。
すると旦那様は驚きと焦りに満ちた目で私を見るのです。
ああ、愛しい旦那様。
私の中にそんなに子種をはきだしたいのですか?
そんなに私に貴方様の種を植え付けたいのですか?
でも…
既に私はあなたに孕まされました。
あなたの種で孕んだのです。
ついに私の大事な卵子は。
あなたの精子に犯されてしまったのです。
本当はすぐにでもお伝えしたかったけれど。
その事実に疼くこの体を抑える事が出来ないのです。
あなたと子を成す事ができるのはワタクシだけ。
その事実を改めて知ることができて。
堪らなく嬉しいのです。
堪らなく体が疼くのです。
他のメスには決して出来ない。
私とあなたの子供。
ああ…なんて甘美な響き。
さあ、旦那様。
あなただけのメスに。
あなたの種で孕んだメスに。
甘いご褒美をくださいませ。
限界まで膨張した夫のペニスに私の子宮口が吸いついた瞬間。
白い濁流が、私の中にとめどなく放たれた。
「妊娠しました。」
そう告げられたのは、いつものように妻の下半身にぐるぐる巻きにされ、精魂尽き果てるまで妻に精液を絞りつくされた後だった。
「それは、本当かい?」
「はい…。間違いなく、懐妊いたしました。」
最初は突然の事で放心してしまったが、頬を真っ赤に染め嬉しそうにはにかみながらお腹をさする妻を見た瞬間、私の中で喜びが爆発した。
私たちが夫婦となったのは数年前の事。
妻は地元のみならず、遠方からも参拝者が訪れるほど信仰されている龍に仕えていた。
気まぐれでその龍の住む神社に参拝した私は、社で働く彼女の美しさに目を奪われてしまった。
一目惚れなどあり得ない。そう思っていた。その時までは。
しかし、彼女の白く流れるような美しい髪、新雪のような何物にも汚されていない美しい肌、そして強烈に彼女が人外であることを強調させる長く太い蛇の下半身、それらを見た瞬間に私の心は彼女の事以外を考えることはできなくなっていた。
これは後から聞いた話なのだが、それは彼女も一緒だったそうだ。
顔立ちや人格など関係なく、見た瞬間に『このオスに私の全てを捧げたい』と思ったのだと言われた時はどんなに嬉しかったことか。
そこからは早かった。出会って数分もしないうちに私は童貞を彼女に、彼女は私に処女を捧げ時間を忘れてお互いを貪った。
彼女の肢体は何度味わっても飽きることは決してないし、献身的に仕えてくれる彼女になんの不満も無い。
私は何のためらいもなくそれまでの生活を手放し、彼女と共に龍に仕え生きていく覚悟を決めたのだった。
そんな私たち夫婦には長年子供が出来なかった。
私自身最愛の妻と子供を作る事は夢であったし、妻もそれを望んでいた。
しかし、だからといって不思議とお互いに焦ることは無かった。
元々魔物娘の妊娠率は低いし、毎晩たっぷりと子種を妻に吐き出せばいつかはできるさ、と気楽に構えていたのだった。
「やっとだね…。」
「はい。本当に、本当に嬉しゅうございます。」
嬉しさのあまり涙を浮かべ俯く彼女を優しく抱きしめ、そっと頭をなでてやる。思えばこうやってただ抱き合うのは初めてかもしれない。
今はただ、こうして静かに妻と幸せを共有できるのが何よりも嬉しかった。
妻の腹が刻々と大きく膨れていく。
順調に子供が育つのはこんなに嬉しい事なのかと私は実感した。
幸いにも妻は悪阻も酷くなく元気で、むしろ今まで以上に私から精液を搾り取っていた。
母子ともに順調。
魔物娘独特の頑丈な子宮に守られ、すくすくと育っていく愛しい存在。
それを思えば仕事にも、普段妻に任せっぱなしだった家事にも身が入った。
夜になり、彼女のお腹に耳をあて、優しくさするのが何よりも楽しみだった
それは誰が見ても間違いなく、幸せな夫婦の光景であった。
しかしそんな妻が自室から出てこなくなってしまってもう一カ月近くになる。
彼女の魔力でその部屋の襖は開かなくなり、朝、昼、夕と三食を黙って襖の前に置く生活が続いた。
最初の数日は体調を崩したのだろうと思っていた。男はその身に子供を宿すという感覚を永遠に理解することはできない。
いくら待ちに待った子供だからといって不安がないわけではないのだろうと私は考えていた。
だからこそ無闇に彼女を刺激してはいけないと思い、私は彼女の分の仕事を淡々とこなした。
しかし、それが一カ月も続けば話は別である。
その日、夕食を持って行った時に私は襖越しに今までにない強い口調で話しかけてみた。
「如何して部屋から出てこないんだい?」
「………。」
妻の返事は沈黙だった。
「何かあるのなら私にも言ってくれよ。私たちは夫婦だろ?」
「……。」
無言を貫く彼女に向かって私は苛立ちを覚えながら叫んだ。
「もう一カ月も出てきていないじゃないか!!心配なんだよ。」
「お腹の子供も、君も。」
すると、今まで全く動かなかった襖が音もたてずにすっと開いた。
そこには妻が、一カ月前よりもさらに腹が膨らみ、臨月の一歩手前かというところまで大きくなったお腹を抱えた妻が立っていた。
だが、その妻を見た私は思わず生唾を飲んでしまう。
生気にあふれていた赤い眼はくすみ、あれほど美しかった白髪はよれよれと傷み、美しい玉肌には無数の蚯蚓腫れが出来ているのだ。
「今、何とおっしゃいましたか?」
一カ月ぶりに聞いた彼女の声は憔悴したものだった。
「…え?」
妻の変化に心底驚いてしまったため、質問に上手く答える事が出来ない。
「今、私に何とおっしゃったのですかとお聞きしたのです。」
だが、その態度が気に食わなかったのか、妻は音もたてず私に近付き、蛇の下半身で私を締め上げる。
その締めつけの強さは、間違いなく愛情表現ではなく死を予感させるようなもの。私はそれに恐怖しながら何とか答える。
「長い間、部屋に籠りっぱなしだから心配だって。」
「その後です…。」
「その後?」
「……。」
彼女は無言で圧を強める。
「ぐぅ…お腹の子供も、君も。」
するとその言葉を聞いた彼女は間違いであってほしいといったように頭をブンブン横に振って蹲ってしまった。そしてそのままブツブツと念仏を唱えるかのように小言で何かを呟き始める。
「げほっ!どうしたんだい!?」
下半身のきつい拘束から解放された私は蹲る彼女によろよろと近付きながら声をかける。
「やっ…そう…るしか…も…段は選…れな…。絶…対…対に…にこの人…渡…い、・…さない、渡さな…、…すものか。」
しかし妻は私の声が全く聞こえていないのか、ブツブツと何かを呟くばかり。
「本当にどうしたの…?」
彼女の震える肩に手を置こうとした瞬間、ボウッと音をたてて炎が立ちあがった。その炎は美しい青い色をしており、彼女を取り囲むようにふらふらと漂っている
「これはいったい!?なんなん・・・」
そして笑いながら振り向いた彼女の顔を見た瞬間、私は言葉を失った。
彼女は嗤っていた。
だが、その眼は今までに見た事がないような光が、恐怖を感じさえするような狂気が宿っていた。
「ふふふ…捕ま〜えた。」
その異様な光景に思わず後ずさろうとすると、彼女の下半身が再び絡みつき、あっけなく床にたたきつけられる。そしてあっという間に私の体を下半身で封じ、一カ月前より確実に重くなった体で抑えつける。
「痛ッ…一体何を!?」
「旦那様が悪いのですよ。私にここまでさせる・・・旦那様が悪いのです。」
そして彼女は徐に側を漂う炎を手繰り寄せる。遠目で見た時には感じなかったが、近くで見るととても嫌な感じがするその炎に恐怖を覚える。
「旦那様はおっしゃいました。『お腹の子供も、君も』と。何故です。何故なんです。何故なんですか?」
「…それがどうした?心配するのは当然だろう?」
「旦那様は変わってしまわれました…この子が私に宿ってから。今まで以上に優しくて、心配してくれて、家事を手伝ってくれて…」
「…。」
「最初はそれがとっても、とっても嬉しかった。ああこれが本当の夫婦なんだ、これで私と旦那様は本当の夫婦となったのだと。でも、でも私は気付いてしまった。そう、気がついてしまったのです。」
「旦那様が優しくなってくれたのは私が原因ではなく…お腹にいるこの子が原因だって。」
体を心配してくれるのもお腹の子供を気遣って。
家事を手伝ってくれるのも負担がお腹の子供に及ばないようにするため。
今までその全てが私に注がれていたあなたの愛が、最初に向けられていた旦那様の愛が。
今では私の中にいるこの子に注がれている。
勿論、旦那様に種付けしていただいたこの子は私にとっても大事な我が子です。
この子を産んで、あなたと共に育んでいきたい。
でも、私は。
私は母である前に『あなたの女』であることを捨てられないと気がついてしまったのです。
そんな私に旦那様は言いました。
『心配だと。』
『お腹の子供も、君も。』
あなたはやはり私よりも先にこの子の事を心配されたのです。
その瞬間に私の中でこの青い炎が燃えたぎったのです。
これは私の中でどす黒く燃える嫉妬の炎。
それまで必死に見ないようにしていた事実。
そう、私は実子に。
まだ産まれてすらいない実子に。
醜く嫉妬してしまったのです。
酷い、母親です。
でも
私は
あなたを
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
そして私は旦那様に――――
一番に愛されたいのです。
さあ、旦那様。
私の愛を、ちゃんと受けとってくださいね?
大丈夫、痛くも熱くもありません。
ただ、私なしには生きられない。
私の事しか考えられない。
それだけです。
たった…それだけです。
愛していますよ、旦那様。
胴体で完全に自由を奪われ、汗がにじむ顔を両手で抑えつけ、その表情を見つめる。
ああ、愛しい旦那様。
射精したいのですね。
鼻をひくひくさせて。
引き攣ったように右の頬を僅かにつりあげる。
それは旦那様が射精する前に無意識にする行動。
そう、私しか知らない貴方のオスの顔。
だから私は愛液をだらしなく吐き出す恥肉をさらにきつく締めつけます。
するとあなたの亀頭は一段と広がり、オスの本能なのか必死に私の子宮口を広げ少しでも多くの精液が子袋に入るようになさいますね。
でも意地悪な私はそれを確認してからわざと子宮口を奥へと引っ込めてしまいます。
すると旦那様は驚きと焦りに満ちた目で私を見るのです。
ああ、愛しい旦那様。
私の中にそんなに子種をはきだしたいのですか?
そんなに私に貴方様の種を植え付けたいのですか?
でも…
既に私はあなたに孕まされました。
あなたの種で孕んだのです。
ついに私の大事な卵子は。
あなたの精子に犯されてしまったのです。
本当はすぐにでもお伝えしたかったけれど。
その事実に疼くこの体を抑える事が出来ないのです。
あなたと子を成す事ができるのはワタクシだけ。
その事実を改めて知ることができて。
堪らなく嬉しいのです。
堪らなく体が疼くのです。
他のメスには決して出来ない。
私とあなたの子供。
ああ…なんて甘美な響き。
さあ、旦那様。
あなただけのメスに。
あなたの種で孕んだメスに。
甘いご褒美をくださいませ。
限界まで膨張した夫のペニスに私の子宮口が吸いついた瞬間。
白い濁流が、私の中にとめどなく放たれた。
「妊娠しました。」
そう告げられたのは、いつものように妻の下半身にぐるぐる巻きにされ、精魂尽き果てるまで妻に精液を絞りつくされた後だった。
「それは、本当かい?」
「はい…。間違いなく、懐妊いたしました。」
最初は突然の事で放心してしまったが、頬を真っ赤に染め嬉しそうにはにかみながらお腹をさする妻を見た瞬間、私の中で喜びが爆発した。
私たちが夫婦となったのは数年前の事。
妻は地元のみならず、遠方からも参拝者が訪れるほど信仰されている龍に仕えていた。
気まぐれでその龍の住む神社に参拝した私は、社で働く彼女の美しさに目を奪われてしまった。
一目惚れなどあり得ない。そう思っていた。その時までは。
しかし、彼女の白く流れるような美しい髪、新雪のような何物にも汚されていない美しい肌、そして強烈に彼女が人外であることを強調させる長く太い蛇の下半身、それらを見た瞬間に私の心は彼女の事以外を考えることはできなくなっていた。
これは後から聞いた話なのだが、それは彼女も一緒だったそうだ。
顔立ちや人格など関係なく、見た瞬間に『このオスに私の全てを捧げたい』と思ったのだと言われた時はどんなに嬉しかったことか。
そこからは早かった。出会って数分もしないうちに私は童貞を彼女に、彼女は私に処女を捧げ時間を忘れてお互いを貪った。
彼女の肢体は何度味わっても飽きることは決してないし、献身的に仕えてくれる彼女になんの不満も無い。
私は何のためらいもなくそれまでの生活を手放し、彼女と共に龍に仕え生きていく覚悟を決めたのだった。
そんな私たち夫婦には長年子供が出来なかった。
私自身最愛の妻と子供を作る事は夢であったし、妻もそれを望んでいた。
しかし、だからといって不思議とお互いに焦ることは無かった。
元々魔物娘の妊娠率は低いし、毎晩たっぷりと子種を妻に吐き出せばいつかはできるさ、と気楽に構えていたのだった。
「やっとだね…。」
「はい。本当に、本当に嬉しゅうございます。」
嬉しさのあまり涙を浮かべ俯く彼女を優しく抱きしめ、そっと頭をなでてやる。思えばこうやってただ抱き合うのは初めてかもしれない。
今はただ、こうして静かに妻と幸せを共有できるのが何よりも嬉しかった。
妻の腹が刻々と大きく膨れていく。
順調に子供が育つのはこんなに嬉しい事なのかと私は実感した。
幸いにも妻は悪阻も酷くなく元気で、むしろ今まで以上に私から精液を搾り取っていた。
母子ともに順調。
魔物娘独特の頑丈な子宮に守られ、すくすくと育っていく愛しい存在。
それを思えば仕事にも、普段妻に任せっぱなしだった家事にも身が入った。
夜になり、彼女のお腹に耳をあて、優しくさするのが何よりも楽しみだった
それは誰が見ても間違いなく、幸せな夫婦の光景であった。
しかしそんな妻が自室から出てこなくなってしまってもう一カ月近くになる。
彼女の魔力でその部屋の襖は開かなくなり、朝、昼、夕と三食を黙って襖の前に置く生活が続いた。
最初の数日は体調を崩したのだろうと思っていた。男はその身に子供を宿すという感覚を永遠に理解することはできない。
いくら待ちに待った子供だからといって不安がないわけではないのだろうと私は考えていた。
だからこそ無闇に彼女を刺激してはいけないと思い、私は彼女の分の仕事を淡々とこなした。
しかし、それが一カ月も続けば話は別である。
その日、夕食を持って行った時に私は襖越しに今までにない強い口調で話しかけてみた。
「如何して部屋から出てこないんだい?」
「………。」
妻の返事は沈黙だった。
「何かあるのなら私にも言ってくれよ。私たちは夫婦だろ?」
「……。」
無言を貫く彼女に向かって私は苛立ちを覚えながら叫んだ。
「もう一カ月も出てきていないじゃないか!!心配なんだよ。」
「お腹の子供も、君も。」
すると、今まで全く動かなかった襖が音もたてずにすっと開いた。
そこには妻が、一カ月前よりもさらに腹が膨らみ、臨月の一歩手前かというところまで大きくなったお腹を抱えた妻が立っていた。
だが、その妻を見た私は思わず生唾を飲んでしまう。
生気にあふれていた赤い眼はくすみ、あれほど美しかった白髪はよれよれと傷み、美しい玉肌には無数の蚯蚓腫れが出来ているのだ。
「今、何とおっしゃいましたか?」
一カ月ぶりに聞いた彼女の声は憔悴したものだった。
「…え?」
妻の変化に心底驚いてしまったため、質問に上手く答える事が出来ない。
「今、私に何とおっしゃったのですかとお聞きしたのです。」
だが、その態度が気に食わなかったのか、妻は音もたてず私に近付き、蛇の下半身で私を締め上げる。
その締めつけの強さは、間違いなく愛情表現ではなく死を予感させるようなもの。私はそれに恐怖しながら何とか答える。
「長い間、部屋に籠りっぱなしだから心配だって。」
「その後です…。」
「その後?」
「……。」
彼女は無言で圧を強める。
「ぐぅ…お腹の子供も、君も。」
するとその言葉を聞いた彼女は間違いであってほしいといったように頭をブンブン横に振って蹲ってしまった。そしてそのままブツブツと念仏を唱えるかのように小言で何かを呟き始める。
「げほっ!どうしたんだい!?」
下半身のきつい拘束から解放された私は蹲る彼女によろよろと近付きながら声をかける。
「やっ…そう…るしか…も…段は選…れな…。絶…対…対に…にこの人…渡…い、・…さない、渡さな…、…すものか。」
しかし妻は私の声が全く聞こえていないのか、ブツブツと何かを呟くばかり。
「本当にどうしたの…?」
彼女の震える肩に手を置こうとした瞬間、ボウッと音をたてて炎が立ちあがった。その炎は美しい青い色をしており、彼女を取り囲むようにふらふらと漂っている
「これはいったい!?なんなん・・・」
そして笑いながら振り向いた彼女の顔を見た瞬間、私は言葉を失った。
彼女は嗤っていた。
だが、その眼は今までに見た事がないような光が、恐怖を感じさえするような狂気が宿っていた。
「ふふふ…捕ま〜えた。」
その異様な光景に思わず後ずさろうとすると、彼女の下半身が再び絡みつき、あっけなく床にたたきつけられる。そしてあっという間に私の体を下半身で封じ、一カ月前より確実に重くなった体で抑えつける。
「痛ッ…一体何を!?」
「旦那様が悪いのですよ。私にここまでさせる・・・旦那様が悪いのです。」
そして彼女は徐に側を漂う炎を手繰り寄せる。遠目で見た時には感じなかったが、近くで見るととても嫌な感じがするその炎に恐怖を覚える。
「旦那様はおっしゃいました。『お腹の子供も、君も』と。何故です。何故なんです。何故なんですか?」
「…それがどうした?心配するのは当然だろう?」
「旦那様は変わってしまわれました…この子が私に宿ってから。今まで以上に優しくて、心配してくれて、家事を手伝ってくれて…」
「…。」
「最初はそれがとっても、とっても嬉しかった。ああこれが本当の夫婦なんだ、これで私と旦那様は本当の夫婦となったのだと。でも、でも私は気付いてしまった。そう、気がついてしまったのです。」
「旦那様が優しくなってくれたのは私が原因ではなく…お腹にいるこの子が原因だって。」
体を心配してくれるのもお腹の子供を気遣って。
家事を手伝ってくれるのも負担がお腹の子供に及ばないようにするため。
今までその全てが私に注がれていたあなたの愛が、最初に向けられていた旦那様の愛が。
今では私の中にいるこの子に注がれている。
勿論、旦那様に種付けしていただいたこの子は私にとっても大事な我が子です。
この子を産んで、あなたと共に育んでいきたい。
でも、私は。
私は母である前に『あなたの女』であることを捨てられないと気がついてしまったのです。
そんな私に旦那様は言いました。
『心配だと。』
『お腹の子供も、君も。』
あなたはやはり私よりも先にこの子の事を心配されたのです。
その瞬間に私の中でこの青い炎が燃えたぎったのです。
これは私の中でどす黒く燃える嫉妬の炎。
それまで必死に見ないようにしていた事実。
そう、私は実子に。
まだ産まれてすらいない実子に。
醜く嫉妬してしまったのです。
酷い、母親です。
でも
私は
あなたを
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。愛しているんです。
そして私は旦那様に――――
一番に愛されたいのです。
さあ、旦那様。
私の愛を、ちゃんと受けとってくださいね?
大丈夫、痛くも熱くもありません。
ただ、私なしには生きられない。
私の事しか考えられない。
それだけです。
たった…それだけです。
愛していますよ、旦那様。
13/05/03 09:34更新 / 松崎 ノス