連載小説
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蒼と藍の宝玉
「アル・・・・・・」
「兄貴?」
「ん、ルールーって、呼んで」

石の床に敷いた毛足の長い絨毯の上で、私たちは抱き合っていた。

抱きしめてくれたアルの体を引き寄せて私に覆いかぶさるような体勢にすると、彼は少し戸惑った声を出した。

「ルールー?何で?」

眉根を寄せた彼の困った顔が私は昔から大好きで、その顔を見たくて意地悪をしては母上に叱られていたのを思い出す。

「何で?って、アルが欲しいから・・・」

今の私の顔は蕩けきって酷い有様になっているに違いない。
何故なら、私を見つめるアルの顔が痛ましそうに歪められているのだから。

「ルールー・・・お腹が空いているだけなら、俺は君に精をあげる事は出来ないよ?」

ううん、そうじゃないの・・・そんな事で誘っている訳じゃないの・・・
きっと突然の事で戸惑い、誤解しているであろう彼の頭を、小さくなってしまった私の腕がかき抱く。

「大好きな人に、処女をあげなさいって・・・お姉様に言われたの」
「兄・・・ルールー・・・」

私の告白に耳を赤くしたアルは抱かれた頭を上げて私と目線を合わせてくれる。

「それ、本気で言ってんの?」

真摯な彼の眼の中にもしっかりとした欲望が芽生えるのが手に取るように分かって、私は先ほどとは全く違った高揚感のようなものを感じた。

「本気かどうかなんて、アルが一番分かってくれるでしょ?」

私がそう言うやいなや、アルの厚めの唇が乱暴に、しかし私を包み込むように私の唇を奪った。

はぁ〜んっ・・・気持ちイイ♪

好きな雄に抱きしめられて唇をくっつけ合うだけのキスでこんなに気持ちが良くなるなんて・・・くちゅり、と彼の唾液が響きながら私の口内に舌が侵入し始めるとそこから電流が迸っているかのように、体が甘い快楽で浸食されてゆく。

「くちゅ、ふぁあん、ちゅっ・・・ちゅぱぁ・・・」
「ん、こくっ・・・ルールーの唇甘くて・・・美味しくって・・・愛しい」

ああ、そうだ・・・ちゃんとアルに言って無かった・・・

「わたしも・・・アルが、愛おしいよぉっ・・・あん」

告白しあって、また気持ちよくなる私たちは、服を脱がせ合うのももどかしくなりながらも、何とかお互いが生まれたままの姿になってゆく。

「ルールー、綺麗だ・・・昔からも、さっき会った時も思ったけど、裸はもっと、もっと綺麗だ」
譫言のように囁く彼の瞳に映る自分に羞恥を覚えながらも、そう言ってくれるのならこの体になって良かったと嬉しさが勝る。
そして、久しぶりに見た彼の素肌には様々な傷痕が残っているのを確認して、胸が痛くなった。
幼い頃からずっと一緒だったアル。
彼を守ろうとして必死だったけれど、ずっと今まで守られてきた愛しい人。
権力争いからばかりではない、国土を求める国たちとの小さなせめぎ合いの中でいつも聞く噂。
『キリリク連峰を攻めようとすると何処からともなく金色の熊が表れて遮られる』
世間を渡り歩いてはドゥトーチに害成す者の情報を得てそれを阻害してゆく。
誰が命じた訳でもないのに、城を出てからの間彼の消息を追う度に耳に入るそれらの事。
いつも遠く離れてはいたが、いつも守ってくれていた彼が居たからこそ、私は安心して政に専念できていたのだ。


「ルールー、悲しい顔しないで、これは君を守れる強さを得た代償なんだ。いっそ誇らしい位なんだよ」

想いが伝わってしまったアル自身に慰められて、でも・・・と言い募る私の手を取った彼は「じゃあ、ルールーが癒して」と彼の傷痕へ私の手を導いた。

引き攣れや打撲痕、火傷痕に指で辿っていた私は堪らなくなってそれらに舌を這わせた。
この一つ一つが私の知らない彼の歴史・・・そう思うと愛おしくて堪らない。
アルは少し驚いたようだったが、片眉を上げるに止めて私の好きなようにさせてくれて、彼も私の肌を隈なく探検する事に決めたようだ。

「んあぁ・・・ひゃう、あん」

彼の探検は元には無かった尻尾や羽、角を興味深く探り舐めまわし、皮膚の隅々まで彼の指と舌が触れない場所は無い位にしつこく行われた。

「ゃぁ・・・もう、らめぇ・・・」

舐られ皮下の快感と言う快感を呼び起こされた私の体は、エルミダーシェと致した時の数倍下腹部を疼めかせて雄の欲望を求める。
胸やその飾り、お臍やお尻の穴にまで侵略を繰り返した指や舌も、初めてだと言うアソコは最後のお楽しみとばかりに残されていて、触れて貰えないソコはもうずいぶん前からそのじらしに堪えかねて熱い蜜を放っては腰をくねらせ懇願している。

「あふぅ・・・もう、もう、ちょうらいっ、アルのおちんぽほしいのぉ!!」

「もうちょっと、・・・待って」

決してアルも余裕がある訳ではない。
彼の剛直もいざ兄貴の雌マンコを犯さんとばかりに天に向き力強くそそり立って先走りの液を滴らせているのだから。
先ほどからせめてお口で頂戴とオネダリしているにも関わらず、何を思ったかそれを無視する非道な恋人に、私の我慢ももう限界であった。

「ぁう、酷い、ひどぃよあるぅぅ・・・狂っちゃう、ゎたしっ、おちんぽほしくてくるっちゃうのぉぉ!!!」

「じゃあ、ルールー、この体になって何人の精を搾ったの?本当に、尻尾だけでシたの?」
こんな淫乱な体しといて初めてですなんて、ちょっと信じられないな・・・等とアルは言い出して、私の膝裏を掴むとお尻を持ち上げ顔の方に所謂まんぐり返しの格好で私の淫乱な処女マンコを見せつけると、そこは少陰はピッチリ閉じてはいるが外側のビラビラが誘うように口を開け蜜を滴らせると言うはしたないものだった。

「ゃああぁん、違うの、違うのぉ!アルが欲しくてこんなにイヤラシイ体になっちゃったのぉ!!」
本当に尻尾だけでご飯たべてたんだもん・・・リュミーエルとぉ、街の若い子達からちょっとだけ、ホントにちょっとだけ貰った位だもん!!!

大好きな人に処女を捧げると言うのに疑われて悲しくなった私は、思わずそう泣き叫ぶと、アルが見ているおマンコを自らの指で少陰をくぱぁと開いて処女膜を見せつけた。
ぴっちり止められていた開かれた事により愛液がぷしゅっと弾けて、指や顔を汚すのにも構わず、今は少し憎らしいアルの眼前に突き付けた其処は自分の目から見ても卑猥なベビーピンクで雄を誘っていた。

「ごくっ・・・」

途端、アルの喉が鳴り舌なめずりをしたかと思うと、我慢が出来なくなったのか、私のお尻を抱えて顔を近づけ、私の内部に舌を差し入れてディープキスを始めた。

「!!?  ぁきゃぁっ、ひゃあぁぁ!!!」

いきなりの事に小さく達しながらも、無理な体制で弾けた事によりまた愛液で顔を汚すことになった私は強い快感に目をつぶってしまった。
しかし、視覚を閉じた事により、アルが私の雌をしゃぶるジュルジュルと言う卑猥な音が聴覚に突き刺さると、私の胸はまた熱く甘く鼓動を増す。
分厚い舌が突き入れられ目一杯犯そうと健気に働く様は愛おしくて、鼻がクリトリスを押してはビリビリと切ない刺激が子宮を揺らす。

「ふぁぁ・・・ん、ひゃあ、ああん、おちんぽ、アルのおちんぽほひぃ、ひょぉぉぉ」

彼の舌を締め付けるように達してしまうと、アルは私のお尻を開放して正常位の形で先端を私にピタリとくっつけると「良い?」と今更ながらに確認してくる。

「処女なのに淫乱な私で良かったら・・・貰って」
と、先ほどの事を仄めかすと「ごめん、調子にのりました」と謝ってくる。

熱の冷めないうちに折角だから貰って欲しくて、両足をアルの腰に絡めると、意を決したアルの腰が進みだした。

くちぃ・・・・ぷちゅ、ぷつっ・・・・・・・・

「はぁぁぁぁぁんんん!!!」

今までの愛撫がまるで児戯のように強い快楽をもたらすソレは、途中で一度遮られるものの、力強く侵入をしていくと引き攣れる痛みと共に何かが喪失した感覚がした。

「ルールー、大丈夫?」
辛いのはこっちの方なのに、何お前のが痛そうな顔してんだよと怒鳴ってやりたい気分だったが、ずるずると膣壁を抉って入り込む肉棒にそんな余裕はなく、激しい疼きと快楽に脳髄を占領されていく。

「だいじょうぶ・・・だからっ、動い、てぇ」

こんな中途半端な所で止められてしまっては困る、と疼いた体が続きを求める。
途中で止めてしまったアル自身も奥を思う様に突きたい気持ちでいっぱいなのであろう、額には汗が浮かんでいた。
「んっ・・・」
その汗を舐めとろうと体を動かすと、私の中の彼がピクリと動いて何とも言えない感覚になる。

「もっと、ちょうだい」

私の言葉に遠慮は要らない事を悟ったアルは、ズンと一突きして私の中に彼の全てを収めた。

「     ぁ  っ・・・・・あ―――」

亀頭が私の子宮口を押しつぶすかのようにグチャリと密着しては離れてゆく。
激しい注挿を繰り返す彼の腰がパンパンと卑猥な音で私を高めてゆく。

「あん、あん、あっ、あっああああああ!!!」

お互いに限界が近くなったのか、縋りつく手に力が入る。

「アル、ありゅぅうう、ぁああっ」
「ルールーっ、好きだ、ずっと、ずっとぉ、っくぅ―――    」

初めての場所に熱い奔流が流し込まれ、とぷとぷ子宮の中に注がれた命の元がお腹の中を温かくしてくれて泣きそうになる。
全てを出し切ったアルが出ていくのを淋しく思ったのが伝わって、横たわった私の体を強く抱きしめてくれる。
とろっと内股に零れるアルの精が勿体無いと思ってしまったけれど、また注いで貰えばいいからと、彼の唇を奪った。

変わってゆく体に恐ろしい気もするけど、それより何よりも、彼と睦あえる事が何よりも嬉しくて。



堕ちてゆく感覚は余りにも甘美だったから。






後の事は・・・もうどうにでもなれば良いと思った。






















ドゥトーチは珍しい立地に立つ国である。
険しくも資源豊富な山々に囲まれて、政治と経済に重要な拠点となっている。
方々の山はそれぞれ東西南北の国と繋がっており、それぞれの国が行きかう為にもこの国は要所になるのだ。
数年前まで王政を執っていたこの国が急に民主制となり選挙で国の代表が選ばれる事となったのは記憶に新しい。
しかもそれが、血を見る争いの元行われた革命では無く、ドゥトーチ最後の王にして偉大な賢獅子王と呼ばれた、ルードウィック・エル・ミル・ドゥトーチが死の間際、後に残した偉業であったのだ。
齢24歳で早世された彼の王は、国民の為にと血縁で執り行う政治では無く、民が選び民自身で納得のゆく国づくりをすれば良いと生前言って居たという。
勿論、旧臣達の中からは反対意見も多かったが、自らの立身出世のチャンスと捉えるものも多く、それ程の混乱は無かったと言う。

彼の王亡き後、現在国を治めているドゥトーチの代表は黒髪黒目の些か童顔な美丈夫であるが、まだ30代の若さで国を取りまとめ辣腕を振るっている。
彼が未だ独身で、誰が夫人・・・所謂ファーストレディになるのかが現在のドゥトーチの関心事だと言うから、国が平和だと言う証拠であろう。





















「ふ―ん・・・、最近の教科書ってこんな感じなんだ?」

近くに海が在るのだろうか、ウミネコが泣き波の音がする明るい部屋の中で、金髪の女性が白シャツにブルージーンズというラフな出で立ちで子供部屋の机の上をあさる。

「ママ・・・勉強の邪魔するんだったら出てってよね」
その女性にそっくりな、未だ未就学児童かとも思える幼子がハッキリとした口調で彼女の持っていた本をひったくり、学習机に広げる。

「邪魔なんかしてないよ〜♪一緒にお勉強しようかと思ったんだもん♪」
「わ〜っ何かムカつく!!」

親子のじゃれ合いにしては少々剣呑なソレに、子供部屋の扉が開くと。

「コラ、二人とも喧嘩しない」
と、こちらも立派な金髪の逞しい男性が顔を覗かせた。

「パパー!!ママが私の勉強の邪魔するの!あっち連れてってよ!!」
可愛い顔を膨らせて、腰に手を当てて抗議をする様子は余りにも可愛らしかったが、今ここでそれを言ってしまうと彼女の気分を著しく害すと分かっているので、パパと呼ばれた男性は口を噤んで苦笑する。

「だってさ、アル見てよこれ」
喧々な娘を物ともせずに、ママと呼ばれた女性は先ほど手にしていた教科書を広げ、あるページを男性に渡す。

「ルールー・・・これって」
「そう、いまじゃこんな感じで他国の教科書に紹介されちゃうのね」
「しかし、彼・・・まだ君の事諦めて無いんじゃないの?」
「・・・まさか・・・ね」

パパと呼ばれるアルと、ママと呼ばれるルールーの間で交わされる会話に、怒りを通り越して呆れた娘は、両親が何を懐かしがっているのかを見ようと低い背を思いっきり伸ばす・・・が、足りずに椅子を持ってくると足場にした。

二人が手にした本に載っていたのは、緑と険しい山に囲まれて聳え立つ旧王宮博物館と言われる、高い塔が目印の古いお城の写真と、その国の紹介が載っているページであった。














キラキラと光が溢れて、私の目に焼きつける。
それは瞼を閉じても決して離れる事の無い憧憬。
山を這う稜線の縁にある光の、木々の間に透ける木漏れ陽の、草原を撫ぜる風の、彼の瞳のような空の蒼も・・・


私の娘に受け継がれた、湖の深い藍もまた・・・

全てが私の宝物。



おわり
12/05/20 23:17更新 / すけさん
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■作者メッセージ
広げきった風呂敷を何とか畳む事ができました。
綺麗に畳めた訳では無いですが・・・。
いきなり連載を考えてしまったので至らない点ばかりでした、次は読み切りで頑張ります。
愛しい魔物娘を魔物娘たる表現で書けますように精進せねば。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。
ご感想&突っ込みなど頂けますと励みになります。

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