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第三十三記 -シー・ビショップ-
…ふかふか…。

「どう? シビ姉様♪」

「どう、と言われましても…」

「シビ姉様…、羨ましいです…♥」

…やわらかい…。

「…つまり、どういう事ですか?」

「シビ姉様にも、ソラの良さを知ってもらおうと思って♪」

「わかりました。やはり貴女達は叱りましょう」

「どうして?♪」

「私の方こそ、どうして?です」

「気持ち良いでしょう?♪」

「気持ち良さそうです♥」

「いえ、まあ、悪くはありませんが…」

…あったかい…。

「ほら、怒る気持ちも無くなってきたでしょう?♪」

「少しだけ消えかけましたが、その言葉で再燃しました」

「藪蛇?♪」

…いいにおい…。

「そもそも、これはなんですか?」

「ソラだよ♪」

「ソラです♥」

「そうではなくて…」

「どうしてソラを、シビ姉様に抱き付かせているか…ですか?」

「そうです」

「私達がソラといっぱい遊んだ理由を知ってもらおうと思って♪」

「さっぱり伝わってきません」

「ソラはとても可愛らしいんです、シビ姉様」

「確かに、人間の子供らしく、可愛いですね」

「でしょう?♪」

「ええ」

「叱らない?♪」

「叱ります」

「どうして?♪」

「メロ、延々と問答を繰り返すつもりですか?」

…すべすべ…。

「そもそも、メロ」

「何?♪」

「この子の身体はどういうことですか?」

「生まれつきだって♪」

「ですが、ソラの心は女性のそれなのです、シビ姉様」

「女性のそれなら、何故あんな行為を?」

「誘惑した♪」

「愛し合った結果です♥」

「貴女達に同性愛趣向があるとは知りませんでした」

「最初はお遊びだったんだけれどね♪」

「ソラがあまりにも愛おしくて…♥」

「伴侶にしたい、とは言いませんよね?」

「妹にしたい♪」

「妹にしたいです♥」

「また度し難い発想ですね」

…さらさら…。

「…そろそろこの子に離れて頂いて、貴女達を叱っても構いませんか?」

「シビ姉様、名前で呼んであげて♪」

「ソラ、でしたか」

「うん、ソラ♪」

「そろそろソラに離れて頂いて、貴女達を叱っても構いませんか?」

「次は、ソラの頭を撫でてあげて♪」

「何故」

「心地良い顔のソラを見ることができます♥」

「メイ。貴女だけは正気であってほしかった」

…ぎゅーっ…。

「…撫でましたが、もうこのまま叱っても構いませんよね?」

「あっ♪ ほら、ソラがとっても気持ち良さそう♪」

「まぁ…♥ ご覧になってください、シビ姉様♥」

「………」

…ふにゃ〜…。

「…可愛いですね」

「でしょう?♪」

「でしょう?♥」

「こんな可愛い子供と行為をしたいと思う貴女達が信じられません」

「最初は、行為を教えるだけのつもりでした」

「今は違うんですか?」

「可愛い妹を喜ばせてあげたいという思いです♥」

「それだけ聞けば素敵な言葉ですね」

「シビ姉様も、してみれば分かるよ♪」

「その気がまず起きません」

「少しソラとお話すれば、その気になるかも♪」

「その前に貴女達を叱ります」

「ソラ、シビ姉様がソラとお話したいって♪」

「あまり無視されるのは好めませんね」

…じーっ…。

「ほら、お話してあげて♪」

「………」

「…ソラに見つめられるシビ姉様…♥ 替わりたい…♥」

「………」

「…ソラ」

「妹達は、遊び心でなく…ちゃんと貴女を愛していましたか?」

…こくん…。

「では、ソラも妹達のことを、心から愛していましたか?」

…こくこく…。

「…そうですか…」

「………メイ、メロ」

「はい」

「はーいっ♪」

「戯れでないのなら…咎めません。叱るのはやめましょう」

「うんうん、遊びじゃないもの♪」

「シビ姉様に理解を頂けて、嬉しいです♥」

「ですが、できれば次は普通の男性でお願いします」

「結婚しなさいってこと?♪」

「それが魔物の幸せでしょう、早く私に儀式を行わせてください」

「シビ姉様、本当に私達が結婚するまで家を出ないつもりなの?♪」

「ええ。貴女達が心配で、他の仲間達のように旅には出られません」

「シビ姉様ご自身は、結婚なさらないのですか?」

「貴女達が結婚した後にします」

「行き遅れない?♪」

「余計なお世話です」

…すりすり…。

「………」

「シビ姉様ったら、また撫でてる♪」

「いけませんか?」

「もっとしてあげてください♥」

「まあ、ソラが喜んでくれる分には、私も嬉しいことに間違いはありません」

「分かってきた?♪」

「行為を指すのであれば、未だに分かりません」

…はふー…。

「…なんだか、本当に妹みたいですね」

「分かってきた?♪」

「分かりません」

「ソラ…♥ 可愛い…♥」

…きもちいい…。

「…貴女達が小さい頃、よくこうしてあやしていたものです」

「お父様とお母様がいらっしゃった頃ですね」

「メイは大人しく、メロはよく泣いていました」

「ふふっ…。そう、メロはとっても泣き虫で…」

「記憶にないよ?♪」

「お父様のヒゲ攻撃にいつも泣かされていましたね」

「『ジョリジョリ痛い〜!』と…」

「あ、少しだけ覚えてるかも♪」

「その度にお母様や私、メイが、こうしてメロを落ち着かせていたんですよ」

「抱いてあげると、すぐお乳を探していました」

「お乳っ子でしたからね、メロは」

「そうですね、お乳っ子でした」

「私の恥ずかしい話、ソラに聞かせないでっ♪」

…うっとり…。

「お母さんっ子のメロに対し、メイはお父さんっ子でしたね」

「そうだったのですか?」

「泳ぎを教わるのも、何故かお母様ではなくお父様に頼んでいました」

「お父様、泳ぎ下手じゃなかった?♪」

「教えて頂いた時は、とってもお上手でしたよ?」

「メイに教えるときだけ、お母様に頼んで色々していたようです」

「カッコつけていたんだ♪」

「メイの前で格好悪い父親の姿を見せたくなかったのでしょう」

「お父様ったら…」

…ぽけー…。

「そういえば、この前のお父様とお母様からのお手紙、シビ姉様とメロはもう読みましたか?」

「もちろん読みましたよ」

「お父様、すごかったね♪」

「海底の楽園プロジェクトが始動間近、という件ですね」

「会議中に、机の下で密かにお母様を6回イかせたっていう件♪」

「そちらの方ですか…」

「『水の中のせいで、自分のモンが目の前に漂ってきた時はびびったわい!』と…」

「娘に送る手紙の内容とは思えませんね」

「ソラ、今度私達もやってみる?♪」

「やはり叱りましょう」

「冗談、冗談♪」

「え? 冗談なのですか…?」

「…メイ…。貴女までメロのようにならないでください…」

…むにゃ…。

「…ソラ。眠いのなら、寝てしまっても構いませんよ」

「いっぱい遊んだ後だからね♪」

「起きたら、また…♥」

「それは無理です」

「え…?」

…すやすや…。

「無理って、どうして?♪ シビ姉様♪」

「ソラを地上へ返します」

「今すぐに?♪」

「ええ。どうやら、溺れたのはソラ一人だけのようですし…」

「そんな…。シビ姉様、今すぐでなくとも…」

「近くの浜辺で、成人の儀式の為に、伴侶を求め旅をしているアマゾネスと会いました」

「その魔物にソラを預けるの?♪」

「ええ。近くの町まで送っていくぐらいならば構わない、と」

「…その浜辺は…魔界側の方ですか…?」

「そうです」

「いけません、シビ姉様っ! 人間のソラにとって、魔界はあまりに…!」

「メイ。…ソラは貴女のものではありません」

「っ…!」

「貴女が、ソラを生涯のパートナーとするならば…その言葉を聞きましょう」

「ですが、貴女は『妹にしたい』だけ…」

「その愛がどれだけ強くとも…『夫にしたい』という思いには勝りません」

「『他の魔物に盗られたくない』という思い…」

「その他の魔物の中には、ソラを『夫にしたい』と思う方もいるかもしれません」

「それを、貴女の我侭で…叶わぬ夢に縛り付けたままというのは…」

「他の魔物にとっても…ソラにとっても…貴女にとっても、本当の幸せを逃すことになります」

「そんなことは…夫婦愛を祝福する私の身において、許しません」

「…もちろん、ソラの意思も聞かなければいけませんが…」

「………」

「…メイ姉様…♪」

「………」

「………」

「……………結婚…します…」

「えっ?♪」

「メイ…」

「結婚します! ソラと! だから…だからソラを連れていかないでください、シビ姉様ッ!!」

「………」

「私は本気です…! ソラのことを、愛しています! 心から愛しています!」

「…メイ」

「シビ姉様、だから、儀式を…!」

「おやめなさい…」

「貴女がソラをどれほど愛しているのか…それは痛いほど伝わります」

「…それほどまでにソラを、愛しい妹と思うのならば…」

「早く素敵な相手を見つけて、幸せになってほしいと願うのが…」

「姉というものでは…ありませんか?」

「………」

…くぅくぅ…。

「…メイ姉様…、シビ姉様…♪」

「…メロ、貴女もわかってくれますね?」

「………うん…♪」

「良い子…。…貴女のことを褒めたのは、久しぶりですね」

「シビ姉様が、あまり褒めてくれないだけ♪」

「…本当は、メイのように叫びたいのでしょう…?」

「…何のこと?♪」

「いえ…。…私も、もし貴女達と一緒であったならば…」

「きっと…同じ想いだったと思います…」

…ぅー…。

「……ソラ…♪」

「…またね♪ また、ここに遊びに来て♪」

「……メロお姉ちゃんが…いつでも待ってるから…♪」

「…安らかな寝顔ですね…」

「もう、ソラったら♪」

「………」

「………メイ」

「………」

「………」

「……ソラ…」

「いつか……いつか絶対に…」

「私の想いが…貴女への想いが、変わった時に…」

「妹としてだけでなく……愛すべき夫として……」

「貴女を…誘います…」

「月の夜……光が降り注ぐ岩礁の上で…」

「貴女を想う歌をうたい…私のもとへ、誘います…」

「………」

「………だから……お願い……」

「私を……貴女の記憶から…」

「泡のようには………消さないで……っ…」

「………」

「………」

「……行ってください…、シビ姉様…」

「…わかりました」

「………」

「…メイ」

「………」

「貴女は…私の自慢の、妹です」

「………」

「………」

「………」

「……………行っちゃった……♪」

「………」

……………

………



…ふにゅ…。

「………」

「…ソラ…」

「貴女が普通の男性ならば…どれだけ幸せだったでしょう…」

「メイも、メロも、私も、…きっと、貴女も…」

「………」

「…ソラ。貴女にもいずれ…貴女の全てを受けいれてくれる相手が…」

「貴女のことを、一生自分のパートナーとしたいと思う相手が…」

「そして、貴女自身がその方と同じ想いを抱く相手が…現れます」

「それが男性か、女性か…人間か、魔物かは、わかりませんが…」

「………」

「……もし」

「もし、それがメイなら…」

「…あの子を……もう…泣かせないであげてください……」

「………あの子の姉としての……お願いです…」

「………」

「…私も、待っています…」

「貴女がいつか、義妹になる日を…」

「………だから、その日まで…」

「さようなら…ソラ」

「貴女に、海神ポセイドンの御加護がありますように」

……………

………

12/04/02 00:04更新 / コジコジ
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