魔物娘掛け合い漫才：『長短』
「かーっ！ こらアカンわぁ。先週のノルマ分、思ったほどハケとらんやないか」
「………………」
「紙代だってバカにならんもんなぁ、いっそのこと載せる記事絞って……いかんいかん、そんなやったら本末転倒や」
「………………」
「うしッ、これしきでウチはくじけへんで！ イキのええネタをぎょーさん提供する！ それでこそ『ほぼ日刊スクイレル新聞』やからなッ！！」
「…………あは〜♥」
「それで、さっきから後ろで覗いとるのはなんやのん？」
「……あっ、ラタトスクちゃんが気付いてくれたぁ〜」
「いや、少し前から気付いとったけど、なんで声かけへんの？」
「気付いてくれるかなぁって、待ってたの〜」
「そらウチん家の大木のうろん入り口でジーッと見られとったら、すぐ気付くに決まっとるやん。テターニャ、いつからいたん？」
「机のうえに紙の束とおかねを置いて、『ぬふり……さてさて、今日はどんだけ売れてもーたかなぁ』って言ってたところから、ずっとぉ♥」
「いっとう最初からやないか！ ウチが浮かれてからヘコむとこまで全部見られとるやないか！！ うあー、恥ずかしいわぁ……」
「ぱたぱた〜ってこの森に走って帰ってくるのが見えたからぁ、いそがしそうだしぃ、悪いかなぁってぇ……。それなら、おうちの外からずぅっとずぅっとのぞいてて、用事のなさそうなときにお話ししようかなぁって」
「そこは別に声かけてええよ！？」
「ラタトスクちゃんはいっつもこまこまぱたぱたしててぇ、ちっちゃかわいいねぇ〜♥」
「こまこま？ いや、なんとなく言いたいこたぁわかるけど……って、誰がチビや！！」
「だってぇ、ほらぁ〜」
「なんや手招きして……って、ぷわっ！？」
「ほらぁ、ほらぁ、背もわたしのおっぱいのところまでしか届かないよぉ〜？」
「なんやこの肉まんじゅう二つ！？ めっちゃやわこい！」
「あうぅ、ぎゅっとつかまないでぇ〜」
「……はっ！ 思わず逆恨みから握力計がわりに握りしめそうになってたわ。相変わらずテターニャはどこもかしこもデカイなぁ」
「そうー？」
「むしろテターニャのほうが普通よりも大きいんやろ！ ほんまにフェアリーなんか？」
「フェアリーかと言えれればそうなんだけどぉ、そうじゃないところもあるかなぁ？ これでも女王さまだからねぇ〜」
「こんなにトロっこい女王様なんて他におらへんやろなぁ……。ぼんやりしすぎやで、ホンマ。いろいろクイーンサイズなのは認めたるけど」
「ひどーいー！」
「そんなんやとうかうかしてるうちに、悪いオオカミにガバッと食われてまうで？」
「そんなぁ……。食べられちゃうのは困るからぁ、ずっとラタトスクちゃんが守ってくれる〜？」
「断る！ ウチはおもろい新聞書くんで忙しいんや。ただ、テターニャがええネタでもくれるんなら考えたるで」
「なーるほどー……？」
「今はまだまだやけど、いずれはコレで敏腕ジャーナリストとして名を馳せたるで！ 世間をアッと言わしたる！」
「あっ！」
「あんさんが言ってどうする！？」
「うぅん、そうじゃなくてぇ。はい、これ〜♥」
「ん？ 水筒持ってどしたん？」
「すっかりわすれてたよ〜」
「どゆこと？ ウチがもろうてええの？」
「えっとね、昨日はすごく晴れてたでしょ〜？」
「うん」
「でもお夕がたになってから、雨がざぁって降ってきちゃったでしょ〜？ この森いっぱいがくろーくかげになっちゃってぇ……。それも、夜のあいだずっと降っててぇ……」
「うん………………うん？」
「それで〜、わたしは他のフェアリーの子たちと一緒に大きな木の下であまやどりしてたんだけどぉ、もし、もしだよ？ 森がぜんぶ雨で水びたしになっちゃったらどうしようかなぁって思ってね？ だって1日でもたくさん降ってるのに、もし何日もふっちゃったらきっともっとたいへんでしょ〜？ 森が海になっちゃうよぉ」
「長ない？ 話、長ない？」
「じゃあつまりね、まとめるとだよ？ もし森が海になったら、フェアリーの子たちもたいへんだけど、近くのあの子たちはわたしがまりょくで守ってあげられるかもしれないけどぉ、さすがに森のぜんぶを守ってあげるのはむずかしいでしょ〜？」
「う、うん、うん？ 要は、ウチが雨で溺れないかって不安になったんか？ そうなると水筒の意味がわからんけど」
「うぅん、そうじゃなくてぇ……」
「まとまってないやん！ 話、全然まとまってないやん！！ はよ説明おわらせーや！！」
「もー、ラタトスクちゃんはせっかちすぎだよぉ」
「ウチが悪いんかなぁ……？」
「じゃあつまりね、もっとカンタンにまとめるとだよ？」
「まとめると、が再びやって来おったな……」
「森が水びたしになっちゃったら、どうしても水につかっちゃう魔物の子たちがでちゃうでしょ〜？ その中には、アルラウネちゃんとか、あまりたくさんはいないけどぉ、リリラウネちゃんたちもいるでしょ〜？ あ、ラタトスクちゃん、リリラウネがアルラウネのふたごちゃんなら、みつごちゃんならなんて呼ぶのかなぁ……？」
「え……？ わからんけど、トリラウネとでも呼ぶのとちがうん？」
「トリ？」
「トリって頭に付くと、3って意味があるんや。まあ名前は今ただ思いついただけの語呂合わせやけど」
「なるほどぉ、やっぱりラタトスクちゃんは頭がいいねぇ〜」
「そ、そんなことあらへんよ。それで、トリラウネとその取り出した水筒の関係性は？」
「かんけいせい？ ないよ？」
「ないんかい！ なんやねん！！ じゃあトリラウネのくだり全然要らんかったやんか！！」
「お、怒らないでよぉ〜……」
「決してキレとらん！ キレとらんが、早く話を進めーや！！」
「じゃあ、まとめるとね？」
「3度目のまとめるとが来おったぞ……！ 頼むでホンマ……！」
「アルラウネちゃんとかリリラウネちゃんとか、それともしいるならトリラウネちゃんが水につかるでしょ〜？ そうなると、あの子たちの花の中って蜜があるよねぇ、それを、あ、それは水でうすまっちゃってるんだけどぉ……。きのうの夜にそう考えてね、あっ、もしかしたら夜中だったからもうきょうになってたかもしれないんだけどぉ、」
「ッアーーーー！！ 長い！ 長いわーーッ！！」
「ひゃぁっ！？」
「長いわ、話長すぎるわ！ 説明ヘタクソか！ 字数稼ぎや言われても文句言えんでそれ！！」
「ど、どならないでよぉ、ラタトスクちゃぁん」
「そのアルファ波出てそうなぽやっとした語りで終わりのない話聞かされるとかなんの拷問や！！ もっとカッカッと話せぇ！ どうせあんさんの言葉なんて、記事に書き起こしたらひらがなばっかのヘロヘロした書き口調になるんやから！！」
「ひ、ひどいよぉ〜！」
「テターニャにええ言葉教えたる！ トップダウンや、覚えとき！」
「タッチダウン？」
「着陸してどうする！ 話法の大基本や、まず重要な全体部分の総括を先にバーンと言うてから各部の説明に入るのがトップダウン！ 逆に、コマゴマした要素を並べてから、だからこう総括できる、って組み上げるのはボトムアップ言うんやで！！」
「ほ、ほえ……ほえ…………？」
「くっ、あかん、テターニャの頭から煙出とる」
「ラタトスクちゃんの話は、たまに難しくてわからないよぉ……」
「つまりやな……。ああ、その水筒はテターニャの持ち物やし、そや、中には何が入ってるん？」
「なか？ ええとね、わたしのいれたハーブティーに、アルラウネちゃんの蜜が入ってるんだよぉ」
「そゆことか、つまりここでのトップは、まずそれが蜜入りハーブティーであるってえ結果をバーンと言うことや」
「ほほぅ……？」
「そうなると話が見やすくなるやろ？ ウチもなんとなくわかったわ。つまり昨日の雨でアルラウネの蜜をドリンクに混ぜるんを思いたって、今日はあんさんらでお茶会しつつ、一番うまい蜜と茶の混ぜる比率を探したりして、出来たそのおすそ分けが今そこの水筒やー言うことやろ？」
「すごーい！ さすがは、じゃーのりすと？ さんだねぇ〜！」
「な？ 話しかた変えるだけでそんなムズカシない、大したことない話に…………ほんまに大したことないな！！ なんでそんだけの話をああも長々話せるん！？ むしろ才能あるわ！！」
「えへへ…………♥」
「褒めてない、決して褒めてないで」
「でも、話してたらお茶がだいぶ冷めちゃったぁ……」
「なんでそんな恨みがましい目で見られなあかんのん？ ウチ？ それウチが悪いん……？」
「まぁいいのです、わたしはおねぇさんだからねぇ。おだやかな心で全てをゆるしちゃうの！」
「にわかに歳上気取りはじめおった……。おだやかな、というか全体的にスローモーなのは確かやけど」
「じゃあはいっ、ちょっと遅めの午後のお茶会ね〜」
「うん……まあ、新聞作成も煮詰まってたし丁度ええんかなぁ？」
「あっ！」
「今度はなんや突然？」
「そういえばね、今までどう説明しようか迷ってたことがあってぇ……」
「なんや、また長話になりそうなんか？」
「うぅん、さっきのラタトスクちゃんが便利だよぉって言ってたタップダンスのお話があったでしょ〜？」
「トップダウンや。ウチそんなダンスできへんで」
「それでようやく、わたしもうまく説明できそうだなぁって思ったことが1つあってぇ……」
「お、さっそく身になったみたいやな。なんやあるんやったら遠慮なく言ってええで？」
「うーんと、そのぉ、ずうっと昔からどう言えばいいのかわからなかったんだけどぉ……あのねぇ？」
「うん、もうちょい早くならん？」
「あのねぇ…………？」
「うん」
「ラタトスクちゃん……わたしの名前、ずっと間違ってるよぉ？」
「それはむしろ何よりも先に言えや！！」
「………………」
「紙代だってバカにならんもんなぁ、いっそのこと載せる記事絞って……いかんいかん、そんなやったら本末転倒や」
「………………」
「うしッ、これしきでウチはくじけへんで！ イキのええネタをぎょーさん提供する！ それでこそ『ほぼ日刊スクイレル新聞』やからなッ！！」
「…………あは〜♥」
「それで、さっきから後ろで覗いとるのはなんやのん？」
「……あっ、ラタトスクちゃんが気付いてくれたぁ〜」
「いや、少し前から気付いとったけど、なんで声かけへんの？」
「気付いてくれるかなぁって、待ってたの〜」
「そらウチん家の大木のうろん入り口でジーッと見られとったら、すぐ気付くに決まっとるやん。テターニャ、いつからいたん？」
「机のうえに紙の束とおかねを置いて、『ぬふり……さてさて、今日はどんだけ売れてもーたかなぁ』って言ってたところから、ずっとぉ♥」
「いっとう最初からやないか！ ウチが浮かれてからヘコむとこまで全部見られとるやないか！！ うあー、恥ずかしいわぁ……」
「ぱたぱた〜ってこの森に走って帰ってくるのが見えたからぁ、いそがしそうだしぃ、悪いかなぁってぇ……。それなら、おうちの外からずぅっとずぅっとのぞいてて、用事のなさそうなときにお話ししようかなぁって」
「そこは別に声かけてええよ！？」
「ラタトスクちゃんはいっつもこまこまぱたぱたしててぇ、ちっちゃかわいいねぇ〜♥」
「こまこま？ いや、なんとなく言いたいこたぁわかるけど……って、誰がチビや！！」
「だってぇ、ほらぁ〜」
「なんや手招きして……って、ぷわっ！？」
「ほらぁ、ほらぁ、背もわたしのおっぱいのところまでしか届かないよぉ〜？」
「なんやこの肉まんじゅう二つ！？ めっちゃやわこい！」
「あうぅ、ぎゅっとつかまないでぇ〜」
「……はっ！ 思わず逆恨みから握力計がわりに握りしめそうになってたわ。相変わらずテターニャはどこもかしこもデカイなぁ」
「そうー？」
「むしろテターニャのほうが普通よりも大きいんやろ！ ほんまにフェアリーなんか？」
「フェアリーかと言えれればそうなんだけどぉ、そうじゃないところもあるかなぁ？ これでも女王さまだからねぇ〜」
「こんなにトロっこい女王様なんて他におらへんやろなぁ……。ぼんやりしすぎやで、ホンマ。いろいろクイーンサイズなのは認めたるけど」
「ひどーいー！」
「そんなんやとうかうかしてるうちに、悪いオオカミにガバッと食われてまうで？」
「そんなぁ……。食べられちゃうのは困るからぁ、ずっとラタトスクちゃんが守ってくれる〜？」
「断る！ ウチはおもろい新聞書くんで忙しいんや。ただ、テターニャがええネタでもくれるんなら考えたるで」
「なーるほどー……？」
「今はまだまだやけど、いずれはコレで敏腕ジャーナリストとして名を馳せたるで！ 世間をアッと言わしたる！」
「あっ！」
「あんさんが言ってどうする！？」
「うぅん、そうじゃなくてぇ。はい、これ〜♥」
「ん？ 水筒持ってどしたん？」
「すっかりわすれてたよ〜」
「どゆこと？ ウチがもろうてええの？」
「えっとね、昨日はすごく晴れてたでしょ〜？」
「うん」
「でもお夕がたになってから、雨がざぁって降ってきちゃったでしょ〜？ この森いっぱいがくろーくかげになっちゃってぇ……。それも、夜のあいだずっと降っててぇ……」
「うん………………うん？」
「それで〜、わたしは他のフェアリーの子たちと一緒に大きな木の下であまやどりしてたんだけどぉ、もし、もしだよ？ 森がぜんぶ雨で水びたしになっちゃったらどうしようかなぁって思ってね？ だって1日でもたくさん降ってるのに、もし何日もふっちゃったらきっともっとたいへんでしょ〜？ 森が海になっちゃうよぉ」
「長ない？ 話、長ない？」
「じゃあつまりね、まとめるとだよ？ もし森が海になったら、フェアリーの子たちもたいへんだけど、近くのあの子たちはわたしがまりょくで守ってあげられるかもしれないけどぉ、さすがに森のぜんぶを守ってあげるのはむずかしいでしょ〜？」
「う、うん、うん？ 要は、ウチが雨で溺れないかって不安になったんか？ そうなると水筒の意味がわからんけど」
「うぅん、そうじゃなくてぇ……」
「まとまってないやん！ 話、全然まとまってないやん！！ はよ説明おわらせーや！！」
「もー、ラタトスクちゃんはせっかちすぎだよぉ」
「ウチが悪いんかなぁ……？」
「じゃあつまりね、もっとカンタンにまとめるとだよ？」
「まとめると、が再びやって来おったな……」
「森が水びたしになっちゃったら、どうしても水につかっちゃう魔物の子たちがでちゃうでしょ〜？ その中には、アルラウネちゃんとか、あまりたくさんはいないけどぉ、リリラウネちゃんたちもいるでしょ〜？ あ、ラタトスクちゃん、リリラウネがアルラウネのふたごちゃんなら、みつごちゃんならなんて呼ぶのかなぁ……？」
「え……？ わからんけど、トリラウネとでも呼ぶのとちがうん？」
「トリ？」
「トリって頭に付くと、3って意味があるんや。まあ名前は今ただ思いついただけの語呂合わせやけど」
「なるほどぉ、やっぱりラタトスクちゃんは頭がいいねぇ〜」
「そ、そんなことあらへんよ。それで、トリラウネとその取り出した水筒の関係性は？」
「かんけいせい？ ないよ？」
「ないんかい！ なんやねん！！ じゃあトリラウネのくだり全然要らんかったやんか！！」
「お、怒らないでよぉ〜……」
「決してキレとらん！ キレとらんが、早く話を進めーや！！」
「じゃあ、まとめるとね？」
「3度目のまとめるとが来おったぞ……！ 頼むでホンマ……！」
「アルラウネちゃんとかリリラウネちゃんとか、それともしいるならトリラウネちゃんが水につかるでしょ〜？ そうなると、あの子たちの花の中って蜜があるよねぇ、それを、あ、それは水でうすまっちゃってるんだけどぉ……。きのうの夜にそう考えてね、あっ、もしかしたら夜中だったからもうきょうになってたかもしれないんだけどぉ、」
「ッアーーーー！！ 長い！ 長いわーーッ！！」
「ひゃぁっ！？」
「長いわ、話長すぎるわ！ 説明ヘタクソか！ 字数稼ぎや言われても文句言えんでそれ！！」
「ど、どならないでよぉ、ラタトスクちゃぁん」
「そのアルファ波出てそうなぽやっとした語りで終わりのない話聞かされるとかなんの拷問や！！ もっとカッカッと話せぇ！ どうせあんさんの言葉なんて、記事に書き起こしたらひらがなばっかのヘロヘロした書き口調になるんやから！！」
「ひ、ひどいよぉ〜！」
「テターニャにええ言葉教えたる！ トップダウンや、覚えとき！」
「タッチダウン？」
「着陸してどうする！ 話法の大基本や、まず重要な全体部分の総括を先にバーンと言うてから各部の説明に入るのがトップダウン！ 逆に、コマゴマした要素を並べてから、だからこう総括できる、って組み上げるのはボトムアップ言うんやで！！」
「ほ、ほえ……ほえ…………？」
「くっ、あかん、テターニャの頭から煙出とる」
「ラタトスクちゃんの話は、たまに難しくてわからないよぉ……」
「つまりやな……。ああ、その水筒はテターニャの持ち物やし、そや、中には何が入ってるん？」
「なか？ ええとね、わたしのいれたハーブティーに、アルラウネちゃんの蜜が入ってるんだよぉ」
「そゆことか、つまりここでのトップは、まずそれが蜜入りハーブティーであるってえ結果をバーンと言うことや」
「ほほぅ……？」
「そうなると話が見やすくなるやろ？ ウチもなんとなくわかったわ。つまり昨日の雨でアルラウネの蜜をドリンクに混ぜるんを思いたって、今日はあんさんらでお茶会しつつ、一番うまい蜜と茶の混ぜる比率を探したりして、出来たそのおすそ分けが今そこの水筒やー言うことやろ？」
「すごーい！ さすがは、じゃーのりすと？ さんだねぇ〜！」
「な？ 話しかた変えるだけでそんなムズカシない、大したことない話に…………ほんまに大したことないな！！ なんでそんだけの話をああも長々話せるん！？ むしろ才能あるわ！！」
「えへへ…………♥」
「褒めてない、決して褒めてないで」
「でも、話してたらお茶がだいぶ冷めちゃったぁ……」
「なんでそんな恨みがましい目で見られなあかんのん？ ウチ？ それウチが悪いん……？」
「まぁいいのです、わたしはおねぇさんだからねぇ。おだやかな心で全てをゆるしちゃうの！」
「にわかに歳上気取りはじめおった……。おだやかな、というか全体的にスローモーなのは確かやけど」
「じゃあはいっ、ちょっと遅めの午後のお茶会ね〜」
「うん……まあ、新聞作成も煮詰まってたし丁度ええんかなぁ？」
「あっ！」
「今度はなんや突然？」
「そういえばね、今までどう説明しようか迷ってたことがあってぇ……」
「なんや、また長話になりそうなんか？」
「うぅん、さっきのラタトスクちゃんが便利だよぉって言ってたタップダンスのお話があったでしょ〜？」
「トップダウンや。ウチそんなダンスできへんで」
「それでようやく、わたしもうまく説明できそうだなぁって思ったことが1つあってぇ……」
「お、さっそく身になったみたいやな。なんやあるんやったら遠慮なく言ってええで？」
「うーんと、そのぉ、ずうっと昔からどう言えばいいのかわからなかったんだけどぉ……あのねぇ？」
「うん、もうちょい早くならん？」
「あのねぇ…………？」
「うん」
「ラタトスクちゃん……わたしの名前、ずっと間違ってるよぉ？」
「それはむしろ何よりも先に言えや！！」
17/04/05 21:49更新 / しっぽ屋