読切小説
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思慮深き梟と少年
「はあ、はあっ」

 深い、深い森の中。
 月明かりさえない暗闇の中を、少年は一人、手探りで歩いていた。
 背中に体格相応の鞄を背負い、手に持つのは小さなランタンひとつだけ。
 彼は森を歩き慣れているとは決して言えず、何度も太い木の根や石で転びそうになる。
 遠くから響く獣の鳴き声に怯え、身体を震わせる。
 それでも、懸命に前へ進む。

 その森の中には、樹齢千年を優に超える巨大な樹がある。
 そこには『森の賢者』と呼ばれる『思慮深き梟(ふくろう)』が住むという。
 少年は、その賢者に教えを請うために森へやってきた。

「ううっ……」

 しかし、行けども進めどもその樹には辿り付かない。
 なにしろ地図もない、光もない森の中だ。少年一人で立ち入る事など愚の骨頂である。
 迷い、彷徨い、いつしか倒れる事など火を見るより明らかだ。
 自分の行いに後悔しながら、少年は膝を地面に着ける。
 このまま自分はさ迷い続けるしかないのか――。
 そう思った矢先に、二つの何かが暗闇の中で煌めいた。

「……!」

 少年は身を強張らせる。凶暴な獣の類と出会ってしまったら、武器も逃げ足もない自分は容易に狩られてしまうだろう。
 そう思うと体が言う事を聞かなくなる。
 すると、墨のように黒い暗闇の中から密やかな声が聞こえた。

「ヒトの気配を感じて来てみれば――これはこれは。
 まだ年端も行かず、こんなにあどけない男の子だったとはね」

 深い森に溶け合うかのような、とても落ち着いた女性の声。
 二つの何かがまた煌めいたかと思うと、黄金色(こがねいろ)に明滅を繰り返す。

「だ、だれ?」
「この森に住む、しがない一匹のフクロウだよ。オウルメイジとも呼ばれる魔物だ」
「ふくろう……おうるめいじ……もしかして、」
「おや、君は私の事を知っているのかな。光栄だね」

 瞬いたそれを見て、黄金色の何かの正体に少年は気付く。
 それは、見た者を射ぬかんとするほど鋭い、二つの眼光だった。
 少年は慌てて立ち上がり、眼の煌めく方向に向かってふらふらと歩く。歩いてしまう。
 そして下にあった木の根に気付かず、足を引っ掛けて思い切り体勢を崩す。

「っ――」

 転倒の痛みを覚悟して少年は目を閉じる。
 しかし、固い地面に当たる衝撃はない。
 その代わりに、柔らかい何かがふんわりと自分の身体を包んだ。

「え……? あ……」

 身体を包む、うっとりするようなその感触に、思わず声が出てしまう。
 少年が今まで触れたどんな物よりも優しい肌触り。
 頭がぼおっとして、何もかもを肯定してしまいたくなるような、そんな多幸感に支配されそうになる。
 何も考えずその心地に身を任せてしまいそうになりながら、少年は目を開く。

「おや、申し訳ない。まだ『魔眼』を使うべきではなかったか。
 いつだって、冷静さを欠くべきではないね。
 こんな風に簡単に足元をすくわれてしまうから」

 すぐ近くで囁かれるような、慈愛に満ちた密やかな声。
 少しだけ顔を引いた少年の視界に広がるのは、大きな羽毛らしきものだった。

「あの……僕を助けてくれたんですか?」
「そうだよ。さっきのは、私のせいでもあるから。
 地面よりは柔らかく君を受け止めてあげられると思ってね」
「す、すみません。ありがとうございます」

 少年は自分を包むその感触から離れるのを名残惜しく思いながらも、ゆっくり体を起こし、自分の足で立つ。

「礼には及ばない。こちらも君の事をほんの少しだけれど、分かった気がするよ」

 ランタンの小さな光に照らされて、自分の目の前にいる相手の姿が浮かび上がる。
 端的に言うと、人間の大人と同じくらいの体格をした茶色の梟だ。
 背丈は少年の頭がちょうど相手の胸部と同じ高さになるぐらいで、かなり大きい。
 頭部と胴体は(羽毛で隠れてはいるが)人間によく似ており、麗しい顔つき。
 頭には細やかな茶色の髪とミミズクのような羽角が二本生えていて、足先は鳥のような脚になっている。
 さらに身に纏う羽毛や翼は厚く、ふわふわで、柔さに溢れている。
 目つきは鋭くややじとっとしているが、悪印象を与えるほどではない。

「その……実は僕、ここに来たのは理由があって……」
「ああ、分かっている。私に会いに来てくれたんだね」
「え?」
「君が探しているのは『森の賢者』で、『思慮深き梟』だろう?
 それなら、私の事だよ。事実はどうあれ、そうとも呼ばれているらしいからね」
「ど、どうしてそれを……?」

 梟は小さく微笑むと、少年にとうとうと語り始める。

「たった一人きりで、君のような子供がここを歩く理由なんて、そう多くない。
 わざわざ深夜を狙って訪れるとなると、さらに限られる。
 だがこの辺りには夜にだけ生えるような薬草も、際立って珍しい動植物もない。
 遭難にしてはまだ服や靴が汚れきっていないし、強い飢えや乾きも感じられない。
 まあ、九分九厘そうなる前に、この森に住む他の魔物が保護してくれるだろうしね」

 少年はその推察の早さと確かさに感激していた。
 同時に、この魔物が自分の探している相手だと確信する。

「そ、そうです。僕は『森の賢者』であるあなたを探していました。
 でも、その、こんなにきれいな女性だとは、思ってませんでした、けど」

 賢者と呼ばれるからには、年の功で知識を蓄えた老人のような姿を少年は想像していた。
 しかし、目の前にいるのは人間ではないにしろ、ただただ淑やかな女性に思える。

「ふふっ、ありがとう。とても嬉しいよ。
 だが『森の賢者』は、あくまでそう皆が呼んでいるというだけの通称でしかない。
 私の名前は”サピエンティア”。ティア、と呼んでくれるかな」
「は、はい。ティアさん。全てを知ると言われる賢者のあなたに、お願いがあるんです」

 ティアは少年の真っ直ぐな視線を見て、僅かに困った顔をした。

「……残念だけれど、最初に言っておこうか。
 全てを『全て』と示すものは、偽り以外にあり得ない。
 でも、そうだね――。
 きっと君は、私に知識を分けて欲しくてやってきた。
 歩き方を見たところ、君は勉学に重きを置く子なのかもしれない。
 手にペンだこがある点を見ても、学問か芸術に真摯に向き合っているようだ」

 今度は、にやりと梟が笑う。

「じゃあ、質問しよう。君は私に何を請う?」
「……僕は、」

 高鳴る鼓動を抑えながら、少年はティアに言った。

「あなたに、僕の先生になって欲しいんです」








「ふふっ。幼気な君にしては、とても熱烈なラブコールだったね。
 今でもあの時の君の表情を思い出せるよ」

 ティアは少年を抱き抱えて一緒に空を飛び、ゆっくりと彼女の住む大樹の巣穴に連れて行った。
 巣穴と言えど、それなりの広さと設備はあり、人間が住むのに困らない程度の作りにはなっている。ティアの集めた蔵書もあり、学ぶことにも困らない。
 二人は、あの日からここで一緒に暮らすようになったのだ。

「まさか、二つ返事で許してもらえるなんて思ってもいませんでしたけどね。
 どこの馬の骨とも知らない、みずぼらしい子供の頼みですから」

 一緒に生活するようになってまだ三ヶ月ほどだが、二人の間に流れる雰囲気は和やかだった。
 ティアは教育という点ではプロフェッショナルではないが、その潤沢な知識量を丁寧に少年へ伝えらえるだけの技量と器用さを持ち合わせていた。

「いくら賢者と呼ばれようと、教える者のいない知識なんて寂しいものだ。
 君を最初に私が見つけられたというのは、僥倖としか言う他ない」
「その言葉は、そっくりお返ししたいですね」

 少年の両親は彼が物心つく前に育児を放棄し、遠くへ捨ててしまった。
 孤児院にしか身寄りのなかった少年には、帰るべき場所がなかった。
 まともな学校に行くことも適わなかった。一人で学べることにも限界がある。
 それでも、教師になりたいという夢が少年の中にはあった。
 だから少年は必死の思いで旅支度を整え、ひたすらに森を目指したのである。
 居るかどうかも定かでない、森の賢者へ教えを乞うために。

「セージ、君の頭脳は天才ではないかもしれないが、決して凡庸でもない。
 そして天才でないが故に、努力の尊さも、教育という物の大切さも強く理解している。
 それは君の夢である教師にとって、何より重要な素質だ。
 磨けば必ず光るだけの輝きを秘めているだろう。それを楽しみにしているよ」
「期待に応えられるように、努力します」

 少年は、最初にティアへ「自分に名前を付けてほしい」と懇願した。
 最初こそ迷っていたが、彼の想いを汲み取ったティアは彼を”セージ”と名を授けて呼ぶようになった。
 それはティアが少年に贈った初めてのプレゼントとも言える。

「ではセージ、そろそろ朝だ。眠る事にしよう」
「はい、ティア先生」

 ティアは夜行性なので、基本的には朝に寝て、夕方に起きる生活をしている。
 もちろん少年に合わせて昼に活動することもできるのだが、彼は「ただでさえ迷惑を掛けるのだから、せめて先生の生活に合わせたい」と強く要請したため今の環境に落ち着いた。
 最初こそセージは昼夜を反転させる事も二人で寝る事にも少し戸惑っていたが、

「ん……どうだ、セージ。今日も眠れそうか?」
「はい。今まで使ったどんな布団よりも安心して、気持ちよく眠れてます。
 こうしていられるのも……先生の、おかげで……ふぁ……」
「ふふ……そうか。おやすみ、セージ……」

 二人が同じベッドに寝て、ティアが彼の顔を覆い隠すようにして添い寝する。
 そうして暗くなった視界と、ふんわり包まれる羽毛の優しさで、どんな時間でも熟睡できていた。
 それはセージにとって、今まで孤独に寝ていた頃とは考えられないほど、穏やかな時間だった。





 ――が、ある日。
 セージはまだ太陽の昇る前の薄暗い朝、ティアと一緒に寝ているベッドの上で、ある物音と刺激で目を覚ました。
 くぐもった、しかし熱に浮かされたような、甘い声。
 自分の手から伝わってくるじんわりとした熱さ。

「……?」

 何故かここで起きてはいけない気がして、動かずに薄目だけを開ける。
 少しずつ大きくなっていくその声は、いつもの冷静な声色ではないものの、間違いなくティアの声だ。
 彼女はセージの手に、自分の股間を擦りつけている。
 しかし、何をしているかは少年には分からない。そこまでの知識はまだ教えられていない。
 手にはぬるりとした蜜のような液体が絡みついていく。

「んっ……ぁ、せぇ……じぃ……♥」

 途切れ途切れにだが、自分の名前を呼んでいる。
 性知識にはまだ乏しいセージだが、これが何か性を連想させることで――少なくともティアが自分にそれを見せたくないのだろうという事も、分かりかけていた。
 だが、彼女の股間に手が触れているという事実は、セージを嫌でも興奮させてしまう。
 寝ているフリをするのに必死で、頭が回らない。

「も、もっとぉ……わたしの、おまんこ……どろどろに、してっ……♥」

 押し殺した声だが、その声色に含まれる淫らさは彼にもわかる。
 セージにとっては聞き覚えのない単語だが、自分の指が触れているティアの秘所だろうということは察した。そして、何故かその言葉がどうしようもなく卑猥に聞こえた。
 少なくとも普段のティアなら絶対口にすることのない、そんな単語だと。

「ふぅっ、い、いいよっ……♥せぇじのゆび、きもちいいっ……♥
 ぐちゃぐちゃに、してっ……んあっ!」

 思わずセージは指を曲げてしまい、膣の秘裂に触れる。が、興奮に身を任せ彼の顔を見つめ続けているティアは気づかない。
 肉の柔らかさと愛液で塗れそぼったそこは、とても不思議な感触と熱さだ。
 指で触れるだけでも気持ちいいし、ずっと味わっていたくなる。

「ああっ、も、もう、だめっ……いっ、イクぅッ……イッちゃう!♥
 せぇじのゆびで、イクっ……!! ――んやあっっ……!♥♥」

 ティアは体を一際大きく跳ねさせ、痙攣したかのようにピクピクと震える。
 秘部から愛液が止め処なく溢れてセージの手を汚していく。
 羽毛に付いた瑞々しい自然の匂いに混ざって、甘くいやらしい彼女の女性としての匂いが彼の鼻をくすぐり、さらに興奮してしまう。
 そして、薄目を開けてティアの痴態を見ていた彼の眼には、普段の冷静な表情からは考えられない、自分の顔を見つめる彼女の淫らな表情が焼き付いてしまった。
 今の自分にはまず見せてくれない、彼女の一面だった。

「はあ、はあっ……ぁ……ま、またやってしまった……。
 早く、発情期がおさまってくれないと、このままでは……」

 少年から目を背け、彼女はうな垂れる。
 自分が起きていることを言うべきか、言わざるべきか。 
 少しだけ悩んだが、意を決してセージは口を開いた。

「せ……先生っ」
「ぴぃっ?!」

 驚き交じりの可愛らしい嬌声とともに、またティアは大きく身体を跳ねさせる。

「――あ、」

 うな垂れて目を逸らしたまま、ティアは呟く。
 
「な……ぁ……せ、セージ……君は……いつ、から……?
 いつもなら、この時間に起きたことなんて、い、一度も……」
「す、すみません。数分前から……その……僕の指に、体を擦り付けているところを。
 先生は……何をされていたんでしょうか……?」

 ゆっくりと身体がセージの方に振り向いて、躊躇いがちに目が合った。
 さっきの快感によるものとはまた違う、羞恥で真っ赤に染まったティアの頬が見える。

「う、あ……ち、違うんだ、セージっ……わ、私も、魔物であり、女なんだ。
 理性では抗いきれない発情期というものは、あるべくしてあって……。
 どうしても、君の身体に触れていたくて、君の身体でないと満足できなくて。
 き、君のことを、あんなにいつも抱いていたら……もう我慢なんて、できるわけもなくてっ……」

 表情こそいつものものに戻ったものの、頬の赤みはそう簡単に抜けない。
 簡潔な答え方が出来ず、かつたどたどしい喋り方は、いつものティアとはかけ離れた口調だった。

「せ、先生。僕には、まだ先生が何をなさっていたかがよく分かりません。
 でも、僕の身体を使っていたということは、僕が関係する何かなのですよね」
「そ、そう……なんだが、」
「じゃあ、僕にもお手伝いをさせてください。
 先生のような素晴らしい方の助けになれるかどうかは分かりませんが、僕にできる事ならなんだってします」

 真っ直ぐな目線と心で放たれるその言葉を聞いて、ティアの冷静な表情が緩んだ。
 そして彼女もまた、セージを見つめ返す――つもりが、羞恥で中々目を合わせられない。

「な、何を言い出すんだ。
 君と私は一緒に住んでこそいるが、先生と生徒の関係でもあるんだぞ。
 それに……まだ君は幼すぎる。私の性欲処理の為だけに、君を付きあわせたくない。
 分別も付かない、無垢な少年の心を食い物にするなんて、そんな……」
「……先生がそうおっしゃられるのも、無理はないと思います。
 僕はまだまだ勉強を始めたばかりで、未熟者ですから」
「あ……! い、いや、そんな事はない。君は聡明な子だ。
 世辞ではなく、一を聞いて十を知る事が出来るほどの逸材と言っていい。
 君に知識を授ける役目を担えるのは、私にとっても嬉しいことなんだ」
「で、ですから! だからこそ、僕は先生のお役に立ちたいんです!」

 声を張り上げる少年の姿に、ティアは大きく鋭い黄金色の眼を少し丸くする。

「せ、セージ……?」
「もしかしたら、さっきのは僕に隠しておきたい事だったのかもしれません。
 でも、僕は先生を心より尊敬しています。先生のやる事に間違いはないと信じています。
 だから先生が決めてください。僕にお手伝いをさせてくれるかどうかを」
「う……そ、そんな純粋な瞳で、見つめないでくれ。私は、浅ましい梟でしかない。
 多少知識を蓄えただけのしがない梟だ、時にはこうやって簡単に情欲で流されてしまう。
 君にそう頼まれてしまったら、君が拒めないと分かってしまったら……。
 もう欲望を押さえつけることなんて、出来ないんだ……!」

 大きな翼をはためかせ、ティアはセージの身体をぎゅっと包む。
 雪のように優しい羽毛に埋もれる感触で、またセージは溶けてしまいそうだった。




「せ、先生の情欲を満足させるという事だと考えてはいますが……。
 そのために、僕は何をすればいいですか?」
「ん……そうだね、ご覧のとおり私は梟だ、自分の身体一つでは満足に性感帯が刺激できない。
 だ、だからまずは、セージの指で、おま……いや、私の全身を、優しく撫でてくれるかな」
「は、はいっ、喜んで!」

 元気のいい返事と共に、セージはベッドで仰向けに寝転んだティアの豊満な身体に両手を伸ばす。
 ティアの肢体のおおよそは分厚い羽毛や体毛で隠れてはいるが、その分晒されている部分や奥底にある肉体は敏感だ。
 撫でられるだけでも、隠しきれない声が漏れる。
 そしてやはり肉付きがよく柔らかい。羽毛とは違ったその感触がセージを満足させる。

「んっ……ああ、上手だよ、セージ。そのまま――んゃっ!♥」

 少年が羽毛から覗く胸部の先端――ツンと立った乳首を撫でると、ティアはまた自慰をしていた時のような嬌声を零した。
 性知識に乏しいセージは、そこが彼女の性感帯だと知って触ったわけではない。
 ただ、指が食い込むその乳房の、魔性のような柔さにごくりと唾を飲む。
 気が付くと、彼は二つの豊満な胸を優しいながらも入念に揉みしだいていた。

「うぅっ、お、おっぱい、そんなっ、ずっと……んむっ♥」

 自分の揉んでいるものが『おっぱい』である事は理解していたが、彼女の口から出されると、途端に少年はいけない事をしている気分になる。
 セージは、今度は意図してティアの乳首を指で弄った。
 硬く尖ったそこを指でそっとつまむと、また彼女は声と身体を跳ねさせる。

「だ、だめっ、乳首は、よわっ……♥あふんっ! だ、だめだよおっ……♥」

 言葉とは裏腹に、ティアは体をくねらせる。セージもそれが本心から出た言葉だとは思っておらず、愛撫を止める事はない。
 むしろ普通では見れない彼女の声や表情を知りたくて余計に触ってしまう。
 乳首の周りや乳頭を入念に、けれど優しく、コリコリと刺激し続ける。

「あ、あ、からだっ、びくって、なっちゃっ……♥ふあぁぁッ……♥」

 ティアの全身がピクピクと震える。
 今まで完全に満たされることのなかった自慰とは違って、セージの手により愛撫されているという認識が簡単に軽い絶頂を引き起こしてしまったのだ。
 先ほども見た光景なのでセージも錯乱ほどではないが、少し驚いてしまう。

「はぁっ、はぁっ……♥も、もうっ。私の言う事を聞かずに続けるなんて……」
「ご、ごめんなさい。ティア先生の身体に触れてるだけで気持ち良くて、つい夢中になってしまって」
「むぐっ、し、仕方がないな……♥次は、私の……その、股間を……して、もらうぞ」
「わ、わかりました」

 セージは少し後ろに下がり、ティアの両足の間に身体を置こうとする。
 
「あの……足を開いても、いいですか?」
「う、あ、ああ……でも、き、君に見られてると思うだけで、は、恥ずかしくて死んでしまいそうだ……」
「き、気を付けます……」

 ティアの太腿辺りに両手を添え、そっと足を開く。
 股間部分は羽毛が薄くなっており、薄らと秘所が見えていて、そこは既にたっぷりと愛液で塗れていた。
 
「すごく、ぬるぬるしてますけど……どうすればいいですか?」
「えっと……割れ目の上にある小さな突起を優しく触りながら、その下にある穴に指を挿し入れてほしい」
「こ、こうでしょうか……」
「んっ、ぁ♥と、突起……クリトリスのほうは、それで、いいよっ♥
 膣のほうは……いや、もう少し下の方の……そ、そこっ……あっ、入ってっ……ひゃあぅっ♥」
「す、すみません!痛かったですか?」
「だ、だいじょうぶ……で、でも、やさしくっ……んやっ、く、クリ、すごいよぉっ……♥」

 秘裂のクリトリスを指で転がされ、膣穴に指を挿入され、二つの快感によりティアはまた声を上げる。
 彼女の膣内を指で触れると、無数のヒダが舐めるようになぞってくる。
 触っているだけでも変な気分になるし、それに加えて淫らな匂いまで漂っている。

「クリトリス、触られるだけでっ♥電気が走るみたいにっ……みゃぁっ?!♥♥」

 目を少し閉じて快感に浸っていたティアは、突然の刺激に腰が浮いてしまった。
 見ると、セージがクリトリスに自分の舌を這わせている。
 チロチロと丹念に舐め上げられると、それだけで達してしまいそうなほど感じてしまう。

「な、舐めるの、らめぇっ!♥そ、そんなのっ――ぴぃっ?! ふあぁぁッ……♥♥」

 さらに少年はとどめを刺すかのように、勃起したクリトリスに優しく唇で吸い付いた。
 指で触れたり舐められるのとは別次元の快楽で、さっきよりも強く絶頂してしまう。
 発情期を迎えたティアは、思考力だけはなんとか保っていられるものの、その身体はあまりにも快楽に無力だった。

「だ、大丈夫ですか?痛かったりは……?」
「あ、ああ……♥でも……もお、我慢、できないよっ……♥はやく、セージと、繋がりたくてっ……♥」
「え?つ、繋がるって……」
「この穴は、子供を作る為の女性器なんだ。ここは男の人の性器、つまりおちんちんを迎え入れるためのもの……♥」
「おちんちん……を……」
「ふふ……君ももう、おちんちんがむずむずして仕方ないんだろう?♥ 隠そうとしたって、その顔色や股間の膨らみを見るだけでバレてしまうよ♥」

 そうティアに言われて、セージは慌てて弁解しようとするが、何も思いつかない。

「いいんだよ、セージ。むしろ私はとても嬉しいんだ。
 私の痴態を見て君が興奮してくれている事が分かって、例えようもなく嬉しい。
 だから――今だけは賢者の仮面を脱ぎ捨てて、君を襲ってしまいたい」

 ぎらり。
 いつか暗い森の中で見た、黄金色の輝きをした瞳が光り、セージと見つめあった。

「――あ、……てぃあ……せんせえ……♥」

 少年の頭の中はぼんやりとした思考に包まれる。
 『魔眼』について何度かティアは彼に説明していたため、それを使われた事は理解できた。

「今は、何にも悩む必要はない。怖がることもしなくていい。
 ただ私の身体に、そして快楽だけに身を任せて……♥」
「はい……せんせい」

 セージの身体をベッドに仰向けで寝かせると、ティアはその上に馬乗りになる。
 そして幼いながらもカチカチに勃起した肉棒に、自分の濡れそぼった秘所をあてがう。
 熱い蜜で塗れたその穴は、くちゅっと触れるだけでセージに快楽を感じさせる。

「ああっ……せ、セージ。君のおちんちん、入ってくるよ……♥
 熱くてカタくて、身体がゾクゾクしてるっ……!♥」
「は、はい……♥せんせいの中、とっても熱くて、けど……気持ちいいですっ……♥」

 ゆっくりと少年のペニスを膣内に根元まで咥えこむと、満足そうにティアは体を震わせる。
 そして二人で寝る時のように、少年の身体に覆いかぶさっていく。
 窮屈でない程度の重さと、彼女のふんわりとした羽毛でセージが包まれる。
 顔はたゆんとした豊かな乳房で包まれ、その極上の柔らかさに溶けそうになっていく。

「んんっ……♥このまま、じっくりと快感を高めていくのが、私達オウルメイジの流儀なんだ。
 息苦しかったり、窮屈なところはないか?」
「はい……息をするたびに、先生の優しいにおいがして……♥
 身体中が、ふんわりと柔らかい先生に包まれていて……♥でも、お、おちんちんが、とっても熱くなっていって……♥」
「ああ……♥私の中で、ドクドクと脈打っているのが分かるよ♥
 このまま君をずうっと味わっていたい。身体中の全てで、君を感じていたい……♥」

 静まり返った夜のように穏やかで、けれど濃密な交わりの時間。
 気持ち良さがどんどんと溜まっていって、互いの全身を満たしていく。
 どこまでも優しい、微睡みに浸っているかのような性交。

「それじゃあ……ゆっくり……ゆっくりと、膣内を動かすよ。
 身体が溶け合って、君の精液が漏れ出てしまうまで――、一緒に、昇り詰めよう」
「せ、せんせえ……っ♥」
「……セージ。今は、今だけは先生と生徒という関係は忘れてしまおう。
 だから、私の事を、ティアと呼んでくれ……♥」
「てぃ……ティア、さんっ……♥」
「ああ、セージ、いいぞっ……♥そのまま、顔を上げて、私の目を見て……♥
 君の蕩ける顔も見たい、私の蕩けてしまう顔も、君になら見ていて欲しい……っ♥♥」

 密着しながらも、二人はなんとか顔を合わせる。
 性の快楽を初めて味わうセージはもちろん、貞淑さ溢れるティアの表情もまた法悦に歪んでいる。

「ティア、さん……お、おちんちんから、何かが漏れてしまいそうなんです……♥
 それに……こ、こわいです、自分が、どこかに行ってしまうみたいに、ふわっとして、何もかもが溶けてしまいそうで……♥」
「そうか、もう、射精してしまいそうなんだね……♥
 でも、ガマンしなくていい、そのまま、気持ち良さに身を任せるだけでいいよ。
 心配なんていらない、君はどこにも行ったりしないよ。
 ちゃんと私が君を包んで、ずっと見てあげているからね……♥♥」
「てぃ、てぃあっ……♥ティアさんっ……!♥」
 あ、ああ……私も、もう耐え切れないほど、おまんこが、きゅんとして、切なくて……♥
 もう、そろそろ、イッてしまいそうだ……っ♥♥」

 水が器から溢れかけるかのように、二人の精神も肉体も限界だった。
 お互いに熱の籠った言葉を掛け合いながら、目を見つめながら、絶頂に身を委ねる――。

「あ――ああああ、あああぁぁあぁっ……♥♥!!
 ティア、さんっ、ティアさぁんっ……♥♥!!」
「んんっ♥あああっ♥セージ、セージっ♥だいすきっ♥だいすきだよぉっ……♥♥!!」

 長い永い二人の絶頂は数分にも及び、その間セージの性器からは精液が漏れるように零れだす。
 痺れるような射精の快感が全身に広がって、それがずっと続くような魔の快楽。
 とろとろと流れ出す白濁液はティアの膣内、そして子宮を少しずつ満たしていく。
 熱いその体液を注がれる事にこの上ない喜びを感じながら、ティアは絶頂を噛みしめる。

「んんんんッ――……♥♥!! せーじの、セイエキっ♥すごいよぉっ……♥♥
 カラダが、ココロが、きみだけのものに、なってく、みたいっ……♥♥!!」
「ああっ……♥て、ティアさんっ……♥ぼくも、もう、ティアさんだけで、あたまがいっぱいでっ……♥」
「うんっ……♥そのまま、私の事を考えていてっ……♥見ていてぇっ……♥」

 天に昇ったような絶頂の余韻に浸りながら、甘い睦言を繰り返す。
 互いの身体の抱き心地が、柔らかさが、熱さが、想いが、どろどろに入り混じって思考を溶かしつくす。

「はぁっ、はぁっ……♥ご、ごめんなさい……ぼく、もう……あたま、が……」

 少年の幼い身体にとって、その気持ち良さはあまりにも刺激的すぎた。
 通常ではあり得ない絶頂による体力の消耗で、意識が朦朧としていく。

「いいよ、セージ……♥疲れたなら、そのまま眠ってしまってもいい。
 私がぎゅうっと抱きしめていてあげるからね。
 君の安らかな寝顔を見ていてあげるからね。
 今は何もかも忘れて、二人で一つになっていよう――」

 ティアの黄金色の鋭い瞳がセージをじっと見つめる。少年もそれを見つめ返す。
 二人とも、それをずっと見ていたいと願っていた。









「あ、あああ……!! 私は、私はなんて罪深い事をっ……!!」

 次の日の夜。
 セージが起き、ティアがそれに気づいて、床を直して、テーブルで向かい合って二人にとっての『朝食』を食べていたときのこと。
 突然思い出したかのようにティアはうな垂れて、羽根で頭を掻き抱いて顔を隠しながら呻いていた。

「きょ、教師が生徒と関係を持つなんて、到底許される行為ではない!
 いくら発情期だったからって、私なら冷静に思考ができていたはずなのに――ッ!!」

 顔こそ少年からは見えないが、その声色だけでうろたえているのは丸わかりだった。

「せ、先生。落ち着いてください」
「うっ……せ、セージ……」
「僕は、嬉しいんです。先生の為に手伝えたこと、自分の力でそれが出来た事が」
「そ、そうは言っても、こんな、こんなこと……」
「……先生」

 セージはそう言ってから、自分の言葉の空々しさに気づく。
 違う。これでは、こんな建前を並べた言葉は先生にだって見抜かれる。
 上手くはできなくても、今は自分の想いを伝えるべきだと、そう思った。

「僕は、先生の事を心から尊敬しています。
 でもそれは知識があるとか、賢いとか、そういうことだけではありません。
 最初はそうだったかもしれませんが、今は違うんです。それだけじゃないんです。
 今回の事で、はっきりと気づきました」
「……う、」

 ゆっくりとティアの羽根が開く。
 項垂れていた頭が少しずつ上を向いて、しばらくしてようやくセージを見る。
 二人が目を合わせたところで、セージは言った。

「僕は、ティア先生のことが好きなんです。愛しています」

 ティアの黄金色の瞳が見開かれて、更にまん丸くなる。 
 思わず彼女は羞恥でセージから目を逸らしてしまいそうになったが、それよりも見ていたいと言う気持ちが強く勝った。

「な――っ、あ……う、」
「まだ出会ってそんなに時間は経ってません。
 先生の事を知り尽くしているなんて到底言えません。
 でも……本心なんです。
 教師になりたいという夢が、いつの間にか、あなたのような素晴らしい方になりたいという夢に変わるぐらいには、好きになっていたんです」

 ティアの顔はいつかのように、また真っ赤に染まっていく。頭から突き出た羽角がぴこぴこと忙しなく動く。
 たとえ賢者と呼ばれる梟であろうとも、感情を完全に誤魔化す事は出来ない。
 それが愛する者に真っ直ぐな気持ちをぶつけられた時ならなおさらだ。
 ことティアに至っては、冷静なフリをすることさえ出来なかった。
 
「で、でも……!あの行為は私が君を騙したようなもので、私は……!」
「先生は、素晴らしい方です。騙されたなんて、一度も思った事はありません。
 膨大な知識なんかじゃない、ティア先生の誠実さに、僕は惹かれてしまったんです」
「は、恥ずかしくなることを、これ以上言わないでくれ!」
「いいえ。何度だって言います! 先生に認めてもらえるまで!
 愛してます、ティア先生っ!」
「あ、あああ――――ッ!!!!!!」

 ばさばさと翼を振り乱しながら、錯乱した声と共にティアが飛び立っていく。
 家から飛び出していくのはまさに一瞬で、一流の狩人の片鱗とも言えた。

「先生!朝までには戻ってきてくださいよー!」
「わ、分かってるっ!でもちょっとだけ、冷静にさせてくれぇ――っ!!!」




 いつしか、その深い森に住む魔物娘の子供達のため、少年は教師と成るのだが――。
 それはまた、別の話になる。
18/09/18 20:20更新 / しおやき

■作者メッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

じとっとしてくりっとした目つき!柔らかそうな身体と羽毛!包容力に溢れてそうなお姉さんっぽい外見!
オウルメイジさんは、ぼくのすきな要素がいっぱい詰まったすばらしい魔物娘さんです。
しかし作者が頭良くないから頭いいキャラを書けないというかなしさ。
いやでもそんな事は問題じゃないんだ……ぼくはオウルメイジさんに身も心も包まれて、見つめあいながら過ごしたいだけなんだ……。

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33