捨てつぼまじんを拾ったら
日が暮れかけた帰り道、人通りの少ない閑静な住宅街、アスファルトの道路の上。
”ひろってください”と書かれた段ボールの中。
普通なら入っているのは子猫か子犬と相場が決まっているものだ。だが――
「……ツボ」
壺。
どこからどう見ても壺が段ボール箱の中に入っている。
調度品には詳しくないので値打ち物かどうかまではよく分からないが、中世にありそうな見た目の壺で日本製には見えない。
不法投棄されているようにしか見えないが、どこか壊れているという事もなさそうだ。
「つぼだー」
「ツボだね」
「ツボですね」
私の横を三人組の少女たちが通る。ランドセルを背負っているから下校中なのだろう。
『アリス』に『デビル』、『稲荷』と魔物娘の揃い踏みである。
三人とも幼い(稲荷以外はずっとそう見えるだろうが)ので、見る人によっては眼福に違いない。
「あれってどう見てもー……」
「アレだな」
「魔力からしてそうですわね」
……どういうことなのだろうか。
「ほっといていーのかなー?」
「いいんじゃない?」
「あの子も精が欲しいのでしょうし……そっとしておきましょう」
「ほっといたらあのおにーさん引っ掛かりそーだけどー」
「んー、ドーテーっぽい匂いだなあ……けどアタシたち、学校卒業するまでは襲っちゃダメって決まりだし」
「まあ、そうなのですか?……しかし、決まりは決まりです。とても名残惜しいですが、ここは身を引きましょうか」
そんな事を言いながら、三人組の少女は歩いて行ってしまう。
好き勝手言われていたような気もするが、何となく察しはついた。
この壺はタダの壺ではないのだろう。
スマートフォンで調べればすぐに情報は出てきた。
壺に擬態する魔物、つぼまじんである。
「なるほど」
「……」
私は一人ごちる。壺がかすかに震えたのは気のせいだっただろうか。
彼女たちは壺に擬態し、覗き込んだものを中に引きずり込む魔物だそうだ。
そして一度覗き込んでしまえば逃れる術はない、という恐ろしい魔物である。
あの子たちの話を聞いていなければ、きっと私は壺の中を覗き込んでしまっていただろう。
「……っ」
どこからか小さい声が聞こえたが、誰が発したのかは分からない。
また、彼女たちに対する対処法は簡単で、壺の中に物を投げ入れることらしい。
軽いものでも驚いて逃げてしまうし、重いものであれば中でぶつかって気絶して出てきてしまうとのこと。
「へぇ……」
壺はそれなりに大きいが、さすがに女の子が隠れられるほどではない。
この狭い中にどんな女の子が入っているのだろうか。
好奇心に火がついた私は、その壺を家に持って帰ってみることにした。
「よいしょ……っと」
幸い中には何も入っていないかのように軽かったので、道具がなくても持って帰ることはできた。
中を覗き込まないようにするのに少し神経は使ったが。
私は一人で住んでいる1Kのアパートの中に壺を運び込むと、部屋の真ん中に置いた。
「重いもの……ダンベル、は流石にまずいか……米袋でいいかな」
以前、実家から送られてきた5kgの米袋を持ってきて、壺の中に落としてみる。
当然米袋は壺の中に吸い込まれていき、
「――ぎゃっ!?」
何かがぶつかる鈍い音。
その突如、幼い女の子の悲鳴が響く。
そして壺からぽんと飛び出してくる褐色肌の幼女。
「……きゅう」
少女はうつぶせで床に投げ出されると、そのまま動かなくなった。
私は気絶した少女をベッドに寝かせ、起きるのを近くで座って待つことにした。
褐色肌の少女は空色の綺麗なショートヘアで、見るからに幼く小さく、小学生程度にしか見えない。
したがって胸もぺたんこであり、手足も細い。魔物には到底見えなかった。
着ているものも胸だけを隠す薄いチューブトップのようなものに、腰巻のような布きれだけ。浮浪児と言っても差し支えないほどの薄着だ。
「う……うぅ」
呻き声を上げながら、上半身を起こした少女が目を開ける。
オレンジ色の瞳は私を見るや否や怯えの表情に変わり、彼女はベッドの上で後ずさる。
「はっ……、あ、あなたですかっ?!ボクの壺に物を投げ込んだのはっ!?」
「あ……はい、そうです」
「なんてことをしてくれるんですかぁっ……!」
「ご、ごめん」
少女は怯えながらも私を見て、声を荒げる。
まあ、怒られるのは当然のことであった。
「ううぅ……こんなコトなら、ラタトスクさんにちゃんと情報を書き換えてもらってからこっちに来るべきだった……。
大体タネがバレたら終わりなのに、すぐに逃げなかったボクもボクだし……」
何かをぶつぶつと呟いている女の子は、私を見たり俯いたりを繰り返す。
「ど、どうせ……あなたもボクにヒドイ事するんでしょう?」
「えっ」
「昔に捕まった同胞の中には、数人がかり、いいえ数十人でレイプされた子もいたとか……。
代わる代わる休む暇もなく犯されて、精液の匂いが取れなくなるまで慰み者に……ああっ、なんてうらや……恐ろしいっ……」
少女は自分の肩を抱きすくめ、ぶるぶると震える。
恐怖の声色――の割には、どこか恍惚さも入り混じった少女の顔。
「ちょ、ちょっと待って。なんか勘違いしてないか」
「え?」
「私はちょっと好奇心で物を入れただけで、何もそこまでする気は……」
「……犯したりしないんですか?」
「しないよ」
「……ホントに?」
「ほんとに」
私がそう言うと、少女は落胆と安心の入り混じった、何とも言い難い表情になる。
「はぁ……なんだか拍子抜けしちゃいました」
「ところで、どうしてあんな所に?」
「ベツに……深い理由なんてありませんよ。
段ボール箱はちょうど近くにあっただけで、ただ……」
「ただ?」
「この町にいると、男が捕まりやすいっていうウワサが……それでいてもたってもいられず」
「……」
確かにこの町は男性の比率も多く、また若年層の人数比も高いらしい。そして反魔物領でもない。
近くには魔物専用のマンションまであるというウワサが立っているが、真偽のほどは知らない。
「でも……やっぱりダメだったんですね。
ボクたちつぼまじんは、壺を覗きこんだ人を捕まえるだけの魔物……。
他の子みたいにスタイルも良くないちんちくりんだし、外だと魅了する魔法も使えないし……。
ひどい時には、魔物なのに男の子と間違われたりもしたし……。
壺から出たボクなんて、なんの魅力もないんだ……」
オレンジの瞳が潤みはじめ、次第に泣きそうな声になっていく少女。
「そんなことはないよ」
「……ふえっ?」
「私は君の空みたいな色の髪が綺麗だと思うし、小さな胸もいいと思う。
なにより可愛い顔をしてるんだから、泣いて顔をぐしゃぐしゃにするのはもったいないよ」
「……ぅ」
自分でもちょっと恥ずかしい事を言ったかなと思うが、少女は私より顔を赤らめているように見えた。
「ボク……そんなコト言われたの、初めてです」
「私も、言ったのは初めてだ」
彼女は布団をぎゅっと掴んだままもじもじとしている。
「あ……ご、ごめんなさい。ボク、名前も言ってませんでしたね。
ボクはソラっていいます。あなたは?」
「優太(ゆうた)だよ」
「ユータ……あっ、やっぱり『お兄さん』って呼んでもいいですか?」
「え?あ、ああ」
「えへへぇ……これからよろしくお願いしますね、お兄さん」
そう言うとソラは照れ交じりに眩しく笑った。その顔は泣き顔よりも似合っていたと思う。
けれど『お兄さん』と言われると、まるで年の離れた妹が出来た気分だ。
「よろしく、……って、まさか」
「はい!ボク、ここに住みたいですっ」
一度泣きそうになったかと思えば、とんでもないことを言ってのける。
しかし屈託のない笑顔は純情そのもので、断るのも気が引けてしまう。
こんな子にそう言ってもらえるのは嬉しいが、二つ返事で了承することはできない。
「と言われても……うちに二人も住めるかなぁ」
「大丈夫です!ボクの家はツボみたいなものですから、あのツボを置いて頂けるだけでいいんです!
ごはんも、お兄さんの精があればそれだけで!」
「精って……」
「もちろんお兄さんの……せ、セイエキ、です」
また顔を赤らめながらつぶやくソラ。
確かにさっきつぼまじんについて調べたときもそんなことが書いてあった。
「いやでも、君はまだ子供じゃあ……」
「そ、そんなこと関係ないです!それにボクだってもう立派な大人です!
ううぅ……確かにボク、背も低いし胸もぺたんこ、男の子みたいだしスタイルだって良くないけど……」
「あ、ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃなくて……。
ただそれにしたって、順序ってものがあるから」
「順序……」
「そう。会っていきなり……っていうわけにはいかないよ。
そういうコトはお互いを知りあってからじゃないと」
「でもボクたち魔物には『思い立ったがすぐ臨月』って言葉があるくらいで……」
「なにそれこわい」
「うぅ……それじゃ、今はボクとシてくれないんですね……」
この子は……恥ずかしがりの割に変なところでとても積極的だ。
その気になれば、今この場で手籠めにしてしまっても拒否されることは――いやいや。
人間としての理性が流石にそれを許さない。
「じゃあ……ちょっとだけ」
私は立ち上がり身を屈ませ、ベッドにいるソラに顔を近づけていく。
それを察したソラはきゅっと目を瞑り、息を止めた。
軽く、唇の触れるキス。
「――っ」
グミのように柔らかい唇の感触。
私の唇が離れても、しばらくソラは目を瞑ったままだった。
その必死な表情を見ていると、ますます押し倒したくなる気持ちが湧いてくる――のを抑える。
「続きは、もっと君の事を知ってからね」
「……ふぁいぃ」
軽いキスなのに、それでも蕩けてしまったソラの顔が印象的だった。
私とソラが出会い、それから一週間が過ぎた。
正直なところ、妹が居候してきたぐらいにしか思えなかったのだが、ソラは不慣れながらも甲斐甲斐しく家事を手伝ってくれる。
料理は、そもそも彼女自身が普通のご飯を食べないこともありまだ下手だが、ぐんぐんと手際は良くなっている。
私が仕事に行っている間に掃除や洗濯もしておいてくれる。
何より私が帰ってきたときに『おかえりなさい』と言ってくれる。
これは一人暮らしの私にとってとても有り難かった。
「おかえりなさい。おゆはんできてますよ」
「うん、いつもありがとう」
……ただ、難点もあるにはある。
「んんっ……お兄さん、ただいまのキス、ちゃんとしてくださいっ」
「あ……ごめん」
「んむっ……へへっ」
それは何かとスキンシップを求めてくることだ。
何かあれば、頭を撫でてほしいとか、キスをして欲しいとか、抱きしめてほしいとか――。
幸いまだ襲ったりはしていないが、このままでは私の理性がいつ崩壊してもおかしくない。
が、極めつけは夜になってからだ。
「ふぁ……おやすみなさい、お兄さん」
「あ、ああ……おやすみ」
三日目ぐらいまではソラは壺の中に戻って寝ていたはずなのに、いつの間にか一緒のベッドに寝るようになってしまった。
距離もどんどん近くなり、今では彼女をほとんど抱き枕代わりにしてしまっている。
彼女の肢体は抱きしめるとマシュマロのようにぷにぷにと柔らかく、髪や身体からは新緑のような瑞々しい匂いがする。
それだけならまだいいのだが、
「……んっ……ふっ」
一緒に寝ていると、艶っぽい声と水音が微かに聞こえてくるのだ。
「ふぁ……ぁぁ……」
明らかにソラは自分を慰めている。それも私が寝ている目の前で。
新緑の匂いに、甘い淫らなメスの匂いが混じって、鼻孔をくすぐる。
その行動は私を誘惑しているようにしか見えず、何度欲望に負けそうになったか分からない。
それでも、辛うじて手を出すことはなかった。
「んぅ……っ……もぉっ……」
だが……人理を超えた魔物の誘惑に、人間が勝てるはずもない。
二週間後。
彼女は珍しく、帰ってきた私にスキンシップを要求しなかった。
その代わりのように、一つ頼みごとをしてきた。
「お兄さん。お米が切れちゃったので、ボクの壺の中に入ったままの米袋を取ってもらえませんか?」
「ああ、そういえば……」
あの米袋、入れたままで元に戻すのをすっかり忘れていた。
「今はボクが入っていませんから、壺を覗き込んでも大丈夫ですよ……ふふっ」
そういうものなのか、と納得しながら私は部屋の隅に置いてある壺を見る。
中を覗き込む。
「――うわぁっ?!」
その瞬間、私の身体は壺の中に吸い込まれ、意識を失った。
「……さん。お兄さん、起きてください」
ソラの声と、体を揺する振動で目が覚める。
周りを見渡してみると、そこは地平線まで真っ白い風景。
私はその真ん中にある大きなベッドの上に寝かされていた。
そして横には――褐色肌の小さな裸体を恥ずかしそうに隠す、ソラの姿。
「そ、ソラ? ここは……」
傍らに座っているソラは、心から嬉しそうににんまりと笑う。
「ここはボクが作り出した、ボクだけの……いいえ、ボクとお兄さんだけのセカイ。
他にはなあんにもありません。
ここでなら好きなだけ、交わることができます……」
「なっ……」
壺を覗き込んだらここに連れてこられた。
言うまでもなくこの場所は、彼女が作り出した異次元だろう。
「う、ウソを付いたのか?もうツボを覗き込んでも大丈夫だって……」
「ウソなんて付いてませんよぉ。覗いても大丈夫――って言っただけじゃないですか、ボク。
吸い込まれないなんて、ヒトコトも言ってませんよね」
「う……」
その笑顔は、台詞も相まって小悪魔のようにも見えた。
努めて冷静になろうとするが、なぜか意識が混濁し、体に変化が起こり始めている。
「それで……どうすればここから出られる?」
「簡単ですよぉ。ボクが満足するまで……せ、セックス……するだけ、ですからっ」
「そ、んな……ぐっ、身体が……」
さっきから体の様子がおかしい。
今まで発散していなかったから、というレベルでは説明できないほどに身体が興奮している。
股間が張りつめて、今にも射精してしまいそうな――。
「この世界に入った男の人は、みんな欲望に素直になっちゃうんです。
だからぁ……今までガマンしていた分、全部ボクに吐き出しちゃっていいんだよ……?
お兄さんがいっぱい溜めてるの、ボク知ってるんだから……♪」
「あ……ああぁ……」
耳元での囁きに耐え切れず、私は下着ごと下半身の服を脱ぎ捨てる。
そして獣のように、ソラをベッドへ押し倒した。
そのまま覆いかぶさるようにして、正常位の体位になる。
「初めてだから、ちょ、ちょっとだけコワいけど……お兄さんならボク、何されてもっ……」
限界までいきり立ったペニスを、ぴっちりと閉じたソラの小さな秘部に押し当てる。
濡れてはいるが、その穴はとても小さい。
無理にこじ開けようとすると壊してしまいそうな、そんな危うさがあった。
「あ、ぁぁ……ボクのなか、はいって、くるぅ……っ」
僅かに残った理性が働いたのか、乱暴には突き入れず、ゆっくりとソラの中に入っていく。
ぬちゅ……ずっ、じゅぷぷぷっ……。
見た目通りにキツい締め付けが、幾重ものヒダが、よりペニスを昂ぶらせる。
「はぁぁっ、ああ……ぜ、ぜんぶ、はいったぁ……」
小さな性器は、私の肉棒を根元まで貪欲に飲み込んだ。ソラのお腹のあたりが少しだけ膨らんでいる。
そこを撫でてやると、ソラは背中をのけ反らせながら快感に震えていた。
「は、はやくぅ……ボクを、めちゃくちゃに、してぇっ……♪」
その言葉が合図となり、私は初めから強くピストン運動を行う。
ずちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ、ぱちゅっ。
すっかり滑りの良くなったぬるぬるの膣内に、ペニスが何回も突き入れられる。
「んぅっ、あぁっ、いっ、いいよぉっ、もっと、もっとおっ!」
秘部を抉るたびにナカの肉壁がむっちりと絡み付いてきて、凄まじい快感を生み出す。
ソラも奥を突くたびに嬌声を上げ、膣をぎゅっと締め付けてくる。
あまりにも心地の良い膣中に、私のペニスは射精寸前だった。
「おに、さぁんっ、へ、へんなのっ、かんじ、すぎて、こわいのぉっ……!
ぎゅっ、て、ぎゅって、してぇっ……!」
無意識のうちに、私は快感で跳ねるソラの小さな体をぎゅっと抱きしめる。
その柔らかさと秘部の締めつけ具合が重なり合い、身体が蕩けそうになった。
「い、いくっ、ボク、もう、いっちゃうっ……!」
そして出すまで離さないと言わんばかりに、ソラの細い両足が私の背中に回される。
「ら、らしてぇ……ボクの、中に、いっぱいっ……ふひゃあぁっっ!!!!」
一番奥まで突き入れた瞬間、ソラの膣内にびゅくん、びゅくんと射精する。
一滴残らず搾り取られるような感覚に腰が抜けてしまいそうになるが、背中に回された足のせいで快感を逃がすこともできない。
子宮の中まで染め上げるような勢いで、精液が飛び出していった。
「はーっ……はーっ……♪とんじゃうかと、おもったぁ……っ。
お兄さんのセイエキ……ナカにいっぱい出てるぅ……♪」
荒い呼吸を整えながら、ソラは自分の小さなお腹を撫でる。
その様子がとても愛おしくて、私はソラにキスをした。
「んむぅっ……はぁっ……、お兄さん、もっと、もっとぉ……♪」
まだまだ冷めやらない熱気が、二人の間に灯る。
ペニスはソラの膣内でまた硬さを取り戻し、むくむくと肉壁を押し上げる。
「えへへぇ……まだまだ、ボクは満足してませんよぉ……。
二人とも、意識が飛んじゃうまで……ずーっと繋がっていましょうねぇ……♪」
少しだけ理性を取り戻した私は、ソラの身体を丹念に愛撫し始めた。
ソラの綺麗な唇、小さな乳房、柔らかいお腹、褐色の肌――全てが愛らしく思える。
今まで我慢していた分を吐き出す交尾は、まだまだ終わりそうになかった。
気が付くと、私はまたベッドの上に寝ていた。
今度は白い異次元ではなく、私のアパートの中だった。
「お、お兄さん……大丈夫ですか?」
心配そうなオレンジの瞳が私を覗き込む。
……身体中がだるい。上半身を持ち上げるので精一杯だ。
「なん、とか……」
「よかった!ボク、ずっと心配してたんです……!」
この後遺症はもちろん、あのツボの中での出来事のせいだろう。
何しろ覚えているだけでも三回はソラの中に――いや、やめておこう。
「ごめんなさい……ボクのせいで、こんなに疲れさせちゃって……。
お兄さんを騙して……襲わせるように仕向けて。
こんなボクのこと、嫌いになりました……よね……ぐすっ……」
ソラの瞳は潤みはじめ、今にも泣き出しそうになる。
私は重い身体を引きずりながら、ソラの頭をゆっくり撫でた。
「……だから、泣いちゃだめだよ。綺麗な顔がもったいない。
今思えば、君の想いを無下にしていたこっちにも責任があったんだ。
鈍感だった私を、許してほしい」
「そんな……許すだなんて、ボクのほうこそ……」
そう言うと、ソラはまだ泣きそうな顔のまま、困惑した表情で私を見る。
「じゃあ……私が良くなるまで、添い寝していてほしいんだ。
これならいいかな」
それを聞いて、ソラの表情がぱっと明るくなる。
「は……はいっ」
もぞもぞと、彼女の小さな体が布団の中に入ってくる。
向かい合って寝ると、ソラがまじまじと顔を見つめてきた。
「……お兄さん。優太さん」
瞬きをした一瞬の間に、ソラが自分からキスをしてくる。
いつも受身な彼女からの、初めての口づけだった。
「だいすき、ですっ」
”ひろってください”と書かれた段ボールの中。
普通なら入っているのは子猫か子犬と相場が決まっているものだ。だが――
「……ツボ」
壺。
どこからどう見ても壺が段ボール箱の中に入っている。
調度品には詳しくないので値打ち物かどうかまではよく分からないが、中世にありそうな見た目の壺で日本製には見えない。
不法投棄されているようにしか見えないが、どこか壊れているという事もなさそうだ。
「つぼだー」
「ツボだね」
「ツボですね」
私の横を三人組の少女たちが通る。ランドセルを背負っているから下校中なのだろう。
『アリス』に『デビル』、『稲荷』と魔物娘の揃い踏みである。
三人とも幼い(稲荷以外はずっとそう見えるだろうが)ので、見る人によっては眼福に違いない。
「あれってどう見てもー……」
「アレだな」
「魔力からしてそうですわね」
……どういうことなのだろうか。
「ほっといていーのかなー?」
「いいんじゃない?」
「あの子も精が欲しいのでしょうし……そっとしておきましょう」
「ほっといたらあのおにーさん引っ掛かりそーだけどー」
「んー、ドーテーっぽい匂いだなあ……けどアタシたち、学校卒業するまでは襲っちゃダメって決まりだし」
「まあ、そうなのですか?……しかし、決まりは決まりです。とても名残惜しいですが、ここは身を引きましょうか」
そんな事を言いながら、三人組の少女は歩いて行ってしまう。
好き勝手言われていたような気もするが、何となく察しはついた。
この壺はタダの壺ではないのだろう。
スマートフォンで調べればすぐに情報は出てきた。
壺に擬態する魔物、つぼまじんである。
「なるほど」
「……」
私は一人ごちる。壺がかすかに震えたのは気のせいだっただろうか。
彼女たちは壺に擬態し、覗き込んだものを中に引きずり込む魔物だそうだ。
そして一度覗き込んでしまえば逃れる術はない、という恐ろしい魔物である。
あの子たちの話を聞いていなければ、きっと私は壺の中を覗き込んでしまっていただろう。
「……っ」
どこからか小さい声が聞こえたが、誰が発したのかは分からない。
また、彼女たちに対する対処法は簡単で、壺の中に物を投げ入れることらしい。
軽いものでも驚いて逃げてしまうし、重いものであれば中でぶつかって気絶して出てきてしまうとのこと。
「へぇ……」
壺はそれなりに大きいが、さすがに女の子が隠れられるほどではない。
この狭い中にどんな女の子が入っているのだろうか。
好奇心に火がついた私は、その壺を家に持って帰ってみることにした。
「よいしょ……っと」
幸い中には何も入っていないかのように軽かったので、道具がなくても持って帰ることはできた。
中を覗き込まないようにするのに少し神経は使ったが。
私は一人で住んでいる1Kのアパートの中に壺を運び込むと、部屋の真ん中に置いた。
「重いもの……ダンベル、は流石にまずいか……米袋でいいかな」
以前、実家から送られてきた5kgの米袋を持ってきて、壺の中に落としてみる。
当然米袋は壺の中に吸い込まれていき、
「――ぎゃっ!?」
何かがぶつかる鈍い音。
その突如、幼い女の子の悲鳴が響く。
そして壺からぽんと飛び出してくる褐色肌の幼女。
「……きゅう」
少女はうつぶせで床に投げ出されると、そのまま動かなくなった。
私は気絶した少女をベッドに寝かせ、起きるのを近くで座って待つことにした。
褐色肌の少女は空色の綺麗なショートヘアで、見るからに幼く小さく、小学生程度にしか見えない。
したがって胸もぺたんこであり、手足も細い。魔物には到底見えなかった。
着ているものも胸だけを隠す薄いチューブトップのようなものに、腰巻のような布きれだけ。浮浪児と言っても差し支えないほどの薄着だ。
「う……うぅ」
呻き声を上げながら、上半身を起こした少女が目を開ける。
オレンジ色の瞳は私を見るや否や怯えの表情に変わり、彼女はベッドの上で後ずさる。
「はっ……、あ、あなたですかっ?!ボクの壺に物を投げ込んだのはっ!?」
「あ……はい、そうです」
「なんてことをしてくれるんですかぁっ……!」
「ご、ごめん」
少女は怯えながらも私を見て、声を荒げる。
まあ、怒られるのは当然のことであった。
「ううぅ……こんなコトなら、ラタトスクさんにちゃんと情報を書き換えてもらってからこっちに来るべきだった……。
大体タネがバレたら終わりなのに、すぐに逃げなかったボクもボクだし……」
何かをぶつぶつと呟いている女の子は、私を見たり俯いたりを繰り返す。
「ど、どうせ……あなたもボクにヒドイ事するんでしょう?」
「えっ」
「昔に捕まった同胞の中には、数人がかり、いいえ数十人でレイプされた子もいたとか……。
代わる代わる休む暇もなく犯されて、精液の匂いが取れなくなるまで慰み者に……ああっ、なんてうらや……恐ろしいっ……」
少女は自分の肩を抱きすくめ、ぶるぶると震える。
恐怖の声色――の割には、どこか恍惚さも入り混じった少女の顔。
「ちょ、ちょっと待って。なんか勘違いしてないか」
「え?」
「私はちょっと好奇心で物を入れただけで、何もそこまでする気は……」
「……犯したりしないんですか?」
「しないよ」
「……ホントに?」
「ほんとに」
私がそう言うと、少女は落胆と安心の入り混じった、何とも言い難い表情になる。
「はぁ……なんだか拍子抜けしちゃいました」
「ところで、どうしてあんな所に?」
「ベツに……深い理由なんてありませんよ。
段ボール箱はちょうど近くにあっただけで、ただ……」
「ただ?」
「この町にいると、男が捕まりやすいっていうウワサが……それでいてもたってもいられず」
「……」
確かにこの町は男性の比率も多く、また若年層の人数比も高いらしい。そして反魔物領でもない。
近くには魔物専用のマンションまであるというウワサが立っているが、真偽のほどは知らない。
「でも……やっぱりダメだったんですね。
ボクたちつぼまじんは、壺を覗きこんだ人を捕まえるだけの魔物……。
他の子みたいにスタイルも良くないちんちくりんだし、外だと魅了する魔法も使えないし……。
ひどい時には、魔物なのに男の子と間違われたりもしたし……。
壺から出たボクなんて、なんの魅力もないんだ……」
オレンジの瞳が潤みはじめ、次第に泣きそうな声になっていく少女。
「そんなことはないよ」
「……ふえっ?」
「私は君の空みたいな色の髪が綺麗だと思うし、小さな胸もいいと思う。
なにより可愛い顔をしてるんだから、泣いて顔をぐしゃぐしゃにするのはもったいないよ」
「……ぅ」
自分でもちょっと恥ずかしい事を言ったかなと思うが、少女は私より顔を赤らめているように見えた。
「ボク……そんなコト言われたの、初めてです」
「私も、言ったのは初めてだ」
彼女は布団をぎゅっと掴んだままもじもじとしている。
「あ……ご、ごめんなさい。ボク、名前も言ってませんでしたね。
ボクはソラっていいます。あなたは?」
「優太(ゆうた)だよ」
「ユータ……あっ、やっぱり『お兄さん』って呼んでもいいですか?」
「え?あ、ああ」
「えへへぇ……これからよろしくお願いしますね、お兄さん」
そう言うとソラは照れ交じりに眩しく笑った。その顔は泣き顔よりも似合っていたと思う。
けれど『お兄さん』と言われると、まるで年の離れた妹が出来た気分だ。
「よろしく、……って、まさか」
「はい!ボク、ここに住みたいですっ」
一度泣きそうになったかと思えば、とんでもないことを言ってのける。
しかし屈託のない笑顔は純情そのもので、断るのも気が引けてしまう。
こんな子にそう言ってもらえるのは嬉しいが、二つ返事で了承することはできない。
「と言われても……うちに二人も住めるかなぁ」
「大丈夫です!ボクの家はツボみたいなものですから、あのツボを置いて頂けるだけでいいんです!
ごはんも、お兄さんの精があればそれだけで!」
「精って……」
「もちろんお兄さんの……せ、セイエキ、です」
また顔を赤らめながらつぶやくソラ。
確かにさっきつぼまじんについて調べたときもそんなことが書いてあった。
「いやでも、君はまだ子供じゃあ……」
「そ、そんなこと関係ないです!それにボクだってもう立派な大人です!
ううぅ……確かにボク、背も低いし胸もぺたんこ、男の子みたいだしスタイルだって良くないけど……」
「あ、ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃなくて……。
ただそれにしたって、順序ってものがあるから」
「順序……」
「そう。会っていきなり……っていうわけにはいかないよ。
そういうコトはお互いを知りあってからじゃないと」
「でもボクたち魔物には『思い立ったがすぐ臨月』って言葉があるくらいで……」
「なにそれこわい」
「うぅ……それじゃ、今はボクとシてくれないんですね……」
この子は……恥ずかしがりの割に変なところでとても積極的だ。
その気になれば、今この場で手籠めにしてしまっても拒否されることは――いやいや。
人間としての理性が流石にそれを許さない。
「じゃあ……ちょっとだけ」
私は立ち上がり身を屈ませ、ベッドにいるソラに顔を近づけていく。
それを察したソラはきゅっと目を瞑り、息を止めた。
軽く、唇の触れるキス。
「――っ」
グミのように柔らかい唇の感触。
私の唇が離れても、しばらくソラは目を瞑ったままだった。
その必死な表情を見ていると、ますます押し倒したくなる気持ちが湧いてくる――のを抑える。
「続きは、もっと君の事を知ってからね」
「……ふぁいぃ」
軽いキスなのに、それでも蕩けてしまったソラの顔が印象的だった。
私とソラが出会い、それから一週間が過ぎた。
正直なところ、妹が居候してきたぐらいにしか思えなかったのだが、ソラは不慣れながらも甲斐甲斐しく家事を手伝ってくれる。
料理は、そもそも彼女自身が普通のご飯を食べないこともありまだ下手だが、ぐんぐんと手際は良くなっている。
私が仕事に行っている間に掃除や洗濯もしておいてくれる。
何より私が帰ってきたときに『おかえりなさい』と言ってくれる。
これは一人暮らしの私にとってとても有り難かった。
「おかえりなさい。おゆはんできてますよ」
「うん、いつもありがとう」
……ただ、難点もあるにはある。
「んんっ……お兄さん、ただいまのキス、ちゃんとしてくださいっ」
「あ……ごめん」
「んむっ……へへっ」
それは何かとスキンシップを求めてくることだ。
何かあれば、頭を撫でてほしいとか、キスをして欲しいとか、抱きしめてほしいとか――。
幸いまだ襲ったりはしていないが、このままでは私の理性がいつ崩壊してもおかしくない。
が、極めつけは夜になってからだ。
「ふぁ……おやすみなさい、お兄さん」
「あ、ああ……おやすみ」
三日目ぐらいまではソラは壺の中に戻って寝ていたはずなのに、いつの間にか一緒のベッドに寝るようになってしまった。
距離もどんどん近くなり、今では彼女をほとんど抱き枕代わりにしてしまっている。
彼女の肢体は抱きしめるとマシュマロのようにぷにぷにと柔らかく、髪や身体からは新緑のような瑞々しい匂いがする。
それだけならまだいいのだが、
「……んっ……ふっ」
一緒に寝ていると、艶っぽい声と水音が微かに聞こえてくるのだ。
「ふぁ……ぁぁ……」
明らかにソラは自分を慰めている。それも私が寝ている目の前で。
新緑の匂いに、甘い淫らなメスの匂いが混じって、鼻孔をくすぐる。
その行動は私を誘惑しているようにしか見えず、何度欲望に負けそうになったか分からない。
それでも、辛うじて手を出すことはなかった。
「んぅ……っ……もぉっ……」
だが……人理を超えた魔物の誘惑に、人間が勝てるはずもない。
二週間後。
彼女は珍しく、帰ってきた私にスキンシップを要求しなかった。
その代わりのように、一つ頼みごとをしてきた。
「お兄さん。お米が切れちゃったので、ボクの壺の中に入ったままの米袋を取ってもらえませんか?」
「ああ、そういえば……」
あの米袋、入れたままで元に戻すのをすっかり忘れていた。
「今はボクが入っていませんから、壺を覗き込んでも大丈夫ですよ……ふふっ」
そういうものなのか、と納得しながら私は部屋の隅に置いてある壺を見る。
中を覗き込む。
「――うわぁっ?!」
その瞬間、私の身体は壺の中に吸い込まれ、意識を失った。
「……さん。お兄さん、起きてください」
ソラの声と、体を揺する振動で目が覚める。
周りを見渡してみると、そこは地平線まで真っ白い風景。
私はその真ん中にある大きなベッドの上に寝かされていた。
そして横には――褐色肌の小さな裸体を恥ずかしそうに隠す、ソラの姿。
「そ、ソラ? ここは……」
傍らに座っているソラは、心から嬉しそうににんまりと笑う。
「ここはボクが作り出した、ボクだけの……いいえ、ボクとお兄さんだけのセカイ。
他にはなあんにもありません。
ここでなら好きなだけ、交わることができます……」
「なっ……」
壺を覗き込んだらここに連れてこられた。
言うまでもなくこの場所は、彼女が作り出した異次元だろう。
「う、ウソを付いたのか?もうツボを覗き込んでも大丈夫だって……」
「ウソなんて付いてませんよぉ。覗いても大丈夫――って言っただけじゃないですか、ボク。
吸い込まれないなんて、ヒトコトも言ってませんよね」
「う……」
その笑顔は、台詞も相まって小悪魔のようにも見えた。
努めて冷静になろうとするが、なぜか意識が混濁し、体に変化が起こり始めている。
「それで……どうすればここから出られる?」
「簡単ですよぉ。ボクが満足するまで……せ、セックス……するだけ、ですからっ」
「そ、んな……ぐっ、身体が……」
さっきから体の様子がおかしい。
今まで発散していなかったから、というレベルでは説明できないほどに身体が興奮している。
股間が張りつめて、今にも射精してしまいそうな――。
「この世界に入った男の人は、みんな欲望に素直になっちゃうんです。
だからぁ……今までガマンしていた分、全部ボクに吐き出しちゃっていいんだよ……?
お兄さんがいっぱい溜めてるの、ボク知ってるんだから……♪」
「あ……ああぁ……」
耳元での囁きに耐え切れず、私は下着ごと下半身の服を脱ぎ捨てる。
そして獣のように、ソラをベッドへ押し倒した。
そのまま覆いかぶさるようにして、正常位の体位になる。
「初めてだから、ちょ、ちょっとだけコワいけど……お兄さんならボク、何されてもっ……」
限界までいきり立ったペニスを、ぴっちりと閉じたソラの小さな秘部に押し当てる。
濡れてはいるが、その穴はとても小さい。
無理にこじ開けようとすると壊してしまいそうな、そんな危うさがあった。
「あ、ぁぁ……ボクのなか、はいって、くるぅ……っ」
僅かに残った理性が働いたのか、乱暴には突き入れず、ゆっくりとソラの中に入っていく。
ぬちゅ……ずっ、じゅぷぷぷっ……。
見た目通りにキツい締め付けが、幾重ものヒダが、よりペニスを昂ぶらせる。
「はぁぁっ、ああ……ぜ、ぜんぶ、はいったぁ……」
小さな性器は、私の肉棒を根元まで貪欲に飲み込んだ。ソラのお腹のあたりが少しだけ膨らんでいる。
そこを撫でてやると、ソラは背中をのけ反らせながら快感に震えていた。
「は、はやくぅ……ボクを、めちゃくちゃに、してぇっ……♪」
その言葉が合図となり、私は初めから強くピストン運動を行う。
ずちゅっ、ぐちゅっ、ぬちゅっ、ぱちゅっ。
すっかり滑りの良くなったぬるぬるの膣内に、ペニスが何回も突き入れられる。
「んぅっ、あぁっ、いっ、いいよぉっ、もっと、もっとおっ!」
秘部を抉るたびにナカの肉壁がむっちりと絡み付いてきて、凄まじい快感を生み出す。
ソラも奥を突くたびに嬌声を上げ、膣をぎゅっと締め付けてくる。
あまりにも心地の良い膣中に、私のペニスは射精寸前だった。
「おに、さぁんっ、へ、へんなのっ、かんじ、すぎて、こわいのぉっ……!
ぎゅっ、て、ぎゅって、してぇっ……!」
無意識のうちに、私は快感で跳ねるソラの小さな体をぎゅっと抱きしめる。
その柔らかさと秘部の締めつけ具合が重なり合い、身体が蕩けそうになった。
「い、いくっ、ボク、もう、いっちゃうっ……!」
そして出すまで離さないと言わんばかりに、ソラの細い両足が私の背中に回される。
「ら、らしてぇ……ボクの、中に、いっぱいっ……ふひゃあぁっっ!!!!」
一番奥まで突き入れた瞬間、ソラの膣内にびゅくん、びゅくんと射精する。
一滴残らず搾り取られるような感覚に腰が抜けてしまいそうになるが、背中に回された足のせいで快感を逃がすこともできない。
子宮の中まで染め上げるような勢いで、精液が飛び出していった。
「はーっ……はーっ……♪とんじゃうかと、おもったぁ……っ。
お兄さんのセイエキ……ナカにいっぱい出てるぅ……♪」
荒い呼吸を整えながら、ソラは自分の小さなお腹を撫でる。
その様子がとても愛おしくて、私はソラにキスをした。
「んむぅっ……はぁっ……、お兄さん、もっと、もっとぉ……♪」
まだまだ冷めやらない熱気が、二人の間に灯る。
ペニスはソラの膣内でまた硬さを取り戻し、むくむくと肉壁を押し上げる。
「えへへぇ……まだまだ、ボクは満足してませんよぉ……。
二人とも、意識が飛んじゃうまで……ずーっと繋がっていましょうねぇ……♪」
少しだけ理性を取り戻した私は、ソラの身体を丹念に愛撫し始めた。
ソラの綺麗な唇、小さな乳房、柔らかいお腹、褐色の肌――全てが愛らしく思える。
今まで我慢していた分を吐き出す交尾は、まだまだ終わりそうになかった。
気が付くと、私はまたベッドの上に寝ていた。
今度は白い異次元ではなく、私のアパートの中だった。
「お、お兄さん……大丈夫ですか?」
心配そうなオレンジの瞳が私を覗き込む。
……身体中がだるい。上半身を持ち上げるので精一杯だ。
「なん、とか……」
「よかった!ボク、ずっと心配してたんです……!」
この後遺症はもちろん、あのツボの中での出来事のせいだろう。
何しろ覚えているだけでも三回はソラの中に――いや、やめておこう。
「ごめんなさい……ボクのせいで、こんなに疲れさせちゃって……。
お兄さんを騙して……襲わせるように仕向けて。
こんなボクのこと、嫌いになりました……よね……ぐすっ……」
ソラの瞳は潤みはじめ、今にも泣き出しそうになる。
私は重い身体を引きずりながら、ソラの頭をゆっくり撫でた。
「……だから、泣いちゃだめだよ。綺麗な顔がもったいない。
今思えば、君の想いを無下にしていたこっちにも責任があったんだ。
鈍感だった私を、許してほしい」
「そんな……許すだなんて、ボクのほうこそ……」
そう言うと、ソラはまだ泣きそうな顔のまま、困惑した表情で私を見る。
「じゃあ……私が良くなるまで、添い寝していてほしいんだ。
これならいいかな」
それを聞いて、ソラの表情がぱっと明るくなる。
「は……はいっ」
もぞもぞと、彼女の小さな体が布団の中に入ってくる。
向かい合って寝ると、ソラがまじまじと顔を見つめてきた。
「……お兄さん。優太さん」
瞬きをした一瞬の間に、ソラが自分からキスをしてくる。
いつも受身な彼女からの、初めての口づけだった。
「だいすき、ですっ」
18/07/10 19:17更新 / しおやき