読切小説
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捨てゲイザーちゃんを拾ったら
 日が暮れかけたいつもの帰り道、人通りの少ない閑静な住宅街、アスファルトの道路の上。
 ”ひろってください”と書かれた段ボールの中。
 普通なら入っているのは子猫か子犬と相場が決まっているものだ。だが――

「……」

 そこに入っていたのは歪な姿をした少女”らしきもの”。
 身体だけ見れば、肩ほどまで伸びた癖っ毛な黒髪に、真っ白い肌をした女の子だ。
 年恰好は小学生か中学生ぐらいの子供である。
 だが、背中から黒い触手のようなものが十本ほど生えている。うねうねと動くそれには先端に赤い目玉が付いていて、作り物には到底見えず、彼女が人間でないことを顕著に表していた。
 それに服を着ていない。けれど、腕や足の肌には何か黒いものが張り付いており、さながら黒い手袋と靴下を履いているようにも見える。
 少女らしきものは、段ボール箱の中で背を丸め、顔を伏せ、膝に押し付けるようにして体育座りをしていた。

「……」

 僕は10メートルほど離れた場所からその様子を伺っていた。
 そして携帯電話を取り出して、彼女の特徴を打ち込んで検索サイトで調べてみる。
 前に何かの本で読んだことがあるが、確か彼女は『魔物娘』というやつで、人間ではないのだ。
 魔物娘というのがどういう種族なのか、僕自身はあんまりよく知らないが――人類と共存関係にあることは知っている。一部の学校では彼女たち専用のクラスがあるらしいけど、僕の学校にはそもそも魔物娘がいなかった。ただ、道端を歩いていればたまに出会うこともある。みんな整った顔立ちをしているのが印象的だ。
 彼女たちが初めて現れたのは何十年も前の話らしいので、僕が生まれる前のことである。

「……ぅ」

 顔を伏せたままほとんど動かない少女を観察しながら、画像検索を掛ける。すると、彼女に似た風貌の写真が出てきて、そこには『ゲイザー』という名前が記されていた。
 そうだ、彼女はゲイザー。
 その魔物娘の姿はとても印象的だったので、ある一点だけは僕も覚えていた。
 それは彼女たちに『目が一つしかない』ということだ。
 サイトに出てきた画像も、顔に大きな目が一つあるだけ、という少女のものだった。
 僕は本物のゲイザーを見るのは初めてだ。サイトにも書かれているが、彼女たちは珍しい個体らしいから、そのせいだろう。
 ゲイザーは”暗示”と呼ばれる力を使って、人の心を操れるらしいが――あまり詳しくは載っていない。
 あと彼女らは基本的に服を着ないようだが、それもなんというか、目のやり場に困る。

「……ううぅ」

 彼女に少しずつ近づいてみると、嗚咽のようなものが聞こえる。僕にはまだ気づいていないらしい。
 どうしよう。
 何をしているんだろう。
 なぜ体育座りでうずくまっているんだろう。
 そもそもどうしてこんな所で段ボールに入っているのだろう。
 会社員らしきスーツの男性が止まった僕を追い越し、彼女の前を通り過ぎる。彼はちらりと様子を伺っただけで、関心は見せずに歩き去ってしまった。興味がなかったのかもしれないし、面倒事には関わり合いたくないのかもしれない。彼女も反応は見せない。

「……ぐすっ」

 鼻をすする音が僕の耳まで聞こえる。泣いている、のだろうか。
 もしそうなら、彼女の事情がどうであれ、放っておくのはためらわれた。

「あの、えっと。 大丈夫?」

 僕は彼女の目前に立ち、恐る恐る話しかける。

「……えぅ……」

 明瞭でない返事。
 ただ、やっぱり泣いていたのだろうということは分かった。

「とりあえず、これを……」
「……」

 僕は珍しく持っていたハンカチを取り出して、彼女に差し出す。
 すると彼女の背中にある触手の目が何本かこっちを見た。
 そして、

「……ありがとう」

 そう言って、僕のハンカチを少女が受け取った。




――――――――――――――――――――――――――――――――――




「落ち着いた?」
「……うん」

 彼女は顔を伏せたまま、返事をする。
 相変わらず顔は上げてくれないが、とりあえず泣くのは収まったらしい。

「何かあったの?」

 そう聞くと、彼女の小さな身体がびくっと震えた。

「……捨てられたの」
「えっ?」
「親が……『家から出ていきなさい』……って……いきなり、言ってきて……。
 ほんとに突然で、理由もなんにも教えてくれなくて……。
 気が付いたら、知らない街にいたの……」
「そんな……」

 あまりの出来事に言葉に詰まる。
 もしこれが人間の子供であれば、立派な虐待と言っていいだろう。彼女たちに人間と同じ法律と倫理観が適当かどうかは分からないが。

「それで……、どこにも行くあてなくて、でもこれじゃダメだって思って……。
 思いきって、知らないヒトだったけど、男の人に……『助けて』って、声を掛けてみたの……。
 そしたら……その人……ぐすっ、」

 彼女の言葉が一度止まって、またゆっくりと話し出す。

「わたしのこと、一目見ただけで……『化け物』って言って……逃げるように走っていってっ……。
 うっ、うぅぅぅ……」

 確かに彼女の姿は普通のヒトから見れば異常な姿だ。僕もゲイザーという種族のことを知らなければきっと驚いていただろう。
 それに珍しい彼女たちのこと、一度もその姿を見たことがない人だってたくさんいるはずだ。
 いたいけな少女になんて言い草だと思わなくもないが、一概に責められる話でもない。

「それは……辛い話だね。すごくショックだったと思う。
 でもきっと、君みたいな子を初めて見たから、その人も驚いていたんじゃないかな。
 だから、あんまり考えすぎないほうがいい」
「……ん……」
「こうして話していても、きみは普通の女の子にしか見えないし……」
「……ほんと? アタシのこと、変な目で見たり……しない……?」
「うん」
「アタシの目、見ても……気持ち悪いって、バケモノって、言わない……?」
「そんなコト言わないよ。少しは驚くかもしれないけど、気持ち悪いだなんて、ぜったいに」

 僕がそう言うと、少女はおずおずと頭を上げた。
 そこに現れたのは、赤い宝石のような瞳をした、ぎょろりとした大きな一つ目。
 思っていたよりもずっと大きくて、美しい。
 なるほど、これがゲイザーなんだ。
 ”見つめる者”――なんてぴったりな言葉だろう。

「……あ」

 頭を上げた彼女の一つ目と視線が合う。
 彼女は照れくさそうに頬を赤らめると、すぐに目線をよそへやってしまった。
 その瞳は大きくて、僕の顔が映ってしまいそうなほどだ。

「あ……あぅ……」

 赤くなっていく頬を冷まそうとしているのか、少女は自分の両手で柔らかそうなほっぺを包んでいる。
 雪のような白い肌に、赤い頬はよく映えていた。

「ところで……どうしても聞きたかったんだけど」
「……え?」
「どうして段ボール箱に入ってるの?」
「それは……その、」

 僕がそう聞くと、彼女はまた恐る恐るといった感じで話し始めた。

「アタシ、ほんとに何も持たずに家を追い出されて……。
 でも前読んだ雑誌の『どんな子でも、お金がなくてもできる!魔物娘流の気の引き方〜コボルドの流儀〜』っていう本に、やり方が乗ってたのを思い出して。
 それで……スーパーから段ボールを貰ってきて……アンケート用のボールペンで文字を書いて……」

 ……なんて涙ぐましい努力なんだろう。
 でもたしか、コボルドって犬の姿をした魔物娘だったような。まあ彼女たちなら確かに段ボールも似合うかもしれない。

「間違えてるんじゃないかな……たぶん、色々と」
「えっ……そうなの?」
「それと、」

 こほん、と一度僕は咳払いをする。
 無駄話は後でもできるけど、それより大事なことを話さなければいけない。

「もうすぐ日が暮れるけど……どうするの? このまま、ここにいるの?」
「そ、それは……やだぁ……。
 けど、ほかに行くところも……ないし……」

 それはそうだろう。誰だって道端にある段ボールの中で夜を明かしたくはない。
 もしかしたら警察の人が来て彼女を保護してくれるかもしれないが、それも彼女にとっては辛そうだ。しかも警察は魔物娘にはあまり関与しない、というのが方針だという話を聞いたことがある。

「えぅ……アタシ、一人ぼっちでいるしかないの……?」

 しかし――なんにせよ、こんないたいけな少女を放っておくことは、僕にはできなかった。

「今日のところは、うちに泊まっていくといい。
 外で寝るよりはいいと思うから」



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 僕は一人暮らしで、独身貴族よろしくこじんまりした1DKのアパートに住んでいる。
 もちろん単身者用だが、部屋にあまり物を置いていないので二人で寝ることぐらいはできるだろう。

「おっ、おじゃま、します……」 

 緊張した面持ちで少女が玄関に上がる。触手は引っ込めることもできるらしく、玄関扉に挟まったりはしなかった。
 さらに、彼女たちは常に浮遊してふよふよと移動することができるようだ。翼をもった魔物娘が飛んでいるのは見たことがあるが、魔法で浮いているのは中々見ない。

「狭いところだけど、まあ気楽にして。はい、座布団 あと……」

 僕は衣装箱からワイシャツを取り出して、女の子座りをしている彼女に手渡す。

「その……君は平気でも、僕が目のやり場に困るから、これを着てくれると嬉しい」

 見たところ、少女はほとんど裸体だった。気休めのように両手両足、胸や局部には黒い何かが張り付いているものの、それ以外はほとんど白肌を晒している。いくら小中学生ほどの少女と言っても、これではあまりに破廉恥だ。
 少女の膨らみは、なだらかではあるけれど立派な女の子の体つきをしているのだから。

「あ……うん、わかった……」

 了承してくれた少女は、慣れない手つきでワイシャツを羽織る。ボタンの留め方は……分からないのだろうか、ほったらかしだ。
 ……これだと裸ワイシャツになって、あまり事態が変わっていない。
 恥ずかしいのを我慢しながら、僕はボタンを留めてあげた。

「くんくん……なんか、ニオイがする」
「え? あ、ごめん。新品のほうもあったから、そっちで――」

 袖口の匂いを嗅ぐ少女はちょっと考えたあとで、

「や……これでいい。こっちのが、いい」
「そ、そう」

 そう答えると、しきりに鼻を動かしていた。
 僕は立ち上がって、食事を作ろうとキッチンに行こう――としたところで、疑問に思う。

「えーっと。晩御飯をつくろうと思うんだけど……ゲイザーってどんな物を食べるの?」
「!」

 質問を掛けると、またも少女の体がぴくりと跳ねる。
 いったい何に驚いたのか、僕には見当がつかない。

「えっと……えーっと……」

 言いあぐねるように、彼女はもじもじと体を動かす。 
 そのままいつまでたっても答えてくれそうにないので、僕はもう一度携帯電話で調べてみる。
 すると、そこにはとんでもない文字が書かれていた。

「ゲイザーの主食は……『男性の精液』? なんだこれ……?」

 唖然として声が出ない。本当にそんなものが食事になるのだろうか。
 もう少し詳しく調べてみると、人間と同じ食材も食べられるようだ。
 ただ……彼女が言いあぐねているということは、やはり、そういうコトなのかもしれない。

「ま、まあ……人間と同じものでも大丈夫って書いてあるし、それでいいか」
「んんんー……」

 少女の返事は聞かず――というより聞けず、僕はいつものように台所へ向かった。



 二人分の料理を作るのはあまり慣れなかったが、大した労力の違いはなかった。
 ちなみに、今日の献立はサバの塩焼きである。
 僕たちはテーブルに向い合せになって座り、両手を合わせる。

「はい、お口に合うか分からないけど……」
「……ありがとう。 いただき、ます」

 一礼をしてご飯を食べる様子はまさに普通の女の子で、そんな少女が僕の部屋にいるというのが非現実感を際立たせる。
 やはりというべきか、箸の使い方は慣れていないらしく、悪戦苦闘していた。
 骨はできるだけ取っておいたから、何とかはなると思うけれど。
 口からちらりと覗かせたギザギザした歯は、子供の八重歯のようにも獣のようにも見えたが、肉しか食べないという事はないみたいだ。

「ごちそうさま、でした」
「御馳走さま」

 ただ気がかりだったのは、一言も味の感想を言ってくれなかったことだ。
 サバの塩焼きも、お味噌汁も、変な味付けはなかったはずだけれど……。

「もしかして……おいしくなかった?」
「あ、いや、あの……えっと、そうじゃないけど……」

 僕が聞くと、少女は体をもじもじとくねらせる。
 そして、何故か僕の方へとにじり寄ってきた。

「……ごめん、でも……もうそろそろ、ガマンできなくってっ……」
「え?」

 少女が僕のそばまで来ると、ふわりと石鹸に似た甘い匂いが強く漂ってくる。
 僕を上目使いで見上げる彼女の、赤い瞳と目が合った。
 ――その瞬間。
 どくん、と心臓が大きく跳ねた。
 
「アタシたちはね……”暗示”っていうチカラを使うの。
 掛けた相手のカラダを操ることもできるし……ココロを操ることもできる。
 でも、安心して。ぜったい気持ちよくしてあげるから……♪」
「え……あ……」

 とたんに意識が朦朧として、身体がうまく動かせない。
 困惑する僕に向かって少女の黒い手が伸びてくる。
 彼女の手は僕の下半身に触れて、ズボンを脱がそうとしてくる。

「あ……う……そ、んな……こと……」
「ダメだよ……動いちゃ。っていっても、もう自分じゃ動けないだろうケド……」

 抵抗も空しくあっという間にズボンは膝まで脱がされ、さらに下着まで降ろされる。
 露わになった僕の股間を見て、少女がにんまりと笑った。
 その笑みは幼いながらも妖艶な悪魔のように妖しい。

「あは……まだ見てるだけなのに、おっきくなってる。
 オスの匂いがぷんぷんして、ドキドキしちゃう……。
 それじゃあ、今度こそ……いだだきまぁす♪」

 少女の舌が、ぺろっと僕のペニスを舐めた。熱くてぬめっていて、ざらりとした感触がする。
 そのまま何度も、舌が丹念に肉棒を舐め上げていく。
 れろり、れろりと、唾液を擦り付けるかのように。

「んっ……んちゅ、れろぉっ……。
 舐めるたびにピクピクして……とってもえっち」
「あぁぁ……」
「えへ……これだけじゃ満足できないよね。
 だから、すぐに出させたげる……はむっ」

 今度は、少女がその小さな口一杯にペニスを頬張る。
 ヌメヌメした口内は温かく、ベロが敏感な裏筋にれろれろと当たって気持ちがいい。
 ねっとりしたよだれがぬちゅぬちゅと絡み付き、さらに刺激を与えてくる。
 こんなに強烈な愛撫を、僕は今まで受けたことがなかった。

「んちゅ……んむっ、んふぅっ」

 口でペニスを咥えこんだまま、彼女は顔を上下に激しく運動させる。
 窄めた柔らかな唇が亀頭全体をにゅぷにゅぷと磨き上げ、同時に舌がぬるりと裏筋に這い回る。
 ぐちゅぐちゅ……ぬちゅぬちゅ、ちろちろ。
 年端のいかない少女に自分の性器を咥えられているという背徳感は凄まじいものだった。

「や……やめ……」
「んー、らめらよ……らしてくれるまで、はなしてあげない……」

 少女が喋るだけで口内がもごもごと蠢き、それも気持ちよさに変わる。
 それを止めることもできず、僕は彼女にされるがままだ。
 淫らな水音とともに快感が走っていき、堪えようのない射精欲がこみあげてくる。

「で、でるぅ……っ」
「んっ……んむむぅ♪ ふっごい、いっぱいれてるぅ……♪」

 情熱的な口淫に耐え切れず、少女の小さな口の中に思い切り射精する。
 どぷどぷと口内に精液を注ぐ快感で、脳が溶けそうになる。
 さらに少女は口を窄め、ちゅうちゅうとミルクを吸い出すかのようにペニスに吸い付く。
 それがさらに快楽につながり、尿道に残った精子まで吸われていってしまう。

「ん……ぅ」
「ぷはっ……んん、とってもおいしかった。セイエキって、こんなに濃い味なんだぁ……。
 ヤミツキになっちゃうかも……。
 それじゃ、暗示は解いてあげるね」

 彼女の大きな眼と、ほんの少し視線を交わす。
 その数瞬後には、身体の感覚も意識も、何事もなかったかのようにすっと元へ戻っていた。

「あ……あれ? か、体が動く……」
「はい、これでおしまい。
 じゃあ……ごちそうさま♪」
「……」

 それはまるで起きたまま夢を見せられているかのような気分だった。
 あまりの現実感のなさに、僕はしばらくの間、さっき起きたことが信じられなかった。
 それでも、僕はやってしまったのである――この少女と姦淫を。



 二人きりで、情事の後――という気まずさを払拭するために、テレビを付けておくとちょうどいい塩梅になった。
 あまり番組を見たことがないのか、少女は物珍しそうに画面を見ている。
 その間に僕はシャワーだけは浴びておいた。少女は特に「お風呂に入りたい」とは言わなかったが、それでも僕から「風呂に入れ」とは切り出しずらかったので、二人ともそれについては何も言わないまま。
 後で調べたが、どうもゲイザーは老廃物や排泄物をほとんど出さない生態らしく、お風呂に入る必要はほぼないらしい。
 そうこうしているうちに、夜がやってきた。

「じゃあ、僕は床に寝るから……ベッドは使っていいよ」
「えっ……そ、そんなの悪いよ」
「いやでも、女の子を床に寝かせるわけには、」
「じゃ、じゃあ……いっしょに……寝れば……」
「えっ」

 予想外の返事を食らい、うーんと考える。
 いや――少女に口淫をされたことに比べれば、全然大したことはないのだけれど。

「その……言ってなかったけど、アタシたちは男のヒトにくっついてても、エネルギーを得られるんだ。
 だから、決して、へ、ヘンな意味じゃなくって……ゴハンを食べるのと一緒で……」

 そういえば、そんなこともネットの記事に書いてあった気がする。
 しかし、少女と添い寝――それも今日会ったばっかりの子と――というのは、いかがなものか。

「一緒になんか寝るの、ヤダ……?」
「嫌だなんて、そんなことはない……けど」
「……ホント?」
「う、うん」
「……へへっ」

 そんなわけで結局彼女に言われるまま、一緒に寝ることになった。
 よく考えれば、断ったとしても彼女の”暗示”に掛かってしまえばどうしようもない。
 彼女にかかれば、たとえ強引にでも願望を実現させてしまえるはず。
 それはもしかしたら、恐ろしいことではないか。

「じゃあ、電気消すよ」

 少女のほうを向いてしまうと照れくさくて仕方がないので、僕は背中を向けて寝ることにする。
 これならいきなり”暗示”をかけられる事もないだろう。

「ん……」

 布団の中で、もぞもぞと少女が動く。
 距離を詰めすぎないようにしようとしても、広いベッドではないのでそれは難しい。
 彼女の温もりは意識せずとも服越しに伝わってくる。
 それに、女の子特有の甘い匂い。あの時も嗅いだ、石鹸に似た、でも人間とはどこか違う妖しい香りもする。
 彼女はお風呂に入っていないはずなのに、シャンプーよりもいい香りが黒髪から漂っているのだ。
 ……だめだ、意識してるとますます変な気分になってくる。

「あ、あの、一つだけ、いい?」
「どうしたの?」

 背中越しから伝わる少女の声。
 かと思えば、

「これから……”ご主人様”って呼んでもいい?」
「……え?」

 予想だにしていなかった質問に、僕はまた悩まされる。

「……その、それは……どうして?」
「た、助けてもらっただけじゃなくて……せ、セイエキまで、貰っちゃったから……。
 もうあんたは、アタシのご主人様なんだ。
 それに……もう家には帰れないから、これからも世話になるかもしれないし……」
「呼び方は好きにしてくれていいけど……さすがに照れくさいな」
「……だめ?」
「いや……いいよ」

 しかし、さっきいい様にされていた事を考えると、その少女からご主人様と呼ばれるのは何だか不思議な話だった。
 彼女はいったい、僕をどうしたいのだろう。

「そういえば……今まで聞いてなかったけど、君の名前は?」
「名前は……あったけど、家を出るときに、それは捨てなさいって言われた。ニンゲンにはちゃんと発音できないからって。
 それで『良い人を見つけて、その人に名前を貰いなさい』って……お母さんが言ってた」
「そんな無茶苦茶な……」
「アタシは……ご主人様に、つけてほしいな。名前」

 ひょっとしたら大変なことに首を突っ込んだのかも――と思うには、遅すぎたかもしれない。
 これじゃあ、本当に彼女を拾ってきたみたいじゃないか。
 しかし――名前を付けてほしいというのなら、一つ案があった。

「……ガーネット」
「えっ?」
「君の赤い大きな目を見て、ずっと思ってた。まるで赤い宝石みたいだ、って」
「ほうせき……? アタシの、目が?」
「そう。 その赤い宝石の名前が、ガーネット。ちょっと安直だけど……どうかな」

 少女は、何度かその名前を復唱し始める。

「がーねっと…… アタシは、ガーネット。 ……うん、わかった。
 えへへ……ありがとう、ご主人様。とっても気に入ったよ」

 彼女の表情は確かめられないけれど、声の跳ね方は上機嫌そのものだった。

「気に入ってくれたなら良かった。
 それじゃあガーネット、おやすみ」
「うん。 ご主人様、おやすみなさい……」

 これからの事を悩みながらも、僕は少しずつ眠りに落ちて行った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


 ガーネットと出会ってから、もう一週間が過ぎた。
 彼女は帰りたいとも言わず、ただ黙って僕のそばにいたがった。
 まるで刷り込みを受けた雛のように。
 そんな純真な心を無碍に突き放すことなどできるわけもなく、ずるずると日だけを重ねていく。

 夜になると、ガーネットは僕の精液を求めた。
 そしていつしか、暗示を掛けられずとも、僕は彼女の求めるままに身体を任せていた。 
 男女の一線だけは超えないように、僕の理性が自制していたけれど。



 朝。
 僕が起きても、ガーネットはまだ寝ているらしかった。
 彼女を起こさないように僕はそっとベッドから起きる。
 ふと、ガーネットの姿が目に入った。
 寝ていてもその大きな眼は目を引く。大きなまぶたに相応のまつ毛と、有るものは人間と変わらない。
 無防備に寝ている姿は、いたいけな女の子そのものだ。

「さて……どうしたものだろう」

 ガーネットの処遇をどうすべきか考えていたが、結論は出ていない。
 だが、家族の方には僕が彼女を保護している事を伝えておくべきだろう。
 なにしろもう一週間も経っているのだから。
 そろそろ家族も心配になって、捜索願などを出しているかもしれない。

「ん……んん。 おはよう、ございます」
「あ、おはよう」

 考え込んでいるうちに、ガーネットは目を覚ましてしまった。
 まだ少しふらふらしている。寝起きはあまりよくないのだ。

「ガーネット。君の住んでた家はどこにあるの?」
「えっ? ええっと……住所は○○マンションの、××号室だけど」
「そっか、ありがとう」
「……?」

 今日、仕事が終わったらそこに向かってみよう。
 彼女を連れて行くのは……話がついてからでもいいか。

「それじゃあ朝ごはん作るから、ちょっと待ってて」
「あっ……アタシの分は、もう作らなくていいよ」
「え? それって……」
「……へへっ」

 もう分かっているだろう、というような彼女の微笑み。
 このままだとまずい。
 寝る前ならともかく、朝からそんな事をされたら僕の身が持たない。

「あ……そうだ、今日は早番だったから!
 も、もう仕事に行かないと……」

 彼女の目を見ないようにしながら、僕はそそくさと準備をする。
 着替えるのもそこそこにして、急いで家を出た。

「ちぇ……いってらっしゃい」

 背中からガーネットの寂しそうな声が聞こえたが、返事は出来なかった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 仕事が終わり、夕方の帰り道。
 僕はガーネットが住んでいたという○○マンションに足を運んだ。
 思ったより遠くはなく、電車とバスで数駅も行けば着く距離だった。
 箱入り娘だった彼女にとっては、少し離れた町でも知らない場所だったのだろう。

 僕は目的地に着くと、思わずその建物を見上げた。
 結構大きなマンションだから、ガーネットの家は裕福な家庭なのかもしれない。
 ××号室であるのを確認しながら、インターホンを押してみる。
 ……返事はない。
 ドアを叩いてみても、何の反応もなかった。
 留守だろうか?
 でも、何の収穫もなく帰るわけにはいかない。

 管理人室に向かうと、花輪を頭に乗せた、体の大きなお姉さんが受付に座っていた。
 そんなに近づいてもいないのに、ガーネットとはまた違う、草花のような良い匂いが外まで漂っている。
 あれは確か……気が優しい事で有名な『トロール』という種族の魔物娘だったか。
 声を掛けると、にっこりと笑顔で返事をしてくれた。

「こんにちわぁ〜、どうかしましたか〜?」
「すみません、××号室に住んでる方に用事があるんですが……留守みたいで。
 言伝を頼めませんか?」
「××号室〜……? ちゅおっとお待ちくださいねえ」

 お姉さんはよいしょと立ち上がると、どこからか簡素な封筒を取り出してきた。

「……念のためにお聞きしますが、独身の方ですよねえ?」
「は、はあ、そうですが」
「えっと〜、××号室の方からは約束を頼まれておりまして〜。
 もしそちらに尋ねてくる男の人がいたら、これをお渡ししてほしいということで〜」
「……?」

 渡された封筒を受け取る。どうも中には紙と何かが入っているようだ。

「これは……?」
「う〜んと、中身は開けてみてのお楽しみです〜。
 でも大事なことだそうなので、念を押されてまして〜、必ず読んでください、できればここで〜。
 それにしても、早かったですねえ。ワタシも負けてられないな〜」
「えっ?どういうことですか」
「うふふ。その封筒を読んでいただければ分かると思いますよ〜」
「あの、こちらにも用事があるので、できれば家族の方と直接お会いしたいんですが……」
「ええ〜? それは難しいと思いますよお。だって……」

「××号室の方、もう引っ越しちゃったみたいですから〜」

 ……引っ越した? あの子を置いて?

「じゃ、じゃあ……この封筒には、いったい……」

 僕は手渡された封筒を開け、中身を取り出す。
 中に入っていたのは一枚の手紙と、鍵。
 その便箋には、丁寧な文字でこう書かれていた。

『拝啓
 この手紙を読んで頂けているということは、貴方が娘の選んだ男性なのだと思います。
 奥手なあの子が伴侶を探すきっかけとなるように、私たちはやや強引ながらあの子を独り立ちさせました。
 文字通り、かわいい子には旅をさせよ、ということです。
 不束者ですが、どうか娘をよろしくお願いいたします。

 ささやかな餞別として、私たちが住んでいたマンションの鍵を同封しておきます。
 私たち夫婦にはもう必要のないものですので、住むなり売るなり好きにしていただいて構いません。
 ただ、ここは魔物娘たちの集う特別な建物ですので、お二人(娘が了承さえすれば何人でも構いませんが)の愛を育むのには最適だと思います。
 管理人さんにも話を通しておきましたので、気兼ねしていただく必要はありません。
 また、家財道具を揃える為のお金もマンションに用意してありますので、そちらもご自由にお使いください。
 
 我が娘、▲▼▲を愛する両親たちより
 』

 ……あまりの内容に言葉が出ない。
 普通の人間では考えられないことだけれど、これが魔物娘流の子育てなのだろうか。
 だからって、やる事が大げさすぎないか。
 マンションの鍵から費用まで――、一体いくら掛かっているんだ。

「うふふふふ……ご理解いただけましたかあ?」
「で、でもこんな……僕はあの子を保護しようとしただけで、娘をよろしくだなんて言われても……」
「きっかけなんて、些細なものですよお〜。
 たった一つの行動、たったの一言で、好きになっちゃうことだってあります〜。
 出会いは大切にしようって、ニンゲンの言葉でも、イチゴイチゴ、って言うじゃないですか〜」
「……一期一会?」
「そうそれ〜」
「と、とにかく……あの子にも話してみます。それじゃ」
「は〜い、お気を付けて〜」


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「……ただいま」
「あっ、おかえりなさい、ご主人様」

 家に帰ると、ガーネットが玄関まで来て僕を出迎えてくれる。

「……なんか、オンナのヒトの匂いがする」
「ああ、たぶん○○マンションの管理人さんの匂いかな……?」
「むっ……ご主人様は、アタシのものなんだから。
 ヘンなのが付かないように、アタシも匂いつけるっ」

 ガーネットはふわっと浮かぶと、すりすりと自分の体を擦りつけてくる。
 こういう所は見た目通りの少女らしい子供っぽさだ。

「それよりも……話があるんだ。一緒に座ろう」

 僕はためらいながらも、部屋に入ってすぐにあの手紙を見せて話を切り出した。



「……というわけで、君は両親から見放されたわけじゃないんだよ。
 ちゃんと君のことを想っての行動なんだ……たぶん」

 しかし、もうちょっとやりようがあったのではないかと思うが。
 何かを考えているガーネットを、僕はじっと待つ。

「……ご主人様は、」
「うん?」
「これから、アタシと一緒に……住んでくれるの?」

 単刀直入な質問に、僕は思わず目をつむってしまった。 
 彼女の”暗示”にかかれば、僕に選択権はないからだ。

「だいじょうぶ……”暗示”なんて、掛けたりしないから。
 正直に、答えて。
 アタシのこと……どう想ってくれてるのか」

 僕がゆっくり目を開けると、ガーネットはその大きなまぶたを閉じていた。暗示を使わないという意思の現れだろう。

「まだ……僕は君のことをよく知らないけれど、君が優しい子なのは分かる。
 ”暗示”の力を使えば強引にだって決められるのに、僕の気持ちを尊重してくれる。
 思いやりがなかったら、そんな事はできない」
「……」
「何より、僕のことを慕ってくれている。
 僕はたった一度、君のことを助けただけなのに……その恩を返そうとしてくれてる」
「……」
「だから僕は、君と一緒に住んでみたい。
 これからも一緒にいたい」
「……!」

 ぴくん、とガーネットの体が跳ねる。
 表情は驚きから笑顔に変わり、大きな目が開いていく。

「……ほんとう? ほんとうにそう言ってくれるの……?
 アタシ……何にもしてないのに。暗示も使ってないのに?」
「うん。これが僕の本心だよ」

 笑顔を浮かべた彼女の瞳から、大きな大きな粒の涙が一筋こぼれた。

「やったぁ……、よかったよぉ……ぐすっ……えぇぇっ……ぅぇぇっ……」

 その場で泣き崩れるガーネットの身体を支えてあげる。
 気が付くとそれは抱擁に変わっていて、彼女の温もりを全身に感じていた。
 癖っ毛な黒髪の頭を撫でてあげながら、僕は彼女が落ち着くのを待った。



 数分ほど経って――ガーネットが口を開く。

「ねぇ……ごしゅじんさまっ。
 一緒に住む前に……ひとつだけ、やり残したことがあるよね」
「えっ?」
「セイエキはいっぱい貰ったけど……ほんとうに欲しいトコには、まだ貰ってない……」

 ワイシャツのボタンを外しながら、ガーネットの手が自分の股間に伸びる。
 小さな手で僕の右手を掴むと、ゆっくりと秘部へ持っていく。

「まっ、まさか……何言ってるんだ、君はまだ幼い子供で……そんなこと、」
「ほら……ここ、もう濡れてきてる。ご主人様の匂いを嗅いで、全身を抱きしめられて……。
 アタシも、ガマンできなくなってきてる……」

 くちゅり。
 しっとりと濡れた女性器に手が触れ、僕はどぎまぎする。
 まだぴっちりと閉じたままのそこはあまりに小さく、未成熟な入口にしか感じない。

「ね……ご主人様の熱い……お、おちんちん……欲しいっ。
 こんな小さなカラダじゃ、満足できないかもしれないけど……それでも、めちゃくちゃに、犯してほしい」
「そんな、こと……言われると、くっ、」

 僕の右手を肉壺へ導きながら、もう片方の手で、ガーネットは僕の膨らんだ股間を撫でまわす。
 さらにズボンの隙間から手を入れると、直接ペニスをしこしことしごき始めた。

「あっ……、ご主人様のおちんちん、こんなに硬くなってる。
 へへっ……嬉しいなあ、ちゃんとアタシで興奮してくれてるんだ……」
「うう……だめだ、これ以上はっ……」
「分かってるよ。ご主人様は、アタシのことを想ってくれてるから、そう言ってるんだよね。
 でもぉ……そんな邪魔な理性、アタシたちの間にはいらないの。
 ほら、アタシの目を見て……?」

 耳元でささやくような、甘ったるい声。
 僕はまた咄嗟に両目を閉じてしまった。

「うふふ……目ぇ閉じたってダメだよぉ。
 もうご主人様は、アタシとせ……セックスするしか、ないんだから」

 不意に僕の体がふわっと浮いた。彼女が持ち上げているのだ。
 そのまま二人の体がベッドへと持っていかれる。
 仰向けに寝かされた僕の上にガーネットが覆いかぶさり、温い吐息が顔に掛かった。

「どうしよっかなあ〜。このまま無理やり犯しちゃうのもイイけど……。
 自分から目を開けてくれるまで待つっていうのも面白いよねぇ……♪」

 僕の唇に何かが触れる。顔に掛かる鼻息で、キスをされているのだと分かった。
 彼女の唇はマシュマロのように柔らかく、ぷにっとしている。

「ん……アタシのファーストキス、どんな味?
 ちゅっ……んちゅ、れろれろっ」

 そしてガーネットのぬめった舌が伸びてきて、唇をこじ開けて僕の口内へと侵入してくる。
 ぺちゃっ、ぬちゅっ。舌が絡み合って、お互いを舐め回す。
 その舌遣いは丹念で、僕の舌を余すところなく味わうかのように愛撫する。
 息もつかせぬ激しいディープキスで、脳内が甘く痺れていく。

「ぷはっ……ほら、もうお顔が歪んできた。
 それじゃあ、邪魔な服はアタシが脱がせてあげるね……」

 乱暴に衣服を剥ぎ取られ、僕はあっという間に全裸にされる。
 抵抗しようとしてもさっきのキスで頭が痺れていて、体に力が入らない。

「ピクピクしっぱなしのおちんちんも、しこしこしたげるよぉ♪
 ほーら、ごしごし、ぬちゅぬちゅ……」

 彼女の肌に張り付いた黒いゲルがとろけた、粘液に塗れた手で、遠慮なくペニスをしごかれる。
 右手で竿を上下にこしこしと擦り、左手の手のひらで亀頭を撫でまわされる。
 その激しさであっという間に射精してしまいそうになるが、その瞬間にピタッと手が止まる。

「あっ……な、なんでぇ……」
「シャセイしたい?出したいよねぇ。でもダーメ、射精したかったら、アタシの一番奥に注ぎ込んでくれないと……♪
 うふふ、次は亀さんをいじめてあげる……うりうり♪」

 ぬるぬるの手で亀頭だけを弄られ、腰が浮いてしまいそうになる。
 しかし、竿や裏筋には一切触れてこない。
 そのせいで射精につながるような快楽ではなく、ただひたすら気持ちいいのだけが溜まっていくような感覚。
 出したいのに出せない、そんな生殺しな快感でいっぱいになる。

「ああっ、すっごくいいカオだよぉ、ご主人様ぁ♪
 射精したくて、もどかしくて、たまらないんだよね?
 アタシとセックスしたいって言ってくれたら、すぐにでもおまんこしてあげるよぉ……?」
「そんな、ことぉ……ぁぁぁ……」

 今度は濡れそぼった女性器をペニスにこすり付けてくる。
 小さなクリトリスが当たるたびに、お互いの口から嬌声が漏れる。
 しかし射精しかける度にぴたっと動きが止まり、その度にもどかしさに喘がされていく。

「ほらぁ、アタシのナカに入れたくなってきたでしょ?
 ずっぷずっぷって、ぬぷぬぷって、柔らかいおまんこの中で射精したいよね……?」

 代わりのように、ガーネットは別の性感帯を責めてきた。

「ご主人様、乳首が立っちゃってますよぉ?
 ここをクリクリ〜ってしたら感じちゃうのかなぁ〜?」
「あ、あああ……」
「あはっ、おちんちんも乳首もビンビンになっちゃった。乳首で感じるなんて、女の子みたい♪
 両手でこりこりしながら、おまんこ擦りつけてあげますねぇ♪」

 熱い秘部でペニスを擦りあげられるたび、乳首を指で擦られるたび、寸止めされるたびに、気が狂いそうなほどの快楽に襲われる。
 しかし、射精寸前で寸止めされ、快感は出口を失う。
 僕は目蓋が開きそうになるのを必死で我慢していたけれど、もう耐えられない。

「そろそろガマンできなくなってきましたよね、ご主人様? アタシももう、限界……。
 目を開けてくれたら、ご主人様とアタシが一番気持ちよくなれるような”暗示”を掛けちゃいますよぉ……」

 耳元で囁かれる、悪魔のような、天使のような、魔物の言葉。

「ね……アタシのこと、心の底から求めて、滅茶苦茶に犯してください……♪」

 その一言で、僕は完全に快楽に屈服した。
 目を開いてしまった。
 彼女の赤い瞳を見つめてしまった。

「あぁ……♪ やっと、アタシのこと見てくれたぁ♪
 好きっ、大好きですっ、ご主人様ぁっ♪もっと、アタシのこと、好きになってぇ……♪
 アタシへの想いを、カラダで表してっ……♪」

 何度か味わったことのある、酩酊にも似た意識の混濁。
 同時に、この少女を愛したい――犯したいという欲望が膨れ上がって、もう抑えきれない。
 痛いほどに勃起するペニスを、少女の幼い性器にぴったりとくっつける。
 覆いかぶさったガーネットの細い腰を掴んで、下から突き上げる。
 みちみちと膣肉を掻き分け、肉棒が挿入され包み込まれていく――それは耐え難い快感だった。

「あぁぁっ……あ、熱いおちんちん、入ってくるぅっ……」

 ぬるぬるに濡れそぼったガーネットの穴は、貪欲にペニスを迎え入れる。
 普通の少女ではあり得ないほどの深さまで突き入れられても、根元まで陰茎を飲み込んでしまった。
 膣の中はキツく狭く、溶けそうなほど熱い。すぐにでも射精してしまいそうなのを堪えながら、僕はピストンを始める。

「あぁっ、んぅっ、くふっ、ふぅぅっ! い、いちばん奥まで、届いてる……っ!」

 処女のはずだったガーネットは、破瓜の痛みを全く感じさせようとしない。それどころか、一突きするたびに喘ぎ声を漏らし、蜜液でシーツを汚す。
 キュッキュッと締め付けてくる膣内はまさに名器で、無数のヒダがペニスに絡み付いて甘い刺激を送ってくる。
 強引なピストンだったが、それでも彼女は昇ってくる快楽に悶えっぱなしのようだった。

「らっ、らめぇ、そん、なっ、はげしっ、すぎぃっ、よぉ……!」

 大きな一つ目がとろんと蕩けて、涙で潤んでいる。
 快感に蕩けたガーネットの表情はあまりにも淫らで、とても子供とは思えない。
 そんな彼女の痴態を見るたびにペニスは強く勃起し、少女の蜜壺を掻き回していった。

「ああぁぁ、も、もう、らめっ、いくっ、いっちゃぁあ――ッ!」

 嬌声とともに一際強く膣が締まり、ペニスから精液を搾り取ろうとする。
 その気持ちよさに耐え切れず、僕はガーネットの最奥へと突き入れて思い切り射精した。

「あ、ああああぁ……ナカに……子宮に、セイエキ、注がれてるぅ……っ」

 どぷっ、どぷっ、と精液が放出され、小さな子宮口を満たしていく。
 ちゅぽんと音を立てて肉棒が膣から引き抜かれた。
 しかし、まだペニスは硬さを保ったまま、萎えていない。

「はぁ……ぁぁ……♪ ――えっ?」

 放心しかけているガーネットの肢体を持ち上げ、ベッドへ押し倒す。
 仰向けになった彼女に、覆いかぶさるようにして僕が上になり、さっきとは体勢が逆転する。
 そして足を大きく開かせ、正常位の形になったところで、僕はまた勃起したペニスを遠慮なく挿入する。

「ひゃあぁぁっ!そ、そんなっ、らめっ、イったの、まだ、のこってっ……ぇぇっ♪」

 絶頂の余韻に浸らせることなく、また僕はピストンを再開する。
 膣がヒクヒクと痙攣するかのようにうごめき、さっきよりも昂ぶらせてくれる。 

「ひぃっ♪ まっ、またっ、きちゃうっ、うぅぅぅっ♪」

 ガーネットが二度目のオーガズムを迎えても、僕は突き入れるのを止めない。
 快楽を貪ることだけに頭がいっぱいになる。
 そしてまた、彼女の膣穴にたっぷりと射精する。

「あぁぁっ……ら、らめぇ……ちょっと、やす、ませてっ……ッ!」

 注ぎすぎた秘部から精液が零れだす。それを止めようとするかのようにぱくぱくと開く女性器はとても淫らに見える。
 僕はガーネットのお尻を持ち上げ、膝を抱えさせる。
 露わになった小さなお尻の穴へ、様々な粘液で汚れたペニスを挿入した。

「ひゃあっ?! お、おしりぃっ……そ、そんなっ、らめっ……そこぉ、よわい、からっ……」

 アナルの入口は狭かったが、簡単にこじ開けることができた。
 膣とは違った柔らかさのそこは、変わらずきゅうきゅうと締め付けてくる。
 括約筋の締めつけは凄まじいもので、すぐにでも出してしまいそうだ。

「お、おしりなのにぃ、かんじ、ちゃうぅ……あぁんっ」

 奥まで突かず、亀頭だけをにゅぽにゅぽとお尻の穴に出し入れし、肛門入口を責めると、ガーネットは小刻みに体を震わせた。
 同時に窄まりで敏感な部分を刺激され、また僕は射精する。

「あぁぁあ♪ おひりにも、あついのがっ……んふぅぅっ!
 はぁっ、はぁっ、おひりでも、いっちゃ、ったあっ……」

 腸内射精でぬるぬるになったお尻の中を、ペニスで掻き回すように突き入れる。
 しかし、まだ性欲は冷めやらない。
 勢いよくアナルから肉棒を引き抜くと、今度はガーネットの口内を犯そうと決めた。

「あっ……んぶぅっ?! んっ、んぐっ……むぐぅっ♪」

 色々な体液で汚れたペニスを、少女は嫌がることなく受け入れる。
 今まで何度も味わったことのあるフェラチオだが、気持ちよさは変わらない。
 ただ今回は、彼女にされるがままでなく、僕が乱暴に腰を振って快楽を得ようとしている。
 幼い口腔をペニスで満たし、喉奥まで挿入する快感は、男の征服欲を刺激した。
 
「んぅっ、うぅっ、んふぅぅぅっッ」

 欲望に赴くまま、ガーネットの喉に射精する。
 それでもなお彼女は精液を貪欲に飲み込み、ちゅうちゅうとペニスを吸い上げていった。

「ふーっ、ふーっ……♪ ご、ごひゅひん、はまぁ……っ、もっとぉ、もっとぉっ……」

 未だ衰えないペニスの張り。異常に続く性欲。
 とろとろと精液の零れる膣でペニスを扱きつつ、射精しそうになったら引き抜き、ガーネットの白肌へ何度もぶちまける。
 ぷにぷにした柔らかいお腹。少しだけ膨らんだ胸部、すべすべの太もも。
 ガーネットが自分の精液で塗れていく姿を見ながら、膣やお尻の穴を犯しつつ、また射精を繰り返す。

「あぁぁ……しゅきぃ……らいしゅきれすぅ……っ」

 気が付くとガーネットの全身は精液まみれになっていて、淫臭が染みついている。
 うわ言のように僕を呼びながら、蕩けた声で愛をささやくガーネット。

「ぇへへぇ…… ごひゅひんさまので…… いっぱい……♪」

 いつしか僕も限界が来て、彼女を抱きしめながら意識を手放した。







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 僕とガーネットが一線を越えたあの日から、もう一か月が過ぎた。
 前に住んでいたアパートは引き払い、彼女の両親が残した××マンションへと引っ越した。
 二人だけで住むには広すぎる部屋だったが、

「すぐにでも家族が増えますよ……きっと」

 とガーネットは言う。
 防音、耐震と揃ったベッドルームは、まさしく二人の愛の巣になっている。魔物娘が住むのに最適な建物というのはこの事だったのだろう。
 こんな場所を提供してくれた彼女の両親には頭が上がらない。
 もしかしたら、孫の顔を見に家族が戻ってくるかもしれない――そう言うガーネットはなおの事、子供を欲しがった。
 そんな彼女のために僕ができるのは、真っ直ぐに彼女への愛を伝えることぐらいだ。 

「ガーネット、今日は暗示は無しにしよう」
「ええっ? どうしてですか?」
「獣のように求め合うのもいいけど……。
 たまには君の大きな目を見ながら、蕩ける表情を眺めながら、ゆっくり愛を囁きたい。
 いつもは、暗示を掛けられて君のペースだったからね。
 ……だめかな?」

 黒髪の頭を撫でながら聞くと、ガーネットはにっこりと微笑んだ。 

「いえ……ご主人様が、そうおっしゃるなら……♪
 アタシの恥ずかしいところ、たくさん見てくださいっ……♪」

18/06/29 21:06更新 / しおやき

■作者メッセージ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

捨て○○(魔物娘の名)ちゃんシリーズ第一弾です。
ゲイザーちゃんにご主人様って呼ばせたいだけのSSだったかもしれません。
愛があふれて18000字になってしまいましたが、まあ……いいよね!
色々と無理やりなところもありますが、細かいことは気にしない。

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