この ろりこん どもめ!
出来心からの怪しげな儀式が、本当に魔物を呼び寄せてしまった。
深夜を迎え、静まり返った家の中で俺は黙々と準備をする。
資源ごみに出す予定だった古いテーブルクロスを床に敷いて、近くの廃工場から拝借したペンキ缶で魔方陣を描く。
それから、儀式用として実家の倉庫から持ってきた銀の皿を用意し、そこに自分の血を入れる。9滴でいいという事なので、指をカッターで切る程度にしておいたが思ったより痛かった。
そして密室を作り、皿に溜めた血を魔法陣に垂らせば儀式が完成するそうだ。
俺はアパートの戸締りを確認して、布へ赤い滴を垂らす。
次の瞬間。
魔法陣から出る白いもやのような物が現れ、俺の部屋の中はあっという間に真っ白になり、何も見えなくなる。
あまりに突然すぎて驚く暇もなかったが、しかし、次の一瞬でその霧が晴れた。
そして魔法陣の上に、名状しがたい姿が浮かび上がる。
長い黒髪と体形だけは俺達と同じ人間のように見える。
しかし、シルクの布のような白い地肌に、背中から伸びる暗闇のように黒い尻尾と触手。その触手の先に付いた真っ赤な目玉。
顔には、大きなまぶたが一つだけ。
一つ目だ。
これまで本や絵でしか見たことのない、禍々しい異形の姿。
「……」
それはまさしく『魔物』としか言えないような風貌で、
「……すぅ」
大きなクマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、子供のようにぐっすりと寝ていた。
高校に入ってから、俺の神秘学に対する探究心にはますます火が付いていた。
神秘の探究に必要な収集品を集めるのも、今までは局留めにしてこっそりネットで注文したり、友人に頼んでもらったりとせせこましい事をしていたが、一人暮らしになったことで親の目を気にする必要がなくなった。
そして今日初めて、俺は一つの壁を越えようとしていた。
異形召喚の儀式。
始まりは一冊の本だった。
以前探索した廃墟ビルの中で、俺はある怪しい本を見つけた。タイトルも著名もなく、真っ黒だ。
しかし他の物は埃や塵で汚れているのに、その本だけはまるで新品のように真新しいまま、薄汚れた机の上に置かれていた。
オカルト用グッズとは違った雰囲気を持つそれを『本物』だと俺は信じて疑わず、その中身を読み解いていった。
本で使われている言語さえ分からなかったが、所々の余白には訳文と思われるたどたどしい日本語が薄く鉛筆で書いてあって、概要は理解できた。
本の中には、写真のように精密で鮮やかに色付けされた魔物の絵と、その絵の魔物の名前らしきものが書いてあった。
その魔物の名は、『ゲイザー/Gazer』という。
そして、どうすれば呼び出すことができるか、ということまで書かれていた。
一見して魔物の絵は現実に存在する生物の姿ではない。
人のような体型をしているが、不気味なほどクセの付いた長い黒髪と、肌はシルク布のように白く、黒いゲルのような物が身体の所々に張り付いていて、しかも背中からは真っ黒い触手と尻尾のような黒い毛が生えている。
神話に出てくる異形の魔物達と比べれば恐ろしい姿ではないが、しかし人間ではないのも事実だ。
この魔物を呼び出せれば、宇宙の神秘に近づけるだろうか。
そう考えていた俺は、その本の真偽を疑う事すらしなかった。
そして今、事実として、その魔物は魔法陣の上で寝そべっている。
寝ている姿はやはり人間の、それも女の子のようで、思っていたよりも身体が小さい。俺の実家には小学三年生の妹がいるがそれぐらいの体格に見える。
ぎゅっと抱きしめたクマのぬいぐるみは彼女と同じくらいの大きさで、抱き枕として最適なサイズのようだ。
「んん……」
魔物……いや彼女の手足がもぞもぞと動く。寝ている場所の違和感に気付いたのか、少しだけその一つ目を開けた。
数秒ほど俺と目が合って、とても大きな瞼で何度か瞬きをする。
着ぐるみやCGのような作り物ではない生々しさがそこにあった。
「……。 え、……え?」
寝起きでぼんやりとした彼女の表情が少しずつ驚きに変わっていく。
少女にしては低めの声だが、おとなしい印象の声と言ったほうが正しいかもしれない。
「に、ニンゲン? なんで……ここ、どこ……?」
抱きしめたクマのぬいぐるみはそのままに、少女は俺の部屋の中を見渡す。まるで子供みたいにおどおどしていて、本で感じた超然とした雰囲気はどこにも感じられない。
もしかすると、俺が呼び出したのは魔物の中でも子供ということなのか?
「お前が……ゲイザー、か?」
「う、あっ、えっ、」
俺が声を掛けると、後ろから近づかれた猫みたいに少女が体を跳ねあげる。顔を隠そうとするかのようにクマのぬいぐるみの背中に顔を埋めて、ずりずりと俺から離れるように後ろへ下がり、俺の本棚にどん、と背中をぶつけた。
そしてぬいぐるみの隙間からちらりと目を出す。
「……そ、そうです」
魔物というのは得てして傲岸不遜な態度を取るものだと思っていたが、目の前の少女からはそんな雰囲気を微塵も感じとれない。まるで臆病な仔うさぎのようだ。
むしろ彼女は怯えていて、俺がこの女の子を誘拐でもしてきたかのような空気だ。
「いや、俺が、お前を呼び出したんだが……間違ってないよな?」
「じゃ、じゃあ……なにかご用……なん、ですか?」
用、といっても、よく考えれば今の所は特に用件を考えていない。言われて気付いたが、俺がこの魔物を『呼び出す』という行為はどう解釈されるのだろう。
召喚出来たということは、彼女は俺の使い魔のような存在になっていて、俺の望み通りに動いてくれたりするのか? ファンタジー小説の読み過ぎかもしれないが。
「まあ、そうだな……とりあえず、俺の使い魔として働いてもらう、とか」
「そ、そんな、とつぜん、言われても」
少女の声は明らかに困ったような弱々しい返事で、魔物らしさの欠片もない。
しかし態度はともかく、彼女が魔物だというのは確かだ。
俺達の理解を超えるような力を持っているはずで、そのさわりが本の中にも記されていた。
「確か、お前は目が合った相手に『暗示』を掛けられると聞いたが」
「えっ、えー、と……」
『暗示』という言葉を使うと、彼女の反応が少しだが変わった。
「……で、できるん、ですけど……」
「ほ、本当に!?」
「ひゃっ!」
驚いた俺の声で彼女が驚いたのか、抱えたクマをぎゅっと掴んで彼女が顔を隠す。
「び、びっくりさせないでください……」
「本当に俺は、魔物を呼び出したのか……くく、くくく。なるほどな……!」
怯えたままの魔物……もとい少女を横目に見ながら、構わず俺は歓喜の握りこぶしを作った。
これで、俺は異形の魔物を使役する、人の理を外れた存在になれる――
「……」
「……」
はずなのだが、なんだろうこの、どうしようもない違和感は。
「……あの」
「なんだ?」
「その、……そろそろ、うちに帰りたい、です……」
「……」
もっとこう、息も出来ないような緊張感とかがあってもいいはずなのに、実家の妹と話しているような気分しかしない。
件の少女はというとさっきからクマの陰に隠れていて、クマの肩の辺りからちらちらと此方の様子を伺っている。
……いや、現実味がないのはまだ彼女の力を目にしていないからだ。それは仕方がない。
「その前に、暗示の力というのが見てみたい。この目で」
「えっ……? で、でも、誰に?」
少女が疑問の声を出す。それについては全く考えていなかった。
かといって、俺自身が被験者になるわけにもいかない。
「そうだな。適当に人を呼んで試してもらうか……。それはまた考えておく。
じゃあ、今日の所はここまででいい。元の場所へ還ってくれ」
「……えっ?」
とりあえまた呼び出すのに魔方陣がまた必要かもしれないので、片づけずに置いておこう――というようなことを考えていると、弱々しい彼女の声がした。またクマの陰からちょろりと顔と触手を出している。
彼女の背中から伸びる触手たちも悩むようにうねうねしていて、触手の先にある目玉までどこか困ったような表情に見えた。
「……か、帰るって……どうやって、帰れば……」
「えっ」
「えっ」
不安そうな表情で彼女が俺を見る。
慌てて例の本を調べるものの、彼女を元の場所へ帰す方法はどこにも書かれていない。
「……」
「……」
「……ふぇ……」
クマの後ろから突き出た少女の表情がみるみるうちに陰り、瞬きの回数が多くなる。
大きな一つ目が大粒の涙で潤んでいくのが手に取るように分かった。
「な、泣くな! ちゃんと帰す方法はある!」
「ぐすっ……。ほんと、ですか……?」
「ただ……そう、俺の方から返すとなると、準備に時間が掛かるだけだ。
うむ、思い直せば今はここに居て貰った方が効率がいい」
俺は思わず出まかせの言葉を吐いた。
何しろ今は真夜中なのだ、小さい女の子が大声で泣き叫ぶ声なんて聞かれたらご近所の噂になりかねない。それは避けないと今後も色々とやりづらくなってしまう。
仮にも魔物を呼び出した人間の心配事とは思えないが、仕方がない。
「あの、それと……」
「ん?」
「きょうは……どこで、寝れば……?」
「魔物なんだから、地べたでいいだろ」
「……」
「……」
「……ふぇ、」
「わ、分かった分かった! ベッドは貸してやる!」
仕方なく彼女にベッドを貸して、俺は冬用の毛布で床に寝た。
彼女も何度かは遠慮したが、魔物である彼女と一緒に寝るわけにもいかないので無理やりにでもベッドを勧めた。
呼び出した側の俺が床に寝るというのも変な話だが……。
「お、おはよう、ございます」
聞き慣れない、しっとりとした女の子の声で目が覚める。
もちろん、昨日俺が呼び出したゲイザーという魔物の声だ。
もしかしたら全部が夢だったんじゃないかとも思っていたが、そんな事は無かった。
「……ああ、おはよう」
休日なのでひとまずゆったりしようかと思ったが、彼女にじっと見られていると落ち着かない。一人暮らしの俺にとってはどうしようもなく違和感がある。
とりあえずテレビを点けておいたものの、特に会話はなくどこか気まずい。
ただ、彼女自身はわりとテレビに食い付いているようだ。適当に子供向けのチャンネルを付けておいたら興味津々に見ていた。
メダルを三枚装着して闘うライダーの番組だが、女の子でもそういうものに興味があるのだろうか。
「ええと、……そうだ、名前を聞いてなかったな」
「あ……わたしは、メドルノウ、っていいます」
「分かった。 メド、でいいな」
「は、はい」
彼女が小さく頷く。
昨日からこの少女を監視していたが、俺に害をもたらす気はないらしい。
「そうだな……俺の方だが、名前や苗字で呼ばれるのもなんとなく変な気がする。
せっかくだから……『マスター』とでも呼んでもらおうか」
「は、はい。マスター」
俺がそう言うと、意外とあっさり彼女は了承した。
意外と素直なのか、それとも断る勇気がないのか、どちらなのだろう。
……そういえば、昨日はほとんどクマのぬいぐるみの後ろに隠れていた少女だが、今日はそれほどその素振りを見せない。
とはいえ喋り方はたどたどしいままなので、まだ警戒や怯えは残っているようだ。
俺は適当に朝飯を食べる事にしたが、彼女、メドが俺をじっと見ている事に気付いた。
「何か食べるか? ……ん、ところで、魔物って何を食うんだ。
ニンゲンが主食とか言われても困るが」
「! あ……えっと……ま、マスター? が食べてる物といっしょで大丈夫です……たぶん」
「そうか、それは助かる」
焼いた食パンとコーヒーを出すと、彼女は恐る恐るそれを口に運んで、黙々と食べていた。文句は言わなかったが、あまり美味しそうに食べているようには見えない。
何か言いたげに大きな目でメドが俺をちらちらと見ていたが、結局何も言わずに朝食を食べ終えた。
時計を見ると朝十時。
件の少女、メドルノウは着けっぱなしのテレビを食い付くように見ている。
「さて、メド。
早速だが、お前の力を早々に試しておきたい」
「ちから?」
「お前の暗示のことだ。昨日も言っただろう」
「あ……そ、そのこと、なんですが……」
メドは言いにくそうに俺から顔を背けながら、クマをぎゅっと抱きしめる。毛皮が厚くて柔らかそうなぬいぐるみだ。
「なんだ? もしかして、暗示を掛けるのに何か準備が必要なのか?」
「い、いえ。暗示は……目をじっと見ていれば、できるん、ですけど……」
「なら問題はなさそうだな」
「え、えと……」
言い出すタイミングを計るかのように、メドが口ごもる。
「誰かの目を、見るの……が、に、ニガテで……」
「……え?」
俺がメドの方を見て聞き返すと、メドの身体がピクッと跳ねる。
そして柔らかそうなクマのお腹へ隠れるみたいに顔を埋めた。
「は、は、恥ずかしい、んです、誰かと、じっと目を合わせるの……」
クマの毛皮に埋もれたメドの声はうめき声のようだった。
何をバカなと思ったが、昨日からの態度を考えれば明白だった。見た目にも精神的にも、彼女はまだ子供なのは分かる。魔物というのも案外俺達と同じ造りをしているのかもしれない。
「恥ずかしいってお前、魔物じゃないのか」
「ううう……。だって、だって……他の子はみんな可愛くなったって聞いたのに、わたしたちだけ……」
なおも曇った声を出しながら、真っ黒い触手と身体をばたばたさせる。深い理由は分からないが、どうやら悩んでいるのは本気のようだ。
「……まあいい。とにかく、暗示を掛けられるのは本当なんだな?」
「は、はい」
「なら、お前のその引っ込み思案を治せばいい」
「で、出来るんですか……?」
そう言ってみたものの、自分でも訳の分からない事を言っている気がした。
そもそもなぜ俺が魔物の性格を矯正してやる必要があるのか。それよりも暗示をどう役立てるか、いや彼女を元の世界に還す手段を探すべきではないのか。
俺は少し悩んでいたが、
「もし、できるなら、お、お願いします」
クマのお腹に埋めていた顔を上げてメドがそう言ったので、とりあえずそちらを優先する事にした。
「……とはいえ、お前を無暗に外へ出すわけにもいかないしな。
暗示でその辺をごまかせたりしないのか?」
「やろうと思えば……たぶん、できます。顔を合わせなくても、それぐらいなら。
でもちゃんと暗示を掛けようとしたら、やっぱり顔の目で見ないと……だめです。
そうなるともう、顔から火が出そうなぐらい、恥ず、かしくて……」
「お前の背中の触手にある目と、顔の目はまた違うわけか。
……どちらにしても、その性格は治すべきだ。色々と都合が悪い」
「は、はい」
俺は携帯を手に取り、数少ない友人に電話を掛ける。
「――というわけでラーメン三銃……じゃない、被験者を連れてくるぞ」
「え。マスターのお、お友達、ですか?」
「……なんだその目は」
水瀬(みなせ)という俺の友人に連絡を取ってみると、二つ返事で「行く」と答えた。
小学生の従姉妹が家に遊びに来た、という事にしておいて正解だったと思う。
携帯に「家の前まで着いた」という連絡が来たので、俺はいったん外に出る。
何も知らない水瀬が驚いて正気を失わないように、メドはとりあえず布団の中へ隠れさせておく。クマのぬいぐるみのせいで布団の膨れ方が異常だが、無理やり引き離そうとするとメドが泣きそうな表情になるので仕方なく許した。
「悪いな水瀬、急に呼び出して」
「気にすんなって。親戚以外の女子小学生と遊べるなんてそうそうない機会だかんな」
「……」
言っている事はかなりどうかしているが、決して悪いヤツではない。
「まあいい、とりあえず入ってくれ。ただその前に……少し言っておくことがある」
「なんだ?」
「その従姉妹の子ってのが、なんというか……とても、人見知りでな」
「え? なのに初対面の俺を呼んだのか?」
「いや、だから呼んだんだ。その従姉妹の子が人見知りを治したいって言うもんだから。
手伝ってくれるか?」
「もちろんじゃないか。おとなしい女の子なんて、ますます興奮するぜ」
「……」
なんだか不安になってきたが、とりあえず水瀬を俺の家に上げる。
もちろんメドは布団の中に隠れているので、水瀬の求める幼い女の子の姿はない。そもそもアイツが求める女の子かどうかは別だが。
俺はベッドのある方に座って、テーブルを挟んで向かい側に水瀬が座った。
「あれ。従姉妹の子はどこにいるんだ」
「えーと……ちょっと待ってくれ」
ベッドの方をちらっと見てみると、布団の横から赤い目玉がほんの少しだけ覗くのが見えた。それは彼女の背中から伸びる触手の目玉だった。今のところ水瀬は気づいていない。
とりあえず布団を少しだけ引っ張って外に出てくるよう合図をしてみたが、もぞもぞと布団の中が動いただけでメドが出てくる様子はない。
「もしかして、今そこで寝てるのか?」
俺の行動で流石に水瀬も気付いたらしく、声を掛けてきた。
「あーうん、ちょっとお昼寝がしたいって言ってたからな」
「そうか、それなら無理に起こさないでいいぞ。起きるまで静かにゲームでもしとこう」
……が、三十分、一時間、二時間と経っても、出てくる兆しはない。
水瀬がトイレに行ったタイミングで、ベッドの中のメドに小声で話しかける。
「(おい、そろそろ出てきてもいいだろう)」
「(あ、あの、それが……)」
「(なんだ?)」
「(ま、魔力が全然足りなくて……暗示、ムリなんです)」
「(……魔力? 初めて聞いたがなんだそれは、どうすれば蓄えられるんだ)」
俺がそう聞くと、メドはベッドの中で顔を真っ赤にする。
「(い、いまはだめです。二人きりっていうか、ええっと、)」
「(とにかく今は無理だってことか。仕方がない、次の機会だ)」
トイレから出てきた水瀬には適当な理由を付けて、メドの姿を見せないようにしておいた。
つまり、メドの暗示を確かめる事はできなかった。
なので日を改めて、とりあえずは準備を整えることにしたのだが――。
彼女が言うには「普段は少しずつなら勝手に魔力が溜まっていくけれど、この世界ではそれができない」らしい。
なので、その為には魔力を補給させる方法というのが必要なのだ。
しかしその方法というのが……
「……精液……っていうと、つまり」
「はい……」
魔力を補給するには、人間の精が必要。つまり精液。
メドが何度も顔を赤らめて言いよどむ為、そのことを聞くのにずいぶん時間が掛かった。
「冗談……でもないよな。
わ、分かった。俺のほうで適当に処理して渡すから……」
「そ、それだと、だめ……なんです!」
「え?」
座椅子に座った俺の方にメドがぐいっと顔を寄せてくる。
「その……わたしが、手伝わないと、効果が出ないかも、しれなくてっ」
「手伝う、って、」
「な、なにも言わないでくださいっ」
うろたえるような素振りをしながらも、メドはそそくさと近づいてくる。
それから顔を隠すように背を丸めて、俺の太ももをそっと手で撫でた。
メドの長い後ろ髪からふわっと石鹸のような良い匂いが漂って、思わずどきっとする。
「こ、こ、こういうコトするの、全然、慣れてないんですけど……。
せいいっぱい、します、からっ」
音を立てて股間のジッパーが開かれる。
目の前にメドの頭があるので俺からは何をされているのかは見えないが、大きくなりつつあった自分のペニスが外気に晒された事も、そこに生暖かい吐息が掛かるのも、やけに鮮明に感じた。
そそり立った自分のモノの先端に柔く、ぬめった何かが触れる。
「ん、ちゅっ、ぬむっ、はぁっ、」
メドの口から鳴るその水音で、ペニスを口に含んで愛撫しているのだと理解する。
ぬるり、むにゅり、と小さな舌がペニスの上を這う。
それは亀頭の先っぽから裏筋にかけてにゅるにゅると動き、敏感な所をれろれろとなぞっていく。
唾液で滑っているとはいえ、ざらついた舌でれろりと何度も舐め上げられるのは刺激が強い。
ここ数日発散する事も無かった俺は、その容赦ない責めで腰が浮きそうになってしまう。
ちろちろと動き回る舌はまるで猫のようだ。
「め、メド、おいっ……」
俺の抗議の声は言葉にならず、メドも愛撫を止める様子はない。
それどころか、少しずつ舌の動きが早くなっている。こんな調子で責め続けられては俺もそう長くは持たない。
さらにメドは口の中へと咥えこんだのか、ペニスがぬめっとした温かい何かに包み込まれる。
「んん、じゅるっ、んっ、むぐ」
まるでペニスを味わうかのように、熱烈で激しい口使い。
口の中でアイスを溶かすみたいに、ぴちゃぴちゃ、むぐむぐと、じっくりしゃぶり尽くされていく。
思わず跳ねてしまう身体を、メドの小さな身体がやんわりと押さえつけてくる。
もう、果ててしまう。
「で、出るっ……」
こみ上げる射精感に任せ、俺はメドの温い口内に射精する。
びゅくんびゅくんと発射する間も舌は動きつづけ、ペニスに纏わりつく。
さらにじゅるっ、じゅるっと口内でペニスを吸い込まれ、たまらない快感を生む。
溜まっていた精液を吸い出されてしまうかのような感覚に、目の前が一瞬真白くなった。
「んぐっ、ん、ちゅっ、ぺろっ。……っ、ぷはっ」
射精が終わり、さらにメドが残った精液を舐めとると、ようやく口淫が終わった。
普段の気弱なメドの態度からは想像もできないほど強烈で熱い愛撫に、俺は荒い息を整える事しかできない。
すると、メドは一旦俺から離れ、申し訳なさそうな顔をしながら、俺を上目遣いで見上げる。
「あ……ありがとう、ございました。お腹、いっぱい……です」
「ど、どういたしまし……て?」
メドの赤面した顔を見ると、俺も気恥ずかしいしなんだか気まずい。
俺にとって、さっきのフェラチオはあまりに刺激的な行為で、まだ余韻が残るほど衝撃的だ。
何しろ俺はメドの事を年の離れた少女を預かったぐらいに思っていたのだから。
……それに、内気な彼女が積極的だったのは俺としても驚いた。
しかし彼女も恥ずかしいのは俺と同じなのか、すぐさまベッドに戻って布団を被ってしまう。
うねっとした触手が何本か布団の端からはみ出し、その先端の目玉が俺の方を見ていたが、俺は気づかないフリをした。
――二日後。
学校から帰ってきた俺にメドが話しかけてきた。
「あ、あ、あの。実は、その。
まだ……精が、足りなくて、今のうちに、補給を……」
「……え、」
「あ、いえっ、次の……ドヨウビ? にまた、人を呼ぶなら、その。
その間に、蓄えて、おいたほうが……」
そもそもメドが言うには、彼女達ゲイザーの食事は本来『精』なのだ。
今の所俺と同じ食事をさせているが、美味しそうに食べている様子はない。
だが俺もこんな小さな子に性行為を強要するわけにはいかず、「出来るだけ我慢してくれ、出来なければこの前のように口で摂取をしてほしい」――と、説明した。
なので、俺もそう体力を使う必要はないかと思ったが、そうもいかないらしい。
「……う、うむ。それは、そうかも、だが」
「で、ですよね。じゃあ、早速っ……」
「お、おい」
実を言うと、昨日も同じような前置きでメドは話しかけてきた。
そして俺は彼女の誘惑にも似た懇願を断れず、前と同じように彼女の口で射精させられてしまったのだ。
どうやら精の事となると、メドは驚くほど積極的になるらしく。
――そして、次の土曜。また水瀬を呼びだしたのだが。
「……」
「……なあ。件の女の子、いつも寝てるけど大丈夫なのか?」
「ああ、うん……そうだな、昨日夜更かししてたらしいから……」
メドはベッドの中から出てこない。
触手の目玉だけはこっそりとこちらの様子を伺っているのだが、姿を見せないのだ。
もしかするとあの触手だけで暗示が掛けられるのかと思い、俺も何も言わない。
その十分後。
「む、しまった、大事な用があったんだ! 悪い、今すぐ帰らないと……」
「え、おい、」
水瀬が突然立ち上がり、荷物を持って家を出ていく。俺が止める暇もなく、唐突にだ。
『特に用事はない』と言っていたはずなのに、どうにも腑に落ちない。
うっかりという事もあるかもしれないのは確かだが……。
「……った、うまく……きた」
「ああ、メド。たぶん聞こえてたと思うが、用事らしい。すまないが、また今度だ」
「うえっ?! あ、は、はいっ」
慌てたようなメドの態度。もしや、とも思ったが断定はできない。
俺は布団を引っ掴んで、メドの姿をさらけ出させる。
「わっ!」
驚いた声を上げ、メドが身体を丸めて縮みこませる。
「メド。まさかとは思うんだが……お前の力で水瀬を帰らせた、なんてことはないよな?」
「えあっ、いえ、そんなっ……こと、」
「……」
怪しい。怪しいが、やはり断定はできないのだ。
……もしかすると俺は、とんでもない魔物を呼び出したのだろうか。
「わ、わたし……は、その……」
「う……」
彼女の不安そうに滲む大きな一つ眼を見ていると、途端に強く言えなくなってしまう。
そしてそれとは逆に、別の欲望まで生まれ始める。
未成熟ながらもいじらしく目を惹く小ぶりな乳房、柔らかそうなお腹。
曇りのないすべすべとした白い肌。さらっとした長い黒髪に、大きく綺麗な赤い一つ眼。
「ま、マスター、目がこわい……です」
彼女に口淫を迫られるようになってからというもの、どうにも抑えがたい欲望が溢れる。
相手が魔物とはいえ、小さな少女だ。力では彼女に跳ね除けられるまい。
押し倒せ。犯してしまえ。
そんな幻聴が聞こえそうなほど、彼女に欲情しかかっている。
「……は、あ、ああ。すまん……」
「く、苦しそうですけど……大丈夫、ですか?」
「なんでもない、気にするな」
とぶっきらぼうに返事をして、トイレの中に入る。
このままでは遠からず彼女を手籠めにしてしまう。
仕方なく、俺はトイレの中で見つからないように性欲処理をしておこうと思ったが……
「……っ、くっ、」
トイレに籠ること十分間。
いくら自分を慰めても、モノを擦っても、達することができない。
それどころか際限なく性欲を高めていくだけで、果てが見えないのだ。
そして嫌でも脳裏に思い出すのは、彼女の柔らかい口での奉仕。
れろり、れろりと俺のペニスをなぞるあの感触。
「く、くう……」
あの感触が忘れられず、射精までに辿りつけない。
結局、二十分経っても俺は満足することができず、息を整えながらトイレを出る。
そして、部屋のベッドに腰掛けるメドの身体が、幼い肉体が嫌でも目に入ってしまう。
メドはベッドの上で、大きなクマのぬいぐるみにしがみついていた。
「だ、ダメだ……そんなことは、」
俺の呟きを聞いていたのか、メドが心配そうな目で俺を見つめてきた。子猫のように純粋な瞳で。
ああ、その表情をもっと歪ませたい。
強く抱きしめると折れてしまいそうなその細い身体を抱きしめたい。
「……ま、マスター。体調が悪いなら、ベッドに……」
駄目だ、相手は自分より頭二つは小さい子供なのに。
それに騒がれたらどうする? 周りの住人にバレてしまったらもう言い逃れはできない。
……いいや、どうせ相手は魔物なんだ。人間じゃない。
心の中で誰かが何度も語りかけてくる。
襲ってしまえ、と。
「メド……」
ケモノのような顔で近づく俺に、メドは優しく声を掛けてくる。
俺がそっと彼女の両肩を掴むと、その小さな身体がぴくっと震える。
メドはびっくりして大きなクマのぬいぐるみから離れて、ぬいぐるみはベッドから床にごろんと落ちた。
「あ、」
そのままベッドに向け、彼女の身体を押し倒す。
背中から伸びる触手がクッションになって、ベッドの上で彼女の身体が跳ねた。
「あうっ、えっ……?」
緊張のせいか震えるその小さな身体に手を這わせ、その細く白い首筋に舌を沿わせる。
「ひゃっ! な、なんですか、マスター……」
過敏に反応するメドの反応が小気味よくて、つい何度もそれを繰り返す。
おでこ辺りの髪を撫でつけながら、俺はそっと唇にキスをする。
今まで自分から女性にキスをしたことなんてなかったのに、驚くほど動きはスムーズだった。
「んっ……ふぁ、」
やわらかい唇の感触を楽しみながら、そっと頭を撫でる。
そして息を吸い込みなおして、もう一度口づけ。今度は、彼女の舌と舌を絡みあわせていく。
メドの舌を舐めるとほんのりと甘味を感じ、唾液に濡れた舌がくちゅりと水音を立てた。
「んちゅ、うぅ、はぁっ……、きす、しちゃった……」
目を潤ませ、とろんとした表情になったメド。彼女が伸ばしていた足を持ち上げてベッドに乗せる。
ベッドで仰向けに寝る彼女に、俺が上から伸し掛かる体勢になった。
「や、やめ……マスター、こわい、ですっ」
「だめだ、そんな顔されると……ますます、ダメなんだ……!」
弱々しすぎる彼女の拒絶が、更に劣情を加速させる。
首筋から鎖骨へ、そして小さな乳房へと舌を這わせ、その膨らみを舐め回す。
彼女の身体には黒いゼリーのような塊が張り付いていたが、舐めるとそれは剥がれ、濃厚な牛乳のような味がした。
「ひゃ、あぁ、そんなっ、とこっ」
黒い塊を舐めとると慎ましい乳首が現れ、ピンと勃って存在を主張する。そして片方の乳首を舌で舐めながら、もう片方も指でこりこりとつまむ。
メドは嬌声をあげながらも俺の手首を掴んで止めようとするが、その手に力は入っていなかった。
「あうぅ……、な、なめないで、ぇ……くだ、さ……あぁっ、」
抗議の声を無視して、俺はさらに下へと顔を持って行く。
やせ気味な肋骨あたりから、ぽこっと膨らんだお腹へ。そのくぼんだ小さなへそにも舌を滑りこませる。
彼女が風呂などに入る所は見たことがないが、垢や汗で汚れている様子はない。人間とは勝手が違うのだろうか。
そんな事を考えながら、むにっと柔らかい彼女の白肌を唾液で汚していく。
「はぁっ、はぁっ、」
股間は特に分厚い黒い塊に包まれている。
すべっとしたその白肌の感触を楽しみながら、俺は鼻先を小さな股間へうずめ、大きく息をする。
何とも言えない、淫靡な香りが広がった。
「や、あぁ。そんな……はずかしっ……」
股間の黒い塊を舐めとって、少しずつ露出させていく。
そして、ぴちっと閉じた一本の筋が現れる。
メドの反応を伺うと、彼女は自分の両手で真っ赤な顔を覆っていた。恥ずかしさのあまりか、満足に声も上げられないようだ。
俺はぐいっと太ももに手を当てて股を開かせ、割れ目の部分を丁寧に舌でなぞっていく。
「……っ、ふっ、ぁ、」
押し殺した声の中、ぴちゃぴちゃとクリトリスを舐め上げる水音が響く。
メドの腰が跳ねるのを俺は力で押さえつけ、さらに刺激を強くしていく。
いつの間にか抗議の声はなくなり、快感に耐えるような声だけがメドの口から漏れていた。
「あぅ、ああっ。ふうっ、うぅ、」
すでに我慢の限界に近かった俺は、何もためらうことなく自分のズボンと下着を降ろす。
今にも発射してしまいそうなペニスがぴくっと震え、それを彼女の割れ目に押し当てる。
「あっ?! だ、だめっ……わたし、まだそんなのっ」
何をしようとしているのかメドも察したらしく俺を止めようとするが。それは彼女の声だけだ。
身体は快感に痺れて動けないのか、それとも事態に脳が追い付いていないのか。
俺は構わず、その小さすぎる膣穴を欲望のはけ口にせんとする。
いくら騒がれてもかまうものか。後で適当に誤魔化せばいい。
「あ、あ、や、だぁ、こわ、こわい、の……っ」
くちゅっと音を立てながら、幼い蜜壺に入り込もうと雄々しく穴を押し広げていく。
狭い膣穴はドロドロに熱く、小さく、愛液と唾液に濡れそぼっている。
固く未熟な女の子の性器に、無理やりペニスをねじ込んでいく――
そんな背徳的な感情も混じって、どうしようもない快感が流れ込んでくる。
「やぁ、あぁ、だめっ、だめっ」
異物の侵入に必死で耐える少女の表情は辛そうで、けれど悦楽にも見える。
痛みはあまりないのか、泣き叫ぶような事もない。しかし大きな一つ目は薄らと涙で潤んでいて、口元からは唾液がこぼれている。
「あくっ、うぅぅ、はいって、きちゃう、よおっ」
腰に少し力を入れるだけで、温かい膣肉がペニスを飲み込んでいく。
ぬるぬるっと沈みんで、彼女の膣はきゅうきゅうとその柔肉でモノを挟んできた。
その刺激に耐えられず、俺はいきなり腰を激しく動かし始めていく。
「あっ、やっ、はぁ、っ、う、うごいひゃ、らめっ、え」
次第に途切れ途切れに、舌足らずになる悲鳴にも似た声。
それを聞くたび、俺が少女を、メドを犯しているという感覚がこみ上げてくる。
「ひぃ、あっ、あぁぁ、」
腰を引くと、肉がじっくりと絡みついて、離すまいとぎゅっと締め付けてくる。
そしてまたペニスを根元まで突き入れるたびに、こつこつとメドの最奥に当たる。
そのこりこりとした感触が気持ち良くて、また腰を動かしてしまう。
ぬちゅ、ずちゅっ、ぐちゅっ。
淫らな音を立てて、何度も、何度もピストンを繰り返す。
俺は引き抜いては突きを繰り返し、膣内を半ば無理やりに掻きまわしていく。
狭くヒダでいっぱいの膣内をぐちゅぐちゅと擦っていくたび、射精欲が込み上がる。
「ひゃ、ふっ、うぁ、ひあっ」
散々焦らされていた俺はもう限界で、絶頂が近づいてきていた。
腰の早さは益々ヒートアップして止まらない。
メドは背中を大きく逸らせ、俺が送る絶え間ない刺激に震えながら身悶えていた。
「だ、出すぞ……っ」
「ひっ、あひぃっ、な、なんか、きちゃう、よぉ、」
その言葉とメドの動きで、彼女も絶頂が近い事を悟る。
こんなに乱暴に犯しておいて快感を感じているのは、やはり魔物ということか。
そして俺は容赦なく、またメドの一番奥までペニスを突き入れた。
「あ、あ、あっ、ああ――!!」
メドの絶叫と同時に、膣内にどくん、どくんと精液が流れ込んでいく。
温かい肉壁がうねり、搾り取ろうとするかのようにペニスに吸い付いてくる。
幼く未熟な性器に射精するその快感を、俺はふわっとした気分で味わい続けていた。
射精してから十秒ほどその余韻に浸っていたが、また俺は腰を引いて動かし始める。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ――あぁぅっ?!」
俺がもう一度ペニスを動かし始めると、メドがまた敏感に腰をくねらせた。
射精直後の気だるい感覚などなく、ペニスはまた硬く勃起して膣を擦っていく。
「やっ、あ、だ、だめ、いま、うごか、ひゃ、でぇっ――」
メドの声はもう息も絶え絶えだが、膣はますますぎゅっと締め付けてくる。
快感を貪るようにまた俺は出し入れを繰り返し、ぱんぱんと肉のぶつかる音を立てる。
穴に入りきらなかった精液がピストンのせいでこぼれ、メドの股間をべとべとに汚していく。
「はぁ、ぁっ、ぁ――……っ、」
数分も堪えきれず、また射精。
ごぽっと音が立ちそうなほど、メドの膣内はもう色々な液体でいっぱいになっている。
だがまだ興奮の冷めない俺は、さらに他の穴を汚してやろうと思い付く。
ちゅぽん、と膣穴からペニスを引き抜いて、その下にある小さなお尻の穴に狙いを定めた。
愛液が垂れて濡れたその穴は、待ち焦がれているかのようにひくひくと動いている。
「あぁ、そ、な、とこっ……ぉ、」
抗議の声など聞く由もなく、膣よりもさらに狭い尻穴へとモノを突き入れる。
その締め付けは括約筋のせいでさらにきつきつで、カリが引っかかって擦れていく。
腸壁が柔らかくまとわりついて、その刺激でまた俺は射精に導かれた。
「あぅ、うっ、ふーっ、ぅ――……、」
メドの小さなお尻の中にたっぷりと精液を放出し、その中をどろどろに汚す。
股間にある二つの穴からはどろり、と精液と愛液の混じったものが垂れていた。
けれどまだペニスは元気に主張するまま。
おもむろに俺は立ち上がって、ぽかっと開いたままの小さな口に自分のペニスを突き入れる。
「ん、うっ?! っ、ぐっ、んんっ」
ぷにっとした唇に精液まみれに汚れたペニスを押し当て、そのまま奥へと突っ込む。
人間ならまだ乳歯ばかりであろう幼い口内を自分のモノで犯していく。
そうして乱暴に腰を振って、ただ闇雲に快感を得る。
突然の事にメドは混乱しているのか、習性なのか、乳を飲む赤ちゃんのようにペニスに吸い付いてくる。
それがまた快感を誘い、俺の射精をさらに促した。
「んんっ、んっ、ぐっ、ごくっ、」
そのまま口の中に射精してやると、喉を鳴らしてごくんと飲み干していく。
焦点のずれたメドの赤い一つ目を見ていると、もう意識が残っているかも怪しかった。
だがまだ、欲望は収まらない。
今度はその幼い身体全部を汚してやろう――と、膣や尻に突き入れては、白肌の上に精液を掛ける。
「――あ、ぁ、――……っ」
俺の暴走は止まらない。
獣のような性欲が収まるまで。
「ぅ――っ、――っ……♪」
最後に覚えていた感触は、俺が何か温かい物に包まれるところまでだった。
俺の額に何か柔らかい物が当たって、目が覚める。
……頭が痛い。さっきまで俺は一体何をしていたんだっけ。
「あれ。いつの間に寝ていたんだ……?」
俺が起きると、なぜかベッドに寝込んでいた。
その傍には、ベッドの横で心配そうに俺を見つめるメドの姿があった。
大きな赤い一つ目がぱちぱちとせわしなく瞬きをして、瞳が潤んでいる。
俺の額にあるのはメドの小さな黒い手だった。
「あ……大丈夫、ですか……?」
ううん、と唸りながら俺は起き上がろうとする。
が、なぜか体が起こせない。身体が異常なほど重くて、上手く動かないのだ、
水瀬が帰ってからのことが上手く思い出せないが、俺は一体どうしてしまったのか。
「マスター、すごく、疲れてた、から……もうすこし、休んだ方がいい、です」
「む……そうか」
どうやら相当まいっていたらしい。が、俺には覚えがない。
色々な事がありすぎて疲れが溜まっていたのだろうか?
どちらにせよ身体が動かせそうにないので、俺はメドに言われるまま休むことにする。
「……あ、マスター、えっと」
「ん?」
「その……いっしょに、寝る……のは、だめ、ですか」
何かと思えば、そんな事かと言いながら、言う事を聞かない体で布団を整える。
いくら俺でもそんな潤んだ目をされて言われると、断りようがない。
「まあ、寒かったところだしな……ただ今はどうにも身体が痛いからな、そっと入ってくれ」
「は、はいっ」
そう言うとメドはもぞもぞと布団の中に入ってくる。良く布団に潜っているからか、手馴れた物だ。
そして、仰向けに寝転ぶ俺の左腕にぎゅっとメドが抱きついた。
「えと、それと、マスターっ。
夜に寝るときも……いっしょが、いいです」
「……あ、ああ。そうだな、そうしよう」
なにか釈然としないのを感じながら、俺はまた眠るのだった。
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「……ああ、メド。そういえば、水瀬と会って、お前の『暗示』を確かめる件なんだが……」
「え……あ、えっと……まだ、恥ずかしいので……も、もうすこし。
マスターと一緒にいて、練習する、のは……だめ、ですか?」
ベッドの中。
メドの弱々しい声を聞いて、俺は頭をそっと撫でて、髪の柔らかい感触を楽しむ。
「……そうだな。また、今度にしよう」
「ご、ごめんなさい」
「にしても、お前の人見知りは中々治りそうにないな」
「そう、ですね……ふふっ♪」
「ん? どうしたんだ、メド」
「いえ……なんでも、ない、ですっ」
15/02/08 18:44更新 / しおやき